(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362281
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】酸化亜鉛結晶の生成方法
(51)【国際特許分類】
C01G 9/02 20060101AFI20180712BHJP
C30B 29/16 20060101ALI20180712BHJP
C30B 7/10 20060101ALI20180712BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20180712BHJP
A61K 41/00 20060101ALI20180712BHJP
A61K 31/728 20060101ALI20180712BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20180712BHJP
A61K 31/4166 20060101ALI20180712BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
C01G9/02 B
C30B29/16
C30B7/10
A61K47/02
A61K41/00
A61K31/728
A61P17/16
A61K31/4166
A61P17/02
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-65472(P2017-65472)
(22)【出願日】2017年3月29日
(62)【分割の表示】特願2012-120491(P2012-120491)の分割
【原出願日】2012年5月28日
(65)【公開番号】特開2017-124973(P2017-124973A)
(43)【公開日】2017年7月20日
【審査請求日】2017年4月28日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行者名 : 学校法人千葉工業大学 刊行物名 : 平成23年度 生命環境科学科卒業研究最終審査会要旨集 発行年月日 : 平成24年2月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】598163064
【氏名又は名称】学校法人千葉工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100109553
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】柴田 裕史
(72)【発明者】
【氏名】橋本 和明
(72)【発明者】
【氏名】河井 孝之
(72)【発明者】
【氏名】渡井 麗人
(72)【発明者】
【氏名】神崎 友浩
【審査官】
森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−091300(JP,A)
【文献】
特表平09−501928(JP,A)
【文献】
特許第5703517(JP,B2)
【文献】
特開2004−283924(JP,A)
【文献】
特開2008−254991(JP,A)
【文献】
特開2007−204405(JP,A)
【文献】
特開2004−067631(JP,A)
【文献】
特開2003−212716(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0143679(US,A1)
【文献】
TAN, Y. et al.,"Electrochemical Tailoring of Lamellar-Structured ZnO Films by Interfacial Surfactant Templating",Langmuir,2005年 9月13日,Vol.21, No.21,p.9618-9624,DOI:10.1021/la050789x
【文献】
NI, Y. et al.,"Hydrothermal preparation, characterization and property research of flowerlike ZnO nanocrystals built up by nanoflakes,Materials Research Bulletin,2008年 2月 1日,Vol.43, No.11,p.2919-2928,DOI:10.1016/j.materresbull.2007.12.004
【文献】
SEGOVIA, M. et al.,Zinc oxide/carboxylic acid lamellar structures,Materials Research Bulletin,2011年 7月 2日,Vol.46, No.11,p.2191-2195,DOI:10.1016/j.materresbull.2011.06.040
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 9/00 − 9/08
A61K 31/4166
A61K 31/728
A61K 41/00
A61K 47/02
A61P 17/02
A61P 17/16
C30B 7/10
C30B 29/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤分子を含みアンモニア水によりpH12.0〜12.5に調整された水溶液を生成するステップと、
前記水溶液にZnO前駆体を加えてZnO前駆体水溶液を生成するステップと、
前記ZnO前駆体水溶液をさらに撹拌するステップと、
前記撹拌したZnO前駆体水溶液を水熱処理するステップと、
を含む多層構造を有する粒子形状が六角板状の酸化亜鉛結晶を生成する酸化亜鉛結晶の生成方法であって、
前記界面活性剤分子を含む水溶液は、アルキル硫酸塩水溶液であり、
前記ZnO前駆体水溶液におけるアルキル硫酸塩濃度が300mMである酸化亜鉛結晶の生成方法。
【請求項2】
前記ZnO前駆体水溶液は、さらにフタロシアニンを含む請求項1に記載の酸化亜鉛結晶の生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は酸化亜鉛結晶の生成方法、及びこれにより生成される酸化亜鉛結晶を用いた薬剤に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化亜鉛は、紫外線吸収剤、創傷治療剤、光触媒などの材料として、多岐にわたる分野で用いられている。また、pH値を調整したり、有機物を添加したりすることで様々な形状の酸化亜鉛結晶を生成可能であることが可能である。
【0003】
例えば、特許文献1においては、亜鉛イオンとアミン化合物を含むpH7以上の水溶液に基材を浸漬することによって、基材上に結晶形状が花状の酸化亜鉛結晶を自己組織的に析出させる方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2においては、亜鉛化合物水溶液とアミン化合物とを混合し、混合水溶液のpHを7以上として沈殿物を析出させ、さらに水溶液を40℃以上に加熱することによって、マイクロスケールの針状形状を有する酸化亜鉛粒子や花びら形状を有する酸化亜鉛集積体などを製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−230877
【特許文献2】特開2008−254991
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術においては、酸化亜鉛結晶の形状に関してマイクロスケールでの制御が主であり、ナノスケールでの制御については報告されていなかった。そこで、本発明者は、マイクロスケールで制御された酸化亜鉛結晶に対して、薬物成分などを保持することが可能なナノスケールの構造を同時に付与することを目的として研究を行った。その結果、界面活性剤が形成する分子集合体を鋳型とすることで、有効成分などを配置することが可能なナノスケールの構造を付与するとともに、マイクロスケールで、5μm程度の六角錐状、六角板状および円盤状に粒子の形状が制御されたZnO粒子の調製に成功した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願出願人は、以下に記載の酸化亜鉛結晶の生成方法を提案する。
【0008】
第一の発明として、界面活性剤分子を含みアルカリ性にpH調整された水溶液にZnO前駆体を加えたZnO前駆体水溶液を用いて多層構造を有する酸化亜鉛結晶を生成する酸化亜鉛結晶の生成方法、を提案する。
【0009】
第二の発明として、前記ZnO前駆体水溶液をさらに撹拌し、水熱処理することで多層構造を有する酸化亜鉛結晶を生成する酸化亜鉛結晶の生成方法、を提案する。
【0010】
第三の発明として、前記界面活性剤分子を含む水溶液は、アルキル硫酸塩水溶液である第一の発明又は第二の発明に記載の多層構造を有する酸化亜鉛結晶を生成する酸化亜鉛結晶の生成方法、を提案する。
【0011】
第四の発明として、前記ZnO前駆体水溶液は、さらにフタロシアニンを含む第一の発明から第三の発明のいずれか一に記載の多層構造を有する酸化亜鉛結晶を生成する酸化亜鉛結晶の生成方法、を提案する。
【0012】
第五の発明として、第一の発明から第四の発明のいずれか一に記載の多層構造を有する酸化亜鉛結晶を生成する酸化亜鉛結晶の生成方法でえられた多層構造を有する酸化亜鉛結晶を用いて、その層間に有効成分を配置させた薬剤、を提案する。
【0013】
第六の発明として、前記有効成分は、皮膚に対して効能を有する有効成分である第五の発明に記載の薬剤、を提案する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の生成方法により生成される酸化亜鉛結晶は、マイクロスケールでは六角錐状、六角板状及び円盤状の形状が付与されており、ナノスケールでは周期構造を有する層が堆積したような構造(多層構造)を有するラメラ構造が付与されている。
【0015】
さらに、この堆積している層の間に有効成分を配置させた薬剤により、新規な薬剤が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】酸化亜鉛結晶の生成・抽出方法の処理の流れの一例を示す図
【
図3】実施例1の酸化亜鉛結晶の生成方法の流れを示す図
【
図4】実施例1の酸化亜鉛結晶の低角XRDパターンを示す図
【
図5】実施例1の酸化亜鉛結晶の低角XRDパターンを示す図
【
図6】実施例1の酸化亜鉛結晶の広角XRDパターンを示す図
【
図7】実施例1の酸化亜鉛結晶の広角XRDパターンを示す図
【
図10】実施例2の酸化亜鉛結晶の生成方法の流れを示す図
【
図11】実施例2の酸化亜鉛結晶の低角XRDパターンを示す図
【
図12】実施例2の酸化亜鉛結晶の広角XRDパターンを示す図
【
図13a】実施例2の酸化亜鉛結晶のSEM像(a)
【
図13b】実施例2の酸化亜鉛結晶のSEM像(b)
【
図13c】実施例2の酸化亜鉛結晶のSEM像(c)
【
図13d】実施例2の酸化亜鉛結晶のSEM像(d)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本件発明の実施の形態について、添付図面を用いて説明する。なお、本件発明は、これら実施形態に何ら限定されるべきものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得る。
【0018】
<実施形態:概要>
本発明の酸化亜鉛結晶は、界面活性剤分子を含みアルカリ性にpH調整された水溶液にZnO前駆体を加えたZnO前駆体水溶液を用いるという簡便な手法により、多層構造を有する酸化亜鉛結晶を生成することができる酸化亜鉛結晶の生成方法である。
【0019】
<酸化亜鉛結晶の生成・抽出>
図1は、酸化亜鉛結晶の生成・抽出方法の処理の流れの一例を示す図である。まずステップS0101において、界面活性剤をイオン交換水に溶解させ、界面活性剤分子を含む水溶液を作成して、この水溶液がアルカリ性となるようにpH調整剤を添加する。次にステップS0102において、ステップS0101にて得られた水溶液に対してZnO前駆体を加え、撹拌する。次に、ステップS0103において、ステップS0102にて得られた撹拌後の混合溶液(ZnO前駆体水溶液)について水熱処理を行う。次にステップS0104において、ステップS0103にて得られた水熱処理後のZnO前駆体水溶液について、濾過・洗浄して、固液分離する。次にステップS0105において、ステップS0104にて得られた粒子を乾燥させる。以上の処理を経ることによって、酸化亜鉛結晶の生成と抽出を行うことが可能になる。
【0020】
界面活性剤は、アニオン界面活性剤を用いる。アニオン界面活性剤としては、長鎖アルキル鎖を有し親水部にスルホ基を有するアニオン界面活性剤や、長鎖アルキル鎖を有し親水部にカルボキシル基を有するアニオン界面活性剤などを用いる。具体的にはアルキル硫酸塩を用いることが好ましい。例えば、12個の炭素原子鎖が硫酸塩に接続された構造を持つドデシル硫酸ナトリウム(SDS)や、16個の炭素原子鎖が硫酸塩に接続された構造を持つヘキサデシル硫酸ナトリウム(SHS)、18個の炭素原子鎖が硫酸塩に接続された構造を持つオクタデシル硫酸ナトリウムである。対イオンはナトリウム以外に、カリウム、水素等であっても良い。
【0021】
なお、界面活性剤は、アニオン界面活性剤の他にカチオン界面活性剤をも含んでいてもよい。この場合、多層構造を形成するためにはアニオン界面活性剤はカチオン界面活性剤と比べて相対的に多くする必要があるが、割合としては9:1とすることも可能であるし、6:4とすることも可能である。カチオン界面活性剤を加えることによって、生成される酸化亜鉛結晶の角が丸くなり、発がん性を抑制することが可能になる。カチオン界面活性剤としては、長鎖アルキル鎖を有する四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤などを用いる。例えばセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)を用いることが可能である。
【0022】
水溶液はアルカリ性であれば足りるが、酸化亜鉛結晶の形状を板状に近い形状とするために、pHは10〜14の範囲とすることが好ましい。なお、pHを12.0〜12.5とした場合は、酸化亜鉛結晶は六角板状の構造となり、pHを13.0〜13.8とした場合は、花弁状構造となる。pH調整剤としては、種々のものが考えられるが、例えば、強塩基である水酸化ナトリウムや、弱塩基であるアンモニア(NH
3)などの水溶液を用いることが可能である。
【0023】
水熱処理は、高温の水とくに高温高圧の水の存在の下に行われる物質の合成および結晶成長法をいう。酸化亜鉛結晶の形状を板状に近い形状とするために、温度は100℃〜150℃とし、密閉容器を電気炉に入れるとき、密閉容器内容積全体が300ミリリットル程度、溶液60〜100ミリリットル程度とすれば良く、溶液以外の空気部分の体積はその差分となる。
【0024】
撹拌後の混合溶液を濾過・洗浄する方法としては、濾過器や吸引濾過器を用いたり、遠心分離・ピペッティングを行った後にイオン交換水で外溶液の洗浄を行ったりすることが考えられる。また、合わせて超音波洗浄を行うことも可能である。
【0025】
得られた結晶を乾燥させる際は、温度は60℃程度で24時間程度行うことが好ましい。
【0026】
ZnO前駆体は、水溶性ZnO前駆体であればよい。すなわち、ZnO前駆体は水に溶けてZn
2+を提供する亜鉛化合物である。ZnO前駆体としては、例えば、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛七水和物を用いることができる。
【0027】
図2は、アニオン界面活性剤を含む水溶液にZnO前駆体である亜鉛イオン(Zn
2+)を加えることでアニオン界面活性剤層と酸化亜鉛層とからなる多層構造が形成される様子を示した図である。この図に示すように、アニオン界面活性剤の疎水基部は互いに向き合ってつながり、疎水性のアニオン界面活性剤層(アニオン界面活性剤の分子集合体)を形成している。また、亜鉛イオン(Zn
2+)は静電的相互作用によってアニオン界面活性剤の親水基部周辺に酸化亜鉛層を形成している。アニオン界面活性剤層と酸化亜鉛層は互いに重なり合うことによって多層構造を形成する。多層構造は数ナノメートル程度の周期性を有する構造(ラメラ構造)になっている。
【0028】
また、界面活性剤が形成する分子集合体を鋳型として調製される無機材料(ここでは酸化亜鉛粒子)は、規則的な細孔構造(メソ構造)が付与される。そこで、この粒子のメソ構造内に薬物を内包することができれば、薬物の徐放に加え、酸化亜鉛の溶解にともなった生体必須元素の亜鉛の供給が可能なドラッグデリバリーシステムのキャリヤーへの応用が期待できる。例えば、前記ZnO前駆体水溶液は、さらにフタロシアニンを含むこととすれば、多層構造を有する酸化亜鉛結晶の層間に有効成分(癌の光線力学治療への応用が期待されるフタロシアニン(Pc))を含む薬剤を生成することができる。
【0029】
その他、多層構造を有する酸化亜鉛結晶の層間(メソ構造内)には、ヒアルロン酸などの肌の保湿成分やアラントインなどの創傷治療成分など、皮膚に対して効能を有する有効成分を配置させることが可能である。これにより、本発明に記載の酸化亜鉛結晶の生成方法でえられた多層構造を有する酸化亜鉛結晶を用いて、その層間に有効成分を配置させた薬剤を実現できる。薬剤を生成する際は、本発明の方法により酸化亜鉛結晶を生成する際に、予め水溶液中に有効成分を加えておく。
【0030】
<効果>
本発明の生成方法により生成される酸化亜鉛結晶は、マイクロスケールでは六角錐状、六角板状及び円盤状の形状が付与されており、ナノスケールでは周期構造を有する層が堆積したような構造(多層構造)を有するラメラ構造が付与されている。六角板状及び円盤状の形状を有するために、球状粒子に比べ、紫外線などの光を吸収する実効面積が大きくなる。また、多層構造の層間(メソ構造内)に有効成分を配置させることが可能となる。したがって、例えば、有効成分としてヒアルロン酸などの肌の保湿成分を配置することで、紫外線吸収効率の高い、かつ、皮膚の保湿性を一定に保つことが可能な新規なサンスクリーン剤が得られる。また、アラントインなどの創傷治療成分を配置することで、新規な創傷治療剤にもなる。
【0031】
また、六角錐状の構造については、明確な応用を示唆することはできないが、六角錐状ZnO粒子についての報告は世界的に例がないため、現在ZnOが応用されている分野によらず、新規な応用分野を開拓する材料になることが予想される。
【0032】
<<実施例1>>
<酸化亜鉛結晶の生成方法>
本実施例の酸化亜鉛結晶を生成するために、界面活性剤としてヘキサデシル硫酸ナトリウム(SHS)を用い、ZnO前駆体として硫酸亜鉛水溶液(ZnSO
4・7H
2O)を用い、pH調整剤としてアンモニア水(NH
3(aq))を用いた。
【0033】
図3は、本実施例の酸化亜鉛結晶の生成方法の流れを示す。まずステップS0301において、所定量のヘキサデシル硫酸ナトリウムをイオン交換水に溶解させ、100mM、300mMのヘキサデシル硫酸ナトリウム水溶液45mlをそれぞれ生成した。次にステップS0302において、ステップS0301にて得られた各ヘキサデシル硫酸ナトリウム水溶液について、<1>フタロシアニンを添加せず、または、<2>フタロシアニン1.0×10
−5molを加え、それぞれ70℃で24時間攪拌した。次に、ステップS0303において、ステップS0302にて得られた各溶液に、アンモニア水5mlを加えてアルカリ性にpH調整した。次にステップS0304において、ステップS0303にて得られた各溶液に2Mの硫酸亜鉛七水和物を10ml加えてSHS濃度100mM又は300mM、硫酸亜鉛濃度333mMの混合溶液(全量60ml)を作製し、70℃で24時間撹拌した。次にステップS0305において、ステップS0304にて得られた各溶液に対して150℃で24時間水熱処理を行った。次に、ステップS0306において、ステップS0305で得られた各溶液に対して、H
2O洗浄・吸引濾過を行った。次にステップS0307において、ステップS0306で得られた粒子に対し、60℃で24時間乾燥処理を行った。
【0034】
また、ステップS0308において、ステップS0305で得られた各溶液に対して、遠心分離・ピペッティングを行った後、ステップS0309において、超音波洗浄を行った。
【0035】
<解析方法>
上記生成方法により得られた試料について構造特性評価を行った。具体的には、ステップS0307にて得られた試料についてX線回折測定を行い、ステップS0309で得られた試料について走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。
【0036】
<結果>
図4、
図5は、X線回折測定により得られた酸化亜鉛結晶の低角XRDパターンを示す図である(横軸:2θ(CuKα)、縦軸:X線強度)(
図4はフタロシアニン未添加の場合、
図5はフタロシアニン添加の場合)。
図4に示すように、ステップS0301において、300mMのヘキサデシル硫酸ナトリウム水溶液を用いた場合(フタロシアニン未添加)は、2θ=1.80°、5.18°および8.62°近傍に、ラメラ構造の(100)、(200)、(300)面に帰属される回折ピークが観測された。また、
図5に示すように、2θ=1.74°、3.34°および5.16°近傍に、フタロシアニンを添加しても同様にラメラ構造の(100)、(200)、(300)面に帰属される回折ピークが観測された。
【0037】
また、
図6及び
図7は、X線回折測定により得られた酸化亜鉛結晶の広角XRDパターンを示す図である(横軸:2θ(CuKα)、縦軸:X線強度)。この図によればSHS濃度及びフタロシアニンの添加の有無によらずZnO(ICDD:36−1451)に帰属される回析ピークが確認された。
【0038】
図8は、走査型電子顕微鏡(SEM)により得られた酸化亜鉛結晶の像である(図(a):SHS濃度100mMかつフタロシアニン未添加の場合、図(b):SHS濃度300mMかつフタロシアニン未添加の場合、図(c):SHS濃度100mMかつフタロシアニン添加の場合、図(d):SHS濃度300mMかつフタロシアニン添加の場合)。この像が示すように、(a)上記ステップS0301において100mMのヘキサデシル硫酸ナトリウム水溶液を用い、ステップS0302においてフタロシアニン未添加の場合は、粒子径1〜2μmの不均一な粒子が確認された。また、(b)ステップS0301において、300mMのヘキサデシル硫酸ナトリウム水溶液を用い、ステップS0302においてフタロシアニン未添加の場合は、粒子径1〜2μmの粒子系分布に幅のある六角板状の粒子が確認された。また、(c)ステップS0301において100mMのヘキサデシル硫酸ナトリウム水溶液を用い、ステップS0302においてフタロシアニン添加の場合は、粒子径1〜2μmの不均一な粒子が確認された。また、(d)ステップS0301において、300mMのヘキサデシル硫酸ナトリウム水溶液を用い、ステップS0302においてフタロシアニン添加の場合は、粒子径約10μmの均一な六角板状の粒子が確認された。
【0039】
<考察>
以上の結果から、上記生成方法によりSHS濃度によらず酸化亜鉛結晶が生成され、SHS濃度300mMで上記生成方法により生成される酸化亜鉛結晶は、全体としてマイクロスケールの六角板状の構造を有し、一部にナノスケールのアニオン界面活性剤層と酸化亜鉛層とからなる多層構造(ラメラ構造)を有していることがわかる。
【0040】
上記酸化亜鉛結晶は六角板状の構造を有しているため、針状形状の結晶や球状の結晶と比較して、紫外線などの光を吸収する実効面積が大きい。また、ナノスケールの多層構造を有しているため、ヒアルロン酸などの皮膚の保湿性を保つ成分やアラントインなどの創傷治療成分を内包させることが可能になる。
【0041】
よって、紫外線吸収効率が高く、かつ皮膚の保湿性を一定に保つことが可能な新規なサンスクリーン剤や、切り傷などの回復を促進する新規な創傷治療剤などの材料として用いることができる。
【0042】
なお、フタロシアニンが添加された場合には、アニオン界面活性剤の疎水基部が互いに向き合って形成している有機層にフタロシアニンが入り込むために、多層構造(ラメラ構造)に、フタロシアニン未添加の場合と若干の変化が生じているものと考えられる。
【0043】
<徐放性試験>
さらに、アセトンに塩化水素を添加した溶媒に得られた酸化亜鉛粒子を加え、蛍光灯27W照射下で24時間攪拌を行った。この溶液中のフタロシアニン(Pc)をUV−vis吸収スペクトル測定により検出することで徐放性の評価を行った。
図9に示すように、種々の添加量でフタロシアニンを加えSHS濃度300mMで調製した試料を用いて徐放性試験を行った結果、溶液中へのフタロシアニン(Pc)の溶出が確認された。この結果は、得られた酸化亜鉛粒子が徐放性を有していることを示す。
【0044】
<<実施例2>>
<酸化亜鉛結晶の生成方法>
本実施例の酸化亜鉛結晶を生成するために、界面活性剤としてヘキサデシル硫酸ナトリウム(SHS)を用い、ZnO前駆体として2Mの硫酸亜鉛水溶液を用い、pH調整剤としてアンモニア水(NH
3(aq))を用いた。
【0045】
図10は、本実施例の酸化亜鉛結晶の生成方法の流れを示す。まずステップS0901において、所定量のヘキサデシル硫酸ナトリウムをイオン交換水に溶解させ、300mMのヘキサデシル硫酸ナトリウム水溶液45mlを生成した。次にステップS0902において、ステップS0901にて得られたヘキサデシル硫酸ナトリウム水溶液について、フタロシアニン1.0×10
−5molを加え、70℃で24時間攪拌した。次に、ステップS0903において、ステップS0902にて得られた溶液に、アンモニア水5mlを加えてアルカリ性にpH調製した。次にステップS0904において、ステップS0903にて得られた溶液に2Mの硫酸亜鉛水溶液を10ml加えて、SHS濃度300mM、硫酸亜鉛濃度333mMの混合溶液(全量60ml)を作製し、70℃で24時間撹拌した。その後、<1>水熱処理前に吸引濾過処理を行うステップと、<2>水熱処理前に吸引濾過処理を行わないステップとにそれぞれ移行した。すなわち、<1>ステップS0905において、ステップS0904にて得られた溶液に対してH
2O洗浄・吸引濾過を行った(以下「先洗浄ステップ」という)。次に、S0906において、ステップS0905で得られた溶液について、150℃で24時間水熱処理を行った。次に、ステップS0907において、ステップS0906で得られた溶液に対して、H
2O洗浄・吸引濾過を行った。次にステップS0908において、ステップS0907で得られた粒子に対し、60℃で24時間乾燥処理を行った。また、ステップS0909において、ステップS0906で得られた各溶液に対して、遠心分離・ピペッティングを行った後、ステップS0910において、超音波洗浄を行った。
【0046】
また、<2>水熱処理前に吸引濾過処理を行わないステップについては、上記S0905の先洗浄ステップを省略し、S0906からS0910までの各ステップを行った。
【0047】
<解析方法>
上記生成方法により得られた試料について構造特性評価を行った。具体的には、ステップS0908にて得られた試料についてX線回折測定を行い、ステップS0910で得られた試料について走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。
【0048】
<結果>
図11は、X線回折測定により得られた酸化亜鉛結晶の低角XRDパターンを示す図である(横軸:2θ(CuKα)、縦軸:X線強度)。この図に示すように、ステップS0901において、<1>先洗浄ステップありの場合は、ラメラ構造を示す回折ピークが観測されなかった。これに対し、<2>先洗浄ステップなし(通常ステップ)の場合は、2θ=1.74°、3.34°および5.16°近傍に、ラメラ構造の(100)、(200)、(300)面に帰属される回折ピークが観測された。
【0049】
また、
図12は、X線回折測定により得られた酸化亜鉛結晶の広角XRDパターンを示す図である(横軸:2θ(CuKα)、縦軸:X線強度)。この図によれば先洗浄ステップの有無によらずZnO(ICDD:36−1451)に帰属される回析ピークが確認された。
【0050】
図13は、走査型電子顕微鏡(SEM)により得られた酸化亜鉛結晶の像である(図(a)及び図(b):先洗浄ステップなしの場合、図(c)及び図(d):先洗浄ステップありの場合)。この像が示すように、先洗浄ステップなしの場合には、10μm程度の六角板状の酸化亜鉛結晶が確認された。また、先洗浄ステップありの場合には、2〜10μmの六角錐状の酸化亜鉛結晶が確認された。
【0051】
<考察>
以上の結果から、上記生成方法により先洗浄ステップの有無によらず酸化亜鉛結晶が生成され、上記生成方法中、先洗浄ステップなしの場合に生成される酸化亜鉛結晶は、全体としてマイクロスケールの六角板状の構造を有し、一部にナノスケールのアニオン界面活性剤層と酸化亜鉛層とからなる多層構造(ラメラ構造)を有していることがわかる。
【0052】
上記酸化亜鉛結晶は六角板状の構造を有しているため、針状形状の結晶や球状の結晶と比較して、紫外線などの光を吸収する実効面積が大きい。また、ナノスケールの多層構造を有しているため、ヒアルロン酸などの皮膚の保湿性を保つ成分やアラントインなどの創傷治療成分を内包させることが可能になる。
よって、紫外線吸収効率が高く、かつ皮膚の保湿性を一定に保つことが可能な新規なサンスクリーン剤や、切り傷などの回復を促進する新規な創傷治療剤などの材料として用いることができる。