特許第6362434号(P6362434)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362434
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】クロック乗せ換え回路、半導体集積回路
(51)【国際特許分類】
   H04L 7/00 20060101AFI20180712BHJP
   H03K 5/1534 20060101ALI20180712BHJP
   G06F 1/12 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   H04L7/00 500
   H03K5/1534
   G06F1/12
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-116450(P2014-116450)
(22)【出願日】2014年6月5日
(65)【公開番号】特開2015-231135(P2015-231135A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2017年5月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】源 耕太
【審査官】 阿部 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−316086(JP,A)
【文献】 特表2003−524914(JP,A)
【文献】 特開2004−199135(JP,A)
【文献】 実開昭63−163028(JP,U)
【文献】 特開昭61−248613(JP,A)
【文献】 特開平11−260096(JP,A)
【文献】 米国特許第06175529(US,B1)
【文献】 特開2006−252265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 7/00
G06F 1/12
H03K 5/1534
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1周波数の第1クロック信号と同期する第1クロックドメインと、前記第1周波数より高い第2周波数の第2クロック信号と同期する第2クロックドメインの間でデータを受け渡すクロック乗せ換え回路であって、
前記第1クロック信号および前記第2クロック信号を利用してタイミング信号を生成するタイミング信号発生器であって、前記タイミング信号のエッジは、前記第1クロック信号のポジティブエッジおよびネガティブエッジのうち、前記第1クロックドメインにおけるデータを変化のトリガとならないエッジである非トリガエッジの近傍に位置する、タイミング信号発生器と、
少なくとも前記タイミング信号を利用して、前記第1クロックドメインと前記第2クロックドメインの間で、データの受け渡しを行うインタフェース回路と、
を備え、
前記インタフェース回路は、前記第2クロックドメインから前記第1クロックドメインに第2データを受け渡す第2回路を含み、
前記第2回路は、
前記第2データを受ける第1入力端子と、第2入力端子と、を有し、前記タイミング信号に応じた一方を選択する第2セレクタと、
そのデータ入力に前記第2セレクタの出力信号を受け、そのクロック入力に前記第2クロック信号を受け、その出力が前記第2セレクタの前記第2入力端子と接続された第7D型フリップフロップと、
そのD入力に前記第7D型フリップフロップの出力信号を受け、そのクロック入力に前記第1クロック信号を受ける第8D型フリップフロップと、
を含むことを特徴とするクロック乗せ換え回路。
【請求項2】
前記タイミング信号発生器は、
前記第1クロック信号のポジティブエッジおよびネガティブエッジのうち、前記第1クロックドメインにおけるデータを変化のトリガとなる一方であるトリガエッジを検出するエッジ検出回路と、
前記エッジ検出回路の出力を、前記第1クロック信号の周期の実質的に1/2遅延させ、前記タイミング信号を出力する遅延回路と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載のクロック乗せ換え回路。
【請求項3】
前記タイミング信号発生器は、前記第1クロック信号のポジティブエッジおよびネガティブエッジのうち前記非トリガエッジを検出するエッジ検出回路を含み、前記エッジ検出回路の出力をタイミング信号とすることを特徴とする請求項1に記載のクロック乗せ換え回路。
【請求項4】
前記タイミング信号発生器は、前記エッジ検出回路の前段に直列に接続された複数の第1D型フリップフロップを含み、
前記第1D型フリップフロップはそれぞれ、そのD入力に前記第1クロック信号を受け、そのクロック入力に前記第2クロック信号を受けることを特徴とする請求項2または3に記載のクロック乗せ換え回路。
【請求項5】
前記エッジ検出回路は、
そのD入力に前記第1クロック信号を受け、そのクロック入力に前記第2クロック信号を受ける第2D型フリップフロップと、
前記第2D型フリップフロップの入力信号と、前記第2D型フリップフロップの出力信号の反転信号の論理積を生成するANDゲートと、
を含むことを特徴とする請求項2に記載のクロック乗せ換え回路。
【請求項6】
前記遅延回路は、直列に接続された少なくともひとつの第3D型フリップフロップを含むことを特徴とする請求項2または5に記載のクロック乗せ換え回路。
【請求項7】
前記エッジ検出回路は、
そのD入力に前記第1クロック信号を受け、そのクロック入力に前記第2クロック信号を受ける第4D型フリップフロップと、
前記第4D型フリップフロップの入力信号の反転信号と、前記第4D型フリップフロップの出力信号の論理積を生成するANDゲートと、
を含むことを特徴とする請求項3に記載のクロック乗せ換え回路。
【請求項8】
前記インタフェース回路は、前記第1クロックドメインから前記第2クロックドメインに第1データを受け渡す第1回路を含み、
前記第1回路は、
そのD入力に前記第1データを受け、そのクロック入力に前記第1クロック信号を受ける第5D型フリップフロップと、
前記第5D型フリップフロップの出力信号が入力される第1入力端子と、第2入力端子と、を有し、前記タイミング信号に応じた一方を選択する第1セレクタと、
そのデータ入力に前記第1セレクタの出力信号を受け、そのクロック入力に前記第2クロック信号を受け、その出力が前記第1セレクタの前記第2入力端子と接続された第6D型フリップフロップと、
を含むことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のクロック乗せ換え回路。
【請求項9】
前記第1クロック信号と同期して動作する第1組み合わせ回路と、
前記第2クロック信号と同期して動作する第2組み合わせ回路と、
前記第1組み合わせ回路と前記第2組み合わせ回路の間に設けられる請求項1からのいずれかに記載のクロック乗せ換え回路と、
を備えることを特徴とする半導体集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なるクロックドメイン間のクロック乗せ換え回路に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路あるいは回路システムは、クロック信号と同期した信号処理を行う。図1は、本発明者が検討した半導体集積回路の回路図である。この半導体集積回路2rは、第1クロックドメイン4および第2クロックドメイン6を備える。第1クロックドメイン4は、第1周波数f1の第1クロック信号CK1と同期して動作する第1組み合わせ回路8を備え、第2クロックドメイン6は、第1周波数f1より高い第2周波数f2の第2クロック信号CK2と同期して動作する第2組み合わせ回路10を含む。
【0003】
このような半導体集積回路2rは、第1クロックドメイン4と第2クロックドメイン6の境界に、それらの間でデータを受け渡すクロック乗せ換え回路300が設けられる。図1のクロック乗せ換え回路300は、第1クロックドメイン4から第2クロックドメイン6へとデータD1を受け渡す。
【0004】
クロック乗せ換え回路300は、D型フリップフロップ302、メタステーブル除去回路304、安定化回路306を含む。D型フリップフロップ302は、第1組み合わせ回路8からのデータD1を、第1クロック信号CK1のポジティブエッジをトリガとして取り込むD型フリップフロップを含む。
【0005】
メタステーブル除去回路304は、メタステーブル対策として設けられ、直列に接続された複数のD型フリップフロップを含む。複数のD型フリップフロップはそれぞれ、第2クロック信号CK2をトリガとして前段からのデータを取り込む。
【0006】
安定化回路306は、メタステーブル除去回路304からのデータD3を受ける。安定化回路306は、第2クロック信号CK2の少なくとも2サイクルにわたり、データD3が同じ値を持続したときに、その値が正しいものとして取り込み、第2組み合わせ回路10へと出力する。
【0007】
たとえば安定化回路306は、D型フリップフロップ308、314、一致判定回路310、セレクタ312、を含む。D型フリップフロップ308は、第2クロック信号CK2をトリガとしてメタステーブル除去回路304の出力データD3を取り込む。一致判定回路310は、D型フリップフロップ308の出力D4、すなわち1個前のサイクルにおいて取り込んだデータD4と、現在のデータD3を比較する。比較の結果、一致であれば、セレクタ312は、D型フリップフロップ308の出力データD4を選択し、D型フリップフロップ314はデータD4をラッチする。一致判定回路310の比較の結果、不一致であれば、セレクタ312は、D型フリップフロップ314にすでに格納されている値をその入力に戻す。これによりD型フリップフロップ314のデータは更新されずに維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−086105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者は、図1のクロック乗せ換え回路300について検討した結果、以下の課題を認識するに至った。図1には、第1クロックドメイン4から第2クロックドメイン6へと、単一のデータD1を伝送する構成を示すが、現実には、複数のデータD1が並列的に伝送される。したがって、クロック乗せ換え回路300は、データごとに設けられることとなり、データ数が増大すると、それに比例して回路規模が増大する。
【0010】
加えて、ひとつのデータD1は、複数のビット(以下、nビットとする)を含む。したがって、D型フリップフロップ302、メタステーブル除去回路304、安定化回路306を構成する回路素子(D型フリップフロップやセレクタ)は、nビットそれぞれに対して設けられることとなる。したがって、受け渡されるデータD1のビット幅が大きくなると、それに比例してクロック乗せ換え回路300の回路規模が増大する。
【0011】
本発明は係る課題に鑑みてなされたものあり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、回路規模の増大を抑制可能なクロック乗せ換え回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のある態様は、第1周波数の第1クロック信号と同期する第1クロックドメインと、第1周波数より高い第2周波数の第2クロック信号と同期する第2クロックドメインの間でデータを受け渡すクロック乗せ換え回路に関する。クロック乗せ換え回路は、第1クロック信号および第2クロック信号を利用してタイミング信号を生成するタイミング信号発生器であって、タイミング信号のエッジは、第1クロック信号のポジティブエッジおよびネガティブエッジのうち、第1クロックドメインにおけるデータを変化のトリガとならないエッジである非トリガエッジの近傍に位置する、タイミング信号発生器と、少なくともタイミング信号を利用して、第1クロックドメインと第2クロックドメインの間で、データの受け渡しを行うインタフェース回路と、を備える。
【0013】
この態様によると、複数のデータ、あるいは単一のデータに含まれる複数のビットによって、共通に使用されるタイミング信号を生成し、タイミング信号を複数のデータ、複数のビットに分配することにより、データごと、ビットごとの、メタステーブル対策や安定化処理が不要となるため、回路規模を縮小できる。
【0014】
タイミング信号発生器は、第1クロック信号のポジティブエッジおよびネガティブエッジのうち、第1クロックドメインにおけるデータを変化のトリガとなる一方であるトリガエッジを検出するエッジ検出回路と、エッジ検出回路の出力を、第1クロック信号の周期の実質的に1/2遅延させ、タイミング信号を出力する遅延回路と、を含んでもよい。
【0015】
タイミング信号発生器は、第1クロック信号のポジティブエッジおよびネガティブエッジのうち非トリガエッジを検出するエッジ検出回路を含み、エッジ検出回路の出力をタイミング信号としてもよい。
【0016】
タイミング信号発生器は、エッジ検出回路の前段に直列に接続された複数の第1D型フリップフロップを含んでもよい。各第1D型フリップフロップは、そのD入力に第1クロック信号を受け、そのクロック入力に第2クロック信号を受けてもよい。
【0017】
エッジ検出回路は、そのD入力に第1クロック信号を受け、そのクロック入力に第2クロック信号を受ける第2D型フリップフロップと、第2D型フリップフロップの入力信号と、第2D型フリップフロップの出力信号の反転信号の論理積を生成するANDゲートと、を含んでもよい。
【0018】
遅延回路は、直列に接続された少なくともひとつの第3D型フリップフロップを含んでもよい。
【0019】
エッジ検出回路は、そのD入力に第1クロック信号を受け、そのクロック入力に第2クロック信号を受ける第4D型フリップフロップと、第4D型フリップフロップの入力信号の反転信号と、第4D型フリップフロップの出力信号の論理積を生成するANDゲートと、を含んでもよい。
【0020】
インタフェース回路は、第1クロックドメインから第2クロックドメインに第1データを受け渡す第1回路を含んでもよい。第1回路は、そのD入力に第1データを受け、そのクロック入力に第1クロック信号を受ける第5D型フリップフロップと、第5D型フリップフロップの出力信号が入力される第1入力端子と、第2入力端子と、を有し、タイミング信号に応じた一方を選択する第1セレクタと、そのデータ入力に第1セレクタの出力信号を受け、そのクロック入力に第2クロック信号を受け、その出力が第1セレクタの第2入力端子と接続された第6D型フリップフロップと、を含んでもよい。
【0021】
インタフェース回路は、第2クロックドメインから第1クロックドメインに第2データを受け渡す第2回路を含んでもよい。第2回路は、第2データを受ける第1入力端子と、第2入力端子と、を有し、タイミング信号に応じた一方を選択する第2セレクタと、そのデータ入力に第2セレクタの出力信号を受け、そのクロック入力に第2クロック信号を受け、その出力が第2セレクタの第2入力端子と接続された第7D型フリップフロップと、そのD入力に第7D型フリップフロップの出力信号を受け、そのクロック入力に第1クロック信号を受ける第8D型フリップフロップと、を含んでもよい。
【0022】
本発明の別の態様は、半導体集積回路に関する。半導体集積回路は、第1クロック信号と同期して動作する第1組み合わせ回路と、第2クロック信号と同期して動作する第2組み合わせ回路と、第1組み合わせ回路と第2組み合わせ回路の間に設けられる上述のいずれかのクロック乗せ換え回路と、を備える。
【0023】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るクロック乗せ換え回路によれば、回路規模を縮小できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明者が検討した半導体集積回路の回路図である。
図2】実施の形態に係るクロック乗せ換え回路を備える半導体集積回路の回路図である。
図3】タイミング信号発生器の具体的な構成例を示す回路図である。
図4】第1回路の構成例を示す回路図である。
図5】第2回路の構成例を示す回路図である。
図6】半導体集積回路のタイミング信号発生器の動作波形図である。
図7】半導体集積回路の第1回路の動作波形図である。
図8】半導体集積回路の第2回路の動作波形図である。
図9】第1変形例に係るタイミング信号発生器の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0027】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0028】
図2は、実施の形態に係るクロック乗せ換え回路100を備える半導体集積回路2の回路図である。半導体集積回路2は、図1と同様に、第1クロックドメイン4および第2クロックドメイン6を備える。
【0029】
第1組み合わせ回路8は、第1周波数f1の第1クロック信号CK1と同期して動作し、第2組み合わせ回路10は、第1周波数f1より高い第2周波数f2の第2クロック信号CK2と同期して動作する。クロック乗せ換え回路100は、第1クロックドメイン4と第2クロックドメイン6の境界に設けられ、それらの間でデータを受け渡す。第1クロック信号CK1と第2クロック信号CK2は互いに非同期で、つまり位相関係が不定の状態で独立に生成される。
【0030】
クロック乗せ換え回路100は、タイミング信号発生器102およびインタフェース回路104を備える。
タイミング信号発生器102は、第1クロック信号CK1および第2クロック信号CK2を利用してタイミング信号S1を生成する。タイミング信号S1のエッジは、第1クロック信号CK1のポジティブエッジおよびネガティブエッジのうち、第1クロックドメイン4におけるデータを変化のトリガとならないエッジである非トリガエッジの近傍に位置する。
【0031】
本実施の形態に係る回路システムでは、ポジティブエッジがトリガとして利用されるものとし、ポジティブエッジがトリガエッジ、ネガティブエッジが非トリガエッジとなる。したがってタイミング信号発生器102は、タイミング信号S1のトリガエッジ(ポジティブエッジ)を第1クロック信号CK1のネガティブエッジの近傍に配置する。
【0032】
インタフェース回路104は、少なくともタイミング信号S1を利用して、より具体的には、タイミング信号S1および第1クロック信号CK1、第2クロック信号CK2を利用して、第1クロックドメイン4と第2クロックドメイン6の間で、データの受け渡しを行う。
【0033】
インタフェース回路104は、第1回路106および第2回路108の少なくとも一方を備える。第1回路106は、第1クロックドメイン4の第1組み合わせ回路8から第1クロック信号CK1と同期した第1データD1を受け、第2クロックドメイン6の第2組み合わせ回路10に受け渡す。第2回路108は、第2クロックドメイン6の第2組み合わせ回路10から第2クロック信号CK2と同期した第2データD2を受け、第1クロックドメイン4の第1組み合わせ回路8に受け渡す。
【0034】
図3は、タイミング信号発生器102の具体的な構成例を示す回路図である。エッジ検出回路110、遅延回路112、メタステーブル除去回路114、第1バッファ116、第2バッファ118を備える。
【0035】
エッジ検出回路110は、第1クロック信号CK1のポジティブエッジおよびネガティブエッジのうち、第1クロックドメイン4におけるデータを変化のトリガとなる一方であるトリガエッジ(つまりポジティブエッジ)を検出する。エッジ検出回路110は、第1クロック信号CK1のポジティブエッジのタイミングを示すエッジ検出信号S2を生成する。
【0036】
遅延回路112は、エッジ検出回路110が生成するエッジ検出信号S2を、第1クロック信号CKの周期T1の実質的に1/2(=T1/2)遅延させ、タイミング信号S1を出力する。たとえば遅延回路112は、第2クロック信号CK2の周期T2を単位として、エッジ検出信号S2を遅延させる。T1=T2×Nなる関係が成り立つ場合、遅延回路112は、第2クロック信号CK2のM=(N/2)サイクルにわたり、エッジ検出信号S2を遅延させる。N/2が非整数の場合、N/2に最も近い整数をMとし、Mサイクルにわたり、エッジ検出信号S2を遅延してもよい。
【0037】
メタステーブル除去回路114は、エッジ検出回路110の前段に設けられる。メタステーブル除去回路114は、エッジ検出回路110の前段に直列に接続された複数の第1D型フリップフロップFF1を含んでもよい。図3にはフリップフロップFF1が2個示されるが、その個数は特に限定されない。第1D型フリップフロップFF1はそれぞれ、そのD入力に前段からの第1クロック信号CK1を受け、そのクロック入力に第2クロック信号CK2を受け、第2クロック信号CK2によりリタイミングされた第1クロック信号CK1を、後段に出力する。メタステーブル除去回路114は、整形された第1クロック信号CK1aを出力する。
【0038】
また遅延回路112は、直列に接続されたM個の第3D型フリップフロップFF3を含んでもよい。第3D型フリップフロップFF3はそれぞれ、自身の入力を、第2クロック信号CK2の周期T2だけ遅延させる。
【0039】
エッジ検出回路110は、第2D型フリップフロップFF2、ANDゲート120を含む。第2D型フリップフロップFF2は、そのD入力にメタステーブル除去回路114からの第1クロック信号CK1aを受け、そのクロック入力に第2クロック信号CK2を受ける。ANDゲート120は、第2D型フリップフロップFF2の入力信号CK1aと、第2D型フリップフロップFF2の出力信号CK1bの反転信号#CK1b(#は論理反転を示す)の論理積を生成する。ANDゲート120の出力であるエッジ検出信号S2は、第1クロック信号CK1aのポジティブエッジをトリガとしてハイレベルとなる。
【0040】
なお第1クロック信号CK1、第2クロック信号CK2を生成するオシレータの出力インピーダンスが十分低い場合には、第1バッファ116、第2バッファ118は省略しうる。
【0041】
図4は、第1回路106の構成例を示す回路図である。第1回路106は、第5D型フリップフロップFF5、第6D型フリップフロップFF6、第1セレクタSEL1を含む。第5D型フリップフロップFF5は、そのD入力に第1データD1を受け、そのクロック入力に第1クロック信号CK1を受ける。第1セレクタSEL1の第1入力端子(1)には、第5D型フリップフロップFF5の出力信号D1aが入力され、第2入力端子(0)には、第6D型フリップフロップFF6の出力信号D1bが入力され、タイミング信号S1に応じた一方を選択する。具体的にはタイミング信号S1がハイレベルのときに第5D型フリップフロップFF5の出力D1aを選択し、ローレベルのときに第6D型フリップフロップFF6の出力D1bを選択する。第5D型フリップフロップFF5は、そのデータ入力に第1セレクタSEL1の出力D1cを受け、そのクロック入力に第2クロック信号CK2を受ける。第6D型フリップフロップFF6の出力信号D1bが、第2クロックドメイン6の第2組み合わせ回路10に供給される。
【0042】
図5は、第2回路108の構成例を示す回路図である。第2回路108は、第7D型フリップフロップFF7、第8D型フリップフロップFF8、第2セレクタSEL2を含む。
【0043】
第2セレクタSEL2の第1入力端子(1)には、第2データD2が入力され、その第2入力端子(0)には、第7D型フリップフロップFF7の出力信号D2bが入力され、タイミング信号S1に応じた一方を選択する。具体的にはタイミング信号S1がハイレベルのとき、第2データD2を選択し、ローレベルのとき第7D型フリップフロップFF7の出力D2bを選択する。
【0044】
第7D型フリップフロップFF7は、そのデータ入力に第2セレクタSEL2の出力信号D2aを受け、そのクロック入力に第2クロック信号CK2を受け、その出力が第2セレクタSEL2の第2入力端子(0)と接続される。第8D型フリップフロップFF8は、そのD入力に第7D型フリップフロップFF7の出力信号D2bを受け、そのクロック入力に第1クロック信号CK1を受ける。第8D型フリップフロップFF8の出力D2cが、第1クロックドメイン4の第1組み合わせ回路8へ供給される。
【0045】
以上が半導体集積回路2の構成である。続いてその動作を説明する。
図6は、半導体集積回路2のタイミング信号発生器102の動作波形図である。エッジ検出回路110により、第1クロック信号CK1のポジティブエッジごとにハイレベルとなるエッジ検出信号S2が生成される。遅延回路112は、エッジ検出信号S2を、Mサイクル(図6では2サイクル)遅延させ、第1クロック信号CK1のネガティブエッジの近傍にシフトすることにより、タイミング信号S1を生成する。遅延量τは、第1クロック信号CK1に対するセットアップ時間およびホールド時間の仕様を満たすように定めればよい。
【0046】
図7は、半導体集積回路2の第1回路106の動作波形図である。第1回路106の第5D型フリップフロップFF5には、第1クロック信号CK1のポジティブエッジをトリガとして、第1組み合わせ回路8からの第1データD1が取り込まれる。上述のように、タイミング信号発生器102は、第1クロック信号CK1のネガティブエッジ付近においてハイレベルとなるタイミング信号S1を生成する。そして第6D型フリップフロップFF6には、タイミング信号S1がハイレベルとなるサイクルにおいて、第5D型フリップフロップFF5からの第1データD1aが取り込まれ、その出力D1bが更新される。
【0047】
したがって、第1回路106によれば、十分なセットアップ時間Tsと十分なホールド時間Thを確保した状態で、第1組み合わせ回路8からの第1データD1を、第2クロックCLK2と同期して第2組み合わせ回路10へと受け渡すことができる。
【0048】
図8は、半導体集積回路2の第2回路108の動作波形図である。第2回路108の第7D型フリップフロップFF7には、タイミング信号S1がハイレベルとなるサイクルにおいて、第2組み合わせ回路10からの第2データD2が取り込まれ、その出力D2bが更新される。上述のように、タイミング信号S1のハイレベル区間は、第1クロック信号CK1のネガティブエッジ付近に位置する。そして第8D型フリップフロップFF8には、第1クロック信号CK1のポジティブエッジ(トリガエッジ)に応答して、第7D型フリップフロップFF7の出力信号D2bが取り込まれる。
【0049】
したがって、第2回路108によれば、十分なセットアップ時間Tsと十分なホールド時間Thを確保した状態で、第2組み合わせ回路10からの第2データD2を、第1クロックCLK1と同期して第1組み合わせ回路8へと受け渡すことができる。
【0050】
以上が半導体集積回路2の動作である。
【0051】
この半導体集積回路2の利点は、図1の半導体集積回路2rとの対比により明確となる。図1の半導体集積回路2rでは、データごと、ビットごとに、メタステーブル除去回路304および安定化回路306が必要であった。
これに対して実施の形態に係る半導体集積回路2によれば、複数のデータおよび/または複数のビットに共通のタイミング信号S1を生成することとし、このタイミング信号S1を、複数のデータ、複数のビットに分配することとした。そして、タイミング信号S1の生成過程においてメタステーブル対策および一致判定を行うかわりに、データごと、ビットごとの、メタステーブル対策、安定化の回路を省略することにより、回路規模を縮小することができる。かかる効果は、第1クロックドメイン4と第2クロックドメイン6の間で受け渡されるデータの個数、ビット幅が大きくほど顕著となる。
【0052】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0053】
(第1変形例)
図9は、第1変形例に係るタイミング信号発生器102aの回路図である。タイミング信号発生器102aは、メタステーブル除去回路114およびエッジ検出回路110aを備える。メタステーブル除去回路114は、図3のそれと同じである。エッジ検出回路110aは、第1クロック信号CK1aの非トリガエッジ(ネガティブエッジ)を検出する。タイミング信号発生器102aは、エッジ検出回路110aの出力を、タイミング信号S1とする。
【0054】
たとえばエッジ検出回路110aは、第4D型フリップフロップFF4およびANDゲート122を含む。第4D型フリップフロップFF4は、そのD入力に第1クロック信号CK1aを受け、そのクロック入力に第2クロック信号CK2を受ける。ANDゲート122は、第4D型フリップフロップFF4の入力信号CK1aの反転信号#CK1aと、第4D型フリップフロップFF4の出力信号CK1bの論理積を生成する。ANDゲート122の出力は、第1クロック信号CK1aのポジティブエッジから、第2クロック信号CK2の1サイクルの間、ハイレベルとなる。
【0055】
このタイミング信号発生器102aにより生成されたタイミング信号S1は、図3のタイミング信号発生器102により生成されるタイミング信号S1と同様に用いることができる。なおエッジ検出回路110aの後段に、遅延回路を挿入してもよい。
【0056】
(第2変形例)
実施の形態では、インタフェース回路104は、第1クロックドメイン4と第2クロックドメイン6の間で双方向でデータの送受信を行う場合を説明したが、いずれか一方向のみにデータを伝送してもよい。
【0057】
(第3変形例)
実施の形態では、ポジティブエッジがトリガエッジとして使用されるシステムを説明したが、本発明は、ネガティブエッジがトリガエッジとして使用されるシステム、あるいはそれらが混在するシステムにも適用可能である。
【0058】
(第4変形例)
実施の形態では、第1クロック信号CK1と第2クロック信号CK2が非同期の場合を説明したが、それらは同期していてもよい。
【0059】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0060】
2…半導体集積回路、4…第1クロックドメイン、6…第2クロックドメイン、8…第1組み合わせ回路、10…第2組み合わせ回路、100…クロック乗せ換え回路、102…タイミング信号発生器、104…インタフェース回路、106…第1回路、108…第2回路、110…エッジ検出回路、112…遅延回路、114…メタステーブル除去回路、116…第1バッファ、118…第2バッファ、120,122…ANDゲート、FF1…第1D型フリップフロップ、FF2…第2D型フリップフロップ、FF3…第3D型フリップフロップ、FF4…第4D型フリップフロップ、FF5…第5D型フリップフロップ、FF6…第6D型フリップフロップ、FF7…第7D型フリップフロップ、FF8…第8D型フリップフロップ、SEL1…第1セレクタ、SEL2…第2セレクタ、CK1…第1クロック信号、CK2…第2クロック信号、S1…タイミング信号、S2…エッジ検出信号。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9