(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
主構造体と非構造壁との接合部分に沿って形成され且つ底面が屋外側の低層面と屋内側の高層面とからなる段差状をなした水平スリット内に配設される水平スリット材において、
上記水平スリット内の低層面上に配設され、上面の屋内側角部に断面略直角状をなす隅部が凹設された屋外側スリット材と、
上記水平スリット内の高層面上に配設されると共に屋外側に向けて延設され、下面の屋外側角部が上記低層面上に位置して上記屋外側スリット材の隅部に嵌め込まれて接合された屋内側スリット材と
を備えたことを特徴とする水平スリット材。
主構造体と非構造壁との接合部分に沿って形成され且つ底面が屋外側の低層面と屋内側の高層面とからなる段差状をなした水平スリット内に配設される水平スリット材において、
上記水平スリット内の低層面上に配設される主材、該主材上に接合されて該主材上から屋内側に向けて延設され、該延設部分が上記水平スリットの高層面上に位置する下側副材、及び該下側副材上に接合されて上記水平スリットの低層面上に位置すると共に、該下側副材との間に断面略直角状をなす隅部を形成する上側副材からなる屋外側スリット材と、
上記屋外側スリット材の上記下側副材上に接合されて上記水平スリット内の高層面上に位置すると共に屋外側に向けて延設され、下面の屋外側角部が上記低層面上に位置して上記屋外側スリット材の上記隅部に嵌め込まれて接合された屋内側スリット材と
を備えたことを特徴とする水平スリット材。
【背景技術】
【0002】
近年、ビルなどのコンクリート造の建造物では、梁や柱などの主構造体と非構造壁との接合部分にスリット材と称される緩衝材を埋設する工法が普及しつつある。この種のスリット材には、柱と非構造壁との接合部分に配設される垂直スリット材、及び梁と非構造壁との接合部分に配設される水平スリット材とがある。これらのスリット材は非構造壁の周囲に適宜配置されて、非構造壁を貫通もしくは所定の壁厚を残すように埋設され、これにより主構造体と非構造壁との接合部分を構造的に分断している。
このような構造スリットを採用した建造物では地震による外力が作用すると、非構造壁の周囲に配設したスリット材により主構造体への外力の伝達を遮断し、建造物の剪断破壊や脆性破壊を回避するようになっている。
【0003】
コンクリート造建物の外壁の一部を構成するように非構造壁を配設した場合、特に水平スリット材には、屋外からの雨水が室内に侵入するのを防止する対策が必要になる。コンクリートの打設時には水平スリットの屋外側に目地部を設けており、型枠の解体後に目地部に充填されるシーリング材により雨水の侵入が防止される。しかしながら、シーリング材は過酷な自然環境に晒され且つ地震や強風を受けて変形を繰り返すため、破断や剥離を生じてシール機能を損なってしまう場合がある。
その対策として、例えば特許文献1の
図9に開示された技術では、水平スリット材を屋外側スリット材と屋内側スリット材とから構成し、屋外側スリット材に対して屋内側スリット材を一段上側に配置した状態でコンクリートを打設している。このような配置により、雨水の侵入経路となる隙間は屋内側に向けて段差状に高くなる断面形状になり、屋外からの雨水が屋内に侵入し難くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の水平スリット材はコンクリート打設時に施工上の問題があった。
図13は特許文献1の水平スリット材による施工途中のコンクリート造建物を示す断面図である。水平スリット材101を施工する際のコンクリートの打設は2回に分けて実施され、その初回には、外型枠102に対し目地棒103と共に屋外側スリット材104を固定した上で、屋外側スリット材104の上面までコンクリートが打設される。これにより下層階の梁106の部分が形成され、屋外側スリット材104上の所定位置に屋内側スリット材105を配設した後に2回目のコンクリートの打設が実施され、これにより非構造壁107が形成される。なお、図中の108はアンカー鉄筋である。
【0006】
ところが、このような現場の作業では屋内側スリット材105を所定位置に正確に配設することが困難なため、屋外側スリット材104と屋内側スリット材105とを正規の位置関係にできず、本来の水平スリット材101の機能が得られない可能性があった。そこで、水平スリット材101の製造段階で予め屋外側スリット材104と屋内側スリット材105とを接合することが考えられるが、両スリット材104,105は平面同士を接合されることから位置決めの手がかりがない。このため、屋外側スリット材104と屋内側スリット材105との相対位置を治具により定めるなどの対策が必要となり、製造作業が煩雑になるという別の問題が発生してしまう。
【0007】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、屋外側スリット材と屋内側スリット材とを正規の位置関係で容易且つ正確に接合でき、よって本来の水平スリット材の機能を発揮させることができる水平スリット材、及びこの水平スリット材を用いた水平スリット構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1の発明の水平スリット材は、主構造体と非構造壁との接合部分に沿って形成され且つ底面が屋外側の低層面と屋内側の高層面とからなる段差状をなした水平スリット内に配設される水平スリット材において、水平スリット内の低層面上に配設され、上面の屋内側角部に断面略直角状をなす隅部が凹設された屋外側スリット材と、水平スリット内の高層面上に配設されると共に屋外側に向けて延設され、下面の屋外側角部が低層面上に位置して屋外側スリット材の隅部に嵌め込まれて接合された屋内側スリット材とを備えたことを特徴とする。
【0009】
従って、屋内外方向において、水平スリット材の屋外側スリット材の全ての領域及び屋外側スリット材の隅部に接合された屋内側スリット材の領域が水平スリット内の低層面上に配設され、屋内側スリット材の残りの領域が水平スリット内の高層面上に配設される。
【0010】
そして、水平スリット材を製造する際には、屋外側スリット材の隅部に屋内側スリット材の下面の屋外側角部を嵌め込むだけで、両スリット材の位置関係が自ずと定まる。よって、治具などを用いた煩雑な製造作業を要することなく、屋外側スリット材と屋内側スリット材とを正規の位置関係で容易且つ正確に接合することができる。
【0011】
請求項2の発明の水平スリット構造は、主構造体と非構造壁との接合部分に沿って形成された水平スリット内に水平スリット材を配設してなる水平スリット構造において、水平スリット材が屋外側スリット材と屋内側スリット材とから構成され、屋外側スリット材の上面の屋内側角部に断面略直角状をなす隅部が凹設され、隅部に屋内側スリット材の下面の屋外側角部が嵌め込まれて接合されており、水平スリットの底面が屋外側の低層面と屋内側の高層面とからなる段差状に形成され、屋内外方向において水平スリット材の屋外側スリット材の全ての領域及び屋外側スリット材の隅部に接合された屋内側スリット材の領域が水平スリット内の低層面上に配設されると共に、屋内側スリット材の残りの領域が水平スリット内の高層面上に配設されたことを特徴とする。
従って、請求項1の発明の水平スリット材と同様の作用を得ることができる。
【0012】
請求項3の発明の水平スリット材は、主構造体と非構造壁との接合部分に沿って形成され且つ底面が屋外側の低層面と屋内側の高層面とからなる段差状をなした水平スリット内に配設される水平スリット材において、水平スリット内の低層面上に配設される主材、主材上に接合されて主材上から屋内側に向けて延設され、延設部分が水平スリットの高層面上に位置する下側副材、及び下側副材上に接合されて水平スリットの低層面上に位置すると共に、下側副材との間に断面略直角状をなす隅部を形成する上側副材からなる屋外側スリット材と、屋外側スリット材の下側副材上に接合されて水平スリット内の高層面上に位置すると共に屋外側に向けて延設され、下面の屋外側角部が低層面上に位置して屋外側スリット材の隅部に嵌め込まれて接合された屋内側スリット材とを備えたことを特徴とする。
【0013】
従って、屋内外方向において、水平スリット材の屋外側スリット材を構成する主材及び上側副材の全ての領域、下側副材の上記主材と重なる屋外側の領域、及び屋外側スリット材の隅部に接合された屋内側スリット材の領域が水平スリット内の低層面上に配設されると共に、屋内側スリット材の残りの領域及び屋外側スリット材の下側副材の残りの屋内側の領域が水平スリット内の高層面上に配設される。
【0014】
そして、水平スリット材を製造する際には、屋外側スリット材の隅部に屋内側スリット材の下面の屋外側角部を嵌め込むだけで、両スリット材の位置関係が自ずと定まる。よって、治具などを用いた煩雑な製造作業を要することなく、屋外側スリット材と屋内側スリット材とを正規の位置関係で容易且つ正確に接合することができる。
【0015】
請求項4の発明の水平スリット構造は、主構造体と非構造壁との接合部分に沿って形成された水平スリット内に水平スリット材を配設してなる水平スリット構造において、水平スリット材が屋外側スリット材と屋内側スリット材とから構成され、屋外側スリット材は、主材上に下側副材が接合されて主材から屋内側に向けて延設され、下側副材上の屋外側に上側副材が接合されて下側副材との間に断面略直角状をなす隅部を形成してなり、屋内側スリット材は、屋外側スリット材の下側副材上に接合されて下面の屋外側角部が隅部に嵌め込まれて接合されており、水平スリットの底面が屋外側の低層面と屋内側の高層面とからなる段差状に形成され、屋内外方向において水平スリット材の屋外側スリット材を構成する主材及び上側副材の全ての領域、下側副材の上記主材と重なる屋外側の領域、及び屋外側スリット材の隅部に接合された屋内側スリット材の領域が水平スリット内の低層面上に配設されると共に、屋内側スリット材の残りの領域及び屋外側スリット材の下側副材の残りの屋内側の領域が水平スリット内の高層面上に配設されたことを特徴とする。
従って、請求項3の発明の水平スリット材と同様の作用を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明の水平スリット材及び水平スリット構造によれば、水平スリット材を製造する際には、屋外側スリット材の隅部に屋内側スリット材の下面の屋外側角部を嵌め込むだけで両スリット材の位置関係が自ずと定まるため、煩雑な製造作業を要することなく両スリット材を正規の位置関係で容易且つ正確に接合でき、もって本来の水平スリット材の機能を十分に発揮させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
以下、本発明を具体化した水平スリット材及びこれを用いた水平スリット構造の第1実施形態を説明する。
図1は第1実施形態の水平スリット材が施工されたコンクリート造建物を示す断面図、
図2は単体の水平スリット材を示す分解斜視図、
図3は同じく単体の水平スリット材を示す斜視図である。
図1に示すように、コンクリート造建物の外壁の一部は下層階の梁1(主構造体)と非構造壁2とから構成され、梁1と非構造壁2との接合部分には水平スリット3が形成されている。この接合部分に沿うように水平スリット3は非構造壁2の下縁全体に亘って延設され、水平スリット3内に水平スリット材4が配設されている。
【0019】
また、図示はしないが、非構造壁2の両側縁と柱との接合部分にはそれぞれ垂直スリットが形成され、この垂直スリット内には垂直スリット材が配設されている。これらの水平スリット材4及び垂直スリット材により、梁1と非構造壁2との接合部分、及び柱と非構造壁2との接合部分がそれぞれ構造的に分断され、地震による外力が主構造体である梁1や柱に伝達されるのを防止している。
【0020】
以下に説明するように、水平スリット材4は、屋外側に配設される屋外側スリット材5と屋内側に配設される屋内側スリット材6とから構成されており、これらのスリット材5,6を互いに接合することにより水平スリット材4が構成される。そして、[発明が解決しようとする課題]で述べたように、特許文献1の水平スリット構造では、水平スリット材101の製造時にスリット材104,105の位置決め作業が繁雑である。このような問題点を鑑みて、本実施形態の水平スリット構造では以下に述べる対策を実施している。
【0021】
まず、水平スリット構造に用いられる水平スリット材4について詳述する。水平スリット材4を構成する屋外側スリット材5及び屋内側スリット材6はそれぞれ断面矩形状をなす長尺物として製作され、
図2,3ではその長手方向の一部を示している。水平スリット材4には、地震の際の梁1と非構造壁2との相対変位を許容可能な変形追従性、雨水の侵入防止のための水密性、騒音を遮断するための遮音性などが要求される。
このため、これらの諸特性を満足する素材、例えば独立発泡ポリエチレン材などにより屋外側及び屋内側スリット材5,6がそれぞれ製作されている。また、屋内側スリット材6の屋内外方向の中間箇所にはロックウールなどの不燃材6aが設けられ、これにより火災時の延焼を防止するための防火性が水平スリット材4に付与されている。
【0022】
屋外側スリット材5の上面の屋内側角部には、垂直面5b及び水平面5cからなる断面直角状をなす隅部5aが屋外側スリット材5の長手方向全体に亘って凹設されている。屋外側スリット材5の隅部5aには屋内側スリット材6の下面の屋外側角部6bが嵌め込まれ、屋外側角部6bを形成する2面が隅部5aの垂直面5b及び水平面5cに当接して接着剤により接合されている。結果として、屋外側スリット材5に対して屋内側スリット材6が屋内側で一段上側に配置された位置関係で、両スリット材5,6が一体化されている。
【0023】
以上のように構成された水平スリット材4は、以下に手順に従って施工される。
図4は梁1の部分のコンクリートを打設した段階の施工手順を示す図、
図5は水平スリット材4を配置した段階の施工手順を示す図、
図6は非構造壁2の部分のコンクリートを打設した段階の施工手順を示す図である。
まず、
図4に示すように、施工予定の下層階の梁1の上部に沿うように外型枠8に第1の目地棒9を釘などで固定し、第1の目地棒9の上面までコンクリートを打設する。この際には、梁1に沿って所定の間隔でアンカー鉄筋10を埋設しておく。なお、第1の目地棒9の上下方向の厚みh1は、
図3に示す水平スリット材4の寸法h2、即ち、屋外側スリット材5の上下方向の厚みから隅部5aの垂直面5bの上下寸法を差し引いた値に設定されている。コンクリートが硬化した後に第1の目地棒9を取り除く。これにより下層階の梁1の部分が形成され、コンクリートの仕上がり面(施工完了後には水平スリット3の底面となる)は、屋外側の低層面3aと屋内側の高層面3bとからなる段差状に形成される。
【0024】
次いで
図5に示すように、各アンカー鉄筋10により水平スリット材4を上下に貫いた状態で、コンクリートの仕上がり面上に水平スリット材4を配設する。このとき、水平スリット材4の下面に形成されている段差を仕上がり面上の段差に密着させた上で、屋外側スリット材5を低層面3a上に載置すると共に、屋内側スリット材6を高層面3b上に載置する。また、低層面3a上の屋外側スリット材5の屋外側には第2の目地棒11を配設する。なお、第2の目地棒11の上下方向の厚みは、屋外側スリット材5の上下方向の厚みと等しく設定されている。
そして
図6に示すように、内型枠12の設置などを行った後に、2回目のコンクリートの打設を実施する。これにより非構造壁2が形成され、コンクリートの硬化後に外型枠8、内型枠12、第2の目地棒11などを取り除いた上で、第2の目地棒11の箇所にシーリング材13を充填すると、一連の施工作業が完了する。
【0025】
以上の施工作業により梁1と非構造壁2との間に水平スリット3が形成され、その水平スリット3内に水平スリット材4が配設される。
図3に示すように、水平スリット3の底面は、屋外側の低層面3aと屋内側の高層面3bとからなる段差状に形成されている。そして、屋内外方向において、水平スリット材4の屋外側スリット材5の全ての領域及び屋外側スリット材5の隅部5aに接合された屋内側スリット材6の領域が水平スリット3内の低層面3a上に配設される。また、隅部5aに接合されていない屋内側スリット材6の残りの領域が水平スリット3内の高層面3b上に配設される。
【0026】
結果として、屋外側スリット材5の上面と屋内側スリット材6の下面とは、隅部5aの隙間(より詳しくは、隅部5aの箇所において屋外側スリット材5と屋内側スリット材6との間に形成された隙間)を介して相対向することになる。本実施形態では、屋外側スリット材5と屋内側スリット材6とを隅部5aの箇所で接着剤により互いに接合しているため、隅部5aの隙間が接着剤で封止されている。このため、仮にシーリング材13のシール機能が損なわれたとしても、屋外側スリット材5の上面と非構造壁2との隙間を介して屋外から侵入した雨水は隅部5aの箇所で堰き止められ、雨水の屋内への侵入が防止される。
【0027】
しかも、経年劣化などにより隅部5aでの接着剤の封止作用が損なわれることもあり得るが、この場合であっても、本実施形態では隅部5aの断面形状に起因して雨水の通過が抑制される。例えば、
図13に示す特許文献1の技術のように屋外側スリット材104と屋内側スリット材105とを一平面上で当接させた場合には、その隙間が一直線状の経路となるため雨水が通過し易い。これに対して本実施形態のように隅部5aを断面直角状とすれば、その隙間も屈曲した経路となるため雨水が通過し難くなる。よって、本実施形態によれば、屋外からの雨水を隅部5aの箇所で堰き止めることにより、長期間に亘って屋内への雨水の侵入を確実に防止することができる。
【0028】
そして、このような水平スリット材4に本来の機能(地震による外力の遮断、雨水の侵入防止、騒音の遮断、延焼の防止など)を発揮させるには、屋外側スリット材5と屋内側スリット材6とを正規の位置関係を保った状態で施工することが重要となる。そのためには水平スリット材4を製造する際に、屋外側スリット材5と屋内側スリット材6とを正規の位置関係で接合する必要がある。本実施形態では、屋外側スリット材5の隅部5aに屋内側スリット材6の下面の屋外側角部6bを嵌め込むだけで、両スリット材5,6の位置関係が自ずと定まる。よって、治具などを用いた煩雑な製造作業を要することなく、屋外側スリット材5と屋内側スリット材6とを正規の位置関係で容易且つ正確に接合でき、もって本来の水平スリット材4の機能を十分に発揮させることができる。
【0029】
[第2実施形態]
次に、本発明を別の水平スリット材及びこれを用いた水平スリット構造に具体化した第2実施形態を説明する。本実施形態の水平スリット材の基本構成は第1実施形態のものと同様であり、相違点は、複数の部材を接合して屋外側及び屋内側スリット材をそれぞれ構成した点にある。そこで、同一構成の箇所は同一部材番号を付して説明を省略し、相違点を重点的に述べる。
【0030】
図7は第2実施形態の水平スリット材が施工されたコンクリート造建物を示す断面図、
図8は単体の水平スリット材を示す分解斜視図、
図9は同じく単体の水平スリット材を示す斜視図である。
水平スリット材21は屋外側スリット材22及び屋内側スリット材23から構成され、その全体的な形状は第1実施形態のものと同一である。屋外側スリット材22は、断面矩形状をなす主材22aの屋内側の面に、同じく断面矩形状をなす副材22bを接合して構成されている。上下方向において主材22aの長さに比して副材22bの長さは短く設定されると共に、主材22aの下面と副材22bの下面とが面一になっている。
【0031】
結果として主材22aの上面と副材22bの上面との間に段差が生じて、屋外側スリット材22の上面の屋内側角部に断面直角状の隅部22cが形成されている。また、屋内側スリット材23は、断面矩形状をなす主材23aの上下両面に、屋内外方向で同一長さの平板状をなす下側副材23b及び上側副材23cをそれぞれ接合して構成されている。
なお、本実施形態では、屋外側スリット材22の主材22aの断面寸法を35mm×35mm(上下×屋内外)に設定し、副材22bの断面寸法を25mm×10mm(上下×屋内外)に設定し、屋内側スリット材23の下側副材23b及び上側副材23cの板厚を2〜5mmに設定しているが、これに限るものではなく任意に変更可能である。
【0032】
屋外側スリット材22の主材22a及び副材22bと、屋内側スリット材23の下側及び上側副材23b,23cとはそれぞれ独立発泡ポリエチレン材により製作され、屋内側スリット材23の主材23aはフェノバボード(登録商標)により製作されている。周知のようにフェノバボードは、フェノール樹脂により生成された独立気泡中に高断熱性発砲ガスを保持した構造をなし、高い断熱性を有する。このように形成された屋外側スリット材22の隅部22cに屋内側スリット材23の下面の屋外側角部23dが嵌め込まれ、接着剤により接合されることで水平スリット材21が構成されている。
【0033】
水平スリット材21の施工手順については第1実施形態で述べたものと相違ないため、その説明は省略する。施工作業の完了後には、梁1と非構造壁2との間に形成された水平スリット3内に水平スリット材21が配設される。そして、屋内外方向において、水平スリット材21の屋外側スリット材22の全ての領域及び屋外側スリット材22の隅部22cに接合された屋内側スリット材23の領域が水平スリット3内の低層面3a上に配設される。また、隅部22cに接合されていない屋内側スリット材23の残りの領域が水平スリット3内の高層面3b上に配設される。
【0034】
結果として、屋外側スリット材22の上面と屋内側スリット材23の下面とが隅部22cの隙間を介して相対向することから、第1実施形態と同じく、屋外からの雨水が隅部22cの箇所で堰き止められ、長期間に亘って屋内への雨水の侵入を防止することができる。
【0035】
そして、水平スリット材21の製造時においては、屋外側スリット材22の隅部22cに屋内側スリット材23の下面の屋外側角部23dを嵌め込むだけで、両スリット材22,23の位置関係が自ずと定まるため、両スリット材22,23を正規の位置関係で容易且つ正確に接合でき、もって本来の水平スリット材21の機能を十分に発揮させることができる。
【0036】
加えて本実施形態では、屋外側スリット材22を主材22a及び副材22bにより構成し、これらの主材22aと副材22bとの上下方向の寸法差を利用して隅部22cを形成している。従って、主材22a及び副材22bに相当する断面矩形状の素材をそのまま用いて互いに接合するだけで屋外側スリット材22を製作でき、第1実施形態の屋外側スリット材5のように断面矩形状の素材に隅部5aを凹設する加工作業が必要なくなることから、製造コストを低減することができる。
【0037】
[第3実施形態]
次に、本発明を別の水平スリット材及びこれを用いた水平スリット構造に具体化した第3実施形態を説明する。第2実施形態と同じく本実施形態の水平スリット材も、複数の部材を接合して屋外側及び屋内側スリット材をそれぞれ構成しており、同一構成の箇所は同一部材番号を付して説明を省略し、相違点を重点的に述べる。
【0038】
図10は第3実施形態の水平スリット材が施工されたコンクリート造建物を示す断面図、
図11は単体の水平スリット材を示す分解斜視図、
図12は同じく単体の水平スリット材を示す斜視図である。
水平スリット材31は屋外側スリット材32及び屋内側スリット材33から構成され、その全体的な形状は第1及び第2実施形態のものと同一である。屋外側スリット材32は、断面矩形状をなす主材32aの上面に平板状の下側副材32bを接合し、さらに下側副材32bの上面に板状の上側副材32cを接合して構成されている。
【0039】
屋内外方向において下側副材32bの長さは主材32aの長さよりも格段に長く設定され、上側副材32cの長さは主材32aの長さよりも若干短く設定されると共に、これらの主材32a、下側副材32b及び上側副材32cの屋外側の端部は屋内外方向で一致している。このため主材32a上から下側副材32bが屋内側に大きく延設されるのに対し、上側副材32cは全体が主材32a上に位置し、下側副材32bと上側副材32cとの間には断面直角状をなす隅部32dが形成されている。以下、屋内外方向において上側副材32cの屋内側の端部から主材32aの屋内側の端部までを隅部32dの領域と定義する。
【0040】
また、屋内側スリット材33は、断面矩形状をなす主材33aの上面に、屋内外方向で同一長さの平板状をなす副材33bを接合して構成されている。
なお、本実施形態では、屋外側スリット材32の主材32aの断面寸法を25mm×45mm(上下×屋内外)に設定し、下側副材32bの板厚を2〜5mmに設定し、上側副材32cの板厚を5〜8mmに設定し、屋内側スリット材33の副材33bの板厚を2〜5mmに設定しているが、これに限るものではなく任意に変更可能である。
屋外側スリット材32の主材32a、下側副材32b及び上側副材32cと、屋内側スリット材33の副材33bとはそれぞれ独立発泡ポリエチレン材により製作され、屋内側スリット材33の主材33aは高い断熱性を有するフェノバボードにより製作されている。このように形成された屋外側スリット材32の隅部32dに屋内側スリット材33の下面の屋外側角部33cが嵌め込まれ、接着剤により接合されることで水平スリット材31が構成されている。
【0041】
水平スリット材31の施工手順については第1実施形態で述べたものと相違なく、施工作業の完了後には。水平スリット3内に水平スリット材31が配設される。そして、屋内外方向において、水平スリット材31の屋外側スリット材32を構成する主材32a及び上側副材32cの全ての領域、下側副材32bの屋外側の領域(主材32aと重なった領域)、及び屋外側スリット材32の隅部32dに接合された屋内側スリット材33の領域が、水平スリット3内の低層面3a上に配設される。また、屋内側スリット材33の残りの領域及び屋外側スリット材32の下側副材32bの残りの屋内側の領域(主材32aと重ならない領域)が、水平スリット3内の高層面3b上に配設される。
【0042】
結果として、屋外側スリット材32の上面と屋内側スリット材33の下面とが隅部32dの隙間を介して相対向することから、第1実施形態と同じく、屋外からの雨水が隅部32dの箇所で堰き止められ、長期間に亘って屋内への雨水の侵入を防止することができる。
【0043】
そして、水平スリット材31の製造時においては、屋外側スリット材32の隅部32dに屋内側スリット材33の下面の屋外側角部33cを嵌め込むだけで、両スリット材32,33の位置関係が自ずと定まるため、両スリット材32,33を正規の位置関係で容易且つ正確に接合でき、もって本来の水平スリット材31の機能を十分に発揮させることができる。
【0044】
加えて本実施形態では、屋外側スリット材32を主材32a、下側副材32b及び上側副材32cにより構成し、下側副材32bと上側副材32cとの屋内外方向の寸法差を利用して隅部32dを形成している。従って、第2実施形態と同様に、主材32a及び副材32b,32cに相当する断面矩形状の素材をそのまま用いて互いに接合するだけで屋外側スリット材32を簡単に製作でき、製造コストを低減することができる。
【0045】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、非構造壁2と下層階の梁1との接合部分に適用される水平スリット構造に具体化したが、これに限るものではない。例えば、非構造壁2と上層階の梁(主構造体)との接合部分に適用される水平スリット構造に具体化してもよい。
また、上記第2及び第3実施形態では、屋内側スリット材23,33の主材23a,33aをフェノバボードにより製作したが、これに限るものではなく、例えば炭酸カルシウム系発泡板の一種であるロックセルボード(登録商法)を用いてもよい。