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特許6362315圧電振動片、圧電振動子及び圧電振動片の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362315
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】圧電振動片、圧電振動子及び圧電振動片の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/02 20060101AFI20180712BHJP
   H03H 3/04 20060101ALI20180712BHJP
   H03H 3/02 20060101ALI20180712BHJP
   H03H 9/19 20060101ALI20180712BHJP
   H03H 9/215 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   H03H9/02 M
   H03H3/04 B
   H03H3/02 D
   H03H9/19 J
   H03H9/215
【請求項の数】4
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-212171(P2013-212171)
(22)【出願日】2013年10月9日
(65)【公開番号】特開2015-76745(P2015-76745A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2016年8月8日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】713005174
【氏名又は名称】エスアイアイ・クリスタルテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100166305
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100171251
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】市村 直也
【審査官】 石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−051256(JP,A)
【文献】 特開2008−160824(JP,A)
【文献】 特開昭57−053128(JP,A)
【文献】 特開2003−133885(JP,A)
【文献】 特開昭53−131793(JP,A)
【文献】 特開2009−055092(JP,A)
【文献】 特開2008−022184(JP,A)
【文献】 特開2006−191466(JP,A)
【文献】 特開2013−165396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 3/02− 9/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動腕部と、前記振動腕部の先端部に設けられた重り金属膜と、を含む圧電振動片の製造方法であって、
前記振動腕部の先端部に、互いに間隔を空けて隣り合うように配置された複数の孤立金属膜と、前記複数の孤立金属膜の側部を含む前記複数の孤立金属膜の外表面全体を覆う被覆金属膜と、を含む重量調整層を形成する重量調整層形成工程と、
前記重量調整層にレーザー光を照射し、前記重量調整層の一部を除去することにより、一又は複数の前記孤立金属膜からなる第一金属層と、前記第一金属層の側部を含む前記第一金属層の外表面全体を覆う第二金属層と、を含む前記重り金属膜を形成するレーザートリミング工程と、
を含む圧電振動片の製造方法。
【請求項2】
前記複数の孤立金属膜は、前記振動腕部の長手方向に沿って配置されている請求項に記載の圧電振動片の製造方法。
【請求項3】
前記複数の孤立金属膜には、互いに面積の異なる複数の前記孤立金属膜が含まれる請求項に記載の圧電振動片の製造方法。
【請求項4】
前記振動腕部の最も先端側に配置された前記孤立金属膜の面積は、前記振動腕部の最も基端側に配置された前記孤立金属膜の面積よりも大きい請求項に記載の圧電振動片の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動片、圧電振動子及び圧電振動片の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電振動片の周波数の調整方法として、予め振動腕部の先端部の表面上に周波数調整用の重り金属膜を設け、レーザー光を照射して重り金属膜を除去することにより周波数を調整する方法が知られている。
【0003】
一般に、重り金属膜の材料としては、優れた耐食性を有する金が用いられる。しかし、高価な金を重り金属膜の材料として多量に用いると、圧電振動片の価格が非常に高くなる。例えば、特許文献1に係る圧電振動片の製造方法では、第一層として金よりも比較的安価な銀の膜を形成し、第一層の上に第二層として金の薄膜を形成することで重り金属膜を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−51256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来技術に係る圧電振動片の製造方法では、銀の膜が金の薄膜で覆われていても、レーザートリミングによる周波数調整を行うと、銀の膜が露出してしまう。重り金属膜の成膜工程等においてはクロムが析出するため、重り金属膜の成膜後に、ウエハ表面に対してクロムを除去するためのエッチング処理が行われる。このとき、銀の膜が露出していると、銀の膜がエッチング処理により浸食されることがある。そのため、圧電振動片の周波数を目的の周波数に調整することができないという課題があった。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、圧電振動片の周波数を目的の周波数に調整することが可能な圧電振動片、圧電振動子及び圧電振動片の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用した。
【0008】
(1)すなわち、本発明に係る一態様の圧電振動片は、振動腕部と、前記振動腕部の先端部に設けられた重り金属膜と、を含み、前記重り金属膜は、第一金属層と、前記第一金属層の側部を含む前記第一金属層の外表面全体を覆う第二金属層と、を含む。
【0009】
この構成によれば、第一金属層が外部に露出しないため、第一金属層の浸食を抑制することができる。よって、圧電振動片の周波数を目的の周波数に調整することができる。
【0010】
(2)上記(1)に記載の圧電振動片において、前記重り金属膜は、下地金属層と、前記下地金属層の外表面上に形成された前記第一金属層と、前記第一金属層の外表面全体を覆って前記下地金属層と接する前記第二金属層と、を含んでいてもよい。
【0011】
この構成によれば、第一金属層の上面、下面及び側面が、下地金属層や第二金属層によって包みこまれるため、第一金属層の浸食をより抑制することができる。
【0012】
(3)上記(2)に記載の圧電振動片において、前記下地金属層の前記第一金属層及び前記第二金属層と接する部分と、前記第二金属層の前記第一金属層及び前記下地金属層と接する部分は、いずれも金で構成されていてもよい。
【0013】
この構成によれば、金が優れた耐食性を有するため、第一金属層の浸食をより抑制することができる。
【0014】
(4)本発明に係る一態様の圧電振動子は、上記(1)から(3)のいずれか一項に記載の圧電振動片を備える。
【0015】
この構成によれば、圧電振動片の周波数を目的の周波数に調整することが可能な圧電振動子が得られる。
【0016】
(5)本発明に係る一態様の圧電振動片の製造方法は、振動腕部と、前記振動腕部の先端部に設けられた重り金属膜と、を含む圧電振動片の製造方法であって、前記振動腕部の先端部に、互いに間隔を空けて隣り合うように配置された複数の孤立金属膜と、前記複数の孤立金属膜の側部を含む前記複数の孤立金属膜の外表面全体を覆う被覆金属膜と、を含む重量調整層を形成する重量調整層形成工程と、前記重量調整層にレーザー光を照射し、前記重量調整層の一部を除去することにより、一又は複数の前記孤立金属膜からなる第一金属層と、前記第一金属層の側部を含む前記第一金属層の外表面全体を覆う第二金属層と、を含む前記重り金属膜を形成するレーザートリミング工程と、を含む。
【0017】
この方法によれば、第一金属層が外部に露出しないため、第一金属層の浸食を抑制することができる。よって、圧電振動片の周波数を目的の周波数に調整することができる。
【0018】
(6)上記(5)に記載の圧電振動片の製造方法において、前記複数の孤立金属膜は、前記振動腕部の長手方向に沿って配置されていてもよい。
【0019】
この方法によれば、振動腕部の先端側に配置される孤立金属膜を除去することで粗調を行い、振動腕部の基端部に配置される孤立金属膜を除去することで微調を行うことができる。
【0020】
(7)上記(6)に記載の圧電振動片の製造方法において、前記複数の孤立金属膜には、互いに面積の異なる複数の前記孤立金属膜が含まれてもよい。
【0021】
この方法によれば、面積の大きい孤立金属膜を除去することで粗調を行い、面積の小さい孤立金属膜を除去することで微調を行うことができる。
【0022】
(8)上記(7)に記載の圧電振動片の製造方法において、前記振動腕部の最も先端側に配置された前記孤立金属膜の面積は、前記振動腕部の最も基端側に配置された前記孤立金属膜の面積よりも大きくてもよい。
【0023】
この方法によれば、振動腕部の先端側に配置された孤立金属膜の面積を大きくすることにより、より粗い周波数調整を行うことができる。また、振動腕部の基端部に配置された孤立金属膜の面積を小さくすることにより、より細かな周波数調整を行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、圧電振動片の周波数を目的の周波数に調整することが可能な圧電振動片、圧電振動子及び圧電振動片の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第一実施形態の圧電振動片を示す外観斜視図である。
図2】第一実施形態の圧電振動片を示す図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
図3】圧電振動子の一実施形態を示す外観斜視図である。
図4】圧電振動子の一実施形態の内部構造を示す平面図である。
図5】圧電振動子の一実施形態を示す図であって、図4におけるA−A断面図である。
図6】本実施形態の圧電振動子を示す図であって、各部を分解した分解斜視図である。
図7】重り金属膜の一実施形態を示す平面図である。
図8】重り金属膜の一実施形態を示す図であって、図7におけるB−B断面図である。
図9】(A)〜(C)圧電振動片の実装方法を示す図である。
図10】圧電振動片の製造方法を示すフローチャートである。
図11】(A)〜(D)第一実施形態の圧電振動片の製造方法の各工程を説明する図である。
図12】レーザートリミング前の重量調整層の各部の大きさを説明する平面図である。
図13】レーザートリミング後の重量調整層の各部の大きさを説明する平面図である。
図14】(A)〜(D)比較例に係る圧電振動片の製造方法の各工程を説明する図である。
図15】重量調整層の第一変形例を示す平面図である。
図16】重量調整層の第二変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る圧電振動片及び圧電振動子について説明する。
尚、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせる場合がある。
尚、図1から図9までの説明においてはXYZ座標系を設定し、このXYZ座標系を参照しつつ各部材の位置関係を説明する。この際、圧電振動片の面と垂直な方向をZ軸方向、振動腕部の長手方向をY軸方向、Y軸方向とZ軸方向の両方と直交する方向をX軸方向とする。また、基部から振動腕部の先端に向かう方向を+Y方向とする。
【0027】
[第一実施形態]
(圧電振動片)
まず、本実施形態の圧電振動片1について説明する。
図1,2は、本実施形態の圧電振動片を示す図である。図1は、外観斜視図、図2(A)は平面図、図2(B)は、図2(A)の側面図である。
尚、図1,2においては、後述する圧電振動子に実装する際にパッケージの実装面と対向する対向面(一面)18aが上側(+Z方向側)となるようにして表している。
また、図1,2においては、後述する重り金属膜30の図示を省略している。
【0028】
本実施形態の圧電振動片1は、図1,2に示すように、平板状である。圧電振動片1は、基部10と、振動腕部11,12と、ハンマー部13,14と、支持腕部15,16と、を備えている。
圧電振動片1は、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成されたサイドアーム型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。
圧電振動片1の面に垂直な方向の厚さ(Z軸方向長さ)としては、例えば、30μmとすることができる。
【0029】
一対の振動腕部11,12は、基部10からそれぞれ同一の方向(+Y方向)に向かって延出している。振動腕部11,12は、長手方向(Y軸方向)と垂直で圧電振動片1の面と平行な方向(一の方向)、すなわちX軸方向に並んで設けられている。一対の振動腕部11,12の外表面上には、これら一対の振動腕部11,12を振動させる不図示の励振電極が形成されている。
【0030】
ハンマー部13,14は、それぞれ振動腕部11,12の先端から、振動腕部11,12の長手方向(Y軸方向)に沿うように延出形成されている。ハンマー部13,14の幅(X軸方向長さ)は、振動腕部11,12の幅(X軸方向長さ)よりも大きく形成されている。ハンマー部13,14は、基部10を固定端として、幅方向(X軸方向)に振動する自由端に設定されている。
【0031】
一対の支持腕部15,16は、基部10から、振動腕部11,12の幅方向(X軸方向)両側に延出した後、振動腕部11,12の長手方向(Y軸方向)に沿って、振動腕部11,12の先端側(+Y方向側)に向かって屈曲延出して形成されている。
【0032】
支持腕部15,16は、それぞれマウント部15a,16aを備えている。マウント部15a,16aは、圧電振動片1の対向面18a上における、支持腕部15,16の延出方向側(+Y方向側)の先端部近傍に設けられている。マウント部15a,16aが設けられている位置は、支持腕部15,16が振動する際に、振動の節となる位置である。
【0033】
支持腕部15,16のマウント部15a,16aには、不図示のマウント電極が形成され、不図示の引き出し電極により、振動腕部11,12の外表面上に形成された励振電極と接続されている。そして、これらの各電極に所定の電圧が印加されると、一対の振動腕部11,12の双方の励振電極どうしの相互作用により、一対の振動腕部11,12が互いに接近または離間する方向(X軸方向)に所定の共振周波数で振動する。
【0034】
(圧電振動子)
次に、圧電振動片1を用いた圧電振動子の一実施形態として、セラミックパッケージタイプの表面実装型振動子について説明する。
図3から6は、本実施形態の圧電振動子500を示す図であり、図3は外観斜視図、図4は圧電振動子の内部構成を示す、封口板を取り外した状態の平面図、図5図4におけるA−A断面図、図6は圧電振動子500の分解斜視図である。
尚、図4から6においては、後述する重り金属膜30の図示を省略している。
【0035】
本実施形態の圧電振動子500は、図3から図6に示すように、内部に気密封止されたキャビティCを有するパッケージ510と、キャビティC内に収容された前述した圧電振動片1と、を備える。
【0036】
この圧電振動子500は、略直方体状に形成されており、本実施形態では平面視において圧電振動子500の長手方向を長さ方向(Y軸方向)といい、短手方向を幅方向(X軸方向)といい、これら長さ方向及び幅方向に対して直交する方向を厚さ方向(Z軸方向)という。
【0037】
パッケージ510は、パッケージ本体(ベース部材)530と、このパッケージ本体530に対して接合されるとともに、パッケージ本体530との間にキャビティCを形成する封口板(リッド部材)540と、を備えている。
【0038】
パッケージ本体530は、互いに重ね合わされた状態で接合された第一ベース基板550及び第二ベース基板560と、第二ベース基板560上に接合されたシールリング570と、を備えている。
第一ベース基板550は、平面視略長方形状に形成されたセラミックス製の基板とされている。第二ベース基板560は、第一ベース基板550と同じ外形形状である平面視略長方形状に形成されたセラミックス製の基板とされており、第一ベース基板550上に重ねられた状態で焼結等によって一体的に接合されている。
【0039】
第一ベース基板550及び第二ベース基板560の四隅には、平面視1/4円弧状の切欠部580が、両基板550,560の厚さ方向の全体に亘って形成されている。これら第一ベース基板550及び第二ベース基板560は、例えば、ウエハ状のセラミック基板を2枚重ねて接合した後、両セラミック基板を貫通する複数のスルーホールを行列状に形成し、その後、各スルーホールを基準としながら両セラミック基板を格子状に切断することで作製される。その際、スルーホールが4分割されることで、前述した切欠部580となる。
また、第二ベース基板560の上面は、圧電振動片1がマウントされる実装面560aとされている。
【0040】
尚、第一ベース基板550及び第二ベース基板560はセラミックス製としたが、その具体的なセラミックス材料としては、例えばアルミナ製のHTCC(High Temperature Co−Fired Ceramic)や、ガラスセラミックス製のLTCC(Low Temperature Co−Fired Ceramic)等が挙げられる。
【0041】
シールリング570は、第一ベース基板550及び第二ベース基板560の外形よりも一回り小さい導電性の枠状部材であり、第二ベース基板560の実装面560aに接合されている。
具体的には、シールリング570は、銀ロウ等のロウ材や半田材等による焼付けによって実装面560a上に接合、あるいは、実装面560a上に形成(例えば、電解メッキや無電解メッキの他、蒸着やスパッタリング法等により)された金属接合層に対する溶着等によって接合されている。
【0042】
尚、シールリング570の材料としては、例えばニッケル基合金等が挙げられ、具体的にはコバール、エリンバー、インバー、42−アロイ等から選択すればよい。特に、シールリング570の材料としては、セラミック製とされている第一ベース基板550及び第二ベース基板560に対して熱膨張係数が近いものを選択することが好ましい。例えば、第一ベース基板550及び第二ベース基板560として、熱膨張係数6.8×10-6/℃のアルミナを用いる場合には、シールリング570としては、熱膨張係数5.2×10-6/℃のコバールや、熱膨張係数4.5×10-6/℃以上、6.5×10-6/℃以下の42−アロイを用いることが好ましい。
【0043】
封口板540は、シールリング570上に重ねられた導電性基板であり、銀ロウ等のロウ材や半田材等による焼付け等によって、シールリング570と気密に接合されている。
シールリング570に対する接合は、そして、この封口板540とシールリング570と第二ベース基板560の実装面560aとで画成された空間が、気密に封止された前述したキャビティCとして機能する。
【0044】
尚、封口板540の溶接方法としては、例えばローラ電極を接触させることによるシーム溶接や、レーザ溶接、超音波溶接等が挙げられる。また、封口板540とシールリング570との溶接をより確実なものとするため、互いになじみの良いニッケルや金等の接合層を、少なくとも封口板540の下面と、シールリング570の上面とにそれぞれ形成することが好ましい。
【0045】
第二ベース基板560の実装面560a上には、凸部(隙間形成部)81が設けられている。凸部81は、圧電振動片1が実装されている側に突出して形成されており、平面視形状は特に限定されず、矩形状であっても、他の形状であってもよい(図では矩形状)。
凸部81の上面は、実装面560aと平行である。凸部81は、実装面560aにおける、後述する凹部660の−Y方向側に、実装面560aの幅方向(X軸方向)の中心を挟んで2つ、対称の位置に設けられている。凸部81の上面には、圧電振動片1との接続電極である一対の電極パッド610A,610Bがそれぞれ形成されている。
【0046】
第一ベース基板550の下面には、一対の外部電極620A,620Bが長さ方向(Y軸方向)に間隔をあけて形成されている。
これら電極パッド610A,610B及び外部電極620A,620Bは、例えば、蒸着やスパッタリング法等で形成された単一金属による単層膜、または異なる金属が積層された積層膜であり、互いにそれぞれ導通している。
【0047】
この点詳細に説明する。
図5に示すように、第一ベース基板550には一方の外部電極620Aに導通し、第一ベース基板550を厚さ方向に貫通する一方の第一貫通電極630Aが形成されているとともに、第二ベース基板560には一方の電極パッド610Aに導通し、第二ベース基板560を厚さ方向に貫通する一方の第二貫通電極640Aが形成されている。そして、第一ベース基板550と第二ベース基板560との間には、一方の第一貫通電極630Aと一方の第二貫通電極640Aとを接続する一方の接続電極650Aが形成されている。これにより、一方の電極パッド610Aと一方の外部電極620Aとは、互いに導通している。
【0048】
また、第一ベース基板550には他方の外部電極620Bに導通し、第一ベース基板550を厚さ方向に貫通する他方の第一貫通電極630Bが形成されているとともに、第二ベース基板560には他方の電極パッド610Bに導通し、第二ベース基板560を厚さ方向に貫通する他方の第二貫通電極640Bが形成されている。そして、第一ベース基板550と第二ベース基板560との間には、他方の第一貫通電極630Bと他方の第二貫通電極640Bとを接続する他方の接続電極650Bが形成されている。これにより、他方の電極パッド610Bと他方の外部電極620Bとは、互いに導通している。
尚、他方の接続電極650Bは、後述する凹部660を回避するように、例えばシールリング570の下方をシールリング570に沿って延在するようにパターニングされている。
【0049】
第二ベース基板560の実装面560aには、図4及び図5に示すように、振動腕部11,12の先端部に対向する部分に、落下等による衝撃の影響によって振動腕部11,12が厚さ方向(Z軸方向)に変位(撓み変形)した際に、振動腕部11,12との接触を回避する凹部660が形成されている。この凹部660は、第二ベース基板560を貫通する貫通孔とされているとともに、シールリング570の内側において四隅が丸みを帯びた平面視正方形状に形成されている。
【0050】
そして、圧電振動片1は、図5に示すように、導電性接着剤80を介して、マウント部15a,16aに形成されている図示しないマウント電極が、電極パッド610A,610Bに接触するようにマウントされている。
【0051】
これにより、圧電振動片1は、第二ベース基板560の実装面560aに対して、対向面18aが平行な状態で支持されると共に、一対の電極パッド610A,610Bにそれぞれ電気的に接続された状態とされている。
【0052】
このように構成された圧電振動子500を作動させる場合には、外部電極620A,620Bに対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片1の励振電極に電流を流すことができ、一方の振動腕部11と他方の振動腕部12とを圧電振動片1の面に沿って所定の周波数で振動させることができる。そして、この振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として圧電振動子500を利用することができる。
【0053】
次に、本実施形態の重り金属膜について、図7,8を参照して説明する。
図7は本実施形態の重り金属膜30を示す平面図、図8図7におけるB−B断面図である。
尚、図7,8においては、一対の振動腕部11,12のうち一方の振動腕部11の先端のハンマー部13に設けられた重り金属膜30について説明する。他方の振動腕部12の先端のハンマー部14に設けられた重り金属膜30については、一方のハンマー部13に設けられた重り金属膜30と同様の構成を有するため、その詳細な説明は省略する。
【0054】
図7,8に示すように、振動腕部11のハンマー本体部13Aの外表面上には、自身の振動状態を所定の周波数の範囲内で振動するように調整するための周波数調整用に重り金属膜30が形成されている。重り金属膜30は、後述するレーザートリミング処理により、ハンマー部13の先端から所定距離離間した位置に配置されている。
【0055】
重り金属膜30は、下地金属層33と、下地金属層33の外表面上に形成された第一金属層31と、第一金属層31の側部を含む第一金属層31の外表面全体を覆って下地金属層33と接する第二金属層32と、を備えている。
【0056】
下地金属層33は、ハンマー本体部13Aの外表面に形成された第一下地金属層34と、第一下地金属層34の上面に積層して形成された第二下地金属層35と、を備えている。第一下地金属層34は、例えばクロム(Cr)等の金属からなる。第二下地金属層35は、例えば金(Au)等の金属からなる。尚、第一下地金属層34は、第二下地金属層35とハンマー本体部13Aとの密着性を増大させるために設けられている。
【0057】
本実施形態において、第二下地金属層35は金からなり、下地金属層33の第一金属層31及び第二金属層32と接する部分(第二下地金属層35)は、金で構成されている。
【0058】
第一金属層31は、振動腕部11の幅方向(X方向)に長手を有する平面視略長方形状を有する。尚、第一金属層31の平面視形状は、長方形状に限らず、円形、楕円形等、種々の形状を採用することができる。
第一金属層31の幅(X方向の長さ)は、ハンマー本体部13Aの幅(X方向の長さ)よりも小さい。第一金属層31は、例えば銀(Ag)や金(Au)等の比重の高い金属からなる。
【0059】
第二金属層32は、後述するレーザートリミング処理により、ハンマー部13の先端側(+Y方向側)の端縁が起立している。第二金属層32の幅(X方向の長さ)は、ハンマー本体部13Aの幅(X方向の長さ)と平面視で重なる大きさであり、第一金属層31の幅(X方向の長さ)よりも大きい。第二金属層32の長さ(Y方向の長さ)は、第一金属層31の長さ(Y方向の長さ)よりも大きい。第二金属層32は、例えば金(Au)等の金属からなる。
【0060】
本実施形態において、第二金属層32は金からなり、第二金属層32の第一金属層31及び下地金属層33(第二下地金属層35)と接する部分は、金で構成されている。
【0061】
このように、下地金属層33の第一金属層31及び第二金属層32と接する部分(第二下地金属層35)と、第二金属層32の第一金属層31及び下地金属層33(第二下地金属層35)と接する部分は、いずれも金で構成されている。これにより、第一金属層31の上面、下面及び側面が、優れた耐食性を有する金からなる第二下地金属層35及び第二金属層32によって包みこまれる。
【0062】
次に、本実施形態の圧電振動片の実装方法について、図9を参照して説明する。
図9は、本実施形態の圧電振動片1を圧電振動子500に実装する手順を示す断面図であり、図4におけるA−A断面と同様の断面を示している。尚、図9においては、圧電振動子500の構成要素を適宜省略して図示している。
また、図9においては、上述した重り金属膜30の図示を省略している。
【0063】
まず、図9(A)に示すように、第二ベース基板560の実装面560a上に設けられた電極パッド610A(610B)の上面610Aa(610Ba)に未硬化の導電性接着剤64を塗布する。
未硬化の導電性接着剤64は、圧電振動片1を第二ベース基板560上に接着できる範囲内において、特に限定されない。本実施形態においては、熱硬化性を有する接着剤である。
【0064】
次に、図9(B)に示すように、圧電振動片1を、対向面18aが第二ベース基板560の実装面560aと対向するようにして、第二ベース基板560上に設置する。
このとき、圧電振動片1における支持腕部15,16のマウント部15a,16aを、第二ベース基板560の凸部81上に設けられた電極パッド610A,610Bの上面610Aa,610Baに対向するようにして、未硬化の導電性接着剤64に当接させる。これにより、圧電振動片1が、圧電振動片1の対向面18aと、実装面560aと、が平行な姿勢で、第二ベース基板560上に設置される。
【0065】
次に、未硬化の導電性接着剤64を、加熱することにより、硬化させる。
この工程により、硬化した導電性接着剤80によって、圧電振動片1のマウント部15a,16aと、第二ベース基板560の凸部81上に設けられた電極パッド610A,610Bと、がそれぞれ固着される。
【0066】
以上の工程により、圧電振動片1は、図9(C)に示すように、第二ベース基板560の実装面560aに対して、対向面18aが平行な状態で支持されると共に、一対の電極パッド610A,610Bにそれぞれ電気的に接続された状態で実装される。
【0067】
(圧電振動片の製造方法)
以下に、図10から図13を用いて、本実施形態に係る圧電振動片1の製造方法について説明する。
尚、図11から図13においては、一対の振動腕部11,12のうち一方の振動腕部の先端のハンマー本体部を図示し、このハンマー本体部に重量調整層40、重り金属膜30をそれぞれ形成する様子を図示している。
また、図12図13においては、孤立金属膜41aの図示を省略している。
先ず、水晶のランバート原石を所定の角度でスライスして一定の厚みのウエハ(図示略)とする。
次に、ウエハをラッピングして粗加工した後、加工変質層をエッチングで取り除き、この後、ポリッシュなどの鏡面研磨加工を行なって所定の厚みとする(図10に示すステップS1)。
例えば、ウエハの厚みを30μmとする。
【0068】
次に、ウエハから複数の圧電板(圧電材料からなる圧電体)の外形形状をパターニングするための外形パターン(図示略)を形成する外形パターン形成工程(図10に示すステップS2)を実行する。
尚、外形パターンは、ポリッシングが終了したウエハの両面に、図1に示す基部10、振動腕部11,12、ハンマー部13,14及び支持腕部15,16の外形形状に倣って金属膜をパターニングすることによって形成される。
この際、ウエハに形成する複数の圧電振動片1の数と同一数だけ一括してパターニングを行なう。
【0069】
次に、パターニングされた外形パターンをマスクとして、ウエハの両面からそれぞれエッチング加工を行う(図10に示すステップS3)。
これにより、外形パターンでマスクされていない領域が選択的に除去され、外形パターンによってパターニングされたウエハは圧電板の外形形状に形成される。
【0070】
次に、複数の圧電板の外表面上に電極膜をパターニングして、図示しない励振電極、マウント電極及び引き出し電極をそれぞれ形成する電極形成工程(図10に示すステップS4)を実行する。
【0071】
次に、一対の振動腕部の先端部に周波数調整用の重量調整層40を形成する重量調整層形成工程(図10に示すステップS5)を実行する。
このステップS5においては、先ず、図11(A)に示すように、振動腕部の先端部に、例えばスパッタリング法や蒸着法などにより、クロムからなる第一下地金属層34を形成した後、さらに、金からなる第二下地金属層35を第一下地金属層34の上面に積層して形成することにより、下地金属層33を形成する。
【0072】
第一下地金属層34の厚みは10nm以上200nm以下であり、本実施形態では50nmとする。第二下地金属層35の厚みは10nm以上200nm以下であり、本実施形態では50nmとする。
【0073】
次に、下地金属層33(第二下地金属層35)の上面に、例えばスパッタリング法や蒸着法などにより、互いに間隔を空けて隣り合う位置に複数(例えば本実施形態では二つ)の銀からなる孤立金属膜41a,41bを形成する。複数の孤立金属膜41a,41bは、振動腕部の長手方向に沿って配置されている。
【0074】
例えば、孤立金属膜41a,41bの厚みは500nm以上3000nm以下であり、本実施形態では2000nmとする。
【0075】
複数の孤立金属膜41a,41bは、互いに面積が異なる。具体的に、振動腕部の最も先端側(+Y方向側)に配置された孤立金属膜41aの面積は、振動腕部の最も基端側(−Y方向側)に配置された孤立金属膜41bの面積よりも大きい。
【0076】
孤立金属膜41aは、振動腕部の長手方向(Y方向)に長手を有する平面視略長方形状を有する。孤立金属膜41bは、振動腕部の幅方向(X方向)に長手を有する平面視略長方形状を有する。孤立金属膜41aの幅(X方向の長さ)は孤立金属膜41bの幅(X方向の長さ)と同じ大きさであり、孤立金属膜41aの長さ(Y方向の長さ)は孤立金属膜41bの長さ(Y方向の長さ)よりも大きい。
【0077】
図12に示すように、例えば、孤立金属膜41bの長さL1(Y方向の長さ)の寸法は、50μm以上200μm以下であり、製品によって種々の値を用いることができる。本実施形態では、孤立金属膜41bの長さL1を50μmとする。
【0078】
次に、図11(B)に示すように、下地金属層33(第二下地金属層35)の上面に、例えばスパッタリング法や蒸着法などにより、複数の孤立金属膜41a,41bの側部を含む複数の孤立金属膜41a,41bの外表面全体を覆うように金からなる被覆金属膜42を形成する。
【0079】
例えば、被覆金属膜42の厚みは100nm以上1000nm以下であり、本実施形態では500nmとする。
【0080】
被覆金属膜42は、振動腕部の長手方向(Y方向)に長手を有する平面視略長方形状を有する。被覆金属膜42は、振動腕部の先端(+Y方向側の端)から、孤立金属膜41bにおける振動腕部の基端側(−Y方向側)の端縁を所定量超える部分までの範囲に形成される。
【0081】
図12に示すように、例えば、被覆金属膜42の長さL2(Y方向の長さ)の寸法は、600μm程度であり、製品によって種々の値を用いることができる。
【0082】
次に、ウエハに形成された全ての振動腕部に対して、周波数を粗く調整する粗調工程(レーザートリミング工程、図10に示すステップS6)を実行する。
詳細には、先ず、ウエハに形成された全ての振動腕部の周波数をまとめて測定し、測定された周波数と予め定められた目標周波数との差に応じて、トリミング量を算出する。
【0083】
このステップS6においては、図11(C),(D)に示すように、重量調整層40にレーザー光を照射し、重量調整層40の一部を除去することにより、重り金属膜30を形成する。
具体的には、重量調整層40のうち振動腕部の先端(+Y方向側の端)から孤立金属膜41aにおける振動腕部の基端側(−Y方向側)の端縁を所定量超える部分までの部分にレーザー光を照射して、重量調整層40の一部を蒸発させ、トリミング量に応じて重量調整層40の一部を除去(トリミング)する。重量調整層40が除去された部分には、ハンマー本体部13Aが露出する。
【0084】
尚、トリミング領域における振動腕部の基端側(−Y方向側)の端縁は、孤立金属膜41aと孤立金属膜41bとの間の部分、すなわち孤立金属膜41a、41bが形成されていない部分(被覆金属膜42のみが形成されている部分)と平面視重なるようにする。
【0085】
図13に示すように、例えば、重量調整層40のトリミング量の長さL3(Y方向の長さ)の寸法は、300μm程度であり、予め定められた目標周波数に応じて種々の値を用いることができる。
【0086】
これにより、図11(C),(D)に示すように、孤立金属膜41bからなる第一金属層31と、第一金属層31の側部を含む第一金属層31の外表面全体を覆う第二金属層32と、を含む重り金属膜30を形成する。
【0087】
ここで、重り金属膜30の形成工程(図10に示すステップS5)においては熱が付与されるためクロムが析出する。そのため、重り金属膜30の成膜後に、ウエハ表面に対してクロムを除去するためのエッチング処理を行う。このエッチング処理は、エッチャントとして強酸性溶液を用い、株式会社ギガテック製の自動エッチング装置を用いて行う。
【0088】
尚、共振周波数をより高精度に調整する微調工程(圧電振動片1の周波数を微調整して目標周波数の範囲内に収める工程)は、例えば実装後に行う。
例えば、微調工程は、図9(C)に示したように、圧電振動片1が、第二ベース基板560の実装面560aに実装された状態で、且つ、リッド部材540(図5参照)で封止される前に行う。
詳細には、外部電極620A,620B(図5参照)に電圧を印加して圧電振動片1を振動させる。そして、周波数を計測しながらレーザー光を照射し、重量調整層40の一部を蒸発させる。これにより、一対の振動腕部の先端側の重量を変化させ、圧電振動片1の周波数を、公称周波数の所定範囲内に収まるように微調整する。
尚、微調工程においては、重量調整層40のうち孤立金属膜41a、41bが形成されていない部分(被覆金属膜42のみが形成されている部分)と平面視重なる領域にレーザー光を照射して、重量調整層40の一部を除去してもよい。
【0089】
次に、ウエハと圧電板とを連結している連結部を切断して、複数の圧電板をウエハから切り離して個片化する切断工程(図10に示すステップS7)を実行する。
これにより、1枚のウエハから、圧電振動片1を一度に複数製造する。
以上により、圧電振動片の製造は終了する。
【0090】
以下、本実施形態に係る発明の作用、効果について説明する。
その前に、図14を用いて、比較例に係る圧電振動片の製造方法について説明する。
尚、ウエハを準備する工程(図10に示すステップS1)から電極形成工程(図10に示すステップS4)までは本実施形態に係る圧電振動片の製造方法と同一の工程であるため、その詳細な説明を省略する。
【0091】
次に、図14(A)に示すように、振動腕部の先端部に、例えばスパッタリング法や蒸着法などにより、クロムからなる第一下地金属層1034を形成した後、さらに、金からなる第二下地金属層1035を第一下地金属層34に積層して形成することにより、下地金属層1033を形成する。
【0092】
次に、下地金属層1033(第二下地金属層1035)の上面に、例えばスパッタリング法や蒸着法などにより、銀からなる金属膜1041を形成する。
【0093】
次に、図14(B)に示すように、金属膜1041の上面に、例えばスパッタリング法や蒸着法などにより、金からなる金属膜1042を形成する。
このようにして、一対の振動腕部の先端部に、重量調整層1040を形成する。
【0094】
次に、図14(C),(D)に示すように、重量調整層1040にレーザー光を照射し、重量調整層1040の一部を除去することにより、第一金属層1031と、第一金属層1031の上面に積層して形成された第二金属層1032と、を含む重り金属膜1030を形成する。
【0095】
ここで、重り金属膜1030の形成工程においては熱が付与されるためクロムが析出する。そのため、重り金属膜1030の成膜後に、ウエハ表面に対してクロムを除去するためのエッチング処理を行う。
【0096】
比較例に係る圧電振動片の製造方法では、金属膜1041が金属膜1042で覆われていても(図14(B)参照)、レーザートリミングによる周波数調整を行うと、図14(D)に示すように第一金属層1031が露出してしまう。このとき、第一金属層1031が露出していると、第一金属層1031がエッチング処理により浸食されることがある。そのため、圧電振動片の周波数を目的の周波数に調整することができないという課題があった。
【0097】
これに対し、本実施形態に係る圧電振動片1によれば、図11(D)に示したように、重り金属膜30が第一金属層31と、第一金属層31の側部を含む第一金属層31の外表面全体を覆う第二金属層32と、を含むことで、第一金属層31が外部に露出しないため、第一金属層31の浸食を抑制することができる。よって、圧電振動片1の周波数を目的の周波数に調整することができる。
【0098】
また、この構成によれば、重り金属膜30が、下地金属層33と、下地金属層33の外表面上に形成された第一金属層31と、第一金属層31の外表面全体を覆って下地金属層33と接する第二金属層32と、を含むことで、第一金属層31の上面、下面及び側面が、下地金属層33や第二金属層32によって包みこまれるため、第一金属層31の浸食をより抑制することができる。
【0099】
また、この構成によれば、圧電振動片1において、下地金属層33の第一金属層31及び第二金属層32と接する部分(第二下地金属層35)と、第二金属層32の第一金属層31及び下地金属層33と接する部分がいずれも金で構成されることで、金が優れた耐食性を有するため、第一金属層31の浸食をより抑制することができる。
【0100】
また、この構成によれば、圧電振動子500が上述した圧電振動片1を備えるため、圧電振動片1の周波数を目的の周波数に調整することが可能な圧電振動子500が得られる。
【0101】
また、この方法によれば、重量調整層40にレーザー光を照射し、重量調整層40の一部を除去することにより、孤立金属膜41bからなる第一金属層31と、第一金属層31の側部を含む第一金属層31の外表面全体を覆う第二金属層32と、を含む重り金属膜30を形成するレーザートリミング工程を含むことで、第一金属層31が外部に露出しないため、第一金属層31の浸食を抑制することができる。よって、圧電振動片1の周波数を目的の周波数に調整することができる。
【0102】
また、この方法によれば、複数の孤立金属膜41a,41bが振動腕部の長手方向に沿って配置されているため、振動腕部の先端側に配置される孤立金属膜41aを除去することで粗調を行い、振動腕部の基端部に配置される孤立金属膜41bを除去することで微調を行うことができる。
【0103】
また、この方法によれば、複数の孤立金属膜41a,41bには、互いに面積の異なる複数の孤立金属膜が含まれるため、面積の大きい孤立金属膜41aを除去することで粗調を行い、面積の小さい孤立金属膜41bを除去することで微調を行うことができる。
【0104】
また、この方法によれば、振動腕部の最も先端側に配置された孤立金属膜41aの面積が振動腕部の最も基端側に配置された孤立金属膜41bの面積よりも大きいため、振動腕部の先端側に配置された孤立金属膜41aの面積を大きくすることにより、より粗い周波数調整を行うことができる。また、振動腕部の基端部に配置された孤立金属膜41bの面積を小さくすることにより、より細かな周波数調整を行うことができる。
【0105】
尚、本実施形態においては、サイドアーム型の圧電振動片を挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、音叉型やセンターアーム型の圧電振動片においても、本発明を適用可能である。
【0106】
また、本実施形態においては、未硬化の導電性接着剤64として、熱硬化性を有するものを挙げて説明したが、これに限定されない。未硬化の導電性接着剤64は、例えば、光硬化性を有するようなものであってもよい。この場合においては、加熱工程の代わりに、紫外線を当てる等することにより未硬化の導電性接着剤64を硬化させる工程を行う。
【0107】
また、本実施形態においては、圧電振動片1を用いた圧電振動子として、セラミックパッケージタイプの表面実装型振動子について説明したが、圧電振動片1を、ガラス材によって形成されるベース基板及びリッド基板が陽極接合によって接合されるガラスパッケージタイプの圧電振動子に適用することも可能である。
この場合、ガラスパッケージを透過させて外部からレーザー光を照射することができるため、圧電振動片がパッケージ内に封止された状態で、圧電振動片の周波数を微調整することができる。
【0108】
また、本実施形態においては、圧電振動子500に実装する圧電振動片として、第一実施形態の圧電振動片1を用いたが、後述する変形例に係る圧電振動片を用いてもよい。
【0109】
(第一変形例)
尚、上記実施形態に係る重量調整層40は、下地金属層33(第二下地金属層35)の上面に、互いに間隔を空けて隣り合う位置に配置された二つの孤立金属膜41a,41bを含んでいたが、これに限定されない。例えば、重量調整層は、下地金属層33(第二下地金属層35)の上面に、互いに間隔を空けて隣り合う位置に配置された三つ以上の複数の孤立金属膜を含んでいてもよい。
【0110】
以下に、図15を用いて、本変形例に係る重量調整層140について説明する。
図15に示すように、本変形例に係る重量調整層140は、下地金属層33(第二下地金属層35)の上面に、互いに間隔を空けて隣り合う位置に配置された四つの孤立金属膜141a,141b,141c,141dと、被覆金属膜142と、を備えている。被覆金属膜142は、四つの孤立金属膜141a,141b,141c,141dの側部を含む四つの孤立金属膜141a,141b,141c,141dの外表面全体を覆う。
【0111】
本変形例によれば、第一実施形態に比べて多くの孤立金属膜141a,141b,141c,141dを備えるため、より段階的にトリミング量を調整することができ、圧電振動片1の周波数を目的の周波数に容易に調整することができる。
【0112】
また、四つの孤立金属膜141a,141b,141c,141dが振動腕部の長手方向に沿って配置されている。そのため、振動腕部の先端側に配置される孤立金属膜141a,141bを除去することで粗調を行い、振動腕部の基端部に配置される孤立金属膜141c,141dを除去することで、より段階的に微調を行うことができる。
【0113】
また、四つの孤立金属膜141a,141b,141c,141dには、互いに面積の異なる複数の孤立金属膜が含まれる。そのため、面積の大きい孤立金属膜141a,141bを除去することで粗調を行い、面積の小さい孤立金属膜141c,141dを除去することで、より段階的に微調を行うことができる。
【0114】
また、振動腕部の最も先端側に配置された孤立金属膜141a,141bの面積が振動腕部の最も基端側に配置された孤立金属膜141c,141dの面積よりも大きい。そのため、振動腕部の先端側に配置された孤立金属膜141a,141bの面積を大きくすることにより、より粗い周波数調整を段階的に行うことができる。また、振動腕部の基端部に配置された孤立金属膜141c,141dの面積を小さくすることにより、より細かな周波数調整を段階的に行うことができる。
【0115】
(第二変形例)
尚、上記実施形態に係る重量調整層40は、平面視略長方形状を有する孤立金属膜41a,41bを含んでいたが、これに限定されない。例えば、重量調整層は、平面視略正方形状を有する孤立金属膜を含んでいてもよい。
【0116】
以下に、図16を用いて、本変形例に係る重量調整層240について説明する。
図16に示すように、本変形例に係る重量調整層240は、下地金属層33(第二下地金属層35)の上面に、互いに間隔を空けて隣り合う位置に配置された二つの孤立金属膜241a,241bと、10の孤立金属膜を有する孤立金属膜群241cと、被覆金属膜242と、を備えている。二つの孤立金属膜241a,241bと、10の孤立金属膜とは、それぞれ平面視略正方形状を有する。被覆金属膜242は、二つの孤立金属膜241a,241b及び10の孤立金属膜のそれぞれの側部を含む二つ孤立金属膜241a,241b及び孤立金属膜群241cの外表面全体を覆う。
【0117】
本変形例によれば、第一実施形態に比べて多くの孤立金属膜(二つの孤立金属膜241a,241b及び10の孤立金属膜)を備えるため、より段階的にトリミング量を調整することができ、圧電振動片1の周波数を目的の周波数に容易に調整することができる。
【0118】
また、二つ孤立金属膜241a,241bと孤立金属膜群241cとが振動腕部の長手方向に沿って配置されている。そのため、振動腕部の先端側に配置される孤立金属膜241a,241bの少なくとも一つを除去することで粗調を行い、振動腕部の基端部に配置される10の孤立金属膜の少なくとも一つを除去することで、より段階的に微調を行うことができる。
【0119】
また、孤立金属膜(二つの孤立金属膜241a,241b及び10の孤立金属膜)には、互いに面積の異なる複数の孤立金属膜が含まれる。そのため、面積の大きい孤立金属膜241a,241bを除去することで粗調を行い、面積の小さい孤立金属膜(孤立金属膜群241cを構成する10の孤立金属膜)を除去することで、より段階的に微調を行うことができる。
【0120】
また、振動腕部の最も先端側に配置された孤立金属膜241a,241bの面積が振動腕部の最も基端側に配置された孤立金属膜(孤立金属膜群241cを構成する孤立金属膜)の面積よりも大きい。そのため、振動腕部の先端側に配置された孤立金属膜241a,241bの面積を大きくすることにより、より粗い周波数調整を段階的に行うことができる。また、振動腕部の基端部に配置された孤立金属膜(孤立金属膜群241cを構成する孤立金属膜)の面積を小さくすることにより、より細かな周波数調整を段階的に行うことができる。
【0121】
尚、本変形例に係る重量調整層240は、平面視略正方形状を有する二つの孤立金属膜241a,241bと、平面視略正方形状を有する10の孤立金属膜を有する孤立金属膜群241cと、を含んでいたが、これに限定されない。例えば、平面視略正方形状を有する一つ又は三つ以上の孤立金属膜と、平面視略正方形状を有する九つ以下又は12以上の孤立金属膜を有する孤立金属膜群と、を含んでいてもよい。
【0122】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0123】
1…圧電振動片、11,12…振動腕部、30…重り金属膜、31…第一金属層、32…第二金属層、33…下地金属層、35…第二下地金属層(下地金属層の第一金属層及び第二金属層と接する部分)、40,140,240…重量調整層、41a,41b,141a,141b,141c,141d,241a,241b…孤立金属膜、42,142,242…被覆金属膜、500…圧電振動子
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