特許第6362467号(P6362467)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362467
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】真空冷却装置
(51)【国際特許分類】
   F25D 7/00 20060101AFI20180712BHJP
   A23B 4/06 20060101ALI20180712BHJP
   A23L 3/44 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   F25D7/00 A
   A23B4/06 501A
   A23L3/44
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-153379(P2014-153379)
(22)【出願日】2014年7月29日
(65)【公開番号】特開2016-31181(P2016-31181A)
(43)【公開日】2016年3月7日
【審査請求日】2017年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000130651
【氏名又は名称】株式会社サムソン
(72)【発明者】
【氏名】多田 聖司
(72)【発明者】
【氏名】明尾 伸基
【審査官】 石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−266649(JP,A)
【文献】 特開2004−218958(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/154357(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 1/00− 9/00
A23B 4/06
A23L 3/36− 3/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被冷却物を収容する処理槽、処理槽内の被冷却物温度を計測する温度計測装置、処理槽内の圧力を計測する圧力計測装置、処理槽内の気体を排出する真空発生装置を持ち、処理槽の内部を減圧することで、処理槽内に収容した被冷却物の温度が目標冷却温度になるように冷却を行う真空冷却装置であって、
冷却運転時に処理槽内の減圧速度を低減する徐冷運転機能を設けている真空冷却装置において、
前記温度検出装置にて検出した被冷却物温度が5℃以下であってかつ目標冷却温度より高い状態の時に、前記圧力計測装置で検出している処理槽内の圧力を所定の値に維持する真空圧調の工程を行う徐冷運転を行うようにしているものであることを特徴とする真空冷却装置。
【請求項2】
請求項に記載の真空冷却装置において、
徐冷運転で処理槽内の圧力を所定の値に維持する真空圧調の工程を行った後に、被冷却物温度のさらなる低下のために処理槽内の真空度を高める真空冷却の工程を行うものであることを特徴とする真空冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理された食品などの被冷却物を処理槽内に収容し、処理槽内を減圧することによって被冷却物内の水分を蒸発させ、蒸発による気化熱によって被冷却物を急速に冷却する真空冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2008−249256号公報に記載があるように、被冷却物を収容している処理槽内の気体を外部へ排気し、処理槽内を減圧することで、処理槽内の飽和温度を低下させ、被冷却物内から水分を蒸発させることにより、その気化熱を利用して被冷却物の冷却を図る真空冷却装置が知られている。給食センターなどにおいては、加熱調理食品を冷却する際に細菌が繁殖しやすい温度帯をできるだけ早く通過させることが要望されており、真空冷却装置であれば短時間で被冷却物の中心部まで冷却が可能であるために広く用いられている。
【0003】
真空冷却装置では、処理槽内に被冷却物を収容しておいて、真空発生装置によって処理槽を減圧する。真空冷却装置には、目標とする冷却温度を設定しておき、処理槽内の圧力が目標冷却温度に対応する圧力になるまで減圧を行う。処理槽内の減圧による真空冷却によって被冷却物の温度が所望の目標冷却温度になると、冷却は終了となる。処理槽内が真空状態のままであると処理槽を開くことはできないため、冷却終了後に処理槽内へ外気を導入し、処理槽内を大気圧まで復圧してから被冷却物を取り出す。
【0004】
真空冷却装置での冷却目標温度は、10℃から20℃程度ものが多いが、5℃以下のより低い温度まで冷却が望まれる場合もある。真空冷却は被冷却物の中心からも冷却することができるという特徴があるが、それでも被冷却物の温度は中心部よりも表面部分の方がより低くなりやすい。そのため、5℃以下の凍結寸前温度まで冷却しようとした場合には、冷却の途中で被冷却物の表面が先に凍結することがあった。
【0005】
真空冷却の原理は、被冷却物内部の水分を蒸発させることで冷却するものであるため、被冷却物表面で凍結が発生して壁を作ってしまうと、内部の水分が蒸発されなくなり、内部での冷却が遅れることになっていた。
そのことにより、目標冷却温度に達するまでの時間が長くなるということがあり、また被冷却物中心部では十分な冷却が行われていないまま、冷却が不十分に終わるということもあった。
【0006】
特開2008−249256号公報に記載の発明では、品温が冷却目標温度になるまで処理槽内を減圧後、その状態を維持するようにしている。
真空冷却の場合、被冷却物の種類によっては温度低下に差が発生することがあり、温度ムラによって過剰な冷却や冷却不足を生じることもあった。さらには被冷却物の大きさや、容器内での位置、詰り具合の差などにより、冷却され易い箇所と冷却され難い箇所とができることがあり、その場合にも温度ムラなどが発生することになる。
冷却目標温度になった後も処理槽内の真空度を維持するようにしておくと、温度低下の遅れていた部分があっても、圧力を維持している間に目標温度まで追いつくことができ、冷却の温度ムラを抑えることができるというものである。
しかしこの場合であっても、被冷却物の表面が凍結した後で真空度の維持を行ったのでは、被冷却物からの水分の蒸発が妨げられるために冷却には長い時間がかかることになる。
【0007】
また、真空冷却装置では、処理槽内の真空度が低い冷却初期から中期の時間帯では、処理槽内圧力は急激に低下させることができ、処理槽内の真空度が高くなった冷却終期では槽内圧力は緩やかに低下していく。そして被冷却物が飛び散りやすい液状物や破裂しやすい揚げ物である場合などでは、圧力が急激に低下する時間帯に被冷却物内からの水分の蒸発が激しくなることによって、吹きこぼれや破裂などが発生することがあった。このような突沸による不具合が発生するおそれのある場合には、減圧速度を低下させる徐冷を行うようにしている。徐冷の工程では、真空発生装置による気体の排出速度を調節することによる減圧速度の調節や、真空発生装置による気体の排出を行いながら、大気導入弁からの大気導入を行うことによって減圧速度を低下させる。
減圧速度を低下させると冷却に要する時間は長くなるが、被冷却物が飛び散るような場合には、真空度の低い時間帯では減圧速度を低下させる徐冷運転を行い、突沸の発生を防止するようにしている。徐冷運転が必要な場合でも、真空度が高くなってくると減圧速度は低下して水分の蒸発量は減少していくため、ある程度まで減圧が進むと徐冷運転は終了し、その後は真空発生装置の能力を全て使用した減圧を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−249256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、被冷却物の温度を5℃以下の凍結前温度まで冷却することができるようにしている真空冷却装置において、被冷却物の表面を凍結させることなく目標温度まで冷却を行うことで、温度ムラや遅延を発生することなく冷却することのできる真空冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、被冷却物を収容する処理槽、処理槽内の被冷却物温度を計測する温度計測装置、処理槽内の圧力を計測する圧力計測装置、処理槽内の気体を排出する真空発生装置を持ち、処理槽の内部を減圧することで、処理槽内に収容した被冷却物の温度が目標冷却温度になるように冷却を行う真空冷却装置であって、
冷却運転時に処理槽内の減圧速度を低減する徐冷運転機能を設けている真空冷却装置において、
前記温度検出装置にて検出した被冷却物温度が5℃以下であってかつ目標冷却温度より高い状態の時に、前記圧力計測装置で検出している処理槽内の圧力を所定の値に維持する真空圧調の工程を行う徐冷運転を行うようにしているものであることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記の真空冷却装置において、
徐冷運転で処理槽内の圧力を所定の値に維持する真空圧調の工程を行った後に、被冷却物温度のさらなる低下のために処理槽内の真空度を高める真空冷却の工程を行うものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明を実施することにより、真空冷却装置によって5℃以下の凍結寸前温度まで冷却する場合であっても、被冷却物の表面が凍結することはなくなるため、温度ムラの発生や、冷却に要する時間が長くなることも防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明を実施している真空冷却装置のフロー図
図2】本発明の一実施例における処理槽内圧力と品温の目標値及び計測値の変遷図
図3】従来の真空冷却装置における処理槽内圧力と品温の目標値及び計測値の変遷図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施例を図面を用いて説明する。図1は本発明を実施している真空冷却装置のフロー図、図2は本発明の一実施例における処理槽内圧力と品温の目標値及び計測値の変遷図、図3は比較のための従来例における処理槽内圧力と品温の目標値及び計測値の変遷図である。真空冷却装置は、被冷却物7を収容する処理槽2と、処理槽2内の気体を排出する真空発生装置1を持つ。真空冷却装置は、処理槽内を減圧することで被冷却物内の水分を蒸発させるものであり、蒸発時の気化熱によって処理槽2に収容した被冷却物7の冷却を行う。
【0016】
真空発生装置1は真空配管9で処理槽2と接続しており、処理槽2内の気体は真空発生装置1を作動することで真空配管9を通して排出する。真空配管9の途中には、処理槽2から吸引してきた気体を冷却するための熱交換器10を設けておく。処理槽から吸引している気体は蒸気を含んでおり、水は蒸気になると体積が大幅に大きくなるため、そのままでは大容積の蒸気を真空発生装置1へ送ることになり、それでは真空発生装置1の効率が悪くなる。そのために真空配管9に熱交換器10を設けており、熱交換器10で吸引気体の冷却を行うことで蒸気を凝縮させ、真空発生装置1で排出しなければならない気体の体積を縮小する。熱交換器10には冷却用の冷水を供給する冷水発生装置11を接続しており、冷水発生装置11と熱交換器10の間で冷水の循環を行わせるようにしている。熱交換器10で分離した凝縮水は、熱交換器10の下方に設置している凝縮水タンク8にためておき、冷却運転終了後に凝縮水タンク8から排出する。
【0017】
処理槽2には処理槽内の圧力を計測する圧力計測装置5と、被冷却物7内の温度を計測する温度計測装置12を設けておく。圧力計測装置5で計測した処理槽内の圧力と温度計測装置12で計測した被冷却物の温度は、真空冷却装置の運転を制御する運転制御装置6へ出力する。運転制御装置6は、真空発生装置1や外気取り込み弁3など、真空冷却装置の各機器を制御することで真空冷却装置の運転を行うものである。運転制御装置6では、経過時間と圧力計測装置5で計測している被冷却物7の温度や圧力計測装置5で計測している処理槽内圧力に基づいて各装置を制御する。
【0018】
真空冷却装置では、冷却時に冷却速度を緩やかにする徐冷運転を行えるようにしておく。
徐冷運転は、途中に外気取り込み弁3を設けた外気取り込み用配管4を処理槽2に接続しておき、冷却運転中に外気取り込み弁3を少し開くことで処理槽2内に外気を導入することによって行う。外気取り込み弁3を通じて外気の導入を行うと、処理槽2内では一方で処理槽内の気体を排出しながら他方で処理槽内へ外気の導入を行うものであるため、処理槽2内の減圧速度は低下することになる。
一般的には被冷却物7が液体であった場合、処理槽2内を急激に減圧すると被冷却物7に突沸が発生し、被冷却物が飛び散ることになるため、冷却時に冷却速度を緩やかにする徐冷を行う。
【0019】
被冷却物7の突沸を防ぐ徐冷制御を行う場合は、運転制御装置6に経過時間とその時点における処理槽内の目標圧力を設定しておき、圧力計測装置5で計測している処理槽内圧力値が目標圧力になるように外気取り込み弁3の開度を調節することにより、減圧速度を調節しながら冷却運転を行う。
この場合の徐冷運転は処理槽2内の圧力が急激に低下している時期に行う。処理槽2内の圧力が高い時期には、真空発生装置1が運転することによって排出される気体量は多くなり、圧力は急激に低下するため、突沸を防止するために行う徐冷運転はこの時間帯に行うことになる。減圧速度を低下させる徐冷を行うことにより、突沸による被冷却物の飛び散りなどを防止することができる。
処理槽内の真空度が高くなってくると、真空発生装置1が排出する気体量は減少し、処理槽2内の圧力変化は緩やかになる。真空度が高くなれば被冷却物7に突沸は発生しないため、真空冷却工程の終盤では突沸防止目的の徐冷は行わない。
【0020】
徐冷を行わない冷却の場合、外気取り込み弁3は閉じた状態で真空発生装置1の能力をそのまま使用して減圧を行い、処理槽内を目標圧力まで低下させる。
被冷却物7が突沸の発生を起こさないものであれば、徐冷制御を行わずに冷却する方がより早く冷却することができる。
【0021】
また、被冷却物7を5℃以下の凍結の可能性が出てくる低温まで冷却する場合には、被冷却物の表面が凍結することを防止するための徐冷運転を行う。この凍結防止目的の徐冷運転は、突沸防止目的の徐冷実施とは関係なく行い、減圧運転の終盤で徐冷運転を行う。
突沸防止目的での徐冷は、処理槽内を減圧する速度を緩やかにするものであり、減圧自体は進めるのであるが、凍結防止目的の徐冷は、減圧の途中で処理槽内を所定圧力に維持する圧力制御の時間を挟むことによって行う。
凍結防止目的に行う徐冷も開始時と終了時で異なる圧力を設定しておき、終了時の目標圧力に向けて圧力調節を行っても良いが、その場合には途中での圧力制御が行い難いため設定圧力は一点で定めておく方がよい。
処理槽内圧力を目標圧力に保持する場合、外気取り込み弁3の開度調節を行う。真空発生装置1の稼働を停止すると処理槽2内の圧力は上昇するため、真空発生装置1の稼働は継続しておき、外気取り込み弁3から取り込む外気量を調節することで減圧速度を調節し、処理槽2内の圧力を目標圧力に保つようにする。
【0022】
圧力調節は、処理槽内圧力が目標圧力よりも低くなると、外気取り込み弁3を開方向に操作することで外気の取り込み量を増加して処理槽内の圧力を高める方向に調節する。逆に処理槽内圧力が目標圧力よりも高くなると、外気取り込み弁3を閉じる方向に操作することで外気の取り込み量を減少して処理槽内の圧力を低くする方向に調節する。その際、目標値よりも計測圧力値が高い場合に外気取り込み弁を閉じる方向に行う操作量と、目標値よりも計測圧力値が低い場合に外気取り込み弁を開く方向に行う操作量は異ならせておく。高真空状態にある場合は、外気取り込み弁の開度を少し拡大するだけでも処理槽内の圧力はすぐに上昇していくが、処理槽内の圧力を低下させようとした場合には、外気取り込み弁の開度を少し閉じてもなかなか処理槽内の圧力は低下しない。そのため外気取り込み弁を開く場合の操作量は小さくし、外気取り込み弁を閉じる場合の操作量は大きくする。
【0023】
例えば、計測圧力が目標圧力よりも低いために処理槽内の圧力を上昇させるという場合には、外気取り込み弁3の開度を毎秒1ずつ開く操作を行い、逆に計測圧力が目標圧力よりも高いために処理槽内の圧力を低下させるという場合には、外気取り込み弁3の開度を毎秒10ずつ閉じる操作を行うように設定しておく。このように設定しておくと、外気取り込み弁3を開く場合は徐々に開き、閉じる場合はより速く閉じていくことになる。
【0024】
図2は真空冷却工程終盤に凍結防止のための徐冷を行う場合における運転制御の状況を示したものである。
Aの時間帯は被冷却物7の温度を目標冷却温度T1(例えば5℃)に向けて冷却する真空冷却の工程である。この時間帯では、真空発生装置1の能力をそのまま使用して処理槽2内の減圧を行い、被冷却物7の温度を低下させる。続くBの時間帯は、被冷却物7の温度が目標冷却温度T1に達した後、処理槽内を目標圧力に維持する真空圧調の工程である。ここでは所定時間の間、処理槽2内の圧力を冷却目標温度T1−αでの飽和圧力である目標圧力P1(例えば872Pa)で維持する。圧力制御は、真空発生装置1の運転は継続することで処理槽内からの気体の排出は継続している一方で、外気取り込み弁3からの外気導入を行い、外気の取り込み量を調節することで処理槽内の圧力を目標圧力に維持する。
【0025】
時間帯Bでの真空圧調の工程を終了すると、Cの時間帯では被冷却物の温度がより低い目標冷却温度T2(例えば3℃)となることを目指して処理槽内の真空度を高める。外気取り込み弁3を閉じると、処理槽内では高真空状態にあっても緩やかであるが圧力は低下していく。処理槽内の圧力が低下することで被冷却物の温度も低下し、被冷却物7の温度が目標冷却温度T2になると、次のDの時間帯で再び真空圧調の工程を行う。Dの時間帯での目標圧力は、冷却目標温度T2−αの飽和圧力である目標圧力P2(例えば758Pa)としており、ここでも先ほどと同様に、所定時間の間、処理槽2内の圧力を目標圧力P2で維持する。
【0026】
前記と同様に、目標圧力P2で所定時間の圧力制御を終了すると、次の時間帯Eで被冷却物の温度がさらに低い目標冷却温度T3(例えば1℃)になるように真空度を高める。そして被冷却物温度が目標冷却温度T3になると、次の時間帯Fで処理槽内の圧力を維持する。時間帯Fでの目標圧力は、冷却目標温度T3−αの飽和圧力である目標圧力P3(例えば657Pa)としており、目標圧力P3で維持する圧力制御を行う。
目標圧力P3で所定時間の維持が終了すると冷却は終了であり、時間帯Gでは真空発生装置1の作動を停止する。そして外気取り込み弁3を開き、外気取り込み用配管4を通して処理槽2内へ外気を導入することで被冷却物内を大気圧に戻す。処理槽2内を大気圧に戻すと、被冷却物7を取り出すことができる。
【0027】
なお、凍結防止のための徐冷の段数は変更することができる。上記の実施例では2段階の徐冷を行うようにしているが、徐冷は1段階としてもよい。1段徐冷の場合には、時間帯Dを終了すると冷却の工程を終了し、時間帯E及びFの制御は行わない。時間帯Dを終了すると、真空発生装置1の作動を停止し、処理槽内へ外気の取り込みを行って処理槽内を大気圧に戻す。
【0028】
このように被冷却物の温度が5℃以下であってかつ最終の温度よりは高い状態で、処理槽内の圧力を一定に保つ真空圧調の工程を行う。冷却の途中で圧力を維持する工程を挟むことで、被冷却物における中心部温度と表面部温度の差を少なくすることができ、被冷却物の表面が凍結することを防止することができる。最終温度までの冷却は、その後さらに処理槽内の真空度を上昇させる工程を行うことでより低い温度まで冷却することができる。
【0029】
比較のための図3では、目標冷却温度Tは最初から最終温度の1℃としており、目標冷却温度になるまで減圧を行うものである。従来の真空冷却装置においては、突沸を防止するために徐冷を行うことはあったが、真空度が高くなった状態では徐冷は行っていない。この場合、被冷却物の温度が目標冷却温度になる前に被冷却物の表面が凍結することがあった。凍結の発生によって、処理槽内の圧力を下げても被冷却物からの蒸発は行われないということになると、被冷却物の温度は低下しなくなる。この例では、所定の時間が経過しても被冷却物の温度が目標温度に達していないことにより、冷却異常との判定が行われて冷却は途中で終了してしまっている。
【0030】
被冷却物を5℃以下の凍結寸前温度まで真空冷却によって冷却する場合、被冷却物の表面が凍結することによって被冷却物内部からの水分蒸発が妨げられることがあったが、凍結防止のための徐冷運転を行うことで被冷却物の表面を凍結させずに冷却することができるようになる。
処理槽内の圧力を最終の圧力よりは少し高い圧力で維持する時間帯を設けておくことで、被冷却物内部での温度ムラが発生していても被冷却物内での温度を均等化することができ、そのことによって被冷却物の表面が過剰に冷却されることを防止することができる。
また、被冷却物表面での凍結がないことより、被冷却物からの水分の蒸発が妨げられて冷却時間が長くなるということも防止できる。
【0031】
なお、本発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 真空発生装置
2 処理槽
3 外気取り込み弁
4 外気取り込み用配管
5 圧力計測装置
6 運転制御装置
7 被冷却物
8 凝縮水タンク
9 真空配管
10 熱交換器
11 冷水発生装置
12 温度計測装置
図1
図2
図3