(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1に記載されたセンサ付ガイドワイヤ(センサ・ガイドワイヤ・アセンブリ)には下記のような問題がある。
【0006】
(1)
図5に示すように、センサ素子8の電線9を挿通させるために、第1のコイル4の基端側のワイヤ部分は中空管2により構成されている。
しかし、中実のワイヤと比較して中空管は曲げ剛性などの剛性が低く、中空管2により構成されるガイドワイヤは、曲がりやすくて押し込み特性に劣るものである。
そして、中空管2によって構成されるガイドワイヤは、血管内を挿通させる際に容易に曲げ癖がつき、曲げ癖のついたガイドワイヤは、そのトルク伝達性が大幅に低下する。
このように、特許文献1に記載されたセンサ付ガイドワイヤは、その大部分が中空管2によって構成されているために、ガイドワイヤとしての操作性に劣るものである。
【0007】
(2)第1のコイル4とジャケット6とは、前者の先端面と後者の基端面とが接触しているが、その接触面積が狭いために、第1のコイル4とジャケット6との間の接合力(連結強度)は低いものである。
また、第2コイル5とジャケット6とは、前者の基端面と後者の先端面とが接触しているが、その接触面積が狭いために、第2のコイル5とジャケット6との間の接合力(連結強度)も低いものである。
【0008】
(3)特許文献1に記載されたセンサ付ガイドワイヤの製造時において、ジャケット6と第1のコイル4とを互いの中心軸を正確に一致させた状態で接合させることは困難であるため、ジャケット6と第1のコイル4との間で径方向に位置ずれを起こしやすい。
また、ジャケット6と第2のコイル5とを互いの中心軸を正確に一致させた状態で接合することも困難であり、ジャケット6と第2のコイル5との間で径方向に位置ずれを起こしやすい。
【0009】
そして、ジャケット6と第1のコイル4との間、および/または、ジャケット6と第2のコイル5との間で径方向の位置ずれを起こしたセンサ付ガイドワイヤは、ガイドワイヤとしてのトルク伝達性がきわめて劣るものとなる。
【0010】
更に、このような径方向の位置ずれを起こした場合には、第1のコイル4とジャケット6との接合部、および/または、ジャケット6と第2のコイル5との接合部における外周に段差が形成される。この段差は、カテーテルなどの医療器具を導入する際の障害となり、このセンサ付ガイドワイヤに沿って医療器具をスムーズに導入することができなくなる。
【0011】
なお、このような径方向の位置ずれを起こさせないように、コアワイヤ3の直径をジャケット6の内径と同程度に拡大することも考えられるが、そのようにして得られるセンサ付ガイドワイヤは柔軟性に劣るものとなる。
【0012】
本発明は以上のような事情に基いてなされたものである。
本発明の目的は、良好な操作性を有し、圧力センサを保持しているセンサホルダの両側にあるハウジングと、当該ハウジングの各々に接合されるワイヤとの接合強度が高くて、径方向の位置ずれを起こすこともないセンサ付ガイドワイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のセンサ付ガイドワイヤは、先端部分に圧力センサを備えてなるセンサ付ガイドワイヤであって、
無線により通信可能な圧力センサと、
センサ保持部の基端側および先端側に同形の円筒状ハウジングを有するセンサホルダと、
基端側の前記ハウジングに接合された二重コイル構造を有する第1ワイヤと、
先端側の前記ハウジングに接合された二重コイル構造を有する第2ワイヤとを備えてなり、
前記第1ワイヤは、中実の第1コアワイヤと、
前記第1コアワイヤの先端部の直径と同一または僅かに大きい内径と、前記ハウジングの内径と同一または僅かに小さい外径を有し、前記第1コアワイヤの先端部の外周を覆うようにして当該第1コアワイヤの先端部に装着されている第1内側コイルと、
前記第1内側コイルの外径と同一または僅かに大きい内径と、前記ハウジングの外径と実質的に同一の外径を有し、前記第1内側コイルの先端部を除いた当該第1内側コイルの外周を覆うようにして前記第1コアワイヤの先端部に装着されている第1外側コイルとを備え、
前記第2ワイヤは、中実の第2コアワイヤと、
前記第2コアワイヤの直径と同一または僅かに大きい内径と、前記ハウジングの内径と同一または僅かに小さい外径を有し、前記第2コアワイヤの外周を覆うようにして当該第2コアワイヤに装着されている第2内側コイルと、
前記第2内側コイルの外径と同一または僅かに大きい内径と、前記ハウジングの外径と実質的に同一の外径を有し、前記第2内側コイルの基端部を除いた当該第2内側コイルの外周を覆うようにして前記第2コアワイヤに装着されている第2外側コイルとを備え、
前記センサホルダの基端側の前記ハウジングの内部に前記第1コアワイヤの先端部および前記第1内側コイルの先端部が挿入されているとともに、前記センサホルダの基端側の前記ハウジングの基端面に前記第1外側コイルの先端面が当接されている状態で、前記ハウジングと前記第1ワイヤとが接合され、
前記センサホルダの先端側の前記ハウジングの内部に前記第2コアワイヤの基端部および前記第2内側コイルの基端部が挿入されているとともに、前記センサホルダの先端側の前記ハウジングの先端面に前記第2外側コイルの基端面が当接されている状態で、前記ハウジングと前記第2ワイヤとが接合されていることを特徴とする。
【0014】
このような構成のセンサ付ガイドワイヤによれば、無線により通信可能な圧力センサを備えているため、当該圧力センサの導線およびこれを挿通するための空間が不要であり、第1コアワイヤとして中実のワイヤを使用することができ、中実の第1コアワイヤにより良好な操作性を発揮することができる。
【0015】
また、このような構成のセンサ付ガイドワイヤによれば、センサホルダの基端側のハウジングの基端面に第1外側コイルの先端面が当接されているだけではなく、このハウジングの内部に第1コアワイヤの先端部および第1内側コイルの先端部が挿入されている状態で、ハウジングと第1ワイヤ(第1コアワイヤ、第1内側コイルおよび第1外側コイル)とが接合されているので、両者の接合強度(センサホルダと第1ワイヤとの連結強度)は十分に高いものとなる。
【0016】
更に、センサホルダの先端側のハウジングの先端面に第2外側コイルの基端面が当接されているだけではなく、このハウジングの内部に第2コアワイヤの基端部および第2内側コイルの基端部が挿入されている状態で、ハウジングと第2ワイヤ(第2コアワイヤ、第2内側コイルおよび第2外側コイル)とが接合されているので、両者の接合強度(センサホルダと第2ワイヤとの連結強度)は十分に高いものとなる。
【0017】
また、このような構成のセンサ付ガイドワイヤによれば、第1コアワイヤの先端部の外周を覆うようにして第1内側コイルが装着され、この第1内側コイルの外周を覆うようにして第1外側コイルが装着されていることにより、第1ワイヤを構成する第1コアワイヤの先端部と、第1内側コイルと、第1外側コイルとは、互いに共通の中心軸を有することになる。
また、センサホルダの基端側のハウジングの内部に第1コアワイヤの先端部および第1内側コイルの先端部が挿入される(第1コアワイヤの先端部および第1内側コイルの先端部によりハウジングの内部空間が埋め込まれる)ことにより、このハウジングの中心軸と、第1コアワイヤ、第1内側コイルおよび第1外側コイルの共通する中心軸とを一致させること(いわゆる心だし)ができるので、このハウジングと第1ワイヤとが径方向の位置ずれを起こすことはない。また、ハウジングと第1外側コイルとは、実質的に同一の外径を有しているので、ハウジングと第1ワイヤ(第1外側コイル)との接合部における外周に段差が形成されることもない。
【0018】
更に、第2コアワイヤの外周を覆うようにして第2内側コイルが装着され、この第2内側コイルの外周を覆うようにして第2外側コイルが装着されていることにより、第2ワイヤを構成する第2コアワイヤと、第2内側コイルと、第2外側コイルとは、互いに共通の中心軸を有することになる。
また、センサホルダの先端側のハウジングの内部に第2コアワイヤの基端部および第2内側コイルの基端部が挿入される(第2コアワイヤの基端部および第2内側コイルの基端部によりハウジングの内部空間が埋め込まれる)ことにより、このハウジングの中心軸と、第2コアワイヤ、第2内側コイルおよび第2外側コイルの共通する中心軸とを一致させること(いわゆる心だし)ができるので、このハウジングと第2ワイヤとが径方向の位置ずれを起こすことはない。また、ハウジングと第2外側コイルとは、実質的に同一の外径を有しているので、ハウジングと第2ワイヤ(第2外側コイル)との接合部における外周に段差が形成されることもない。
【0019】
また、このような構成のセンサ付ガイドワイヤは、センサホルダの両側にあるハウジングの各々と、ワイヤ(第1ワイヤおよび第2ワイヤ)とが径方向の位置ずれを起こしていないので、トルク伝達性にも優れている。
【0020】
(2)本発明のセンサ付ガイドワイヤにおいて、前記第1コアワイヤの先端部および前記第2コアワイヤの直径が0.04〜0.22mm、
前記第1内側コイルおよび前記第2内側コイルの外径が0.18〜0.28mm、
前記第1外側コイルおよび前記第2外側コイルの外径が0.30〜0.36mmであることが好ましい。
【0021】
(3)本発明のセンサ付ガイドワイヤは、冠血流予備量比を得るための冠動脈圧の測定に使用されることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明のセンサ付ガイドワイヤは、高い剛性のワイヤ(特に、中実の第1コアワイヤ)による良好な操作性を有し、圧力センサを保持するセンサ保持部の両側にあるハウジングと、当該ハウジングの各々に接合されるワイヤ(第1ワイヤまたは第2ワイヤ)との接合強度が高くて、当該ハウジングの各々とワイヤ(第1ワイヤまたは第2ワイヤ)とが径方向の位置ずれを起こすこともない。
【0023】
また、本発明のセンサ付ガイドワイヤは、センサホルダの両側にあるハウジングの各々とワイヤ(第1ワイヤまたは第2ワイヤ)とが径方向の位置ずれを起こすことがないので、ガイドワイヤとしてのトルク伝達性に優れているとともに、当該ハウジングの各々とワイヤ(第1ワイヤまたは第2ワイヤ)との接合部における外周に段差が形成されることもない。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
図1に示す本実施形態のセンサ付ガイドワイヤ100は、先端部分に圧力センサを備えてなるセンサ付ガイドワイヤであって、無線により通信可能な圧力センサ50と、同形の円筒状ハウジング31および32をセンサ保持板35の両側に有するセンサホルダ30と、基端側のハウジング31に接合された二重コイル構造を有する第1ワイヤ10と、先端側のハウジング32に接合された二重コイル構造を有する第2ワイヤ20とを備えてなり、第1ワイヤ10は、中実の第1コアワイヤ11と、第1コアワイヤ11の先端部の直径と同一または僅かに大きい内径と、ハウジング31の内径と同一または僅かに小さい外径を有し、第1コアワイヤ11の先端部の外周を覆うようにして当該第1コアワイヤ11の先端部に装着されている第1内側コイル12と、第1内側コイル12の外径と同一または僅かに大きい内径と、ハウジング31の外径と同一の外径を有し、第1内側コイル12の先端部を除いた当該第1内側コイル12の外周を覆うようにして第1コアワイヤ11の先端部に装着されている第1外側コイル13とを備え、第2ワイヤ20は、中実の第2コアワイヤ21と、第2コアワイヤ21の直径と同一または僅かに大きい内径と、ハウジング32の内径と同一または僅かに小さい外径を有し、第2コアワイヤ21の外周を覆うようにして当該第2コアワイヤ21に装着されている第2内側コイル22と、第2内側コイル22の外径と同一または僅かに大きい内径と、ハウジング32の外径と同一の外径を有し、第2内側コイル22の基端部を除いた当該第2内側コイル22の外周を覆うようにして第2コアワイヤ21に装着されている第2外側コイル23とを備え、センサホルダ30のハウジング31の内部に第1コアワイヤ11の先端部および第1内側コイル12の先端部が挿入されているとともに、センサホルダ30のハウジング31の基端面311に第1外側コイル13の先端面131が当接されている状態で、ハウジング31と第1ワイヤ10とが接合され、センサホルダ30のハウジング32の内部に第2コアワイヤ21の基端部および第2内側コイル22の基端部が挿入されているとともに、センサホルダ30のハウジング32の先端面321に第2外側コイル23の基端面231が当接されている状態で、ハウジングと第2ワイヤ20とが接合されている。
【0026】
センサ付ガイドワイヤ100を構成する圧力センサ50は、無線により通信可能な極小で薄膜状のセンサ素子(MEMS)である。この圧力センサ50は、センサホルダ30のセンサ保持板35の一面に装着されている。
この圧力センサ50は、無線により通信可能なセンサであるため、導線を有しない。
【0027】
センサ付ガイドワイヤ100を構成するセンサホルダ30は、圧力センサ50を保持するセンサ保持板35と、センサ保持板35の基端側に位置するハウジング31と、センサ保持板35の先端側に位置するハウジング32とを備えている。
【0028】
ハウジング31および32は、それぞれ、センサ保持板35と一体的に形成されている。ハウジング31は、基端側において開口する円筒状であり、このハウジング31には、第1ワイヤ10が接合されている。また、ハウジング32は、先端側において開口する円筒状(ハウジング31と同一の形状)であり、このハウジング32には、第2ワイヤ20が接合されている。
【0029】
センサホルダ30の長さとしては、例えば1.5〜3.5mmとされる。
センサホルダ30を構成するハウジング31および32の外径は、例えば0.30〜0.36mmとされ、好適な一例を示せば0.36mmである。
ハウジング31および32の内径は、例えば0.18〜0.33mmとされ、好適な一例を示せば0.26mmである。
センサホルダ30の構成材料としては特に限定されるものではないが、ステンレスなどを例示することができる。
【0030】
センサ付ガイドワイヤ100を構成する第1ワイヤ10は、第1コアワイヤ11と、第1コアワイヤ11の先端部(先端側小径部113)の外周を覆うようにして当該第1コアワイヤ11の先端部に装着されている第1内側コイル12と、第1内側コイル12の先端部(例えば、
図1に示した先端から5ピッチに相当する部分)を除いた当該第1内側コイル12の外周を覆うようにして第1コアワイヤ11の先端部(先端側小径部113および中径部112)に装着されている第1外側コイル13とを備えている。
【0031】
第1ワイヤ10を構成する第1コアワイヤ11は、基端側大径部111と、中径部112と、先端側小径部113とを有している。
第1コアワイヤ11の長さは、例えば1720〜1970mmとされる。
第1コアワイヤ11の基端側大径部111の直径は0.30〜0.36mmとされ、好適な一例を示せば0.36mmである。基端側大径部111の長さは1420〜1960mmとされる。
第1コアワイヤ11の中径部112の直径は0.15〜0.26mmとされ、好適な一例を示せば0.23mmである。中径部112の長さは10〜300mmとされる。
第1コアワイヤ11の先端側小径部113の直径は0.04〜0.22mmとされ、好適な一例を示せば0.08mmである。先端側小径部113の長さは5〜200mmとされる。
なお、第1コアワイヤ11の形状は、これらに限定されるものではない。
【0032】
第1コアワイヤ11は、圧力センサの導線を挿通する空間を確保する必要がないため、従来のセンサ付ガイドワイヤを構成する中空管と異なり、中実(solid)のワイヤである。これにより、第1コアワイヤ11によって構成されるセンサ付ガイドワイヤ100は、通常のガイドワイヤ(中実のワイヤにより構成されるガイドワイヤ)と同等の良好な操作性を有するものとなる。
ここに、中実とは、内部が詰まっていて実質的に空間が存在しない(無垢である)ことをいう。
【0033】
第1コアワイヤ11の構成材料としては特に限定されるものではないが、ステンレス(例えばSUS316、SUS304)、金、白金、アルミニウム、タングステン、タンタルまたはこれらの合金などの金属を挙げることができるが、本実施形態では、ステンレスで構成されている。
また、第1コアワイヤ11の外周面には、撥水性樹脂層が形成されていてもよい。
撥水性樹脂層を構成する樹脂としては、医療用として用いられる樹脂であって、撥水性を有するものをすべて用いることができ、好適な樹脂としてPTFEなどのフッ素系樹脂を挙げることができる。
【0034】
第1ワイヤ10を構成する第1内側コイル12は、第1コアワイヤ11の先端部(先端側小径部113)の外周を覆うようにして、当該第1コアワイヤ11の先端部に装着されている。
【0035】
第1内側コイル12は、第1コアワイヤ11の先端部(先端側小径部113)の直径と同一または僅かに大きい内径と、ハウジング31の内径と同一または僅かに小さい外径を有する。
【0036】
ここに、第1コアワイヤ11の先端部(先端側小径部113)の直径より「僅かに大きい」第1内側コイル12の内径としては、例えば、第1コアワイヤ11の先端部の直径の1.3倍以下とされ、好ましくは1.1倍以下である。
【0037】
また、ハウジング31の内径より「僅かに小さい」第1内側コイル12の外径としては、例えば、ハウジング31の内径の0.5倍以上とされ、好ましくは0.9倍以上である。
ハウジング31の内径に対して第1内側コイル12の外径が過小である場合には、ハウジング31と、第1ワイヤ10とが径方向の位置ずれを起こすことがある。
【0038】
上記の条件を満たす第1内側コイル12の内径としては、例えば0.055〜0.23mmとされ、好適な一例を示せば0.09mmである。
また、上記の条件を満たす第1内側コイル12の外径としては、例えば0.18〜0.28mmとされ、好適な一例を示せば0.23mmである。
【0039】
第1内側コイル12を構成する線材の材料としては、特に限定されるものではないが、ステンレス(例えばSUS316、SUS304)、Ni−Ti合金などを例示することができる。また、第1内側コイル12を構成する線材の直径としては0.03〜0.06mmとされる。
【0040】
第1ワイヤ10を構成する第1外側コイル13は、第1内側コイル12の先端部を除いた当該第1内側コイル12の外周を覆うようにして、第1コアワイヤ11の先端部(先端側小径部113および中径部112)に装着されている。
【0041】
ハウジング31の内部に挿入されている第1内側コイル12の先端部は、この第1外側コイル13によって外周が覆われていない。
ここに、第1内側コイル12の先端部の長さとしては、この先端部が内部に挿入されるハウジング31の長さなどによって異なるが、例えば0.1〜0.8mmとされる。
【0042】
第1外側コイル13は、第1内側コイル12の外径と同一または僅かに大きい内径と、ハウジング31の外径と同一の外径を有している。
【0043】
ここに、第1内側コイル12の外径より「僅かに大きい」第1外側コイル13の内径としては、例えば、第1内側コイル12の外径の1.3倍以下とされ、好ましくは1.1倍以下である。
【0044】
第1外側コイル13の外径は、ハウジング31の外径と同一である。
これにより、ハウジング31の中心軸と、第1外側コイル13の中心軸とを一致させたときに、ハウジング31と、第1外側コイル13(第1ワイヤ10)との接合部における外周に段差が形成されることはない。
【0045】
上記の条件を満たす第1外側コイル13の内径としては、例えば0.19〜0.26mmとされ、好適な一例を示せば0.24mmである。
また、上記の条件を満たす第1外側コイル13の外径としては、例えば0.30〜0.36mmとされ、好適な一例を示せば0.36mmである。
【0046】
第1外側コイル13を構成する線材の材料としては、特に限定されるものではないが、ステンレス(例えばSUS316、SUS304)、Ni−Ti合金などを例示することができる。また、第1外側コイル13を構成する線材の直径としては0.05〜0.07mmとされる。
【0047】
第2ワイヤ20を構成する第2コアワイヤ21は、全長にわたり同じ直径を有する中実のワイヤである。
第2コアワイヤ21の直径は、第1コアワイヤ11の先端側小径部113の直径と同一であり、第2コアワイヤ21の長さは10〜50mmとされる。
第2コアワイヤ21の構成材料も特に限定されるものではないが、第1コアワイヤ11の構成材料と同様の金属を挙げることができ、本実施形態ではステンレスで構成されている。また、第2コアワイヤ21の外周面には、撥水性樹脂層が形成されていてもよい。
【0048】
第2ワイヤ20を構成する第2内側コイル22は、第2コアワイヤ21の外周を覆うようにして当該第2コアワイヤ21に装着されている。
【0049】
第2内側コイル22は、第2コアワイヤ21の直径と同一または僅かに大きい内径と、ハウジング32の内径と同一または僅かに小さい外径を有する。
【0050】
ここに、第2コアワイヤ21の直径より「僅かに大きい」第2内側コイル22の内径としては、例えば、第2コアワイヤ21の直径の1.3倍以下とされ、好ましくは1.1倍以下である。
【0051】
また、ハウジング32の内径より「僅かに小さい」第2内側コイル22の外径としては、例えば、ハウジング32の内径の0.5倍以上とされ、好ましくは0.9倍以上である。
ハウジング32の内径に対して第2内側コイル22の外径が過小である場合には、ハウジング32と、第2ワイヤ20とが径方向の位置ずれを起こすことがある。
【0052】
上記の条件を満たす第2内側コイル22の内径としては、例えば0.055〜0.23mmとされ、好適な一例を示せば0.09mmである。
また、上記の条件を満たす第1内側コイル22の外径としては、例えば0.18〜0.28mmとされ、好適な一例を示せば0.23mmである。
【0053】
第2内側コイル22を構成する線材の材料としては、特に限定されるものではないが、ステンレス(例えばSUS316、SUS304)、Ni−Ti合金などを例示することができる。また、第2内側コイル22を構成する線材の直径としては0.03〜0.06mmとされる。
【0054】
第2ワイヤ20を構成する第2外側コイル23は、第2内側コイル22の基端部を除いた当該第2内側コイル22の外周を覆うようにして、第2コアワイヤ21に装着されている。
【0055】
ハウジング32の内部に挿入されている第2内側コイル22の基端部は、この第2外側コイル23によって覆われていない。
【0056】
ここに、第2内側コイル22の基端部の長さとしては、この基端部が内部に挿入されるハウジング32の長さなどによって異なるが、例えば0.1〜0.8mmとされる。
【0057】
第2外側コイル23は、第2内側コイル22の外径と同一または僅かに大きい内径と、ハウジング32の外径と同一の外径を有している。
【0058】
ここに、第2内側コイル22の外径より「僅かに大きい」第2外側コイル23の内径としては、例えば、第2内側コイル22の外径の1.3倍以下とされ、好ましくは1.1倍以下である。
【0059】
第2外側コイル23の外径は、ハウジング32の外径と同一である。
これにより、ハウジング32の中心軸と、第2外側コイル23の中心軸とを一致させたときに、ハウジング32と、第2外側コイル23(第2ワイヤ20)との接合部における外周に段差が形成されることはない。
【0060】
上記の条件を満たす第2外側コイル23の内径としては、例えば0.19〜0.26mmとされ、好適な一例を示せば0.24mmである。
また、上記の条件を満たす第2外側コイル23の外径としては、例えば0.30〜0.36mmとされ、好適な一例を示せば0.36mmである。
【0061】
第2外側コイル23を構成する線材の材料としては、特に限定されるものではないが、白金、白金合金(たとえばPt/W=92/8)、金、金−銅合金、タングステン、タンタルなどのX線に対する造影性が良好な材質(X線不透過物質)を挙げることができる。また、第2外側コイル23を構成する線材の直径としては、0.05〜0.07mmとされる。
【0062】
本実施形態のセンサ付ガイドワイヤ100においては、第1コアワイヤ11の先端部の外周を覆うようにして第1内側コイル12が装着され、第1内側コイル12の外周を覆うようにして第1外側コイル13が装着されていることにより、第1ワイヤ10を構成する第1コアワイヤ11の先端部と、第1内側コイル12と、第1外側コイル13とは、互いに共通の中心軸を有することになる。
【0063】
また、このセンサ付ガイドワイヤ100においては、センサホルダ30のハウジング31の内部に第1コアワイヤ11の先端部および第1内側コイル12の先端部が挿入されているとともに、ハウジング31の基端面311に第1外側コイル13の先端面131が当接されている状態で、ハウジング31と第1ワイヤ10(第1コアワイヤ11、第1内側コイル12および第1外側コイル13)とが、はんだ61によって接合されている。
なお、第1ワイヤ10を構成する第1外側コイル13は、第1コアワイヤ11の中径部112を覆うように基端側に延び、第1外側コイル13の基端部は、はんだ63によって中径部112に固着されている。
【0064】
図2(1)は、ハウジング31の内部に、第1コアワイヤ11の先端部および第1内側コイル12の先端部が挿入されている状態を模式的に示している。
同図に示すように、第1コアワイヤ11(113)の先端部とともに、第1内側コイル12の先端部がハウジング31の内部に挿入されることにより、径方向の位置ずれの要因となる第1コアワイヤ11の先端部とハウジング31との隙間に、第1内側コイル12の先端部が埋め込まれる結果、ハウジング31の中心軸と、第1コアワイヤ11の先端部、第1内側コイル12および第1外側コイル13(
図2(1)において図示省略)の共通する中心軸とを一致させること(いわゆる心だし)ができる。これにより、ハウジング31と、第1ワイヤ10(第1コアワイヤ11、第1内側コイル12および第1外側コイル13)との間で径方向の位置ずれを起こすことを防止することができる。
【0065】
ハウジング31の内部に第1内側コイル12の先端部を挿入させずに、第1コアワイヤ11の先端部のみを挿入させた場合には、ハウジング31の中心軸と、第1コアワイヤ11の先端部の中心軸とを一致させることが困難となり、
図2(2)に示すように、ハウジング31の中心軸と第1コアワイヤ11の先端部の中心軸とが一致しなくなる場合には、ハウジング31と第1ワイヤ10との間で径方向の位置ずれが起こる。
【0066】
なお、第1内側コイル12に代えて、第1コアワイヤ11と第1外側コイル13との間に、ハウジング31の内径と同一または僅かに小さい外径とを有するスリーブを配置して第1ワイヤを構成し、ハウジング31の内部に、第1コアワイヤ11の先端部とともに、このスリーブの先端部を挿入した場合には、ハウジング31の内周とスリーブの外周との間に十分な量のはんだを充填することができないため、ハウジング31と第1ワイヤとの接合力を十分に確保することができない。また、第1コアワイヤ11と第1外側コイル13との間にスリーブを配置して第1ワイヤを構成した場合には、得られるセンサ付ガイドワイヤは柔軟性にも劣るものとなる。
【0067】
一方、このセンサ付ガイドワイヤ100においては、第2コアワイヤ21の外周を覆うようにして第2内側コイル22が装着され、第2内側コイル22の外周を覆うようにして第1外側コイル23が装着されていることにより、第2ワイヤ20を構成する第2コアワイヤ21と、第2内側コイル22と、第2外側コイル23とは、互いに共通の中心軸を有することになる。
【0068】
また、このセンサ付ガイドワイヤ100においては、センサホルダ30のハウジング32の内部に第2コアワイヤ21の基端部および第2内側コイル22の基端部が挿入されているとともに、ハウジング32の先端面321に第2外側コイル23の基端面231が当接されている状態で、ハウジング32と第2ワイヤ10(第2コアワイヤ21、第2内側コイル22および第2外側コイル23)とが、はんだ62によって接合されている。
なお、第2ワイヤ20を構成する第2コアワイヤ21、第2内側コイル22および第2外側コイル23は、各々の先端部において、はんだ64により固着され、先端チップ25を形成している。
【0069】
第2コアワイヤ21の基端部とともに、第2内側コイル22がハウジング32の内部に挿入されることによって、ハウジング32の中心軸と、第2コアワイヤ21、第2内側コイル22および第2外側コイル23の共通する中心軸とを一致させること(いわゆる心だし)ができる。これにより、ハウジング32と、第2ワイヤ20(第2コアワイヤ21、第2内側コイル22および第2外側コイル23)との間で径方向の位置ずれを起こすことを防止することができる。
【0070】
ハウジング32の内部に第2内側コイル22を挿入させずに、第2コアワイヤ21の基端部のみを挿入させた場合には、ハウジング32の中心軸と第2コアワイヤ21の中心軸とを一致させることが困難となり、ハウジング32の中心軸と第2コアワイヤ21の中心軸とが一致しなくなる場合には、ハウジング32と第2ワイヤ20との間で径方向の位置ずれが起こる。
【0071】
なお、第2内側コイル22に代えて、第2コアワイヤ21と第2外側コイル23との間に、ハウジング32の内径と同一または僅かに小さい外径とを有するスリーブを配置して第2ワイヤを構成し、ハウジング32の内部に、第2コアワイヤ21の基端部とともに、このスリーブの基端部を挿入した場合には、ハウジング32の内周とスリーブの外周との間に十分な量のはんだを充填することができないため、ハウジング32と第2ワイヤとの接合力を十分に確保することができない。また、第2コアワイヤ21と第2外側コイル23との間にスリーブを配置して第2ワイヤを構成した場合には、得られるセンサ付ガイドワイヤは柔軟性に劣るものとなる。
【0072】
本実施形態センサ付ガイドワイヤ100によれば、無線により通信可能な圧力センサ50を備えているため、当該圧力センサ50の導線およびこれを挿通するための空間が不要であり、第1コアワイヤ10として中実のワイヤを使用することができ、中実の第1コアワイヤ10による良好な操作性を発揮することができる。
【0073】
また、本実施形態センサ付ガイドワイヤ100によれば、センサホルダ30のハウジング31の基端面311に第1外側コイル13の先端面131が当接されているだけではなく、このハウジング31の内部に第1コアワイヤ11の先端部および第1内側コイル12の先端部が挿入されている状態でハウジング31と第1ワイヤ10(第1コアワイヤ11、第1内側コイル12および第1外側コイル13)とが接合されているので、両者の接合強度(センサホルダ30と第1ワイヤ10との連結強度)は十分に高いものとなる。
【0074】
更に、センサホルダ30のハウジング32の先端面321に第2外側コイル23の基端面231が当接されているだけではなく、このハウジング32の内部に第2コアワイヤ21の基端部および第2内側コイル22の基端部が挿入されている状態でハウジング32と第2ワイヤ20(第2コアワイヤ21、第2内側コイル22および第2外側コイル23)とが接合されているので、両者の接合強度(センサホルダ30と第2ワイヤ20との連結強度)は十分に高いものとなる。
【0075】
また、本実施形態センサ付ガイドワイヤ100によれば、第1コアワイヤ11の先端部の外周を覆うようにして第1内側コイル12が装着され、この第1内側コイル12の外周を覆うようにして第1外側コイル13が装着されていることにより、第1ワイヤ10を構成する第1コアワイヤ11の先端部と、第1内側コイル12と、第1外側コイル13とは、互いに共通の中心軸を有することになる。
また、センサホルダ30のハウジング31の内部に第1コアワイヤ11の先端部および第1内側コイル12の先端部が挿入されることにより、このハウジング31の中心軸と、第1コアワイヤ11、第1内側コイル12および第1外側コイル13の共通する中心軸とを一致させること(いわゆる心だし)ができるので、このハウジング31と第1ワイヤ10とが径方向の位置ずれを起こすことはない。また、ハウジング31と第1外側コイル13とは同一の外径を有するので、ハウジング31と第1ワイヤ10(第1外側コイル13)との接合部における外周に段差が形成されることもない。
【0076】
更に、第2コアワイヤ21の外周を覆うようにして第2内側コイル22が装着され、この第2内側コイル22の外周を覆うようにして第2外側コイル23が装着されていることにより、第2ワイヤ20を構成する第2コアワイヤ21と、第2内側コイル22と、第2外側コイル23とは、互いに共通の中心軸を有することになる。
また、センサホルダ30のハウジング32の内部に第2コアワイヤ21の基端部および第2内側コイル22の基端部が挿入されることにより、このハウジング32の中心軸と、第2コアワイヤ21、第2内側コイル22および第2外側コイル23の共通する中心軸とを一致させること(いわゆる心だし)ができるので、このハウジング32と第2ワイヤ20とが径方向の位置ずれを起こすことはない。また、ハウジング32と第2外側コイル23とは、同一の外径を有するので、ハウジング32と第2ワイヤ20(第2外側コイル23)との接合部における外周に段差が形成されることもない。
【0077】
また、本実施形態センサ付ガイドワイヤ100は、センサホルダ30の両側にあるハウジング31および32の各々と、これに接合されるワイヤ(第1ワイヤ10および第2ワイヤ20)とが径方向の位置ずれを起こしていないので、トルク伝達性にも優れている。
【0078】
<実施例1>
センサ保持板35の両側に円筒状ハウジング31,32を有してなるセンサホルダ30を準備し、このセンサホルダ30を構成する基端側のハウジング31に、第1コアワイヤ11と第1内側コイル12と第1外側コイル13とを備えた二重コイル構造の第1ワイヤ10をはんだにより接合するとともに、センサホルダ30を構成する先端側のハウジング32に、第2コアワイヤ21と第2内側コイル22と第2外側コイル23とを備えた二重コイル構造の第2ワイヤ20をはんだにより接合し、センサ保持板35の一面に、薄膜状のセンサ素子からなる圧力センサ50を装着することにより、
図1に示したような本発明のセンサ付ガイドワイヤを製造した。
なお、このセンサ付ガイドワイヤの構成部品の詳細を下記に示す。
【0079】
(1)圧力センサ50:
・極小無線センサ(MEMS)
【0080】
(2)センサホルダ30:
・材質:ステンレス
・長さ:約3mm
・センサ保持板35の長さ:約2mm
・ハウジング31,32の長さ:約0.4mm
・ハウジング31,32の外径:0.36mm
・ハウジング31,32の内径:0.26mm
【0081】
(3)第1コアワイヤ11:
・材質:ステンレス
・全長:1870mm
・基端側大径部111:直径0.36mm
・中径部112 :直径0.23mm,長さ 150mm
・先端側小径部113:直径0.08mm,長さ 30mm
【0082】
(4)第1内側コイル12:
・材質:ステンレス
・全長:30mm
・ハウジング31の内部に挿入される先端部の長さ:0.4mm
・コイル内径:0.09mm(先端側小径部113の直径の1.1倍)
・コイル外径:0.23mm(ハウジング31の内径の0.9倍)
・コイル線径:0.07mm
【0083】
(5)第1外側コイル13:
・材質:ステンレス
・全長:180mm
・コイル内径:0.24mm(第1内側コイル12のコイル外径の1.1倍)
・コイル外径:0.36mm(ハウジング31の外径と同一)
・コイル線径:0.06mm
【0084】
(6)第2コアワイヤ21:
・材質:ステンレス
・全長:30mm
・直径:0.08mm
【0085】
(7)第2内側コイル22:
・材質:ステンレス
・全長:30mm
・ハウジング32の内部に挿入される基端部の長さ:0.4mm
・コイル内径:0.09mm(第2コアワイヤ21の直径の1.1倍)
・コイル外径:0.23mm(ハウジング32の内径の0.9倍)
・コイル線径:0.07mm
【0086】
(8)第2外側コイル23:
・材質:白金合金(X線不透過物質)
・全長:30mm
・コイル内径:0.24mm(第2内側コイル22のコイル外径の1.1倍)
・コイル外径:0.36mm(ハウジング32の外径と同一)
・コイル線径:0.06mm
【0087】
<比較例1>
第1コアワイヤ11と第1外側コイル13との間に第1内側コイル12を装着しないで第1ワイヤを作製し、第2コアワイヤ21と第2外側コイル23との間に第2内側コイル12を装着しないで第2ワイヤを作製したこと以外は実施例1と同様にして比較用のセンサ付ガイドワイヤを製造した。
【0088】
<評価(トルク伝達性)>
実施例1および比較例1により得られたセンサ付ガイドワイヤの各々を、
図3に示す人の冠状動脈を模擬した治具の内部に挿入し、ガイドワイヤの近位端(手元側)を、モータにより所定の手元側角度0〜360°で捻り回転させ、そのガイドワイヤの遠位端(先端)における先端回転角度(捻れ角)を調べた。結果を
図4に示す。
図4に示す理論直線に近いほど、トルク伝達性が良好であり、操作性に優れている。トルク伝達性が良いと、手元側の回転力が先端まで伝わりやすく、血管分岐選択で、目的とする血管に前進させやすくなり、挿入作業性が向上する。
【0089】
図4に示す結果から、実施例1によって得られたセンサ付ガイドワイヤは、近位端側の回転操作に対する遠位端側の回転動作の遅れが小さく、優れたトルク伝達性を有している。これに対して、比較例1により得られたガイドワイヤは、遠位端側の回転動作の遅れが大きく、トルク伝達性に劣るものであった。