特許第6362450号(P6362450)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362450
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】ストッパ装置
(51)【国際特許分類】
   B61F 5/02 20060101AFI20180712BHJP
   B61F 5/12 20060101ALI20180712BHJP
   B61F 5/24 20060101ALI20180712BHJP
   F16F 13/18 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   B61F5/02 Z
   B61F5/12
   B61F5/24 F
   F16F13/00 620P
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-136274(P2014-136274)
(22)【出願日】2014年6月14日
(65)【公開番号】特開2016-2994(P2016-2994A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2017年6月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000136354
【氏名又は名称】株式会社フコク
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 浩史
【審査官】 林 政道
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−080950(JP,U)
【文献】 特開2009−234516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61F 5/00− 5/02, 5/24
F16F 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両走行時に独立して変位可能な第1の部材と第2の部材との間に取り付けられ、前記第1の部材と第2の部材間の変位を緩衝的に規制するストッパ装置において、
前記第1の部材に固定されるベース部材と、
開口部を有するカップ状をなし、前記開口部が塞がれるように前記ベース部材上に配置され、前記開口部と反対側の外側面に前記第2の部材と当接可能な当接部が設けられた可撓性ケース部材と、
前記当接部を露出しつつ前記可撓性ケース部材を覆い、前記開口部を液密に封止するように前記ベース部材に固定されたガイド部材と、
前記ベース部材と前記可撓性ケース部材とで囲まれた空間に封入された液体と、
前記ベース部材に設けられ、前記液体を排出可能なリリーフバルブが設けられた連通路と
を具備し、
前記ガイド部材は、前記可撓性ケース部材の側壁を覆う側面外殻部と側面外殻部から内方へ延びるとともに、前記可撓性ケース部材の前記開口部と反対側の底壁の一部を覆うフランジ部とを有し、
前記可撓性ケース部材の底壁は、前記フランジ部の内径よりも大きな外径を有する剛性板を内蔵している
ことを特徴とするストッパ装置。
【請求項2】
前記ベース部材と前記可撓性ケース部材とで囲まれた空間に前記液体を再充填する手段
を更に具備することを特徴とする請求項1記載のストッパ装置。
【請求項3】
前記可撓性ケース部材の当接部は、前記第2の部材へ向かって突出する弾性体よりなる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のストッパ装置。
【請求項4】
車両走行時に独立して変位可能な第1の部材と第2の部材との間に取り付けられ、前記第1の部材と第2の部材間の変位を緩衝的に規制するストッパ装置において、
前記第1の部材に固定されるベース部材と、
開口部を有するカップ状をなし、前記開口部が塞がれるように前記ベース部材上に配置され、前記開口部と反対側の外側面に前記第2の部材と当接可能な当接部が設けられた可撓性ケース部材と、
前記当接部を露出しつつ前記可撓性ケース部材を覆い、前記開口部を液密に封止するように前記ベース部材に固定されたガイド部材と、
前記ベース部材と前記可撓性ケース部材とで囲まれた空間に封入された液体と、
前記ベース部材に設けられ、前記液体を排出可能なリリーフバルブが設けられた連通路と、
前記空間と前記連通路を介して連結された副液室と、外部に設けられた空圧制御装置に連結された空気室とを有し、前記空圧制御装置によって、空気室の空圧を制御して前記副液室の容積を変更可能なリザーバタンク
を具備し、
前記リリーフバルブ解放により前記空間から排出された液体を副液室に収容可能とした
ことを特徴とするストッパ装置。
【請求項5】
前記リザーバタンクは、可撓性のダイヤフラムまたは摺動ピストンにより副液室と空気室に区画し、空気室の容積を変化させることで副液室の容積を変更可能とした
ことを特徴とする請求項記載のストッパ装置。
【請求項6】
前記第1の部材または第2の部材は、鉄道車両の車体または台車であること
を特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のストッパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行車両などにおいて、それぞれ独立して変位可能な部材間に取り付けられ、部材間の変位を緩衝的に規制するストッパ装置であって、例えば鉄道車両の車体と台車との間に取り付けられ、車体と台車との当接を緩衝的に規制するストッパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
部材間の当接を緩衝的に規制するストッパ装置は、乗用自動車、トラック、建設機械、鉄道車両などに使用され、例えば、ゴムの圧縮またはせん断変形を利用するもの、金属ばねの弾性変形を利用するもの、更に、金属ばねに加えて流体の流動抵抗を併用するものなどがある。
【0003】
鉄道車両においては、例えば、旅客用車両の台車として広く採用されているボルスタレス台車では、車体に固定される中心ピンが挿通される中心ピン挿通孔の側部に弾性体ストッパを設けたものがあり、車体が台車に対して左右いずれかに大きく変位する場合に中心ピンに弾性体ストッパが衝合して中心ピンと台車との衝突による衝撃を緩和しつつ、車体の台車に対するそれ以上の変位を規制して、脱線などが生じないようになっている。
【0004】
また、車両の振動を車体と台車の間で減衰・吸収する部品として、左右動ダンパーを備えるものがあり、車体−台車間の振動を減衰・吸収することで、良好な乗り心地を実現している。
【0005】
このような弾性体ストッパは、通常走行時の車体に対する台車の振動を吸収するように設定しており、地震などの突発的な大きな外力が作用した場合の左右方向大変位を吸収することができない。仮に、地震などの大変位に対応するように設定した場合には、通常走行時の振動の吸収は期待できない。
【0006】
このような問題を解決するストッパとして、特許文献1に記載のストッパが提案されている。
このストッパは、鉄道車両の車体あるいは台車の一方に固定されるシリンダと、シリンダに摺動自在に挿入されてシリンダ内に液体が充填される圧力室を形成するとともに変位規制時に車体あるいは台車の他方に衝合するピストンと、圧力室にリリーフ流路と吸込流路を介して連通されるリザーバと、リリーフ流路の途中に設けられてリリーフ時に液体の流れに抵抗を与えるリリーフ弁と、吸込流路の途中に設けられてリザーバから圧力室へ向かう液体の流れのみを許容するチェック弁と、ピストンを車体あるいは台車の他方へ向けて附勢するコイルスプリングなどの附勢手段とを備えたものである。
【0007】
このストッパにあっては、車体に大きな左右動が作用して、車体が台車に対して近接する方向に所定間隔以上に変位してピストンに衝合する際、車体とシリンダとの接近でピストンをシリンダ内へ押し込む力によって圧縮される圧縮室内の圧力がリリーフ弁のリリーフ圧に達すると、リリーフ弁がリリーフ通路を解放して、圧力室内の液体をリザーバへ抵抗を与えながら逃がし、車体に振動方向とは逆の減衰力を作用させる。
【0008】
そして、車体の台車に対する振動方向が逆転して、車体がピストンから離間すると、ピストンはコイルスプリングの附勢力でシリンダから最突出する位置まで復帰する。この際、圧力室が容積拡大によって減圧されるため、チェック弁が開いて吸込流路を介してリザーバから液体が圧力室へ供給されて、ピストンは速やかに元の位置まで復帰可能としている。
【0009】
これにより、当該ストッパは、地震などの突発的な大きな外力が作用し、所定間隔以上に変位しても、反復継続的に減衰力を発揮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−234516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記ストッパは、液体を排出または吸込するために容積可変とした圧力室をピストン及びシリンダにて構成しているため、ピストンとシリンダとの摺動を許容しつつ、高い圧力に耐えて密閉を維持する高性能の摺動シールが必要であり、製造コストが嵩むものであった。また、当該ストッパは鉄道車両の車体下方に設置されるため、走行による埃やブレーキなどの摩耗粉で汚れ易いため、シール性維持のために定期的にピストンの摺動面をメンテナンスする必要があり、維持コストが嵩むものであった。また、圧力室の内圧に耐え、長期にわたり漏れのない摺動を維持する要求から、一般に金属製のシリンダ及びピストンを採用せざるを得ないため、素材的にも高コストであるうえ、重量が嵩むものであった。また、容積可変とした圧力室がピストンとシリンダで構成されるため、ストッパ長をピストンの摺動方向に長くせざるを得ないものであった。更にリザーバが一体に構成されるため、十分な減衰性を実現するには、ストッパが大型となり、重量的に不利となるうえ、設置自由度が低いものであった。
このように従来のストッパでは、製造コスト、維持コスト、重量、小型化などに問題があるものであった。
【0012】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、通常の走行振動及び地震などの突発的な大きな外力が作用した場合の衝撃的振動についても十分な緩衝機能を有しながら、安価な製造コストで設置でき、維持コストが低く、軽量で、小型化が可能なストッパ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るストッパ装置は、車両走行時に独立して変位可能な第1の部材と第2の部材との間に取り付けられ、前記第1の部材と第2の部材間の変位を緩衝的に規制するストッパ装置において、前記第1の部材に固定されるベース部材と、開口部を有するカップ状をなし、前記開口部が塞がれるように前記ベース部材上に配置され、前記開口部と反対側の外側面に前記第2の部材と当接可能な当接部が設けられた可撓性ケース部材と、前記当接部を露出しつつ前記可撓性ケース部材を覆い、前記開口部を液密に封止するように前記ベース部材に固定されたガイド部材と、前記ベース部材と前記可撓性ケース部材とで囲まれた空間に封入された液体と、前記ベース部材に設けられ、前記液体を排出可能なリリーフバルブが設けられた連通路とを具備する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、液体を封入する空間、すなわち液室を開口部を有するカップ状の可撓性ケース部材と、この開口部を封止するベース部材とで構成し、ガイド部材にて可撓性ケース部材を覆うように構成し、印加される荷重の大きさに応じて可撓性ケース部材、すなわち、液室を変形可能としているので、通常の走行振動及び地震などの突発的な大きな外力が作用した場合の衝撃的振動についても十分な緩衝機能を有しながら、製造コスト、維持コストを低減することができ、更に、軽量且つ小型なストッパ装置とすることができ、更に、設置自由度が高いストッパ装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るストッパ装置の構成を示す断面図である。
図2図1に示したストッパ装置の上面図である。
図3】本発明の別の実施形態に係るストッパ装置の構成を示す断面図である。
図4図3に示したストッパ装置の作動状況を示す説明図である。
図5】本発明の更に別の実施形態に係るストッパ装置の構成を示す断面図である。
図6】本発明の更に別の実施形態に係るストッパ装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一形態に係るストッパ装置は、車両走行時に独立して変位可能な第1の部材と第2の部材との間に取り付けられ、前記第1の部材と第2の部材間の変位を緩衝的に規制するストッパ装置において、前記第1の部材または第2の部材と当接可能な当接部が設けられた底壁と側壁とからなり、開口部を有するカップ状の可撓性ケース部材と、前記第2の部材または第1の部材の少なくとも一方に固定されるとともに、前記可撓性ケース部材の開口部を封止して、可撓性ケース部材とで液室を構成するベース部材と、前記液室に封入される非圧縮性の液体と、前記可撓性ケース部材の側壁の外周面及び底壁の外側面の少なくとも一部を覆うとともに、前記ベース部材に固定されるガイド部材と、前記液室から前記液体を排出可能なリリーフバルブを設けた連通路とを備え、前記液室に印加される荷重が所定荷重以上となったときに前記リリーフバルブを解放して前記液体を液室から排出し、前記可撓性ケース部材が変形して前記第1の部材と第2の部材間の所定以上の変位を吸収する。
【0017】
本形態に係るストッパ装置では、第1の部材と第2の部材とが近接する方向に変位したときに、可撓性ケース部材の底壁の当接部には、この当接部に対向する第1の部材または第2の部材(以下、相手側部材という)が当接する。そこにおいて、非圧縮性の液体を封入する液室を、開口部を有するカップ状の可撓性ケース部材と、この開口部を封止するベース部材とで構成し、更に、相手側部材と当接する当接部を除いて、ガイド部材にて可撓性ケース部材を覆うように構成しているので、相手側部材が当接部に当接することにより液室に荷重が印加され、液室の内圧の上昇による可撓性ケース部材の膨張変形がガイド部材により抑えられる。よって、相手側部材の当接後の変位を規制することができる。そして、地震などにより、第1の部材と第2の部材とが近接する方向に大きく変位し、相手側部材が当接部に当接したとき、相手側部材により当接部に印加される荷重が所定荷重を超えたとき、連通路に設けられたリリーフバルブを開いて、液室の液体を排出することで、当接部の追加的変位を可能とする。これにより、衝撃的変位を緩衝的に許容することができる。
【0018】
従って、本形態に掛かるストッパ装置では、開口部を有する可撓性ケース部材及びベース部材にて液室を構成し、ガイド部材にて、可撓性ケース部材の膨張変形を抑えるという簡易な構成としたので、製造コストを低く抑えることができるとともに、複雑な構成を使用していないので、性能維持のためのメンテナンスが不要であり、維持コストも低く抑えることができる。また、容積可変な液室は、可撓性ケース部材で実現しているので、ゴムや樹脂エラストマーなどの弾性体で構成することが可能であるので、軽量且つ小型化することができ、設置自由度が高いものとすることができる。また、リリーフバルブの開度や液体の粘性を調整することで、減衰性を付与することができる。
【0019】
加えて、本形態に係るストッパ装置では、可撓性ケース部材が変形した後、可撓性ケース部材に液体を再充填して、ストッパ装置を復元することができる。すなわち、ストッパ装置を復元することで、再度、第1の部材と第2の部材間の変位を緩衝的に規制するストッパ装置として機能させることができる。
【0020】
加えて、本形態に係るストッパ装置では、前記ガイド部材は、前記可撓性ケース部材の側壁を覆う側面外殻部と側面外殻部から内方へ延びるとともに、前記可撓性ケース部材の底壁の一部を覆うフランジ部とを有し、前記可撓性ケース部材の底壁は、前記フランジ部の内径よりも大きな外径を有する剛性板を内蔵することとしてもよい。すなわち、可撓性ケース部材の底壁に剛性板を内蔵することにより、当該底壁に設けた当接部を補強するとともに、相手側部材が当接したときに生じる液室の内圧に対する耐久性向上することができる。
【0021】
加えて、本形態に係るストッパ装置では、前記可撓性ケース部材の底壁の当接部は、前記第2の部材または第1の部材(相手側部材)へ向かって突出する弾性体より構成してもよい。すなわち、相手側部材が当接部に当接したとき、弾性体で荷重を受けることができるので、より緩衝的に振動を吸収することができる。
【0022】
本発明の一形態に係るストッパ装置は、前記液室と前記連通路を介して連結された副液室と、外部に設けられた空圧制御装置に連結された空気室とを有し、前記空圧制御装置によって、空気室の空圧を制御して前記副液室の容積を変更可能なリザーバタンクを備え、前記リリーフバルブ解放により液室から排出された液体を副液室に収容可能とした。
【0023】
加えて、本形態に係るストッパ装置では、前記リザーバタンクは、可撓性のダイヤフラムまたは摺動ピストンにより副液室と空気室に区画し、空気室の容積を変化させることで副液室の容積を変更可能とした。
【0024】
本形態に係るストッパ装置では、空圧制御装置により空気室の容積を変更して、副液室の容積を変更することで、副液室に収容された液体を液室に再充填して、再度、ストッパ装置を機能させることができる。
【0025】
本発明の一形態に係るストッパ装置は、前記第1の部材または第2の部材は、鉄道車両の車体または台車である。すなわち、本発明のストッパ装置は、車体と台車の間に固定され、車体と台車間が近接する方向に変位したときの変位を緩衝的に吸収するものである。
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るストッパ装置の構成を示す断面図である。図2は、このストッパ装置の上面図である。図2におけるA−A断面に対して矢印の方向で見たストッパ装置の断面図が図1である。
【0027】
これらの図に示すように、ストッパ装置1は、可撓性ケース部材2と、ベース部材3と、ガイド部材4とを有し、更に、可撓性ケース部材2とベース部材3とで囲まれた空間で形成された液室5と、この液室5に充填される液体6とを有する。そして、ストッパ装置1は、図示しない第1の部材と第2の部材間に配置され、第1の部材と第2の部材間の変位を、第1の部材と第2の部材とを緩衝的に当接させることで規制する。例えば、ストッパ装置1が、鉄道車両の車体(第1の部材)と台車(第2の部材)の間に配置される場合、ベース部材3が車体にボルトなどで固定され、可撓性ケース部材2が、台車(第2の部材)と対向するように取り付けられる。
【0028】
可撓性ケース部材2は、例えば、ゴムなどの弾性体からなり、柔軟な膜状の側壁2aと底壁2bから構成され、開口部2cを有するカップ状に形成される。この可撓性ケース部材2の底壁2bには、開口部2cと反対側に当接部2dを有している。ベース部材3は、例えば、金属製の板状に形成され、可撓性ケース部材2の開口部2cを液密に封止している。ガイド部材4は、例えば、金属製であって、可撓性ケース部材2の側壁2aを覆う側面外殻部4aと、この側面外殻部4aから内方に延びるフランジ部4bからなり、このフランジ部4bは、底壁2bの少なくとも一部を覆うように形成されている。すなわち、このフランジ部4bは、中央に開口4cを有し、可撓性ケース部材2の当接部2dがガイド部材4から露出するようにしている。
【0029】
ガイド部材4の側面外殻部4aは、可撓性ケース部材2の開口部2cとともにボルトなどによりベース部材3に固定されている。すなわち、開口部2cが、側面外殻部4aとベース部材3とで挟み込まれて固定されることで、液室5に高い内圧が生じた場合でも、確実に漏れを防止できる。
【0030】
ベース部材3は、液室5と外部とを連通する連通路3aを有し、この連通路3aは、当該連通路3aを閉鎖し、液室5に予め設定された所定圧力が印加されたとき、または、当接部2dに印加される荷重が予め設定された所定荷重に達したときに解放して、液室5と外部とを連通するリリーフバルブ7を備えている。このリリーフバルブ7の所定圧力(解放圧力)及び所定荷重(解放荷重)は、使用状況、使用対象に応じて任意に設定することができる。このように、リリーフバルブ7の開放あるいは閉鎖は、所定圧力、所定荷重とも設定することができるが、以下、所定荷重を含めて、所定圧力という。
【0031】
液室5に充填される液体6は、非圧縮性またはほとんど圧縮性を呈しない液体であることが望ましく、水(各種水溶液)、オイルなどが使用可能である。鉄道車両などで用いる場合には、例えば、シリコーンオイルやエチレングリコール水溶液などが好ましい。更に、液体6を液室5に充填する場合、液室の内圧を加圧状態で封入しておくことが望ましい。その場合、可撓性ケース部材2がガイド部材4の内側に強く押し付けられるので、相手側部材Rと当接部2dとが弱い力(通常走行状態下での当接力)で当接しても可撓性ケース部材2は変形しないため、ガイド部材4の内部と可撓性ケース部材2間の摩耗を抑えることができる。
【0032】
可撓性ケース部材2の底壁2bは、金属や樹脂からなる剛性板8を内蔵するようにしてもよい。この場合、相手側部材Rから受ける荷重を底壁2b全体に分散して、一部に応力が集中することを防止し、当接部2d自体を補強することができる。なお、当接部2dをベース部材3と反対方向に突出するように形成してもよく、加えて、前記剛性板8を当接部2d内で突出するように形成してもよい。その場合、剛性板8の剛性を調整することができるとともに、弾性体からなる当接部2d厚みをコントロールできるので、クッション性を変化させることができる。
【0033】
上記に加えて、剛性板8の外径をガイド部材4の開口4cの内径よりも大きくし、少なくとも一部をオーバーラップさせるようにしてもよい。その場合、液室5の内圧をより強い加圧状態で保持することができる。なお、底壁2bが弾性体で形成される場合、フランジ部4bと剛性板8とで挟まれるオーバーラップ部に位置する底壁2bの一部は、薄く形成されていることが好ましい。なぜならば、オーバーラップ部には、高い荷重がかかるため、仮に厚く形成した場合には、高い荷重により大きく変形するため、亀裂が入った場合には、亀裂が伸長しやすいためである。
【0034】
本実施形態のストッパ装置1は、例えば、鉄道車両の車体(第1の部材)と台車(第2の部材)の間に配置され、ベース部材3のボルト穴3bを使用して車体にボルトなどで固定され、可撓性ケース部材2の当接部2dが、台車(第2の部材)と対向するように取り付けられる。そこにおいて、ストッパ装置1が車体と台車の左右動を規制する場合、通常走行における連続的な所定内の左右動では、相手側部材R(台車)が当接部2dと当接しても、その範囲の当接荷重によって生じる液室5内の内圧の上昇範囲では、リリーフバルブ7の開放圧力を超えないように設定することが好ましい。この場合、弾性体で形成された当接部2d自体のクッション性で緩衝的に当接荷重を受け止めることで、左右動を所定変位内に規制する。
【0035】
これに対して、地震などによって過大な左右動が生じた場合には、相手側部材Rが当接部2dと当接し、当接荷重によって生じる液室内の内圧がリリーフバルブ7の所定圧力(解放圧力)に達したとき、液室5内の液体6を外部に排出することで、追加的な変位を許容し、当接荷重を緩和して、脱線などが生じることを防止する。
【0036】
なお、地震などによる衝撃的な左右動が解消された後、図示しない手段にて、外部に排出した液体6を液室5内に再充填することで、本発明のストッパ装置1は、再度、ストッパ装置として機能させることが可能である。
【0037】
本実施形態のストッパ装置1は、簡単な構成にて、通常走行時の左右動及び地震などのよる衝撃的な左右動を緩衝的に規制することが可能である。複雑な構成を必要としないので、安価に製造することができ、機能維持のための維持費用も低く抑えることができることに加え、軽量、小型に形成可能であり、液室5を構成する部材として、可撓性ケース部材2を使用していることから、形態的にも自由度が高いものである。
【0038】
図3は、本発明の別の実施形態に係るストッパ装置の構成を示す断面図である。図4は、図3に示す本発明の別の実施形態に係るストッパ装置の作動状態を示す説明図である。
【0039】
図において、本発明の別の実施形態に係るストッパ装置100は、上記に説明した一実施形態に加え、前記連通路3aに接続されたリザーバタンク9と、このリザーバタンク9に接続された空圧制御装置10を有する。なお、その他の構成は、上記に説明した一実施形態に係るストッパ装置と同様である。ここで、上記に説明した一実施形態に係るストッパ装置と同様の部分については、同じ符号を付し、重複する説明は省略するものとする。以下に説明する実施形態においても同様とする。
【0040】
リザーバタンク9は、一室を2室に容積変更可能に区画する摺動ピストン9aと、この摺動ピストン9aにより区画された一室であって、連通路3aを介して液室5と連通する副液室9bと、この副液室9bと別の一室である空気室9cを有する。空圧制御装置10は、空気室9cの空気圧を制御し、空気室9cの容積を拡大したとき、副液室9bの容積を縮小し、空気室9cの容積を縮小したとき副液室9bの容積を拡大する機能を備える。
【0041】
つまり、図4に示すように、地震などの過大な変位を許容するため、可撓性ケース部材2の側壁2aが変形して液室5を縮小させ、液体6を連通路3aを介して、副液室9bに排出したとき、摺動ピストン9aは、リザーバタンク9内で、副液室9bの容積を拡大して、液体を収納可能とする。その後、空圧制御装置10を制御することで空気室9cの容積を拡大して、副液室9bの液体6を連通路3aを介して、液室5に再充填し、リリーフバルブ7を閉じることでストッパ装置の機能を回復することができる。
【0042】
なお、本実施例のストッパ装置100を、例えば、鉄道車両に用いる場合、空圧制御装置10は、鉄道車両がドアの開閉などのために備えている空圧装置と併用することも可能である。同様に、空圧装置を備えている大型トラックなどに適用することも容易である。更に、本実施例では、空圧制御によって副液室の容積を調整して液体の再充填をおこなったが、電動機やポンプを用いてもよいことはもちろんである。また、摺動ピストン9aを可撓性を有するダイヤフラムなどに置き換えることもできる。この場合、リザーバタンク9自体の軽量化も可能である。更に、空圧制御を相手側部材Rの振動に応じて、能動的に制御する場合、連続的な緩衝を実現することができる。
【0043】
図5は、本発明の更に別の実施形態に係るストッパ装置の構成を示す断面図である。
図において、本実施形態に係るストッパ装置200では、上記に説明した剛性板8を平板とした剛性板201と、相手側部材Rに向って突出する当接部2d内にスグリ部202を設けたものである。その他の構成は、他の実施形態と同様である。
【0044】
ストッパ装置200では、弾性体からなる当接部2dにスグリ部202を設けることで、主として、相手側部材Rと当接した場合のクッション性を変更したものである。
【0045】
図6は、本発明の更に別の実施形態に係るストッパ装置の構成を示す断面図である。
図において、本実施形態に係るストッパ装置300では、上記に説明した当接部2dの突出量を抑え、ガイド部材4のフランジ部4bの内周部に、ガイド壁301を設けたものである。この場合、相手側部材Rがガイド壁301にガイドされて、相手側部材Rとストッパ装置300が当接するようにしたものである。その他の構成は、他の実施形態と同様である。
【0046】
ストッパ装置300では、相手側部材Rが、ガイド壁301にガイドされるので、当接位置のブレを抑えることができる。また、変位振幅によっては、当接部と相手側部材Rが、常時接触状態に配置することもできる。
【0047】
上記説明においては、主として、鉄道車両の車体と台車間に適用した場合を説明したが、他の鉄道車両における部位でも適用可能であるし、更に、乗用自動車、トラック、建設機械などに適用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1、100、200、300 ストッパ装置
2 可撓性ケース部材
3 ベース部材
4 ガイド部材
5 液室
6 液体
7 リリーフバルブ
8、201 剛性板
9 リザーバタンク
9a 摺動ピストン
9b 副液室
9c 空気室
10 空圧制御装置
202 スグリ部
301 ガイド壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6