(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362267
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】体外血液処理の動作状態を検出するためのデバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
A61M 1/16 20060101AFI20180712BHJP
A61M 1/36 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
A61M1/16 111
A61M1/16 117
A61M1/16 163
A61M1/36 100
A61M1/36 143
【請求項の数】21
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-511762(P2014-511762)
(86)(22)【出願日】2012年5月22日
(65)【公表番号】特表2014-519898(P2014-519898A)
(43)【公表日】2014年8月21日
(86)【国際出願番号】EP2012002167
(87)【国際公開番号】WO2012159734
(87)【国際公開日】20121129
【審査請求日】2015年5月19日
(31)【優先権主張番号】102011102962.5
(32)【優先日】2011年5月23日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】61/489,037
(32)【優先日】2011年5月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597075904
【氏名又は名称】フレゼニウス メディカル ケア ドイッチェランド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーマイヤー ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】ヴュッパー アンドレアス
【審査官】
川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】
特表2008−526329(JP,A)
【文献】
特表2010−525845(JP,A)
【文献】
米国特許第06702774(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/16
A61M 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体外血液循環路(9)内で処理される血液が、半透膜(2)によって血液チャンバ(3)と透析液チャンバ(4)に再分割された透析器(1)の該血液チャンバ(3)を通って流れ、透析液循環路(10)内の透析液が、該透析器の該透析液チャンバ(4)を通って流れる体外血液処理において理想動作状態又は理想動作過程からのずれの原因を検出するためのデバイス(25)であって、
前記血液処理中に前記透析液チャンバ(4)の上流の前記透析液の物理又は化学特性を変更するための手段(170;171)と、
前記透析液チャンバの下流の前記透析液の物理又は化学特性を測定するための測定手段(174)と、
前記血液処理中のある時点での前記測定された物理又は化学特性の変化から透析率又はクリアランスの値を決定するための装置と、
前記ある時点に検知された前記透析率又はクリアランスの前記ある値の該透析率又はクリアランスの時間依存の基準値からのずれを検出するための装置(25)と、を含み、前記時間依存の基準値は透析処理の理想的な又は複雑ではない過程を示し、
さらに、理想動作状態からのずれの原因を、前記透析率又はクリアランスのずれの値が決定された前記ある時点の関数として検出するための評価ユニット(25)、
を含むことを特徴とするデバイス。
【請求項2】
前記透析率又はクリアランスの前記ある値の基準値からのずれを決定するための前記装置(25)は、該基準値を以前の血液処理から又は理論的関係に基づいて決定するように設計されることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記透析率又はクリアランスの前記ある値の基準値からのずれを決定するための前記装置(25)は、該基準値を前記血液処理の現在の動作パラメータを用いて補正又は補償するように設計されることを特徴とする請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記評価ユニット(25)は、理想動作状態からの前記ずれの前記原因として、前記透析器のコネクタの不正な位置決め又は前記体外循環路内の針の不正な位置決めを第1の処理区画内の処理時点の関数として検出するように調節されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記評価ユニット(25)は、理想動作状態からの前記ずれの前記原因として再循環を検出するように第2の処理区画内の処理時点の関数として調節されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記評価ユニットは、前記体外血液循環路内の血液の温度の変化をトリガし、前記透析器の上流の該体外循環路内の温度の測定をトリガし、該測定された温度を前記再循環の尺度を決定するために使用し、かつそれを前記ずれの前記原因として再循環を検出する際に考慮するように調節されていることを特徴とする請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
圧力保持試験が実施された時点を決定するための手段を含み、
前記評価ユニットは、圧力保持試験が以前に実施された時点の関数として再循環を理想動作状態からの前記ずれの前記原因として検出するように調節されている、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記評価ユニットは、前記透析器の前記コネクタの不正な位置決め又は前記針の不正な位置決めを予め除外した後に再循環を理想動作状態からの前記ずれの前記原因として検出するように調節されることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記評価ユニットは、第3の処理段階内の時点の関数として前記半透膜の凝固栓を理想動作状態からの前記ずれの前記原因として検出するように調節されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記透析器(1)内の圧力パルスの減衰を測定するための測定手段(34;33)と、前記透析率のずれが以前に決定されていた場合に該圧力パルスの該減衰の測定をトリガするための制御信号を発生させる手段とを含み、
前記評価ユニットは、前記半透膜の凝固栓を検出する際に前記圧力パルスの測定された減衰を考慮するように調節される、
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項11】
血液処理デバイスであって、
半透膜(2)によって血液チャンバ(3)と透析液チャンバ(4)とに分割された透析器(1)を有し、血液チャンバ(4)は体外血液循環路(9)に接続され、透析器(1)の透析液チャンバ(4)は透析液循環路(10)に接続され、
さらに、請求項1から10のいずれか1項に記載の体外血液処理の理想動作状態又は理想的動作過程からのずれの原因を検出するためのデバイス、を有することを特徴とする血液処理デバイス。
【請求項12】
体外血液循環路(9)内で処理される血液が、血液チャンバ(3)と透析液チャンバ(4)に半透膜(2)によって再分割された透析器(1)の該血液チャンバを通って流れ、透析液が、透析液循環路(10)内で該透析器(1)の該透析液チャンバ(4)を通って流れる体外血液処理における理想動作状態又は理想動作過程からのずれの原因をデバイスが検出する方法であって、
前記デバイスが前記血液処理中に前記透析液チャンバの上流の前記透析液の物理又は化学変量を変更する段階(S1)と、
前記デバイスが前記透析液チャンバの下流の前記透析液の物理又は化学特性を測定する段階(S2)と、
前記デバイスが前記血液処理中のある時点での前記測定された物理又は化学特性の変化から透析率又はクリアランスの値を決定する段階(S3)と、
前記デバイスが前記透析率又はクリアランスの前記ある値の該透析率又はクリアランスの基準値からのずれを決定する段階(S4)と、
前記デバイスが前記血液処理の理想動作状態からの前記ずれの原因を前記ある時点の関数として検出する段階(S5)と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
前記基準値は、以前の血液処理から又は理論的関係に基づいて決定されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
以前の処理の前記基準値は、前記血液処理の現在の動作パラメータを用いて補正又は補償されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記透析率又はクリアランスの値のずれが決定されるある時点は、第1の処理区画内にあり、前記透析器のコネクタの不正な位置決め又は針の不正な位置決めが、理想動作状態からの該ずれの前記原因として検出される(S53)ことを特徴とする請求項12から請求項14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記透析率又はクリアランスの値のずれが決定されるある時点は、第2の処理区画内にあり、再循環が、理想動作状態からの該ずれの前記原因として認識される(S55)ことを特徴とする請求項12から請求項15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
再循環が理想動作状態からの前記ずれの前記原因として検出される前記時点は、圧力保持試験が以前に実施された時点であることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
再循環が、前記透析器のコネクタの不正な位置決め又は針の不正な位置決めを予め除外した後に理想動作状態からの前記ずれの前記原因として検出されることを特徴とする請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記透析率又はクリアランスの前記値の前記ずれが決定される前記ある時点は、第3の処理区画にあり、前記半透膜の凝固栓が、理想動作状態からの該ずれの前記原因として認識される(S58)ことを特徴とする請求項12から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記透析率又はクリアランスのある値の透析率又はクリアランスの基準値からのずれが決定された後に、前記透析器内の圧力パルスの減衰が測定され、前記半透膜の凝固栓を検出する際に該圧力パルスの該測定された減衰が考慮されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記デバイスに請求項12から20のいずれか1項に記載の方法を実行させるコンピュータプログラムを含む記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体外血液処理の動作状態を検出するためのデバイスに関し、特に、体外血液循環路内で処理される血液が、半透膜によって血液チャンバと透析液チャンバに再分割された透析器の血液チャンバを通って流れ、透析液が、透析液循環路内の透析器の透析液チャンバを通って流れる血液処理デバイスにおいて、体外血液処理の理想動作状態からのずれの原因を検出又は決定するためのデバイス及び方法に関する。
【0002】
更に、本発明は、体外血液処理の理想動作状態又は理想処理過程からのずれの原因を検出又は決定する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
腎置換療法では様々な血液浄化法が確立されており、これらの処理方法では、尿と共に排除される成分が血液から除去され、すなわち、健常者では腎臓を通じて排除される血液成分が体外系内で血液から除去される。血液透析では、血液中に存在し、通常は尿中で排除される物質の拡散物質搬送が、半透膜を通過して透析液中に発生する。物質搬送は、体外血液循環路に接続された血液チャンバと、透析液循環路に接続された透析液チャンバとを有する透析器の半透壁を通過して発生する。血液チャンバと透析液チャンバは、半透膜によって分離される。血液中に留まるべき電解質の拡散損失を阻止するために、透析液は、生理的濃度にある一定の電解質組成を含む。
【0004】
一方、血液濾過では、膜上の圧力勾配が物質搬送における駆動力である対流物質搬送が、濾過器の半透膜を通過して発生する。望ましくない血液組成の損失を補償するために、膜を通過して失われた電解質は、置換液によって置換されなければならない。置換液は、濾過器の上流又は下流の注入箇所で添加することができる。上流の場合は事前希釈と呼び、下流の場合は事後希釈と呼ばれる。対流搬送と拡散搬送の組合せは、血液透析濾過として公知である。本特許出願の状況で透析又は透析処理と言う場合には、純粋に拡散による透析又は血液透析濾過を指すと理解されなければならない。
【0005】
体外血液処理をモニタする際に、血液洗浄性能又はクリアランスのモニタリングが重要である。クリアランスKは、血液チャンバを通る毒素、特に尿素が完全に取り除かれた血流の比率として定められる。実際にはクリアランスの代わりに透析率が決定され、透析液中に存在する電解質に対する濾過膜の透過率が測定される。これを行うために、透析液チャンバの上流の透析液循環路内の透析液中の1つ又はそれよりも多くの電解質の濃度が修正され、その得られる透析液チャンバの下流の濃度変化が決定される。透析液チャンバの上流及び下流で修正を受けた1つ又はそれよりも多くの電解質の濃度は、透析液の導電率に影響を及ぼし、透析液チャンバの上流及び下流の対応する導電率センサを用いて測定される。進行中の処理中にクリアランスを決定するためのそのような方法は、オンラインクリアランスモニタリングと呼ばれ、本出願人の欧州特許第0911043号明細書に開示されており、この文献の開示内容は、本特許出願に完全に組み込まれている。この原理に基づく営利目的での方法は、「Fresenius Medical Care Deutschland GmbH」によってOCM(Online Clearance Monitor(オンライン・クリアランス・モニタ))という名称の下に供給されている。
【0006】
透析率又はクリアランスは、濾過器のタイプ、濾過膜の有効面積、濾過膜の透過率、血液の流量、透析液の流量のようないくつかのファクタに依存する。従って、別個に考えた場合には、透析率又はクリアランスの決定は、体外血液処理の動作状況又は動作状態を検出又は決定するための適切な尺度ではない。
【0007】
体外血液循環路の静脈枝管から患者の血管アクセス内に外れた血液が、そこから体外血液循環路の動脈枝管内に直接進むことに起因する体外血液処理の理想動作状態からのずれが存在する場合がある。瘻孔が血管アクセスとして機能するので、この現象は、瘻孔再循環として公知である。体外血液循環路内で浄化された血液が、患者の心肺循環系を通じてもたらされ、そこから体外血液循環路の動脈枝管にもたらされる対応する現象は、心肺再循環として公知である。
【0008】
再循環を決定するためのいかなる方法も、体外血液循環路の静脈枝管内の物理又は化学特性に影響を及ぼし、かつその後に体外血液循環路の動脈枝管内で物理又は化学特性を測定することには基づかない。例えば、血液循環路の静脈枝管内の血液温度は、直接に熱を奪うこと又は透析液の温度を短い期間にわたって下げることのいずれかによって変更することができ、この時に、透析液側の温度降下は、血液側に半透膜を通じて所定の方式で影響を及ぼす。血液循環路の動脈枝管における温度降下の影響を測定するために、動脈血循環路内に温度ピックアップ器を設けることができる。一般的に、再循環を決定するためには、体外血液循環路の静脈枝管内に流れる血液の物理又は化学特性を変更するためのデバイス、並びに体外血液循環路の動脈枝管内にリフローする血液の測定変量を記録するための測定値ピックアップ器を設けなければならない。しかし、これらの手段には、血液処理デバイスのより一層の機器複雑性が不可避である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許第0911043号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、上述の問題のうちの少なくとも1つが解決されることになるような体外血液処理における動作状態を検出又は決定するためのデバイス及び方法を利用可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の教示により、上述の目的は、体外血液処理において理想動作状態又は理想的な処理方法からのずれの原因を検出するためのデバイスによって達成される。体外血液処理では、処理される血液は、半透膜によって血液チャンバと透析液チャンバに再分割された透析器の血液チャンバを通って流れ、透析液循環路内の透析液は、透析器の透析液チャンバを通って流れる。
【0012】
体外血液処理において理想動作状態及び/又は理想処理過程からのずれの原因を検出するためのデバイスは、血液処理中に透析液チャンバの上流の透析液の物理又は化学特性を変更するための手段と、透析液チャンバの下流の透析液の物理又は化学特性を測定するための測定手段と、血液処理中のある時点で測定された物理又は化学特性の変化から透析率又はクリアランスの値を決定するためのデバイスと、理想的、典型的、又は複雑化のない処理過程を表す透析率又はクリアランスの基準値からの透析率又はクリアランスに対して決定された値のずれを検出するためのデバイスと、理想動作状態からのずれの原因をある時点の関数として検出するための評価ユニットとを含む。
【0013】
本発明の教示に従う一態様により、透析率又はクリアランスは、血液処理中に血液チャンバの上流の血液の物理又は化学特性を変更するための手段、血液チャンバの下流の血液の物理又は化学特性を測定するための測定手段、血液処理中のある時点で測定された物理又は化学特性の変化から透析率又はクリアランスの値を決定するためのデバイスといった手段を用いて決定される。
【0014】
本発明の教示により、上述の目的は、更に、体外血液処理において理想動作状態及び/又は理想処理過程からのずれの原因を検出する方法によって達成される。体外血液処理では、体外循環路内で処理される血液は、半透膜によって血液チャンバと透析液チャンバに再分割された透析器の血液チャンバを通って流れ、透析液は、透析液循環路内の透析器の透析液チャンバを通って流れる。本方法は、血液処理中に透析液チャンバの上流の透析液の物理変量又は化学変量を修正する段階と、透析液チャンバの下流の透析液の物理又は化学特性を測定する段階と、血液処理中のある時点で測定された物理又は化学特性の変化から透析率又はクリアランスの値を決定する段階と、理想的、典型的、又は複雑でない処理過程を表す透析率又はクリアランスの基準値からの透析率又はクリアランスの測定値のずれを決定する段階と、血液処理の理想動作状態からのずれの原因を決定された時点の関数として検出する段階とを含む。
【0015】
本発明の教示に従う別の態様により、透析率又はクリアランスは、血液処理中に血液チャンバの上流の血液の物理変量又は化学変量を修正し、血液チャンバの下流の血液の物理又は化学特性を測定し、かつ血液処理中のある時点で測定された物理又は化学特性の変化から透析率又はクリアランスの値を決定することによって決定される。
【0016】
本発明の教示に従う別の態様により、体外血液処理において理想動作状態又は理想処理過程からのずれの原因を検出するための別のデバイスを提供する。この付加的な態様も、体外血液循環路内で処理される血液が、半透膜によって血液チャンバと透析液チャンバに再分割された透析器の血液チャンバを通って流れ、透析液循環路内の透析液が、透析器の透析液チャンバを通って流れる体外血液処理から始まる。
【0017】
体外血液処理において理想動作状態及び/又は理想処理過程からのずれの原因を検出するためのデバイスは、特性変量が、透析液チャンバの上流の透析液中に存在しないか又は無視することができる濃度でしか存在しない物質、例えば尿素の濃度を決定するのに適する透析液チャンバの下流の透析液の物理又は化学特性を測定するための測定手段と、血液処理中のある時点での透析液又は血液中のこの物質の濃度値を決定するためのデバイスと、理想的又は典型的な処理過程を表す濃度の基準値から又は処理中の時間にわたる理想的な濃度プロフィールからの物質の濃度に対して決定された値のずれを検出するためのデバイスと、理想動作状態からのずれの原因をある時点の関数として検出するための評価ユニットとを含む。
【0018】
本発明の付加的な態様により、理想動作状態又は理想処理過程からのずれの原因を検出する方法を提供する。体外血液処理では、体外循環路内で処理される血液は、半透膜によって血液チャンバと透析液チャンバに分割された透析器の血液チャンバを通って流れ、透析液は、透析液循環路内の透析器の透析液チャンバを通って流れる。
【0019】
本方法は、透析液チャンバの上流の透析液中に存在しないか又は無視することができる濃度でしか存在しない尿素のような物質の濃度を決定するのに適する透析液チャンバの下流の透析液の物理又は化学特性を測定する段階と、血液処理中のある時点での透析液又は血液中のこの物質の濃度値を決定する段階と、理想的又は典型的な処理過程を表す濃度の基準値から又は処理中の時間にわたる理想的な濃度プロフィールからの物質の濃度に対して決定された値のずれを検出する段階と、理想動作状態からのずれの原因を決定された時点の関数として検出する段階とを含む。
【0020】
更に、本発明の目的は、請求項11に記載の血液処理デバイス及び請求項22に記載のコンピュータプログラム製品によって表される。有利な実施形態は、従属請求項に特徴付けられている。
【0021】
本発明の付加的な詳細及び利点を図面内に示す例示的な実施形態に基づいてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】理想動作状態からのずれの原因を検出するためのデバイスを有する透析器のブロック図である。
【
図2a】入口及び出口を有する透析器の図及び数学的導出に使用される記号を示す図である。
【
図2b】濃度ボーラスの後の透析器の上流及び下流の測定電解質濃度の経時的過程を示す図である。
【
図3】測定透析率の経時的過程と理想処理過程における経時的透析過程とを示す図である。
【
図4】体外血液処理において理想動作状態からのずれの原因を検出する方法の流れ図である。
【
図5】血液処理の理想動作状態からのずれの原因をある時点の関数として検出する方法の流れ図である。
【
図6】理想動作状態からのずれの原因を検出する方法を実施するための透析機械のネットワークのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、体外血液処理において理想動作状態又は理想処理過程からのずれの原因を検出するための制御及びモニタリングユニット25を有する透析デバイス100を示している。
【0024】
基本的に、透析デバイス100は、血液循環路9と、透析液循環路10と、膜2によって血液循環路9の血液チャンバ3と透析液循環路10の透析液チャンバ4とに分割された透析器1とで構成される。体外血液循環路9は、患者から採取された血液を血液チャンバ3に運ぶ動脈血管路5を有する動脈枝管20からなる。一般的に、動脈枝管20は、例えば、ローラーポンプとして設計することができる血液ポンプ6を含み、制御及び評価ユニット25からの制御線26を通じて制御することができる。血液チャンバ3内で浄化された血液は、静脈枝管21の静脈管路7を通じて患者に戻される。一般的に、静脈管路は、患者に戻す前に血液を脱ガスするための点滴チャンバ8を含む。
【0025】
血液透析濾過処理の場合には、体外血液循環路は、置換液供給源37に接続され、そこから置換液は、静脈置換ポンプ24を用いて静脈置換管路23を通じて点滴チャンバ8に添加することができる(事後希釈)。この添加を行うために、静脈置換ポンプ24は、制御線30を通じて制御ユニット25に接続することができる。追加的又は代替的に、動脈置換管路36を設けることができ、そこを通じて、置換液は、動脈置換ポンプ22を用いて動脈血循環路20に添加することができる(事前希釈)。この添加を制御するために、動脈置換ポンプ22は、制御線29を通じて制御ユニット25に接続することができる。
【0026】
透析液循環路は、透析液供給源11に接続された透析液入口線12を含み、透析液入口線12は、透析液を透析器1の透析液チャンバ4に運ぶ。使用された透析液は、区画13、16を有する透析液出口線を通じてドレイン15内に排出される。透析液循環路内の透析液は、透析液ポンプ14を通過して循環される。バランスチャンバポンプ35は、第1のバランスチャンバ35aを通過して供給される未使用透析液と、第2のバランスチャンバ35bを通過して流れる使用された透析液との間で釣合いを取る。血液透析濾過の場合には、限外濾過ポンプ17が、使用された透析液をバランスチャンバを通り越して排出する。透析濾過ポンプによって汲み出される液の量は、膜2を通過して除去される液の尺度として使用することができる。透析液ポンプ14は、制御及び評価ユニット25によって制御線27を通じて制御することができ、限外濾過ポンプ17は、制御及び評価ユニット25によって制御線28を通じて制御することができる。
【0027】
透析液入口線は、例えば、透析率を決定する電解質の濃度ボーラスを生成することができるボーラス生成手段170を含む。ボーラス生成手段170は、データ線171を通じて制御及び評価ユニット25に接続され、制御及び評価ユニット25は、濃度ボーラスを生成するようにボーラス生成手段をデータ線171を通じて制御することができる。濃度ボーラスは、所定量の濃縮液、例えば、電解質が透析液入口線に添加される正の濃度ボーラス、又は蒸留水のような所定量の透析液が透析液に添加される透析液中の負の濃度ボーラスとすることができる。ボーラス生成手段は、複数の液体ボーラスを連続する時点において発生させるように設計することができる。液体ボーラスの濃度プロフィールは、濃度プロフィールの十分な再現性を保証することができる場合には、濃度ボーラスの実際の使用前の較正段階において決定することができる。代替として、濃度プロフィールは、入口線内で透析液チャンバの上流かつボーラス生成手段170の下流に配置された濃度測定センサ172を用いて、濃度ボーラスの投与中に測定することができる。例えば、濃度測定センサ172として導電率計を使用することができる。濃度測定センサ172は、データ線173によって制御及び評価ユニット25に接続され、制御及び評価ユニット25は、ボーラスの添加中に透析器の上流のボーラス濃度の過程を記録することができ、それを制御及び評価ユニット25の対応するメモリユニット内に記録する。代替的に、較正段階において予め得られた濃度ボーラスに対する基準を制御及び評価ユニット25のメモリユニットに格納することができる。
【0028】
図2bにより詳細に示すように、濃度ボーラスのプロフィールは、濃度ボーラスが透析器1の透析液チャンバ4を通過するときに変化する。透析液チャンバ4を通過した透析液の濃度ボーラスは、透析液の出口線内で透析液チャンバ4の下流に配置された濃度測定センサ174を用いて測定することができる。濃度測定センサ174は、導電率センサとして設計することができ、データ線179によって制御及び評価ユニット25に接続され、制御及び評価ユニット25は、ボーラスの添加後の透析器の下流のボーラス濃度の過程を対応するメモリユニット内に記録することができる。透析器の上流のボーラス濃度と透析器の下流のボーラス濃度との比較から、制御及び評価ユニット25は、濃縮液又は電解質の透析率を決定することができ、それによって
図2a及び
図2bに関して以下に記載する方式を用いて間接的にクリアランスも決定することができる。
【0029】
有利な実施形態において、透析デバイス1は、温度ボーラスに基づく再循環を決定するための測定手段を含む。この場合、再循環は、静脈管路を通って患者に戻った添加血液の動脈管路への帰還を意味すると理解されなければならない。再循環を決定するためのそのような測定手段は、一般的に、制御線181を通じて制御及び評価ユニット25に接続された透析液入口線12内に温度ボーラスを生成するためのボーラス生成手段180を含む。透析液入口線内の温度ボーラスは、透析器1によって血液循環路9に伝達され、そこで、データ線253を通じて制御及び評価ユニット25に接続された温度センサ251を用いて測定することができる。静脈管路21内の温度ボーラスは、患者の身体内の再循環経路に沿って伝播し、その後に、動脈血管路20内で動脈温度センサ252によって測定することができる。動脈温度センサ252の測定結果は、データ線254を通じて制御及び評価ユニット25に伝達することができる。
【0030】
動脈管上で測定された温度ボーラスと静脈管上で測定されたものとを比較することにより、静脈管路7を通じて動脈側に戻った血液の再循環を決定することができる。対応する方法は、国際公開第2006/072271号に開示されており、本特許出願の開示内容に明示的に含まれている。上述の好ましい実施形態において、制御及び評価ユニット25は、この測定方法を実施するように構成される。
【0031】
別の好ましい実施形態において、透析デバイス1は、半透膜の凝固栓を決定するための測定手段を含む。従って、透析デバイス1は、透析液循環路内に第1の音ピックアップ器34を有し、体外血液循環路内に第2の音ピックアップ器33を有する。第1及び第2のピックアップ器は、圧力パルス発生手段によって透析液循環路又は血液循環路内に発生された圧力パルスをピックアップするのに適している。血液循環路内の圧力パルス発生手段は、例えば、血液ポンプ6であり、透析液循環路内の圧力パルス発生手段は、例えば、透析液ポンプ14又は限外濾過ポンプ17であると考えられる。
【0032】
第1及び第2の音ピックアップ器33及び34によって記録された圧力パルスを比較することにより、透析器内での音波の減衰を決定し、それによって透析器膜による音減衰を推測することができる。それは、次に、膜の流れ抵抗、膜孔隙の状態、及び起こり得る膜の凝固栓に関する推測を可能にする。
【0033】
透析液枝管内の圧力測定値と体外血液循環路内の圧力測定値とを比較することによって透析器膜の状態を決定するためのそのような方法は、国際公開第2008/135193号に開示されており、本特許出願の開示内容に明示的に含まれている。
【0034】
圧力センサ33及び34は、データ線35c及び/又は36aを通じて制御及び評価ユニット25に接続され、制御及び評価ユニット25は、透析器内での音の減衰の決定のための及び膜孔隙の凝固栓を決定するための対応する評価を実施する。
【0035】
透析液ポンプ14は、閉塞ポンプとして設計される場合に、圧力パルス発生手段として特に適している。この場合、透析液ポンプ14は、一連の圧力パルス又は振動パルスを発生させる。これらの振動パルスは、体外血液循環路側で音ピックアップ器33を用いてピックアップされ、データ線35cを通じて制御及び評価ユニット25に伝達され、そこで評価することができる。
【0036】
血液ポンプ6によって発生された圧力パルスは、動脈血管路を通じて透析器1の血液チャンバ3へ、更にそこから透析器1の膜2を通って透析液循環路に伝達され、そこで音ピックアップ器34を用いてピックアップされ、データ線36aを通じて制御及び評価ユニットに伝達され、その後に評価することができる。
【0037】
この評価は、例えば、圧力センサ33によってピックアップされた信号及びセンサ34によってピックアップされた信号に対してスペクトル解析を施し、圧力センサ33によってピックアップされた信号のスペクトルと圧力センサ34によってピックアップされた信号のスペクトルとを互いに比較することによって実施することができる。それを行うために、制御及び評価ユニットは、圧力センサ33からの信号及び圧力センサ34からの信号をそのスペクトル成分に分解するフーリエ解析デバイスを含むことができる。圧力センサ33の信号の振幅スペクトルと圧力センサ34の信号の振幅スペクトルの比較は、透析器膜2による振動パルスの周波数依存の減衰に関する推測を可能にする。この減衰が、実験的に決定することができる閾値よりも大きい場合には、透析器膜が2次膜で覆われている、すなわち、いわゆる凝固栓が発生したと結論付けることが可能になる。
【0038】
図2aは、膜2によって血液循環路の血液チャンバ3から分離された透析液循環路の透析液チャンバ4を有する透析器1を示している。透析液流を略記号QDを用いて表し、血液流を略記号QBを用いて表し、cBiは、血液入口におけるある一定の電解液の濃縮液の濃度であり、cBoは、対応する血液出口の濃度であり、cDiは、透析液入口における透析液中の濃縮液、例えば、ある一定の電解液の濃度であり、cDoは、透析液出口における透析液中の対応する濃度である。
【0039】
図2bは、透析液の入口及び出口の濃度cDi及びcDoの変化の過程を時間の関数として示している。この濃縮液ボーラスは、透析器の出口において時間の遅れを伴って現れることが明確に分る。濃縮液ボーラスの振幅は、透析器の入口よりも透析器の出口において低い。濃縮液ボーラスの基本濃度に帰することができない部分のみが考慮されることになる。透析器の入口側の基本濃度をcDi(0)で表し、透析器の出口側の基本濃度をcDo(0)で表している。透析器の入口側の濃縮液の合計濃度をcDi(1)で表し、透析器の出口側の濃縮液の合計濃度をcDo(1)で表している。濃縮液ボーラスのうちで考慮される部分、すなわち、基本濃度に帰することができない部分を透析器の入口側でdcDiで表し、透析器の出口側でdcDoで表している。基本濃度を決定するために、ボーラスの上流及び/又は下流の測定値を使用することができる。制御及び評価ユニット190は、透析器の上流又は下流での時間の関数としての透析液濃度及び透析液速度QDのプロットから次式に従って2つの変量ΔMi及びΔMoを計算する計算ユニットを有する。
【数1】
【0040】
変量ΔMi及びΔMoから次式(3)に従って透析率Dが計算される。
【数2】
【0041】
透析処理中に、制御及び評価ユニット190は、ある一定の期間、例えば、20〜30分の期間で透析率又はクリアランスを決定するための測定を連続して実施する。
【0042】
図3は、透析処理の理想的又は複雑でない過程、透析の理想的な過程を有する透析の過程Di(t)を透析処理の開始時点に関連する時間の関数として示している。経時的な理想的なシーケンスは、複雑でない以前の処理からの平均を取ることにより、又は進行中の処理の処理パラメータを考慮した係数又は百分率だけ補正又は補償された複雑でない過去の処理からの平均を取ることによってもたらすことができる。進行中の処理のそのようなパラメータは、例えば、瞬間血流量、瞬間透析液流量、瞬間限外濾過速度、置換液の流量、置換液が添加される場所、すなわち、予備希釈又は事後希釈の場所、透析器のタイプ、又は順流動作又は逆流動作におけるコネクタの接続を含むことができる。
【0043】
従って、例えば、既知の処理パラメータから始めて、クリアランスの理論的推定値を与えることができ、次に、経時的な透析の過程をこの理論的なクリアランス推定値に対して正規化することができる。
【0044】
経時的にプロットされた理想的な過程に従う透析処理中の透析率変化は、ポンプセグメントの経年変化、膜上への堆積及び膜の汚染、並びに限外濾過、制限のある再充填、及び心肺再循環に起因する血液の水分含有量の変化のようなある一定の患者の各透析処理において基本的に同じものである再現性のある効果を表している。この場合、ポンプセグメントの経年変化は、ローラーポンプによって作用される力によるものである。膜上での堆積は、たんぱく質の堆積又は2次層の形成(いわゆる2次層堆積)とすることができる。血液のヘマトクリット値及び全たんぱく質含有量の増加は、血中水分量の低下及び測定透析率又は測定クリアランスの低下をもたらす。ヘマトクリット値の増加は低血圧ももたらし、次に、低血圧は、低い心拍出力をもたらす。これは、次に、高い心肺再循環をもたらす。
【0045】
Da(t)は、進行中の透析処理中に透析処理の開始後の異なる時点において決定される透析率又はクリアランスの測定値を表している。時点toにおいて、現在測定中の透析率又はクリアランスは、透析率の理想的な曲線と比較される。有意なずれが見つかった場合には、有意なずれが検出された時点toが現在の処理セグメントに割り当てられる。それを行うために、時間軸は、様々な処理セグメント、すなわち、この図では、第1、第2、及び第3の処理セグメントti1、ti2、及びti3に分割される。この図は、第2の処理セグメントti2への時点toの割り当てを示している。第1、第2、及び第3の処理セグメントの意味を下記で
図5の説明に関してより詳細に説明する。
【0046】
透析の理想的又は複雑でない過程Di(t)と進行中の透析処理中の値Da(t)の両方が、それぞれの処理パラメータを考慮したクリアランスの理論値に対して正規化される場合には、進行中の処理の処理パラメータからずれた処理パラメータの下でDi(t)が決定された場合に、Di(t)を値Da(t)と比較することができる。
【0047】
従って、物質移動係数KoAから始めて、クリアランスの理論的推定値又は理論値K
HDに対して、血液濾過の場合の透析器内の透析液の流量Q
Di及び透析器内の血液水分流量Q
Biに関する次式を与えることができる。
【数3】
【0048】
血液透析濾過の場合には、クリアランスの理論推定値又は理論値K
HDFに対して、透析器からの透析液流量Q
Do、透析器からの血液水分流量、及び透析器膜を通じて回収される超濾過量の割合Q
Fが追加で考慮されなければならない。
【0049】
以下の補助変量:
【数4】
が定められた場合に、限外濾過の場合にクリアランスの場合に対して以下の理論推定値又は以下の理論値K
HDFを与えることができる。
【数5】
【0050】
血液透析におけるクリアランスに対する理論推定値又は理論値K
HD又は血液濾過におけるクリアランスに対する理論推定値又は理論値K
HDFを用いて、透析の理想的又は複雑でない過程Di(t)、並びに進行中の処理中に測定される透析の過程Da(t)を理論クリアランスK
HD及び/又はK
HDFに対して正規化することができる。
【0051】
進行中の処理中に測定される透析率Da(t)において有意なずれが存在するか否かの決定は、以下の方式で実施することができる。
【0052】
現在の処理の処理パラメータが過去の複雑でない処理からずれる場合には、最初に理想的で複雑でない処理に対して、理論的クリアランスと測定された透析率又はクリアランスとの間のずれ:
(血液透析の場合)又は
(血液濾過の場合)の正規化値が計算される。付加的な段階として、現在の処理に対して、理論的クリアランスと測定透析率:
又は
の間の正規化ずれが計算される。
【0053】
現在のずれが、理想的で複雑でないずれと大きく異なり、例えば、10%よりも大きく異なる場合に(例えば、
)、問題の存在が結論付けられる。
【0054】
図4は、体外血液処理における理想動作状態からのずれを検出する方法M1を示している。理想動作状態は、複雑化又は特殊イベントが発生しない処理過程に対応する。
【0055】
段階S1では、透析液チャンバの上流の透析液の物理又は化学特性が修正される。これらの物理変量又は化学変量は、透析液チャンバの上流の透析液中の電解質濃度とすることができる。電解質濃度は、透析液に所定量の濃縮液又は電解質を添加することにより、又は所定量の電解質を用いた透析液の調製から得ることができる。決定される電解質に対して、電解質濃度と、導電率と、任意的に付加的な電解質の濃度との間の比が既知である場合には、上記によって生成される濃度ボーラスを経時的なその過程の中で導電率測定を用いて測定することができる。
【0056】
第2の段階では、透析器の下流の濃度プロフィールを決定するために、透析液チャンバの下流において、透析液の物理又は化学特性が、経時的なその過程の中で決定される。電解質濃度を物理又は化学特性とする場合には、この決定は、透析液循環路内で透析器の下流に置かれた導電率セルを用いて行うことができる。
【0057】
第3の段階S3では、ある時点で測定された物理変量の変化から透析率又はクリアランスが決定される。例えば、透析率又はクリアランスは、濃度ボーラスと、経時的な物理又は化学特性の過程とで決定することができる。この決定は、ボーラスプロフィールと、例えば、
図2a及び
図2bの方式を用いて透析器の下流で測定される濃度プロフィールとを比較することによって行うことができる。この場合、透析率又はクリアランスが決定される時点は、測定間隔の範囲のいずれかの望ましい所定の点とすることができる。
【0058】
次に、第4の段階S4において、理想的又は複雑でない処理過程を表す透析率又はクリアランスの所定の基準値からの透析率又はクリアランスのある一定の値のずれが決定される。
【0059】
第4の段階は、こうして見出されたずれが有意なずれであるか否かを決定する段階を含む。ずれは、測定された透析率又はクリアランスが、理想処理過程に対応する透析率又はクリアランスよりも高い又は低いようなものとすることができ、ずれが有意なずれに対応するか否かは、測定されたクリアランス又は透析率と理想的なクリアランス又は透析率との間でこうして求められた差を所定の閾値と比較するか又はこの差を相対百分率又は正規化ずれとして比較することによって決定することができる。ずれが所定の閾値よりも低い場合には、存在するずれは、重要度の低いずれと分類される。ずれが所定の閾値よりも高い場合には、このずれは、有意なずれと分類される。有意なずれは、例えば、所定の閾値を10%よりも大きく超えるか又は下回り、又は所定の閾値を15%よりも大きく超えるか又は下回るずれとすることができる。百分率ずれの関数としての透析率又はクリアランスは、ずれが有意である百分率が処理段階の関数として決定されるように、有意として分類することができる。
【0060】
ずれが有意な場合には、透析機械上にエラーメッセージを表示することができ、透析率又はクリアランスにおける有意なずれが報告される。代替的又は追加的に、例えば、患者データベース内の患者データ記録内に有意なずれを記録することができる。
【0061】
基準値からの有意なずれが存在するか否かの発見は、処理過程中に相対的なずれが決定されるように行うことができる。この決定は、以前に決定されたずれが基準値「から計算」され、有意なずれが存在するか否かの決定において、以前に既に決定されているずれと比較して更に別のずれのみが考慮されるように行うことができる。
【0062】
ずれが有意な場合には、第6の段階S5において、ずれの原因は、決定された時間の関数として検出される。この検出を行うために、透析率又はクリアランスが以前に決定された時間、及び従って経時的な理想的な過程からの透析率又はクリアランスのずれをある一定の処理段階に割り当てることができる時間、及び理想処理過程からのずれの原因は、ある一定の処理段階の関数として認識することができる。言い換えれば、理想処理過程からのずれの原因をある一定の処理段階に割り当てることができる。割り当ては、例えば、対応する原因に対する確率を示すことによってファジーな方式で行うこともできる。透析器の理想処理過程又は理想動作状態からのずれの原因は、可能な原因のある一定の群を含み、この場合、割り当ては原因群に対して行われることも理解されなければならない。理想処理過程からのずれの原因は、ユーザに対するエラーメッセージ内の独立したエラーメッセージとして、又は透析率又はクリアランスのずれを示すエラーメッセージと共に、そのいずれかで表示することができる。代替的又は追加的に、ずれの原因は、患者のデータ記録、例えば、患者データベース内の患者データ記録に格納することができる。
【0063】
処理段階における時点を原因に割り当てる1つの方法を
図5と関連して以下に記載する。
【0064】
図5は、血液処理の理想動作状態からのずれの原因をクリアランス又は透析率が透析器の理想処理過程又は理想動作状態を表す基準値と大きく異なる時点の関数として検出する方法S5を示している。方法S5は、例えば、
図1に記載の測定及び制御デバイス25によって実施することができる。
【0065】
第1の段階S51では、以前に決定された透析率又はクリアランスの値が基準値からずれる時点toが指定される。
【0066】
この時点は、規則的な時点tiにおいて複数の透析率測定を実施し、透析率に対してそうして得られた測定値をそれぞれの時点tiに対応する基準値と比較することによって決定することができる。基準値からの有意なずれが見つかった場合には、その測定時点tiが処理段階に割り当てられる。
【0067】
代替として、各処理段階内の所定の時点での透析率は、測定時点と処理段階の間の割り当てが所定のものであるように測定することができる。
【0068】
第2の段階S511では、時点toがある一定の処理段階、すなわち、この例では第1、第2、又は第3の処理段階S52、S54、又はS56に割り当てられる。
【0069】
第1の処理段階は、一般的に処理の開始時のものである。有利な実施形態において、第1の処理段階は、処理の開始時間と処理の開始時間後30分との間の期間である。
【0070】
段階S52において、測定時点tiが第1の処理段階内にあると認識された場合には、段階S53において、透析器のコネクタの不正な位置決め、又は血管アクセス内の流れ方向に対する針の不正な位置決めを理想処理過程又は理想動作状態からのずれの原因として認識することができる。これらの原因は、理想処理過程からのずれに対するオペレータ関連の原因群に属するものとして要約することができる。針又は血管アクセスの不正な位置決めが、処理の開始時にエラーメッセージによってオペレータに表示される場合には、処理のこの早期の時点では、オペレータは、依然として処理を中断して不正な位置決めを補正する可能性を有する。有意なものとしての透析率又はクリアランスの分類が百分率ずれの関数として行われ、百分率が処理段階の関数として与えられる場合には、所定の基準値を10%よりも大きく超えるか又は下回るずれが、第1の処理段階に適切であることが見出されている。
【0071】
透析器のコネクタが切り換えられた場合に、透析液は、必要に応じて血液の誘導と逆流ではなく並流で動作される。クリアランスに関する数学的関係は両方の場合に公知である(例えば、J.Maher(編集)「Replacement of Renal Function by Dialysis(透析による腎機能の置換)」、Kluwer、1989年、第3版におけるJ.Sargent及びF.Gotch著「Principles and Biophysics of Dialysis(透析の原理及び生物物理学)」)。
【0072】
例えば、血液濾過及び透析器の逆流動作の場合の物質移動係数KoA、透析器内の透析液の流量Q
Di、及び透析器内の血液水分流量Q
Diから始めて、クリアランスの理論推定値又は理論値K
HDcounterに対して次式を与えることができる。
【数6】
【0073】
透析器内の透析液の流量Q
Di及び透析器内の血液水分流量Q
Biにおける同じ透析器のクリアランスK
HDcocurrに対して、次式が並流動作に対して成り立つ。
【数7】
【0074】
これらのクリアランスの間で予想される正規化されたずれΔ
cocurrentを濾過器の既知のkOA値、血液流Q
B、及び透析液流Q
Dを用いて計算することができる。
【数8】
【0075】
従って、例えば、300mL/分の血液流量及び500mLの透析液流の場合の本出願人によるFX80透析器では、ずれは32%であり、すなわち、コネクタが切り換えられた場合に、クリアランスは、逆流において予想される値よりも32%低い。ずれは、他の点では同一条件で、800mL/分のQ
Dで24%である。測定されたクリアランスと逆流において予想されるクリアランスの間のずれが並流において予想される範囲にある場合には、透析器の結合の切り換えが外乱の原因であると推定することができる。
【0076】
S54において、測定時点tiが第2の処理段階内にあることが認識された場合には、段階S55において、再循環が理想処理過程又は理想動作状態からのずれの原因として認識される。
【0077】
典型的には、第2の処理段階は、中間処理段階、すなわち、処理開始後60分の期間、例えば、処理開始後約30〜90分、処理開始後約45〜75分、又は処理開始後約55〜65分を含む処理の中間における処理段階である。有利な態様では、第2の処理段階は、圧力保持試験が既に実施された時点の後にくる。有意なものとしての透析率又はクリアランスの分類が百分率ずれの関数として行われることになり、かつ百分率が処理段階の関数として与えられる場合には、所定の処理段階を15%よりも大きく超えるか又は下回るずれは、第2の処理段階に好都合であることが見出されている。
【0078】
第2の処理段階は、(相対的な)血液容量が通常水和状態の近くにあり、かつ血液チューブのセットの経年変化が、最適と示される血流が実際の血流に対応する範囲にあるように選択することができる。処理のこの時点では、典型的には、膜の凝固栓は依然として発生していない。
【0079】
圧力保持試験が実施された時点の後に処理段階が選択される場合には、2次膜の形成の影響を除外することができる可能性が高い。
【0080】
この処理段階では理想処理過程からのずれに対する他の原因も除外することができる可能性が高いので、この処理段階は、理想処理過程からのずれの原因として再循環を検出するのに特に適している。
【0081】
血液温度モニタを用いた再循環測定をトリガする段階551は、再循環が理想動作状態からのずれの原因であることを検出する段階55に先行することができる。血液温度モニタを用いた再循環測定では、最初に透析器の下流の体外血液循環路の静脈枝管内の血液の温度変化がトリガされ、次に、透析器の上流の体外循環路の動脈枝管内で温度が測定される。静脈枝管内の事前温度変化に起因する動脈枝管内の温度変化は、再循環の決定における基準として使用することができる。
【0082】
この場合、血液温度モニタを用いたこの再循環測定は、クリアランスの測定とは独立した第2の測定方法であり、再循環が血液処理の理想動作状態からのずれの原因であるか否かを確認するために使用することができる。
【0083】
段階S56において測定時点tiが第3の処理段階内にあることが検出された場合には、有利な実施形態において、最初に、膜に対して垂直な圧力パルスの減衰の測定が実施される暫定段階S57が実施される。この測定を行うために、体外循環路内の圧力源の影響、例えば、体外循環路内の圧力ピックアップ器に対するポンプの影響を透析液循環路内の影響と比較することができる。この比較を行うために、
図1に関して詳細に説明したように、透析液循環路内の圧力ピックアップ器によってピックアップされた信号をその周波数スペクトルに分解し、体外血液循環路内の圧力ピックアップ器によってピックアップされた信号の周波数スペクトルと比較することができる。
【0084】
減衰測定値が、基準値と比較して高い圧力パルス減衰をもたらした場合には、段階S56の直後の段階S58において、透析器の半透膜の凝固栓が発生したことが認識される。
【0085】
第3の処理段階は、典型的には、第2の処理段階の終了点から処理の終了点まで延長され、すなわち、処理の開始後約65分から処理の終了点まで、処理の開始後約75分から処理の終了点まで、処理の開始後約65分から処理の終了点まで、又は処理の開始後約60分から処理の終了点まで延長される。
【0086】
第3の処理段階の場合に、基準値からの有意なずれが存在するか否かの発見は、有利な態様では、処理過程中の相対的なずれが決定されるように行うことができる。この決定は、第2の処理段階において決定される基準値からのずれが「計算」されて既存の再循環が考慮され、有意なずれが存在するか否かの決定において、以前に既に決定されているずれと比較して別のずれのみが考慮されるように行うことができる。この付加的なずれは、このずれを半透膜の凝固栓に帰することができることを意味することは理解されなければならない。
【0087】
図6は、ネットワーク601によって互いに連結され、かつ中央コンピュータ602に接続されたいくつかの透析機械600を示している。透析機械600は、その設計において
図1の透析デバイス100に対応する。中央コンピュータ602は、
図1の制御及び評価ユニット25の機能又はその一部を含む評価モジュール603に接続される。特に、評価モジュール603は、透析機械600のアクチュエータ及びセンサを制御し、
図4に示す方法及び/又は
図5に示す方法を実施するのに適している。
【符号の説明】
【0088】
M1 体外血液処理中の理想動作状態からのずれの原因を識別する方法
S1 透析液チャンバの上流の透析液の物理パラメータ又は化学パラメータを変更する段階
S2 透析液チャンバの下流の透析液の物理パラメータ又は化学パラメータを測定する段階
S3 指定された時点で測定された物理パラメータ又は化学パラメータの変化から透析率又はクリアランスの値を決定する段階
S4 決定された透析率又はクリアランスの値の透析率又はクリアランスに対する基準値からのずれを計算する段階