【実施例】
【0018】
下記する表1に記載されているように、それぞれの試料は、臭化水素ガス(HBr)による腐食試験及び金属汚染試験、さらには塩化水素ガス(HCl)による腐食試験及び金属汚染試験が実施される。腐食試験の結果は、目視によって行われ、全く腐食が見えない(最良:◎)、表面に少し変化が見える(良好:○)、腐食の一歩手前のように見える(良:△)、一部に腐食が起こっている(不良:×)の4段階に分類される。また、金属汚染試験については、ウェハ上の金属汚染をICP−MSに分析し、1平方センチメートル当たりの原子量によって汚染状態を判定するもので、2×10
9未満の場合(最良:◎)、2×10
9以上5×10
9未満(良好:○)、5×10
9以上9×10
9未満(良:△)、1×10
10以上(不良:×)の4段階に分類されるものである。
【0019】
下記する表1に記載される発明試料1は、基材としてアルミニウムを使用し、このアルミ基材の表面にNi-Cr系のアモルファス金属を溶射して皮膜(溶射膜)を形成したものであり、追加工工程200及び洗浄工程300が施されなかった試料である。この発明試料1において、臭化水素ガス及び塩化水素ガスによる腐食実験の結果は◎であったが、金属汚染試験の結果は○であった。
【0020】
発明試料2は、基材としてアルミニウムを使用し、このアルミ基材の表面にNi-Cr系のアモルファス金属を溶射して皮膜(溶射膜)を形成したものであり、追加工工程200が施されず、洗浄工程300が施された試料である。この発明試料2において、臭化水素ガス及び塩化水素ガスによる腐食実験の結果は◎であり、金属汚染試験の結果も◎であった。
【0021】
発明試料3は、基材としてアルミニウムを使用し、このアルミ基材の表面にNi-Cr系のアモルファス金属を溶射して皮膜(溶射膜)を形成したものであり、追加工工程200が実施されたが、洗浄工程300が施されなかった試料である。この発明試料3において、臭化水素ガス及び塩化水素ガスによる腐食実験の結果は◎であったが、金属汚染試験の結果は△であった。
【0022】
発明試料4は、基材としてアルミニウムを使用し、このアルミ基材の表面にNi-Cr系のアモルファス金属を溶射して皮膜(溶射膜)を形成したものであり、追加工工程200及び洗浄工程300が施された試料である。この発明試料4において、臭化水素ガス及び塩化水素ガスによる腐食実験の結果は◎であり、金属汚染試験の結果も◎であった。
【0023】
発明試料5は、基材としてステンレス鋼であるSUS316Lを使用し、このステンレス基材の表面にNi-Cr系のアモルファス金属を溶射して皮膜(溶射膜)を形成したものであり、追加工工程200及び洗浄工程300が施されなかった試料である。この発明試料5において、臭化水素ガス及び塩化水素ガスによる腐食実験の結果は◎であったが、金属汚染試験の結果は△であった。
【0024】
発明試料6は、基材としてステンレス鋼であるSUS316Lを使用し、このステンレス基材の表面にNi-Cr系のアモルファス金属を溶射して皮膜(溶射膜)を形成したものであり、追加工工程200は施されず、洗浄工程300が施された試料である。この発明試料6において、臭化水素ガス及び塩化水素ガスによる腐食実験の結果は◎であり、金属汚染試験の結果も◎であった。
【0025】
発明試料7は、基材としてステンレス鋼であるSUS316Lを使用し、このステンレス基材の表面にNi-Cr系のアモルファス金属を溶射して皮膜(溶射膜)を形成したものであり、追加工工程200が施されたが、洗浄工程300が施されなかった試料である。この発明試料7において、臭化水素ガス及び塩化水素ガスによる腐食実験の結果は◎であったが、金属汚染試験の結果は△であった。
【0026】
発明試料8は、基材としたステンレス鋼であるSUS316Lを使用し、このステンレス基材の表面にNi-Cr系のアモルファス金属を溶射して皮膜(溶射膜)を形成したものであり、追加工工程200及び洗浄工程300が施された試料である。この発明試料8において、臭化水素ガス及び塩化水素ガスによる腐食実験の結果は◎であり、金属汚染試験の結果も◎であった。
【0027】
比較試料1は、基材としてアルミニウムを使用し、溶射膜を形成しなかったものであり、前記基材に洗浄工程300のみが実施された試料である。この比較試料1において、臭化水素ガス及び塩化水素ガスによる腐食実験の結果は×であり、金属汚染試験の結果も×であった。
【0028】
比較試料2は、基材としてステンレス鋼であるSUS316Lを使用し、溶射膜を形成しなかったものであり、前記基材に洗浄工程300のみが実施された試料である。この比較試料2において、臭化水素ガス及び塩化水素ガスによる腐食実験の結果は×であり、金属汚染試験の結果も×であった。
【0029】
比較試料3は、基材としてアルミアルマイトを使用し、このアルミアルマイト基材の表面にY
2O
3を溶射して溶射膜を形成したものであり、追加工工程200及び洗浄工程300が実施されなかった試料である。この比較試料3において、臭化水素ガス及び塩化水素ガスによる腐食実験の結果は○であり、金属汚染試験の結果は×であった。
【0030】
比較試料4は、基材としてアルミアルマイトを使用し、このアルミアルマイト基材の表面にAl
2O
3を溶射して溶射膜を形成したものであり、追加工工程200及び洗浄工程300が実施されなかった試料である。この比較試料4において、臭化水素ガス及び塩化水素ガスによる腐食実験の結果は○であり、金属汚染試験の結果は×であった。
【0031】
【表1】
【0032】
以上の結果から、アモルファス金属による皮膜(溶射膜)が形成された基材(アルミ若しくはステンレス鋼)が、腐食に対しては常に最良の結果を残すことが証明された。また、平滑化を行う追加工工程200を施した場合、金属汚染に対して効果が落ちるが、洗浄工程300を施すことによって金属汚染に対する能力が復活することが証明された。
【0033】
以上のことから、半導体製造装置、液晶製造装置、エピ基板製造装置などに使用される処理容器内の機器及び処理容器に接続される機器を構成する部材について、アモルファス金属による皮膜を形成することによってラジカルや腐食性ガスを有するプロセスガスよる腐食防止することができるものである。さらに、シール面等、平坦化が必要な部分については平坦化の追加工を施した後に、フッ酸水溶液や、フッ酸及び硝酸の混合水溶液などで洗浄することによって、金属汚染を復活させることができるものである。