(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記バインダー繊維の含有量は、前記メルトブローン繊維及び前記バインダー繊維の合計量100質量部に対して、30質量部以上85質量部以下である、請求項1に記載の不織布ウェブ。
前記第1の不織布における前記バインダー繊維の含有量が、前記第1の不織布を構成する前記メルトブローン繊維及び前記バインダー繊維の合計量100質量部に対して、30質量部以上85質量部以下である、請求項5に記載の不織布ウェブ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明するが、本発明の不織布ウェブは、以下の実施形態に限定されるものではない。なお、以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
本明細書において、メルトブローン繊維とは、熱可塑性材料を溶融させ、ダイ(金型)を通して糸状(又はフィラメント状)に成形される繊維のうち、特に、高速ガス(例えば空気)の流れの中に押し出すことによって、細く形成される繊維を表す。糸状又はフィラメント状に成形された溶融熱可塑性材料は、高速ガスの流れにより延伸され、その直径が減少する。これらのメルトブローン繊維の繊維径は、約20マイクロメートル(μm)未満、又は、約1〜10μmであってもよい。また、バインダー繊維とは、繊維間を連結(例えば、融着による連結)させるバインダーの役割を果たす短繊維を表す。
【0012】
また、ウェブとは、繊維同士が、連結、絡み合いなどすることにより形成される物品(例えばシート)を表す。
【0013】
まず、第1の実施形態に係る不織布ウェブについて説明する。
【0014】
図1は、第1実施形態に係る不織布ウェブの一例を示す模式断面図である。第1実施形態に係る不織布ウェブ10は、メルトブローン繊維とバインダー繊維とを有する不織布2の一層から構成されている。バインダー繊維は、メルトブローン繊維と交絡するように配置されており、交絡点の少なくとも一部において、両繊維は融着している。
【0015】
不織布2においては、ダイから溶融状態で連続的に複数射出されたメルトブローン繊維(長繊維)と、様々な方向を向いたバインダー繊維(短繊維)とが交絡し、メルトブローン繊維とバインダー繊維との交差点の少なくとも一部において両繊維が融着している。不織布2においては、メルトブローン繊維とバインダー繊維との融着の他、バインダー繊維同士の融着があってもよい。具体的な製造方法は後述するが、上記不織布2は、例えば、ダイから連続的に射出されたメルトブローン繊維の流れに対して、バインダー繊維を吹き付けるようにして交絡させ、メルトブローン繊維及びバインダー繊維からなるウェブを構成させ、続いて、バインダー繊維が様々な方向を向いて分散した状態で、ウェブを加熱及び加圧し、圧縮することによって得ることできる。
【0016】
したがって、バインダー繊維は、ウェブを加熱等する際に、溶融又は軟化してメルトブローン繊維との融着を可能とするような熱的性質を有するものが好ましい。さらには、バインダー繊維の溶融温度(又は軟化温度)が、メルトブローン繊維の溶融温度(又は軟化温度)よりも低いことが好ましい。ここで溶融温度とはJIS K7121(1987)における「融解温度」を意味し、軟化温度とはJIS K7206(1999)における「ビカット軟化温度」を意味する。
【0017】
第1実施形態に係る不織布ウェブ10を構成する不織布2は、全体として、単位面積当たりの重量が400g/m
2以上1500g/m
2以下であり、且つ曲げ剛性が2.0N/50mm以上20.0N/50mmである。
【0018】
次に、第1実施形態に係る不織布ウェブ10の製造方法について説明する。第1実施形態に係る不織布ウェブ10は一層からなる不織布2で構成されることから、不織布2の製造方法は、不織布ウェブ10の製造方法に相当する。
【0019】
不織布2は、メルトブローン繊維を供給するユニットと、バインダー繊維を供給するユニットとを使用して、ウェブ60を作製し、これを加熱し、加圧することにより製造することができる。
図2は、第1実施形態に係る不織布ウェブを構成する不織布2の製造方法を示す模式図である。この装置は、ハウザー(Hauser)の米国特許第4,118,531号で開示された装置と同じである。
【0020】
図2に示すように、エクストルーダー(図示せず)、溶融した熱可塑性材料(熱可塑性樹脂等)がそれを通して進められる押し出しチャンバ101、溶融した熱可塑性材料がそれを通して押し出されるダイオリフィス102、及びガス(典型的に加熱空気)がそれらを通して高速で強制的に噴射される連携ガスオリフィス103を有するメルトブローンダイ100とを備えるメルトブローン装置を使用し、エクストルーダーから供給される溶融した樹脂をメルトブローンダイ100から押し出してメルトブローン繊維52を形成させる(メルトブローン法)。この高速ガスは押し出された熱可塑性材料を引き伸ばし、繊細化する。繊細化された熱可塑性材料(繊細化繊維)が集積装置の形成表面に移動するときにその熱可塑性材料は凝固する。繊細化繊維のアスペクト比(繊維径に対する長さの比率)は、無限大に漸近する。メルトブローン繊維は、高速ガスによる繊細化の際に、切断されることがあるため、繊維の長さは必ずしも均一とはならないことが知られている。
【0021】
図2に示されたメルトブローン装置は、例えば、ウェンテ、ヴァン(Wente,Van)Aの「スーパーファイン サーモプラスチック ファイバ(Superfine Thermoplastic Fibers)」、Naval Research Laboratories、報告書第4364号で開示されたような従来型の構造であってもよく、両方ともに上記ハウザー(Hauser)の米国特許第4,118,531号で引用されている。
【0022】
このようにして形成されるメルトブローン繊維52を、表面が細かく孔があけられたスクリーン等を含む回転するドラム105に吹き付けて、ドラム表面に繊維を集積させることでウェブ60が作製される。このドラム105はメルトブローンダイ100と少なくとも同じ幅を有する。また、ドラム105の表面は、メルトブローンダイ100から0.3から1mまたは、0.38から0.64mまでの範囲の距離に設置される。
図2では、回転するドラム105の表面上に繊維を集積させる例を示しているが、集積させる対象(集積装置)としては、例えば、ベルトコンベア等であってもよく、また複数のドラムやベルトコンベアを組み合わせたものであってもよい。また、集積装置における繊維を集積させる面(形成表面)の裏面側に吸引装置を設け、メルトブローン繊維52を形成表面に吹き付けると同時に吸引させてもよい。
【0023】
ドラム105の回転速度(又は集積装置の運転速度)は、メルトブローン繊維52の射出速度よりも充分に遅い回転スピードに設定されることが好ましい。ドラム105の回転速度を調整することにより、得られるウェブ60及び不織布2の単位面積当たりの重量を調整することが可能である。例えば、ドラムの回転速度を遅くすると、ドラム表面上で集積される繊維の量が増え、単位面積当たりの重量を大きくすることができる。
【0024】
メルトブローン繊維52をドラム105に吹きつけウェブ60を形成する際に、メルトブローン装置の上方に配置された繊維吹き出し装置を使用してバインダー繊維54をウェブ60の中に混合させることができる。つまり、
図2に示すように、バインダー繊維54の混合は、シュート108、ドライブロール109、リッカーインロール106、ダクト110及びエアー供給ダクト111を有する繊維吹き出し装置を使用して行う。バインダー繊維54の原料となる繊維集積物107は、ドライブロール109によりシュート108に沿って移動する。その前端が、ドライブロール109の下方に到達すると、リッカーインロール106によりむしりとられ、繊維集積物107からむしりとられた繊維が、バインダー繊維54としてダクト110に供給される。リッカーインロール106の回転によって生じる空気流かエアー供給ダクト111から供給される空気流がダクト110に流れ込むことによって、バインダー繊維54が、メルトブローンダイ100から射出されるメルトブローン繊維52の流れに対して、吹き付けられる。こうして、バインダー繊維54をメルトブローン繊維52の流れの中に組み入れることができ、メルトブローン繊維52とバインダー繊維54とが相互混合されたウェブ60が作製される。ウェブ60中で、メルトブローン繊維52とバインダー繊維54とが交絡した状態となる。なお、バインダー繊維54の吹き付け量(すなわち、バインダー繊維54の配合量)は、リッカーインロール106の回転数やエアー供給ダクト111からの空気の供給量などによって調整することができる。
【0025】
上記繊維集積物107は、従来型の繊維開繊設備により作製されるものであってもよく、例えばガーネットマシン、すなわちRANDO−WEBBERで作製されるものであってもよい。
【0026】
次に、得られたウェブ60を加熱及び加圧させることで、本願発明に係る不織布2(不織布ウェブ10)が製造される。この際、メルトブローン繊維52とバインダー繊維54とが、その接触点(交差点)において融着を起こすように充分加熱すると共に、ウェブ60の厚み方向の上下の一方向又は両方向から加圧し、圧縮する。ウェブ60に対する加熱、加圧条件を制御することにより、得られる不織布の厚みやソリディティを調整することができる。なお、不織布2は所望の形状に成形して使用することができるが、不織布2を得てから成形してもよく、ウェブ60を所望の形状に成形した後に上記の加熱及び加圧を行ってもよい。
【0027】
加熱温度は、ウェブ60を構成する繊維の種類に応じて適宜設定することができるが、バインダー繊維54の少なくとも一部が溶融する温度以上である。バインダー繊維54が溶融するが、メルトブローン繊維52が溶融しない温度であることが好ましい。芯鞘構造のバインダー繊維を使用する場合、鞘部のみが溶融する条件で使用してもよい。加熱の方法は限定されるものではなく、ランプ、ヒータ等を用いてウェブを直接に加熱する方法、圧縮する際に用いるプレス機のプレス部分を加熱し、圧縮時にウェブを間接的に加熱する方法などを用いてもよい。
【0028】
加圧圧力は、適宜設定することができ、例えば、10MPaとすることができる。加圧する方法も限定されるものではなく、プレス機、カレンダー、加圧ローラ等を用いて加圧する方法などを用いてもよい。
【0029】
不織布2の単位面積当たりの重量は、400g/m
2以上1500g/m
2以下であるが、600g/m
2以上1500g/m
2以下であることが好ましく、800g/m
2以上1500g/m
2以下であることがより好ましく、1000g/m
2以上1500g/m
2以下であることがさらに好ましい。単位面積当たりの重量を400g/m
2以上とすることにより、不織布に適度な曲げ剛性を付与することができる。また、単位面積当たりの重量を1500g/m
2以下とすることにより、中周波数領域(例えば、800Hz〜1000Hz)における吸音率を向上させることができる。なお、不織布2の単位面積当たりの重量は、メルトブローン繊維52とバインダー繊維54の含有量比、上記の不織布2の製造方法におけるメルトブローン繊維52の射出量、バインダー繊維54の吹き付け量、集積装置の運転速度などの制御により、調整することができる。
【0030】
不織布2の曲げ剛性は、2.0N/50mm以上20.0N/50mm以下であるが、3.0N/50mm以上20.0N/50mm以下であることが好ましく、5.0N/50mm以上20.0N/50mm以下であることがより好ましく、7.0N/50mm以上20.0N/50mm以下であることがさらに好ましい。曲げ剛性を2.0N/50mm以上とすることにより、不織布ウェブを備える吸音材の吸音率、特に、800Hz〜1000Hzの周波数域の吸音率のより向上させることができる。また、曲げ剛性を15.0N/50mm以下とすることにより、中周波数領域(例えば、800Hz〜1000Hz)における吸音率を向上させることができる。なお、不織布の曲げ剛性は、メルトブローン繊維52とバインダー繊維54の含有量比、不織布2の単位面積当たりの重量の制御、ウェブ60の圧縮処理などにより、調整することができる。曲げ剛性は、JIS K7074(1998)の3点曲げ試験(A法)に基づいて測定される値を示す。
【0031】
不織布2の厚みは、特に制限されるものではないが、10mm以下、5mm以下、又は3mm以下であってもよい。不織布2の厚みが上記のような範囲であると、狭スペースに対しても、本実施形態に係る不織布ウェブ10を使用することができることから好ましい。
【0032】
不織布2のソリディティは、特に制限されるものではないが、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上又は40%以上であってもよい。本明細書において、不織布のソリディティとは、不織布の嵩密度を、不織布を構成する材料の密度で割ることによって求められる値(百分率)であり、不織布の充填性、機密性及び通気性等の指標となる。不織布のソリディティは、実施例に記載の方法により求めることができる。
【0033】
不織布2の通気抵抗は、1000Ns/m
3以上、2000Ns/m
3以上、3000Ns/m
3以上、5000Ns/m
3以上、8000Ns/m
3以上、又は10000Ns/m
3以上であってもよい。
【0034】
不織布2を構成するメルトブローン繊維52を与える樹脂としては、熱により溶融し、メルトブローン装置により溶融紡糸することが可能であれば特に制限されるものではない。このような樹脂としては、熱可塑性樹脂等を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、ポリエチレン1,4−シクロヘキサンジメタノール(PCT)、ポリ乳酸(PLA)、ポリアクリロニトリル、ポリアセテート、ポリアミド系樹脂及び当該技術で公知であるような他の熱可塑性樹脂から選択することができる。これらの樹脂のうちコスト面や加工のしやすさ等からは、PBTやPPを使用してもよい。さらに、軽量化の観点からは、より比重が軽いPPを使用してもよい。
【0035】
メルトブローン繊維52は、その断面形状、繊維径、長さ等は特に限定されない。メルトブローン繊維52は、約20μm未満、一般に約1〜10μmの繊維径を有することから、メルトブローン繊維52を使用した不織布ウェブ10は、一般的な繊維で構成される不織布からなる吸音材に比較して、面密度に対する相対的な繊維本数が増加することになる。これにより、不織布ウェブ10を介して侵入する音エネルギーを効率良く空気の摩擦エネルギーに変えることができるため、高い吸音特性が得られる。
【0036】
不織布2を構成するバインダー繊維54としては、その表面の少なくとも一部に、メルトブローン繊維52を与える樹脂よりも溶融温度(又は軟化点温度)よりも溶融温度(又は軟化点温度)が低い部分を有するものが使用できる。例えば、バインダー繊維54の該当部分の溶融温度(又は軟化点温度)がメルトブローン繊維52の溶融温度(又は軟化点温度)より約10℃以上低いものを使用できる。また、ある実施形態では、約20℃以上低くできる。このような部分を有することによりバインダーとしての機能を果たす。バインダー繊維54を与える樹脂としては、上記メルトブローン繊維52を与える樹脂として例示したものを使用することができ、例えば、バインダー繊維54の低融点部分として、低融点ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等が使用できる。
【0037】
バインダー繊維54は、全体が均一な融点を持つ材質である必要はなく、少なくとも表面に低溶融温度(又は低軟化点温度)の部分を備えるものであれば使用できる。例えば芯鞘構造の繊維で、鞘部分のみが低溶融温度(又は低軟化点温度)であるものも使用できる。このような芯鞘構造の繊維を使用すれば、メルトブローン繊維52と混合された際、バインダー繊維54の低溶融温度(又は低軟化点温度)の鞘部分のみが溶融し、芯部はメルトブローン繊維52とともに繊維として残存する。
【0038】
不織布2を構成するバインダー繊維54(短繊維)は、その断面形状、繊維径や繊維長は特に限定されないが、例えば、紡糸された繊維を裁断することで製造される繊維長約10mm〜100mmのステープルファイバーを使用できる。
【0039】
バインダー繊維54の繊度は、広く変更できるが、一般に1デシテックス(dtex)から100デシテックスまでの範囲内であり、または約2デシテックスから50デシテックスまでの範囲、または約2デシテックスから15デシテックスまでの範囲であってもよい。
【0040】
バインダー繊維54の繊維長は、広く変更できるが、約10mmから100mmまでの範囲が好ましく、さらに好ましくは約25mmから60mmまでの範囲であるが、150mmの長さの繊維であってもよい。また、バインダー繊維は、1から10までの範囲、または約3から5までの範囲のけん縮数毎cmを有するように、けん縮されていてもよい。
【0041】
バインダー繊維54の含有量は、メルトブローン繊維52及びバインダー繊維54の合計量100質量部に対して、30質量部以上85質量部以下であることが好ましく、50質量部以上80質量部以下であることが好ましい。バインダー繊維54の含有量を30質量部以上とすることにより、得られる不織布2の曲げ剛性をより向上させることができる。また、バインダー繊維54の含有量を85質量部以下とすることにより、800Hz〜1000Hzの周波数域における優れた吸音率を維持しつつ、得られる不織布を備える吸音材に適度な剛性を与えることができる。バインダー繊維54の含有量は、不織布2の製造において、バインダー繊維54の吹き付け量(すなわち、バインダー繊維54の配合量)を制御することにより調製することができる。
【0042】
不織布2は、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の構成材料を含んでもよい。例えば、メルトブローン繊維52を与える樹脂よりも溶融温度が等しいか高いステープルファイバーを含んでいてもよい。
【0043】
第1実施形態に係る不織布ウェブ10は、上記の構成を備えることにより、吸音率に優れたものとなっており、空気層と不織布ウェブ10とが連続して配置される場合においては特に優れた吸音率を発揮し得る。特に、800Hz〜1000Hzの周波数域における吸音に優れている。従来の吸音材(例えば、不織布ウェブを備える吸音材)は、高周波数領域における吸音に優れているものであっても、800Hz〜1000Hzの周波数域における吸音率は低くなってしまっていた。この周波数域の音は、ロードノイズピークに対応していることから、第1実施形態に係る不織布ウェブ10は、フェンダーライナー等の車両外装吸音部品にも適している。
【0044】
次に、第2実施形態に係る不織布ウェブについて説明する。第2実施形態に係る不織布ウェブは、上記の不織布を複数有する、複層構造の不織布ウェブである。
【0045】
図3は、第2実施形態に係る不織布ウェブの一例を示す模式断面図である。
図3に示す、第2実施形態に係る不織布ウェブ11は、第1の不織布4と、第2の不織布6との積層体8からなる二層構造の不織布ウェブである。第1の不織布4も、第2の不織布6も、メルトブローン繊維と、当該メルトブローン繊維と交絡するように配置され、交絡点の少なくとも一部において上記メルトブローン繊維と融着したバインダー繊維と、を有する不織布であるが、不織布を構成する繊維の組成、通気抵抗において両者は異なっていてもよい。但し、不織布ウェブ11全体(二層の不織布)として測定したときに、単位面積当たりの重量が400g/m
2以上1500g/m
2以下の範囲内であり、曲げ剛性が2.0N/50mm以上20.0N/50mm以下の範囲内である。
【0046】
第2実施形態に係る不織布ウェブ11における、第1の不織布4及び第2の不織布6はいずれも、第1実施形態に係る不織布ウェブ10で述べた不織布と同様の構造を有している。すなわち、メルトブローン繊維(長繊維)に対して様々な方向を向いたバインダー繊維(短繊維)が交絡され、メルトブローン繊維とバインダー繊維との交差点の少なくとも一部において両繊維が融着された形態の不織布である。
【0047】
第2実施形態に係る不織布ウェブ11において、第2の不織布6の単位面積当たりの重量は、第1の不織布4の単位面積当たりの重量よりも小さいものであってもよい。このような二層構成とすることによって、不織布ウェブ自体の強度と、吸音特性とをより高度に両立することが可能となる。
【0048】
第2実施形態に係る不織布ウェブ11は、第1の不織布4と第2の不織布6とを加熱及び加圧することで融着させてなるものでも、第1の不織布4と第2の不織布6とを接着剤等を用いて貼り合わせたものでもよい。
【0049】
第1の不織布4の単位面積当たりの重量は、400g/m
2以上1500g/m
2未満、600g/m
2以上1500g/m
2未満、又は800g/m
2以上1500g/m
2未満であってもよい。単位面積当たりの重量を400g/m
2以上とすることにより、得られる積層体8に適度な曲げ剛性を付与できることから好ましい。また、単位面積当たりの重量を1500g/m
2未満とすることにより、積層体8を使用した場合の中周波数領域(例えば、800Hz〜1000Hz)における吸音率を向上させることができることから好ましい。
【0050】
第2の不織布6の単位面積当たりの重量は、0g/m
2を超え400g/m
2以下、50g/m
2を超え400g/m
2以下、又は200g/m
2を超え400g/m
2以下、又は300g/m
2を超え400g/m
2以下であってもよい。
【0051】
第2実施形態に係る不織布ウェブ11において、ソリディティは、特に制限されるものではないが、不織布ウェブ11全体(二層の不織布)として測定したときに、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上又は40%以上であることが好ましい。また、不織布ウェブ11において、第1の不織布4のソリディティは、特に制限されるものではないが、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上又は40%以上であってもよい。また、第1の不織布4のソリディティを15%以上とすることで、二層構成の不織布ウェブの強度と吸音特性とをさらに高度に両立することが可能となる。
【0052】
第1及び第2の実施形態に係る不織布ウェブは、用途に応じた形状に加工して使用することもできる。この場合、プレス成型装置などの型内で加熱及び加圧され、所定形状に成型されることにより、所望の成形品が得られる。
【0053】
第1及び第2の実施形態に係る不織布ウェブはまた、車両外装材用の吸音部材に好適に使用することができ、例えば、自動車のフェンダーライナー、エンジンアンダーカバー、ボディアンダーカバー、用に好適に使用することができる。以下は、不織不2が車両外装材用の吸音部材として特に自動車用のフェンダーライナーについて使用される場合の態様について述べる。
【0054】
図4は、フェンダーライナーの搭載位置の一例を示す模式断面図である。
図4(a),(b)に示すように、フェンダーライナー(タイヤハウスに対応する形に成形された不織布ウェブ)200は、車体500の内部(フェンダー300の下方、タイヤ304の上方)に形成されたタイヤハウス302に対して離間して配置されるようにして上記タイヤハウス302に固定されている。
【0055】
タイヤハウス302に対して、フェンダーライナー200を取り付ける取付け手段(又は固定手段)は、特に制限されるものではなく、例えば、タイヤハウス側に挟持手段(例えば、クリップ)を設けてフェンダーライナー200をタイヤハウス302に固定してもよいし、フェンダーライナー200に孔を設けてタイヤハウスに嵌込で固定してもよい。
【0056】
フェンダーライナー200とタイヤハウス302とがなす空間210は、空気層、フェルト層等を含む吸音体からなる層であってもよい。吸音体からなる層を設ける場合には、これらの層がフェンダーライナーと一体となって、車両の騒音、車外騒音(走行中に発生する走行音等)などが車内に侵入するのを防ぐ吸音構造体として機能し得る。すなわち、本実施形態に係る吸音構造体は、フェンダーライナー等の吸音材層と、空気層、フェルト層等を含む吸音体からなる層を備える。吸音構造体としては、吸音体からなる層が空気層であるものが好ましい。
【0057】
吸音体からなる層の厚さL1は、5〜40mmとなってもよく、ある一態様では、5〜20mmとなってもよい。
【0058】
本実施形態は、別の側面からは、自動車のタイヤハウス302に対してフェンダーライナー200を取り付けるフェンダーライナーの取付け構造であって、上記フェンダーライナー200が上記タイヤハウス302に対して離間するように配置されて、取り付けられ、上記フェンダーライナー200は上述の不織布ウェブを含む、取付け構造を提供するものである。
【0059】
上記フェンダーライナーの取付け構造において、上記取付けの態様は、特に制限されるものではなく、例えば、タイヤハウス302側に設けられた挟持手段(例えば、クリップ)によりフェンダーライナー200をタイヤハウス302に固定するものであってもよく、フェンダーライナー200に孔を設けてタイヤハウス302に嵌込することで固定するものであってもよい。
【0060】
また、上記のフェンダーライナーの取付け構造において、上記フェンダーライナー200と上記タイヤハウス302とがなす空間210は、空気層、フェルト層等を含む吸音体からなる層であってもよい。
【0061】
吸音体からなる層を設ける場合には、これらの層がフェンダーライナーと一体となって、車両の騒音、車外騒音(走行中に発生する走行音等)などが車内に侵入するのを防ぐ吸音構造体として機能し得る。吸音構造体としては、空気層を設けたものであることが好ましい。
【0062】
本実施形態はまた、別の側面からは、車外騒音の車両内部への侵入防止方法とみることもできる。すなわち、車外騒音の車両内部への侵入防止方法であって、フェンダーライナーをタイヤハウスと離間して配置することを含み、上記フェンダーライナーは上記不織布ウェブを備える、方法を提供するものである。本実施形態に係る方法においては、フェンダーライナーをタイヤハウスから5〜40mmだけ離すようにして配置してもよく、5〜20mmだけ離すようにして配置してもよい。タイヤハウスの表面が平滑でない場合には、タイヤハウスとフェンダーライナーとの離間距離は、その平均値とみることができる。
【0063】
上記方法によれば、タイヤハウスの下部に、上述の不織布ウェブを備えるフェンダーライナーからなる吸音材層と、空気層等を含む吸音体からなる層とを備える吸音構造体が形成されることから、車外騒音の車両内部への侵入の防止性能に優れる。特に、800Hz〜1000Hzの周波数域において優れた吸音率を示し、ロードノイズの車両内部への侵入を効率的に防止することができる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0065】
(実施例1)
メルトブローン繊維として、ポリプロピレン(サンアロマー社製)を使用し、エクストルーダーによりメルトブローンダイから、繊維径2.9μmのメルトブローン繊維を、単位面積あたりの重量137g/m
2になるように紡糸した。メルトブローン繊維が紡糸された直後のウェブに合流するように、芯材としてポリエチレンテレフタレート、鞘材としてポリエチレンテレフタレート系コポリマーを有する芯鞘構造(ユニチカ社製4080、繊度:6.6dtex、繊維長:32mm)を有するバインダー繊維460g/m
2を混合させ総単位面積あたりの重量が597g/m
2であるウェブを作製した。このウェブを137℃、10MPaの条件下で60秒加熱圧縮し、厚み1.8mmの不織布(1)を得た。このようにして不織布(1)一層からなる不織布ウェブを得た。なお、メルトブローン繊維の比重は0.91g/cm
3であり、バインダー繊維の比重は1.38g/cm
3であった。なお、メルトブローン繊維の比重は0.91g/cm
3であり、バインダー繊維の比重は1.38g/cm
3であった。
【0066】
不織布(1)の単位面積当たりの重量、曲げ剛性、厚み、嵩密度、ソリディティ、及び通気抵抗を下記の方法に基づいて、測定した。結果を表1に示す。また、繊維径は以下の方法で測定できるものとする。
【0067】
[単位面積当たりの重量の測定]
不織布(1)の単位面積当たりの重量(g/m
2)は、不織布(1)を直径133mmの円状に切り出したものを3枚用意し、それぞれ重量を測定した。3枚の平均値から単位面積当たりの重量を求めた。
【0068】
[曲げ剛性の測定]
不織布(1)の曲げ剛性は、JIS K7074(1998)の3点曲げ試験(A法)に基づいて測定した。
【0069】
[厚み]
不織布(1)の厚み(mm)は、ASTM F778−88に準じた測定方法を用いて測定した。まず、不織布(1)を直径133mmの円状に切り出したものを3枚用意した。直径100mmの上側プレートと下側プレートの1組のプレートを備えた測定器を準備し、上側プレートに16gの重りを載せ、持ち上げ、下側プレートの中央に試料を置いた。上下のプレート間距離を1.0cmの高さに調整し、この高さから上側プレートを離し、自重で下側プレートの上に落下させた。この状態で3秒待ち、上下のプレート間距離を備え付けのマイクロメータで測定した。測定された値を不織布(1)の厚みとした。
【0070】
[ソリディティの測定]
不織布(1)のソリディティ(%)は、不織布(1)の嵩密度ρ1を、不織布(1)を構成する材料の密度ρ2で割ることによって求められる値を示し、百分率で示した。不織布(1)の嵩密度ρ1は、上述する方法で求めた不織布(1)の単位面積あたりの重量を上述する方法により測定した不織布(1)の厚みで割ることにより求めた。また、材料の密度ρ2は、原料供給メーカより提供されたメルトブローン繊維及びバインダー繊維の原材料の密度とメルトブローン繊維とバインダー繊維の配合割合から求めた。
【0071】
[通気抵抗の測定]
不織布(1)の通気抵抗(Ns/m
3)は、ASTM C 522に基づいて測定した。不織布(1)を5.25インチ(13.33mm)径の円形に切り出したものを用意した。円形に切り出さした不織布(1)を試料台に固定した。この不織布(1)の100cm
2の範囲に対して、垂直方向に圧縮空気を供給し、不織布面の垂直方向に生じる差圧を測定した。
【0072】
[垂直入射吸音率の測定]
不織布ウェブの吸音率は、ASTMのE 1050−98(“Impedance and Absorption Using A Tube, Two Microphones and A Digital Frequency Analysis System.”)に基づく2マイクロホン法で測定した。測定範囲は、125Hz〜1600Hzとした。2マイクロホン法は音響インピーダンス管内の音圧の入射と反射成分を2つのマイクロホンで測定し吸音率を求める方法である。具体的には、一方の端部が剛体面となっている音響インピーダンス管の内部に、剛体面から10mmだけ離間(10mmの空気層を設けて)して不織布ウェブを設置し、不織布ウェブの剛体面と面する側とは反対側の面から音圧を入射することで吸音率の測定を行った。
【0073】
【表1】
【0074】
[繊維径の測定]
メルトブローン繊維の繊維径(μm)は、以下の方法により測定した。
【0075】
メルトブローン繊維の繊維径(μm)は、不織布片のSEM顕微鏡写真の画像解析によって繊維の「平均幾何直径」を測定し、繊維径とした。より具体的には、不織布ウェブ試験片から1cm×1cmの試験片を切り出し、走査型電子顕微鏡の試料台に取り付けた。試験片を載せた試料台を走査顕微鏡中に挿入し、低真空モードで20kVの加速電圧、約15mmの作動距離、及び0°の試料チルトを用いてが画像観察を行った。500倍及び1000倍の倍率で撮影された反射電子画像を用いて幾何直径を測定した。各試料の電子顕微鏡写真において、任意に選択した5〜10本のメルトブローン繊維について、幾何直径を測定し、その平均値を「平均幾何直径」とした。
【0076】
(実施例2〜6及び比較例1〜4)
表1に記載の含有割合となるようにし、加熱圧縮の条件を適宜調整したほかは、実施例1と同様にして不織布を調製し、不織布ウェブを得た。得られた不織布ウェブの単位面積当たりの重量、曲げ剛性、厚み、嵩密度、ソリディティ、及び通気抵抗についても実施例1同様に測定した。不織布ウェブの垂直入射吸音率についても評価した。結果を表1に示す。
図5は、実施例1〜6及び比較例1〜4に係る不織布ウェブに対する吸音率測定の結果を示す図である。
【0077】
(実施例7)
実施例2で得られた不織布(2)と、比較例2で得られた不織布(B)とを接着剤を接着剤により接着することで、二層構成でなる不織布ウェブを得た。得られた不織布ウェブについて、実施例1と同様にして、二層からなる不織布ウェブの単位面積当たりの重量、曲げ剛性、厚み、嵩密度、ソリディティ、及び通気抵抗を評価し、二層構成からなる不織布ウェブの垂直入射吸音率を評価した。結果を表2に示す。なお、垂直入射吸音率の測定においては、第1の不織布が音圧の入射側となるように、不織布ウェブを設置して行った。
【0078】
【表2】
【0079】
(実施例8及び9)
第1の不織布、第2の不織布として、表2に記載の不織布を用いた他は実施例7と同様にして、二層構成でなる不織布ウェブを得た。得られた不織布ウェブについて、実施例一と同様にして、二層からなる不織布の単位面積当たりの重量、曲げ剛性、厚み、嵩密度、充填率、及び通気抵抗を評価し、二層構成からなる不織布ウェブの垂直入射吸音率を評価した。結果を表2に示す。
図6は、実施例7〜9に係る不織布ウェブに対する垂直入射吸音率測定の結果を示す図である。なお、垂直入射吸音率の測定においては、第1の不織布が音圧の入射側となるように、不織布ウェブを設置して行った。
【0080】
(参考例1〜5)
参考例として、ステープルファイバーとバインダーファイバーとを含む不織布からなるフェンダーライナー用の吸音材として流通している吸音材(1)〜(5)に対して、実施例1と同様の方法により、吸音材の単位面積当たりの重量、曲げ剛性、厚み、及び通気抵抗を評価し、吸音材の垂直入射吸音率を評価した。結果を表3に示す。なお、垂直入射吸音率の測定においては、第1の不織布が音圧の入射側となるように、不織布ウェブを設置して行った。
図7は、参考例1〜5に係る吸音材に対する垂直入射吸音率測定の結果を示す図である。
【0081】
【表3】
【0082】
表3中、PETはポリエチレンテレフタレートを示し、PPはポリプロピレンを示し、SBRはスチレン−ブタジエンゴムを示す。