(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記袋体、保護シートおよびヒンジシートは、同材質・同厚みのゴム引き布製であり、前記袋体は、側面視で略U字状に湾曲させた保護シート内に収納されて保護され、保護シートの先端部分同士は、上下に重ね合されて相互の接着で一枚化されるとともに、
前記基礎台の上面に、幅方向の凹部若しくは凸部を有する下金具が設けられ、この下金具に対向する幅方向の凸部若しくは凹部を有する上金具が設けられ、前記保護シートの先端部分は、上金具から保護シートの先端部分のボルト穴を介して下金具に上方からボルト締めすることで、凹凸部の間で曲げられて挟み付けられ、前記扉体の回動支点付近の基礎台の上面に着脱可能に固定されている一方、
前記袋体を収納保護した保護シートは、前記扉体の背面および基礎台の上面に固定されていないことを特徴とする請求項1に記載のダム堤体の洪水吐ゲート改修用仮締め切り設備。
前記袋体は上下方向に複数個が設けられ、各袋体は、各保護シート内にそれぞれ収納されて保護され、各保護シートの先端部分同士は、上下に重ね合されて相互の接着で一枚化されることを特徴とする請求項2に記載のダム堤体の洪水吐ゲート改修用仮締め切り設備。
【背景技術】
【0002】
従来、水路の底部で支持されて、上流側の起立位置と下流側の倒伏位置との間で回動可能な扉体と、この扉体の下流側に設置された複数個の袋体とが設けられ、流体の供給による各袋体の膨張で扉体が起立位置に回動されるとともに、流体の排出による各袋体の収縮で扉体が倒伏位置に回動されるようになった起伏ゲートがある(特許文献1参照)。
【0003】
一方、
図11(a)は治水・利水用貯水ダムのダム堤体30を上流側から見た正面図、同図(b)は、同図(a)の中央断面図であり、ダム堤体30には、複数(本例では8台)の洪水吐ゲート(例えば昇降式のローラゲート)31が設けられている。この洪水吐ゲート31は、水力発電取水用の水位維持のために設けられているものであるが、水位が急激に上昇する洪水時に開いて、河川水を下流側に放流することで、ダム堤体30の上流側の洪水災害を防ぐためにも利用されている。
【0004】
ところで、近年、洪水災害をより確実に防ぐための治水・利水用貯水ダムの再開発が注目されている。ここで「ダムの再開発」とは、ダムを新設するのではなく、既存のダムを改修することで、より有効に活用することである。
【0005】
例えば、堆砂の進行により〔
図11(b)の矢印b参照〕貯水容量が大幅に減少することで、本来の治水機能(洪水流量の計画的放流等)が損なわれているダムの排砂機能を向上させるように改修するのである。
【0006】
そのために、
図12(a)に示すように、既設の洪水吐ゲート31の内、例えば、真ん中4台の洪水吐ゲート31を撤去し、その代わりに、ダム湖の湖底方向に深く延びる2台の洪水吐ゲート32を新設するのである。
【0007】
これにより、
図12(b)の矢印bのように堆砂が進行しても、
図12(c)のように、新設の洪水吐ゲート32を開くことで、排砂機能を向上させることができる(矢印c参照)。
【0008】
ここで、既存のダムを改修するためには、
図13(a)に示すように、ダム堤体30の上流側に洪水吐ゲート改修用仮締め切り設備35を構築する必要がある。
【0009】
すなわち、ダム堤体30の複数の洪水吐ゲート31の内、改修すべき一部(本例では真ん中の4台)の洪水吐ゲート31の上流側における左右両側部に、洪水吐ゲート31の上部に略相当する高さの側部止水用矢板36を水底に打ち込む。また、この側部止水用矢板36の間の前後部に、洪水吐ゲート31の下部に略相当する高さの前後部止水用矢板37を水底に打ち込む。そして、この前後部止水用矢板37の内部に基礎台38を設置し、この基礎台38に、洪水吐ゲート31の上部に略相当する高さの堰止め機構39(A〜C)を設置する。
【0010】
これにより、ダム堤体30の改修すべき洪水吐ゲート31の上流側に、止水スペースSが形成されることで、既設の洪水吐ゲート31の撤去と新設の洪水吐ゲート32の施工等の改修工事をスムーズに行うことができる。この改修工事中(通常は3〜5年)における洪水時には、左右に残った2台の既設の洪水吐ゲート31で河川水を下流側に放流することができる(矢印a参照)。
【0011】
ところで、
図13(b)の堰止め機構39(A)は大型土嚢タイプであり、
図13(c)の堰止め機構39(B)は土堰堤タイプであり、
図13(d)の堰止め機構39(C)はフラッシュボードタイプである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、水力発電用導水路からの転流と、左右に残った2台の既設の洪水吐ゲート31だけでは放流しきれない洪水時には、固定式の大型土嚢タイプと土堰堤タイプの堰止め機構39(A),39(B)は、いずれも通水機能が無いことから、ダム堤体30の上流側の洪水災害を防ぐことができないという問題がある。
【0014】
また、フラッシュボードタイプの堰止め機構39(C)は、木材製や鋼板製のボート40をステー41に立てかけただけであり、洪水による水圧でステー41が支えきれなくなったときに、ボード40を流失させて通水機能を持たせることで、洪水の障害とならないことを意図したものであるが、流失のたびに設置し直す必要があるので、施工性や経済性が悪いという問題がある。
【0015】
本発明は、前記問題を解消するためになされたもので、平水量時には堰止め機能を確実に発揮し、洪水時には安全かつ確実に通水させる機能を発揮し、施工性や経済性に優れたダム堤体の洪水吐ゲート改修用仮締め切り設備を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するために、本発明は、
河川横断方向を左右方向としたときに、当該左右方向に延在するダム堤体の上流側における複数の洪水吐ゲートの内、改修すべき一部の洪水吐ゲートの左右両側部に、前記洪水吐ゲートの上部に略相当する高さの側部止水用鋼管矢板を水底に打ち込み、この側部止水用鋼管矢板の間の
上流部及び下流部に、前記洪水吐ゲートの下部に略相当する高さの前後部止水用鋼管矢板を水底に打ち込み、この前後部止水用鋼管矢板の内部に基礎台を設置し、この基礎台に、前記洪水吐ゲートの上部に略相当する高さの堰止め機構を設置してなるダム堤体の洪水吐ゲート改修用仮締め切り設備であって、前記堰止め機構は、前記基礎台の上面に可撓性のヒンジシートで支持されて、前記側部止水用鋼管矢板の内側の戸当たり用ピヤーの間で上流側の起立位置と下流側の倒伏位置との間で回動可能な扉体と、この扉体の下流側に設置された可撓性の袋体とで構成され、流体の供給による袋体の膨張で、扉体の上部が前記洪水吐ゲートの上部に略相当する高さの起立位置に回動されるとともに、流体の排出による袋体の収縮で、扉体の前面部が前記洪水吐ゲートの下部に略相当する高さの倒伏位置に回動されるようになった起伏ゲートであることを特徴とするダム堤体の洪水吐ゲート改修用仮締め切り設備を提供するものである。
【0017】
前記袋体、保護シートおよびヒンジシートは、同材質・同厚みのゴム引き布製であり、前記袋体は、側面視で略U字状に湾曲させた保護シート内に収納されて保護され、保護シートの先端部分同士は、上下に重ね合されて相互の接着で一枚化されるとともに、前記基礎台の上面に、幅方向の凹部若しくは凸部を有する下金具が設けられ、この下金具に対向する幅方向の凸部若しくは凹部を有する上金具が設けられ、前記保護シートの先端部分は、上金具から保護シートの先端部分のボルト穴を介して下金具に上方からボルト締めすることで、凹凸部の間で曲げられて挟み付けられ、前記扉体の回動支点付近の基礎台の上面に着脱可能に固定されている一方、前記袋体を収納保護した保護シートは、前記扉体の背面および基礎台の上面に固定されていない構成とすることができる。
【0018】
前記袋体は上下方向に複数個が設けられ、各袋体は、各保護シート内にそれぞれ収納されて保護され、各保護シートの先端部分同士は、上下に重ね合されて相互の接着で一枚化される構成とすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、堰止め機構として起伏ゲートを採用している。この起伏ゲートは、基礎台の上面に可撓性のヒンジシートで支持して、上流側の起立位置と下流側の倒伏位置との間で回動可能な扉体(例えば金属製)と、可撓性の袋体(例えばゴム引き布製)との組み合わせ(ハイブリッド)で構成している。そして、流体の供給による袋体の膨張で、扉体の上部が洪水吐ゲートの上部に略相当する高さの起立位置に回動させ、流体の排出による袋体の収縮で、扉体の前面部が洪水吐ゲートの下部に略相当する高さの倒伏位置に回動させるようにしている。
【0020】
したがって、平水時は、起伏ゲートを起立させることで、側部および前後部の止水用矢板内の止水スペース内に河川水が流入しないので、改修工事をスムーズに行うことができる。なお、河川水は、常時は、止水スペースの上流側に位置する発電用取水設備から取水することで転流させている。
【0021】
改修工事中における洪水時、増水初期の段階では、改修工事をしないで残した既設の洪水吐ゲートから河川水を下流側に放流することができる。
【0022】
洪水流量がさらに増加して、既設の洪水吐ゲートだけでは放水量が不足する段階になると、起伏ゲートを倒伏させる。これにより、河川水が止水スペース内に流入して、改修工事中の洪水吐ゲートからも河川水を下流側に放流することができる。なお、起伏ゲートを完全に倒伏させないで、起立角度を調整しながら倒伏させることで、河川水の放流量を微調整することもできる。
【0023】
このように、堰止め機構として起伏ゲートを採用することで、平水量時には堰止め機能を確実に発揮させることができる。また、洪水時には、固定式の大型土嚢タイプや土堰堤タイプと異なり、起伏ゲートを倒伏させるだけで、安全かつ確実に通水させる機能を発揮させることができるので、ダム堤体の上流側の洪水災害を未然に防ぐことができる。
【0024】
また、フラッシュボードタイプと異なり、流失のたびに設置し直す必要が無く、繰り返し使用できるので、施工性や経済性が優れたものとなる。
【0025】
さらに、基礎台は、改修工事が終わると鋼管矢板とともに撤去するものであるから、通常は、ダム湖に堆積した土石を利用しただけの簡易なものとしているため、水圧によって歪むことがあり、この歪みを無くすためには数億円の工事費用が必要となる。そこで、起伏ゲートの扉体は、基礎台の上面に可撓性のヒンジシートで支持するとともに、可撓性の袋体は、基礎台の上面と扉体の背面との間に設置することで、基礎台が歪んでも、その歪みは、可撓性のヒンジシートと可撓性の袋体とで吸収することができる。したがって、起伏ゲートを設置する基礎台は、ダム湖に堆積した土石を利用しただけの簡易なものでよいから、基礎台の歪みを無くすための工事費用が不要になる。
【0026】
一方、袋体、保護シートおよびヒンジシートを同材質・同厚みのゴム引き布製とし、袋体を略U字状に湾曲させた保護シート内に収納して保護し、保護シートの先端部分同士を上下に重ね合わせて相互の接着で一枚化すれば、袋体は、側面視で略U字状に湾曲させた保護シート内にそれぞれ収納されることで保護されていて、袋体は、保護シートに全面接着することで保持する必要はないから、一部が接着されているにしても、経年劣化でその接着性が低下したところで、袋体が保護シートから剥離して脱落するおそれが全くなくなる。
【0027】
また、袋体の下流側部分は保護シートで覆われて保護するから、通水時に流木等が当たっても破損するおそれが少なくなる。
【0028】
さらに、保護シートの先端部分は、上金具を下金具に上方からボルト締めすることで、凹凸部の間で曲げられて挟み付けられ、基礎台の上面に着脱可能に固定されるから、保護シートの先端部分は、基礎台の上面に強固に固定されるようになる。
【0029】
また、保護シートの先端部分同士は、上下に重ね合わせて相互の接着で一枚化しているから、保護シートの先端部分のボルト穴の強度が向上し、ボルト穴が延ばされて破断するのを未然に防止することができる。このように、保護シートの先端部分のボルト穴の強度を向上させることができる。
【0030】
さらに、袋体は上下方向に複数個を設け、各袋体は、各保護シート内にそれぞれ収納して保護し、各保護シートの先端部分同士は、上下に重ね合せて相互の接着で一枚化する構成とすれば、袋体と保護シートが一組の1重袋タイプの他、袋体と保護シートが複数組の多重袋タイプにも適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、背景技術と同一構成・作用の箇所は、同一番号を付して詳細な説明を省略する。
【0033】
図1は、ダム堤体30の洪水吐ゲート改修用仮締め切り設備25の平面図、
図2は
図1のI−I線拡大断面図である。
【0034】
河川横断方向を左右方向としたときに、当該左右方向に延在するダム堤体30の上流側における複数(本例では8台)の洪水吐ゲート(ローラゲート)31の内、改修すべき一部(本例では真ん中の4台)を含む洪水吐ゲート31(本例では真ん中の6台)の左右両側部に、洪水吐ゲート31の上部に略相当する高さの側部止水用鋼管矢板36が水底に打ち込まれている。また、この側部止水用鋼管矢板36の間の前後部
、すなわち上流部及び下流部に、洪水吐ゲート31の下部に略相当する高さの前後部止水用鋼管矢板37が水底に打ち込まれている。この前後部止水用鋼管矢板37の内部の下部に、ダム湖に堆積した土石45が充填され、この土石45の上部にコンクリート基礎46を打設してなる基礎台38が設置されている。
【0035】
このコンクリート基礎46の上に、左右の側部止水用鋼管矢板36の内面に沿って上方に立ち上がるコンクリート製の戸当たり用ピヤー47が立設されている。
【0036】
そして、左右の戸当たり用ピヤー47の間のコンクリート基礎46のピット46a内に、
図2の起立状態Uにおいて、扉体5の上部が洪水吐ゲート31の上部に略相当する高さの堰止め機構である起伏ゲート3が設置されている。この起伏ゲート3は、1台である必要はなく、コンクリート基礎46のピット46a内に複数台(例えば2〜6台)を横並びで設置することもできる。
【0037】
この起伏ゲート3によって、ダム堤体30の改修すべき洪水吐ゲート31の上流側に、止水スペースSが形成されることになる。
【0038】
図1において、矢印dは、平水時の河川水が仮締め切り設備25の上流側に位置する発電用取水設備26から取水されるルートを示す。また、矢印aは、改修工事中において、改修工事をしないで残した左右2台の既設の洪水吐ゲート31から河川水を下流側に放流するルートを示す。さらに、矢印eは、起伏ゲート3の扉体5を倒伏させることで、河川水が止水スペースS内に流入して、改修工事中の既設の洪水吐ゲート(本例では真ん中の6台)31からも河川水を下流側に放流するルートを示す。
【0039】
図3は、多重袋タイプの袋体12A,12Bを備えた起伏ゲート3の起立位置Uの斜視図、
図4は
図3の起伏ゲート3の倒伏位置Dの斜視図、
図5(a)は
図3の起伏ゲート3の左半分の背面図と右半分の正面図、
図5(b)は
図3の起伏ゲート3の側面図である。
【0040】
基礎台38のコンクリート基礎46のピット46a内には、起伏ゲート3の金属製の矩形状扉体5が配置されている。
【0041】
扉体5の下部とピット46a内の上段金具6aとに跨って、止水を兼ねる可撓性ゴム引布製のヒンジシート7が宛われ、扉体5の下部に、押さえ板8aを介してボルトで固定されるとともに、ピット46a内の上段金具6aに、押さえ板8bを介してボルトで固定されている。
【0042】
これにより、扉体5は、基礎台38のコンクリート基礎46で、上流側の起立位置Uと下流側の倒伏位置Dとの間で回動可能に支持されるようになり、倒伏位置Dでは、
図4のように、コンクリート基礎46と略面一となる。また、扉体5の左右の両端部が戸当たり用ピヤー47に接触することで、この間が止水されるようになる。
【0043】
扉体5の背面とピット46aの底部には、扉体5の最大の起立位置Uを規制する引留帯22が取付けられている。
【0044】
扉体5の下流側の下部内面には、ローラ10aがブラケット10bで支持されて、このローラ10aがピット46a内の中段金具6bに当接することで、扉体5の下端部が中段金具6bで支持されるようになる。
【0045】
扉体5の下流側には、複数個(本例では上下2個)の袋体12A,12Bが設置されている。各袋体12A,12Bは、扉体5の横幅よりやや短い幅で、数mm厚のゴム引き布によって略扁平な中空枕形状に形成されている。
【0046】
各袋体12A,12Bは、
図6を参照すれば、側面視で略U字状に湾曲させた1枚物の保護シート13A,13B内にそれぞれ収納されて保護されている。この保護シート13A,13Bは、袋体12A,12Bと同材質・同厚みの可撓性ゴム引き布製であることが好ましい。
【0047】
各保護シート13A,13Bの各先端部分13a,13b同士は、上下に重ね合された状態で(4枚重ねとなる。)、相互の接着で一枚化されて(見かけ上1枚ものとなる。)下流方向にU字状に湾曲され、扉体5の回動支点O(
図3参照)の付近のコンクリート基礎46のピット46aの底部に着脱可能に固定されている。
【0048】
具体的には、
図3および
図7(a)に示すように、コンクリート基礎46のピット46a内の下段金具6cに、幅方向の凹部(凸部でも可)14aを有する下金具14Aが固定されている。なお、本実施形態では、下段金具6cに下金具14Aを一体形成している。また、下金具14Aに対向する幅方向の円弧状凸部(凹部でも可)14bを有する上金具14Bが設けられている。そして、上下に重ね合された保護シート13A,13Bの各先端部分13a,13bは、上金具14Bのボルト穴14cから各先端部分13a,13bのボルト穴13cを介して下金具14Aのねじ穴14dに上方からボルト15でボルト締めすることで、
図7(b)のように、凹凸部14a,14bの間で波形に曲げられて挟み付けられる。これにより、保護シート13A,13Bの各先端部分13a,13bは、コンクリート基礎46のピット46aの底部に着脱可能に固定されるようになる。
【0049】
図9(a)(b)に詳細に示すように、各袋体12A,12Bは、各保護シート13A,13Bとともに流体(本例では空気)の給排口16で連通され、この給排口16の付近の保護シート13A,13B同士が接着ゴム17で気密に接着されている。また、給排口16の付近の袋体12Aと保護シート13A、袋体12Bと保護シート13Bも気密に接着されている。
【0050】
さらに、袋体12Aと保護シート13A、袋体12Bと保護シート13Bは、それぞれ位置ずれしないように、適当な箇所で接着されている。なお、この接着は、保護シート13A,13Bから袋体12A,12Bが脱落するのを防止するものではなく、あくまで位置ずれを防止する程度のものである。そのため、各袋体12A,12Bと各保護シート13A,13Bに小片シートを予め取付けておき、必要な小片シート同士を接着若しくはボルト・ナット等で固定することで、位置ずれを防止することもできる。
【0051】
各袋体12A,12Bを収納した保護シート13A,13Bは、扉体5の背面およびコンクリート基礎46のピット46aの底部に固定していない、つまりフリー状態である。
【0052】
各袋体12A,12Bの内面には、給排口16の周囲を補強するリング状の補強部材18が接着されている。
図9(a)の例では、金属製補強板18aの全体をゴム材18bで被覆して、ゴム材18bを給排口16の周囲に接着している。また、
図9(b)の例では、保護シート13A,13Bや袋体12A,12Bと同材質のゴム引き布製のシート材18cを複数枚(本例では2枚)に積層したものを、給排口16の周囲に接着している。
【0053】
図3に戻って、コンクリート基礎46のピット46a内の中空ボックス6dには、陸上の流体(例えば空気)供給源に接続されたフレキシブル管20が配置され、このフレキシブル管20は、下段位置の保護シート13Bと袋体12Bの下部の給排口16´に接続されている。
【0054】
したがって、
図3のように、フレキシブル管20からの空気の供給によって、給排口16´と給排口16を介しての各袋体12A,12Bの膨張で扉体5が起立位置Uに回動される。また、
図4のように、フレキシブル管20からの空気の排出によって、給排口16´と給排口16を介しての各袋体12A,12Bの収縮で扉体5が倒伏位置Dに回動される。
【0055】
この場合、
図8のように、フレキシブル管20側の給排口16´の口径D2よりも上下の袋体12A,12Bの間の給排口16の口径D1を大きくしておけば(D1>D2)、空気の流通がスムーズになって、上下の袋体12A,12Bを均等に膨張させることができる。
【0056】
一方、
図10に示すように、1個の袋体12だけを用いた場合には、保護シート13も1枚であるが、多重袋タイプと同様に、保護シート13の先端部分13aを上金具14Bと下金具14Aとでボルト15でボルト締めする。これにより、保護シート13の先端部分13aは、コンクリート基礎46のピット46a内に着脱可能に固定されるようになる。
【0057】
前記のようなダム堤体30の洪水吐ゲート改修用仮締め切り設備25であれば、堰止め機構として起伏ゲート3を採用している。この起伏ゲート3は、基礎台38の一部であるコンクリート基礎46の上面に可撓性のヒンジシート7で支持して、上流側の起立位置Uと下流側の倒伏位置Dとの間で回動可能な金属製の扉体5と、可撓性の袋体12A,12Bとの組み合わせ(ハイブリッド)で構成している。
【0058】
そして、流体の供給による袋体12A,12Bの膨張で、扉体5の上部が洪水吐ゲート31の上部に略相当する高さの起立位置Uに回動させ、流体の排出による袋体12A,12Bの収縮で、扉体5の前面部が洪水吐ゲート31の下部に略相当する高さの倒伏位置Dに回動させるようにしている。
【0059】
したがって、平水時は、起伏ゲート3を起立させることで、鋼管矢板36,37内の止水スペースS内に河川水が流入しないので、既設の洪水吐ゲート31の撤去と新設の洪水吐ゲート32の施工等の改修工事をスムーズに行うことができる。
【0060】
改修工事中における洪水時、増水初期の段階では、改修工事をしないで残した既設の洪水吐ゲート(
図1では左右の2台)31から河川水を下流側に放流することができる。
【0061】
洪水流量がさらに増加して、既設の洪水吐ゲート31だけでは放水量が不足する段階になると、起伏ゲート3を倒伏させる。これにより、河川水が止水スペースS内に流入して、改修工事中の既設の洪水吐ゲート(
図1では真ん中の6台)31からも河川水を下流側に放流することができる。なお、起伏ゲート3を完全に倒伏させないで、起立角度を調整しながら倒伏させることで、放流量を微調整することもできる。
【0062】
このように、堰止め機構として起伏ゲート3を採用することで、平水量時には堰止め機能を確実に発揮させることができる。また、洪水時には、固定式の大型土嚢タイプや土堰堤タイプと異なり、起伏ゲート3を倒伏させるだけで、安全かつ確実に通水させる機能を発揮させることができるので、ダム堤体30の上流側の洪水災害を未然に防ぐことができる。
【0063】
また、フラッシュボードタイプと異なり、流失のたびに設置し直す必要が無く、繰り返し使用できるので、施工性や経済性が優れたものとなる。
【0064】
さらに、基礎台38は、改修工事が終わると鋼管矢板36,37とともに撤去するものであるから、通常は、ダム湖に堆積した土石45を利用しただけの簡易なものとしているため、水圧によって歪むことがあり、この歪みを無くすためには数億円の工事費用が必要となる。そこで、起伏ゲート3の扉体5は、コンクリート基礎46のピット46aの底部に可撓性のヒンジシート7で支持するとともに、可撓性の袋体12A,12Bは、コンクリート基礎46のピット46aの底部と扉体5の背面との間に設置することで、基礎台38が歪んでも、その歪みは、可撓性のヒンジシート7と可撓性の袋体12A,12Bとで吸収することができる。したがって、起伏ゲート3を設置する基礎台38は、ダム湖に堆積した土石45を利用しただけの簡易なものでよいから、基礎台38の歪みを無くすための工事費用が不要になる。
【0065】
また、ダム堤体30の洪水吐ゲート改修用仮締め切り設備25の堰止め機構として採用する起伏ゲート3は、特許文献1のような水路に用いる起伏ゲートと比較して、下記のような利点がある。
【0066】
(a) 扉体5の許容たわみ度が、1/800から1/600に緩和されるから、扉体5の板厚、補強を軽量化できるので経済性が向上する。
【0067】
(b) 扉体5と袋体12A,12Bをダム堤体30の幅方向に細分化できるので(複数台の起伏ゲート3を横並びで並設する。)、起伏ゲート3としての柔軟性が向上し、基礎台38の歪みの許容量が、数mmから数cmに拡大される。
【0068】
(c) 扉体5に耐食性材料を使用する必要がなくなる。
【0069】
(d) 短期間(3〜5年)の使用なので、袋体12A,12B等のゴム引布材料の経年劣化を考慮した安全率を省略でき、材料費を低減できる。
【0070】
一方、多重袋タイプの起伏ゲート(1重袋タイプも同様。)3であれば、各袋体12A,12Bは、側面視で略U字状に湾曲させた各保護シート13A,13B内にそれぞれ収納されることで保護されていて、各袋体12A,12Bは、各保護シート13A,13Bに全面接着することで保持する必要はないから、一部が接着されているにしても、経年劣化でその接着性が低下したところで、袋体12A,12Bが保護シート13A,13Bから剥離して脱落するおそれが全くなくなる。
【0071】
また、各袋体12A,12Bの下流側部分は各保護シート13A,13Bで覆われて保護されているから、通水時に流木等が当たっても破損するおそれが少なくなる。
【0072】
また、各保護シート13A,13Bの先端部分13a,13bは、上金具14Bを下金具14Aに上方からボルト締めすることで、凹凸部14a,14bの間で曲げられて挟み付けられ、コンクリート基礎46のピット46a内に着脱可能に固定されるから、各保護シート13A,13Bの先端部分13a,13bは、コンクリート基礎46のピット46a内に強固に固定されるようになる。
【0073】
さらに、各保護シート13A,13Bの先端部分13a,13b同士は、上下に重ね合わせて相互の接着で一枚化しているから、各保護シート13A,13Bの先端部分13a,13bのボルト穴13cの強度が向上し、ボルト穴13aが延ばされて破断するのを未然に防止することができる。このように、保護シート13A,13Bの先端部分13a,13bのボルト13c穴の強度を向上させることができる。