特許第6362375号(P6362375)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362375
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】内燃機関用の点火コイル
(51)【国際特許分類】
   H01F 38/12 20060101AFI20180712BHJP
   F02P 15/10 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   H01F38/12 L
   H01F38/12 G
   F02P15/10 301B
   F02P15/10 301C
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-63340(P2014-63340)
(22)【出願日】2014年3月26日
(65)【公開番号】特開2015-185796(P2015-185796A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2017年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109093
【氏名又は名称】ダイヤモンド電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100376
【弁理士】
【氏名又は名称】野中 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100143199
【弁理士】
【氏名又は名称】磯邉 毅
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100376
【弁理士】
【氏名又は名称】野中 誠一
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 真
(72)【発明者】
【氏名】島川 英明
(72)【発明者】
【氏名】片岡 尚紀
(72)【発明者】
【氏名】川島 康照
【審査官】 池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−094644(JP,A)
【文献】 特開昭62−139308(JP,A)
【文献】 特開昭63−041008(JP,A)
【文献】 特開2007−300039(JP,A)
【文献】 特開2012−167665(JP,A)
【文献】 特開平08−264352(JP,A)
【文献】 特開2003−173920(JP,A)
【文献】 特開平06−349652(JP,A)
【文献】 特開平02−023269(JP,A)
【文献】 特開2004−239259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 38/12
F02P 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次コイルと二次コイルが電磁結合してなる第一点火トランス、第一点火トランスの一次電流をON/OFF制御する第一スイッチング素子、一次コイルと二次コイルが電磁結合してなる第二点火トランス、及び、第二点火トランスの一次電流をON/OFF制御する第二スイッチング素子、を収容するケース本体部と、
ケース本体部から点火プラグに向けて突出するケース軸部と、を有して構成された点火コイルであって、
第一スイッチング素子と第二スイッチング素子は、一の点火タイミングに、位相の異なる第一と第二の点火パルスを受けて所定時間継続するON動作を実行した後、ON/OFF動作を必要回数相補的に実行するよう構成され、
第一点火トランスの二次電流が逆放電方向に流れないよう規制する複数個の第一規制素子と、第二点火トランスの二次電流が逆放電方向に流れないよう規制する複数個の第二規制素子と、を一の点火プラグに至る前記ケース軸部の内部に配置することを特徴とする内燃機関用の点火コイル。
【請求項2】
第一規制素子と第二規制素子とは、何れも、第1端子から第2端子に向けて放電電流が許容される電子素子であって、
各々の第2端子が第一と第二の点火トランスの二次コイルに接続されている一方、第一規制素子と第二規制素子の第1端子が互いに接続されて、点火プラグに放電電圧を供給している請求項1に記載の点火コイル。
【請求項3】
第一規制素子及び第二規制素子は、各々、複数の素子が直列接続されて構成されている請求項1又は2に記載の点火コイル。
【請求項4】
第一規制素子及び第二規制素子は、各々、複数の素子が並列接続されて構成されている請求項1又は2に記載の点火コイル。
【請求項5】
前記ケース本体部には、第一スイッチング素子を駆動する第一点火信号が供給される第一信号端子と、第二スイッチング素子を駆動する第二点火信号が供給される第二信号端子と、内燃機関に駆動されて可動する移動体に搭載されたバッテリの直流電圧が供給されるバッテリ端子と、バッテリ電圧を昇圧した電源電圧が供給される電源端子と、を受ける単一のコネクタが配置されている請求項1〜4の何れかに記載の点火コイル。
【請求項6】
第一規制素子及び第二規制素子を固定的に保持する規制本体部と、規制本体部の先端側に配置されて点火プラグに弾性接触可能な導体先端部と、規制本体部の基端側に配置されて、2つの二次コイルの高圧側端子に接触する導体基端部とで、全体として略T字状に一体構成された組立体が予め製造されており、この組立体の導体基端部がケース本体部に配置される一方、前記組立体の他の部分がケース軸部に配置されて、完成状態となる請求項1〜5の何れかに記載の点火コイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用の点火コイルに関し、特に、多重点火が可能で小型で高性能の点火コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の内燃機関では、燃費改善などの目的で、空燃比をリーンに制御する希薄燃焼制御が採用されている。この場合、燃料が希薄である分だけ混合気の点火特性が劣化するので、一回の点火サイクルにおいて、必要回数、点火プラグを重複して駆動する多重点火方式が採られことがある。そこで、出願人も、第一と第二の点火トランスを相補的にON/OFF制御して多重点火動作を実現する内燃機関用点火システムを提案している(特許文献1)。
【0003】
図4は、この回路を図示したものであり、必要な点火エネルギーを、素早く一次コイルに充電するため、バッテリ電圧Vbを昇圧して、40〜50Vの電源電圧Voutを確保する共に、第一と第二のスイッチング素子IGTa,IGTbを所定回数、相補的にON/OFF制御することで、所定時間、点火プラグの点火電流を継続させて所望の点火性能を実現している。
【0004】
また、この種の点火コイルは、一般に、第一の点火信号Sigaを受ける信号端子、昇圧された電源電圧Voutを受ける電源端子、及び、グランド端子GND、を有する第1コネクタを設けると共に、この第1コネクタとは別に、第二の点火信号Sigbを受ける信号端子、昇圧された電源電圧Voutを受ける電源端子、及び、グランド端子GND、を有する第2コネクタを設けている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−167665公報
【特許文献2】特開2013−243239公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
引用文献1に記載の回路構成では、第一と第二の点火トランスの二次コイルが並列に接続されるので、2つの点火トランスの二次コイルによって閉回路が形成されてしまう。そこで、この閉回路に短絡電流が流れないよう、各点火トランンスの二次電流が逆放電方向に流れないよう規制するダイオードを配置する必要がある。そして、ダイオードとしては、二次コイルの点火放電時の誘起電圧が数十kVであり、且つ、点火放電電流も瞬間的に大電流であることを考慮して、これに耐える素子を選択する必要がある。
【0007】
ところで、昨今の市場の要請として、製造コストを上げることなく、点火コイルを高性能化して希薄燃焼時の正常動作を担保し、且つ、点火コイルを小型化することが望まれている。したがって、電流容量が高く、耐圧性能にも優れる最高ランクのダイオードを使用したのでは上記の要請に反することになる。一方、複数個のダイオードを直列接続して点火トランスの下方に配置したのでは(特許文献2参照)、点火トランスと絶縁性を確保するため、ダイオードの外径寸法を超える絶縁距離が必要となりコイルケースが高さ方向に大型化する。
【0008】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであって、製造コストを上げることなく、小型で高性能の点火コイルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は、一次コイルと二次コイルが電磁結合してなる第一点火トランス、第一点火トランスの一次電流をON/OFF制御する第一スイッチング素子、一次コイルと二次コイルが電磁結合してなる第二点火トランス、及び、第二点火トランスの一次電流をON/OFF制御する第二スイッチング素子、を収容するケース本体部と、ケース本体部から点火プラグに向けて突出するケース軸部と、を有して構成された点火コイルであって、第一スイッチング素子と第二スイッチング素子は、一の点火タイミングに、位相の異なる第一と第二の点火パルスを受けて所定時間継続するON動作を実行した後、ON/OFF動作を必要回数相補的に実行するよう構成され、第一点火トランスの二次電流が逆放電方向に流れないよう規制する複数個の第一規制素子と、第二点火トランスの二次電流が逆放電方向に流れないよう規制する複数個の第二規制素子と、を一の点火プラグに至る前記ケース軸部の内部に配置することを特徴とする。
【0010】
ここで、第一と第二の規制素子とは、典型的にはダイオードを意味するが、ダイオードと同等に機能する電子素子であれば足りる。
【0011】
好ましくは、第一規制素子と第二規制素子とは、何れも、第1端子から第2端子に向けて放電電流が許容される電子素子であって、各々の第2端子が第一と第二の点火トランスの二次コイルに接続されている一方、第一規制素子と第二規制素子の第1端子が互いに接続されて、点火プラグに放電電圧を供給している。
【0012】
また、第一規制素子及び第二規制素子は、各々、複数の素子が直列接続されて構成されているか、或いは、各々、複数の素子が並列接続されて構成されているのが典型例である。
【0013】
前記ケース本体部には、第一スイッチング素子を駆動する第一点火信号が供給される第一信号端子と、第二スイッチング素子を駆動する第二点火信号が供給される第二信号端子と、内燃機関に駆動されて可動する移動体に搭載されたバッテリの直流電圧が供給されるバッテリ端子と、バッテリ電圧を昇圧した電源電圧が供給される電源端子と、を受ける単一のコネクタが配置されているのが好適である。
【0014】
また、第一規制素子及び第二規制素子を固定的に保持する規制本体部と、規制本体部の先端側に配置されて点火プラグに弾性接触可能な導体先端部と、規制本体部の基端側に配置されて、2つの二次コイルの高圧側端子に接触する導体基端部とで、全体として略T字状に一体構成された組立体が予め製造されており、この組立体の導体基端部がケース本体部に配置される一方、前記組立体の他の部分がケース軸部に配置されて、完成状態となるよう構成されているのが好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、第一スイッチング素子と第二スイッチング素子は、一の点火タイミングに、位相の異なる第一と第二の点火パルスを受けて所定時間継続するON動作を実行した後、ON/OFF動作を必要回数相補的に実行するよう構成において、複数個の第一規制素子と、複数個の第二規制素子とを一の点火プラグに至るケース軸部の内部に配置するので、最高レベルのダイオードを使用する必要が無く、且つ、ケース軸部を有効活用するので、製造コストを上げることなく、小型で高性能の点火コイルを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例に係る点火コイルの回路構成を図示したものである。
図2】実施例に係る点火コイルの内部構造を図示したものである。
図3】変型例に係る点火コイルの内部構造を図示したものである。
図4】従来技術に係る点火コイルを示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。図1(a)は、点火コイルCLの回路構成を示すブロック図であり、2個のイグナイタモジュールIGa,IGbと、2つの点火トランスTa,Tbと、ダイオードモジュールDiと、を内蔵して構成されている。ここで、点火トランスTa,Tbは、一次コイルL1と二次コイルL2が、中心鉄芯Coや外装鉄芯Co’を経由して電磁結合して構成されている。
【0018】
そして、一次コイルL1の一次電流が遮断される点火放電時には、二次コイルL2のプラス端子(+)とマイナス端子(−)との間に、数十kVの点火電圧を発生するが、二次コイルL2のプラス端子(+)は、何れの点火トランスTa,Tbでも、一次コイルL1の電源ラインVccに接続されている。そのため、2つの二次コイルL2,L2は、電源ラインVccを経由して閉回路を形成するが、ダイオードモジュールDiが配置されているので、何れの方向にも短絡電流が流れることはない。
【0019】
ダイオードモジュールDiは、点火トランスTa用の複数のダイオードDaと、点火トランスTb用の複数のダイオードDbに大別され、図示例では、三個のダイオードDaと、三個のダイオードDbが全体として逆方向に接続されている。そして、三個のダイオードDaと三個のダイオードDbの接続点(アノード端子)が、高圧出力端子Toに接続されている。
【0020】
また、この点火コイルCLの接続コネクタTRは、自動車に搭載されたバッテリから12V程度のバッテリ電圧VBを受けるバッテリ端子T1と、ECU(Engine Control Unit )から第一点火パルスSGaを受ける第一信号端子T2と、DC−DCコンバータCOVで43V程度まで昇圧された電源電圧Vccを受ける電源端子T3と、ECUから第二点火パルスSGbを受ける第二信号端子T4と、グランドラインGNDを共通化するグランド端子T5とを有して構成されている。また、点火トランスTa,Tbの高圧出力は、ダイオードモジュールDiを経由して高圧出力端子Toに出力されて、点火プラグPGに供給されている。
【0021】
各イグナイタモジュールIGa,IGbは、各々、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor )などのスイッチング素子Qa,Qbと、スイッチング素子Qa,QbのON動作時の過電流や過熱状態などを検知してON電流を制限するコントロール部CTLa、CTLbと、を内蔵されて構成されている。なお、各コントロール部CTLa,CTLbは、バッテリ電圧VBを電源電圧にして機能しており、EUCから受ける点火パルスSGa,SGbに基づいて適宜な論理動作をすることでスイッチング素子Qa,Qbのゲート端子を制御している。
【0022】
図示の通り、スイッチング素子Qa,Qbのエミッタ端子は、グランドラインGNDに接続され、コレクタ端子は、一次コイルL1に接続されている。そして、スイッチング素子Qa,Qbは、そのゲート端子にHレベルの制御電圧を受けることでON動作し、一次コイルL1に充電電流が流れるように構成されている。
【0023】
各スイッチング素子Qa,Qbのゲート端子に供給される制御電圧は、その論理レベルが基本的に点火パルスSGa,SGbと同じである。そして、この実施例では、各点火サイクルにおいて、ECUから図1(d)に示すような点火パルスSGa,SGbを受けることで、多重点火動作を実現している。
【0024】
この点を具体的に確認すると、点火パルスSGa,SGbがHレベルであると、一次コイルL1に一次電流が流れ、その後、点火パルスSGa,SGbがLレベルに遷移した瞬間に、二次コイルL2には数十kVの点火電圧が誘起される。ここで、点火サイクルにおいて、点火パルスSGaと点火パルスSGbには、適宜な位相遅れが設けられており、最初のHレベル期間を除けば、互いの論理レベルが反転している。
【0025】
そのため、スイッチング素子Qa,Qbは、点火パルスSGa,SGbの最初のHレベル期間を除けば、相補的にON/OFF動作を繰り返すことになる。したがって、点火コイルCLでは、点火パルスSGa,SGbの最初のHレベル期間に蓄積された磁気エネルギーに基づいて、2つの二次コイルL2,L2に相補的に高電圧が誘起されることになる。
【0026】
しかも、一次コイルL1には、43V程度に昇圧された電源電圧Vccが供給されているので、一次コイルL1の電流が素早く目標値レベルに達することになり、スイッチング素子Qa,Qbを高速にON/OFF制御しても、内燃機関から要求されるレベルの高電圧を繰り返し発生させることができる。したがって、点火プラグPGでは、多重的な点火放電が実現されることになり(図1(d)のt1、t2、・・・、Tn+1参照)、希薄状態の混合気に対しても点火ミスが生じない。
【0027】
図2は、点火コイルCLの概略構成(図2(a)〜図2(g))と、ダイオードモジュールDiを説明する図面(図2(h)〜図2(j))である。
【0028】
この点火コイルCLは、図2(e)に概略構成を示す通り、箱状に形成されたケース本体部1と、ケース本体部1から点火プラグPGに向けて突出するケース軸部2とに大別される。そして、ケース本体部1の底部からケース軸部2には、略T字状のダイオードモジュールDiが収容されている。なお、ケース軸部2は、例えば、90〜100mm程度の突出長さを有している。
【0029】
ケース本体部1は、より詳細には、図2(d)に示す通りであり、その側面には、バッテリ端子T1と、第一信号端子T2と、電源端子T3と、第二信号端子T4と、グランド端子T5とを有する接続コネクタTRが固定されている。この実施例では、点火トランスTa,Tbや、これに関連する回路が2つ設けられているにも拘わらず、接続コネクタTRが単一であって共通化されているので、(1)端子数の低減、(2)配線ケーブルの削減、(3)接続コネクタ部の体積の低減などの効果がある。
【0030】
図2(a)の平面図及び図2(b)のA−A断面図に現れるように、ケース本体部1には、中心鉄芯Coを内包する一次コイルL1と、一次コイルL1を内包する二次コイルL2とが二組収容されて点火トランスTa,Tbを構成している。そして、二組の二次コイルL2、L2の外側を各々周回するように、環状の外装鉄芯Co’が2個配置されている。なお、配置状態では、中心鉄芯Coと外装鉄芯Co’とが接触して、漏れ磁束の無い磁路が形成される。
【0031】
このようにして構成される点火トランスTa,Tbの上部に、イグナイタモジュールIGa,IGbが配置されることで、ケース本体部1の平面方向における小型化を図っている。但し、何ら限定されるものではなく、例えば、接続コネクタTRに近接して、2つのイグナイタモジュールIGa,IGbを立設しても良い。この場合には、ケース本体部1の高さ方向における小型化を実現することができる。
【0032】
図2(h)に示す通り、ダイオードモジュールDiは、ケース軸部2の軸方向に延びる素子本体部10と、素子本体部10の基端部において軸方向に直交して延びる基端部11とに大別され、全体として略T字状に形成されている。そして、基端部11には、点火トランスTaの二次コイルL2のマイナス端子(−)と、点火トランスTbの二次コイルL2のマイナス端子(−)に各々接続される接続端子Dt1,Dt2が設けられている。
【0033】
一方、素子本体部10には、3個のダイオードDaが直列接続されて接続端子Dt3に接続されていると共に、別の3個のダイオードDbが直列接続されて接続端子Dt3に接続されている。このダイオードモジュールDiの等価回路は、図1(b)に示す通りである。例えば、逆方向耐圧15kV程度のダイオードを使用すると、3個のダイオード全体としては逆方向耐圧が45kV程度となり、点火電圧や電源電圧Vccを更に高く設定しても点火回路の正常動作が確保される。すなわち、複数のダイオードによって逆方向電圧を分配するので、逆方向耐圧の高い高価なダイオードを使用しなくても、ダイオードモジュールDi全体として、所望の逆方向耐圧を確保することができる。
【0034】
図2(h)や図2(j)に現れる通り、接続端子Dt3は、金属平板を折り曲げて構成されており、所定の弾発力を有して、高圧出力端子Toに接触している。なお、高圧出力端子Toと接続端子Dt3の間に、雑音防止抵抗を配置しても良い。
【0035】
何れにしても、本実施例では、略T字状に形成されたダイオードモジュールDiを予め製造しておき、点火コイルCLの製造完成時に、ケース軸部2にダイオードモジュールDiの素子本体部10を挿入し、ケース本体部1の底部に、ダイオードモジュールDiの基端部11を配置するので、点火コイルCLの組立工程を簡素化することができる。また、従来の点火コイルでは、高圧出力の伝導路として導体スプリングが配置されているに過ぎないケース軸部2を、有効活用できる利点がある。すなわち、導体スプリングを省略できる上に、デッドスペースを解消することができる。
【0036】
また、ダイオードDa,Dbと、二次コイルL2との間に十分な絶縁距離を確保できるので、ケース本体部1の底部に余分の絶縁距離を設ける必要がなくなり、ケース本体部1の高さ方向における小型化を実現することができる。
【0037】
ところで、図2(h)のダイオードモジュールDiでは、各3個のダイオードDa・・・,Db・・・を軸方向に直線状に延設させたが、何ら限定されない。図3は、別のダイオードモジュールDiを示す図面であり、ケース軸部2の突出長さが、50〜60mm程度の点火コイルに好適に適用される。この場合の等価回路も、図1(b)に示す通りであり、3個のダイオードDa・・・,Db・・・が各々直列接続されている。この回路構成でも、逆電圧が3個のダイオードによって3分されることで、逆方向耐圧の高い高価なダイオードを使用しなくても、ダイオードモジュールDi全体として所望の逆方向耐圧を確保することができる。
【0038】
ところで、実施例の点火回路では、ダイオードDa,Dbの逆方向耐圧だけでなく、点火電流も問題になることがある。例えば、図1(d)に示す通り、多重点火方式では、一の点火サイクルにおいて、二次コイルL2の二次電流が、断続的に繰り返し大レベルとなり、これがダイオードDa,Dbに流れる。具体的には、t1、t3、・・・tnのタイミングでダイオードDaに大電流が流れ、t2、t4、・・・tn+1のタイミングでダイオードDbに大電流が流れ、これらの動作の結果として、点火プラグPGには所定レベル以上の点火電流が継続する。
【0039】
そのため、点火パルスの遷移時の大電流が問題になる場合には、例えば、図1(c)の回路構成を採るのが好ましい。この場合には、点火電流が3つのダイオードに分配されるので、順方向電流の絶対最大定格に劣るダイオードを使用することができる。なお、この電流分配タイプの回路構成は、図3(e)に示すダイオードモジュールDiだけでなく、図2(h)に示すダイオードモジュールDiに適用することもできる。
【0040】
以上、本発明の実施例について具体的に説明したが、具体的な記載内容は特に本発明を限定する趣旨ではなく、適宜に変更可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 ケース本体部
2 ケース軸部
CL 点火コイル
Da 第一規制素子
Db 第二規制素子
Ta 第一点火トランス
Tb 第二点火トランス
Qa 第一スイッチング素子
Qb 第二スイッチング素子
図1
図2
図3
図4