特許第6362298号(P6362298)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハーマン ベッカー オートモーティブ システムズ ゲーエムベーハーの特許一覧

<>
  • 特許6362298-個別の再生ゾーンを有する音響システム 図000002
  • 特許6362298-個別の再生ゾーンを有する音響システム 図000003
  • 特許6362298-個別の再生ゾーンを有する音響システム 図000004
  • 特許6362298-個別の再生ゾーンを有する音響システム 図000005
  • 特許6362298-個別の再生ゾーンを有する音響システム 図000006
  • 特許6362298-個別の再生ゾーンを有する音響システム 図000007
  • 特許6362298-個別の再生ゾーンを有する音響システム 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362298
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】個別の再生ゾーンを有する音響システム
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/12 20060101AFI20180712BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20180712BHJP
   H04R 1/40 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   H04R3/12 Z
   B60R11/02 S
   H04R1/40 310
【請求項の数】14
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-284942(P2012-284942)
(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2013-141235(P2013-141235A)
(43)【公開日】2013年7月18日
【審査請求日】2015年12月25日
(31)【優先権主張番号】11196080.3
(32)【優先日】2011年12月29日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504147933
【氏名又は名称】ハーマン ベッカー オートモーティブ システムズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング ヘス
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン ヴァーグナー
【審査官】 須藤 竜也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−236791(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02101411(EP,A1)
【文献】 特開2007−001507(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0273722(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0286426(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/12
B60R 11/02
H04R 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)の少なくとも2つの再生ゾーン(40、41、42、43)で第一の音声信号(10a)と第二の音声信号(11a)を個別に混合する方法であって、前記方法は、
前記第一の音声信号(10a)および前記第二の音声信号(11a)を受け取ることと、
人間の聴覚の心理音響モデルに基づいて前記第一の音声信号(10a)の音の大きさを決定することと、
前記第二の音声信号(11a)のタイプ情報を確立することと、
前記車両(1)の前記少なくとも2つの再生ゾーン(40、41、42、43)の各々について、前記第二の音声信号(11a)の前記タイプ情報に応じて混合モード(50、51、52)を個別に選択することであって、前記混合モード(50、51、52)は、前記第一の音声信号(10a)の信号出力利得前記第二の音声信号(11a)信号出力利得との関係に関係し、前記第二の音声信号の前記信号出力利得は、前記第一の音声信号の前記信号出力利得よりも所定の係数だけ大きく、前記所定の係数は、前記決定された音の大きさが増加するときに低減し、前記第二の音声信号の前記信号出力利得は、音の大きさの閾値よりも低く一定に維持される、ことと、
前記少なくとも2つの再生ゾーン(40、41、42、43)の各々で、前記選択された混合モード(50、51、52)に基づき、かつ前記決定された音の大きさに基づいて、前記第一の音声信号(10a)と前記第二の音声信号(11a)を再生のために個別に混合することと
を含む、方法。
【請求項2】
第一の混合モード(50)に基づいて個別に混合するときにおいて、前記第一の音声信号(10a)の第一の信号出力利得が前記第二の音声信号(11a)の第二の信号出力利得と比較して特定の量だけ低減され、前記特定の量は前記音の大きさに依存する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第二の混合モード(51)に基づいて個別に混合するときにおいて、前記第一の音声信号(10a)の第一の信号出力利得は、音量設定に関係した基準信号出力利得と比較して変更されずに維持され、前記第二の音声信号(11a)の第二の信号出力利得は、前記基準信号出力利得と比較して増加される、請求項1または2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記第一の混合モード(50)または前記第二の混合モード(51)で混合するときにおいて、前記第一の音声信号(10a)の前記信号出力利得と前記第二の音声信号(11a)の前記信号出力利得の関係は、前記第二の音声信号(11a)の信号利得が前記第一の音声信号(10a)の信号出力利得よりも所定の係数だけ大きく、前記所定の係数は、音の大きさ増加するために低減し、前記第二の出力音声信号(11a)の前記信号出力利得は音の大きさの閾値よりも低く一定に維持される、請求項2または3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
第三の混合モード(52)に基づいて個別に混合するときにおいて、前記第二の音声信号(11a)の第二の信号出力利得がゼロに設定される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第二の音声信号(11a)は案内信号であり、前記タイプ情報は、ナビゲーション指示、前方駐車距離制御音声信号、後方駐車距離制御音声信号、電話の通話ステータス通知、電話の通話、前部ゴング、後部ゴングのうちの1つに関係する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第二の音声信号(11a)の前記タイプ情報がナビゲーション指示または電話の通話ステータス通知に関係する場合前記車両(1)の前部座席乗員を対象とする第一の再生ゾーン(40、41)について前記第一の混合モード(50)が選択され、前記車両(1)の後部座席乗員を対象とする第二の再生ゾーン(42、43)について前記第三の混合モード(52)が選択される、請求項2および5に記載の方法。
【請求項8】
前記第二の音声信号(11a)の前記タイプ情報が後方駐車距離制御音声信号または後部ゴングに関係する場合、前記車両(1)の前部座席乗員を対象とする第一の再生ゾーン(40、41)について前記第三の混合モード(52)が選択され、前記車両(1)の後部座席乗員を対象とする第二の再生ゾーン(42、43)について前記第二の混合モード(51)が選択される、請求項3および5に記載の方法。
【請求項9】
前記第二の音声信号(11a)の前記タイプ情報が前方駐車距離制御音声信号または前部ゴングに関係する場合、前記車両(1)の前部座席乗員を対象とする第一の再生ゾーン(40、41)について前記第二の混合モード(51)が選択され、前記車両(1)の後部座席乗員を対象とする第二の再生ゾーン(42、43)について前記第三の混合モード(52)が選択される、請求項3および5に記載の方法。
【請求項10】
各再生ゾーン(40、41、42、43)におけるそれぞれの音声信号(10a、11a)の同期再生をさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法であって、再生のための混合は、
音量設定に関係した少なくとも1つの基準信号出力利得(AG、EG)を受け取ることと、
前記少なくとも1つの基準信号出力利得および前記混合モード(50、51、52)および前記決定された音の大きさに基づいて、第一の信号出力利得(AEG)および第二の信号出力利得(AAG)を計算することと、
前記第一の信号出力利得を用いて前記第一の音声信号(10a)を増幅することと、
前記第二の信号出力利得を用いて前記第二の音声信号(11a)を増幅することと、
前記増幅された第一の音声信号(10a)および前記増幅された第二の音声信号(11a)を混合して単一の音声信号を得ることと
を含む方法。
【請求項12】
車両(1)内の音響システム(2)であって、
第一の音声信号(10a)を提供する第一の音声信号源(10)と、
第二の音声信号(11a)を提供する第二の音声信号源(11)と、
人間の聴覚の心理音響モデルに基づいて前記第一の音声信号(10a)の音の大きさを決定するように構成された音の大きさ決定ユニット(14)と、
前記第二の音声信号(11a)のタイプ情報を確するように構成されたタイプ情報ユニット(12)と、
前記車両(1)の少なくとも2つの再生ゾーン(40、41、42、43)の各々について、前記第二の音声信号(11a)の前記タイプ情報に応じて混合モード(50、51、52)を個別に選択するように構成された制御ユニット(13)であって、前記混合モード(50、51、52)は前記第一の音声信号(10a)の信号出力利得と前記第二の音声信号(11a)信号出力利得との関係に関係し、前記第二の音声信号の前記信号出力利得は、前記第一の音声信号の前記信号出力利得よりも所定の係数だけ大きく、前記所定の係数は、前記決定された音の大きさが増加するときに低減し、前記第二の音声信号の前記信号出力利得は、音の大きさの閾値よりも低く一定に維持され、前記制御ユニット(13)は、前記少なくとも2つの再生ゾーン(40、41、42、43)の各々で、前記選択された混合モード(50、51、52)および前記決定された音の大きさに基づいて前記第一の音声信号(10a)と前記第二の音声信号(11a)とを再生のために個別に混合するように構成され、制御ユニット(13)と、
前記少なくとも2つの再生ゾーン(40、41、42、43)を個別に対応する複数のスピーカー(15a、15b)と
を備える、音響システム(2)。
【請求項13】
前記複数のスピーカー(15a、15b)は、各々が前記車両(1)の前部座席の運転者、前記車両(1)の前部座席の運転助手、前記車両(1)の左後部座席の乗員車両(1)の右後部座席の乗員のうちの一つまたは複数を対象とした少なくとも2つの再生ゾーン(40、41、42、43)を対応する、請求項12に記載の音響システム(2)。
【請求項14】
前記音響システム(2)は、請求項211の方法のいずれかを実行するようにさらに構成される、請求項12または13に記載の音響システム(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一の音声信号源と、第二の音声信号源と、少なくとも2つの再生ゾーンを個別に対応する複数のスピーカーとを備える音響システム、およびその少なくとも2つの再生ゾーンで個別に第一の音声信号と第二の音声信号とを混合する方法に関する。とくに本発明の用途が見出されるのは、ナビゲーションモジュールおよびオーディオモジュール(ラジオ受信機、コンパクトディスクユニットなど)を装備したマルチメディアシステムが使用される自動車内である。
【背景技術】
【0002】
このような自動車ナビゲーションシステムは、かなり以前から知られており、また、新車または後付け用に提供されることがますます増えている。その状況で、ナビゲーションシステムは、車両の運転者を現在地から目的地まで案内するために使用される。多くのシステムでは、この案内は、次の特定地点でどうすべきかを運転者に音声で指示することによって行われる。例として、ナビゲーションシステムは、次の信号機で右折しなければならないという案内音声信号によって運転者の注意を促してもよい(例:「200メートル先、右折です」)。
【0003】
最新の自動車では、幅広い種類のそのような案内音声信号が存在する。その他のタイプの案内信号として、たとえば、電話の通話、駐車距離制御の音声情報、ゴングなである可能性がある。
【0004】
多くの場合、運転者は、案内信号とともにラジオまたはコンパクトディスクなどの娯楽音声源も使用する。案内の場合、案内音響信号が他の音声信号源の音響信号(本応用例では娯楽音響源と呼ぶ)と混合される。案内音声信号が存在する時にその案内音声信号の可聴性を可能にするために娯楽音響源の平均出力レベルを適合させる方法が知られている。
【0005】
しかし、最新の車両には多数の案内信号が使用され、存在しているため、典型的には、使用者の邪魔になる可能性がある娯楽音声信号の再生に対して頻繁な介入が必要とされる。
【0006】
したがって、より効率的かつ柔軟な方法で音声信号を混合する手法を提供する必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の必要性は独立請求項によって充足され、従属請求項に実施形態を記載する。
【0008】
一態様によれば、車内の少なくとも2つの再生ゾーンで個別に第一の音声信号と第二の音声信号を混合する方法が提供される。本方法は、第一の音声信号および第二の音声信号を受け取ることと、人間の聴覚の心理音響モデルに基づいて第一の音声信号の音の大きさを決定することを含む。本方法は、第二の音響信号のタイプ情報を確立することと、車内の少なくとも2つの再生ゾーンの各々について、第二の音声信号のタイプ情報に応じて混合モードを個別に選択することとを含む。この混合モードは、音声信号(複数)の信号出力利得の相対関係に関係する。本方法はさらに、選択された混合モードに基づき、決定された音の大きさに基づいて、少なくとも2つの再生ゾーンの各々で第一の音声信号と第二の音声信号を再生のために個別に混合することを含む。
【0009】
具体的には、第一の音声信号は、たとえばCD、カセット、ラジオ、インターネットなどの娯楽音声源から受け取る娯楽音声信号に関係してもよい。また、第二の音声信号は、たとえば案内信号に関係してもよい。異なるタイプの案内信号を受け取ってもよい。る可能性があり、その例として、タイプ情報は、ナビゲーション指示、前方駐車距離制御音声信号、後方駐車距離制御音声信号、電話の通話ステータス通知、通話、前部ゴング、後部ゴングなどののうちの1つが関係していてもよい。
【0010】
混合モードに基づいて第一の音声信号と第二の音声信号を個別に混合することにより、異なる再生ゾーンに位置する使用者の必要性に従って混合の特徴を適合させることが可能になる場合がある。次いで、各再生ゾーンにおいてそれぞれの音声信号を同期的に再生することが可能になる場合がある。例として、タイプ情報によって示されるように、第二の音声信号は第一の再生ゾーンに位置する使用者に関係があり、第二の再生ゾーンに位置する使用者にとってはさほど関係がないと考えられ、一方で第一の音声信号については逆の関係になる。このとき、第二の音声信号のタイプ情報に基づいて混合モードを選択してもよい。
【0011】
たとえば、第二の音声信号の既知の音声信号源に基づいて第二の音声信号のタイプ情報が確立されてもよい。たとえば、第二の音声信号はナビゲーション指示に関係してもよく、よって、それに従ってタイプ情報が確定されてもよい。たとえば、ナビゲーション指示という形の第二の音声信号はナビゲーション装置から発生するため、タイプ情報が確定される場合がある。
【0012】
次いで、車両の少なくとも2つの再生ゾーンについて、個別にタイプ情報を混合モードと結びつける所定の設定に基づいて混合モードを選択することが可能であってもよい。たとえば、タイプ情報が「ナビゲーション指示」を特定する場合、そのナビゲーション指示は、大きい信号出力利得を使用する運転者の再生ゾーンに対し、小さい信号出力利得は後部座席乗員の再生ゾーンに対して、第一の音声信号を混合するように、所定の関係は再生ゾーンに対する混合モードを選択することができる場合がある。このとき、前部座席の乗員はナビゲーション指示を高音量で知覚する場合がある一方、後部座席乗員はナビゲーション指示が聞こえないか、または低音量でのみ聞く場合がある。しかし、特定のタイプ情報に適用される混合モードを使用者が自分の好みに応じて指定することも可能であってもよい。
【0013】
したがって、タイプ情報に基づいて混合モードを選択されてもよく、柔軟かつ状況に対応した混合が達成されてもよい。
【0014】
人間の聴覚の心理音響モデルのみを用いて、または音声入力信号の信号統計との組み合わせによって、音の大きさを決定してもよい。音の大きさの推定の1つの可能性がRecommendation ITU−R BS1770−1(「Algorithms to Measure Audio Program Loudness and to a Peak Audio Level」)に記載されている。本応用において、音の大きさは両耳定位モデルによって推定される場合がある。この両耳モデルは、音声入力信号の空間知覚をシミュレートし、音声入力信号が主にノイズなのか、またはそれ以外の音楽または話声などの入力信号なのかという判定を可能にする場合がある。
【0015】
再生のための混合は、音量設定に関係した少なくとも1つの基準信号出力利得を受け取ることと、少なくとも1つの基準信号出力利得および混合モードおよび決定された音の大きさに基づいて第一の信号出力利得および第二の信号出力利得を計算することとを含んでもよい。このとき、混合は、第一の信号出力利得を用いて第一の音声信号を増幅することと、第二の信号出力利得を用いて第二の音声信号を増幅することをさらに含んでもよい。最後に、混合は、増幅された第一と第二の音声信号を混合して単一の音声信号を得ることを含んでもよい。
【0016】
たとえば、使用者による音量設定は、基準信号出力利得によって平均信号出力レベルを指定してもよい。基準信号出力利得は、第一および第二の音声信号の増幅に関する基準レベルとみなされてもよい。この基準信号出力利得に基づいて、第一および第二の音声信号の増幅に用いられる第一および第二の信号出力利得を計算してもよい。このとき、第一の信号出力利得は、第二の信号出力利得と異なる値または等しい値を有してもよく、その結果、第一および第二の音声信号に対して同一または異なる平均信号出力レベルがもたらされる。
【0017】
一般に、音量設定をより大きくすれば、たとえば、より大きな基準信号出力利得によって、より大きな平均信号出力レベルがもたらされるが、決定された音の大きさが時間的に変化する場合があるため、実際の信号出力レベルも時間的に変化する場合がある。さらに、選択された混合モードは、第二の音声信号が存在する期間の全体的な信号出力利得設定を決定する場合がある。
【0018】
第一の音声信号と第二の音声信号とについて基準信号出力利得が異なることも可能であることを理解するべきである。たとえば、1つの音量設定が第一の音声信号および第二の音声信号について異なる基準信号出力利得をもたらせることがある。
【0019】
第一の混合モードに基づいて個別に混合する時、第二の音声信号の第二の信号出力利得と比較した場合、第一の音声信号の第一の信号出力利得を音の大きさに基づいて低減させてもよい。言い換えれば、第一の信号出力利得を低減させる量は、特定の量と等しくてもよく、その特定量が、今度は音の大きさに依存してもよい。このとき、経時的に平均化された第二の音声信号の信号出力レベルは、第一の音声信号の平均信号出力レベルよりも大きくてもよい。このようにして、第二の音声信号(たとえば案内音声信号)の可聴性向上が達成される場合がある。
【0020】
具体的には、第一の混合モードにおいて、第二の信号出力利得を音量設定に関係した基準信号出力利得と等しくし、第一の信号出力利得を基準信号出力利得と比較して低減してもよい。これには、音量設定による使用者の所望レベルと比較して、第一の音声信号の平均化した信号出力レベルが特定の量だけ減少するという効果を有する。言い換えれば、使用者は、案内信号と娯楽信号の混合が娯楽信号の減衰として知覚される一方、案内信号は音量設定による所望の信号レベルで出力される。当然、たとえば音量設定の所望レベルを超える平均信号出力レベルで案内信号を出力することも可能である。第一の音声信号の決定された音の大きさに応じて基準信号出力利得と第一および第二の信号出力利得との相対関係を設定することも可能であってもよい。
【0021】
他の混合モードが可能であってもよい。たとえば、第二の混合モードに基づいて個別に混合する時、音量設定に関係した基準信号出力利得と比較して第一の音声信号の第一の信号出力利得を変化させないまま、第二の音声信号の第二の信号出力利得を基準信号出力利得と比較して増加させてもよい。
【0022】
たとえば、第一の混合モードまたは第二の混合モードで混合する時、第一の音声信号と第二の音声信号との間の信号出力利得の相対関係は、所定の係数で第一の音声信号の信号出力利得より大きい第二の音声信号の信号出力利得であってもよく、音の大きさを増加するために所定の係数を減少し、第二の音声信号の信号利得は閾値音の大きさよりも低く一定に維持される。
【0023】
第二の音声信号に関して閾値の音の大きさよりも低い一定の信号出力利得を与えることにより、第一の音声信号が非常に低い音の大きさの値を有する場合であっても、案内などの可聴性が確保される場合がある。さらに、第二の音声信号の信号出力利得を第一の音声信号の信号利得より大きくすることにより、第二の信号の平均信号出力レベルが第一の信号の平均信号出力レベルより大きくなる場合があり、したがって、常時、案内の可聴性が確保される場合がある。
【0024】
第三の混合モードに基づいて個別に混合する時、第二の音声信号の第二の信号出力利得をゼロに設定してもよい。これは、第二の音声信号の平均信号出力レベルがゼロに等しいことに対応する。たとえば、特定の案内信号、すなわち第二の音声信号が各再生ゾーン内に位置する使用者にとってさほど重要でない場合、第三の混合モードによる混合が望ましい場合がある。第三の混合モードを使用する別の例として、特定の音響信号が特定の再生ゾーンから発生する場合が考えられる。たとえば、車内後部の各再生ゾーンから発生する特定の音声信号を運転者の背後に位置するイベントと結びつけることが望ましい場合がある。この例において、前部再生ゾーン内の混合モードは第三の混合モードであってよく、後部再生ゾーン内の混合モードは第一または第二の混合モードであってよい。
【0025】
次に、たとえば第二の音声信号のタイプ情報がナビゲーション指示または電話の通話ステータス通知に関係している場合、車両の前部座席乗員を対象とする第一の再生ゾーンのために第一の混合モードを選択してもよく、車両の後部座席乗員を対象とする第二の再生ゾーンのために第三の混合モードを選択してもよい。通話ステータス通知は、たとえば、電話の発信音、話し中信号などに関係してもよい。そのような状況において、後部座席乗員にとっての妨げは低減される場合がある。ナビゲーション指示は、車両の運転者にとってのみ関係がある場合がある。このとき、各再生ゾーン内の再生に関して第二の音声信号の第二の信号出力利得をゼロに設定することにより、後部座席乗員にとっての妨げを低減させる場合がある。
【0026】
また、第二の音声信号のタイプ情報が後方駐車距離制御音声信号または後部ゴングに関係する場合は、車両の前部座席乗員を対象とする第一の再生ゾーンのために第三の混合モードを選択してもよく、車両の後部座席乗員を対象とする第二の再生ゾーンのために第二の混合モードを選択してもよい。後部ゴングが発生する場合がある、たとえば、後部ドアが開いているか、またはトランクの蓋が開いている場合である。
【0027】
したがって、第二の音声信号のタイプ情報が前方駐車距離制御音声信号または前部ゴングに関係している場合は、車両の前部座席乗員を対象とする第一の再生ゾーンのために第二の混合モードを選択し、車両の後部座席乗員を対象とする第二の再生ゾーンのために第三の混合モードを選択してもよい。
【0028】
たとえば、駐車距離制御が動作中の状況ならば、第一の音声信号(たとえば娯楽信号)の平均信号出力レベルを低下させる必要がないかもしれない。そのような場合は、第一の音声信号に上乗せして第二の音声信号を混合すればよい。これにより、車両の乗員の妨げを低減する場合がある。
【0029】
さらに別の態様により、車内の音響システムが提供される。本音響システムは、第一の音声信号を提供する第一の音声信号源および第二の音声信号を提供する第二の音声信号源を備える。本音響システムはさらに、人間の聴覚の心理音響モデルに基づいて第一の音声信号の音の大きさを決定するように構成された音の大きさ決定ユニットおよび第二の音声信号のタイプ情報を確定するように構成されたタイプ情報ユニットを備える。本音響システムはさらに、車両の少なくとも2つの再生ゾーンの各々について、第二の音声信号のタイプ情報に応じて混合モードを個別に選択するように構成された制御ユニットを備える。この混合モードは、第一の音声信号と第二の音声信号との信号出力利得の相対関係に関係し、少なくとも2つの再生ゾーンの各々で、選択された混合モードおよび決定された音の大きさに基づいて第一の音声信号と第二の音声信号を再生のために個別に混合するように構成される。本音響システムはさらに、少なくとも2つの再生ゾーンを個別に対応する複数のスピーカーを備える。
【0030】
たとえば、複数のスピーカーが少なくとも2つの再生ゾーンに対応し、各々が車両の前部座席の運転者、車両の前部座席の運転助手、車両の左後部座席の乗員、および車両の右後部座席の乗員のうちの一人または複数を対象としてもよい。
【0031】
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
車両(1)の少なくとも2つの再生ゾーン(40、41、42、43)で第一の音声信号(10a)と第二の音声信号(11a)を個別に混合する方法であって、
上記第一の音声信号(10a)および上記第二の音声信号(11a)を受け取ることと、
人間の聴覚の心理音響モデルに基づいて上記第一の音声信号(10a)の音の大きさを決定することと、
上記第二の音声信号(11a)のタイプ情報を確立することと、
上記車両(1)の上記少なくとも2つの再生ゾーン(40、41、42、43)の各々について、上記第二の音声信号(11a)の上記タイプ情報に応じて混合モード(50、51、52)を個別に選択することであって、上記混合モード(50、51、52)は、上記第一の音声信号(10a)と第二の音声信号(11a)との信号出力利得の相対関係に関係することと、
上記少なくとも2つの再生ゾーン(40、41、42、43)の各々で、上記選択された混合モード(50、51、52)に基づき、かつ上記決定された音の大きさに基づいて、上記第一の音声信号(10a)と上記第二の音声信号(11a)を再生のために個別に混合することとを含む、方法。
(項目2)
第一の混合モード(50)に基づいて個別に混合する時、上記第一の音声信号(10a)の第一の信号出力利得が上記第二の音声信号(11a)の第二の信号出力利得と比較して特定の量だけ低減され、上記特定の量は上記音の大きさに依存する、上記項目に記載の方法。
(項目3)
第二の混合モード(51)に基づいて個別に混合する時、上記第一の音声信号(10a)の第一の信号出力利得は、音量設定に関係した基準信号出力利得と比較して変更されずに維持され、上記第二の音声信号(11a)の第二の信号出力利得は、上記基準信号出力利得と比較して増加される、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目4)
上記第一の混合モード(50)または上記第二の混合モード(51)で混合する時、上記第一の音声信号(10a)と上記第二の音声信号(11a)との上記信号出力利得の関係は、上記第二の音声信号(11a)の信号利得が上記第一の音声信号(10a)の信号出力利得よりも所定の係数だけ大きく、上記所定の係数を減少させることによって音の大きさが増加し、上記第二の出力音声信号 (11a)の上記信号出力利得は音の大きさの閾値よりも低く一定に維持される、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
第三の混合モード(52)に基づいて個別に混合する時、上記第二の音声信号(11a)の第二の信号出力利得がゼロに設定される、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
上記第二の音声信号(11a)は案内信号であり、上記タイプ情報は、ナビゲーション指示、前方駐車距離制御音声信号、後方駐車距離制御音声信号、電話の通話ステータス通知、電話の通話、前部ゴング、後部ゴングのうちの1つに関係する、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
上記第二の音声信号(11a)の上記タイプ情報がナビゲーション指示または電話の通話ステータス通知に関係する場合、車両(1)の前部座席乗員を対象とする第一の再生ゾーン(40、41)について上記第一の混合モード(50)が選択され、上記車両(1)の後部座席乗員を対象とする第二の再生ゾーン(42、43)について上記第三の混合モード(52)が選択される、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目8)
上記第二の音声信号(11a)の上記タイプ情報が後方駐車距離制御音声信号または後部ゴングに関係する場合、上記車両(1)の前部座席乗員を対象とする第一の再生ゾーン(40、41)について上記第三の混合モード(52)が選択され、上記車両(1)の後部座席乗員を対象とする第二の再生ゾーン(42、43)について上記第二の混合モード(51)が選択される、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目9)
上記第二の音声信号(11a)の上記タイプ情報が前方駐車距離制御音声信号または前部ゴングに関係する場合、上記車両(1)の前部座席乗員を対象とする第一の再生ゾーン(40、41)について上記第二の混合モード(51)が選択され、上記車両(1)の後部座席乗員を対象とする第二の再生ゾーン(42、43)について上記第三の混合モード(52)が選択される、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目10)
各再生ゾーン(40、41、42、43)における上記各音声信号(10a、11a)の同期再生をさらに含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目11)
項目1〜10のいずれか一項に記載の方法であって、再生のための混合は、
音量設定に関係した少なくとも1つの基準信号出力利得(AG、EG)を受け取ることと、
上記少なくとも1つの基準信号出力利得および上記混合モード(50、51、52)および上記決定された音の大きさに基づいて、第一の信号出力利得(AEG)および第二の信号出力利得(AAG)を計算することと、
上記第一の信号出力利得を用いて上記第一の音声信号(10a)を増幅することと、
上記第二の信号出力利得を用いて上記第二の音声信号(11a)を増幅することと、
上記増幅された第一の音声信号(10a)および第二の音声信号(11a)を混合して単一の音声信号を得ることとを含む、上記項目のいずれかの方法。
(項目12)
車両(1)内の音響システム(2)であって、
第一の音声信号(10a)を提供する第一の音声信号源(10)と、
第二の音声信号(11a)を提供する第二の音声信号源(11)と、
人間の聴覚の心理音響モデルに基づいて上記第一の音声信号(10a)の音の大きさを決定するように構成された音の大きさ決定ユニット(14)と、
上記第二の音声信号(11a)のタイプ情報を確定するように構成されたタイプ情報ユニット(12)と、
上記車両(1)の少なくとも2つの再生ゾーン(40、41、42、43)の各々について、上記第二の音声信号(11a)の上記タイプ情報に応じて混合モード(50、51、52)を個別に選択するように構成された制御ユニット(13)であって、上記混合モード(50、51、52)は上記第一の音声信号(10a)と上記第二の音声信号(11a)との信号出力利得の相対関係に関係するものであり、上記少なくとも2つの再生ゾーン(40、41、42、43)の各々で、上記選択された混合モード(50、51、52)および上記決定された音の大きさに基づいて上記第一の音声信号 (10a)と上記第二の音声信号 (11a)とを再生のために個別に混合するように構成された、制御ユニット(13)と、
上記少なくとも2つの再生ゾーン(40、41、42、43)を個別に対応する複数のスピーカー(15a、15b)とを備える、音響システム(2)。
(項目13)
上記複数のスピーカー(15a、15b)は、各々が上記車両(1)の前部座席の運転者、上記車両(1)の前部座席の運転助手、上記車両(1)の左後部座席の乗員、上記車両(1)の右後部座席の乗員のうちの一つまたは複数を対象とした少なくとも2つの再生ゾーン(40、41、42、43)を対応する、上記項目の音響システム(2)。
(項目14)
上記音響システム(2)は、項目2から項目11の方法のいずれかを実行するようにさらに構成される、上記項目のいずれかの音響システム(2)。
【0032】
(摘要)
本発明は、車両内の音響システム(2)に関する。本音響システム(2)は、第一の音声信号(10a)を提供する第一の音声信号源(10)と、第二の音声信号(11a)を提供する第二の音声信号源(11)とを備える。本音響システムは、人間の聴覚の心理音響モデルに基づいて第一の音声信号(10a)の音の大きさを決定するように構成された音の大きさ決定ユニット(14)と、第二の音声信号(11a)のタイプ情報を確定するように構成されたタイプ情報ユニット(12)とをさらに備える。本音響システムは、少なくとも2つの再生ゾーン(40、41、42、43)の各々について、第二の音声信号(11a)のタイプに応じて混合モードを個別に選択するように構成された制御ユニット(13)をさらに備え、その混合モードは、第一の音声信号と第二の音声信号との信号出力利得の相対関係に関係する。この制御ユニットは、少なくとも2つの再生ゾーン(40、41、42、43)の各々で、選択された混合モードおよび決定された音の大きさに基づいて第一の音声信号(10a)および第二の音声信号(11a)を、再生のために個別に混合するようにさらに構成される。本音響システム(2)は、少なくとも2つの再生ゾーン(40、41、42、43)を個別に対応する複数のスピーカー(15a、15b)をさらに備える。
【0033】
そのような構成を有するシステムの場合、対応する方法について述べられた効果に対応する効果が得られる場合がある。
【0034】
以下、添付の図面に示す実施形態に関して、本発明をより詳しく説明する。図面の内容は次のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】音響システムの概略図である。
図2】車両内の再生ゾーンの概略図である。
図3a】第一の混合モードでの信号利得の音の大きさに対する依存関係を示した図である。
図3b】第二の混合モードでの信号利得の音の大きさに対する依存関係を示した図である。
図3c】第三の混合モードでの信号利得の音の大きさに対する依存関係を示した図である。
図4】音響システムの概略図である。
図5】第一と第二の音声信号を混合する方法を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1には、異なる音響源10、11を備える音響システム2の概略図を示す。図1の音響システム2は、ナビゲーションユニット、ラジオ受信機、MP3プレイヤー、CDプレイヤーなどの各種モジュールを備える車両1のマルチメディアシステムの一部とすることができる。
【0037】
図1の音響システム2は、娯楽音声信号源10という形の第一の音声信号源10および案内音声信号源11という形の第二の音声信号源11を備える。娯楽音声信号源10は娯楽音声信号10aを出力し、案内音声信号源は必要な時点で案内音声信号11aを出力する。
【0038】
案内音声信号11aの例として、ナビゲーション指示、燃料レベル、または車両1に関するその他のステータス情報に関係した案内があり、そのステータス情報には駐車距離制御の音響指示またはゴングが含まれる。案内音声信号11aが電話の通話または第三者との通話ステータス信号(話し中、呼び出し中など)に関係することも可能である。特に異なるタイプの案内音声信号11aは、車両1の異なる乗員を対象とする。
【0039】
これに関して図2を参照する。図2には、車両1の車内を模式的に示してある。図2における車両1の運転方向は右から左の方向である。図2の場合における車両1の車内は、4つの再生ゾーン40、41、42、43からなる。たとえば、再生ゾーン40は、車両1の前部座席に位置する車両1の運転者を対象とする。また、再生ゾーン41は、車両1の前部座席乗員(運転助手)を対象とする。再生ゾーン42および43は、車両1の後部座席乗員を対象とする。再生ゾーンのタイプおよび数は、たとえば、車両のタイプ、スピーカーの数などによって変化する場合がある。
【0040】
再び図1において、異なるタイプの案内音声信号11aは車両の別の乗員を対象としており、したがって、図2に関して説明した異なる再生ゾーンまたは再生ゾーンの組み合わせを対象とすることがある。たとえば、タイプ情報が「ナビゲーション指示」の案内音声信号11aは、車両1の運転者にとって関係がある場合がある。したがって、そのような案内音声信号11aは、図2における車両1の再生ゾーン40を対象とする。別の場合として、たとえばタイプ情報が「通話」の案内音声信号11aは、車両の後部座席乗員に関係がある場合があるため、図2における車両1の再生ゾーン42と43の組み合わせを対象とする。このような例を制限的に解釈すべきではない。再生ゾーンとタイプ情報の異なる関連づけおよび可変的な関連づけが可能である。
【0041】
タイプ情報を確立する異なる可能性が可能である。音声信号11aそれ自体または第二の音声信号源11から得た入力に基づき、あるいはそれらの組み合わせに基づいて、タイプ情報ユニット12がタイプ情報を確立することが可能である。ヒューマンインタフェース装置16を介して、使用者が特定の第二の音声信号11aに関するタイプ情報を確立することも可能である。別の可能性は、タイプ情報ユニット12が特定の第二の音声信号11aの発生元を検出し、すなわち、特定の第二の音声信号源11を、たとえば、バスシステムを介してパケット化された形式で受け取られた第2の音声信号11aのヘッダー内に含まれる情報から検出し、その情報に基づいてタイプ情報を確立することが考えられる。
【0042】
図1に関して、たとえば、タイプ情報ユニット12は、案内音声信号11aのタイプ情報を確立し、そのタイプ情報を制御ユニット13内に入力する。また、音声信号10a、11aも制御ユニット13に入力される。
【0043】
さらに、娯楽音響信号10aの音の大きさを決定する音の大きさ決定ユニット14が提供される。決定された音の大きさも制御ユニット13に供給される。
【0044】
音の大きさ決定ユニット14は、当技術分野で知られており、また、とりわけITU−R BS 1770−1 Algorithms to Measure Audio Program Loudness and to a Peak Audio Level」)に説明されている方法により、音の大きさを決定することができる。音の大きさ決定ユニット14はさらに、人間の聴覚の両耳モデルを、音の大きさを決定するため、および使用者によって、音声信号を聞いた時に、前記音声信号10aを局所化するかどうか、およびこれをどこに局所化するかを判定するために使用する。
【0045】
この両耳モデルは、音声信号の空間知覚をシミュレートし、音声入力信号に含まれるのが主にノイズなのか、何らかの他の音楽または話声などの入力信号なのかという判定を可能にするものである。音声入力信号の局所化については、欧州特許第EP1522868A1号、W.Lindemann“Extension of a Binaural Cross−Correlation Model by Contralateral Inhibition I. Simulation of Lateralization for Stationary Signals”in Journal of Acoustic Society of America, December 1986, p.1608−1622,Vol.80(6)、または“Acoustical Evaluation of Virtual Rooms by Means of Binaural Activity Patterns”by W.Hess et.al. in Audio Engineering 25 Society Convention Paper, 115th Convention. October 2003により詳しく説明されている。この局所化手法によってノイズと他の音響信号の判別が可能になる。
【0046】
制御ユニット13は、各再生ゾーン40、41および42、43について混合モードを選択する。制御ユニット13は、選択された混合モードに基づいてこれら2つの音声信号10a、10bを混合し、組み合わされた音声出力信号をスピーカー15a、15bから出力する。スピーカー15a、15bは、異なる再生ゾーン40、41、42、43を対象とする。たとえば、2つのスピーカー15a、15bが設けられている場合には、単独または組み合わせで2つの再生ゾーンに対応することができる。
【0047】
制御ユニット13において、娯楽音響信号および案内音響信号の信号出力利得が混合モードに基づいて計算される。具体的には、タイプ情報ユニット12から受け取ったタイプ情報によってどの混合モードが選択されるかが決定される。たとえば、異なるスピーカー15a、15bによる各再生ゾーン40、41、42、43での再生のために、異なる混合モードを選択することができる。
【0048】
可能な各種混合モードを図3a、図3b、図3cに示す。図3aでは第一の混合モード50が示され、娯楽音声信号の決定された音の大きさ30に基づいて、図1の音声信号10a、11aの信号出力利得が、その2つの信号に関して特定の平均信号出力レベル32が達成されるように適合される。その平均信号出力レベルは、長い時間(たとえば、数秒、1つの音声トラックの再生時間、またはいくつかの音声トラックの再生時間)にわたって取られた2つの音声信号10a、11aの各々の出力レベルの平均に対応することができる。
【0049】
図3aにおいて、長破線は、信号出力利得の適合化が存在しない場合における、第一の音声信号10aの決定された音の大きさ30と平均信号出力レベル32との間の対応を示す。すなわち、この長破線は基準信号出力レベルを示している。たとえば、一定時間にわたる音の大きさ30の増加は、平均信号出力レベル32の増加と関係する。使用者が音量設定を増減させると、長破線、すなわち基準信号出力レベルがより高い、またはより低い値にシフトしてもよく、傾きが増加/減少してもよい。
【0050】
第一の混合モード50では、基準信号出力利得と比較して、第一の音声信号10aの信号出力利得が決定された音の大きさ30に基づいて低減される。基準信号出力利得は、図3aの長破線で示される基準信号出力レベルを決定する。同時に、第二の音声信号11aの信号出力利得、すなわち案内音声信号11aは、音の大きさの閾値を超える音の大きさ30の値について、基準信号出力レベルに等しく適合される。
【0051】
図3bでは、第二の混合モード51をグラフ化で示される。第二の混合モード51では、基準信号出力利得と比較して、第一の音声信号10aの信号出力利得は適合されない。したがって、第一の音声信号10aの平均信号出力レベル32は、図3bの破線で示される基準信号出力レベルと一致している。同時に、第二の音声信号11aの信号出力利得は、この第二の音声信号11aの平均信号出力レベル32が基準平均信号出力レベルを超えるように適合される。
【0052】
図3cでは第三の混合モード52が示される。第三の混合モード52では、先と同様、第一の音声信号10aの平均信号出力レベル32が長破線で示される基準信号出力レベルに等しくなるように適合される。しかし、図3bとは異なり、第二の音声信号11aの信号出力利得はゼロに設定されており、その結果、第二の音声信号11aの平均信号出力レベル32がゼロになっている。
【0053】
案内音声信号11aのタイプ情報を混合モード50、51、52の中の1つと結びつける異なるシナリオが可能である。たとえば、図3cに示す第三の混合モード52は、それぞれの信号出力利得がゼロに設定されているために案内音声信号11aが再生ゾーン内でまったく再生されないという状況に関係する。たとえば、第二の音声信号11aのタイプ情報がナビゲーション指示に関係している場合、そのような状況が望ましい可能性がある。その理由は、ナビゲーション指示が典型的には車両の運転者にのみ関係しているためである。したがって、車両の後部座席乗員を対象とする再生では、おそらくは図3cの第三の混合モード52を選ぶことが望ましいかもしれない。同時に、車両の運転者を対象とする再生ゾーンのためのナビゲーション指示の場合には、第一と第二の音声信号10a、11aを混合するために第一の混合モード50を選択することが望ましい場合がある。そのような状況では、運転者が運転指示を明瞭に知覚する場合がある。
【0054】
別の可能なシナリオは、障害物と車両の後部の距離を知らせる駐車距離制御音声信号となる。そのような状況では、車両の後部座席乗員を対象とする再生ゾーンで音声信号10a、11aを混合するために第二の混合モード51を使用するのが望ましい場合がある。同時に、車両の前部座席乗員を対象とする再生ゾーンで音声信号を混合するために図3cの第三の混合モード52を選んでもよい。たとえば、そのような状況では、前部座席乗員はまだ駐車距離制御の音声指示を明瞭に知覚する場合があり、また、障害物までの距離が実際に示される車両の後部から発生することにより、それらの指示を直感的に知覚する場合がある。
【0055】
前方の障害物と車両の距離に関係した駐車距離制御について、同様のシナリオが生じる。このとき、後部座席乗員を対象とする再生ゾーンで音声信号10a、11aを混合するために図3cの第三の混合モード52を選んでもよく、また、前部座席乗員を対象とする再生ゾーンでの再生で音声信号10a、11aを混合するために第一の混合モード50または第二の混合モード51のいずれかを選んでもよい。
【0056】
さらに別のシナリオは、電話の通話が車両の特定の乗員を対象とするものである。再び図1において、ヒューマンインタフェース装置16を介して使用者が手動で、その再生ゾーンのために通話という形の第二の音声信号の可聴再生に関係して第一の混合モード50または第二の混合モード51がそのために選ばれる再生ゾーンを指定することが可能である。他の再生ゾーンは、これらの再生ゾーンでは通話の可聴性が低減されるように、第三の混合モード52に従って設定することができる。
【0057】
図3a、図3b、図3cに示す混合モードは、制限的に解釈されるべきものではない。たとえば、電話の通話に関する上記の例では、第一の音声信号の信号利得がゼロに設定された状況に対応する第四の混合モードを有することが望ましい場合がある。これは、娯楽音源の再生によって通話を妨げないようにするために行われてもよい。それと同時に、異なる再生ゾーンで娯楽音声信号の再生を進行させてもよい。混合モードの、多くの他の実施形態が可能である。
【0058】
図4には、案内音声信号11aに関して娯楽音声信号10aを自動的に調整する音響システム2を示す。具体的には、図4の音響システム2は、音量設定に基づいて基準信号利得を提供するレベル制御および管理ユニット24を備える。
【0059】
タイプ情報ユニット12は、図1に関してすでに説明したように、第二の音声信号11a、すなわち案内音声信号に関するタイプ情報を確定し、その確定されたタイプ情報を娯楽利得決定ユニット26および案内利得決定ユニット23に出力する。
【0060】
娯楽音声信号10aは、N個の異なるチャネルで提供することができ、信号電力測定ユニット21に入力される。信号電力測定ユニット21では、娯楽信号の最大および平均信号電力を決定するとともに、その信号電力を人間の聴覚の心理音響モデルに基づいて音の大きさ値に変換する。
【0061】
次いで最大および平均信号電力が指標計算ユニット22に供給される。ユニット22では、最大および平均信号電力の信号経過が評価され、平均信号レベルが確定される。ユニット22は、娯楽音声信号が一定の高信号レベルを有するか、あるいは信号内に打音が含まれる場合のように娯楽信号に短時間の極大値が含まれているかを認識するのに役立つ。次いで、娯楽信号の平均の音の大きさを表す確定された指標が、案内利得決定ユニット23に入力される。娯楽音声信号の平均の音の大きさは、当技術分野で知られている他の近似法により、他の任意の方法で確定することができることを理解するべきである。
【0062】
図4のユニット21および22は、図1の音の大きさ決定ユニット14に対応する。この点に関し、図4の実施形態ではユニット21および22が別ユニットとして示されているが、たとえばハードウェアまたはソフトウェアとして、それらを1個のユニットで実装することができることを理解するべきである。
【0063】
この案内利得決定ユニット23は、レベル制御および管理ユニット24から、たとえば使用者によって調整された音量を受け取る。その音量は、ヒューマンインタフェース装置16上に設けられた音量調整ボタンでシステムの使用者が調整した音量に相当する。ほとんどの場合、このボタンはターンボタンまたはロッカースイッチであり、そのボタンを左右に回すか、またはロッカースイッチの片側もしくはもう一方の側を押すことによって、それぞれ音量を増減させることができる。
【0064】
調整された音量および受け取った指標に基づいて、案内利得決定ユニット23は、前部案内利得オフセット(AGOフロント)および後部案内利得オフセット(AGOリア)を決定する。これらの値は正であっても負であってもよく、前部再生ゾーン40、41および後部再生ゾーン42、43に関する修正された案内レベルを表現する。たとえば2つのスピーカー15a、15bによって、これら2つの再生ゾーンを別々に対応することができる。これらの利得オフセット、AGOリアおよびAGOフロントは異なる値を有することができるが、同一の値を有してもよい。これらの利得オフセットは、図3a〜図3cに関して説明したように、再生時に特定の平均信号出力レベルが達成されるように適合される。
【0065】
次に、これらの案内利得オフセット、AGOフロント、AGOリアが2つの再生ゾーンについて別々に加算器25a、25bで基準音声利得AGに個別に追加される。加算器25a、25bにおいて音声案内利得オフセットのAGOフロント、AGOリアが基準音声案内利得AGに追加された時点で、その結果は、適合された案内利得、AAGフロントおよびAAGリアになる。
【0066】
調整された音量はさらに、ユニット24から娯楽利得決定ユニット26に出力される。また、指標計算ユニット22によって計算された指標が娯楽利得決定ユニット26に出力される。娯楽利得決定ユニット26は、2つの娯楽利得オフセット、EGOフロントおよびEGOリアを出力し、その2つが加算器27a、27bで基準娯楽利得値EGに個別に追加される。EGOフロントおよびEGOリアは、スピーカー15a、15bにより対応された前部再生ゾーン40、41および後部再生ゾーン42、43に関係する。したがって、EGOフロントとEGOリアの利得オフセットの値も異なる値または等しい値とすることができる。加算器27a、27bでの2つの追加された信号は、適合された娯楽利得、AEGフロントおよびAEGリアをもたらす。
【0067】
基準利得AG、EGは、図3a〜図3cの破線で示される基準信号出力レベルと対応することができる。このとき、より大きな音量設定がより大きな基準利得AG、EGに対応し、すなわち、図3a〜図3cの破線については、より高い値にシフトし、または傾きが増加する。
【0068】
明白なこととして、娯楽利得決定ユニット26および案内利得決定ユニット23は、図3a〜図3cに関して説明した混合モードに従って動作する。したがって、音の大きさに基づき、かつ音量に基づいて、特定の利得オフセットが決定される。これらの利得オフセットによって特定音量の利得AGおよびEGが修正される。
【0069】
混合器28aは、前部再生ゾーン40、41(図2参照)のために音声信号10a、11aを増幅および混合し、得られた出力音声信号をそれぞれのスピーカー15aに出力する。混合器28bは、後部再生ゾーン42、43(図2参照)のために音声信号10a、11aを増幅および混合し、得られた出力音声信号をそれぞれのスピーカー15bに出力する。
【0070】
図1および図3の異なるエンティティについて別々に説明しているが、異なるエンティティを1つのユニットに組み合わせてもよいことが理解されるべきである。たとえば、ユニット23、24、26、28a、28bは、図1のような単一の制御ユニットに対応することができる。異なるエンティティはハードウェアもしくはソフトウェアとして、またはその組み合わせとして実装されてもよい。たとえば、信号電力測定ユニット21および指標計算ユニット22を、プロセッサによりソフトウェアコードとして実行される単一ユニットとして実装することが可能である。また、ユニット23、24、26を、たとえば車載コンピュータのオーディオプロセッサ内の単一ユニットとして提供することが望ましい場合がある。基準信号利得AG、EGの使用は必須ではないことも、さらに理解されるべきである。図1を参照して例示したように、ユニット23および26に最終的な信号出力利得AAGおよびAEGを直接出力させることも可能である。
【0071】
図5のフローチャートは、一実施形態による方法を示す。本方法は、ステップS1で開始される。最初に、ステップS2で第一の音声信号を受け取る。この第一の音声信号は、いくつかのチャネルを含む娯楽音声信号に関係する。たとえば、ラジオ、CDプレイヤー、またはインターネットなどの音声信号源から第一の音声信号を受け取ってもよい。次に、ステップS3で第二の音声信号を受け取る。この第二の音声信号は、ナビゲーション指示、前方駐車距離制御音声信号、後方駐車距離制御音声信号、電話の通話ステータス通知、通話、前部ゴング、後部ゴングなどの案内音声信号に関係する。
【0072】
ステップS4において、第一の音声信号の音の大きさが、たとえば、第一の音声信号を受け取るためのインタフェースおよびプロセッサを備える音の大きさ決定ユニットで決定される。決定された音の大きさは、たとえば、その決定された音の大きさを受け取るためのインタフェースおよびプロセッサを備える指標計算ユニットで指標値によって指定することができる。たとえば、その指標は、最小値と最大値との間の数値とすることができ、より大きな指標値は対応して、ステップS2で受け取った第一の音声信号のより大きい音の大きさの値になる。
【0073】
ステップS5では、ステップS3で受け取った第二の音声信号に対するタイプ情報が確定される。このタイプ情報により、第二の音声信号の異なるタイプが分類される。
【0074】
ステップS6およびS7では、ステップS4で決定された音の大きさに基づき、またステップS5で確定されたタイプ情報に基づいて、ステップS6では前部再生ゾーンについて、およびステップS7では後部再生ゾーンについて、混合モードが個別に選択される。この再生ゾーンは、前部再生ゾーンについては前部座席に位置する乗員、後部再生ゾーンについては後部座席に位置する乗員を対象とする。車内には3つ以上の再生ゾーンを存在させることができる。たとえば、異なる再生ゾーンが車内に位置する各乗員を個別に対応することもできる。
【0075】
異なる混合モードが第一の音声信号と第二の音声信号との信号出力利得の相対関係に関係する。一実施形態において、ステップS4で決定された音の大きさに応じ、音量設定に関係した1つ以上の基準信号出力利得に関して音声信号の信号出力利得を適合化する場合、これが起こることができる。たとえば、基準信号出力利得の低減は、決定された音の大きさに応じることができる。基準信号出力利得の適合化の量は、確定されたタイプ情報に応じる。次いで増幅の絶対値は音量設定に関係することができる。たとえば、より大きな音量設定に対して基準信号出力利得はより大きな値とすることができる。
【0076】
ステップS8およびS9では、ステップS2およびS3で受け取った2つの音声信号を前部および後部再生ゾーンについて個別に混合する。混合は音声信号の増幅に関係し、音声信号の混合によって単一の音声信号が得られる。
【0077】
ここでの第一および第二の音声信号に関する信号利得の混合および設定は、2つの再生ゾーンについて個別に実行することができることを理解するべきである。具体的には、たとえば第一の再生ゾーンにおいて、ステップS9での後部再生ゾーンの混合とは異なる信号出力利得を用いて混合することが可能である。
【0078】
次に、ステップS10では、ステップS8およびS9の混合された信号が前部および後部再生ゾーンに対応するようにスピーカーから同期的に出力される。ステップS11において、本方法が終了する。
【0079】
本明細書には本発明の特定の実施形態が開示されているが、本発明の範囲から逸脱することなく、さまざまな変更および改変を加えることができる。この実施形態は、あらゆる点で例示的かつ非制限的とみなされるべきであり、添付の特許請求の範囲の意味および等価性の範囲内に含まれるすべての変更がその中に包含されることが意図される。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図4
図5