(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2スイッチは、ソースが対応する前記クランプ回路の出力端子と接続され、ドレインが前記内部バスと接続されたPチャンネルMOSFETであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の電源選択回路。
【背景技術】
【0002】
内蔵バッテリを有する電子機器は、内蔵バッテリからの電力に加えて、外部の電源アダプタやバスからの電力を利用して動作可能に構成される。こうしたマルチ電源対応の電子機器に搭載されるIC(Integrated Circuit)は、電池電圧と外部電源からの電圧それぞれを受ける複数の電源端子を備え、ICに内蔵される電源選択回路によって電源電圧を選択し、動作可能となっている。
【0003】
図1は、本発明者が検討した電源選択回路100rを備える信号処理回路200rの回路図である。
信号処理回路200rは、複数の電源端子VDD1〜VDD3、キャパシタ接続端子REG、電源選択回路100r、内部回路202、206、電源回路204、を備える。キャパシタ接続端子REGには、外付けのキャパシタC1が接続される。複数の電源端子VDD1〜VDD3には、異なる電源からの電源電圧V
DD1〜V
DD3が供給される。たとえば信号処理回路200rがノートPCに搭載される場合、電源端子VDD1〜VDD3にはそれぞれ、USBホストからのバス電圧V
BUS、電池からの電池電圧V
BAT、ACアダプタからの電圧V
AC、が供給される。
【0004】
電源選択回路100rは、複数の電源電圧V
BUS,V
BAT、V
ACのうち、現在入力されている電源電圧を選択し、所定レベルに降圧して内部バス20に出力する。内部バス20は、REG端子と接続される。
【0005】
電源選択回路100rは、複数のクランプ回路10_1〜10_3を備える。クランプ回路10はダイオードクランプ回路であり、同じ構成を有する。具体的にはクランプ回路10は、ツェナーダイオード12、第1トランジスタ14、第2トランジスタ16、抵抗R1を備える。第1トランジスタ14および第2トランジスタ16はNチャンネルMOSFETであり、ボディダイオードが逆向きとなるように対向配置される。第1トランジスタ14および第2トランジスタ16のゲートは共通に接続され、抵抗R1を介して、対応する電源端子VDDと接続される。第1トランジスタ14および第2トランジスタ16のゲートと接地の間には、ツェナーダイオード12が設けられる。
【0006】
電源端子V
DDに電圧が供給されると、ツェナーダイオード12によって第1トランジスタ14および第2トランジスタ16のゲート電圧が、ツェナー電圧Vzにクランプされる。そして内部バス20には、ゲート電圧Vzから、第1トランジスタ14のゲートソース間電圧V
F降下した電圧V
REGが発生する。Vz=5.5V、V
F=0.5Vとすれば、内部電圧V
REGはVz−V
F≒5Vとなる。
【0007】
クランプ回路10_1〜10_3は、いわゆるダイオードOR回路を構成する。したがって複数の電源電圧が供給された場合、それらが同じ電圧レベルに降圧されて、内部バス20に発生する。
【0008】
内部バス20には、内部回路202、206、電源回路204が接続される。内部回路202は、5V系の回路である。電源回路204は、たとえばLDO(Low Drop Output)であり、内部電源V
REGを1.5Vに降圧する。内部回路206は、1.5V系の回路である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者は、
図1の電源選択回路100rについて検討した結果、以下の課題を認識するに至った。
図1の電源選択回路100rでは、複数の電源端子VDD1〜VDD3は平等であり、優先順位はない。したがって、たとえば電源端子VDD2に19Vの電圧V
ACが、電源端子VDD3に8.4Vの電池電圧V
BATが同時に供給されたとすると、内部回路202、電源回路204には、電源アダプタと電池の両方から電力が供給されることになる。
【0011】
ここで、信号処理回路200rを搭載する電子機器のある設計者は、内蔵電池の持続時間を伸ばしたいと考える場合には、内蔵電池が消費されることを望まないであろう。あるいは別の電子機器の設計者は、電力損失の観点からは、内蔵電池を優先消費することを望むかもしれない。
図1の電源選択回路100では、こうした設計者の要望に添うことができないという問題がある。
【0012】
本発明はかかる状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、適切なチャンネルの電源電圧を選択可能な電源選択回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のある態様は、複数チャンネルの電源から異なる複数の電源電圧を受ける電源選択回路に関する。電源選択回路は、複数チャンネルに対応し、それぞれが対応する電源電圧を受ける複数の電源端子と、内部バスと、複数チャンネルに対応し、それぞれが対応する電源電圧を所定のクランプ電圧以下にクランプする複数のクランプ回路と、複数チャンネルに対応し、それぞれが対応するクランプ回路と並列に設けられた複数の第1スイッチと、複数チャンネルに対応し、それぞれが対応するクランプ回路の出力端子と内部バスの間に設けられた複数の第2スイッチと、複数チャンネルに対応し、それぞれが対応する電源電圧の電圧レベルを判定する複数の電圧判定器と、複数チャンネルの優先順位が定められており、優先順位および複数の電圧判定器の出力にもとづいて、複数の第1スイッチおよび複数の第2スイッチを制御するコントローラと、を備える。
【0014】
この態様によると、電源選択回路を搭載する機器の設計者は、優先して使用すべき電源を、優先順位の高いチャンネルの電源端子に接続することにより、最適なチャンネルの電源を選択して使用することができる。
【0015】
電圧判定器は、対応する電源電圧が所定の正常電圧範囲に含まれるか否かを判定するよう構成されてもよい。コントローラは、正常電圧範囲に含まれる電源電圧が複数存在するとき、それらのうち最も優先順位の高いチャンネルの第1スイッチおよび第2スイッチをオン状態とし、それ以外のチャンネルの第2スイッチをオフ状態としてもよい。
第1スイッチをオンすることで、ダイオードクランプ回路がバイパスされ、電圧降下を小さくして電力損失を低減できる。それに加えて、優先順位が低いチャンネルの第2スイッチをオフすることで、それらのチャンネルの電源から電力が消費されるのを確実に防止できる。
【0016】
コントローラは、各チャンネルについて、電源電圧が正常電圧範囲に含まれるとき第1スイッチをオンしてもよい。この場合、各チャンネルの第1スイッチを、そのチャンネルの電源電圧のみにもとづいて制御すればよく、他のチャンネルを参照する必要がないため、コントローラの制御を簡素化できる。
【0017】
複数の第1スイッチはそれぞれ、起動時においてオフするよう構成されてもよい。
これにより、あるチャンネルに過電圧が入力されたときに、クランプ回路がバイパスされて、電源バスに過電圧が供給されるのを防止できる。
【0018】
コントローラは、内部バスの電圧を受けて動作するものであってもよい。複数の第2スイッチはそれぞれ、起動時においてオンとなるよう構成されてもよい。これにより、少なくともひとつの電源電圧が、クランプ回路を経由して内部バスに供給されることが保証され、コントローラを確実に動作させることができる。
【0019】
第1スイッチは、ボディダイオードが逆向きとなるよう直列に対向配置された2個のPチャンネルMOSFETを含んでもよい。これにより、電流の逆流を防止できる。
【0020】
第2スイッチは、ソースが対応するクランプ回路の出力端子と接続され、ドレインが内部バスと接続されたPチャンネルMOSFETであってもよい。
【0021】
電圧判定器は、電源電圧を所定の正常電圧範囲の上側しきい値と比較する過電圧ロックアウト回路と、電源電圧を所定の正常電圧範囲の下側しきい値と比較する低電圧ロックアウト回路と、を含んでもよい。
【0022】
コントローラは、最優先の第1チャンネルにおいて、(1A)第1チャンネルの電源電圧が正常電圧範囲に含まれるとき、第1チャンネルの第1スイッチをオンし、(1B)含まれないとき第1チャンネルの第1スイッチをオフし、(2A)第1チャンネルの電源電圧が上側しきい値より高く、かつ、その他の少なくともひとつのチャンネルの電源電圧が正常電圧範囲に含まれるとき、第1チャンネルの第2スイッチをオフし、(2B)それ以外のとき第1チャンネルの第2スイッチをオンしてもよい。
【0023】
コントローラは、2番目に優先の第2チャンネルにおいて、(1A)第2チャンネルの電源電圧が正常電圧範囲に含まれるとき、第2チャンネルの第1スイッチをオンし、(1B)含まれないとき第2チャンネルの第1スイッチをオフしてもよい。
【0024】
電圧選択回路は、ひとつの半導体基板に一体集積化されてもよい。
「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。
【0025】
電圧選択回路は、内部バスと接続されるキャパシタ接続端子を備え、キャパシタ接続端子に、キャパシタが外付け可能となっていてもよい。これにより内部バスの電圧を安定化できる。
【0026】
複数チャンネルの電源のひとつは、USB(Universal Serial Bus)ホストであってもよい。複数チャンネルの電源のひとつは、ACアダプタであってもよい。複数チャンネルの電源のひとつは、電源選択回路が搭載される電池駆動型電子機器の内蔵電池であってもよい。
【0027】
本発明の別の態様は、信号処理回路に関する。信号処理回路は、上述のいずれかの電源選択回路と、電源選択回路の内部バスの電圧を受けて動作する内部回路と、を備え、ひとつの半導体基板に一体集積化されてもよい。
【0028】
信号処理回路は、USB(Universal Serial Bus)−PD(Power Delivery)規格に準拠してもよい。電源選択回路のひとつの電源端子は、USBバスと接続され、内部回路は、USBバスを介して、USBホストの電源と通信し、給電されるバス電圧をネゴシエートしてもよい。
【0029】
本発明の別の態様は、電子機器に関する。電子機器は、上述の信号処理回路を備える。
【0030】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0031】
本発明のある態様によれば、適切なチャンネルの電源電圧を選択できる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0034】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。また、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0035】
図2は、実施の形態に係る電源選択回路100を備える信号処理回路200の回路図である。信号処理回路200は、電源選択回路100および内部回路202a〜202c、電源回路204a、204bを備え、ひとつの半導体基板に一体集積化された機能IC(Integrated Circuit)である。
【0036】
電源選択回路100は、複数チャンネルCH1〜CH3の電源PS1〜PS3から異なる複数の電源電圧V
DD1〜V
DD3を受け、内部バス20に接続される内部回路202や電源回路204に供給する。なおチャンネル数は任意でよいが、本実施の形態では、理解の容易化のため、3チャンネルの場合を説明する。
【0037】
電源選択回路100は、複数の電源端子VDD1〜VDD3、キャパシタ接続端子REG、内部バス20、複数のクランプ回路10_1〜10_3、複数の電圧判定器30_1〜30_3、コントローラ40、複数の第1スイッチSW1_1〜SW1_3、複数の第2スイッチSW2_1〜SW2_3を備える。
【0038】
複数の電源端子VDDは、複数チャンネルCHに対応しており、それぞれが対応する電源電圧V
DDを受ける。
【0039】
複数のクランプ回路10は、複数チャンネルCHに対応し、それぞれが対応する電源電圧V
DDを所定のクランプ電圧V
CL以下にクランプする。たとえばクランプ回路10は、ツェナーダイオード12、第1トランジスタ14、第2トランジスタ16、抵抗R1を含むダイオードクランプ回路であってもよい。ただしクランプ回路10の構成はそれには限定されない。たとえばクランプ電圧V
CLは5V付近に設定される。
【0040】
複数の第1スイッチSW1は、複数チャンネルCHに対応し、それぞれが対応するクランプ回路10と並列に設けられる。複数の第2スイッチSW2は、複数チャンネルCHに対応し、それぞれが対応するクランプ回路10の出力端子と内部バス20の間に設けられる。
図3(a)、(b)は、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2の構成例を示す回路図である。
図3(a)に示すように第1スイッチSW1は、ボディダイオードが逆向きとなるよう直列に対向配置された2個のPチャンネルMOSFETを含む。
図3(b)に示すように、第2スイッチSW2は、ソースが対応するクランプ回路10の出力端子と接続され、ドレインが内部バス20と接続されたPチャンネルMOSFETである。
【0041】
図2に戻る。複数の電圧判定器30は、複数チャンネルCHに対応し、それぞれが対応する電源電圧V
DDの電圧レベルを判定する。より具体的には、電圧判定器30は、対応する電源電圧V
DDが所定の正常電圧範囲に含まれるか否かを判定するよう構成される。電圧判定器30は、電源電圧V
DDを所定の正常電圧範囲の上限しきい値をV
OVLOと比較する過電圧ロックアウト回路32と、電源電圧V
DDを正常電圧範囲の下限しきい値をV
UVLOとする低電圧ロックアウト回路34を含んでもよい。
【0042】
上側しきい値V
OVLOは、クランプ電圧V
CLよりも高く、下側しきい値V
UVLOは、クランプ電圧V
CLよりも低く定められる。たとえばクランプ電圧V
CLが5Vであるとき、上側しきい値V
OVLOは5.5V、下側しきい値V
UVLOは4.5V付近に定められる。
【0043】
コントローラ40には、複数チャンネルCH1〜CH3の優先順位が定められている。本実施の形態では、CH1が最も優先順位が高く、CH2、CH3の順で低くなるものとする。
【0044】
コントローラ40は、この優先順位および複数の電圧判定器30の出力にもとづいて、複数の第1スイッチSW1_1〜SW1_3および複数の第2スイッチSW2_1〜SW2_3を制御するように構成される。
【0045】
内部バス20には、複数の第1スイッチSW1_1〜SW1_3および複数の第2スイッチSW2_1〜SW2_3のオン、オフ状態に応じて、任意の電源PSからの電力が供給される。内部バス20は、キャパシタ接続端子REGと接続されており、キャパシタ接続端子REGには、大容量のキャパシタC1が外付けされる。キャパシタC1によって、負荷変動やスイッチの切りかえにおいて、内部バス20に生ずる内部電源電圧V
REGが変動するのを抑制できる。
【0046】
内部回路202および電源回路204は、内部電源電圧V
REGを受けて動作する。
内部回路202cは、5V系の回路であり、V
CL=5V付近の内部電源電圧V
REGを直接受けて動作可能である。内部回路202aは2.8V系であり電源回路204aは、内部電源電圧V
REGを2.8Vに降圧し、内部回路202aに供給する。内部回路202bは1.5V系であり電源回路204bは、内部電源電圧V
REGを1.5Vに降圧し、内部回路202bに供給する。なお、内部回路202の動作電圧は特に限定されない。
【0047】
なおコントローラ40および電圧判定器30_1〜30_3は、内部バス20の電圧V
REGを受けて動作するものであり、したがって内部回路202a〜202cのいずれかに属する。続いて、コントローラ40による具体的な制御を説明する。
【0048】
コントローラ40は、正常電圧範囲に含まれる電源電圧V
DDが複数存在するとき、それらのうち最も優先順位の高いチャンネルCHiの第1スイッチSW1_iおよび第2スイッチSW2_iをオン状態とし、それ以外のチャンネルの第2スイッチSW_j(j≠i)をオフ状態とする。これがコントローラ40の基本動作である。
【0049】
より具体的にはコントローラ40は、以下の制御を行ってもよい。コントローラ40は、信号処理回路200の起動時において、複数の第1スイッチSW1_1〜SW1_3をオフ、複数の第2スイッチSW2_1〜SW2_3をオンとし、その後、判定処理を行う。
【0050】
コントローラ40は、各チャンネルkについて、電源電圧V
DDkが正常電圧範囲に含まれるとき第1スイッチSW1_kをオンする。
【0051】
コントローラ40の制御をまとめると以下の通りである。
最優先の第1チャンネルCH1:
SW1_1: (1A)第1チャンネルCH1の電源電圧V
DD1が正常電圧範囲に含まれるとき、第1チャンネルCH1の第1スイッチSW1_1をオンし、(1B)含まれないとき第1チャンネルCH1の第1スイッチSW1_1をオフする。
SW2_1: (2A)第1チャンネルCH1の電源電圧V
DD1が上側しきい値V
OVLOより高く、かつ、その他のチャンネルの電源電圧V
DD2、V
DD3の少なくともひとつが正常電圧範囲に含まれるとき、第1チャンネルCH1の第2スイッチSW2_1をオフし、(2B)それ以外のとき第1チャンネルCH1の第2スイッチSW2_1をオンする。
【0052】
2番目に優先の第2チャンネルCH2:
SW1_2: (1A)第2チャンネルCH2の電源電圧V
DD2が正常電圧範囲に含まれるとき、第2チャンネルCH2の第1スイッチSW1_2をオンし、(1B)含まれないとき第2チャンネルの第1スイッチSW1_2をオフする。
SW2_2: (2A)(i)第1チャンネルCH1の電源電圧V
DD1が上側しきい値V
OVLOより高いとき、または、(ii)第1チャンネルCH1および第2チャンネルCH2の電源電圧V
DD1、V
DD2が上側しきい値V
OVLOより高く、かつ他のチャンネルCH3の電源電圧V
DD3が正常電圧範囲に含まれるとき、または、(iii)すべてのチャンネルCH1〜CH3の電源電圧V
DD1〜V
DD3が上側しきい値V
OVLOより高いときに、第2チャンネルCH2の第2スイッチSW2をオフする。(2B)それ以外のとき第2チャンネルCH2の第2スイッチSW2をオンする。
【0053】
3番目に優先の第3チャンネルCH3:
SW1_3: (1A)第3チャンネルCH3の電源電圧V
DD3が正常電圧範囲に含まれるとき、第3チャンネルCH3の第1スイッチSW1_3をオンし、(1B)含まれないとき第3チャンネルCH3の第1スイッチSW1_3をオフする。
SW2_3: (2A)(i)他のチャンネルCH1、CH2の電源電圧V
DD1、V
DD2の少なくともひとつが正常電圧範囲に含まれるとき、または(ii)すべてチャンネルCH1〜CH3の電源電圧V
DD1〜V
DD3が上側しきい値V
OVLOより高いとき、第3チャンネルCH3の第3スイッチSW3をオフする。(2B)それ以外のとき第3チャンネルCH3の第3スイッチSW3をオンする。
【0054】
コントローラ40は、信号処理回路200の起動完了後、電圧判定器30_1〜30_3の出力を監視し続け、その出力が変化すると、第1スイッチSW1_1〜SW1_3および第2スイッチSW2_1〜SW2_3の状態を更新する。
【0055】
以上が電源選択回路100の構成である。続いてその動作を説明する。
図4は、複数の第1スイッチSW1の制御に関するフローチャートである。
信号処理回路200が起動すると、全チャンネルCH1〜CH3の第1スイッチSW1_1〜SW1_3がオフされる(S100)。これにより、過電圧の電源電圧が入力されたときに、クランプ回路10を経由せずに内部バス20に印加されることを防止できる。
【0056】
コントローラ40および複数の電圧判定器30_1〜30_3が動作可能となると、第1スイッチSW1の制御が開始される。コントローラ40は、複数チャンネルCH1〜CH3それぞれについて(S102)、電源電圧V
DDiが正常電圧範囲に含まれるか否かを判定する(S104)。そしてi番目のチャンネルCHiにおいて含まれるとき(S104のY)、そのチャンネルCHiの第1スイッチSW1_iをオンする(S106)。含まれないとき(S104のN)、第1スイッチSW1_iをオフする(S108)。
【0057】
コントローラ40は、処理S102を所定の周期で繰り返し行う。なお、コントローラ40は、複数チャンネルの第1スイッチSW1の制御を同時に行ってもよい。
【0058】
図5(a)〜(c)は、複数の第2スイッチSW2_1〜SW2_3の真理値表である。真理値表の空欄はオン(ON)を示す。
【0059】
図5(a)を参照する。第1チャンネルCH1の第2スイッチSW2_1は、V
DD1<V
OVLOである限りオンを維持する。V
OVLO<V
DD1の場合、第2チャンネルCH2もしくは第3チャンネルCH3の電源電圧V
DD2、V
DD3が正常電圧範囲に含まれる場合にはオフとされ、それ以外の場合はオンを維持する。
【0060】
図5(b)を参照する。第2チャンネルCH2の第2スイッチSW2_2は、自分より優先順位の高いチャンネルCH1が正常電圧範囲に含まれるとき(V
UVLO<V
DD1<V
OVLO)、オフである。
また自分より優先順位の高いチャンネルCH1が低電圧状態である場合(V
DD1<V
UVLO)、自らが過電圧状態(V
DD2<V
OVLO)であり、かつ自分より優先順位の低いチャンネルCH3が正常電圧範囲に含まれる(V
UVLO<V
DD3<V
OVLO)ときにオフであり、それ以外のときにオンである。
自分より優先順位の高いチャンネルCH1が過電圧状態(V
OVLO<V
DD1)であるときには、自らが過電圧状態(V
DD2<V
OVLO)であり、かつ自分より優先順位の低いチャンネルCH3が低電圧状態でない(V
UVLO<V
DD3)ときにオフであり、それ以外のときにオンとなる。
【0061】
図5(c)を参照する。第3チャンネルCH3の第2スイッチSW2_3は、最上位のチャンネルCH1が正常電圧範囲に含まれるとき(V
UVLO<V
DD1<V
OVLO)、オフである。
また第2スイッチSW2_3は、最上位のチャンネルCH1が低電圧状態(V
DD1<V
UVLO)である場合、(i)第2チャンネルCH2が正常電圧範囲であるとき(V
UVLO<V
DD2<V
OVLO)、または(ii)第2チャンネルCH2、第3チャンネルCH3が両方過電圧状態であるとき(V
OVLO<V
DD2 && V
OVLO<V
DD3)、オフである。それ以外のときオンである。
また第2スイッチSW2_3は、最上位のチャンネルCH1が過電圧状態(V
OVLO<
VDD1)である場合、(i)第2チャンネルCH2が正常電圧範囲であるとき(V
UVLO<V
DD2<V
OVLO)、または(ii)第3チャンネルCH3が過電圧状態であるとき(V
OVLO<V
DD3)、オフである。それ以外のときオンである。
【0062】
以上が電源選択回路100の動作である。続いてその利点を説明する。
【0063】
この電源選択回路100によれば、複数のチャンネルCH1〜CH3を優先付けし、優先順位の高いチャンネルの電力を優先して使用することとした。したがって、信号処理回路200を搭載する機器の設計者は、優先して使用すべき電源を、優先順位の高いチャンネルの電源端子に接続することにより、最適なチャンネルの電源を選択して使用することができる。
【0064】
この電源選択回路100では、クランプ回路10と並列に第1スイッチSW1を設け、使用チャンネルの第1スイッチSW1をオンすることで、クランプ回路10がバイパスされ、電圧降下を小さくして電力損失を低減できる。それに加えて、優先順位が低い不使用チャンネルの第2スイッチSW2をオフすることで、そのチャンネルCH2の電源から電力が消費されるのを確実に防止できる。
【0065】
またコントローラ40は、各チャンネルについて、電源電圧が正常電圧範囲に含まれるとき第1スイッチをオンする。つまり各チャンネルの第1スイッチを、そのチャンネルの電源電圧のみにもとづいて制御するため、他のチャンネルを参照する必要がなくなる。これによりコントローラ40の制御を簡素化できる。
【0066】
また、複数の第1スイッチSW1を起動時においてオフするよう構成した。これにより、あるチャンネルに過電圧が入力されたときに、クランプ回路10がバイパスされて、内部バス20に過電圧が供給されるのを防止できる。
【0067】
また複数の第2スイッチSW2を、起動時においてオンとなるよう構成した。これにより、少なくともひとつの電源電圧が、クランプ回路を経由して内部バス20に供給されることが保証され、コントローラ40を確実に動作させることができる。
【0068】
(用途)
続いて、信号処理回路200の用途を説明する。
図6は、実施の形態に係る信号処理回路200を備える電子機器500のブロック図である。
図7は、電子機器500の外観図である。
電子機器500は、ノートPC、スマートホン、タブレット端末、デジタルカメラ、ポータブルオーディオプレイヤなどである。
電子機器500は、信号処理回路200に加えて、USBポート502、ACアダプタポート504、内蔵電池506、USBトランシーバ508、充電回路510、電源回路512、USB−PDコントローラ514、および負荷520を備える。
【0069】
内蔵電池506は、リチウムイオンやニッケル水素などの二次電池であり、電池残量に応じた4〜8.4Vの電池電圧V
BATを出力する。USBポート502には、USBケーブル604を介してホスト機器600が着脱可能に接続される。ホスト機器600は、USBケーブル604のバスライン606を介して、バス電圧V
BUSを供給する。またホスト機器600と電子機器500は、データライン(608)D+、D−を介してデータ通信が可能である。このデータラインD+、D−を介した通信は、USBトランシーバ508が行う。
【0070】
ACアダプタポート504にはACアダプタ602が着脱可能に接続される。ACアダプタ602は、交流電圧V
ACを直流電圧V
DCに変換し、ACアダプタポート504に供給する。
【0071】
電子機器500は、USB−PD規格に準拠している。USBポート502にUSB−PD規格に準拠したホスト機器600が接続された場合、電子機器500とホスト機器600は、バスライン606を介した通信により、バス電圧V
BUSの電圧レベルおよび充電電流をネゴシエートする。ネゴシエート前のバス電圧V
BUSの電圧レベルは5Vである。USB−PDコントローラ514は、バスライン606を介して、バス電圧V
BUSおよび充電電流のネゴシエートのための通信を行うためのICである。ホスト機器600は、ネゴシエートにより決定された電圧レベルのバス電圧V
BUSを電子機器500に供給する。ネゴシエートにより決定されたバス電圧および充電電流は、充電回路510に通知される。
【0072】
充電回路510は、ホスト機器600からのバス電圧V
BUSあるいはACアダプタ602からの直流電圧V
DCを受け、内蔵電池506を充電する。たとえば直流電圧V
DCは12Vである。ホスト機器600からの電力によって内蔵電池506を充電する場合、充電回路510は、ネゴシエートにより決定された充電電流量で、内蔵電池506を充電する。
【0073】
充電回路510は、ホスト機器600およびACアダプタ602が接続されていない場合、電池電圧V
BATを電源回路512に出力する。ホスト機器600あるいはACアダプタ602が接続されている場合、それらからの電力を優先して電源回路512に出力する。
【0074】
電源回路512は、充電回路510を介して電池電圧V
BAT、バス電圧V
BUS、直流電圧V
DCを受ける。電源回路512は、マルチチャンネル電源であり、DC/DCコンバータあるいはリニアレギュレータ(LDO)を含む。各チャンネルの電源は、充電回路510からの電圧を昇圧あるいは降圧し、負荷520に供給する。たとえば負荷520は、CPU520a、メモリ520b、ディスプレイ520cなどを含む。
【0075】
実施の形態に係る電源選択回路100は、USB−PDコントローラ514に好適に用いることができる。すなわちUSB−PDコントローラ514が、
図2の信号処理回路200に対応する。USB−PDコントローラ514(200)は、電源選択回路100、USB−PD通信部202d、電源回路204を備える。
【0076】
USB−PDコントローラ514のVDD1端子は、バスライン606を介してホスト機器600(PS1)と接続される。VDD2端子は、ACアダプタ602(PS2)と接続される。VDD3端子は、内蔵電池506(PS3)と接続される。電源選択回路100は、バス電圧V
BUS、電池電圧V
BAT、直流電圧V
DCからひとつを選択し、内部バス20に出力する。電源回路204は、内部バス20の電圧を降圧する。USB−PD通信部202dは
図2の内部回路202に対応し、バスライン606を介したネゴシエーションを行う。
【0077】
以上が電子機器500の構成である。この電子機器500によれば、最優先のVDD1端子に、ホスト機器600が接続されるため、ホスト機器600の電力が最優先で使用されることとなる。上述のように、ネゴシエート前のバス電圧V
BUSの初期値は5Vであるのに対して、ACアダプタ602からの直流電圧V
DCは12Vであるため、バス電圧V
BUSを優先使用することにより、電源選択回路100での電力損失を大幅に低減できる。
【0078】
続いて、VDD2端子に接続されるACアダプタ602が優先となり、VDD3端子に接続される内蔵電池506をなるべく使用しないようになっている。これにより、内蔵電池506の持続時間を長くすることができる。
【0079】
なお電子機器500において、内蔵電池506の持続時間よりも、USB−PDコントローラ514の発熱の低減を優先させたい場合には、内蔵電池506をVDD2端子に、ACアダプタ602をVDD3端子に接続してもよい。
【0080】
あるいは、ACアダプタ602からの直流電圧V
DCの定格電圧が5Vであり、電源選択回路100の正常電圧範囲に含まれる場合には、ACアダプタ602をVDD1端子に接続して最優先としてもよい。
【0081】
このように、実施の形態に係る電源選択回路100を利用することにより、電子機器500の設計者は、電子機器500の要求仕様に応じて、優先使用すべき電源を決定して使用することができる。
【0082】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0083】
(第1変形例)
実施の形態では、電源選択回路100が3個の電源電圧を受ける場合を説明したが、電源電圧は2個であってもよいし、4個以上であってもよい。
【0084】
(第2変形例)
図2において、電圧判定器30_1〜30_3は、同じ構成を有するため、ひとつの電圧判定器30を時分割で使用してもよい。
【0085】
(第3変形例)
実施の形態における第1スイッチSW1〜第2スイッチSW2の制御は例示であり、さまざまな変形例が存在する。たとえば、実施の形態では、不使用チャンネルCHiにおいて、電源電圧V
DDiが正常電圧範囲に含まれる限り第1スイッチSW1_iはオンとする構成としたが、不使用チャンネルCHiの第1スイッチSW1_iはオフとしてもよい。
【0086】
第2スイッチSW2に関しても、オン、オフの条件は、
図5の真理値表には限定されない。
【0087】
(第4変形例)
実施の形態では、電圧判定器30によって、電源電圧V
DDを上側しきい値V
OVLOおよび下側しきい値V
UVLOそれぞれと比較する場合を説明したが、本発明はそれには限定されない。電圧判定器30は、電源電圧V
DDを、単一のしきい値(V
UVLOのみ、V
OVLOのみ、あるいは別の電圧レベル)と比較してもよいし、3つ以上の電圧レベルと比較してもよい。
【0088】
(第5変形例)
図6のUSB−PDコントローラ514は、充電回路510のICと一体に構成されてもよい。
【0089】
実施の形態にもとづき、特定の語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が可能である。