(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362402
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】半導体量子ドット及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/06 20100101AFI20180712BHJP
H01L 21/203 20060101ALI20180712BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20180712BHJP
B82Y 20/00 20110101ALI20180712BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20180712BHJP
H01S 5/34 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
H01L33/06
H01L21/203 M
B82Y40/00
B82Y20/00
H01L29/06 601D
H01S5/34
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-96322(P2014-96322)
(22)【出願日】2014年5月7日
(65)【公開番号】特開2015-216144(P2015-216144A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2017年5月1日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、総務省、電波資源拡大のための研究開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】赤羽 浩一
(72)【発明者】
【氏名】山本 直克
(72)【発明者】
【氏名】川西 哲也
【審査官】
高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−187309(JP,A)
【文献】
特開平09−326506(JP,A)
【文献】
特開2007−311463(JP,A)
【文献】
特開平08−279647(JP,A)
【文献】
特開2010−199414(JP,A)
【文献】
特開平06−237039(JP,A)
【文献】
特開2009−260341(JP,A)
【文献】
特開2003−197900(JP,A)
【文献】
特開2008−103498(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0149982(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
H01S 5/00−5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(11)と,前記基板(11)上に設けられた埋め込み層(13)と,前記埋め込み層(13)に設けられた量子ドット(15)とを含む,半導体量子ドット(17)であって,
前記埋め込み層(13)は,第1結晶層(21)と第2結晶層(23)とを組み合わせた超格子を含み,前記超格子は前記基板(11)と格子整合がとられ,
前記基板(11)は,InP基板であり,
第1結晶層(21)は,InGaAs結晶層であり,
第2結晶層(23)は,InAlAs結晶層である,
半導体量子ドット。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体量子ドットであって,
前記基板(11)は,InP(311)基板であり,
第1結晶層(21)は,InxGa1−XAsで示される組成を有し,ここでxは,0.3以上0.7以下の数であり,
第2結晶層(23)は,InyAl1−yAsで示される組成を有し,ここでyは,0.3以上0.7以下の数である
半導体量子ドット。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体量子ドットであって,
前記埋め込み層(13)は,
歪補正のための歪補正層(25)をさらに含む,
半導体量子ドット。
【請求項4】
基板(11)上に埋め込み層(13)を形成する工程と,
前記埋め込み層(13)に量子ドット(15)を形成する工程と,
を含む,半導体量子ドットの製造方法であって,
前記埋め込み層(13)を形成する工程は,
第1結晶層(21)と第2結晶層(23)とを,前記基板(11)と格子整合がとられた超格子となるように形成する工程を含み,
前記基板(11)は,InP基板であり,
第1結晶層(21)は,InGaAs結晶層であり,
第2結晶層(23)は,InAlAs結晶層である,
半導体量子ドットの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体量子ドットの製造方法であって,
前記基板(11)は,InP(311)基板であり,
第1結晶層(21)は,InxGa1−XAsで示される組成を有し,ここでxは,0.3以上0.7以下の数であり,
第2結晶層(23)は,InyAl1−yAsで示される組成を有し,ここでyは,0.3以上0.7以下の数である,
半導体量子ドットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,半導体量子ドット及びその製造方法に関する。より詳しく説明すると,本発明は,量子ドットを埋め込む結晶を基板に格子整合させた超格子とすることにより,量子ドットの発光波長及び発光効率を制御できる半導体量子ドット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2010−199414号公報には,半導体量子ドット及び同形成方法が開示されている。この半導体量子ドットは,基板,結晶成長層,量子ドット,及び埋め込み層を含む。この文献には,具体的な半導体量子ドットの例として,GaAs基板上にGaAsバッファ層を形成し,GaAs埋め込み層にIsAs量子ドットを形成したものが開示されている。
【0003】
特許4972995号公報には,n型InP基板上に形成されたInAs/GaAs/InAs/AlAsの短周期超格子構造層を有する半導体量子ドットが開示されている。
【0004】
また,特許第4006729号公報には,GaInAsP格子整合層とGaInAsP歪層とを交互に積層したGaInAsP超格子歪層に超格子歪層を有する,自己形成量子ドットを用いた半導体発光素子が開示されている。
【0005】
K.Akahane, et al., journal of crystal Growth 245, pp.31−36 (2002)には,バリア層の組成を制御することで歪みを補償する歪補償法が開示されている。この文献では,InP(311)B基板が用いられ,量子ドットを埋め込むバリア層の組成を制御することで,高い品質のInAs量子ドットが提案されている。InP基板上に形成されたInAs量子ドットは,光通信波長帯である1.55μmの領域で発光する。
【0006】
K.Akahane, et al., Physica status solidi (a) Vol. 208, pp.425−428(2011)には,InP基板上のInAs量子ドットをInGaAlAs系材料で埋め込む量子ドットの製造方法が開示されている。InGaAlAsの格子定数は,In,Ga,及びAlの組成に応じて変化する。このため,量子ドットをInGaAlAs系材料で埋め込んだ際に,高品質な量子ドットを得るためには,InGaAlAs系材料の組成を制御する必要がある。また,InGaAsP系材料とInGaAlAsP系材料の混晶を埋め込み層に用いる場合も,最適な組成となるように混晶の組成比を制御することは容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−199414号公報
【特許文献2】特許4972995号公報
【特許文献3】特許第4006729号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】K.Akahane, et al., journal of crystal Growth 245, pp.31−36 (2002)
【非特許文献2】K.Akahane, et al., Physica status solidi (a) Vol. 208, pp.425−428(2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
InP基板上にInGaAlAs系の結晶成長を行う場合,InGaAlAs系結晶の格子定数をInPの格子定数に近いものとすることが望まれる。InGaAlAs系結晶の格子定数は,Inの組成比による影響が大きい。このため,Inの組成比を変化させつつ,InGaAlAs系結晶の格子定数を測定することで,InGaAlAs系結晶の格子定数をInPの格子定数に近いものとすることができる。一方,InGaAlAs系結晶におけるGa及びAlの組成比は,結晶の格子定数に大きな影響を与えないものの,InGaAlAs系結晶を含む埋め込み層のバンドギャップに影響を及ぼす。つまり,Ga及びAlの組成比は,量子ドットの発光波長に影響を及ぼす。このため,量子ドットが適切な波長で発光するためには,Ga及びAlの組成比も制御する必要がある。最適なGa及びAlの組成比は,InGaAlAs系結晶の格子定数を制御するだけでは達成できないため,InGaAlAs系結晶を最適化することは容易ではない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は,基本的には,量子ドットを埋め込む埋め込み層が,第1結晶層及び第2結晶層を用いた超格子であって基板と格子整合したものを含むことで,量子ドットの発光波長及び発光効率を適切に制御できるという知見に基づく。基板の例は,InP基板であり,第1結晶層及び第2結晶層の例は,InGaAs結晶層及びInAlAs結晶層である。
【0011】
本発明は,半導体量子ドットに関する。この半導体量子ドットは,基板11と,基板11上に設けられた埋め込み層13と,埋め込み層13に設けられた量子ドット15とを含む。そして,埋め込み層13は,第1結晶層21と第2結晶層23とを組み合わせた超格子を含み,この超格子は,基板11と格子整合がとられたものである。
【0012】
本発明の半導体量子ドットにおける好ましい例は,基板11がInP基板のものである。そして,第1結晶層21がInGaAs結晶層であり,第2結晶層23が,InAlAs結晶層のものである。なお,好ましいとされる例に,本発明が限定されることは無い。以下同様である。
【0013】
本発明の半導体量子ドットにおける好ましい例は,基板11が,InP(311)基板又はInP(311)B基板である。また,第1結晶層21は,In
xGa
1−XAsで示される組成を有し,ここでxは,0.3以上0.7以下の数である。そして,第2結晶層23は,In
yAl
1−yAsで示される組成を有し,ここでyは,0.3以上0.7以下の数である。
【0014】
本発明の半導体量子ドットの埋め込み層13は,歪補正のための歪補正層25をさらに含んでもよい。
【0015】
本発明は,半導体量子ドットの製造方法をも提供する。この方法は,基板11上に埋め込み層13を形成する。そして,埋め込み層13に量子ドット15を形成する。埋め込み層13を形成する際に,第1結晶層21と第2結晶層23とを,基板11と格子整合がとられた超格子となるように形成する。
【0016】
この方法の例は,第1結晶層21又は第2結晶層23の結晶周期又は膜厚を調整することで,InAs量子ドット15から出射される光の波長を制御するものが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば,量子ドットの発光波長及び発光効率を適切に制御できる半導体量子ドットを提供できる。具体的に説明すると,本発明によれば,第1結晶層及び第2結晶層のXRDスペクトルを測定するだけで,半導体量子ドットを制御できるため,望ましい発光波長や発光効率を有する半導体量子ドットを容易に作製できることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は,半導体量子ドットの基本構成例を示す概念図である。
【
図2】
図2は,半導体量子ドットの基本構成例を示す概念図である。
【
図3】
図3は,デジタル埋め込み法により形成された例の模式図を示す。
【
図4】
図4は,AFM像を示す図面に替わる写真である。
図4(a)は,サンプル1のAFM像を示し,
図4(b)は対照サンプルのAFM像を示す。
【
図5】
図5は,STEMによって測定したサンプル1の断面画像を示す。
【
図6】
図6は,室温で測定したPLスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
【0020】
本発明は,半導体量子ドットに関する。
図1は,半導体量子ドットの基本構成例を示す概念図である。
図1に示されるように,この半導体量子ドットは,基板11と,基板11上に設けられた埋め込み層13と,埋め込み層13に設けられた量子ドット15とを含む。そして,埋め込み層13は,第1結晶層21と第2結晶層23とを組み合わせた超格子を含み,この超格子は,基板11と格子整合がとられたものである。
【0021】
半導体量子ドットは,電子などのキャリアを,一辺が数nm程度の半導体の立体構造に閉じ込めたものである。半導体量子ドットは,公知である。本明細書において,半導体量子ドットの基本構成を説明している。しかし,本明細書に記載されていない公知の構成を適宜採用しても構わない。
【0022】
基板11の例は,InP基板,GaAs基板,及びGaSb基板である。基板は,これらに限定されるものではなく,例えば,InGaAs基板といった混晶基板を含め,これら以外の基板を用いてもよい。以下では,InP基板を例に説明する。InP基板は,インジウム(In)及びリン(P)を含む基板である。リン化インジウム(InP)基板の例は,InP(311)基板,InP(311)B基板,InP(100)基板,及びInP(001)基板である。実験の結果,これらの中では,InP(311)基板,InP(311)B基板が最適であることがわかった。なお,InP基板の別の例は,これらの基板から所定方向(例えば[110]方向や,[1−10]方向へオフ角0.1°〜10°で傾斜させた主面を有するInP基板であり,より具体的な例,InP(001)面から[110]方向へオフ角1°,2°,3°,5°で傾斜させた主面を有するInP基板である。同様の原理を用いて,InP基板に換えて,GaAs基板又はGaSb基板を用いることもできる。
【0023】
埋め込み層13は,半導体量子ドットを埋め込むための層である。この埋め込み層13は,InP基板11上に設けられる。埋め込み層13とInP層11との間に,例えばバッファ層が設けられてもよい。また,量子ドットを覆うバリア層が形成されてもよい。これらバッファ層やバリア層は,基板又は埋め込み層と同様の組成を有してもよい。
【0024】
埋め込み層13は,第1結晶層21と第2結晶層23とを組み合わせた超格子を含み,この超格子は,InP基板11と格子整合がとられたものである。格子整合がとられているとは,歪みが全く発生しない場合のみならず,実質的に歪みが生じないか,歪みが大きな問題とならないものも含む。InP基板と格子整合された層自体は,公知である。例えば,特許3868353号公報には,InP基板と格子整合したアンドープIn
0.53(Al
0.5Ga
0.5)
0.47As層が開示されている。特許4972995号公報には,n型InP基板上に形成されたInAs/GaAs/InAs/AlAsの短周期超格子構造層を有する半導体量子ドットが開示されている。また,特許第4006729号公報には,GaInAsP格子整合層とGaInAsP歪層とを交互に積層したGaInAsP超格子歪層に超格子歪層を有する,自己形成量子ドットを用いた半導体発光素子が開示されている。半導体量子ドットにおける超格子とは,半導体量子ドットが,たとえば格子状など周期的に配置され,ドット間を電子が移動できるようにされた系を意味する。
【0025】
本発明の半導体量子ドットにおける好ましい例は,基板がInP基板であり,第1結晶層21がInGaAs結晶層であり,第2結晶層23が,InAlAs結晶層のものである。この場合の量子ドットの例は,InAsである。
【0026】
本発明の半導体量子ドットにおける好ましい例は,InP基板11が,InP(311)基板である。また,第1結晶層21は,In
xGa
1−XAsで示される組成を有し,ここでxは,0.3以上0.7以下の数である。xの好ましい例は,0.4以上0.6以下である。そして,第2結晶層23は,In
yAl
1−yAsで示される組成を有し,ここでyは,0.3以上0.7以下の数である。yの好ましい例は,0.4以上0.6以下である。
【0027】
量子ドットの例は,InAsである。量子ドットの他の例は,InSb量子ドット,GaSb量子ドット,InGaAs量子ドット,及びGaAsSb量子ドットである。
【0028】
基板がInP基板以外の場合の基板,量子ドット,及び埋め込み層の組み合わせの例は,以下のとおりである。
例1
基板:GaAs
量子ドット:In
xGa
1−xAs(x=0.1以上1以下)
埋め込み層:AlAs/GaAs,Al
xGa
1−xAs/GaAs(0<x≦1),Al
xGa
1−xAs/Al
yGa
1−yAs(x>y),又はInGaP/InAlP
【0029】
例2
基板:GaAs
量子ドット:GaAs
1−xSb
x(x=0.1以上1以下)
埋め込み層:AlAs/GaAs,Al
xGa
1−xAs/GaAs(x>0),Al
xGa
1−xAs/Al
yGa
1−yAs(x>y),又はInGaP/InAlP
【0030】
図2は,埋め込み層が歪補正層を有する半導体量子ドットの基本構成例を示す概念図である。
図2に示されるように,埋め込み層13は,歪補正のための歪補正層25をさらに含んでもよい。歪補正層25は,単層であってもよいし,複数種類の結晶層から構成されるものであってもよい。歪補正層の例は,GaAs層及びAlAs層である。
【0031】
本発明は,半導体量子ドットの製造方法をも提供する。半導体量子ドットを製造する方法は,公知である。本発明は,例えば実施例として開示された製造例に限定されるものではない。半導体量子ドットは,例えば,特開2010−199414号公報に開示されたMBE装置を用いて製造できる。以下,MBEを用いて半導体量子ドットを形成する例を説明する。
【0032】
ガスソースMBEを用いて,基板11上にバッファ層31を成長させる。このバッファ層の例は,例えば,Siが1×10
16以上1×10
18cm
−3程度ドーピングされたInPバッファ層である。バッファ層を成長させる際は,チャンバ内の温度を500℃以上700℃以下とすればよい。バッファ層は公知であるから,公知のバッファ層と同様のものを同様にして形成すればよい。
【0033】
次に,たとえばPH
3雰囲気で基板温度を450℃以上550℃程度に下げる。その状態で,埋め込み層を形成する。埋め込み層は,第1結晶層21と第2結晶層23を含む構造を基本単位とし,その基本単位を繰り返し含む。基本単位には,歪み補正層が更に含まれていてもよい。この基本単位は,第1結晶層21と第2結晶層23とを,第1結晶層
1ML第2結晶層
1MLのように含んでもよいし,第1結晶層
1ML第2結晶層
2MLのように含んでもよいし,第1結晶層
2ML第2結晶層
1MLのように含んでもよい。MLは,分子層を意味する。埋め込み層13を形成する際に,第1結晶層21と第2結晶層23とを,基板11と格子整合がとられた超格子となるように形成する。格子整合をとるためには,例えば,第1結晶層21の格子定数と基板11(又はバッファ層31)の格子定数とが同程度のなるように調整すればよい。このようにして,基板11上に埋め込み層13を形成する。第1結晶層21又は第2結晶層23の結晶周期又は膜厚を調整することで,量子ドット15から出射される光の波長を制御することができる。
【0034】
次に,基板温度を維持しつつ,量子ドットを構成する半導体を,例えば,2分子層形成する。この量子ドットは,規則的に配置されることが好ましい。量子ドットは,通常起伏を有している。このため,量子ドットが含まれる部位を平坦にするため,適宜,バリア層33を形成する。バリア層33は,たとえば,基板温度を維持しつつ,埋め込み層を構成する組成の層を形成することで作製できる。このようにして,埋め込み層13に量子ドット15を形成する。バリア層は公知であるから,公知のバリア層と同様のものを同様にして形成すればよい。
【0035】
上記のようにして形成したバッファ層,埋め込み層,半導体量子ドット,及びバリア層を繰り返し形成する。すると,多層構造を有する半導体量子ドットを形成できる。
【実施例1】
【0036】
実施例
全てのサンプルを,公知の固体ソース分子線エピタキシー法(MBE)によって成長させた。InP(311)B基板上に6層の積層量子ドット構造を作製した(K.Akahane, et al., journal of crystal Growth 245, pp.31−36 (2002)., K.Akahane, et al., Physica status solidi (a) Vol. 208, pp.425−428(2011).)。MBEによってInP(001)基板上にInAsを成長させると量子ダッシュ構造が形成されるため(K.Akahane, et al.,Physica E, 40, 1916 (2008).),この基板を用いた。
【0037】
図3は,デジタル埋め込み法により形成された例の模式図を示す。原子間力顕微鏡(AFM)による測定するために,一番上のInAs量子ドット層が,埋め込まれていない。InGaAsとInAlAsの格子定数は,InP基板に整合される。As溶剤下でMBEチャンバ内のInP基板をサーマルクリーニングした後,InGaAs\InAlAs超格子を成長させた。サンプル名,厚さ,及びそれぞれの超格子の周期を表1に示す。超格子の総厚を100nmとした。この時,5MLのInAs量子ドットが成長した。In
0.52Ga
0.24Al
0.24Asの埋め込み層を有する対照サンプルも成長させた。成長後の表面の形態を,通常の大気条件下で,AFMを用いて観察した。試料の断面は,走査型透過電子顕微鏡(STEM)を用いて観察した。また,フォトルミネッセンス(PL)測定は、YVO
4レーザの532nmの光線と,電気的に冷却されたPbS検出器を用いて室温で行った。
【0038】
【表1】
【0039】
結果および議論
図4は,AFM像を示す図面に替わる写真である。
図4(a)は,サンプル1のAFM像を示し,
図4(b)は対照サンプルのAFM像を示す。InGaAlAsとInAlAs上の表面拡散の差に起因して,すべてのサンプルにおいて、超格子上に成長した量子ドットは,対照サンプルのものと比べてわずかにサイズが小さく,より高密度であった。したがって,ほぼ同じサイズの量子ドットを,バルクのInGaAlAs上およびInGaAs/InAlAs超格子上の両者に成長させることができるといえる。
【0040】
図5は,STEMによって測定したサンプル1の断面画像を示す。この図から,InAs量子ドットがInGaAs/InAlAs超格子に正常に埋め込まれていることが確認できる。上側の超格子は,InAs量子ドットの周囲でも大きく乱れていない。超格子の成長が,量子ドットの周囲で促進されたと考えられる。超格子の構造は,ほぼ完璧であったため,超格子のミニバンドが量子ドットのためのバリアとして働くと考えられる。
【0041】
図6は,室温で測定したPLスペクトルを示す。縦軸は強度(任意単位)であり,横軸は波長である。全てのサンプルは,1600nmの波長領域で強いPL発光を示した。対照サンプルは,以前の結果とよく一致する1688nmのピーク波長を示した(K.Akahane, et al.,J. Cryst. Growth, 378, 450 (2013).)。デジタル埋め込みサンプルのピーク波長は,より小さいサイズの量子ドットに起因している対照サンプルのピーク波長よりも短かった。また,InGaAsとInAlAsの厚さが増加するに伴って,これらのサンプルのピーク波長が、短い波長側へシフトした。PLピークのブルーシフトの原因は,バリア材料の有効バンドギャップを増加させるSL厚さが増加したことにより,ミニバンド幅が収縮したことによると考えられる。この技術を使用することで,簡単な方法で正確に量子ドットの発光波長を制御することができた。
【0042】
InP(311)B基板上にInAs積層構造の成長させるためにデジタル埋め込み法を発展させた。自己形成InAs量子ドットは、異なる厚さのInGaAs/InAlAs超格子に埋め込まれた。InGaAsとInAlAsの厚さの増加に伴って,PL発光波長は短い波長領域にシフトした。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は半導体量子ドットに関する。本発明の量子ドットは,例えば,ダイオード,半導体レーザ及び半導体光増幅器といった光学機器に用いることができる。よって,本発明は,例えば,光学機器産業において利用されうる。
【符号の説明】
【0044】
11...基板 13...埋め込み層
15...量子ドット 17...半導体量子ドット
21...第1結晶層 23...第2結晶層 25...歪補正層
31...バッファ層 33...バリア層