(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a)めっき装置の処理カップに備わるアノード電極とカソード電極との間に電流を印加して、前記カソード電極と電気的に接続された半導体ウェハの主面上に、めっき電極を形成する工程、
を含む半導体装置の製造方法であって、
前記工程(a)は、
(a1)前記アノード電極と前記カソード電極との間を通電して、めっき層を結晶成長させる工程、
(a2)前記アノード電極と前記カソード電極との間を通電しない工程、を含み、
前記工程(a1)と前記工程(a2)とを交互に繰り返して、前記工程(a1)で形成された前記めっき層を積層して前記めっき電極を形成し、
積層された前記めっき層の結晶粒は、前記めっき層毎に不連続である、半導体装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の実施の形態において、便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0010】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0011】
また、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0012】
また、「Aから成る」、「Aよりなる」、「Aを有する」、「Aを含む」と言うときは、特にその要素のみである旨明示した場合等を除き、それ以外の要素を排除するものでないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0013】
また、以下の実施の形態で用いる図面においては、平面図であっても図面を見易くするためにハッチングを付す場合もある。また、以下の実施の形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。以下、本実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
まず、本実施の形態による半導体装置の製造方法がより明確となると思われるため、本発明者らによって見いだされた半導体装置の外観検査における課題について具体的に説明する。
【0015】
本発明者らは、半導体装置に備わり、外部との電気的な接続に使用される外部電極に、パッド電極上にシード膜を介して電解金めっき法を用いて形成された金めっき電極、所謂OPM(Over Pad Metallization)構造の電極を採用している。しかし、半導体装置の外観検査において、本来外観異常ではないにも関わらず、金めっき電極の外観異常が報告された。そこで、本発明者らは、その原因およびその対策について検討した。
【0016】
金めっき電極を形成する工程においては、処理回数およびめっき液建浴からの経過時間が増すに従い、めっき液中の成分が経時変化して、金めっき電極の表面が徐々に粗い状態から滑らかな状態へと変化する。一方、金めっき電極の外観の明るさは、金めっき電極の表面状態に依存して変化する。すなわち、金めっき電極の表面が粗い場合(例えば0.025Rad以上)は外観検査において金めっき電極の外観は暗く、金めっき電極の表面が滑らかな場合(例えば0.025Rad未満)は外観検査において金めっき電極の外観は明るくなる。
【0017】
従って、金めっき電極を形成する工程においては、処理回数およびめっき液建浴からの経過時間が増すに従い、金めっき電極の外観は徐々に暗い状態から明るい状態へと変化する。
【0018】
ところで、金めっき電極を形成する工程においては、金が析出して、例えば20〜100μm径の大きさの金突起が形成されることがある。この金突起が金めっき電極の表面に形成されても半導体装置の歩留りを著しく低下させる等の不具合は生じないので、金突起が形成されていてもよい。また、外観検査において、外観が暗い金めっき電極(表面が粗い金めっき電極)上に金突起があっても金突起を認識せずに金めっき電極は外観正常と判断される。
【0019】
しかし、外観が明るい金めっき電極(表面が滑らかな金めっき電極)上に金突起があると、外観検査において、金突起が異物と認識されて、本来正常である金めっき電極が外観異常と判断される。
【0020】
以上のことから、半導体装置の外観検査の虚報を減らすためには、金めっき電極の表面を常に粗い状態、例えば0.025rad以上とすることにより、外観検査において金突起が認識されないようにする必要があることが分かった。なお、めっき液中に含まれる亜硫酸と硫酸との濃度比を制御することにより、金めっき電極の表面を粗い状態に維持することができる。しかし、この方法では、めっき液の交換または亜硫酸添加を行う必要があり、製造コストが高くなるという問題がある。
【0021】
(実施の形態)
≪金めっき電極の製造工程≫
本実施の形態による半導体装置の製造方法を
図1〜
図6を用いて工程順に説明する。
図1〜
図6は金めっき電極の製造工程を説明する半導体装置の要部断面図である。
【0022】
まず、
図1に示すように、半導体基板、ここでは円形の薄い板状に加工した半導体ウェハSWを準備し、この半導体ウェハSWの主面上に、複数の半導体素子および多層構造の配線等(図示は省略)を形成する。さらに、多層構造の配線等を覆う表面保護膜IL1を形成した後、例えば多層構造の配線のうちの最上層の配線と電気的に接続する、例えばアルミニウムを主導体としたパッド電極PDを形成する。パッド電極PDは、半導体ウェハSWの主面上に、例えばスパッタリング法によりアルミニウム膜を形成した後、このアルミニウム膜をホトリソグラフィ法およびドライエッチング法を用いて加工することにより形成される。パッド電極PDの厚さは、例えば1μm程度である。なお、本実施の形態では、パッド電極PDはアルミニウムを主導体とするとしたが、銅を主導体とすることもできる。
【0023】
次に、
図2に示すように、パッド電極PDを覆うように、半導体ウェハSWの主面上に、例えばプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法により酸化シリコン膜IL2aを形成する。続いて、酸化シリコン膜IL2a上に、例えばプラズマCVD法により窒化シリコン膜IL2bを形成して、酸化シリコン膜IL2aおよび窒化シリコン膜IL2bから成るパッシベーション膜IL2を形成する。パッシベーション膜IL2は、外部からの水分または不純物の侵入を防止し、α線の透過を抑制する機能を有する。酸化シリコン膜IL2aの厚さは、例えば0.2μmであり、窒化シリコン膜IL2bの厚さは、例えば0.6μmである。
【0024】
次に、
図3に示すように、パッシベーション膜IL2をホトリソグラフィ法およびドライエッチング法を用いて加工することにより、パッド電極PDの上面の周縁部以外を露出させるパッド開口部CN1をパッシベーション膜IL2に形成する。
【0025】
次に、
図4に示すように、半導体ウェハSWの主面上に、例えばスパッタリング法を用いてチタン膜およびパラジウム膜を順次形成して、チタン膜およびパラジウム膜から成るシード膜(下地膜)UMを形成する。チタン膜は、パラジウムの半導体ウェハSW側への拡散を防止するために設けられており、パラジウム膜は、後の工程で形成される金めっき電極の成長を促進させるために設けられている。チタン膜の厚さは、例えば0.175μm程度であり、パラジウム膜の厚さは、例えば0.175μm程度である。
【0026】
次に、
図5に示すように、シード膜UM上に、ホトリソグラフィ法を用いてレジストパターンRPを形成する。レジストパターンRPには、平面視においてパッド電極PD上に開口部CN2が設けられており、開口部CN2の底にシード膜UMが露出している。開口部CN2の平面寸法は、パッド電極PDの平面寸法よりも小さく、かつパッド開口部CN1の平面寸法よりも大きい。レジストパターンRPの厚さは、例えば10μm程度である。
【0027】
次に、電解金めっき法を用いて、レジストパターンRPの開口部CN2の内部に金めっき電極APを形成する。金めっき電極APの厚さは、例えば3μm程度である。また、金めっき電極APの表面の粗さは、例えば0.025Rad以上である。なお、電解金めっき法を用いた金めっき電極APの形成方法の詳細については後述する。
【0028】
次に、
図6に示すように、レジストパターンRPを除去する。その後、金めっき電極APをマスクにしたウェットエッチング法を用いて不要な(露出した)シード膜UMを除去する。以上の工程により、シード膜UMを介してパッド電極PDと電気的に接続された金めっき電極APが略完成する。
【0029】
≪第1めっき装置を用いた金めっき電極の形成方法≫
本実施の形態による第1めっき装置を用いた金めっき電極(前述の
図5に示す金めっき電極AP)の形成方法を以下に説明する。第1めっき装置は、撹拌棒でめっき液を撹拌する構造の処理カップを有している。
【0030】
1.第1めっき装置の処理カップの内部構造:
まず、第1めっき装置の処理カップの内部構造を
図7(a)および(b)を用いて説明する。
図7(a)および(b)は第1めっき装置の処理カップの要部断面図であり、
図7(a)は半導体ウェハを着脱する際の第1めっき装置の処理カップの態様を示す要部断面図、
図7(b)は半導体ウェハにめっきを施す際の第1めっき装置の処理カップの態様を示す要部断面図である。
【0031】
なお、第1めっき装置の処理カップは底部および側壁部を有し、底部を下にした状態を正立状態とし、底部を上にした状態を倒立状態とする。すなわち、処理カップは180度上下反転するので、上下反転の有無にかかわらず、処理カップが正立状態のときを基準にして上下を定義する。また、処理カップの内部にはめっき槽があるが、めっき槽の下部と言うときはめっき槽の底面側を指し、めっき槽の上部と言うときはめっき槽の底面と対向し、蓋で覆われるめっき槽の開放面側を指す。
【0032】
図7(a)に示すように、処理カップTC1の内部にはめっき槽PT1がある。めっき槽PT1は底面BO1と側面とを有し、めっき槽PT1の底面BO1と対向する側は開放されている。このめっき槽PT1の開放面を塞ぐ蓋TOが処理カップTC1に備わっている。
【0033】
めっき槽PT1の上部に、デバイス形成面(パターン面、主面)をめっき槽PT1の内部に向けて半導体ウェハSWが載置される。めっき槽PT1の中央部にはめっき液を撹拌するための撹拌棒(スターラ)SBが設けられている。撹拌棒SBはめっき槽PT1の中で回転するように制御される。
【0034】
めっき槽PT1の中央部と底面BO1との間にはアノード電極AE1が設けられている。アノード電極AE1は、例えば酸化インジウム電極または白金電極等である。また、めっき槽PT1の側面の上部には半導体ウェハSWと電気的に接続するためのカソード電極(図示は省略)が設けられている。
【0035】
めっき槽PT1の底面BO1にはめっき液を排出するための液排出口POが設けられている。また、めっき槽PT1の中央部よりも上側の側面にはめっき液を導入するための液導入口PI1が設けられている。
【0036】
第1めっき装置の処理カップTC1は、上下反転機構を有している。すなわち、半導体ウェハSWを処理カップTC1に載置する際および半導体ウェハSWを処理カップTC1から取り出す際には、
図7(a)に示すように、半導体ウェハSWのデバイス形成面が下方を向く(ファイスダウン)。しかし、半導体ウェハSWにめっきを施す際には、
図7(b)に示すように、処理カップTC1の上下が反転して、半導体ウェハSWのデバイス形成面が上方を向く(フェイスアップ)。
【0037】
2.めっき処理の工程:
次に、めっき処理の工程を
図8を用いて説明する。
図8は第1めっき装置を用いた場合のめっき処理の工程図である。
【0038】
<ウェハ収納工程(
図8の工程S1)>
複数の半導体ウェハをウェハ収納容器、所謂フープ(Foup)に収納し、ウェハ収納容器を第1めっき装置に備わるロードポートにセットする。
【0039】
<位置合わせ工程(
図8の工程S2)>
搬送用ロボットによってフープ内で待機している半導体ウェハをフープから取り出してウェハ位置合わせ部へ搬送し、ウェハ位置合わせ部で半導体ウェハの位置合わせを行う。
【0040】
<前洗浄工程(
図8の工程S3>
搬送用ロボットによって半導体ウェハをウェハ位置合わせ部から洗浄部へ搬送し、洗浄部で半導体ウェハを純水により洗浄する。
【0041】
<電解めっき工程(
図8の工程S4)>
搬送用ロボットによって半導体ウェハを洗浄部からめっき部の処理カップへ搬送し、処理カップ内で半導体ウェハに電解めっきを施す。
【0042】
<水洗&乾燥工程(
図8の工程S5)>
搬送用ロボットによって半導体ウェハをめっき部の処理カップから水洗&乾燥部へ搬送し、水洗&乾燥部で半導体ウェハの純水による水洗およびスピン乾燥を行う。
【0043】
<ウェハ収納工程(
図8の工程S6)>
搬送用ロボットによって半導体ウェハを水洗&乾燥部から元のウェハ収納容器または必要に応じて他のウェハ収納容器へ搬送し、収納する。
【0044】
3.電解金めっき法を用いた金めっき電極の形成方法:
次に、電解金めっき法を用いた金めっき電極の形成方法(電解めっき工程(前述の
図8の工程S4))を前述の
図7(a)および(b)、
図9(a)および(b)、
図10(a)および(b)、並びに
図11を用いて説明する。
図9(a)は第1めっき装置を用いためっき時のレシピ構成を示す説明図である。
図9(b)は本発明者らが比較検討した第1めっき装置を用いためっき時のレシピ構成を示す説明図である。
図10(a)は金めっき電極を模式的に示す断面図である。
図10(b)は本発明者らが比較検討した金めっき電極を模式的に示す断面図である。
図11は通電ON時間および通電OFF時間をパラメータとした金めっき電極の表面粗さを示すグラフ図である。
【0045】
<電解めっき工程の動作1>
前述の
図7(a)に示すように、純水により洗浄された半導体ウェハSWを処理カップTC1のめっき槽PT1へ搬送し、めっき槽PT1の上部に、デバイス形成面をめっき槽PT1の内部に向けて半導体ウェハSWを載置する。半導体ウェハSWを載置する際は、処理カップTC1の底部が下となる正立状態である。続いて、処理カップTC1に備わる蓋TOを閉じて、めっき槽PT1の開放面を塞ぐ。
【0046】
<電解めっき工程の動作2>
処理カップTC1の上部(めっき槽PT1の中央部よりも上側の側面)に設けられた液導入口PI1からめっき液を供給し、めっき槽PT1内をめっき液で充填する。めっき液は非シアン系めっき液であり、例えば亜硫酸金系のめっき液(主要成分が亜硫酸金ナトリウム、エチレンジアミン、無機酸塩、他の微量添加物の水溶液)である。また、めっき液の温度は、例えば40℃程度であり、めっき液の供給流量は、例えば5リットル/分程度である。
【0047】
<電解めっき工程の動作3>
前述の
図7(b)に示すように、処理カップTC1の上下を180度反転して、処理カップTC1を倒立状態とする。従って、処理カップTC1の底部が上に、めっき槽PT1の開放面を塞ぐ蓋TOが下となり、半導体ウェハSWのデバイス形成面が上方を向く。ここでは、電解めっきのための通電は行っておらず、アノード電極AE1とカソード電極との間に電流は印加されていない。
【0048】
<電解めっき工程の動作4>
次に、
図9(a)に示すように、撹拌棒を正回転(左回り回転)させてめっき液を撹拌する(撹拌正転1)。このとき、アノード電極とカソード電極との間に連続して所定の電流を印加する(通電ON)。撹拌棒の回転速度は、例えば90rpm程度であり、通電ON時間は、例えば20〜60秒程度である。この連続通電により、シード膜上に金が等方的に結晶成長して金めっき層が形成される。
【0049】
次に、撹拌棒の撹拌方向を正回転(左回り回転)から逆回転(右回り回転)へ切り替えるために、撹拌棒の正回転(左回り回転)を停止する。このとき、アノード電極とカソード電極との間に電流を印加しない(通電OFF)。通電OFF時間は、例えば2〜15秒程度である。
【0050】
次に、撹拌棒を逆回転(右回り回転)させてめっき液を撹拌する(撹拌反転1)。このとき、アノード電極とカソード電極との間に連続して所定の電流を印加する(通電ON)。撹拌棒の回転速度は、例えば90rpm程度であり、通電ON時間は、例えば20〜60秒程度である。この連続通電により、撹拌正転1で結晶成長した金めっき層上に新たな点を基準にして金が等方的に結晶成長し、新たに金めっき層が形成される。
【0051】
次に、撹拌棒の撹拌方向を逆回転(右回り回転)から正回転(左回り回転)へ切り替えるために、撹拌棒の逆回転(右回り回転)を停止する。このとき、アノード電極とカソード電極との間に電流を印加しない(通電OFF)。通電OFF時間は、例えば2〜15秒程度である。
【0052】
次に、前述の撹拌正転1および前記撹拌反転1と同様にして、撹拌正転2(通電ON)、通電OFF、撹拌反転2(通電ON)、通電OFF、撹拌正転3(通電ON)、通電OFF、および撹拌反転3(通電ON)を繰り返す。これにより、撹拌正転1、撹拌反転1、撹拌正転2、撹拌反転2、撹拌正転3、および撹拌反転3の各撹拌工程においてそれぞれ結晶成長した6層の金めっき層から成る金めっき電極が形成される。
【0053】
各撹拌工程で形成される金めっき層の厚さは、電流密度、通電時間、めっき液温度、めっき液供給流量、撹拌棒の回転速度等に依存するが、本実施の形態では、例えば0.5μm程度であり、形成された金めっき電極の厚さは、例えば3μm程度となる。
【0054】
ところで、従来の電解金めっき方法では、
図9(b)に示すように、撹拌棒の撹拌方向を切り替える時間、すなわち、アノード電極とカソード電極との間に電流を印加しない通電OFF時間を、例えば1秒程度としている。これは、金の結晶成長の連続性が途切れないようにするためである。この場合、例えば
図10(b)に示すように、等方的に金の結晶成長が進行して、比較的結晶粒径の大きい金の結晶から成る金めっき電極APRが形成される。しかし、電解めっきを行っている際には、処理回数およびめっき液建浴からの経過時間が増すに従い、めっき液中の成分が経時変化する。このため、通電OFF時間を1秒として連続して結晶成長した金めっき電極APRの表面状態は、めっき液中の成分の経時変化の影響を受けて変化しやすい。一般的には、処理回数およびめっき液建浴からの経過時間が増すに従い、金めっき電極APRの表面が徐々に粗い状態から滑らかな状態へと変化する。
【0055】
しかしながら、本実施の形態による第1めっき装置を用いた電解金めっき方法では、撹拌棒の撹拌方向を切り替える時間、すなわち、アノード電極とカソード電極との間に電流を印加しない通電OFF時間を、例えば2〜15秒程度としている。この場合、例えば
図10(a)に示すように、各撹拌工程において通電を再開した時に、新たな点を基準にして等方的に金の結晶成長が進行して、比較的結晶粒径の小さい金の結晶から成る金めっき層が各撹拌工程において順次形成される。例えば前述の
図9(a)のレシピ構成と対応させると、撹拌正転1において第1金めっき層P1が形成され、撹拌反転1において第2金めっき層P2が形成され、撹拌正転2において第3金めっき層P3が形成され、撹拌反転2において第4金めっき層P4が形成され、撹拌正転3において第5金めっき層P5が形成され、撹拌反転6において第6金めっき層P6が形成される。
【0056】
これにより、凹凸が多く表面が粗い金めっき電極APが形成できるので、金めっき電極APの表面状態はめっき液中の成分の経時変化の影響を受けにくくなり、金めっき電極APは粗い表面状態を維持することができる。
【0057】
アノード電極とカソード電極との間に電流を印加しない通電OFF時間は、15秒よりも長くなると、めっき処理時間が長くなり、めっき処理のスループットが低下する。また、2秒よりも短いと、金が連続して結晶成長するので、前述の
図10(b)に示したように、比較的結晶粒径の大きい金の結晶が成長する。これらのことから、アノード電極とカソード電極との間に電流を印加しない通電OFF時間は、例えば2〜15秒が適切な範囲と考えられる(他の条件によってはこの範囲に限定されないことはもとよりである)。また、量産に適した範囲としては3〜11秒が考えられるが、さらに5〜7秒の間を中心値とする範囲が最も好適と考えられる。
【0058】
また、アノード電極とカソード電極との間に電流を印加する通電ON時間は、通電OFF時間よりも長く設定されるが、長すぎると比較的結晶粒径の大きい金の結晶から成る金めっき層が各撹拌工程において順次形成されて、表面が粗い金めっき電極APが形成できなくなる。このことから、アノード電極とカソード電極との間に電流を印加する通電ON時間は、例えば20〜60秒が適切な範囲と考えられる(他の条件によってはこの範囲に限定されないことはもとよりである)。
【0059】
図11は、通電ON時間および通電OFF時間をパラメータとした金めっき電極の表面粗さを示すグラフ図、並びに各半導体ウェハの通電ON時間および通電OFF時間をまとめた表である。ここでは、各半導体ウェハ面内の9ヶ所において金めっき電極の表面粗さを測定し、その測定結果を示している。
【0060】
図11に示すように、ウェハNo.♯01とウェハNo.Refとを比較すると、1秒よりも長い通電OFF時間を設けることにより、金めっき電極の表面粗さが増加することが分かる。また、ウェハNo.♯01とウェハNo.♯02とウェハNo.♯03とを比較すると、通電ON時間が短くなるに従って、金めっき電極の表面粗さが増加することが分かる。例えばウェハNo.Refの表面粗さの平均値は0.027radであるが、ウェハNo.♯01(通電ON時間:59秒)の表面粗さの平均値は0.032rad、ウェハNo.♯02(通電ON時間:29秒)の表面粗さの平均値は0.033rad、ウェハNo.♯03(通電ON時間:20秒)の表面粗さの平均値は0.038radとなる。このように、めっき時に2〜15秒程度の通電OFF時間を設け、かつ通電ON時間を短くすることにより、表面の粗い金めっき電極APを形成することができる。
【0061】
なお、本実施の形態では、撹拌工程数は撹拌正転1、撹拌反転1、撹拌正転2、撹拌反転2、撹拌正転3、および撹拌反転3の6回としたが、これに限定されるものではない。例えば金めっき電極APの厚さ、金めっき電極APの表面粗さ、めっき時のパラメータ(例えば電流密度、通電時間、めっき液温度、めっき液供給流量、、撹拌棒の回転速度)、めっき処理のスループット等を考慮して撹拌工程数は決定される。
【0062】
また、本実施の形態では、撹拌正転を左回り回転とし、撹拌反転を右回り回転としたが、この逆、すなわち、撹拌正転を右回り回転とし、撹拌反転を左回り回転としてもよい。
【0063】
<電解めっき工程の動作5>
前述の
図7(a)に示すように、めっき槽PT1内へのめっき液の供給を停止した後、処理カップTC1の上下を180度反転して、処理カップTC1を正立状態とする。従って、処理カップTC1の底部が下に、めっき槽PT1を塞ぐ蓋TOが上となり、半導体ウェハSWのデバイス形成面が下方を向く。
【0064】
<電解めっき工程の動作6>
めっき槽PT1内から液排出口POを介してめっき液を排出する。処理カップTC1を正立状態としているので、めっき槽PT1の上から下に向かってめっき液が流れ、処理カップTC1の底部から排出される。
【0065】
<電解めっき工程の動作7>
めっき槽PT1の開放面を塞いでいる蓋TOを開けて、処理カップTC1から半導体ウェハSWを取り出す。
【0066】
4.電解金めっき法を用いた金めっき電極の形成方法の変形例:
前述の3.電解金めっき法を用いた金めっき電極の形成方法(<電解めっき工程の動作4>)では、めっき時に2〜15秒程度の通電OFF時間を設け、かつ通電ON時間を短くすることにより、表面の粗い金めっき電極が形成できることを説明した。ここでは、表面の粗い金めっき電極の形成方法の変形例について表1を用いて説明する。表1は通電ON時間と、電流密度と、金めっき電極の表面粗さとの関係をまとめた表である。
【0068】
めっき時の通電ON時間を短くすると、比較的結晶粒径の小さい金の結晶が成長する。また、めっき時の電流密度を小さくすると、めっき速度(金の結晶成長の速度)が遅くなり、金の結晶粒の成長を抑えることができる。従って、表1に示すように、めっき時の通電ON時間を短くし、かつ電流密度を小さくすることによって、金めっき電極の表面を粗くすることができる。
【0069】
さらに、めっき時に通電ON時間を短くし、かつ電流密度を小さくすることに加えて、前述した2〜15秒程度の通電OFF時間を設ければ、より表面の粗い金めっき電極を形成することができる。
【0070】
≪第2めっき装置を用いた金めっき電極の形成方法≫
本実施の形態による第2めっき装置を用いた金めっき電極(前述の
図5に示す金めっき電極AP)の形成方法を以下に説明する。第2めっき装置は、噴流でめっき液を撹拌する構造の処理カップを有している。
【0071】
1.第2めっき装置の処理カップの内部構造:
第2めっき装置の処理カップの内部構造を
図12を用いて説明する。
図12は第2めっき装置の処理カップの要部断面図である。
【0072】
図12に示すように、第2めっき装置の処理カップTC2は底部および側壁部を有し、処理カップTC2の内部にはめっき槽PT2がある。めっき槽PT2は底面BO2と側面とを有し、めっき槽PT2の底面BO2と対向する側は開放されている。めっき槽PT2の上部に、デバイス形成面をめっき槽PT2の内部に向けて半導体ウェハSWが載置される。
【0073】
めっき槽PT2の底面BO2側にはアノード電極AE2が設けられている。アノード電極AE2は、例えば酸化インジウム電極または白金電極等である。また、めっき槽PT2の側面の上部には半導体ウェハSWと電気的に接続するカソード電極CEが設けられている。めっき槽PT2の底面BO2の中央部にはめっき液を供給するための液導入口PI2が設けられており、液導入口PI2から供給されためっき液はめっき槽PT2内を噴流して、めっき槽PT2の上部から排出される。
【0074】
第2めっき装置は、前述した第1めっき装置と異なり、上下反転はしないので、半導体ウェハSWのデバイス形成面は常に(半導体ウェハSWを処理カップに載置する際、半導体ウェハSWを処理カップから取り出す際、および半導体ウェハSWにめっきを施す際)下方を向いている(フェイスダウン)。
【0075】
2.電解金めっき法を用いた金めっき電極の形成方法:
次に、電解金めっき法を用いた金めっき電極の形成方法(電解めっき工程(前述の
図8の工程S4))を前述の
図10(a)および(b)、前述の
図12、並びに
図13(a)および(b)を用いて説明する。
図13(a)は第2めっき装置を用いためっき時のレシピ構成を示す説明図である。
図13(b)は本発明者らが比較検討した第2めっき装置を用いためっき時のレシピ構成を示す説明図である。
【0076】
<電解めっき工程の動作1>
前述の
図12に示すように、純水により洗浄された半導体ウェハSWを処理カップTC2のめっき槽PT2へ搬送し、めっき槽PT2の上部に、デバイス形成面をめっき槽PT2の内部に向けて半導体ウェハSWを載置する。ここで、半導体ウェハSWによってめっき槽PT1の開放面を塞ぐ。また、半導体ウェハSWのデバイス形成面の周縁部とカソード電極CEとが接触する。
【0077】
<電解めっき工程の動作2>
前述の
図12に示すように、処理カップTC2の底部に設けられた液導入口PI2からめっき液を供給し、噴流によりめっき槽PT2内のめっき液を撹拌する。めっき液は非シアン系めっき液であり、例えば亜硫酸金系のめっき液(主要成分が亜硫酸金ナトリウム、エチレンジアミン、無機酸塩、他の微量添加物の水溶液)である。ここでは、電解めっきのための通電は行っておらず、アノード電極AE2とカソード電極CEとの間に電流は印加されていない。
【0078】
<電解めっき工程の動作3>
図13(a)に示すように、アノード電極とカソード電極との間に所定時間、所定の電流を印加する(通電ON)。通電ON時間は、例えば20〜60秒程度である。この連続通電により、シード膜上に金が等方的に結晶成長して、第1金めっき層が形成される。
【0079】
次に、アノード電極とカソード電極との間の通電を止めて(通電OFF)、金の結晶成長を止める。通電OFF時間は、例えば2〜15秒程度である。
【0080】
次に、再びアノード電極とカソード電極との間に所定時間、所定の電流を印加する(通電ON)。通電ON時間は、例えば20〜60秒程度である。ここでは、すでに形成された第1金めっき層上に新たな点を基準にして金が等方的に結晶成長して、第2金めっき層が形成される。
【0081】
次に、アノード電極とカソード電極との間の通電を止めて(通電OFF)、金の結晶成長を止める。通電OFF時間は、例えば2〜15秒程度である。
【0082】
その後、上記通電ONと上記通電OFFとを交互に繰り返すことにより、例えば前述の
図10(a)に示すように、複数の金めっき層が積層された金めっき電極APが形成される。
【0083】
図13(b)に示すように、金の結晶成長の連続性が途切れないようにするために通電OFF時間を設けない場合は、例えば前述の
図10(b)に示すように、比較的結晶粒径の大きい金の結晶から成る金めっき電極APRが形成される。そして前述したように、電解めっきを行っている際には、処理回数およびめっき液建浴からの経過時間が増すに従い、めっき液中の成分が経時変化する。このため、通電OFF時間を設けずに結晶成長した金めっき電極APRの表面状態は、めっき液中の成分の経時変化の影響を受けて変化しやすい。一般的には、処理回数およびめっき液建浴からの経過時間が増すに従い、金めっき電極APRの表面が徐々に粗い状態から滑らかな状態へと変化する。
【0084】
しかしながら、本実施の形態による第2めっき装置を用いた電解金めっき方法では、例えば前述の
図10(a)に示すように、比較的結晶粒径の小さい金の結晶から成る金めっき層を積層して金めっき電極APが形成される。これにより、凹凸が多く表面が粗い金めっき電極APが形成できるので、金めっき電極APの表面状態はめっき液中の成分の経時変化の影響を受けにくくなり、金めっき電極APは粗い表面状態を維持することができる。
【0085】
アノード電極とカソード電極との間に電流を印加しない通電OFF時間は、第1めっき装置の場合と同様に、例えば2〜15秒が適切な範囲と考えられる(他の条件によってはこの範囲に限定されないことはもとよりである)。また、量産に適した範囲としては3〜11秒が考えられるが、さらに5〜7秒の間を中心値とする範囲が最も好適と考えられる。
【0086】
また、アノード電極とカソード電極との間に電流を印加する通電ON時間は、第1めっき装置の場合と同様に、例えば20〜60秒が適切な範囲と考えられる(他の条件によってはこの範囲に限定されないことはもとよりである)。
【0087】
なお、本実施の形態では、通電ON時間を6回に区切ったが、これに限定されるものではない。例えば金めっき電極の厚さ、金めっき電極の表面粗さ、めっき時のパラメータ(例えば電流密度、通電時間、めっき液温度、めっき液供給流量、、撹拌棒の回転速度)、めっき処理のスループット等を考慮して通電ON時間の回数は決定される。
【0088】
<電解めっき工程の動作4>
めっき槽PT2内へのめっき液の供給を停止した後、処理カップTC2から半導体ウェハSWを取り出す(前述の
図12参照)。
【0089】
≪本実施の形態による効果≫
このように、本実施の形態によれば、電解めっきを行っている際に、処理回数およびめっき液建浴からの経過時間が増すに従い、めっき液中の成分が経時変化しても、金めっき電極APの表面状態の変化が抑えられて、例えば0.25rad以上の表面粗さの表面状態を維持することができる。これにより、金めっき電極を形成する工程において、金が析出(外観検査において異常と判断する必要がない金の析出)しても、外観検査において金析出を認識せずに金めっき電極を外観正常と判断することができるので、半導体装置の外観検査の虚報を減らすことができる。
【0090】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0091】
例えば前述した実施の形態では、金めっき電極の形成について説明したが、銅めっき電極またはニッケルめっき電極等の形成にも同様に適用できることは言うまでもない。
【0092】
また、前述した実施の形態では、パッド電極に電気的に接続するOPM構造の金めっき電極について説明したが、金バンプ電極の形成にも同様に適用できることは言うまでもない。