(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362336
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】焼結鉱破砕機
(51)【国際特許分類】
B02C 4/30 20060101AFI20180712BHJP
F27B 21/08 20060101ALI20180712BHJP
B02C 4/08 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
B02C4/30
F27B21/08 Z
B02C4/08
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-8819(P2014-8819)
(22)【出願日】2014年1月21日
(65)【公開番号】特開2015-136645(P2015-136645A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2016年11月14日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591056569
【氏名又は名称】ナイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】新田 洋文
(72)【発明者】
【氏名】高橋 孝行
(72)【発明者】
【氏名】山岸 幸夫
(72)【発明者】
【氏名】勝亦 英二
(72)【発明者】
【氏名】筒井 正人
(72)【発明者】
【氏名】大西 武志
(72)【発明者】
【氏名】深井 卓
【審査官】
佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭62−266146(JP,A)
【文献】
特開昭63−028457(JP,A)
【文献】
特開2006−102564(JP,A)
【文献】
特開2012−091138(JP,A)
【文献】
特開2013−086075(JP,A)
【文献】
特開2004−154635(JP,A)
【文献】
実開平01−025331(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0146318(US,A1)
【文献】
特開2011−201273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 1/00−25/00
F27B 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いのロール面が対向するように配置された一対の破砕ロールを有し、回転駆動する前記一対の破砕ロールのロール面間に装入された焼結鉱を破砕する焼結鉱破砕機であって、
前記一対の破砕ロールのうちの一方または両方の前記ロール面の少なくとも一部に、超硬合金層が形成されており、
前記超硬合金層は、タングステンカーバイド粒子を含み、ビッカース硬度が1000Hvとされており、
前記一対の破砕ロールのうちの一方または両方の前記ロール面には、径方向外側に突出した凸部と径方向内側に後退した凹部とが円周方向に交互に配設された凹凸部が形成されており、
前記凹凸部は、ロール幅方向に間隔を開けて複数設けられており、前記凹凸部同士の間には周溝部が形成されており、
少なくとも前記凸部の表面に、前記超硬合金層が形成されており、
前記凸部は、直方体形状の超硬合金ブロック材が接合層を介して前記ロール面に接合された構造とされており、
前記凹部は、硬化肉盛材によって肉盛され、前記周溝部から径方向外側に突出していることを特徴とする焼結鉱破砕機。
【請求項2】
前記超硬合金層は、厚みが10mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の焼結鉱破砕機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結鉱の破砕を行う焼結鉱破砕機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上述の焼結鉱破砕機としては、例えば特許文献1に記載されているように、回転する一対の破砕ロールを有するダブルロール方式の破砕機が提案されている。この焼結鉱破砕機は、一対の破砕ロールがそれぞれのロール面が対向するように配置されており、一対の破砕ロールを互いに逆方向に回転させ、ロール面間に装入された焼結鉱を噛み込んで破砕する構成とされている。
また、ロール表面に凸部を形成し、この凸部によって焼結鉱を噛み込むことにより、焼結鉱の粒度のばらつきを抑制した焼結鉱破砕機も提案されている。
【0003】
ここで、破砕ロールのロール表面は、焼結鉱との擦過、衝突により、摩耗減耗が生じることになる。ロール表面の摩耗が進展した場合には、一対の破砕ロール間の隙間が大きくなり、破砕された焼結鉱の粒度にばらつきが生じることになる。
そこで、従来の焼結鉱破砕機においては、クロム系炭化物材料等の硬化肉盛材等でロール表面を被覆して、摩耗を抑制していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2773640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、破砕ロールのロール表面の摩耗が進行した場合には、一対の破砕ロール間の隙間を調整したり、破砕ロール自体を交換したりするために、焼結鉱破砕機の操業を一旦停止する必要があった。
最近では、焼結鉱の破砕を効率良く実施することが求められており、従来にも増してロール面の摩耗を抑制し、焼結鉱破砕機の稼動効率を向上させる必要がある。
特に、ロール表面に凸部を形成した破砕ロールにおいては、凸部の表面に焼結鉱が擦過、衝突しやすく、摩耗が促進される傾向にあるため、耐摩耗性を十分に向上させる必要がある。
【0006】
本発明は、前述した状況に鑑みてなされたものであって、破砕ロールの使用耐久性・耐摩耗性を大幅に向上させ、破砕した焼結鉱の粒度を長期間一定に保ち、且つ、メンテナンス作業を大幅に軽減できる焼結鉱破砕機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る焼結鉱破砕機は、互いのロール面が対向するように配置された一対の破砕ロールを有し、回転駆動する前記一対の破砕ロールのロール面間に装入された焼結鉱を破砕する焼結鉱破砕機であって、前記一対の破砕ロールのうちの一方または両方の前記ロール面の少なくとも一部に、超硬合金層が形成されており、前記超硬合金層は、タングステンカーバイド粒子を含み、ビッカース硬度が1000Hvとされており、前記一対の破砕ロールのうちの一方または両方の前記ロール面には、径方向外側に突出した凸部
と径方向内側に後退した凹部とが円周方向に交互に配設された凹凸部が形成されており、前記凹凸部は、ロール幅方向に間隔を開けて複数設けられており、前記凹凸部同士の間には周溝部が形成されており、少なくとも前記凸部の表面に、前記超硬合金層が形成されており、前記凸部は、直方体形状の超硬合金ブロック材が接合層を介して前記ロール面に接合された構造とされて
おり、前記凹部は、硬化肉盛材によって肉盛され、前記周溝部から径方向外側に突出していることを特徴としている。
【0008】
この構成の焼結鉱破砕機によれば、前記一対の破砕ロールのうちの一方または両方の
前記ロール面に、タングステンカーバイド粒子を含む超硬合金層が形成されており、この超硬合金層のビッカース硬度が1000Hv以上とされているので、ロール表面の耐摩耗性が飛躍的に向上することになる。よって、破砕ロール間の隙間が変動せず、破砕された焼結鉱の粒度を長期間にわたって安定させることが可能となる。また、破砕ロールの交換や破砕ロール間のギャップの調整等のメンテナンス間隔を長くすることができ、焼結鉱破砕機の稼動効率を大幅に向上させることが可能となる。
また、径方向外側に突出した凸部によって焼結鉱が噛み込まれることから、凸部の間隔によって破砕された焼結鉱の粒度が調整されることになり、粒度のばらつきを抑制することができる。
ロール面に複数の凸部を形成した場合、凸部は焼結鉱との接触が促進されることになり、特に摩耗しやすくなる。そこで、この凸部の表面にビッカース硬度が1000Hv以上の超硬合金層を形成することにより、凸部の摩耗を抑制することが可能となり、破砕される焼結鉱の粒度を長期間にわたって安定させることができる。
【0009】
ここで、前記超硬合金層は、厚みが10mm以上であることが好ましい。
この場合、ビッカース硬度が1000Hv以上の超硬合金層の厚みが確保され、破砕ロールのロール表面における耐摩耗性を確実に向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
上述のように、本発明によれば、破砕ロールの使用耐久性・耐摩耗性を大幅に向上させ、破砕した焼結鉱の粒度を長期間一定に保ち、且つ、メンテナンス作業を大幅に軽減できる焼結鉱破砕機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態である焼結鉱破砕機の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態である焼結鉱破砕機について添付した図面を参照して説明する。
本実施形態である焼結鉱破砕機1は、高炉に投入する原料として、鉄鉱石粉末を焼結した焼結鉱Sを、所定の粒度に破砕する際に用いられるものである。
【0015】
本実施形態である焼結鉱破砕機1は、
図1に示すように、一対の破砕ロール10(10A、10B)と、この一対の破砕ロール10(10A、10B)を回転駆動させる回転駆動装置(図示なし)と、一対の破砕ロール10(10A、10B)を近接離間させる油圧装置(図示なし)と、一対の破砕ロール10(10A、10B)を収容するケーシング3と、を備えている。
ケーシング3は、上方に向けて開口する投入口5と、下方に向けて開口する排出口7と、を備えている。
【0016】
一対の破砕ロール10(10A、10B)は、
図1及び
図2に示すように、一方の破砕ロール10Aの軸線OAと他方の破砕ロール10Bの軸線OBとが互いに平行になるように、かつ、互いのロール面同士の間に僅かに隙間gが生じるように配置されている。ここで、上述の投入口5は、
図1に示すように、一対の破砕ロール10(10A、10B)のロール面同士の隙間gの上に開口するように配置されている。
【0017】
破砕ロール10(10A、10B)は、
図2に示すように、ロール本体11(11A、11B)とロール本体11から軸線O(OA、OB)方向に向けて突出した支持軸部19(19A、19B)とを備えている。
また、
図2に示すように、ロール本体11(11A、11B)は、ロール幅方向に分割された複数の分割ロール12(12A、12B)によって構成されており、本実施形態では、それぞれ6つの分割ロール12(12A、12B)によってロール本体11(11A、11B)が構成されている。
【0018】
ロール本体11(11A、11B)を構成する分割ロール12(12A、12B)のロール面には、
図3及び
図4に示すように、径方向外側に突出した凸部13と径方向内側に後退した凹部14とが円周方向に交互に配設された凹凸部15が形成されている。この凹凸部15は、ロール幅方向に間隔を開けて複数設けられており、凹凸部15同士の間には周溝部17が形成されている。この周溝部17におけるロール径は、
図4に示すように、2Rとされている。
【0019】
ここで、
図3に示すように、凹凸部15における凸部13の周方向位置が、隣接する凹凸部15の凹部14に対応するように配置されており、破砕ロール10(10A、10B)のロール面において凸部13が千鳥模様に配置されている。また、
図4に示すように、凸部13は円周方向にピッチPで等間隔に配置されている。
【0020】
そして、この凸部13の表面には、タングステンカーバイド粒子を含み、ビッカース硬度が1000Hvとされた超硬合金層21が形成されている。この超硬合金層21の厚みは10mm以上とされている。
本実施形態では、超硬合金層21は、ビッカース硬度が1000Hv以上とされており、靭性が高いものである。
【0021】
ここで、本実施形態では、凸部13全体が、タングステンカーバイド粒子を含み、ビッカース硬度が1000Hvとされた超硬合金で構成されている。
すなわち、
図3及び
図5に示すように、本実施形態では、高さH、長さL、幅Dの超硬合金ブロック材30が、接合層31を介してロール表面に接合されることによって凸部13が形成されているのである。ここで、超硬合金で構成された凸部13の高さHは、10mm以上である。
【0022】
また、凹部14は、周溝部17からわずかに径方向外側に突出しており、凹部14の突出高さがhとされている。ここで、凹部14は、硬化肉盛材22によって肉盛されており、この硬化肉盛材22の厚さが上述の凹部14の突出高さhとされている。なお、この硬化肉盛材22のビッカース硬度は、上述した超硬合金層21のビッカース硬度に対して低く設定されている。
【0023】
次に、本実施形態である焼結鉱破砕機1の使用方法について説明する。
まず、
図1に示すように、一対の破砕ロール10A、10Bが回転方向RA、RB方向にそれぞれ回転駆動させられる。
そして、焼結鉱Sが、投入口5を介して一対の破砕ロール10A、10Bの間の空間に向けて供給される。
すると、焼結鉱Sが一対の破砕ロール10A、10Bの間で破砕され、所定の粒度に破砕されることになる。なお、破砕された焼結鉱Sの粒度は、一対の破砕ロール10A、10Bのロール面同士の隙間gによって調整される。
【0024】
以上のような構成とされた本実施形態である焼結鉱破砕機1によれば、一対の破砕ロール10A、10Bのロール表面に、タングステンカーバイド粒子を含む超硬合金層21が形成されており、この超硬合金層21のビッカース硬度が1000Hv以上とされているので、ロール表面の耐摩耗性が飛躍的に向上することになる。よって、破砕ロール10A,10B間の隙間gが変動せず、破砕された焼結鉱Sの粒度を長期間にわたって安定させることが可能となる。また、破砕ロール10(10A、10B)の交換や破砕ロール10A、10B間のギャップの調整等のメンテナンス間隔を長くすることができ、焼結鉱破砕機1の稼動効率を大幅に向上させることが可能となる。
【0025】
本実施形態では、超硬合金層21は、厚みが10mm以上とされており、本実施形態では、10mm以上で、ビッカース硬度が1000Hv以上の超硬合金層21の厚みが確保され、破砕ロール10(10A、10B)のロール表面における耐摩耗性を確実に向上させることができる。
【0026】
また、本実施形態である焼結鉱破砕機1においては、一対の破砕ロール10A、10Bのロール表面に、凸部13および凹部14を有する凹凸部15が形成されているので、凸部13および凹部14によって焼結鉱Sが噛み込まれることにより、凸部13の間隔に応じて破砕された焼結鉱Sの粒度が制御され、粒度が安定することになる。
【0027】
さらに、本実施形態である焼結鉱破砕機1においては、凸部13の表面に超硬合金層21が形成されており、具体的には、凸部13全体が超硬合金ブロック材30によって構成されているので、凸部13の摩耗を抑制することが可能となり、破砕される焼結鉱Sの粒度のばらつきを抑制することができる。また、破砕ロール10(10A、10B)の寿命延長を図ることが可能となる。
【0028】
また、本実施形態である焼結鉱破砕機1においては、破砕ロール10(10A、10B)のロール本体11(11A、11B)が複数の分割ロール12(12A、12B)で構成されているので、摩耗が激しい分割ロール12(12A、12B)のみを交換することができ、破砕ロール10(10A、10B)のメンテナンス作業を大幅に軽減することができる。
【0029】
以上、本発明の一実施形態である焼結鉱破砕機について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
本実施形態では、破砕ロールのロール表面に凸部および凹部を形成したものとして説明したが、これに限定されることはなく、凸部および凹部が形成されていない平滑ロールとしてもよい。この場合、板状の超硬合金をロール表面に貼り付けることによって、超硬合金層を形成することが可能となる。
また、一対の破砕ロールの両方に凸部および凹部を形成したものとして説明したが、一方の破砕ロールのみに凸部および凹部を形成してもよい。
【0030】
さらに、本実施形態では、凸部全体を超硬合金のブロック材で構成するものとして説明したが、これに限定されることはなく、凸部の表面の一部に超硬合金層が形成されていればよい。
また、凸部および凹部の形状は、実施形態で例示したものに限定されることはなく、他の形状のものであってもよい。
さらに、本実施形態では、破砕ロールを分割ロールで構成したものとして説明したがこれに限定されることはなく、他の構成の破砕ロールであってもよい。
【実施例】
【0031】
以下に、本発明の効果を確認すべく実施した確認実験の結果について説明する。
【0032】
本発明例として、本実施形態に示した焼結鉱破砕機を用いて焼結鉱の破砕を実施し、1ヶ月使用後の凸部の摩耗量を評価した。なお、凸部を構成する超硬合金ブロック材の高さHは10mmである。
【0033】
従来例として、本実施形態に示した破砕ロールと同様に凸部および凹部を形成し、凸部の表面に硬化肉盛層を4〜6mm形成したものを準備した。この破砕機を用いて焼結鉱の破砕を実施し、1ヶ月使用後の凸部の摩耗量を評価した。
評価結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
硬化肉盛層を形成した従来例においては、1ヵ月後の摩耗量が6mmを超えており、硬化肉盛層が消滅し、母材自体が摩耗していた。
これに対して、本発明例においては、1ヵ月後の摩耗量が0.2mmであった。摩耗が十分に抑制されており、ロール寿命を大幅に延長可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0036】
1 焼結鉱破砕機
10 破砕ロール
13 凸部
14 凹部
21 超硬合金層