(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362455
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】乗客コンベヤ
(51)【国際特許分類】
B66B 29/04 20060101AFI20180712BHJP
【FI】
B66B29/04 B
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-140969(P2014-140969)
(22)【出願日】2014年7月9日
(65)【公開番号】特開2016-16939(P2016-16939A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2017年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100117776
【弁理士】
【氏名又は名称】武井 義一
(74)【代理人】
【識別番号】100188329
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 義行
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(74)【代理人】
【識別番号】100090011
【弁理士】
【氏名又は名称】茂泉 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100194939
【弁理士】
【氏名又は名称】別所 公博
(72)【発明者】
【氏名】藤森 悟志
【審査官】
須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】
実開平07−004475(JP,U)
【文献】
特開昭64−022795(JP,A)
【文献】
特開2011−131955(JP,A)
【文献】
特開昭51−050193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏段、及び
前記踏段の側面に隙間を介して対向するスカートガード
を備え、
前記踏段の側面には、前記隙間を塞ぐ隙間塞ぎ部材が設けられ、
前記隙間塞ぎ部材は、前記踏段の移動に伴って弾性変形可能で前記スカートガードに接触する接触部と、前記接触部と前記踏段との間に介在する異物受け部とを有し、
前記異物受け部には、異物収容溝が前記踏段の側面に沿って形成され、
前記踏段が下降方向へ移動するときには、前記隙間塞ぎ部材の形状が保たれ、
前記踏段が上昇方向へ移動するときには、前記隙間塞ぎ部材では、前記接触部が弾性変形により反転する一方、前記異物収容溝が前記異物受け部に形成された状態が保たれる乗客コンベヤ。
【請求項2】
前記接触部には、前記異物収容溝に沿った補助溝が形成されている請求項1に記載の乗客コンベヤ。
【請求項3】
前記接触部には、潤滑剤がコーティングされている請求項1又は請求項2に記載の乗客コンベヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、踏段と、踏段の側面に隙間を介して対向するスカートガードとを備えた乗客コンベヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、踏段の側面とスカートガードとの間の隙間に乗客の衣類及び履物が挟まらないようにするために、踏段の側面にブラシを取り付けて踏段の側面とスカートガードとの間の隙間をブラシで塞ぐようにしたエスカレータが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−44720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術には以下のような課題がある。
即ち、特許文献1に記載の従来技術においては、異物がブラシを通り抜けて、踏段の側面とスカートガードとの間の隙間からトラス内へ異物が落下するおそれがあるという課題がある。
【0005】
この発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、踏段の側面とスカートガードとの間の隙間からトラス内への異物の落下を抑制することができる乗客コンベヤを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明による乗客コンベヤは、踏段、及び踏段の側面に隙間を介して対向するスカートガードを備え、踏段の側面には、隙間を塞ぐ隙間塞ぎ部材が設けられ、隙間塞ぎ部材は、踏段の移動に伴って弾性変形可能でスカートガードに接触する接触部と、接触部と踏段との間に介在する異物受け部とを有し、異物受け部には、異物収容溝が踏段の側面に沿って形成され
、踏段が下降方向へ移動するときには、隙間塞ぎ部材の形状が保たれ、踏段が上昇方向へ移動するときには、隙間塞ぎ部材では、接触部が弾性変形により反転する一方、異物収容溝が異物受け部に形成された状態が保たれる。
【発明の効果】
【0007】
この発明による乗客コンベヤによれば、踏段の側面とスカートガードとの間の隙間を塞ぐ隙間塞ぎ部材が踏段の側面に設けられ、隙間塞ぎ部材は、弾性変形可能でスカートガードに接触する接触部と、接触部と踏段との間に介在する異物受け部とを有し、異物受け部には、異物収容溝が踏段の側面に沿って形成されている。これにより、踏段の側面とスカートガードとの間の隙間からトラス内への異物の落下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】この発明の実施の形態1によるエスカレータを示す側面図である。
【
図5】往路側の踏段が下降方向に移動したときの
図2のIV部を示す拡大図である。
【
図6】往路側の踏段が上昇方向に移動したときの
図2のIV部を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の好適な実施の形態について図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるエスカレータ(乗客コンベヤ)を示す側面図である。
図1において、トラス(主枠)1の長手方向の一端部(上端部)内には、エスカレータの運転を制御する制御装置(図示せず)と、制御装置によって制御される駆動装置2と、駆動装置2の駆動力を受けてそれぞれ回転される駆動スプロケット3及び上部踏段スプロケット4とが設けられている。トラス1の長手方向の他端部(下端部)内には、下部踏段スプロケット5が設けられている。
【0010】
駆動スプロケット3には、駆動チェーン6が巻き掛けられている。駆動装置2の駆動力は、駆動チェーン6を介して駆動スプロケット3に伝達される。駆動スプロケット3及び上部踏段スプロケット4は、駆動スプロケット3が駆動装置2からの駆動力を受けることにより一体に回転される。
【0011】
トラス1には、踏段チェーン7により無端状に連結された複数の踏段8が支持されている。踏段チェーン7は、上部踏段スプロケット4及び下部踏段スプロケット5間に巻き掛けられている。各踏段8は、上部踏段スプロケット4の回転により、トラス1の長手方向一端部と長手方向他端部との間で循環移動される。各踏段8の移動経路は、各踏段8が乗客を乗せながら移動可能な往路側の経路と、往路側の下方に位置する帰路側の経路とが互いに連続する無端状の経路となっている。
【0012】
トラス1上には、トラス1の幅方向について対向する一対の欄干9が設けられている。各欄干9の外周には、無端状の移動手摺10がそれぞれ設けられている。トラス1内には、各踏段8と同期して移動手摺10を移動させる手摺駆動装置(図示せず)が設けられている。
【0013】
図2は、
図1の踏段8を示す正面図である。また、
図3は、
図2の踏段8を示す上面図である。
図2及び
図3において、往路側の踏段8と欄干9との間には、踏段8の側面と隙間11を介して対向する板状のスカートガード12と、スカートガード12と欄干9との間の空間を塞ぐインナデッキ13とが設けられている。また、踏段8は、乗客を乗せる踏み面が形成された踏板8aと、踏板8aの下段側端部に設けられたライザ8bとを有している。さらに、踏段8の側面には、踏段8の側面とスカートガード12との隙間11を塞ぐ隙間塞ぎ部材14が取り付けられている。この例では、踏段8の側面のうち、踏板8aの側面にのみ隙間塞ぎ部材14が取り付けられ、ライザ8bの側面には隙間塞ぎ部材が取り付けられていない。また、この例では、
図2及び
図3に示すように、踏板8aの側面と踏み面との境界線に沿って隙間塞ぎ部材14が配置されている。
【0014】
次に、隙間塞ぎ部材14について説明する。
図4は、
図2の隙間塞ぎ部材14を示す斜視図である。
図4において、隙間塞ぎ部材14は、弾性変形可能な材料(例えばゴムまたは樹脂等)によって構成されている。また、隙間塞ぎ部材14は、スカートガード12に接触する接触部14aと、接触部14aと踏段8との間に介在する異物受け部14bとを有する。異物受け部14bは、接触部14aと繋がっているとともに踏段8の側面に固定されている。異物受け部14bには、踏段8の側面に沿って異物収容溝16が形成されている。接触部14aには、異物収容溝16に沿った補助溝15が形成されている。この例では、踏板8aの側面と踏み面との境界線に沿って異物収容溝16が形成されている。また、この例では、接触部14aをスカートガード12に押し付けて弾性変形させた状態で隙間塞ぎ部材14が踏段8に取り付けられている。さらに、この例では、接触部14a及び異物受け部14bが一体成形され、接触部14a及び異物受け部14bのそれぞれの断面形状が、開放部分を上方に向けたU字状になっている。
【0015】
図5は、往路側の踏段8が下降方向に移動したときの
図2のIV部を示す拡大図である。また、
図6は、往路側の踏段8が上昇方向に移動したときの
図2のIV部を示す拡大図である。
【0016】
図5において、踏段8が下降方向へ移動するときには、接触部14aがスカートガード12に接触しながら踏段8とともに下方へ移動する。このとき、接触部14aとスカートガード12との間に生じる摩擦力により、スカートガード12に接触する部分で接触部14aが上方への力を受ける。しかし、接触部14aのスカートガード12に接触する部分の形状が上方への力に逆らわない形状になっていることから隙間塞ぎ部材14の形状が保たれ、補助溝15が接触部14aに形成された状態と、異物収容溝16が異物受け部14bに形成された状態とが保たれる。これにより、踏段8の側面とスカートガード12との間の隙間に入る異物が異物収容溝16及び補助溝15の少なくともいずれかに収容され、踏段8の側面とスカートガード12との間の隙間からトラス1内への異物の落下が防止される。
【0017】
図6において、踏段8が上昇方向へ移動するときには、接触部14aがスカートガード12に接触しながら踏段8とともに上方へ移動する。このとき、接触部14aとスカートガード12との間に生じる摩擦力により、スカートガード12に接触する部分で接触部14aが下方への力を受ける。これにより、隙間塞ぎ部材14では、接触部14aが弾性変形により反転して補助溝15が接触部14aからなくなる一方、異物収容溝16が異物受け部14bに形成された状態は保たれる。したがって、踏段8の側面とスカートガード12との間の隙間に入る異物が異物収容溝16に収容され、踏段8の側面とスカートガード12との間の隙間からトラス1内への異物の落下が防止される。
【0018】
このように、隙間塞ぎ部材14が、スカートガード12に接触する接触部14aと、接触部14aおよび踏段8間に介在する異物受け部14bとを有しているので、踏段8の移動に伴い接触部14が弾性変形して、異物収容溝16が異物受け部14bに形成された状態を保つことができる。したがって、踏段8の側面とスカートガード12との間の隙間に入る異物を異物受け部14bで受けることができ、踏段8の側面とスカートガード12との間の隙間からトラス1内への異物の落下を防止することができる。
【0019】
なお、上記の例では、接触部14aに補助溝15が形成されているが、接触部14aに補助溝15を形成しないようにしてもよい。この場合であっても、踏段8が移動するとき、異物収容溝16が異物受け部14bに形成された状態を保つことができ、同様の効果が得られる。
【0020】
また、踏段8が移動するとき、隙間塞ぎ部材14とスカートガード12とが互いに擦れ合って両者に傷が付く可能性が考えられる。この対策として、摩擦係数を低減するために、接触部14aのスカートガード12と接触する部分には、潤滑剤(例えば、シリコン)をコーティングしてもよい。これにより、隙間塞ぎ部材14とスカートガード12との滑りが良好となり、両者に傷が付きにくくなる。
【0021】
さらに、上記の例では、この発明がエスカレータに適用されているが、動く歩道(乗客コンベヤ)にこの発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0022】
1 トラス、2 駆動装置、3 駆動スプロケット、4 上部踏段スプロケット、5 下部踏段スプロケット、6 駆動チェーン、7 踏段チェーン、8 踏段、8a 踏板、8b ライザ、9 欄干、10 移動手摺、11 隙間、12 スカートガード、13 インナデッキ、14 隙間塞ぎ部材、14a 接触部、14b 異物受け部、15 補助溝、16 異物収容溝。