【実施例】
【0047】
続いて、本発明の光デバイス、磁気ヘッド、製造方法及び近接場光デバイスに係る実施例を、図面に基づいて説明する。尚、以下で参照する各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材ごとに縮尺を異ならしめてある。
【0048】
(1)第1実施例
はじめに、
図1から
図11を参照しながら、本発明の光デバイス、磁気ヘッド及び製造方法の第1実施例について説明する。尚、第1実施例では、光デバイスの一例である近接場光デバイスを用いて説明を進める。
【0049】
(1−1)磁気ヘッドの構成
はじめに、
図1及び
図2を参照しながら、第1実施例の磁気ヘッド100の構成について説明する。
図1は、第1実施例の磁気ヘッド100の構成を示す側面図、斜視図及び上面図である。
図2は、第1実施例の磁気ヘッド100と磁気記録媒体200との間の位置関係を示す側面図である。
【0050】
図1(a)から
図1(c)に示すように、第1実施例の磁気ヘッド100は、磁気デバイス110と、「光デバイス」の一具体例である近接場光デバイス120とを備える。尚、
図2に示すように、磁気ヘッド100の一の面(
図2に示す例では、Y軸の正の方向を向いている面)は、磁気記録媒体200に対向する対向面(いわゆる、ABS:Air Bearing Surface)となる。
【0051】
尚、磁気ヘッド100のX軸方向に沿った長さは、例えば2マイクロメートルから3マイクロメートルであってもよい。但し、磁気ヘッド100のX軸方向に沿った長さは、例えば2マイクロメートルから3マイクロメートルとは異なる長さであってもよい。また、磁気ヘッド100のZ軸方向に沿った長さは、例えば5マイクロメートルであってもよい。但し、磁気ヘッド100のZ軸方向に沿った長さは、例えば5マイクロメートルとは異なる長さであってもよい。
【0052】
磁気デバイス110は、磁性体を含む磁気記録媒体200に対して図示せぬ書き込み磁極により磁界を付与することで、磁気記録媒体200の微小領域に信号を記録する。加えて、磁気デバイス110は、図示せぬ読み取り磁極により磁気記録媒体200の微小領域における磁界の変化を検知することで、磁気記録媒体200の微小領域に記録された信号を再生する。
【0053】
磁気デバイス110は、例えば、アルティック(Al
2O
3−TiC)を含む基板111と、コイルや磁性体からなる書き込み磁極及び読み取り磁極を含む磁気ヘッド層(積層体)112と、NiFe等の磁性材料を含むセパレータ層113とがこの順に積層された構造を有している。尚、図面の簡略化のために図示しないものの、磁気ヘッド層112のうち磁気記録媒体200に対向する面(つまり、ABS)には、信号を記録するための磁極(いわゆる、記録磁極ないしは書き込み磁極)と、信号を再生するための磁極(いわゆる、再生磁極ないしは読み取り磁極)とが別個独立に形成されていてもよい(後述の
図18参照)。但し、磁気ヘッド層112のうち磁気記録媒体200に対向する面には、信号を記録し且つ信号を再生するための単一の磁極が形成されていてもよい。
【0054】
近接場光デバイス120は、磁気デバイス110による信号の記録をアシストするために、磁気デバイス110が磁界を付与する磁気記録媒体200の微小領域に対して近接場光によりエネルギーを集中する。具体的には、近接場光デバイス120は、磁気記録媒体200の微小領域に近接場光を介してエネルギーが集中し、当該微小領域の温度を増加させる。つまり、第1実施例の磁気ヘッド100は、いわゆる熱アシスト記録を行う磁気ヘッドである。
【0055】
近接場光デバイス120は、「第2電極層」の一具体例である下部電極層121と、発光層122と、「第1電極層」の一具体例である上部電極層123とがこの順に積層された構造を有している。尚、下部電極層121は、上部電極層123よりも磁気デバイス110に近いことが好ましい。つまり、磁気デバイス110が備えるセパレータ層113上には、下部電極層121と発光層122と上部電極層123とがこの順に積層されることが好ましい。但し、上部電極層123が、下部電極層121よりも磁気デバイス110に近くともよい。つまり、磁気デバイス110が備えるセパレータ層113上に、上部電極層123と発光層122と下部電極層121とがこの順に積層されてもよい。
【0056】
尚、上部電極層123上に更に、近接場光デバイス120を保護するための保護層(例えば、誘電体を材料として含む保護層)が積層されてもよい。
【0057】
下部電極層121は、発光層122に電圧を印加するための電極である。下部電極層121の材料は、例えば、Ag、Cu及びAuのうちの少なくとも一つの単体金属でもよいし、それらの合金でもよい。
【0058】
下部電極層121のエッチング特性(例えば、エッチングレート)は、上部電極層123のエッチング特性とは異なることが好ましい。このため、下部電極層121の材料は、上部電極層123の材料とは異なることが好ましい。但し、製造方法を工夫しエッチングマスクを用い下部電極121と上部電極123をそれぞれ独立的にエッチングできる場合は、下部電極層121のエッチング特性は、上部電極層123のエッチング特性と同一とする(例えば、下部電極層121の材料を、上部電極層123の材料と同一とする)ことも可能である。
【0059】
発光層122は、下部電極層121と上部電極層123とに挟持されている。発光層122は、下部電極層121及び上部電極層123を介して印加される電流に応じて発光する。このため、発光層122は、例えば、LD(Laser Diode)や、LED(Light Emitting Diode)や、有機EL(ElectroLuminescence)を含んでいてもよい。或いは、発光層122は、後述する表面プラズモンを発生させることができるSiを含んでいてもよい。
【0060】
なお、発光層122は、例えばInAs等からなる複数の量子ドット(或いは、複数の金属ナノパーティクル)を含む、例えばGaAs基板により構成されていてもよい。この場合、発光層122は、複数の量子ドットが多層構造(例えば、一又は複数の量子ドットを含む層がX軸方向に多数(例えば、3層から100層)積層している構造)を有する多層量子ドット型の発光層であってもよい。或いは、発光層122は、複数の量子ドットが発光層122内で分散している分散量子ドット型の発光層であってもよい。
【0061】
上部電極層123は、発光層122に電圧を印加するための電極である。上部電極層123の材料は、例えば、Ag、Cu及びAuのうちの少なくとも一つの単体金属でもよいし、それらの合金でもよい。
【0062】
上部電極層123は、発光層120に電流を流すための電極としての機能(電極部)、近接場光を発生するためのNFT(Near-Field Transducer)としての機能(近接場光発生部)、及び、発光122で発生した光のエネルギーをNFTに伝搬させ且つNFTに集める機能を持つ。
図1の例では「突起部」であるペグ(peg)123aがNFTである。
【0063】
ペグ123aは磁気ヘッドのZ軸方向の中心位置に設けられ、ペグ123aの端面はABSに接している。このペグ123aに近接場光が生じ、ペグ123aの端面から磁気記録媒体200の微小領域にエネルギーが集中し、磁気記録媒体200の微小領域が過熱される。ペグ123aの端面の長さLは、設計する記録密度や記録されるトラックピッチ、ビット長あるいはビット幅などに応じて決定され、数ナノメーター〜数十ナノメータが好ましい。長さLを小さくすることにより記録マークを小さくでき、単位面積当たりの記録密度が向上する。
【0064】
つまり、上部電極層123のABSに接する部分を突起状とすることで、発光層122で発生した光のエネルギーを効率良くNFTへ導くことが可能となる。
【0065】
ペグ123aの形状は、設計された記録密度に適合する長さLの端面になるようにABS面に向けて徐々に細く(狭く)なるような形状としてもよい。例えば、
図1(c)はABS面に向かう(言い換えれば、近づく)につれてペグ123aが一定の割合で徐々に細くなると共に、最終的にペグ123aの端面の長さがLとなる例を示している。
図1(d)は、ABS面に向かうにつれてペグ123aが一定の割合で徐々に細くなるものの、ABS面に向かう途中でペグ123aが細くなる割合が変化する例を示している。また、
図1(e)は、ペグ123aの長さがLに固定されている例を示している。発光層122で発生した光のエネルギーを効率良くNFTへ導くための形状は、
図1(d)に示すように、途中で角がなるべくでないような滑らかにNFTに向けて電極幅が狭くなるような形状にするのがよい。
【0066】
さらに説明すると、ペグ123aは、磁気ヘッド100の積層方向(つまり、X軸方向)に交わる(典型的には、直交する)交差方向(つまり、Y軸方向)に沿って突き出る形状を有している。従って、ペグ123aは、交差方向に沿って磁気ヘッド100の外部に向かって(言い換えれば、ABS又はABSに対向するはずの磁気記録媒体200に向かって)突き出る形状を有している。
【0067】
第1実施例では更に、交差方向に着目すると、ペグ123aの端面(具体的には、ABSに最も近い側の端面であり、
図1中のY軸の正の方向側の端面)は、下部電極層121の端面(具体的には、ABSに最も近い側の端面であり、
図1中のY軸の正の方向側の端面)よりも、磁気ヘッド100の外部側に位置する。つまり、交差方向に着目すると、ペグ123aの端面は、下部電極層121の端面よりも、ABS側に位置する。言い換えれば、ペグ123aの端面とABSとの間の交差方向に沿った距離は、下部電極層121の端面とABSとの間の交差方向に沿った距離よりも短くなる。なお、ペグ123aの端面はABSと同一面になるのが、磁気ヘッド100の浮上特性の観点から好ましい。
【0068】
このような近接場光デバイス120によれば、発光層122は、下部電極層121及び上部電極層123を介して印加される電流に応じて発光する。つまり、下部電極層121及び上部電極層123を介して印加される電流に応じて、発光層122にエネルギーとしてのフォトン(光子)が発生する。発光層122の発光に起因して発生したエネルギー(つまり、フォトン)は、例えば、上部電極層123により伝搬しNFTとしてのペグ123aで近接場光となり磁気記録媒体200に流入し得る。或いは、発光層122の発光に起因して発生したエネルギー(つまり、フォトン)は、例えば、上部電極層123の表面に発生する表面プラズモンとして伝搬しNFTとしてのペグ123aで近接場光となり磁気記録媒体200に流入し得る。いずれの場合であっても、発光層122の発光に起因して発生したエネルギーは、上部電極層123が備えるペグ123aに引き寄せられる。その結果、ペグ123aを介して発光層122のエネルギーが取り出され、当該エネルギーが近接場光となり、磁気記録媒体200の微小スポットを昇温さえる
尚、磁気ヘッド100が熱アシスト記録を行う磁気ヘッドであることを考慮すれば、積層方向(つまり、
図1中のX軸方向)に沿った上部電極層123と磁気ヘッド層112との間の距離が過度に大きくなりすぎると、磁気ヘッド100が熱アシスト記録を適切に行うことが困難になる。なぜならば、近接場光デバイス120が近接場光を照射することで温度が増加した磁気記録媒体200の微小領域に磁気ヘッド層112が到達するまでに要する時間が過度に長くなるがゆえに、微小領域に磁気ヘッド層112が到達するまでに当該微小領域の温度が低下してしまうからである。一方で、積層方向に沿った上部電極層123と磁気ヘッド層112との間の距離が過度に小さくなりすぎても、磁気ヘッド100が熱アシスト記録を適切に行うことが困難になる。なぜならば、近接場光デバイス120による近接場光の照射に起因した温度増加の影響が磁気ヘッド層112の特性に悪影響を与えかねないからである。このため、積層方向に沿った上部電極層123と磁気ヘッド層112との間の距離は、熱アシスト記録を適切に行うことができる程度の適切な距離に設定されることが好ましい。
【0069】
このような第1実施例の磁気ヘッド100によれば、上部電極層123がペグ123aを備えているがゆえに、上部電極層123がペグ123aを備えていない場合と比較して、発光層122における発光に起因したエネルギーは、ペグ123aを介して取り出されやすくなる。従って、磁気ヘッド100(具体的には、磁気ヘッド100が備える近接場光デバイス120)は、磁気記録媒体200上においてエネルギーを集中させた微小スポットを効率的に発生させることができる。
【0070】
加えて、ペグ123aの少なくとも一部の端面が下部電極層121の端面よりもABS側に位置しているがゆえに、発光層122における発光に起因したエネルギーは、下部電極層121よりも、上部電極層123(典型的には、上部電極層123が備えるペグ123a)を介して外部に取り出されやすくなる。従って、磁気ヘッド100(具体的には、磁気ヘッド100が備える近接場光デバイス120)は、発光層122における発光に起因したエネルギーを、上部電極層123(典型的には、上部電極層123が備えるペグ123a)を介して集中的に取り出すことができる。従って、磁気ヘッド100(具体的には、磁気ヘッド100が備える近接場光デバイス120)は、磁気記録媒体200上においてエネルギーを集中させた微小スポットを効率的に発生させることができる。
【0071】
加えて、第1実施例の磁気ヘッド100によれば、ペグ123aを備える上部電極層123によって発光層122が挟持されているがゆえに、発光層122における発光に起因したエネルギーは、当該エネルギーの発生源である発光層122に隣接している上部電極層123を介してペグ123aから直接的に取り出される。つまり、発光層122がペグ123aとは物理的に離れた(言い換えれば、分離された)位置に配置されていないがゆえに、物理的に分離された発光層122からペグ123aへと光を導くための導光路を備えていなくともよい。その結果、導光路における光の損失が減少するがゆえに、磁気ヘッド100(具体的には、磁気ヘッド100が備える近接場光デバイス120)は、発光層122における発光に起因したエネルギーを効率的に利用することができる。つまり、磁気ヘッド100(具体的には、磁気ヘッド100が備える近接場光デバイス120)は、磁気記録媒体200上においてエネルギーを集中させた微小スポットを効率的に発生させることができる。
【0072】
(1−2)磁気ヘッドの製造方法
続いて、
図3から
図10を参照しながら、第1実施例の磁気ヘッド100の製造方法について説明する。
図3から
図10は、夫々、第1実施例の磁気ヘッド100の一の製造工程を示す斜視図である。
【0073】
図3に示すように、まずは、基板111が用意される。
【0074】
その後、
図4に示すように、半導体製造プロセスを用いて、基板111上に、磁気ヘッド層112が形成される。その後、
図4に示すように、半導体製造プロセスを用いて、磁気ヘッド層112上に、セパレータ層113が形成される。
【0075】
その後、
図5に示すように、半導体製造プロセスを用いて、セパレータ層113上に、下部電極層121が形成される。尚、この段階では、下部電極層121の形状(特に、積層方向に直交する交差方向であって、
図5中のYZ平面に沿った形状)は、基板111、磁気ヘッド層112及びセパレータ層113の形状と同一であってもよい。
【0076】
その後、
図6に示すように、半導体製造プロセスを用いて、下部電極層121上に、発光層122が形成される。その後、
図6に示すように、半導体製造プロセスを用いて、発光層122上に、上部電極層122が形成される。尚、この段階では、上部電極層123の形状(特に、積層方向に直交する交差方向であって、
図6中のYZ平面に沿った形状)は、基板111、磁気ヘッド層112及びセパレータ層113、並びに下部電極層121及び発光層122の形状と同一であってもよい。
【0077】
その後、
図7に示すように、上部電極層123がパターニングされる(
図7のパターンは
図1(c)で記述したパターンに相当する)。このとき、上部電極層123は、近接場光を発生させるNFT部(ペグ123aに相当)として機能し得るNFT部及び当該NFT部よりもABS側に位置すると共に後述する工程において磁気ヘッド100をABS側から平面研磨する際のストッパとして機能し得る研磨ストップ部を有するようにパターニングされる。尚、研磨ストップ部は、研磨が行われる研磨面(
図7中のXZ平面)に沿った幅(
図7中のZ軸に沿った方向)が異なる複数種類のパターン124a及び124bが、研磨面に直交する方向(実質的には、ABSに直交する方向であり、
図7中のY軸方向)に沿って並ぶ構造を有していてもよい。更に、NFT部との境界に隣接する(つまり、ペグ123aになり得る構造部分に隣接する)研磨ストップ部のパターン124bの幅(つまり、研磨件に沿った幅)は、ペグ123aの幅とは異なることが好ましい。
【0078】
尚、
図7では、上部電極層123のパターニングが電子線リソグラフィを用いて行われる例を示している。しかしながら、上部電極層123のパターニングは、電子線リソグラフィ以外の方法(例えば、フォトリソグラフィ等)を用いて行われてもよい。
【0079】
その後、
図8に示すように、ABS側から、磁気ヘッド100の平面研磨(例えば、CMP:Chemical Mechanical Polishing)が行われる。ここで、幅が異なる複数種類のパターン124a及び124bが研磨面に直交する方向に沿って並び且つNFT部との境界に隣接する研磨ストップ部のパターン124bの幅がペグ123aの幅とは異なるがゆえに、
図8の下部のグラフに示すように、平面研磨の研磨状態(例えば、研磨圧等)を示す研磨信号は、時間の経過に応じて変化する。具体的には、パターン124aを研磨している時点での研磨信号は、パターン124bを研磨している時点での研磨信号とは異なる。同様に、パターン124bを研磨している時点での研磨信号は、ペグ123bを研磨している時点での研磨信号とは異なる。従って、研磨信号が、パターン124bを研磨している時点での研磨信号からペグ123bを研磨している時点での研磨信号へと切り替わった時点(
図8の下部のグラフにおける時点t1)から所定時間を経過した後に平面研磨が停止されれば、所望の長さ(具体的には、
図8中のY軸に沿った長さであり、例えば、50nm又はそれ以下の長さ)を有するペグ123aが比較的容易に形成される。
【0080】
このような平面研磨が終了した結果、
図9に示すように、所望の長さを有するペグ123aを備える磁気ヘッド100が形成される。
【0081】
その後、
図10に示すように、ペグ123aの端面が下部電極層121の端面よりも磁気ヘッド100の外部側に位置するように、下部電極層121が選択的にエッチングされる。このような下部電極層121の選択的なエッチングは、下部電極層121のエッチング特性と上部電極層123(更には、その他の層)のエッチング特性とを変えることで比較的容易に実現される。
【0082】
尚、下部電極層121が選択的にエッチングされることに加えて又は代えて、ペグ123aの端面が下部電極層121の端面よりも磁気ヘッド100の外部側に位置するように、下部電極層121が形成された時点で下部電極層121が予めパターニングされていてもよい。この場合、下部電極層121のエッチング特性と上部電極層123(更には、その他の層)のエッチング特性とは、同一であってもよい。
【0083】
このように、第1実施例では、基板111上に磁気ヘッド層112、セパレータ層113、下部電極層121、発光層122及び上部電極層123を積層させていく積層プロセス(例えば、半導体製造プロセス)を用いて、磁気ヘッド100が製造される。従って、第1実施例の磁気ヘッド100が効率的に又は比較的容易に製造される。
【0084】
特に、第1実施例では、磁気デバイス110と近接場光デバイス120とを別々に製造した後に磁気デバイス110と近接場光デバイス120とを貼り合わせる製造方法に代えて、上述した積層プロセスを用いて、磁気ヘッド100が製造される。従って、第1実施例では、磁気ヘッド100の製造工程が簡略化されるがゆえに、磁気ヘッド100の製造コストが低減される。
【0085】
(1−3)変形例
続いて、
図11を参照しながら、第1実施例の磁気ヘッド100の変形例について説明する。
図11は、第1実施例の磁気ヘッド100の変形例の構成を示す斜視図及び上面図である。
【0086】
図11(a)及び
図11(b)に示すように、変形例の磁気ヘッド100aは、ペグ123aが上部電極層123と物理的に分離しているという点においいて、ペグ123aが上部電極層123と物理的に一体化している上述した磁気ヘッド100とは異なる。このような変形例の磁気ヘッド100aであっても、上述した各種効果を好適に享受することができることは言うまでもない。
【0087】
(2)第2実施例
続いて、
図12から
図18を参照しながら、第2実施例の近接場光デバイスについて説明を進める。
【0088】
(2−1)近接場光デバイスの構成
続いて、第2実施例に係る近接場光デバイスの構成について、
図12を参照して説明する。
図12は、第2実施例に係る近接場光デバイスの概略構成を示す斜視図である。
【0089】
図12において、近接場光デバイス1は、例えば金(Au)等の金属からなる金属ロッド11と、例えばGaAs等の半導体からなるマイクロディスク12と、を備えて構成されている。ここで特に、マイクロディスク12は、その上面から下面に向かう方向に穴13が形成されている。尚、第2実施例に係る「金属ロッド11」及び「マイクロディスク12」は、夫々、本発明に係る「近接場光発生部」及び「微小共振器」の一例である。
【0090】
図12では図示を省略しているが、マイクロディスク12近傍には、例えば光導波路等が配置されており、光源(図示せず)から出射された光がマイクロディスク12に導かれるように構成されている(
図12中の“入射光”参照)。尚、図に示しているような入射方向に限ることはなく様々な方向からマイクロディスク12に光を照射してもよい。また、マイクロディスク12が自ら発光するマイクロディスクレーザとする構成も可能である。
【0091】
ところで、マイクロディスクに、例えば穴や角等が形成されている場合、或いは、該マイクロディスクを構成する材料の分布に偏りがある場合、マイクロディスクに入射した光に起因して該マイクロディスク内に蓄えられるエネルギーに偏りが生じることが知られている。(例えば”Trends in Nano-and Micro-Cavities”, 2011, 109-152 Chapter 4 ”Review on unidirectional light emission from ultralow-loss modes in deformed microdisks”, Jan Wiersig, Julia Unterhinninghofen, Institut fur Theoretische Physik, Universitat Magdeburg, Postfach 4120, D-39016 Magdeburg, Germany参照)。
【0092】
そこで、本願発明者は、マイクロディスク内のエネルギー分布が比較的高い箇所の近傍に、又は該高い箇所に接するように、金属ロッド或いは金属粒子が配置された近接場光デバイスを構成した(
図12参照)。ここで、マイクロディスク内のエネルギー分布が比較的高い箇所は、実験的若しくは経験的に、又はシミュレーションによって求めればよい。
【0093】
このように、例えば穴や角等が形成されている非対称のマイクロディスクから金属ロッド或いは金属粒子を用いてエネルギーを取り出し微小サイズの近接場光を生成し、その近接場光のエネルギーが集中した微小スポットを発生するようにした。本発明の近接場光デバイスを応用することにより、微小光源或いはエネルギーが集中した微小スポットを必要とする、例えば熱アシスト磁気記録、光通信用の集積光源、微小照明、近接場光顕微鏡等にも応用できる。
【0094】
近接場光デバイス1の動作時に、光が穴が形成されているマイクロディスク12に入射すると、該マイクロディスク12内に蓄えられるエネルギーの分布に偏りが生じる(具体的には例えば、マイクロディスク12の金属ロッド11側に、より多くのエネルギーが分布する)。この結果、金属ロッド11を穴13の近傍(又は穴13の近傍のマイクロディスク12の側面に接する位置)に設置することにより、穴や角等が形成されていないマイクロディスクと比べて、大きなエネルギーをマイクロディスク12から取り出すことができる。
【0095】
このため、金属ロッド11に、適切に近接場光を発生させることができる。近接場光による微小スポットのサイズは、金属ロッド11の大きさに依存するので、所望する微小スポットのサイズに合わせて該金属ロッド11の大きさを適宜設定すればよい。金属ロッド11に限らず、金属ナノパーティクルで構成するようにしてもよい。
【0096】
尚、参考までに、上記特許文献1〜4に記載の熱アシスト磁気記録用の記録ヘッドの構成では、例えば対物レンズや光導波路を用いてレーザ光を集光させているが、集光された光のスポット径を、光の波長以下のサイズに絞り込むことはできない。他方、近接場発生部である金属導体は、例えば数十ナノメートル以下と、光の波長以下のサイズである。このため、集光されたレーザ光の大部分は近接場光の発生に寄与せず、光の利用効率が低いという技術的問題点がある。
【0097】
尚、「マイクロディスク」は、円盤に限定されるものではなく、盤状であればよい。本実施形態において「円盤」は、真円に限らず、例えば楕円等、丸みのある形状であればよい。
【0098】
(2−2)変形例
次に、第2実施例に係る近接場光デバイスの各種変形例について、
図13乃至
図16を参照して説明する。
【0099】
図13に示す近接場光デバイス2の上面から下面に向かう方向に穴13が形成されているマイクロディスク14は、例えばInAs等からなる複数の量子ドット、或いは、複数の金属ナノパーティクルを含む、例えばGaAs基板により構成されている。このように構成すれば、該マイクロディスク14に入射する光の吸収効率を向上させることができる。半導体基板はシリコン(Si)ベースでもよく、金属ナノパーティクルは金(Au)、銀(Ag)等マイクロディスク14に入射する入射光に応じて様々な種類の金属単体或いは合金を用いることができる。
【0100】
量子ドットのサイズを制御することにより、自由にバンドギャップを制御可能である。これにより任意の波長の光を効率的に吸収可能にマイクロディスク14を設計することができる。例えば入射光にLED(Light Emitting Diode)等からの白色光を用い、量子ドットのサイズに合った波長をマイクロディスク14に吸収させることが可能である。これにより、入射光はレーザ光源以外の光源も利用可能となる。
【0101】
図14に示す近接場光デバイス3では、マイクロディスクとして、マイクロディスクレーザ15が用いられている。このように構成すれば、例えば光源や光導波路等を別途設ける必要がないので、実用上非常に有利である。
【0102】
図15に示す近接場光デバイス4のマイクロディスク16は、マイクロディスクレーザと、該マイクロディスクレーザの上に積層されたフォトニッククリスタル層と、により構成されている。このように構成すれば、マイクロディスク16における光の閉じ込め効率を向上させることができる。尚、
図15に記載のマイクロディスクレーザには、例えば
図14に示したような穴があるマイクロディスクレーザが用いられている。
【0103】
マイクロディスクは、
図16(a)及び(b)に示すように、円盤に穴が形成されたもの(
図16(a)は、
図12に記載の近接場光デバイス1に対応)に限られない。例えば
図16(c)に示すように、GaAs基板に、GaAsとは異なる材料(例えばシリコン(Si)、窒化ガリウム(GaN)等)の塊が埋め込まれることによって、マイクロディスクが形成されてもよい。また、
図16(d)に示すように、側面に突起が形成された円盤を、マイクロディスクとしてもよい。更に、マイクロディスクは円盤に限らず、例えば
図16(e)に示すように、ハート型等の円盤以外の形状であってよい。
【0104】
図16(b)以外の各例において、
図12で説明したのと同様、穴や突起(或いは角)の近傍又は突起(或いは角)に接するように金属ロッドを配置させる。前述した穴の場合と同様に、角の場合においてもマイクロディスク内に蓄えられるエネルギーの分布に偏りが生じ、角の近傍に金属ロッドを配置することでより大きなエネルギーを取り出すことができる。
【0105】
尚、
図16(c)において、「GaAs基板」及び「GaAsとは異なる材料の塊」は、夫々、本発明に係る「第1の部分」及び「第2の部分」の一例である。「第1の部分」及び「第2の部分」は上述の例に限らず、様々な材料の組み合わせが可能である。
【0106】
(2−3)応用例
次に、第2実施例に係る近接場光デバイスを、熱アシスト磁気記録における磁気ヘッドに用いた磁気記録について、
図17及び
図18を参照して説明する。
図17は、実施形態に係る近接場光デバイスを用いた磁気ヘッドに適用可能な態様の一例を示す図である。
図18は、実施形態に係る磁気ヘッドを用いた磁気記録の一例を説明する図である。
【0107】
図17において、近接場光デバイスは、マイクロディスクレーザと、該マイクロディスクレーザの上面及び下面の両方に夫々積層されたクラッド層と、該マイクロディスクレーザに電力を供給するための電極と、を備えて構成されている。マイクロディスクの電極に外部電源(図示せず)から電力が供給されることにより、マイクロディスクレーザが発光する。マイクロディスクレーザは、例えば
図12乃至
図16に示した、いずれかの形状で構成されている。
【0108】
上述の如く構成されたマイクロディスクの側面には、金属ロッド(例えば
図12参照)の一例としての金粒子(Au Particle)が誘電体により接続されている。マイクロディスクレーザと金粒子とは、近接場相互作用を及ぼす距離を保つように配置されている。また、マイクロディスクレーザの側面と金粒子とが接触していてもよい。
【0109】
次に、磁気記録の構成の一例を、
図18を参照して説明する。
図18に示す構成では、動作時に、入力信号に応じて近接場光デバイスの電極に電力が供給されることにより、マイクロディスクレーザが発光する。そして、マイクロディスクレーザが発光することに起因して、金粒子と、該金粒子と対向する磁気記録媒体の一部とが一体となり発生する近接場光により磁気記録媒体にエネルギーが与えられる。この結果、近接場光によりエネルギーを与えられた磁気記録媒体の微小領域の保磁力が下がり、書き込み磁極による磁気記録を容易に行うことが可能となる。他方、磁気記録媒体に記録された記録信号の読み出しは、読み取り磁極により行われる。
【0110】
尚、上述した第1実施例の各種構成の少なくとも一部と、上述した第2実施例の各種構成の少なくとも一部とが適宜組み合わせられてもよい。例えば、第1実施例の「発光層122」及び「ペグ123a」が第2実施例の「マイクロディスク12」及び「金属ロッド11」に相当し得ることを考慮すれば、第1実施例の近接場光デバイス120が備える発光層122が、第2実施例のマイクロディスク12と同様に、穴13を備えていてもよい。
以上の実施例に加えて、以下の付記を記載する。
(付記10)
付記10に記載の近接場光デバイスは、光を受光して内部にエネルギーを蓄えることが可能な、盤状の微小共振器と、前記微小共振器の側面に接するように、又は前記側面の近傍に、配置され、前記微小共振器に蓄積されたエネルギーの少なくとも一部を取り出し可能な近接場光発生部と、を備え、前記微小共振器の形状は、有孔円盤であり、前記微小共振器に設けられた孔の中心は、前記微小共振器の上方から平面的に見て、前記微小共振器の上面の中心から離れていることを特徴とする近接場光デバイスである。
(付記11)
付記11に記載の近接場光デバイスは、前記微小共振器は、その内部に、複数の量子ドット又は複数の金属ナノパーティクルを含むことを特徴とする付記10に記載の近接場光デバイスである。
(付記12)
付記12に記載の近接場光デバイスは、前記微小共振器は、マイクロディスク共振器を用いたレーザであることを特徴とする付記10に記載の近接場光デバイスである。
(付記13)
付記13に記載の近接場光デバイスは、前記微小共振器は、マイクロディスク共振器を用いたレーザと、前記マイクロディスク共振器を用いたレーザの上に積層されたフォトニッククリスタル層と、を有することを特徴とする付記10に記載の近接場光デバイスである。
(付記14)
付記14に記載の近接場光デバイスは、光を受光して内部にエネルギーを蓄えることが可能な、盤状の微小共振器と、前記微小共振器の側面に接するように、又は前記側面の近傍に、配置され、前記微小共振器に蓄積されたエネルギーの少なくとも一部を取り出し可能な近接場光発生部と、を備え、前記微小共振器は、前記近接場光発生部と対向する尖端部を有することを特徴とする近接場光デバイスである。
(付記15)
付記15に記載の近接場光デバイスは、光を受光して内部にエネルギーを蓄えることが可能な、盤状の微小共振器と、前記微小共振器の側面に接するように、又は前記側面の近傍に、配置され、前記微小共振器に蓄積されたエネルギーの少なくとも一部を取り出し可能な近接場光発生部と、を備え、前記微小共振器は、一の材料からなる第1の部分と、前記一の材料とは異なる他の材料からなる第2の部分と、を有することを特徴とする近接場光デバイスである。
【0111】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う光デバイス、磁気ヘッド及び製造方法、並びに近接場光デバイスもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。