(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
船釣りでは、釣竿は、一般に釣竿保持装置を介して船縁に支持される(たとえば特許文献1及び特許文献2参照)。釣竿保持装置は、船縁に固定される本体と、この本体の上部に設けられたヘッド部とを有する。
【0003】
このヘッド部は、釣竿が載置されるシート部材及び当該シート部材と協働して釣竿の所定部(通常はバット部)をクランプする釣竿保持器を備えている。この釣竿保持器は、シート部材と直接に(特許文献1参照)あるいは締付ナットを介して(特許文献2参照)螺合されており、シート部材に対して接離することができるようになっている。そして、釣竿保持器がシート部材に近接することによって釣竿が両者間に挟み込まれ、当該釣竿がヘッド部に固定される。なお、上記釣竿保持器がシート部材から離反することによって、釣竿がヘッド部から外される。
【0004】
ヘッド部は、上記釣竿を挟持した状態で上記本体に対して着脱機構を介して取り付けられる。ヘッド部が本体にロックされることにより、上記釣竿は船縁に固定され、また、上記ロックが解除されてヘッド部が本体から外されることにより、釣人は、釣竿を自由に操作することができる。
【0005】
図10は、従来の釣竿保持装置のヘッド部の構造を示す図である。
【0006】
前述のようにヘッド部は釣竿に装着されるものであるが、この装着作業は、釣人にとって容易且つ迅速に行える必要がある。
【0007】
同図(a)は、特許文献1が開示する釣竿保持装置に採用されたヘッド部の構造を示している。このヘッド部は、釣竿保持器11と、シート部12とを備えている。シート部12は、支持部材13とスタッド14とを備えている。釣竿保持器11は、リング部15及び固定軸部16を有し、固定軸部16が軸方向に沿って二分割されている。釣竿17がリング部15内に挿通された後に、分割されている固定軸部16が向かい合わされる。この状態で固定軸部16が支持部材13に挿通され、当該支持部材13を挟んでスタッド14が固定軸部16に螺合される。これにより、釣竿17が釣竿保持器11に保持された状態で当該ヘッド部に装着される。
【0008】
同図(b)は、特許文献2が開示する釣竿保持装置に採用されたヘッド部の構造を示している。このヘッド部は、ソケット18と、釣竿保持器19と、装着リング20とを備えている。装着リング20の内周面にねじが形成されており、釣竿保持器19の周面にも装着リング20が螺合するねじが形成されている。装着リング20はソケット18の外側に嵌め込まれ、釣竿がソケット18のシート面21上に載置される。釣竿保持器19が上記シート面21上に載置された釣竿を上方から覆うように配置された後、装着リング20が操作されることにより、当該装着リング20と釣竿保持器19とが螺合し、釣竿は、上記シート面21に押し付けられて固定される。これにより、釣竿が釣竿保持器11に保持された状態で当該ヘッド部に装着される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の釣竿保持装置に採用されているヘッド部は、釣竿17を着脱する作業が繁雑である。すなわち、同図(a)が示すヘッド部では、釣人は、スタッド14を操作して固定軸部16から外さない限り、釣竿保持器11を釣竿17から外すことができない。他方、同図(b)が示すヘッド部では、釣人は、装着リング20を操作して、当該装着リング20と釣竿保持器19との螺合を外さない限り、釣竿保持器19を釣竿から外すことができない。そのため、ヘッド部を釣竿に着脱する作業の簡便性に欠けるという問題があった。
【0011】
本発明は、かかる背景のもとになされたものであって、その目的は、釣竿の装着作業が容易であり、実釣において釣竿保持装置のセットアップを迅速に行える釣竿保持器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1) 本発明に係る釣竿保持器は、
所定の被固定部に固定され、釣竿が載置される載置部を有するベース、上記釣竿のバット部に装着されるヘッド、及び上記ベースとヘッドとを係合解除可能な状態で係合させる係合機構を備え、上記釣竿を
上記ベースに対して着脱可能に固定する釣竿保持装置に適用され、当該釣竿に装着される。この釣竿保持器は、上記釣竿のバット部を周方向に囲繞する弾性変形可能な囲繞帯と、当該囲繞帯の両端部間に設けられ、当該両端部同士が
互いに近接されることにより上記囲繞帯が上記バット部を所定の緊迫力で締め付けた状態で上記両端部同士を連結し、あるいは連結された上記両端部同士の当該連結を解除する連結機構と、
上記囲繞帯に突設された係合軸とを備え
、上記囲繞帯は、平板状の底面部及び当該底面部の一端に連続して環状に湾曲した湾曲部を有し、上記係合軸は、上記底面部に設けられている。
【0013】
この構成によれば、囲繞帯が弾性変形され、その両端部同士が互いに離反されることにより、釣竿のバット部が容易に当該囲繞帯の内側に配置され、当該バット部は、囲繞帯により周囲を覆われる。この囲繞帯の両端部が引っ張られて互いに近接されると、連結機構により囲繞帯の両端部同士が連結される。これにより、上記バット部は、当該囲繞帯によって所定の緊迫力で締め付けられた状態となる。すなわち、当該囲繞帯は、上記緊迫力によって上記バット部に固定される。また、当該バット部に囲繞帯が固定されている状態で、当該囲繞帯の両端部同士が引っ張られると、当該両端部同士の連結が解除される。
【0014】
さらに、上記係合軸が上記連結機構が設けられた部位以外の部位に突設されているから、当該係合軸は、専ら上記ベースに対して係合するための部材としてのみ機能することができる。換言すれば、仮に、従来のように係合軸が二分割等されており、当該係合軸が釣竿をクランプする機能をも兼ねているならば、係合軸がベースに対して着脱される際に、囲繞帯による釣竿のクランプも同時に解除されなければならない。すなわち、係合軸のベースに対する着脱作業が繁雑になる。これに対して本発明では、上記連結機構のみによって釣竿のクランプが維持され又は解除されるので、係合軸は、ベースに対して係合するための部材としてのみ機能することができる。
【0015】
(2) 上記連結機構は、
上記底面部に突設された第1鈎爪と、上記
湾曲部の端部に上記第1鈎爪と対向するように突設された第2鈎爪とを有する。上記第1鈎爪及び第2鈎爪は、互いに噛み合うことにより当該囲繞帯が上記バット部を締め付けた状態を維持するように屈曲形成されている。
【0016】
この構成によれば、上記連結機構が第1鈎爪及び第2鈎爪を有し、これらが互いに対向している。したがって、上記囲繞帯が上記バット部を囲繞した状態で引っ張られるだけで、当該囲繞帯の両端部が互いに近接し、上記第1鈎爪及び第2鈎爪が噛み合う。すなわち、釣竿保持器を釣竿に取り付ける作業がきわめて簡単である。
【0017】
(3) 上記第1鈎爪及び第2鈎爪のうち少なくともいずれか一方は、上記囲繞帯の幅方向に延びる凸条又は凹条により形成されているのが好ましい。
【0018】
この構成によれば、上記第1鈎爪及び第2鈎爪が確実に噛み合い、釣竿保持器が確実に釣竿に取り付けられる。
【0019】
(4) 上記係合軸は、中実丸棒から構成されるのが好ましい。
【0020】
この構成によれば、係合軸の構造がきわめて簡単である。したがって、釣竿保持器の構造が簡略化され、製造コストも低減される。
【0021】
(5) 上記囲繞帯の両端部のうち少なくともいずれか一方に、指掛片が設けられているのが好ましい。
【0022】
この構成では、釣人は、上記指掛片に指を掛けて簡単に上記連結機構を操作することができる。すなわち、釣人は、上記第1鈎爪及び第2鈎爪を簡単に噛み合わせることができ、また、噛み合わされた第1鈎爪及び第2鈎爪を簡単に離すことができる。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、釣竿に対して釣竿保持器を着脱する機能は、連結機構が単独で発揮し、係合軸は、専ら当該釣竿保持器をベースに対して固定する機能を発揮する。したがって、釣竿は、釣竿保持器に装着されたままで、当該釣竿保持器がベースに着脱される。その結果、釣竿保持装置が使用される際に釣竿の装着作業が容易となり、釣人は、実釣において釣竿保持装置のセットアップを迅速に行える。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の好ましい実施形態が、適宜図面が参照されながら説明される。なお、本実施の形態は、本発明に係る釣竿保持装置の一態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様が変更されてもよいことは言うまでもない。
【0026】
図1及び
図2は、本発明の一実施形態に係る釣竿保持器が採用された釣竿保持装置の外観斜視図である。
【0028】
この釣竿保持装置30は、主として船釣りにおいて釣人が釣竿34を船縁等に固定する際に使用される。釣竿保持装置30は、船縁等に固定されるベース32と、このベース32に対して着脱されるヘッド33とを有する。後述されるように、このヘッド33が釣竿34に取り付けられ、釣竿34は、ヘッド33と共にベース32に着脱される(
図2参照)。この釣竿保持装置30では、上記ヘッド33にスタッド35が設けられると共に、上記ベース32にソケット36が設けられている。このスタッド35が上方からソケット36に挿入されることにより、簡単に釣竿34がベース32に対して位置決めされる。また、スタッド35がソケット36に挿入された状態で、ヘッド33に設けられた係合爪37がソケット36に形成された係合溝38に係合し、釣竿34がベース32に対して位置決めされる。
【0029】
本実施形態の特徴とするところは、この釣竿保持装置30の構成要素として固定リング71(特許請求の範囲に記載された「釣竿保持器」に相当)が採用されている点である。この固定リング71は、ヘッド33と共に釣竿34がベース32に着脱される際に、釣竿34に装着される部品である。
【0030】
以下、釣竿保持装置30の構造が説明されつつ固定リング71について詳述される。
【0032】
図1及び
図2が示すように、ベース32は、金属又は樹脂からなり、上部材40及び下部材41と、下部材41に設けられたねじ込み棒42とを有する。下部材41は、本実施形態では金属(典型的にはステンレス鋼)からなり、略C字状に形成されている。下部材41は、上部材40を支持している。上部材40は、本実施形態では樹脂からなり、固定ねじ31により下部材41に締結されている。ねじ込み棒42は、当接板39を備えており、ねじ込み棒42が操作されることにより、当接板39と下部材41の上辺部47との間に上記船縁が挟み込まれるようになっている。つまり、ベース32が上記船縁に固定される。
【0033】
上部材40は、載置アーム45を備えている。載置アーム45は、典型的には樹脂から構成される。載置アーム45は、上部材40の前端部にピン48を介して連結されており、当該ピン48を中心にして回動可能である。本実施形態では、載置アーム45は、前側上方に反り上がるように湾曲しており、釣竿34のバット部49の前側を下方から支える。また、本実施形態では、載置アーム45の下側に図示されていない調整ボルトがねじ込まれている。この調整ボルトが操作されることにより、載置アーム45の起立起立角度が変化し、釣竿34の支持角度が変更される。
【0034】
図3は、ベース32の拡大斜視図である。
図4は、ソケット36の拡大斜視図である。
【0035】
上部材40の後端部にソケット36が設けられている。このソケット36は、典型的には樹脂により構成される。ソケット36は、連結部51及び筒部52を備えており、これらは一体的に形成されている。
【0036】
図4が示すように、連結部51は、天板53と脚54とを有する。天板53は、本実施形態では矩形の板部材であって所定の肉厚を有する。もっとも、天板53の形状は、矩形のほか他の形状であってもよい。天板53の下面に一対の脚54が突設されている。各脚54は対向配置されており、脚54の十分な剛性を確保するために補強板55が設けられている。この補強板55は、同図が示すように対向する脚54間に掛け渡されている。対向する脚54のそれぞれの中央部に貫通孔56が設けられており、各貫通孔56の中心軸線は一致している。
【0037】
筒部52は円筒状に形成されており、内部に係合凹部46が形成されている。この係合凹部46は、円形の真直孔からなる。係合凹部46は、筒部52の上面58に開口しており、当該上面58から下方に真っ直ぐに延びている。筒部52の内径(すなわち、係合凹部46の内径)は所定寸法に設定されており、後に詳述されるスタッド13の外径に対応している。
【0038】
本実施形態では、筒部52の上部の外形形状は、円錐台である。したがって、筒部52の外径は、上方に向かって漸次縮径されており、筒部52の外周面57は傾斜している。また、筒部52の上面58は、内側に向かって下方に傾斜している。すなわち、筒部52の上面58に面取加工が施されている。上記筒部52の外周面57が傾斜していること及び上記上面58が傾斜していることによる作用効果は後述される。
【0039】
さらに、筒部52の下部の外径は縮径されている。これにより、筒部52の下部に上記係合溝38が形成されている。この係合溝38は、筒部52の下部の外周面に露出しており、釣人によって容易に目視される。本実施形態では、係合溝38は、筒部52の周方向に沿って設けられており、筒部52を周回している。この係合溝38が形成されることにより、筒部52の中間部に段差59が形成されている。
【0040】
図3が示すように、ソケット36は、固定軸60を介して上部材40に連結されている。上部材60の後端部62に上下方向に貫通する取付孔61が形成されている。そして、この取付孔61に連通するように、上記後端部62に矢印64の方向に沿って貫通孔63が形成されている。
【0041】
ソケット36の脚54が取付孔61に挿入される。この取付孔61は矩形状を呈しており、取付孔61の内壁面形状は、脚54の外形形状に対応している。したがって、脚54は、がたつくことなく取付孔61に嵌め込まれる。このとき、脚54に設けられた貫通孔56の中心軸と、上部材60に設けられた貫通孔63の中心軸とが一致する。そして、固定軸60が貫通孔63及び貫通孔56に挿通されることにより、ソケット36は、固定軸60に支持された状態で、上部材40に対して位置決めされる。なお、固定軸60はつまみ65を備えており、釣人は、このつまみ65を操作して簡単に固定軸60を上部材40に挿入することができる。もっとも、このつまみ65は省略されてもよい。
【0043】
図1及び
図2が示すように、ヘッド33は、釣竿34のバット部49の後側(竿尻側)に装着されている。
【0044】
図5は、ヘッド33の分解斜視図である。なお、同図では、ソケット36に対するヘッド33の位置関係が明確となるように、ソケット36も記載されている。
【0045】
ヘッド33は、釣竿34に取り付けられる固定リング71と、この固定リング71にねじ込まれる上記スタッド35と、これらの間に配置される固定フレーム73とを有する。
【0047】
図6は、固定リング71の拡大斜視図である。
【0048】
固定リング71は、リング部74と、固定軸部75(特許請求の範囲に記載された「係合軸」に相当)とを有する。固定軸部75は、リング部74の底面部76に設けられている。固定軸部75は、中実丸棒からなる円柱状を呈し、その周面に雄ねじ69が形成されている。これらは典型的には樹脂(具体的には、ポリアミド(PA)やポリオキシメチレン(POM)等)により一体的に形成される。釣竿34のバット部49は、リング部74の内側に配置される(
図1及び
図2参照)。
【0049】
リング部74は、囲繞帯72と、囲繞帯72の両端部間に設けられた鈎爪78(特許請求の範囲に記載された「第1鈎爪」に相当)及び鈎爪79(特許請求の範囲に記載された「第2鈎爪」に相当)とを有する。この囲繞帯72は、上記樹脂から構成されるので、弾性を備える。本実施形態では、囲繞帯72は、帯状の部材が湾曲されることにより構成されている。囲繞帯72の幅寸法Bは、特に限定されるものではないが、15mm〜30mmに設定され得る。また、囲繞帯72の肉厚寸法は、1mm〜3mmに設定され得る。囲繞帯72は、上記底面部76と、湾曲部77とを備えている。湾曲部77は、底面部76の一端に連続し、略半円形を成すように上方に湾曲している。
【0050】
底面部76の他端部(囲繞帯72の一端部)及び湾曲部77の端部(囲繞帯72の他端部)に、それぞれ上記鈎爪78、79が一体的に形成されている。これら鈎爪78、79が囲繞帯72の両端部を連結する連結機構を構成している。鈎爪78は、底面部76の他端部から上方に立ち上がり、屈曲して
下方に延びている。一方、鈎爪79は、湾曲部77の端部から屈曲して
上方へ延びている。
【0051】
釣人は、リング部74を弾性変形させて開き、当該リング部74内に釣竿34を配置する。すなわち、釣竿34のバット部49の周面が囲繞帯72によって囲繞される。この状態で、釣人が上記湾曲部77の端部を下方に引き下げると、囲繞帯72が引っ張られて弾性的に当該引張方向に伸び、鈎爪79が鈎爪78と噛み合う。これにより、囲繞帯72によって釣竿34が締め付けられて、確実に固定リング71が釣竿34に固定される。
【0052】
同図が示すように、鈎爪78及び鈎爪79は、囲繞帯72の幅方向に延びている。すなわち、鈎爪78は、囲繞帯72の一端部に山形の凸条が形成されることにより構成され、鈎爪79は、囲繞帯72の他端部にV字状の凹条が形成されることにより構成されている。もっとも、鈎爪78、79は、いずれも凸条又は凹条により構成されていてもよい。さらに、本実施形態では、鈎爪78、79は、共に囲繞帯72の幅方向の全域に亘って延びているが、幅方向全域に形成されていなくてもよい。
【0053】
囲繞帯72の他端部、すなわち鈎爪79の近傍に指掛片80が設けられている。この指掛片80は、囲繞帯72と一体的に形成されている。
図5が示すように、指掛片80は、断面形状が矩形の凸条からなり、囲繞帯72の幅方向に延びている。この指掛片80に釣人が指を掛けることにより、囲繞帯72の他端部を下方に引っ張りやすくなる。もっとも、この指掛片80は省略されても良いし、囲繞帯72の一端部、すなわち鈎爪78の近傍に設けられていても良い。
【0055】
図7は、固定フレーム73の拡大斜視図である。
【0056】
固定フレーム73は、固定リング71の下方に配置されている(
図5参照)。固定フレーム73は、略円盤状に形成されたシート板81と、一対の安定柱82、83と、操作レバー84とを備えている。一対の安定柱82、83は、シート部81と一体的に形成され、互いに対向して配置されている。操作レバー84は、上記係合爪37(
図1及び
図2参照)を備えており、安定柱83に揺動可能に支持されている。
【0057】
シート板81及び安定柱82、83は、金属又は樹脂から構成されている。シート板81は、所定の肉厚(5mm〜15mm)の円盤状部材である。シート板81の上面85に上下方向に貫通する貫通孔86が設けられている。この貫通孔86の内径は、上記固定リング71の固定軸部75の外径に対応しており、
図5が示すように、固定軸部75が貫通孔86に挿通される。また、
図7に図示されていないが、シート部材81の下面にも円形の孔が形成されている。この孔の中心軸線は、上記貫通孔86の中心軸線と一致している。この孔は、シート部材81の下面から上方に延びており、当該孔の深さはシート板81の肉厚よりも浅い。したがって、シート板81に内径が異なる二つの孔が設けられており、シート部材81の裏面には段差が形成されている。本実施形態では、上記孔の内径は、上記スタッド35(
図5参照)の外形に対応している。
【0058】
一対の安定柱82、83は、同一形状である。安定柱82、83は、
図7が示すようにブロック状に形成されており、安定柱83の背面に凹部87が形成されている。この凹部87に操作レバー84の角部が挿入される。安定柱83に同図が示すような貫通孔88が設けられている。この貫通孔88に後述のピン89が挿入される。また、安定柱82、83の上面90は、曲面である。この上面90は、下方へ込んでおり、
図1及び
図2が示すように釣竿34が安定して載置され得る。
【0059】
操作レバー84は、金属又は樹脂により構成されている。操作レバー84は、
図7が示すように略L字状に形成されており、操作レバー84は、レバー部91及び上記係合爪37を備えている。これらは一体的に形成されており、係合爪37が下方に延びており、レバー部91は、水平方向、すなわち釣竿34のバット部49の長手方向に沿って延びている(
図2参照)。操作レバー84の角部、すなわちレバー部91と係合爪37との境界部に図示されていない貫通孔が形成されている。この貫通孔と上記安定柱83に設けられた貫通孔88とが位置合わせされ、これらに上記ピン89が挿通されている。これにより、操作レバー84は、安定柱83にピン89を介して連結されており、操作レバー84は、ピン89を中心として揺動することができる。
【0060】
後に後述されるが、操作レバー84が揺動する結果、係合爪37が矢印92の向きに変位することにより係合爪37はロック姿勢となり、矢印93の向きに変位することにより係合爪37はロック解除姿勢となる。また、レバー部91が釣竿34のバット部49に沿って延びているから、釣人が釣竿を握る操作と共にレバー部91を容易に操作することができる。したがって、釣人は、レバー部91を操作することにより、係合爪37の姿勢を簡単に変えることができる。もっとも、このレバー部91が省略されてもよい。
【0061】
本実施形態では、ねじりコイルバネ101が操作レバー84に内臓されている。このねじりコイルバネ101は、レバー部91に設けられた溝102に収容されている。これにより、係合爪37は、安定柱83に対して常時矢印92の方向、すなわち、ロック姿勢となるように弾性的に付勢されている。もっとも、このねじりコイルバネ101も省略されてもよい。
【0062】
係合爪37は、断面が矩形の棒状部材であり、レバー部91に連続し且つ下方に延びている。係合爪37の下端部94は鈎状に形成されている。当該下端部94が鈎状に形成されていることによる作用効果については、後述される。
【0064】
図2が示すように、釣竿34のバット部49が固定リング71に挿通され、この固定リング71が固定フレーム73上に配置される。
図5が示すように、固定リング71の固定軸部75がシート板81の貫通孔86に挿通されると、固定軸部75は、シート板81の裏面側へ突出する。そして、この固定軸部75にスタッド35がねじ込まれるようになっている。スタッド35が固定軸部75にねじ込まれると、当該スタッド35は、上記シート板81の孔に嵌め込まれた状態で締め付けられる。これにより、釣竿34は、確実に固定リング71及び固定フレーム73に取り付けられる。
【0065】
スタッド35は、金属又は樹脂により構成され、本実施形態では、真直な円柱状に形成されている。このスタッド35にネジ孔95が設けられている。このネジ孔95は、スタッド35の上面から下方に延びており、ネジ穴95の内径は、固定軸部75の外径に対応している。本実施形態では、スタッド35の下面96は球面である。当該下面96が球面であることによる作用効果は後述される。さらに、スタッド35の周面に平面部97が設けられている。本実施形態では、この平面部97は、スタッド35の周方向に均等に4箇所に設けられている。これら平面部97が設けられることにより、釣人がスタッド35を固定軸部75にねじ込む作業を容易に行うことができる。もっとも、この平面部97は省略されてもよい。
【0067】
前述のように、釣竿34を把持した固定リング71が固定フレーム73上に配置され、固定リング71にスタッド35がねじ込まれることにより、ヘッド33が釣竿34に装着される。そして、釣竿34を装着したヘッド33は、係合機構100を介してベース32のソケット36に係合される。
【0068】
図8は、係合機構100の断面図である。
【0069】
係合機構100は、ソケット36並びに上記ヘッド33に設けられたスタッド35及び係合爪37とを有する。
【0070】
前述のようにヘッド33が釣竿34に装着された状態で、釣人が釣竿34を持ち、スタッド35を上方からソケット36に挿入する。これにより、
図8が示すように、スタッド35がソケット36の係合凹部46に嵌り込む。スタッド35が係合凹部46に進入する際に係合爪37が姿勢変化し、スタッド35が係合凹部46に嵌り込んだ時点で係合爪37がロック姿勢となる。すなわち、係合爪37がソケット36の係合溝38に嵌り込む。係合爪37の下端部94は鈎状に形成されているから、当該下端部94が上記係合溝38によって形成された段差59と当接し、その結果、ヘッド33は、係合爪37がロック解除姿勢に変化して係合溝38から離反しない限りソケット36から外れることはない。
【0071】
<釣竿保持装置の使用要領と作用効果>
【0072】
この釣竿保持装置30では、ベース32がたとえば船縁に固定され、ヘッド33が釣竿34のバット部49に固定される(
図1及び
図2参照)。前述のように、実釣において釣人は、釣竿34をヘッド33と共にベース上に載置する。このとき、ヘッド33が係合機構100を介してベース32に固定される。具体的には、上記スタッド35が上記ソケット36に嵌め合わされる。
図2及び
図5が示すように、ソケット36の係合凹部46は上向きに開口しているから、釣人は、釣竿34を操作しながら上記スタッド35を上方から係合凹部46に挿入する。スタッド35が係合凹部46に嵌め込まれるときに、係合爪37は前述の姿勢変化を伴ってソケット36の係合溝38に係合する。これにより、スタッド35とソケット36との係合状態がロックされ、釣竿34が船縁に固定される。一方、釣人が係合爪37をロック解除姿勢に変化させることにより、スタッド35はソケット36から外れ、釣竿が船縁から取り外される。
【0073】
このようにヘッド33と共に釣竿34がベース32に対して着脱されるために、次の要領で上記固定リング71が当該釣竿34のバット部49に装着される。
【0074】
釣人が囲繞帯72を弾性変形させて開くと、当該囲繞帯72の両端部が大きく離反する。釣竿34のバット部49は、囲繞帯72の内側に簡単に配置される。バット部49は、囲繞帯72により周囲を覆われる。釣人は、囲繞帯72の他端部を下方に引っ張って弾性的に伸ばし、鈎爪78、79を互いに連結させる。これにより、上記バット部49は、囲繞帯72によって所定の緊迫力で締め付けられた状態となり、固定リング71は、確実に上記バット部49に固定される。また、バット部49に囲繞帯72が締め付けられている状態で、囲繞帯72の端部が引っ張られると、さらに囲繞帯72が伸ばされて、鈎爪78、79の噛み合わせが解除される。
【0075】
特に、上記固定軸部75が囲繞帯72の底面部76、すなわち上記鈎爪78、79が設けられた部位以外の部位に突設されているから、この固定軸部75は、スタッド35が螺合されるための専用部材、すなわち専らベース32に対して係合するための部材としてのみ機能する。
【0076】
詳述すれば、もし固定軸部75が従来のように二分割されており、釣竿34を囲繞帯72に嵌め込む際に当該固定軸部75も開閉するように構成されているならば、当該固定軸部75がベースに対して着脱される際に、囲繞帯72による釣竿34のクランプも同時に解除されなければならず、作業が繁雑になる。これに対して本実施形態に係る固定リング71では、上記鈎爪78、79によって釣竿34のクランプが維持され又は解除されるので、固定軸部75は、スタッド35の螺合、すなわちベース32に対して係合するための部材としてのみ機能する。
【0077】
要するに、固定リング71では、釣竿34に対して着脱する機能は、鈎爪78、79によって発揮され、固定軸部75は、専ら固定リング71をベース32に対して固定する機能を発揮する。したがって、釣竿34が固定リング71に装着されたままで、当該固定リング71がベース32に着脱される。その結果、釣竿保持装置30が使用される際に釣竿34の装着作業が容易となり、釣人は、実釣において釣竿保持装置30のセットアップを迅速に行える。
【0078】
本実施形態では、鈎爪78、79により囲繞帯72を連結する機構が構成されているので、囲繞帯72が上記バット部49を囲繞した状態で引っ張られるだけで、鈎爪78、79が噛み合い、当該囲繞帯72の両端部が簡単に連結される。また、鈎爪78、79は、囲繞帯72に形成された凸条又は凹条により形成されるので、鈎爪78、79が確実に噛み合う。
【0079】
さらに、固定軸部75が中実丸棒から構成されているので、構造がきわめて簡単である。したがって、固定リング71の構造が簡略化され、製造コストも低減される。また、囲繞帯72に上記指掛片80が設けられているから、鈎爪78、79を噛み合わせる作業並びに噛み合わせを解除する作業が簡単である。
【0080】
加えて、この釣竿保持装置30によれば、釣竿34がヘッド33と共にベース32に位置決めされる操作は、ソケット36の上面58に露出した係合凹部46に、釣人が上方からスタッド35を挿入する動作により行われる。つまり、この動作は、凸部に対して凹部を被せるのではなく、容易に目視できる係合凹部46に対してスタッド35を上方から挿入するものであるから、ベース32に対してきわめて簡単にヘッド33を位置決めすることができる。さらに、係合機構100によって、スタッド35は、ソケット36に対して確実にロックされる。上記係合溝38は、ソケット36の外周面に露出しているので、釣人は、容易にスタッド35のロック状態(ソケット36の外周面に設けられた係合溝38に係合爪37が係合している状態)を簡単に目視でき、釣人は、実釣において安心感を得る。
【0081】
本実施形態では、操作レバー84と係合爪37とが一体的に形成されているので(
図2及び
図5参照)、釣人は、操作レバー84を操作するだけで係合爪37と係合溝38との係合を解除することができる。しかも、操作レバー84が釣竿34のバット部49の長手方向に沿って延びているから、釣竿34を把持する動作と同時に操作レバー84を操作して簡単に係合爪37の姿勢を変化させることができる。
【0082】
また、本実施形態では、上記ソケット36の外形が円錐台であり、上記係合凹部46が下方に延びる真直孔からなり、しかも上記係合溝38がソケット36の周方向に沿って形成されている。すなわち、係合機構100の構造が簡単である。加えて、係合溝38がソケット36の周方向に延びているから、係合爪37は、ソケット36の周方向に移動することができる。したがって、釣竿34は、ヘッド33と共にベース32に取り付けられた状態で、ベース32に対して回転することができ、釣人にとって釣竿34の操作がより簡単になる。
【0083】
さらに、本実施形態では、
図5が示すように、上記係合溝38が上記ソケット36を周回しているので、釣竿34は、全方向に回動することができるという利点がある。もっとも、この係合溝38は、上記ソケット36を周回している必要はなく、外周面の一部に周方向に沿って形成されていてもよい。
【0084】
また、
図4及び
図5が示すように、上記係合凹部46の周縁部(すなわち、ソケット36の筒部52の上面58)に面取加工が施されると共に、上記スタッド35の下面96が曲面に形成されているので、スタッド35がソケット36に挿入される際に、両者の位置が完全に一致していなくても、上記上面58がスタッド35を案内する。したがって、釣竿34と共にヘッド33をベース32に固定する作業が一層簡単且つ確実なものとなる。
【0085】
加えて、
図5及び
図7が示すように、上記係合爪38は、常時ロック姿勢側(矢印92の向き)に弾性的に付勢されている。したがって、釣人が釣竿34を操作しながら上記スタッド35を上方から係合凹部46に挿入すると、上記係合爪37が弾性力に抗してソケット36の周面57に沿って自動的に姿勢変化し、上記係合溝38に嵌り込む。その結果、釣竿34を固定する作業がなお一層容易になる。
【0087】
図9は、本実施形態の変形例に係る固定リング110の要部拡大斜視図である。
同図は、囲繞帯111の両端部の形状を詳細に示している。
【0088】
本変形例に係る固定リング110が上記実施形態に係る固定リング71と異なるところは、上記実施形態では、囲繞帯72の両端部に鈎爪78、79が形成され、両者が噛み合うことにより囲繞帯72の端部同士が連結されていたのに対して、(
図6参照)、本変形例では、
図9が示すような連結構造により囲繞帯111の一端部112と他端部113とが係合されている点である。
【0089】
同図が示すように、囲繞帯111の一端部112は、薄肉板状に形成されている。この一端部112は、先端延設部114を有する。この先端延設部114の中間部に囲繞帯111の幅方向(矢印109の方向)に突出した第1位置決め片116、117が形成されている。また、先端延設部114の先端に第2位置決め片118が設けられている。
【0090】
他方、囲繞帯111の他端部113は、平板状に形成されている。当該他端部113に一対の壁面部材119、120が設けられている。これら壁面部材119、120は、所定の間隔sを空けて並設されており、この間隔sは、上記一端部112の幅寸法bに対応している。すなわち、先端延設部114は、壁面部材119、120の間に挿入され得る。また、上記他端部113に貫通孔121が形成されている。この貫通孔121は、本変形例では矩形に形成されており、後述のように上記先端延設部114が進入することができるようになっている。
【0091】
さらに、この貫通孔121の周縁に、一対のストッパー122、123が立設されている。これらストッパー122、123は、同図が示すようにL字状を呈し、互いに対向するように配置されている。ストッパー122、123の高さは、上記先端延設部114の肉厚に対応されており、対向するストッパー122、123の間隔は、上記先端延設部114の先端寸法cに対応されている。したがって、先端延設部114がストッパー122、123の間に挿入されると、ストッパー122、123は先端延設部114の上面に当接し、第2位置決め片118は、貫通孔121の内部に進入する。
【0092】
囲繞帯111の一端部112を他端部113に係合させる作業は、次の要領で行われる。まず、上記一端部112が図中上方から(つまり、壁面部材119、120を越えた位置から)斜めに貫通孔121に挿入される。これにより、先端延設部114が一旦貫通孔121に進入する。第1位置決め片116、117が壁面部材119、120を越えた時点で、一端部112が他端部113と平行に配置される。これにより、ストッパー122、123が図中上方から先端延設部114に当接し、第1位置決め片116、117が壁面部材119、120の内側に当接し、且つ第2位置決め片118が貫通孔121の壁面125と対向ないし当接する。つまり、一端部112は、他端部113に対して図中長手方向及び上下方向に位置決めされ、両者は確実に係合する。なお、一端部112を他端部113に対して傾斜させると(第2位置決め片118が貫通孔121に深く進入する方向に変位されると)、両者の係合は簡単に解除される。