特許第6362335号(P6362335)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6362335-訓練システム及び訓練方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362335
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】訓練システム及び訓練方法
(51)【国際特許分類】
   G09B 21/00 20060101AFI20180712BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   G09B21/00 F
   A61B5/11 310
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-8463(P2014-8463)
(22)【出願日】2014年1月21日
(65)【公開番号】特開2015-138085(P2015-138085A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2017年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】517020207
【氏名又は名称】清水 順市
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】清水 順市
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 学
【審査官】 宇佐田 健二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−109950(JP,A)
【文献】 特開2013−061369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 21/00−21/06
G09B 1/00− 9/56
G09B 17/00−19/26
A61B 5/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像機能付きハンディ型モニター装置と、
無線型の生体情報機器と、
前記ハンディ型モニター装置と生体情報機器とを相互に関係付けた演算処理部を備え、
前記ハンディ型モニター装置は撮像データを表示する撮像表示部と、
生体情報機器から得られた生体情報を表示するデータ表示部を有し、
前記撮像データは被訓練者の顔の表情,口の動き及び咽頭の動きの動画であり、
前記生体情報は被訓練者の下顎部に貼付したセンサーから得られた筋電位波形であることを特徴とする嚥下運動の訓練システム。
【請求項2】
請求項1記載の訓練システムを用いた訓練方法であって、
被訓練者はハンディ型モニター装置で顔の表情,口の動き及び咽頭の動きの動画を撮像し、前記撮像表示部及びデータ表示部との一方又は両方を見ながら訓練することを特徴とする嚥下運動の訓練方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は嚥下障害者が嚥下運動を訓練したり、聾唖者が正確な発声を獲得できる訓練をするのに、また言語障害者が言語の発声訓練をする等、各種障害者の訓練,リハビリテーションに用いられる訓練システム及びそれを用いた訓練方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、嚥下運動の訓練にこれまでは顔面の表情や筋肉の動きを鏡で見て、その動きを視覚的に確認しながら訓練することが行われてきた。
この場合に、臨床的な筋電位や皮膚の動き等の生体情報はそれ専用の大掛かりな診断装置を用いて計測していた(非特許文献1)。
また、特許文献1には、被験者の頸部を覆うように装着される装置部を有し、この装着部に被験者の甲状軟骨または胸骨甲状筋周辺部のいずれかの表面に接触する静電容量センサーを設けるとともに、このセンサーからの信号を増幅及びローパスフィルタ処理する嚥下運動測定システムを開示する。
しかし、同公報に開示する装置は、静電容量センサーを用いることで小型軽量化が図られているものの、計測データはパーソナルコンピューターのモニターに表示されるものであって、被験者が自分の動きを自分で視覚確認しながら訓練できるものではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】日本摂食嚥下リハ会誌16(3)235−242,2012
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−200300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、被訓練者が自分で訓練部位の動きを目視で確認しながら、さらには生体情報のデータを目視で確認しながら訓練することも可能な訓練システム及びそれを用いた訓練方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る訓練システムは、撮像機能付きハンディ型モニター装置と、無線型の生体情報機器と、前記ハンディ型モニター装置と生体情報機器とを相互に関係付けた演算処理部を備え、前記ハンディ型モニター装置は撮像データを表示する撮像表示部を有することを特徴とする。
【0007】
本発明における訓練システムは、被訓練者が自らハンディ型モニター装置で、顔の表情,口の動き,咽頭の動き等をモニター画面で視認しながら訓練できる点に特徴がある。
従って、本発明で撮像機能付きハンディ型モニター装置とは、例えばカメラ付きタブレット端末を用いることができる。
カメラは、内蔵型でも外付型でもよい。
タブレット端末を用いると、ディスプレイ画面にモニター画面として撮像データを表す撮像表示部とともに、ハンディ型モニター装置は生体情報機器から得られた生体情報を表示するデータ表示部を有するようにすることも容易である。
生体情報機器は、タブレット端末とWorld Wide Web等の無線通信回線を介して相互に繋がっている。
生体情報には、筋電位,口や咽頭の動き等の加速度変化,圧力変化,音声収録(マイク)等,各種生体機能を示すものをいい、それらの検出信号を増幅及び無線送信できるテレメータ等の生体情報機器を用いるのが好ましい。
【0008】
従って、本発明に係る訓練方法は、撮像機能付きのハンディ型モニター装置と、無線型の生体情報機器と、前記ハンディ型モニター装置と生体情報機器とを相互に関係付けた演算処理部を備え、前記ハンディ型モニター装置は撮像データを表示する撮像表示部と生体情報機器から得られた生体情報を表示するデータ表示部を有し、被訓練者はハンディ型モニター装置で訓練部位を撮像し、前記撮像表示部及びデータ表示部との一方又は両方を見ながら訓練することを特徴とする。
この場合に、撮像表示部とデータ表示部を交互に見てもよく、同時に見てもよい。
訓練の内容については、被訓練者が訓練の状態を自らモニターに映し出し、視認しながら行えるものである限り、その内容に制限はない。
例えば、嚥下障害者が嚥下運動を訓練,リハビリテーション等を行う例、聾唖者が正確な発声を獲得できるように支援する例、言語障害者の言語回復・改善の訓練、リハビリテーション等が例として挙げられる。
ハンディ型モニター装置は、被訓練者が自ら手で保持してもよく、手の不自由な被訓練者の場合には補助者が替わりに操作してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る訓練システム及びその訓練方法にあっては、タブレット端末と生体情報機器がWebを介して繋がっており、生体情報機器が無線テレメータになっていると被訓練者の動きの拘束が少なく、自由に手,顔面等を動かすことができる。
また、被訓練者が自らタブレット端末等を手で持って動かしたり、操作しながら訓練でき、その際にモニター画面の撮像表示部で口や顔面の動きを見ながら、あるいはその時の筋電位,加速度変化等の生体情報の変化を視認しながら行えるので、その訓練効果が高い。
さらには、Webを介してデータの送受信ができるので、被訓練者は病室や自宅で訓練でき、その場合にリハビリテーションデータの蓄積が可能であるとともに遠隔で監視及び訓練内容の指示等ができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】嚥下運動のリハビリテーションの例を示す。(a)はタブレット端末からなるハンディ型モニター装置の画面にカメラで撮像した撮像表示部と、テレメータ(生体情報機器)から受信したデータのデータ表示部の2の表示部を設けた例を示す。(b)はタブレット端末を手にしながら訓練を受けている状態を示す。
図2】生体情報機器の装着例を示す。
図3】(a),(b)2つの訓練事例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る訓練システム及び訓練方法の例を具体的に以下説明するが、本発明は本実施例に限定されない。
【0012】
図1(b)及び図2にタブレット端末からなるハンディ型モニター装置10を被訓練者が両手4,5で持ち、嚥下運動のリハビリテーションを受けている状態を示す。
被訓練者は、例えば図2に示すように皮膚に加速度変化を検出するセンサー(センサー部21a)を貼付したり、筋電位を測定する電極(センサー部21b)等を貼付する。
これらのセンサー部21a,21bにて検出された検出信号は、増幅,フィルター処理等の必要な処理を行い、送信器22からWebを介して例えば、ハンディモニター装置10に内蔵されている演算処理部等に受信され、モニター画面のデータ表示部12に例えば、筋電位の波形として表示される。
また、図示を省略したが、内蔵カメラがハンディモニター装置10に組み込まれていて、撮像された画像が撮像表示部11に動画として表示される。
本実施例では、モニター画面にカメラで取り込んだ画像を表示する撮像表示部11と、生体情報機器20から得られた生体情報を所定のアプリケーションソフトを用いて、データ処理したデータ表示部12の2つの表示部を設けた例を示したが、表示部の数,サイズ,目的等に制限はない。
また、生体情報機器20の実施例として、センサー部21と送信器22とを短いケーブル23で繋いだ例を示したが、センサーの種類に制限はなく、センサー部と送信器を一体的に形成したものも含まれる。
また、送信器22の内部には図示を省略したが、増幅器,信号のフィルター処理,データ変換処理等の各種回路が必要に応じて組み込まれている。
演算処理部で演算処理されたデータは、タブレット端末に蓄積されてもよく、またWebを介して、外部のパーソナルコンピューターやクラウドコンピューターに送信され、データ蓄積やデータ解析に用いてもよい。
さらには、外部からWebを介してタブレット端末に被訓練者への指示を与えることもできる。
【0013】
次に本発明に係る訓練システムを用いて、訓練した事例を説明する。
嚥下障害のある被訓練者の下顎部に筋電位電極を装着し、嚥下時の筋電波形を図3に示す。
2人の被訓練者に対して、それぞれ事例1,2として波形の変化を示す。
A−1は、ハンディ型モニター装置10を見ることなく嚥下運動をしたときの原波形であり、A−2はその演算処理後の波形を示す。
B−1は、モニター画面に嚥下時の波形変化(データ表示部12)を表示し、それを見ながら嚥下運動させた原波形であり、B−2はその演算処理後の波形を示す。
C−1は、モニター画面に波形変化のデータとともに図1(b)に示すように、顔面1,目3,及び口2の動きを自分で撮影(撮像)し、撮像表示部11に表示された自分の動画(画像)を視認しながら訓練させたときの原波形を示す。
また、C−2はその演算処理後の波形を示す。
A,B,Cを比較すると、Cの波形変化が最も大きく、嚥下運動時の筋活動が多いことが分かる。
このことから、被訓練者が自分の画像又は生体情報のデータのうち、少なくとも一方を見ながら訓練するだけでも訓練効果が向上することが推定され、さらに両方の表示部を見ながら訓練すると、さらに訓練効果が向上することが確認できた。
【符号の説明】
【0014】
10 ハンディ型モニター装置
11 撮像表示部
12 データ表示部
20 生体情報機器
21 センサー部
21a センサー部
21b センサー部
22 送信器
図1
図2
図3