(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
発電機と直流電力を送電する直流送電部とを接続する電力変換器が、前記発電機からの前記直流送電部による送電を中止すべき不具合を検出した場合に、前記電力変換器が前記発電機から受け入れる有効電力の設定値を低下させて生じる、前記発電機へ入力されるトルクと前記発電機が出力する有効電力とのバランスの崩れに起因する事象を検出する事象検出部と、
前記事象検出部が前記バランスの崩れに起因する事象を検出した場合、前記発電機へ入力される前記トルクを出力する原動機に対するトルク指令を低下させるトルク指令低下部と、を備え、
前記発電機と前記電力変換器との間には、前記発電機からの電力を直流電力にて通電させる直流バスが設けられており、
前記事象検出部は、前記バランスの崩れに起因する事象として、前記直流バスにおける電圧の上昇を検出する発電制御装置。
前記事象検出部は、前記バランスの崩れに起因する事象として、前記発電機の回転数の増加または前記発電機が接続された電力系統の周波数の増加の少なくともいずれかを示す事象を検出する、請求項1に記載の発電制御装置。
前記事象検出部は、前記バランスの崩れに起因する事象として、前記発電機からの有効電力と前記原動機に対するトルク指令との偏差の増加を検出する、請求項1または請求項2に記載の発電制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0018】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態における発送電システムの機能構成を示す概略ブロック図である。同図において、発送電システム1は、風車10と、交流母線20と、変圧器30と、風車側電力変換器41と、風車側変換器制御装置42と、直流送電部50と、半導体スイッチ61と、制動抵抗62と、系統側電力変換器71と、系統側変換器制御装置72と変圧器80と、発電制御装置100とを備える。風車10は、翼11と、油圧ポンプ12と、アキュムレータ13と、油圧モータ14と、同期発電機15と、変圧器16とを備える。
また、発送電システム1は、変圧器80にて電力系統90と接続されている。
なお、後述するように、発送電システム1が半導体スイッチ61と制動抵抗62とを備えない構成となる場合もある。
【0019】
なお、発送電システム1が備える風車の数は2つに限らず1つ以上であればよい。
また、本実施形態における発電設備は風車に限らない。例えば、発送電システム1が、火力発電設備または水力発電設備など風車以外の発電設備を備えていてもよい。また、発送電システム1が、風車と火力発電設備とを備えるなど、複数種類の発電設備を備えていてもよい。
【0020】
風車10は、風力を受けて発電し、発電した電力を、直流送電部50を介して電力系統90へ供給する。風車10は、例えば海洋に設置される洋上風車である。但し、風車10の設置場所は洋上に限らず陸上であってもよい。
風車10において、翼11が受ける風力エネルギーによって油圧ポンプ12が駆動され、油圧ポンプ12によって油圧モータ14が駆動され、油圧モータ14からの機械的エネルギーによって同期発電機15が駆動される。すなわち、翼11が風力を受けて回転すると、翼11からの回転エネルギーによって油圧ポンプ12が駆動され、油圧を生じさせる。油圧ポンプ12からの油圧により油圧モータ14が駆動されて同期発電機15のロータを回転させ、この回転エネルギーにより同期発電機15が交流電力を発電する。なお、アキュムレータ13には油圧伝達用の油が蓄えられている。このように、本実施形態では、風車10が油圧駆動により同期発電機15を動作させる場合を例に説明している。
【0021】
翼11と、油圧ポンプ12と、アキュムレータ13と、油圧モータ14との組み合わせは原動機の例に該当し、同期発電機15へ入力されるトルク(機械トルク)を出力することで、同期発電機15のロータを回転駆動させる。
ここでいう原動機は、自然界に存在するエネルギーを機械的エネルギーに変換する機器である。ここでいう自然界に存在するエネルギーは、様々なエネルギーであってよい。例えば、自然界に存在するエネルギーは、石炭または石油などの燃料による熱エネルギーであってもよいし、地熱または太陽熱などの熱エネルギーであってもよいし、太陽光などの光エネルギーであってもよいし、風力または水力などの運動エネルギーまたは位置エネルギーであってもよい。本実施形態では、自然界に存在するエネルギーが風力である場合を例に説明する。
同期発電機15が発電した電力に対し、変圧器16が交流母線20の電圧への変圧を行って交流母線20へ出力する。
交流母線20は、風車10の各々から出力される電力を変圧器30へ伝送する。
【0022】
変圧器30は、交流母線20からの電力に対して電圧変換を行って風車側電力変換器41へ出力する。
風車側電力変換器41は、発電機と直流電力を送電する直流送電部とを接続し、変圧器30からの電力(交流電力)を直流電力に変換して直流送電部50へ出力する。
【0023】
風車側変換器制御装置42は、風車側電力変換器41による電力変換を制御する。特に、風車側変換器制御装置42は、例えば電力系統90との連系点における事故など、直流送電部50による送電を中止すべき不具合を検出した場合、風車側電力変換器41が同期発電機15から受け入れる有効電力の設定値(有効電力指令)を低下させる。
【0024】
例えば、風車側変換器制御装置42は、直流送電部50から電力系統90へ電力を出力できないことにより、直流送電部50の電圧が所定の閾値以上に上昇したことを検出すると、風車側電力変換器41が同期発電機15から受け入れる有効電力の設定値を低下させる。なお、ここでの低下には遮断(0にすること)も含まれる。従って、風車側変換器制御装置42が、風車側電力変換器41に、同期発電機15から受け入れる有効電力を遮断させるようにしてもよいし、当該有効電力を0よりも大きい値に低減させるようにしてもよい。以下では、風車側変換器制御装置42が、風車側電力変換器41に、同期発電機15から受け入れる有効電力を遮断させる場合を例に説明する。
【0025】
図2は、風車側変換器制御装置42の機能構成を示す概略ブロック図である。同図において、風車側変換器制御装置42は、電圧制御部421と、遮断時指令出力部422と、事象検出部423と、指令切替部424と、電流制御部425とを備える。
電圧制御部421は、通常時における電流制御部425への電流指令を出力する。電圧制御部421が出力する電流指令は、洋上の交流電圧・周波数を一定にするように生成される。通常時において、風車側電力変換器41は、この電流指令に基づいて電流制御部425で制御された電圧指令に基づいて制御される。すなわち、電流制御部425は、風車側電力変換器41の電流値が電圧制御部421の電流指令値になるように電圧指令を生成し、該電圧指令を風車側電力変換器41に出力する。
遮断時指令出力部422は、異常時(直流送電部50による送電を中止すべき不具合発生時)における指令として、有効電力を遮断する指令(すなわち、風車側電力変換器41が受け入れる有効電力を0にする指令)または低下させる指令を出力する。なお、風車側電力変換器41が受け入れる有効電力を0にする場合は、風車側電力変換器41を停止することでも実現可能である。
【0026】
事象検出部423は、直流送電部50による送電を中止すべき不具合の発生を検出する。例えば、事象検出部423は、直流送電部50の電圧が所定の閾値以上に上昇したことを検出することにより、直流送電部50による送電を中止すべき不具合の発生を検出する。
但し、事象検出部423が、直流送電部50による送電を中止すべき不具合を検出する方法は、直流送電部50の電圧上昇を検出する方法に限らない。例えば、事象検出部423が通信により不具合発生の通知を受けるようにしてもよい。
【0027】
指令切替部424は、風車側電力変換器41に対する指令の切替を行う。具体的には、事象検出部423が、直流送電部50の電圧が所定の閾値以上に上昇したことを検出していない状態では、指令切替部424は、電圧制御部421からの電流指令を風車側電力変換器41へ出力する。一方、事象検出部423が、直流送電部50の電圧が所定の閾値以上に上昇したことを検出している状態では、指令切替部424は、遮断時指令出力部422からの電流指令を風車側電力変換器41へ出力する。
【0028】
直流送電部50は、風車側電力変換器41から出力される電力を直流電力にて系統側電力変換器71へ送電する。
制動抵抗62は、事故発生時に余剰電力を消費させるための電気抵抗である。
半導体スイッチ61は、通常時は開状態(オフ)になっており、電流を流さない。一方、事故発生時に余剰電力が生じると、半導体スイッチ61は、閉状態(オン)になって制動抵抗62に電流を流し、余剰電力を半導体スイッチ61に消費させる。
【0029】
系統側電力変換器71は、直流送電部50からの直流出力を交流電力に変換して変圧器80へ出力する。
系統側変換器制御装置72は、系統側電力変換器71による電力変換を制御する。
変圧器80は、系統側電力変換器71からの電力に対し電力系統90の電圧への変圧を行って電力系統90へ出力する。
電力系統90は、電力会社の電力系統であり、各発電設備からの電力を送電する。
【0030】
発電制御装置100は、油圧モータ14のトルク(油圧モータ14が同期発電機15へ出力するトルク)を制御する。特に、発電制御装置100は、事故発生時に、油圧モータ14に対するトルク指令(油圧モータ14に出力させるトルクの指令)を低下させる。これにより、発電制御装置100は、同期発電機14による発電を制御する。
なお、ここでの低下には遮断(0にすること)も含まれる。従って、発電制御装置100が、油圧モータ14から同期発電機15へのトルクの遮断を指令するようにしてもよいし、当該トルクを0よりも大きい値に低減させる指令を行うようにしてもよい。以下では、発電制御装置100が、油圧モータ14から同期発電機15へのトルクの遮断を指令する場合を例に説明する。
ここで、油圧モータ14に対するトルク指令に同期発電機15の回転数を乗算すると、同期発電機15に対する有効電力指令に等しくなる。このように、有効電力指令とトルク指令とを読み替えることができる。
【0031】
図3は、発電制御装置100の機能構成を示す概略ブロック図である。同図において、発電制御装置100は、翼ピッチ制御部110と、ポンプ制御部120と、モータ制御部130と、発電機制御部140とを備える。モータ制御部130は、トルク制御部131と、遮断時指令出力部132と、事象検出部133と、指令切替部134とを備える。
翼ピッチ制御部110は、翼11のピッチ(翼11の角度)を制御する。
ポンプ制御部120は、油圧ポンプ12を制御する。
【0032】
モータ制御部130は、油圧モータ14を制御する。
トルク制御部131は、通常時における油圧モータ14に対するトルク指令を生成する。通常時において、油圧モータ14は、トルク制御部131が出力する指令値(トルク指令)のトルクを同期発電機15へ出力するよう動作する。
遮断時指令出力部132は、異常時における油圧モータ14へのトルク指令として、トルクの指令値0を出力する。異常時において、油圧モータ14は、遮断時指令出力部132が出力する指令値0に基づいて、油圧モータ14から同期発電機15へのトルクの出力を遮断する。
【0033】
事象検出部133は、風車側電力変換器41が同期発電機15から受け入れる有効電力の設定値を低下させて生じる、同期発電機15への入力トルクと同期発電機15が出力する有効電力とのバランスの崩れに起因する事象を検出する。具体的には、風車側電力変換器41が同期発電機15から受け入れる有効電力の設定値を低下させることで、同期発電機15への入力トルクが、同期発電機15が出力する有効電力に対して過剰になる。これにより同期発電機15の回転数、および、同期発電機15が接続された電力系統の周波数が上昇し、事象検出部133は、この回転数が所定の閾値以上になったことを検出する。あるいは、事象検出部133が、同期発電機15が接続された電力系統の周波数が所定の閾値以上になったことを検出するようにしてもよい。
【0034】
指令切替部134は、油圧モータ14に対する指令の切替を行う。具体的には、事象検出部133が、同期発電機15が接続された電力系統の周波数が所定の閾値以上になったことを検出していない状態では、指令切替部134は、トルク制御部131からの指令を油圧モータ14へ出力する。一方、事象検出部133が、同期発電機15が接続された電力系統の周波数が所定の閾値以上になったことを検出している状態では、指令切替部134は、遮断時指令出力部132からの指令を油圧モータ14へ出力する。
【0035】
このように、モータ制御部130は、事象検出部133が、同期発電機15が接続された電力系統の周波数が所定の閾値以上になったことを検出すると、油圧モータ14への入力トルク指令を低下させる。油圧モータ14からの機械トルクを抑制することで、トルクの余剰による同期発電機15の回転数上昇を回避するためである。
発電機制御部140は、同期発電機15を制御する。
【0036】
次に、
図4を参照して発送電システム1の動作について説明する。
図4は、事故発生時に発送電システム1が行う処理の例を示す図である。
通常時においては、風車側電力変換器41は、風車10と風車側電力変換器41との間の交流電圧および周波数が一定になるよう制御している。
【0037】
一方、例えば電力系統との連系点で系統事故が発生するなど(ステップS101)、電力系統への送電ができなくなると(ステップS102)、直流送電部50の電力が過剰となり直流送電部50の電圧が上昇する(ステップS103)。
風車側電力変換器41は、直流送電部50の電圧が所定の閾値以上に上昇したことを検知すると(ステップS104)、風車側電力変換器41が風車10から受け入れる有効電力の設定値を低下させる(ステップS105)。これにより、同期発電機15への入力トルクが、同期発電機15が出力する有効電力に対して過剰になることで(ステップS106)、同期発電機15の回転数が上昇する(ステップS107)。同期発電機15の回転数の上昇に伴い、発電の周波数(洋上系統周波数)も上昇する。ここでいう洋上系統は、風車10から風車側電力変換器41までの電力系統である。
【0038】
発電制御装置100において事象検出部133が、発電機回転数(または洋上系統周波数)を常時監視し、発電機回転数(または洋上系統周波数)が所定の閾値(例えば定格回転数の110パーセント(%))を超えたことを検出する(ステップS108)。すると、指令切替部134が、油圧モータ14への入力トルク指令を遮断する(ステップS109)。
余剰となったトルクは風車10のロータ回転数(翼11および回転軸の回転数)に蓄積される。すなわちロータ回転数が上昇する。
【0039】
ここで、一般の風車と同様、風車10では、ロータ回転数を一定にするように翼ピッチ制御が実施されている(ステップS110)。この翼ピッチ制御で入力エネルギーを低減させることにより、風車10の過回転による停止(トリップ)を防止することが可能である。
【0040】
以上のように、同期発電機15と直流送電部50とを接続する風車側電力変換器41が、同期発電機15からの直流送電部50による送電を中止すべき不具合を検出した場合、風車側電力変換器41は、同期発電機15から受け入れる有効電力の設定値を低下させる。そして、事象検出部133は、これによって生じる、同期発電機15へ入力されるトルクと同期発電機15が出力する有効電力とのバランスの崩れに起因する事象を検出する。
そして、事象検出部133がバランスの崩れに起因する事象を検出した場合、指令切替部134は、油圧モータ14への入力トルク指令を遮断する。
このように、事象検出部133が、バランスの崩れに起因する事象を検出することで、同期発電機15の短絡電流が大きい場合でも、電力系統90との連系点など、系統側電力変換器71よりも電力系統90側における事故を検知することができる。
【0041】
また、事象検出部133は、バランスの崩れに起因する事象として、同期発電機15の回転数の増加または洋上系統周波数(同期発電機15が接続されている系統の周波数)の増加の少なくともいずれかを示す事象を検出する。
これにより、事象検出部133は、同期発電機15の回転数、または、同期発電機15の発電周波数など洋上系統周波数を監視するという簡単な処理で、系統側電力変換器71よりも電力系統90側における事故を検知することができる。
【0042】
また、直流送電部50の電圧上昇に基づき、風車側電力変換器41が直流送電部50へ流れ込む有効電力を低下させるので、直流送電部50に設置される半導体スイッチ61、制動抵抗62ともに、容量低減が可能、もしくは設置不要となる。半導体スイッチ61および制動抵抗62の設置要否は、風車10における回転数(同期発電機15や回転軸等の回転数)の上昇がどこまで許容されるかに依存する。
【0043】
また、異常伝達に周波数を使用するため、風車10と風車側電力変換器41とが離れて設置されていても、風車10と風車側電力変換器41と間の電力ケーブルが正常に接続され、かつ、事象検出部133が備える周波数検出器が正常であれば異常を検出することが可能である。通信で異常を伝達する方式も考えられるが、通信ケーブル断線、ノイズによる通信エラー等により異常伝達ができなくなるリスクが考えられ、この点において、本アイデアの方が信頼性が高い。
【0044】
<第2の実施形態>
事象検出部が異常を検出する方法は、周波数による方法に限らない。本実施形態では、事象検出部が有効電力の指令値と測定値との偏差に基づいて異常を検出する場合について説明する。
第2の実施形態における装置の構成は
図1〜
図3と同様であり、図示および説明を省略する。第2の実施形態では、事象検出部133(
図3)が異常を検出する処理が、第1の実施形態の場合と異なる。
事象検出部133は、同期発電機15に対する有効電力指令と、有効電力の測定値との偏差に基づいて異常(直流送電部50による送電を中止すべき不具合)を検出する。
ここで、発電機の周波数と有効電力との関係は、式(1)のように示される。
【0046】
但し、Mは慣性定数を表し、PWは発電機への機械入力(単位はワット[W])を表し、PGは発電機有効電力(単位はワット)を表す。
また、ωは発電機の回転角速度(単位はラジアン毎秒(rad/s))を表し、式(2)のように示される。
【0048】
但し、fは発電機の回転数(単位はヘルツ(Hz))を表す。
また、慣性定数Mは式(3)のように示される。
【0050】
但し、Jは慣性モーメント(単位はキログラム平方メートル(kg・m
2)を表し、ω
sは発電機同期速度(単位はラジアン毎秒)を表す。
式(1)を参照すると、発電機の回転角速度ωの微分と、発電機への機械入力から発電機の有効電力を減算した差とが比例している。このことから、事故発生時に発電機の回転角速度が徐々に上昇するのに対し、発電機への機械入力から発電機の有効電力を減算した差は、すぐに変化する。
【0051】
また、風車では通常、風速やロータ回転数に基づいて風車が出力すべき有効電力指令P
W0(ref)(またはトルク指令)は常時計算されている。また、発電機の有効電力PGは測定されている。
事象検出部133は、有効電力に基づいて、異常(直流送電部50による送電を中止すべき不具合)を検出する。具体的には、有効電力偏差(風車10が出力すべき有効電力の指令値と実際の有効電力との差)の閾値ε
pを予め設定し、式(4)に基づいて異常の有無を判定する。
【0053】
すなわち、事象検出部133が、有効電力指令P
W0(ref)と発電機有効電力計測値P
Gとの偏差がε
pよりも大きくなったことを検出した場合に、指令切替部134が指令を切り替えて、有効電力を遮断する。なお、判定の誤動作防止のためにフィルタ処理を付加してもよい。
【0054】
以上のように、事象検出部133は、バランスの崩れに起因する事象として、同期発電機15からの有効電力と同期発電機15に対する有効電力指令との偏差の増加を検出する。
これにより、事象検出部133は、周波数に基づく場合よりも速やかに異常を検知し得る。
なお、第2の実施形態と第1の実施形態とは両立し得る。例えば、事象検出部が、周波数に基づく異常検出、有効電力に基づく異常検出の両方を行うようにしてもよい。
【0055】
<第3の実施形態>
本実施形態では、第1の実施形態の構成(
図1)における、事故が除去された際の処理について説明する。なお、第2の実施形態の構成における、事故が除去された際の処理も同様とすることができる。
第3の実施形態における装置の構成は
図1と同様であり、図示および説明を省略する。
【0056】
図5は、事故が除去された際に発送電システム1が行う処理の例を示す図である。
電力系統90との連系点で発生した系統事故が除去され(ステップS201)、送電が回復した場合(ステップS202)、直流送電部50の電圧が定常状態に回復する(ステップS203)。
系統事故が継続している間は同期発電機15への入力トルクが、同期発電機15が出力する有効電力に対して過剰になることで、同期発電機15の回転数が上昇していたが、風車側電力変換器41は、直流送電部50の電圧が定常状態に回復したことを検知すると(ステップS204)直ちに、風車側電力変換器41の容量および同期発電機15の出力変動の許容範囲内で、迅速に周波数を下げるよう動作する(ステップS206)。具体的には、同期発電機15から受け入れる有効電力を増加させることで、同期発電機15が出力する有効電力を増加させ、これにより同期発電機15の回転数および洋上系統周波数を低下させる。
【0057】
事象検出部133が、洋上周波数を監視しておき、洋上周波数が設定値(系統事故除去判定周波数)を下回ったことを検出すると(ステップS207)、指令切替部134が、油圧モータ14への入力トルク指令の遮断を終了し、トルク制御部131が、油圧モータ14への入力トルク指令の出力を再開する(ステップS208)。
油圧モータ14のトルク出力再開に伴ってロータ回転数(翼11および回転軸の回転数)および油圧ポンプ12の回転数が下がってくるが、通常通りロータ回転数および油圧ポンプ12の回転数を一定とするように翼ピッチ制御が実施される(ステップS209)。
風車側電力変換器41は、有効電力が安定した時点で、徐々に周波数を定格まで下げる(ステップS210)。
【0058】
図6は、事故が除去された際の、洋上周波数、有効電力および油圧モータ14への入力トルク指令の変化の例を示すグラフである。
同図の横軸は時刻を示す。また、線L11は洋上周波数を示し、線L12は風車側電力変換器41における有効電力を示し、線L13は油圧モータ14に対する入力トルク指令を示す。
時刻T11において、系統事故が発生して直流送電部50の電圧が所定の閾値以上に上昇したことを検知すると、風車側電力変換器41は、直流送電部50への有効電力の出力を遮断する、または低下させる(線L12)。これにより、洋上周波数が上昇する(線L11)。
【0059】
時刻T12において、洋上周波数が閾値(系統事故判定周波数)よりも上昇すると、指令切替部134が、油圧モータ14から同期発電機15へのトルクを遮断させる(線L11)。
また、時刻T13において、系統事故が除去されると、風車側電力変換器41が有効電力を直流送電部50へ出力して(線L12)、洋上周波数を低減させる(線L13)。
時刻T14において、洋上周波数が閾値(系統事故除去判定周波数)以下になると、指令切替部134が油圧モータ14から同期発電機15へのトルクの遮断を終了し、トルク制御部131が、油圧モータ14へのトルク指令を風車10へ出力する(線L13)。
時刻T15において、風車10からの出力再開を完了し(線L13)、その後、風車側電力変換器41が、洋上周波数を定格まで徐々に下げていく(線L11)。
【0060】
以上の処理により、発送電システム1は、連系点で発生した系統事故が除去され、出力再開が可能となった際に、系統周波数を安定に保ちながら出力を再開することが可能となる。
【0061】
<第4の実施形態>
事故が除去されたことの通知は、上記のように洋上周波数による通知に限らない。本実施形態では、事故が除去されたことを通信にて通知する例について説明する。第4の実施形態も、第1の実施形態、第2の実施形態の何れにも適用し得る。
図7は、本発明の第4の実施形態における発送電システムの機能構成を示す概略ブロック図である。
同図において、
図1の各部に対応して同様の機能を有する部分には同一の符号(10〜16、20、30、41、42、50、61、62、71、72、80、90、100)を付し、説明を省略する。
【0062】
図7に示される発送電システム2では、
図1の構成に加えて、風車側変換器制御装置42と発電制御装置100とが通信を行う。
【0063】
図8は、事故が除去された際に発送電システム2が行う処理の例を示す図である。
同図のステップS301〜304は、
図5のステップS201〜204と同様である。
ステップS304の後、風車側電力変換器41は、その時点での洋上系統の周波数が一定となるように動作する(ステップS305)。また、制御器300が、発電制御装置100に対し通信経由で出力再開指令を送信する(ステップS306)。発電制御装置100は、当該指令に基づいて、遮断していた油圧モータ14への入力トルク指令の出力を再開する(ステップS307)。
同期発電機15の電力出力再開に伴ってロータ回転数が下がってくるが、通常通りロータ回転数を一定とするように翼ピッチ制御が実施される(ステップS308)。
風車10が出力を再開した後、風車側電力変換器41は、風車側電力変換器41の容量の余力に応じて洋上の周波数を定格まで低下させる(ステップS309)。
【0064】
図9は、事故が除去された際に通信による場合の、周波数洋上周波数の変化、および、油圧モータ14への入力トルク指令の変化の例を示すグラフである。
同図の横軸は時刻を示す。また、線L21は洋上周波数を示し、線L22は油圧モータ14に対する入力トルク指令を示す。
時刻T21において、系統事故が発生すると、風車側電力変換器41が直流送電部50への有効電力の出力を遮断し、洋上周波数が上昇する(線L21)。
【0065】
時刻T22において、洋上周波数が閾値(系統事故判定周波数)よりも上昇すると、指令切替部134が、油圧モータ14への入力トルク指令を遮断する(線L22)。
また、時刻T23において、系統事故が除去されると、風車側電力変換器41は、洋上周波数を一定に保つよう動作する(線L21)。また、制御器300が発電制御装置100へ出力再開指令を送信し、発電制御装置100が同期発電機15への入力トルク指令の出力を再開する(線L22)。
時刻T24において、風車10からの出力再開を完了し(線L22)、その後、風車側電力変換器41が、洋上周波数を定格まで徐々に下げていく(線L21)。
【0066】
以上の処理により、連系点で発生した系統事故が除去され、出力再開が可能となった際に、系統周波数を安定に保ちながら出力を再開することが可能となる。
【0067】
<第5の実施形態>
第1の実施形態における制御は、電力変換器を用いて連系する風車にも適用可能である。本実施形態ではこの点について説明する。
図10は、本発明の第5の実施形態における発送電システムの機能構成を示す概略ブロック図である。
同図において、
図1の各部に対応して同様の機能を有する部分には同一の符号(11、16、20、30、41、42、50、61、62、71、72、80、90)を付し、説明を省略する。
【0068】
図10に示される発送電システム3は、風車410の構成、および、発電制御装置100が行う処理において、発送電システム1(
図1)と異なる。
風車410は、発電機として永久磁石同期発電機411を有し、また、交流直流変換器412と、直流バス413と、直流交流変換器414とを有している。但し、風車410が有する発電機は永久磁石同期発電機に限らない。例えば、風車410が、永久磁石同期発電機に変えて誘導発電機を有していてもよい。
永久磁石同期発電機411が発電した電力は、交流直流変換器412で直流に変換され、直流バス413を経由した後、直流交流変換器414にて交流に変換される。
また、発電制御装置100は、バランスの崩れに起因する事象として、直流バス413の電圧上昇を検出する。
【0069】
図11は、事故発生時に発送電システム3が行う処理の例を示す図である。
同図のステップS401〜S406は、
図1のステップS101〜S106と同様である。ステップS406でのバランスの崩れにより、直流バス電圧(直流バス413の電圧)が上昇する(ステップS407)。
発電制御装置100は、直流バス電圧を常時監視しており、直流バス電圧があらかじめ設定するしきい値(例えば定格の105パーセント)を超えた場合に(ステップS408)、風車の電力変換器のうち風車側の交流直流変換器への電力指令を遮断する(ステップS409)。
ステップS410は、
図1のステップS110と同様である。
【0070】
以上より、電力変換器を用いて連系する風車でも、電圧を変化させずに対応することが可能となる。
【0071】
なお、発電制御装置100の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0072】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。