(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362432
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】ドアサッシュの製造方法
(51)【国際特許分類】
B60J 5/04 20060101AFI20180712BHJP
【FI】
B60J5/04 M
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-115419(P2014-115419)
(22)【出願日】2014年6月4日
(65)【公開番号】特開2015-229391(P2015-229391A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2017年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175766
【氏名又は名称】三恵技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【弁理士】
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】山中 貴
(72)【発明者】
【氏名】狩野 篤
【審査官】
高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭58−110781(JP,A)
【文献】
特開平08−142677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッパー部とピラー部とが長手方向に部分的に連続する部材で形成され、前記アッパー部から前記ピラー部に至るコーナー部の外周側に連続する連続部が形成され、前記コーナー部の内周側に切除部分の縁を略当接して溶接されている溶接部が形成されるドアサッシュの製造方法であって、
ドアサッシュの断面形状に対応する断面形状を有する細長の中間材を形成する第1工程と、
前記中間材の長手方向の所定位置で前記中間材を部分的に切除して切除部分を形成する第2工程と、
前記切除部分を内周側にして曲げ加工を施し、アッパー部とピラー部に対応する形状を形成する第3工程と、
前記切除部分の縁を突き合わせるように配置して少なくとも突き合わせた縁の一部を溶接する第4工程を備え、
前記第1工程と前記第2工程との間に、前記中間材に予備的な曲げ加工を施して略弧状の中間材を形成し、
前記第2工程において、前記略弧状の中間材の内周側で且つ中間位置に前記切除部分を形成することを特徴とするドアサッシュの製造方法。
【請求項2】
前記第2工程において、丸みを帯びた頂部若しくは略平たい頂部を有する略山形の前記切除部分を前記略弧状の中間材に形成することを特徴とする請求項1記載のドアサッシュの製造方法。
【請求項3】
前記第1工程において、前記ドアサッシュの筒状部を有する断面形状に対応する筒状部のある断面形状を有する細長の中間材を形成し、
前記第1工程と前記第2工程との間に、前記中間材の前記筒状部が内周側になるようにして前記中間材に前記予備的な曲げ加工を施して前記略弧状の中間材を形成し、
前記第2工程において、前記略弧状の中間材の内周側に前記中間材の前記筒状部を切除するようにして前記切除部分を形成し、
前記第4工程における溶接により、前記ドアサッシュのコーナー部の内周側に位置する前記ドアサッシュの前記筒状部を形成することを特徴とする請求項1又は2記載のドアサッシュの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアに用いられるドアサッシ
ュの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のドアに用いられるドアサッシュとして、別部材のアッパー部とピラー部がコーナー箇所で溶接された構造のドアサッシュが知られている。このドアサッシュは、アッパー部とピラー部をそれぞれ折り曲げ成形して別々に形成し、別部材のアッパー部の端部とピラー部の端部を突き合わせて溶接することにより形成される。
【0003】
また、別部材のアッパー部とピラー部を溶接する工程を無くすため、ドアサッシュの基本的な断面形状を形成した細長の中間材を長手方向の所定位置で曲げ加工してアッパー部とピラー部を形成することにより、アッパー部とピラー部を同一部材で構成するドアサッシュが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
更に、ドアサッシュの基本的な筒状部を有する断面形状を形成した細長の中間材を長手方向の所定位置で曲げ加工してアッパー部とピラー部を形成した後、コーナー部において筒状部より車体外側面に対応する方向の部分を中間材から部分的に切除し且つアッパー部からピラー部にかけて筒状部が連続するようにし、切除部分を埋めるようにコーナーパッチを固定するドアサッシュも提案されている(特許文献2、3参照)。このドアサッシュは、コーナー部の部分切除により、曲げ加工で生じたシワ等の不良形状の部分をある程度切除することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−142677号公報
【特許文献2】特開2011−84129号公報
【特許文献3】特開2013−23131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献2、3のドアサッシュは、中間材の筒状部など曲げ加工における曲げ方向の内周側の部分を連続するように残すものであるが、曲げ加工によるシワ等の不良形状の多くは内周側の肉余りが生ずる部分で発生する。そのため、曲げ加工の曲率を大きくするに従い、曲げ方向の内周側の部分にシワ等の不良形状が顕著に発生し、筒状部を有する断面形状では筒状部が潰れた断面形状なってしまう(特許文献3、段落[0018]参照)。
【0007】
また、特許文献1〜3のドアサッシュは、ドアサッシュの基本的な断面形状を形成した細長の中間材をそのままの状態で曲げ加工するものであるため、曲げ加工に大きな荷重が必要となり、曲げ加工の加工装置も高価なものに制約される。
【0008】
他方で、別部材のアッパー部の端部とピラー部の端部を全体に亘って溶接するドアサッシュでは、溶接長が長くなるが、溶接長が長くなると、溶接作業の長時間化、溶接ビードの削り工数の増加により電気使用量の増加、作業環境の悪化を招くため、溶接長をできるだけ短くすることが求められる。
【0009】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、曲げ加工でアッパー部とピラー部を形成する際に、曲げ加工の曲率を大きくしてもシワ等の不良形状が発生することを防止できると共に、曲げ加工に必要な荷重の低減、溶接長の短縮化を図ることができるドアサッシ
ュの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のドアサッシュ
の製造方法は、アッパー部とピラー部とが長手方向に部分的に連続する部材で形成され
、前記アッパー部から前記ピラー部に至るコーナー部の外周側に連続する連続部が形成され、前記コーナー部の内周側に切除部分の縁を略当接して溶接されている溶接部が形成される
ドアサッシュの製造方法であって、ドアサッシュの断面形状に対応する断面形状を有する細長の中間材を形成する第1工程と、前記中間材の長手方向の所定位置で前記中間材を部分的に切除して切除部分を形成する第2工程と、前記切除部分を内周側にして曲げ加工を施し、アッパー部とピラー部に対応する形状を形成する第3工程と、前記切除部分の縁を突き合わせるように配置して少なくとも突き合わせた縁の一部を溶接する第4工程を備え、前記第1工程と前記第2工程との間に、前記中間材に予備的な曲げ加工を施して略弧状の中間材を形成し、前記第2工程において、前記略弧状の中間材の内周側で且つ中間位置に前記切除部分を形成することを特徴とする。
これによれば、アッパー部とピラー部とが長手方向に部分的に連続する部材で形成されるドアサッシュのアッパー部とピラー部を曲げ加工して形成する際に、内周側の切除部分により、曲げ加工の曲率を大きくしてもシワ等の不良形状が発生することを防止することができる。また、曲率を大きくしても不良形状の発生を防止できることから、コーナー部の曲率の自由度、設計の自由度を大幅に向上することができる。また、内周側の切除部分を形成した状態で曲げ加工を行うことができることから、曲げ加工に必要な荷重を低減することができ、使用可能な曲げ加工装置の範囲を広げ、装置コストを低減することもできる。また、アッパー部からピラー部に至るコーナー部の外周側が連続する部分で溶接が不要になっていることから、溶接長を短くすることができる。従って、溶接作業の短縮、溶接ビードの削り工数の低減により電気使用量の低減、作業環境の改善を図ることができる。
更に、ドアサッシュを効率的且つ正確に製造することができる。また、別部材のアッパー部とピラー部をそれぞれ曲げ加工して溶接する場合には、アッパー部とピラー部はそれぞれ別々の工程、設備で曲げ加工して形状を形成する必要があるのに対して、 連続する中間材でアッパー部とピラー部を形成することにより、曲げ加工の工程と設備を1つにでき、かつ作業スペースも縮小することができる。更に、突き合わせる部分が正確で綺麗な仕上がりとなるように、適切な切除部分を形成し易くすることができる。また、切除前の曲げ加工でコーナー部の内周側の部分にシワ等が生じた場合にも、部分的な切除の工程で除去することができる。
【0011】
本発明のドアサッシュの製造方法は、前記第2工程において、丸みを帯びた頂部若しくは略平たい頂部を有する略山形の切除部分を前記
略弧状の中間材に形成することを特徴とする。
これによれば、曲げ加工により切除部分の縁を突き合わせた部分をより正確に突合することができ、その仕上がりをより一層正確で綺麗な状態にすることができる。
【0012】
本発明のドアサッシュの製造方法は、前記第1工程において、前記ドアサッシュの筒状部を有する断面形状に対応する筒状部のある断面形状を有する細長の中間材を形成し、前記第1工程と前記第2工程との間に、前記中間材の前記筒状部が内周側になるようにして前記中間材に前記予備的な曲げ加工を施して前記略弧状の中間材を形成し、前記第2工程において、前記略弧状の中間材の内周側に前記中間材の前記筒状部を切除するようにして前記切除部分を形成し、前記第4工程における溶接により、前記ドアサッシュのコーナー部の内周側に位置する前記ドアサッシュの前記筒状部を形成することを特徴とする。
これによれば、筒状部を有する断面形状のドアサッシュについて、筒状部が潰れた断面形状なったり、シワのある筒状部になったりすることを防止できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アッパー部とピラー部とが長手方向に部分的に連続する部材で形成されるドアサッシュのアッパー部とピラー部を曲げ加工して形成する際に、曲げ加工の曲率を大きくしてもシワ等の不良形状が発生することを防止することができる。また、内周側の切除部分を形成した状態で曲げ加工を行うことができることから、曲げ加工に必要な荷重を低減することができ、使用可能な曲げ加工装置の範囲を広げ、装置コストを低減することもできる。また、アッパー部からピラー部に至るコーナー部の外周側が連続する部分で溶接が不要になっていることから、短い溶接長でドアサッシュを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明による第1実施形態のドアサッシュを示す斜視図。
【
図2】第1実施形態のドアサッシュのコーナー部近傍を示す斜視図。
【
図3】第1実施形態のドアサッシュのコーナー部の断面図。
【
図4】(a)〜(d)は第1実施形態のドアサッシュとなる中間材を折り曲げ成形で形成する工程を示す断面説明図。
【
図5】(a)〜(c)は第1実施形態のドアサッシュとなる中間材に曲げ加工と部分的な切除を行う工程を説明する説明図。
【
図6】第1実施形態のドアサッシュとなる中間材に切除部分を形成した状態を示す部分斜視図。
【
図7】(a)〜(c)は第1実施形態のドアサッシュとなる中間材に部分的な切除を行う工程を説明する断面説明図。
【
図8】第2実施形態のドアサッシュのコーナー部近傍を示す斜視図。
【
図9】第2実施形態のドアサッシュのコーナー部の断面図。
【
図10】第2実施形態のドアサッシュとなる中間材に切除部分を形成した状態を示す部分斜視図。
【
図11】(a)〜(c)は第1実施形態のドアサッシュとなる中間材に部分的な切除を行う工程を説明する断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔第1実施形態のドアサッシュ及びその製造方法〕
第1実施形態のドアサッシュ10は、
図1、
図2に示すように、アッパー部11とピラー部12とが長手方向に部分的に連続する部材で形成されるものであり、アッパー部11からピラー部12に至る部分は曲がった形状のコーナー部13になっている。ドアサッシュ10は、
図3の断面形状で示すように、筒状部14と、凹状のグラスランチャンネル収容部15と、凹状のウェザーストリップ収容部16と、略板状の外装部17を有し、一枚の金属板を折り曲げ成形して形成され、スポット溶接等により接合部18で接合されている。この筒状部14、グラスランチャンネル収容部15、ウェザーストリップ収容部16、外装部17を有する断面形状は、アッパー部11、ピラー部12、コーナー部13において共通している。
【0016】
コーナー部13の外周側には、屈曲或いは湾曲した状態でアッパー部11とピラー部12と連続する連続部19が形成されていると共に、コーナー部13の内周側には切除部分102の縁103が略当接するように配置され、その略当接部分の一部が溶接されて溶接部20が形成されている(
図2、
図3、
図6、
図7参照)。第1実施形態における溶接部20は、外装部17の内周側の部分と内周側に配置されている筒状部14を略山形に部分的に切除し、この切除部分102の縁103を曲げ加工によって突き合わせるようにし、この突き合わせた状態で一部を溶接して形成されている。即ち、コーナー部13の外装部17は内周側を溶接部20で接合して形成されており、コーナー部13の筒状部14は切除部分102の縁103の一部を溶接部20で溶接するようにして形成されている。
【0017】
第1実施形態のドアサッシュ10を製造する際には、
図4に示すように、一枚の細長の金属板101をロール成形、プレス成形等で順次折り曲げ成形して、筒状部14、グラスランチャンネル収容部15、ウェザーストリップ収容部16、外装部17を有する断面形状を形成する。そして、接合部18で接合することにより、筒状部14、グラスランチャンネル収容部15、ウェザーストリップ収容部16、外装部17を有する断面形状の細長の中間材100、換言すればドアサッシュ10の断面形状に対応する断面形状を長手方向に連続して有する細長で略直線状の中間材100が形成される。
【0018】
その後、
図5に示すように、中間材100に曲げ加工を施し、ある程度の予備的な曲げ加工で緩やかに湾曲する中間材100を形成する。そして、
図5〜
図7に示すように、略弧状の中間材100の長手方向の所定位置で、中間材100を部分的に切除して切除部分102を形成する。この切除工程では、曲げ加工で曲げられた中間材100の内周側に、丸みを帯びた頂部若しくは略平たい頂部を有する略山形の切除部分102を部分的に形成するようにして切除を行う。尚、
図7中、104は切除により除去される除去部である。
【0019】
次いで、
図5(c)、
図6の状態から、切除部分102を内周側にして中間材100に曲げ加工を施し、中間材100にアッパー部11とピラー部12に対応する形状を形成する。そして、中間材100の切除部分102の縁103を突き合わせるように配置し、突き合わせ配置した縁103・103の一部を溶接して溶接部20を形成することにより、ドアサッシュ10が得られる。溶接部20は、切除部分102の縁103の突き合わせた部分の一部に対応して
図3に示す箇所に形成される。尚、
図3中、CWはアッパー部11とピラー部12を別部材として両者を溶接する場合の従来構造の溶接部であり、第1実施形態の溶接部20の溶接長は従来構造の溶接部CWより短くなっている。
【0020】
第1実施形態のドアサッシュ10或いはその製造方法によれば、アッパー部11とピラー部12とが長手方向に部分的に連続する部材で形成されるドアサッシュ10のアッパー部11とピラー部12を曲げ加工して形成する際に、内周側の切除部分102により、曲げ加工の曲率を大きくしてもシワ等の不良形状が発生することを防止することができる。従って、筒状部14を有する断面形状のドアサッシュ10の場合、筒状部14が潰れた断面形状なったり、シワのある筒状部14になったりすることを防止できる。また、曲率を大きくしても不良形状の発生を防止できることから、コーナー部13の曲率の自由度、設計の自由度を大幅に向上することができる。
【0021】
また、内周側の切除部分102を形成した状態で曲げ加工を行うことができることから、曲げ加工に必要な荷重を低減することが可能となり、使用可能な曲げ加工装置の範囲を広げ、装置コストを低減することもできる。また、アッパー部11からピラー部12に至るコーナー部13の外周側が連続する部分で溶接が不要になっていることから、溶接長を短くすることができる。従って、溶接作業の短縮、溶接ビードの削り工数の低減により電気使用量の低減、作業環境の改善を図ることができる。
【0022】
また、上記製造工程でドアサッシュ10を製造することにより、効率的且つ正確にドアサッシュ10を製造することができる。更に、部分的な切除工程の前に中間材100に曲げ加工を施しておくことにより、突き合わせる部分が正確で綺麗な仕上がりとなるように、適切な切除部分102を形成し易くすることができると共に、切除前の曲げ加工でコーナー部13の内周側の部分にシワ等が生じた場合にも、除去部104として部分的な切除の工程で除去することができる。また、切除部分102の形状を丸みを帯びた頂部若しくは略平たい頂部を有する略山形とすることにより、曲げ加工により切除部分102の縁103を突き合わせた部分をより正確に突合することができ、その仕上がりをより一層正確で綺麗な状態にすることができる。
【0023】
また、別部材のアッパー部とピラー部をそれぞれ曲げ加工して溶接する場合には、アッパー部とピラー部はそれぞれ別々の工程、設備で曲げ加工して形状を形成する必要があるのに対して、 連続する中間材100からドアサッシュ10のアッパー部11とピラー部12を形成することにより、曲げ加工の工程と設備を1つにでき、かつ作業スペースも縮小することができる。
【0024】
〔第2実施形態のドアサッシュ及びその製造方法〕
第2実施形態のドアサッシュ30も、
図8に示すように、アッパー部31とピラー部32とが長手方向に部分的に連続する部材で形成されるものであり、アッパー部31からピラー部32に至る部分は曲がった形状のコーナー部33になっている。ドアサッシュ30は、ヒドンタイプのドアサッシュであり、
図9の断面形状で示すように、筒状部34と、筒状部34から突出するように設けられる略板状の突出部35を有し、一枚の金属板を折り曲げ成形して形成され、カシメ固定等すると共にスポット溶接等により接合部36で接合して固定されている。
図9において、突出部35の先端側にはモール、突出部35の上面側にはウェザーストリップ、突出部35の下面側にはグラスランチャンネルがそれぞれ設けられる(図示省略)。筒状部34、突出部35を有する断面形状は、アッパー部31、ピラー部32、コーナー部33において共通している。
【0025】
コーナー部33の外周側には、屈曲或いは湾曲した状態でアッパー部31とピラー部32と連続する連続部37が形成されていると共に、コーナー部33の内周側には切除部分301の縁302が略当接するように配置され、その略当接部分の一部が溶接されて溶接部38が形成されている(
図8〜
図11参照)。第2実施形態における溶接部38は、内周側に配置されている筒状部34を略山形に部分的に切除し、この切除部分301の縁302を曲げ加工によって突き合わせるようにし、この突き合わせた状態で一部を溶接して形成されている。即ち、コーナー部33の筒状部34は切除部分301の縁302の一部を溶接部38で溶接するようにして形成されている。
【0026】
第2実施形態のドアサッシュ30を製造する際には、第1実施形態と同様に、一枚の細長の金属板をロール成形、プレス成形等で順次折り曲げ成形して、筒状部34、突出部35を有する断面形状を形成し、カシメ固定等すると共に接合部36で接合して固定することにより、筒状部34、突出部35を有する断面形状の細長の中間材300、換言すればドアサッシュ30の断面形状に対応する断面形状を長手方向に連続して有する細長で略直線状の中間材300が形成される。その後、第1実施形態と同様に、中間材300に曲げ加工を施し、ある程度の予備的な曲げ加工で緩やかに湾曲する中間材300を形成する。
【0027】
そして、
図10、
図11に示すように、略弧状の中間材300の長手方向の所定位置で、中間材300を部分的に切除して切除部分301を形成する。この切除工程では、曲げ加工で曲げられた中間材300の内周側に、丸みを帯びた頂部若しくは略平たい頂部を有する略山形の切除部分301を部分的に形成するようにして切除を行う。尚、
図11中、303は切除により除去される除去部である。
【0028】
次いで、
図10の状態から切除部分301を内周側にして中間材300に曲げ加工を施し、中間材300にアッパー部31とピラー部32に対応する形状を形成する。そして、中間材300の切除部分301の縁302を突き合わせるように配置し、突き合わせ配置した縁302・302の一部を溶接して溶接部38を形成することにより、ドアサッシュ30が得られる。溶接部38は、切除部分301の縁302の突き合わせた部分の一部に対応して
図9に示す箇所に形成される。尚、
図9中、CWはアッパー部31とピラー部32を別部材として両者を溶接する場合の従来構造の溶接部であり、第2実施形態の溶接部38の溶接長は従来構造の溶接部CWより短くなっている。
【0029】
第2実施形態のドアサッシュ30或いはその製造方法によれば、第1実施形態と対応する構成により対応する効果が得られる。
【0030】
〔実施形態の変形例等〕
本明細書開示の発明は、各発明や各実施形態の構成の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な構成を本明細書開示の他の構成に変更して特定したもの、或いはこれらの構成に本明細書開示の他の構成を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な構成を部分的な作用効果が得られる限度で削除して特定した上位概念化したものを含むものである。そして、下記変形例も包含する。
【0031】
例えば本発明における長手方向に部分的に連続して形成されるドアサッシュ10、30、長手方向に連続して形成される中間材100、300等は、一枚の金属板101等で形成されるものに限定されず適宜であり、例えば外装部17に相当する部位、或いはウェザーストリップ収容部16の凹部を形成する部位等を別部材とするなど、断面形状で複数部材で構成され、且つ長手方向に部分的に連続して形成される部材或いは長手方向に連続して形成される部材とすることも可能である。
【0032】
また、上記第1、第2実施形態では、略直線状の中間材100、300を略弧状に曲げ加工した後に略弧状の中間材100、300に対して部分的に切除する場合について説明したが、本発明では、部分的に切除する工程の前に行う曲げ加工を省略することも可能であり、例えば略直線状の中間材100、300に対して部分的に切除する工程を行うようにすることも可能である。
【0033】
また、本発明における溶接部は所要箇所に適宜形成することが可能であり、例えば第1、第2実施形態のように、切除部分102の縁103或いは切除部分301の縁302の突き合わせ配置された箇所の所要部分に形成する他、切除部分102の縁103或いは切除部分301の縁302の突き合わせ配置された箇所の全長に亘って形成する構成等とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、車両のドアに設置されるドアサッシュに利用することができる。
【符号の説明】
【0035】
10、30…ドアサッシュ 11、31…アッパー部 12、32…ピラー部 13、33…コーナー部 14、34…筒状部 15…グラスランチャンネル収容部 35…突出部 16…ウエザーストリップ収容部 17…外装部 18、36…接合部 19、37…連続部 20、38…溶接部 100、300…中間材 101…金属板 102、301…切除部分 103、302…縁 104、303…除去部 CW…従来構造の溶接部