【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明における表面に導電層と絶縁層と
の双方が形成されたセラミック基板
の複数枚が積層された
積層セラミック基板の製造
方法は、
複数枚からなるセラミックグリーンシートの各々に、導電パターンが形成される部位を除く表面を絶縁性ペーストでスクリーン印刷する第一の
処理と、前記導電パターンの開始部と終端部とに相当する部位に貫通孔を設ける第二の
処理と、
前記セラミックグリーンシートの導電パターンの開始部に相当する部位に設け
る貫通孔は、該セラミックグリーンシートの上に積層するセラミックグリーンシートの導電パターンの終端部に相当する部位に設け
る貫通孔
と互いに重なり
合う位置に設け、前記セラミックグリーンシートの導電パターンの終端部に相当する部位に設け
る貫通孔は、該セラミックグリーンシートの下に積層するセラミックグリーンシートの導電パターンの開始部に相当する部位に設け
る貫通孔
と互いに重なり
合う位置に設ける第三の
処理とからなるこれら3つの
処理を、
前記複数枚からなるセラミックグリーンシートの各々に第一工程の処理として行ない、
さらに、前記
第一工程の処理がなされた複数枚のセラミックグリーンシートの各々について、セラミックグリーンシートの表面に形成され
た導電パターンが、
該セラミックグリーンシートの上および下に重ね合わせ
られるセラミックグリーンシートの表面に形成され
た双方の導電パターンと、
各々のセラミックグリーンシートに設けられた貫通孔
に形成される導電層を介して互いに
電気的に繋がる
位置に
、前記セラミックグリーンシート同士を
上下に重ね合わせ、
該重ね合わされたセラミックグリーンシートに圧縮荷重を加え
、該セラミックグリーンシート同士を積層する
これらの処理を、第二工程の処理として連続して行ない、
さらに、
前記積層したセラミックグリーンシートを真空含浸装置に配置
し、
この後、該真空含浸装置を真空排気し、前記積層したセラミックグリーンシートの
最上層部
の表面を除いた部位まで導電性ペーストが充填されるように、前記真空含浸装置に前記導電性ペーストを充填
し、
この後、該真空含浸装置を再度真空排気し、この後、該真空含浸装置を大気圧に戻す、ないしは、該真空含浸装置に圧縮空気を供給する
これらの処理を、第三工程の処理として連続して行ない、
さらに、前記積層したセラミックグリーンシートを前記真空含浸装置から取り出し、圧縮荷重を加えて
前記セラミックグリーンシートを構成するセラミック粉体同士が燒結する温度まで昇温する
第四工程の処理を行う、
これによって、
前記積層したセラミックグリーンシートが積層されたセラミック基板になり、前記導電性ペースト
が熱処理され、
前記積層されたセラミック基板の
各々の基板の表面に導電パターンからなる導電層を形成するとともに、前記
積層されたセラミック基板の
各々の基板の貫通孔に導電層を形成し、
前記各々のセラミック基板の表面に形成された導電層が、前記各々のセラミック基板の貫通孔に形成された導電層を介して互いに電気的に導通し、前記絶縁性ペースト
が熱処理され、前記
各々のセラミック基板の表面に
、前記導電パターンを除く
部位に絶縁層を形成し、前記導電層と前記絶縁層と
の双方が表面に形成されたセラミック基板
の複数枚が積層された
積層セラミック基板が製造される
、積層セラミック基板の製造方法である。
【0014】
つまり、本
積層セラミック基板の製造方法に依れば、複数枚のセラミックグリーンシートについて
第一工程の処理と第二工程の処理とを行うと、導電パターンの開始部に設けられた貫通孔が、上に積層されるセラミックグリーンシートの導電パターンの終端部に設けられた貫通孔と重なり、また、導電パターンの終端部に設けられた貫通孔が、下に積層されるセラミックグリーンシートの導電パターンの開始部に設けられた貫通孔に重なるように、セラミックグリーンシート同士を重ね合わせるため、セラミックグリーンシートに形成される導電パターンが、上と下に重ね合わせるセラミックグリーンシートの表面に形成される双方の導電パターンと、貫通孔を介して互いに繋がる。これによって、絶縁性ペーストがスクリーン印刷された表面を除く表面に、導電パターンに該当する空隙が形成され、この空隙は貫通孔を介して、上と下に重ね合わせるセラミックグリーンシートの導電パターンに該当する空隙と繋がる。このため、重ね合わせたセラミックグリーンシートに圧縮荷重を加えて積層し、この積層したセラミックグリーンシートに導電性ペーストを真空含浸すると、導電パターンが形成される全ての空隙に、貫通孔を介して導電性ペーストが浸透し、全ての空隙と
全ての貫通孔とが導電性ペーストで充填される。この結果、セラミックグリーンシートの表面に導電パターンからなる導電層が形成され、同時に、貫通孔に導電層が形成される。従って、セラミックグリーンシートの表面に形成された導電パターンからなる導電層は、貫通孔の導電層を介して、上と下に積層されたセラミックグリーンシートの表面に形成された導電パターンからなる導電層と導通する。いっぽう、導電性ペーストが浸透する空隙がミクロンレベルの厚みと線幅であっても、貫通孔が直径15μmに近い微細孔であっても、真空含浸装置を真空排気の後に大気に開放すると、大気圧に近い差圧が空隙と貫通孔とに作用し、全ての空隙と
全ての貫通孔に導電性ペーストが浸透する。なお、導電性ペーストの粘度が高い場合は、真空含浸装置を真空排気の後に圧縮空気を供給すれば、大気圧以上の差圧が空隙と貫通孔とに作用するため、粘度の高い導電性ペーストが、全ての空隙と全ての貫通孔に浸透する。
なお、一般的に、セラミックグリーンシートの表面に形成される導電層と貫通孔の導電層とが電気的に導通するビアホールを形成するため、貫通孔が設けられるセラミックグリーンシートの表面は、貫通孔の開口径より大きい円周形状の一部からなるパッドが、導電パターンの一部としてセラミックグリーンシートの表面にビアホール用のパッドとして設けられる。
すなわち、
第三工程の処理において、積層したセラミックグリーンシートを真空含浸装置に配置し、この後、真空含浸装置を真空排気する。さらに、積層したセラミックグリーンシートの
最上層部
の表面を除いた部位まで導電性ペーストを充填し、再度、真空含浸装置を真空排気し、導電性ペーストから気化した低沸点の有機化合物を排気する。これによって、導電パターンが形成される全ての空隙と貫通孔とは、真空に近い状態になる。この後、真空含浸装置を大気圧に戻すと、大気圧に近い差圧が空隙と貫通孔とに作用する。この差圧によって、高沸点の有機化合物と金属粉とになった導電性ペーストが最下部の貫通孔から浸透し、全ての空隙と
全ての貫通孔とに浸透する。いっぽう、真空含浸される導電性ペーストの粘度が高い場合は、圧縮空気を真空含浸装置に供給すれば、大気圧より大きい差圧が空隙と貫通孔とに作用し、粘度の高い導電性ペーストが、全ての空隙と
全ての貫通孔とに浸透する。なお、積層したセラミックグリーンシートの最上部のセラミックグリーンシート
の表面に、導電性ペーストが付着して導電パターンが乱されることを回避するため、積層したセラミックグリーンシートの
最上層部
の表面を除いた部位まで導電性ペーストを真空含浸装置に充填した。
いっぽう、セラミックグリーンシートの表面にスクリーン印刷された絶縁性ペーストも真空排気の際に、低沸点の有機化合物が気化し、高沸点の有機化合物と金属酸化物粉とが残る。これによって、導電性ペーストが、積層したセラミックグリーンシートの繋ぎ目からセラミックグリーンシートの間隙に浸透できない。また、積層したセラミックグリーンシートの側面に導電性ペーストが付着するが、セラミックグリーンシートの表面に絶縁性ペーストが残存するため、異なる基板間における絶縁性が絶縁性ペーストで確保される。
この後、
第四工程の処理において、圧縮荷重を加えて積層したセラミックグリーンシートを
、セラミックグリーンシートを構成するセラミック粉体同士が燒結する温度まで昇温する。この際、
最初に、導電性ペーストの高沸点の有機化合物が気化し、この後、セラミックグリーンシートの表面
に形成された全ての空隙と
全ての貫通孔とに充填された金属粉が燒結し、表面
に形成された導電パターンからなる導電層
同士が貫通孔の導電層
を介して導通する。また、
絶縁性ペーストの高沸点の有機化合物が気化し、この後、導電パターン
が形成された以外の表面に、金属酸化物粉の集まりからなる絶縁層が形成され、セラミックグリーンシート同士の絶縁性が確保される。こうして積層されたセラミックグリーンシートの微細な間隙に、導電層
と絶縁層の
双方が形成され、導電層と絶縁層との厚みを同じ厚みにすれば、不要な空隙が形成されず、セラミック基板は脆性破壊されず、導電層は剥離しない。
さらに、昇温して、圧縮荷重を加えた状態でセラミック粉体を焼結する。この際、積層されたセラミック基板の微小な間隙に金属酸化物粉
からなる絶縁層が隙間なく
形成され、金属酸化物粉の集まりは脱落しない。いっぽう、最上部と最下部のセラミック基板に形成された金属酸化物粉の集まりは脱落するが、セラミック基板が絶縁体であるため、金属酸化物粉が脱落してもセラミック基板の絶縁性と導電パターンの導電性とが確保される。また、導電パターンからなる導電層を形成する焼結金属を介して、セラミック基板同士が互いに接合される。最後に、積層したセラミック基板を室温に戻し、加えた圧縮荷重を解除する。
なお、導電性ペースト
が、金属粉の集まりを高沸点の有機化合物のバインダーと粘度を調整する低沸点の有機化合物とに分散させたペーストから
構成され、絶縁性ペースト
が、金属酸化物粉の集まりを高沸点の有機化合物のバインダーと粘度を調整する低沸点の有機化合物とに分散させたペーストから
構成されても、
前記したように真空含浸によって導電パターンからなる導電層と貫通孔の導電層とが同時に形成されるため、従来のペースト材料が使用できる。
以上に説明したように、本
積層セラミック基板の製造方法によれば、真空含浸という極めて簡単な手段で、積層されたセラミック基板の表面の導電パターンからなる導電層と貫通孔の導電層が同時に形成され、導電パターン以外の表面に絶縁層が形成される。これによって、異なるセラミック基板同士の導電層の導通が貫通孔の導電層を介して行われ、つまり、ビアホールが形成され、絶縁層で基板間の絶縁性が確保される。さらに、セラミック基板同士の微細な間隙は、導電層と絶縁層とで充填され、不要な空隙が形成されず、セラミック基板は脆性破壊せず、また、導電層は剥離しない。また、従来のフォトリソグラフィーに比べると、極めて簡単な真空含浸の方法で、ビアホールに導電層が形成できる。また、直径が15μmの微細な貫通孔でもペースト材料が真空充填できる。このため、本
積層セラミック基板の製造方法によって9段落と12段落で説明した第一の課題が解決できる。
また、本積層セラミック基板の製造方法に依れば、極めて簡単な6つの処理を連続して実施することで、表面に導電層と絶縁層とが形成されたセラミック基板が積層された積層セラミック基板が安価な費用で製造できる。
すなわち、第一の処理は、複数枚のセラミックグリーンシートの表面に、導電パターンが形成される部位を除く表面を絶縁性ペーストでスクリーン印刷し、また、導電パターンが形成される開始部と終端部とに相当する部位に貫通孔を設けるだけの処理である。第二の処理は、複数枚のセラミックグリーンシートの導電パターンの終端部に相当する貫通孔が、下に積層される複数枚のセラミックグリーンシートの導電パターンの開始部に相当する貫通孔に重なり、セラミックグリーンシートの導電パターンの開始部に相当する貫通孔が、上に積層されるセラミックグリーンシートの導電パターンの終端部に相当する貫通孔に重なるように、セラミックグリーンシート同士を重ね合わせ、圧縮荷重を加えて積層するだけの処理である。第三の処理は、第二の処理で製造した積層したセラミックグリーンシートを真空含浸装置内に配置するだけである。第四の処理は、真空含浸装置を真空排気し、積層したセラミックグリーンシートの最上層部の表面を除いた部位まで導電性ペーストが充填するように、真空含浸装置に導電性ペーストを充填するだけの処理である。第五の処理は、真空含浸装置を再度真空排気し、この後、真空含浸装置を大気圧に戻す、ないしは、真空含浸装置に圧縮空気を供給するだけの処理である。第六の処理は、積層したセラミックグリーンシートを真空含浸装置から取り出し、圧縮荷重を加えて熱処理するだけの処理である。このように、いずれの処理も極めて簡単な処理であり、セラミック基板間の導通が貫通孔を介して行われる積層されたセラミック基板からなる積層セラミック基板は安価な費用で製造できる。
【0015】
同一形状からなる導電パターンが各々のセラミック基板に形成されたセラミック基板が積層された
積層セラミック基板の複数個が同時に製造される積層セラミック基板の製造
方法は、
前記した
複数枚のセラミックグリーンシートの各々
に実施する前記第一工程の処理が、同一形状からなる
導電パターン
の複数個が形成される部位を除く表面を、絶縁性ペーストでスクリーン印刷する第一の
処理と、前記複数
個の導電パターンの各々の導電パターンの開始部と終端部とに相当する部位に貫通孔を設ける第二の
処理と、
前記セラミックグリーンシートの複数の導電パターンの各々の導電パターンの開始部に相当する部位に設け
る貫通孔が、該セラミックグリーンシートの上に積層するセラミックグリーンシートの
複数の導電パターンの各々の導電パターンの終端部に相当する部位に設け
る貫通孔
と互いに重なり
合う位置に設け、前記セラミックグリーンシートの
複数の導電パターンの各々の導電パターンの終端部に相当する部位に設け
る貫通孔が、該セラミックグリーンシートの下に積層するセラミックグリーンシートの
複数の導電パターンの各々の導電パターンの開始部に相当する部位に設け
る貫通孔
と互いに重なり
合う位置に設ける第三の
処理とからな
る第一工程の処理であり、
該第一工程の処理がなされた複数枚のセラミックグリーンシートの各々について、前記した
第二工程の処理と第三工程の処理とを実施する、この後、積層したセラミックグリーンシートを、同一形状からなる導電パターンが各々のセラミックグリーンシートに形成されたセラミックグリーンシートが積層されたセラミックグリーンシートとして細断し、該細断された積層されたセラミックグリーンシートの集まりについて、前記した第四工程の処理を実施する、
これによって、
同一形状からなる導電パターンが各々のセラミック基板に形成されたセラミック基板が積層された積層セラミック基板の複数個が同時に製造される
積層セラミック基板の製造方法である。
【0016】
本積層セラミック基板の製造方法に依れば、セラミックグリーンシートの
同一形状からなる複数の導電パターンの各々の導電パターンの開始部に相当する部位に設けられた貫通孔が、上に積層されるセラミックグリーンシートの複数の導電パターンの各々の導電パターンの終端部に相当する部位に設けられた貫通孔と重なり、また、前記のセラミックグリーンシートの複数の導電パターンの各々の導電パターンの終端部に設けられた貫通孔が、下に積層されるセラミックグリーンシートの複数の導電パターンの各々の導電パターンの開始部に相当する部位に設けられた貫通孔に重なるため、セラミックグリーンシートに形成された
同一形状からなる複数の導電パターンの各々の導電パターンが、上と下に積層されるセラミックグリーンシートの表面に形成され
た双方の
同一形状からなる複数の導電パターンの各々の導電パターンと、貫通孔を介して互いに繋がる。このため、積層したセラミックグリーンシートに圧縮荷重を加え、この積層したセラミックグリーンシートに導電性ペーストを真空含浸すると、
同一形状からなる複数の導電パターンからなる各々の導電パターが形成される全ての空隙に、貫通孔を介して導電性ペーストが浸透し、全ての空隙と
全ての貫通孔とが導電性ペーストで充填される。このような積層したセラミックグリーンシートを、一つの導電パターンが一枚のセラミックグリーンシートに形成された構成からなる、同一形状の
導電パターンが形成されたセラミックグリーンシートが積層したセラミックグリーンシート
として細断し、細断された積層したセラミックグリーンシートの集まりに圧縮荷重を加えて、
セラミックグリーンシートを構成するセラミック粉体同士が燒結する温度まで昇温すると、13段落
に記載した製造方法で製造される
積層セラミック基が、セラミックグリーンシートの表面に形成
した導電パターンの数からなる
複数の
積層セラミック基板が同時に製造される。
つまり、絶縁性ペーストのスクリーン印刷で形成される導電パターンの幅は、10μm程度まで細線化できるため、1枚のセラミックグリーンシートに形成できる導電パターンの数は莫大な数になり、この導電パターンの数からなる莫大な数の
積層セラミック基板が同時に製造でき、
積層セラミック基板の製造単価は製造できる
積層セラミック基板の数に応じて激減する。例えば、10cm×10cm程度のセラミックグリーンシートに、幅方向に100個の導電パターンを、長さ方向に100個の導電パターンを形成すれば、一万個の
積層セラミック基板が同時に製造できる。また、10cm×100cm程度のセラミックグリーンシートに、幅方向に100個の導電パターンを、長さ方向に10,000個の導電パターンを形成すれば、百万個の
積層セラミック基板が同時に製造できる。
すなわち、絶縁性ペーストのスクリーン印刷によって、10μm程度の細線を残して導電パターンを形成することが可能であ
り、1枚のセラミックグリーンシートに形成される導電パターンの数を莫大な数に増やすことが容易で、導電パターンの数が増えても、安価な絶縁性ペーストの使用量が増えるだけで、スクリーン印刷の費用は殆ど変わらない。また、セラミックグリーンシートを切断する専用の切断機を用いれば、積層したセラミックグリーンシートを、微細な積層したセラミックグリーンシートに細断することは容易である。さらに、セラミックグリーンシートの面積が大きくなっても、ドクターブレード法に基づいて製造するセラミックグリーンシートの製造費用はさほど増大せず、真空含浸の費用も殆ど変わらない。このため、同時に製造する
積層セラミック基板の数が増えるほど、
積層セラミック基板の製造単価が減る。
また、本積層セラミック基板の製造方法に依れば、極めて簡単な7つの処理を連続して実施することで、表面に導電層と絶縁層とが形成されたセラミック基板が積層された積層セラミック基板が、絶縁性ペーストのスクリーン印刷で形成される複数の導電パターンの数に応じて製造できるため、莫大な数の積層セラミック基板が同時に製造でき、積層セラミック基板の製造単価は複数の導電パターンの数に応じて激減する。
すなわち、複数枚のセラミックグリーンシートの各々に、セラミックグリーンシートの表面に形成される同一形状からなる複数の導電パターンの各々の導電パターンが、上および下に重ね合わせるセラミックグリーンシートの表面に形成される双方の同一形状からなる複数の導電パターンの各々の導電パターンと、貫通孔を介して互いに繋がる同一形状からなる複数の導電パターンが形成されるように、セラミックグリーンシートの表面に形成される前記した導電パターンの部位を除く表面を、絶縁性ペーストでスクリーン印刷し、また、前記した複数の導電パターンの各々の導電パターンの開始部と終端部とに相当する部位に貫通孔を設ける第一の処理と、セラミックグリーンシートの表面に形成される複数の導電パターンの各々の導電パターンが、上および下に重ね合わせるセラミックグリーンシートの双方の同一形状からなる複数の導電パターンの各々の導電パターンと、貫通孔を介して互いに繋がるように、セラミックグリーンシート同士を重ね合わせ、圧縮荷重を加えて積層する第二の処理と、積層されたセラミックグリーンシートを真空含浸装置に配置する第三の処理と、真空含浸装置を真空排気し、積層されたセラミックグリーンシートの最上層部の表面を除いた部位まで導電性ペーストが充填されるように、真空含浸装置に導電性ペーストを充填する第四の処理と、真空含浸装置を再度真空排気し、この後、真空含浸装置を大気圧に戻す、ないしは、真空含浸装置に圧縮空気を供給する第五の処理と、積層されたセラミックグリーンシートを真空含浸装置から取り出し、積層されたセラミックグリーンシートを、一つの導電パターンが一枚のセラミックグリーンシートの表面に形成され、同一形状の導電パターンが形成されたセラミックグリーンシートが積層されたセラミックグリーンシートとして細断する第六の処理と、細断された積層されたセラミックグリーンシートの集まりに圧縮荷重を加えて熱処理する第七の処理とからなり、これら7つの処理を連続して実施することで、表面に導電層と絶縁層とが形成された積層セラミック基板の複数個が同時に製造される製造方法である。
以上に説明したように、本積層セラミック基板の製造方法に依れば、積層セラミック基板が大量に製造できるため、積層セラミック基板の製造単価が激減できる。
【0017】
前記した積層セラミック基板の製造方法における導電層を形成する導電性ペーストは、熱分解で金属を析出する第一の有機金属化合物をアルコールに分散した分散液と、熱分解で金属酸化物を析出する第一の性質と、熱分解温度が前記第一の有機金属化合物の熱分解温度と異なる第二の性質とを兼備する第二の有機金属化合物を
、熱分解で析出する金属酸化物の量が、前記第一の有機金属化合物の熱分解で析出する金属の量より少ない量としてアルコールに分散した分散液と、前記2種類の有機金属化合物の双方の熱分解温度より沸点が低い性質を持つ有機化合物とからなり、これら3種類の液状物質を混合して導電性ペーストを作成
し、該導電性ペーストを用いて前記した積層セラミック基板の製造方法における導電層を形成する
ことを特徴とする、
積層セラミック基板の製造方法である。
【0018】
つまり、本
手段に依れば、積層したセラミックグリーンシートに導電性ペーストを真空含浸する際に、導電性ペーストから低沸点のアルコールの気化によってアルコールが脱気され、高沸点の有機化合物と2種類の有機金属化合物の微細な粉体とからなる混合物が、導電パターンが形成される空隙と貫通孔とに浸透する。この際、積層したセラミックグリーンシートの表面の凹部も真空引きされ、この凹部にも混合物が入り込んで、ごく薄い膜状体が、積層したセラミックグリーンシート同士の微細な間隙に形成される。
すなわち、導電性ペーストを真空含浸する際に、2種類の有機金属化合物がアルコールに分子状態で分散された分散液から、沸点が低いアルコールが気化して脱気され、2種類の有機金属化合物の結晶が、微細な粉体として沸点が高い有機化合物中に析出し、懸濁液となる。この懸濁液に大気圧に近い差圧、ないしは、大気圧より大きい圧力差が作用し、これによって、懸濁液は導電パターンが形成される
全ての空隙と
全ての貫通孔とに隙間なく浸透する。
この後、積層したセラミックグリーンシートを真空含浸装置から取り出し、圧縮荷重を加えて
セラミックグリーンシートを構成するセラミック粉体同士が燒結する温度まで昇温する。最初に、高沸点の有機化合物が気化し、セラミックグリーンシートからバインダーが気化する。有機化合物が気化すると体積が縮小するが、セラミックグリーシートには圧縮荷重が加えられているため、セラミックグリーンシート同士の表面の凸部がさらに接近し、表面の凹部と微細な間隙は、より微細な2種類の有機金属化合物の粉体の集まりで充填される。また、貫通孔においても、高沸点の有機化合物が気化して体積が縮小するが、ビアホール用のパッドが形成されるセラミックグリーンシート同士の狭い間隙から、2種類の有機金属化合物の粉体の一部が押し出され、貫通孔と積層したセラミックグリーンシートの微細な間隙とは、2種類の有機金属化合物の粉体の集まりで隙間なく充填される。
さらに温度を上げると、熱分解温度が相対的に低い有機金属化合物の熱分解が始まる。つまり、有機金属化合物を構成する有機酸の沸点を超えると、有機金属化合物は有機酸と金属ないしは金属酸化物に分解する。さらに昇温して有機酸を短時間で気化させると、10―100nmの大きさに入る金属微粒子
の集まりないしは金属酸化物微粒子の集まりが析出する。
さらに温度を上げると、熱分解温度が相対的に高い有機金属化合物の熱分解が始まる。つまり、有機金属化合物を構成する有機酸の沸点を超えると、有機金属化合物は有機酸と金属酸化物ないしは金属に分解する。さらに昇温して有機酸を短時間で気化させると、10―100nmの大きさに入る金属酸化物微粒子
の集まりないしは金属微粒子の集まりが析出する。
つまり、第一の有機金属化合物の熱分解が始まると、有機酸と金属(分子クラスターの状態にある)ないしは金属酸化物(分子クラスターの状態にある)とに分離し、比重が大きい金属ないしは金属酸化物は留まり、比重が小さい有機酸は金属ないしは金属酸化物の上に移動する。さらに温度が上がると、気化熱を奪って有機酸が気化し、第二の有機金属化合物の粉体の集まりを貫通して蒸発する。有機酸の気化が完了すると、金属ないしは金属酸化物は熱エネルギーを得て粒状の微粒子を形成して安定化し熱分解を終える。さらに温度が上がると、第二の有機金属化合物の熱分解が始まり、有機酸と金属酸化物ないしは金属とに分離し、有機酸が気化熱を奪って気化し、有機酸の気化が完了すると、金属酸化物ないしは金属は熱エネルギーを得て粒状の微粒子を形成して安定化し熱分解を終える。このように、2種類の有機金属化合物の熱分解温度が異なるため、金属微粒子と金属酸化物微粒子とは混在せず、分離した状態で析出する。この結果、積層したセラミックグリーンシート表面の凹部とセラミックグリーシート同士の微細な間隙に、微粒子の集まりの2重構造が形成される。なお、有機酸の気化によって体積が縮小するが、セラミックグリーシートには圧縮荷重が加えられているため、セラミックグリーンシートの表面の凸部がさらに接近し、表面の凹部と微細な間隙は、より微細な微粒子の2重構造で充填される。
いっぽう、熱分解で析出する金属微粒子は、不純物を持たない活性状態にあるため、粒状の微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、金属結合した金属微粒子の集まりを形成する。これに対し、金属酸化物の微粒子同士は、金属結合ないしは共有結合しないため、金属酸化物の微粒子同士は結合しない。このため、応力が加わると金属酸化物微粒子が優先して移動する。従って、セラミックグリーンシートには常時圧縮荷重が加えられているため、積層したセラミックグリーンシート表面の凹部と微細な間隙とに空隙が形成されると、この空隙を埋めるように、10―100nmの大きさの金属酸化物微粒子が移動する。この結果、表面の凹部と微細な間隙は、2種類の微粒子からなる2重構造で充填される。
なお、貫通孔とビアホール用のパッドが形成されるセラミックグリーンシートの狭い間隙とは、微細な2種類の有機金属化合物の粉体の集まりで隙間なく充填されていた。この2種類の有機金属化合物が熱分解すると、セラミックグリーンシート同士の狭い間隙と貫通孔にも、微粒子の集まりの2重構造が同時に形成される。この際、析出する金属微粒子が金属酸化物より過多とすれば、貫通孔とセラミックグリーンシートの狭い間隙には、金属結合した金属微粒子の集まりが連続して形成され、貫通孔とビアホール用のパッドとが導通する。
なお、金属酸化物微粒子の集まりは、セラミックグリーンシート表面の凹部と微細な間隙とに発生する微細な空隙を埋める役割を担う。従って、金属酸化物微粒子は空隙を埋めるのに十分な量であればよく、金属微粒子の量に比べれば過小になる。このため、導電性ペーストにおける金属が析出する第一の有機金属化合物の量を、金属酸化物が析出する第二の有機金属化合物の量より過多とする。なお、金属酸化物微粒子の集まりが一定の体積を占有しても、金属微粒子の集まりと金属酸化物微粒子の集まりとは、析出温度が異なるため分離して析出し、両者は混在しない。さらに、金属微粒子の集まりは金属結合して導電層を形成するため、金属酸化物微粒子が析出しても、導電層の形成の障害にならない。
さらに昇温して、一定の時間この高い温度に保持し、セラミック粉体を焼結する。つまり、セラミックグリーンシートを構成するセラミックの粉末粒子間の界面拡散反応が始まる温度に昇温すると、界面拡散が始まり、粉末粒子間の気孔が減少する。さらに、この温度に保持すると、粉末粒子間の気孔が消滅し、結晶粒が成長してセラミックの多結晶体が生成される。この後、室温まで徐冷して、圧縮荷重を解除する。
セラミックの多結晶体が生成される昇温過程において、金属微粒子は熱エネルギーを得て粒子の粗大化を進める。これに対し、金属酸化物は安定な物質であるため、いったん金属酸化物微粒子が析出した後は、金属酸化物微粒子は昇温によって変化しない。金属粒子の粗大化が進むと、金属結合で結合された金属微粒子の集まりに微小な空隙が形成されるが、この際、圧縮応力によって空隙が縮小され、応力を受けた金属酸化物微粒子が移動して縮小した空隙を埋める。さらに昇温すると、金属の拡散現象が起こり、粗大化された金属粒子同士が焼結して導電層を形成する。この際も、金属粒子間の気孔の減少と消滅とによって、空隙が形成されるが、圧縮応力によって空隙が縮小され、応力を受けた金属酸化物微粒子が移動して縮小した空隙を埋める。さらに、セラミック粉体の焼結が進むと、粉末粒子間の気孔の減少と消滅とによって、空隙が形成されるが、この際も圧縮応力によって空隙が縮小され、応力を受けた金属酸化物微粒子が移動して縮小した空隙を埋める。この結果、積層されたセラミック基板同士の間隙と表面の凹部とは、導電層と金属酸化物微粒子の集まりで埋め尽くされる。
いっぽう、貫通孔とビアホール用のパッドが形成されるセラミックグリーンシート同士の狭い間隙とを、連続して金属結合した金属微粒子の集まりが埋めたが、金属粒子の粗大化と焼結とによって体積が縮小するが、金属粒子の焼結によって金属の結晶粒同士が金属結合するため、貫通孔とビアホール用のパッドとの導通は、焼結した金属で保たれる。
なお、金属微粒子が粗大化し、金属の固相拡散で粗大化した金属粒子同士が焼結して導電層を形成するため、導電層の形状は平板状の単純な形状ではなく、析出した際の金属微粒子の集まりの形状が反映され、一部がセラミック多結晶体の凹部に入り込んだ3次元的な複雑な形状になるが、金属粒子同士の焼結によって連続した導電経路を形成する。
いっぽう、金属酸化物微粒子が形成された後においては、空隙が形成されると、圧縮応力によって空隙が縮小され、応力を受けた金属酸化物微粒子が移動して縮小した空隙を埋めるため、導電層は金属酸化物微粒子の集まりで常時囲まれ、これによって、雰囲気ガスの供給が制限されるため、導電層の酸化が進行しない。このため、大気雰囲気での焼成であっても、導電層の酸化は進行しない。また、金属酸化物微粒子が狭い間隙に隙間なく充填されるため、狭い間隙から金属酸化物微粒子が抜け落ちることはない。
以上に説明したように、本
手段に依れば、導電層の形成とセラミック粉体の焼結に際して空隙が形成されるが、圧縮応力が常時加わっているため空隙が縮小され、空隙より微細な金属酸化物微粒子が移動して縮小した空隙を常に埋める。同様に、セラミック基板同士の間隙と表面の凹部に間隙が形成されると、より微細な金属酸化物微粒子が移動して空隙を埋める。このため、導電層がセラミック基板から剥離せず、脆性のセラミック基板にクラックが入ることはない。従って、導電層は焼結時の固相拡散速度が遅いニッケルに制限されず、ニッケルより自己拡散定数が大きいが導電性に優れた銅や銀で構成できる。また貫通孔と積層されたセラミック基板の表面の導電層とを連続して金属結合した焼結金属が形成され、積層されたセラミック基板間の導通が、貫通孔を介して行われる。さらに、導電層が金属酸化物微粒子で囲まれるため、雰囲気ガスの供給が制限され、大気雰囲気での焼成でも導電層の酸化は進行しない。また、金属酸化物は化学的にも安定な物質で、また金属酸化物微粒子が導電層に混在せず、導電層と分離した状態で存在するため、金属酸化物微粒子が導電層の剥離や腐食をもたらさない。
以上に説明したように、本
手段に依れば、貫通孔の導電層とセラミック基板の表面の導電層とを導通させる導電層が同時に形成でき、さらに、全く新たな材料構成からなる画期的な導電性ペーストを用いることで、10段落で説明した4つの課題と12段落で説明した第二の課題が解決できる。
【0019】
前記した積層セラミック基板の製造方法における導電性ペーストを構成する熱分解で金属を析出する第一の有機金属化合物は、カルボン酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンに共有結合する第一の特徴と、前記カルボン酸が飽和脂肪酸で構成される第二の特徴とを兼備するカルボン酸金属化合物であり、該カルボン酸金属化合物を前記第一の有機金属化合物として用いて前記導電性ペーストを作成し、該導電性ペーストを用いて積層セラミック基板の導電層を形成することを特徴とする、積層セラミック基板の製造方法である。
【0020】
つまり、本
手段に依れば、
2つの特徴を兼備するカルボン酸金属化合物は、熱分解で金属を析出する。従って、このようなカルボン酸金属化合物は、17段落と18段落とに記載した導電性ペーストを構成する第一の有機金属化合物になる。
すなわち、カルボン酸金属化合物を構成するイオンの中で、金属イオンが最も大きい。従って、カルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンと共有結合するカルボン酸金属化合物においては、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの距離が、他のイオン同士の距離より長い。こうした分子構造上の特徴を持つカルボン酸金属化合物を大気雰囲気で熱処理すると、カルボン酸の沸点を超えると、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの結合部が最初に分断されて、カルボン酸と金属とに分離する。さらに、カルボン酸が飽和脂肪酸から構成される場合は、炭素原子が水素原子に対して過剰となる不飽和構造を持たないため、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の沸点に応じた290−400℃の温度で全てのカルボン酸が気化して金属が析出する。こうしたカルボン酸金属化合物として、オクチル酸金属化合物、ラウリン酸金属化合物、ステアリン酸金属化合物などの飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物がある。なお、窒素雰囲気での熱分解は、大気雰囲気に比べて40℃程度高温側で熱分解が完了する。
なお、不飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物は、飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物に比べて、炭素原子が水素原子に対して過剰になるため、熱分解によって金属酸化物が析出する。例えばオレイン酸銅は、酸化銅Cu2Oと酸化銅CuOとが同時に析出し、銅に還元するための処理費用を要する。中でも酸化銅Cu2Oは、大気雰囲気より酸素ガスがリッチな雰囲気で一度酸化銅CuOに酸化させた後に、再度、還元雰囲気で銅に還元させる必要があるため、還元処理の費用がかさむ。
さらに、カルボン酸金属化合物は、容易に合成できる安価な工業用薬品である。すなわち、汎用的なカルボン酸を強アルカリと反応させるとカルボン酸アルカリ金属化合物が生成され、この後、カルボン酸アルカリ金属化合物を無機金属化合物と反応させると、様々な金属からなるカルボン酸金属化合物が合成される。また、原料となるカルボン酸は、有機酸の沸点の中で相対的に低い沸点を有する有機酸であり、カルボン酸の沸点に応じた大気雰囲気の290−400℃の温度領域で金属が析出する。
従って、このようなカルボン酸金属化合物を、導電性ペーストの第一の有機金属化合物として用い、この導電性ペーストを積層したセラミックグリーンシートに真空含浸して熱処理すると、大きさが10−100nmの範囲に入る粒状の金属微粒子の集まりが析出して金属結合し、金属微粒子の集まりからなる導電層を形成する。
以上に説明したように、本手段におけるカルボン酸金属化合物は、17段落と18段落とに記載した導電性ペーストを構成する安価な第一の有機金属化合物である。
【0021】
前記したカルボン酸金属化合物が複数種類のカルボン酸金属化合物であり、該複数種類のカルボン酸金属化合物は、同一のカルボン酸で構成され、該同一のカルボン酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、互いに異なる金属イオンに共有結合する複数種類のカルボン酸金属化合物であって、該複数種類のカルボン酸金属化合物を熱分解で金属を析出する前記第一の有機金属化合物として用いて前記導電性ペーストを作成し、該導電性ペーストを用いて積層セラミック基板の導電層を形成することを特徴とする、積層セラミック基板の製造方法である。
【0022】
つまり、本
手段に依れば、
このような特徴を持つ複数種類のカルボン酸金属化合物は、同時に熱分解して複数の金属からなる合金を析出する。従って、こうした複数種類のカルボン酸金属化合物は、金属に近い導電性を持ち、金属より酸化しにくく腐食しにくい合金微粒子の集まりが金属結合して導電層を形成する導電性ペーストの原料になる。
すなわち、同一のカルボン酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、互いに異なる金属イオンに共有結合する複数種類のカルボン酸金属化合物を熱処理すると、カルボン酸の沸点において、複数種類のカルボン酸金属化合物は同時にカルボン酸と複数種類の金属とに分離され、更に昇温すると、カルボン酸の気化が完了した後に、カルボン酸金属化合物のモル濃度に応じて複数種類の金属が析出し、これらの金属はいずれも不純物を持たない活性状態にあるため、析出した複数種類の金属から構成されるとともに、カルボン酸金属化合物のモル濃度に応じた組成割合からなる合金が生成される。
このような性質を持つ複数種類のカルボン酸金属化合物を、導電性ペーストの原料に用いると、20段落で説明した金属微粒子に代わって合金微粒子が析出し、この合金微粒子の集まりが金属結合した導電層が形成される。従って、本手段に依れば、金属に近い導電性を持ち、金属より酸化しにくく腐食しにくい合金によって導電層が形成でき、導電層の性能が著しく向上する。
【0023】
前記した積層セラミック基板の製造方法における導電性ペーストを構成する熱分解で金属酸化物を析出する第二の有機金属化合物は、カルボン酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、金属イオンに配位結合したカルボン酸金属化合物であり、該カルボン酸金属化合物を熱分解で金属酸化物を析出する第二の有機金属化合物として用いて前記導電性ペーストを作成し、該導電性ペーストを用いて積層セラミック基板の導電層を形成することを特徴とする、積層セラミック基板の製造方法である。
【0024】
つまり、本
手段によれば、
このような特徴を持つカルボン酸金属化合物は、熱分解によって金属酸化物を析出する。従って、こうしたカルボン酸金属化合物は、17段落と18段落とに記載した導電性ペーストを構成する第二の有機金属化合物になる。
すなわち、カルボキシル基を構成する酸素イオンが配位子になって、金属イオンに近づいて配位結合するカルボン酸金属化合物は、最も大きいイオンである金属イオンに酸素イオンが近づいて配位結合するため、両者の距離は短くなる。これによって、金属イオンに配位結合する酸素イオンが、金属イオンの反対側で共有結合するイオンとの距離が最も長くなる。こうした分子構造上の特徴を持つカルボン酸金属化合物は、カルボン酸金属化合物を構成するカルボン酸の沸点を超えると、カルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンの反対側で共有結合するイオンとの結合部が最初に分断され、金属イオンと酸素イオンとの化合物である金属酸化物とカルボン酸とに分解する。さらに昇温すると、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の気化が完了した後に金属酸化物が析出する。こうしたカルボン酸金属化合物として、酢酸金属化合物、カプリル酸金属化合物、安息香酸金属化合物、ナフテン酸金属化合物などがある。
カルボン酸金属化合物を、導電性ペーストの第二の有機金属化合物として用い、この導電性ペーストを積層したセラミックグリーンシートに真空含浸して熱処理すると、大きさが10−100nmの範囲に入る粒状の金属酸化物微粒子の集まりが析出する。
さらに、前記したカルボン酸金属化合物は、いずれも容易に合成できる安価な工業用薬品である。すなわち、汎用的なカルボン酸を強アルカリと反応させるとカルボン酸アルカリ金属化合物が生成され、この後、カルボン酸アルカリ金属化合物を無機金属化合物と反応させることで、カルボン酸金属化合物が合成される。また、原料となるカルボン酸は、有機酸の沸点の中で相対的に低い沸点を有する有機酸であるため、大気雰囲気においては400℃程度の熱処理で金属酸化物が析出する。なお、窒素雰囲気での熱分解は、大気雰囲気に比べて40℃程度高温側で熱分解が完了する。
以上に説明したように、本手段におけるカルボン酸金属化合物は、17段落と18段落とに記載した導電性ペーストを構成する安価な第二の有機金属化合物になる。
【0025】
前記した積層セラミック基板の製造方法における導電性ペーストを構成する有機化合物は、カルボン酸ビニルエステル類とメタクリル酸エステル類とからなるいずれかのエステル類、ないしはグリコール類、ないしはグリコールエーテル類からなるいずれかの有機化合物であって、該有機化合物はアルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、アルコールに溶解した溶解液、ないしは、アルコールに混和した混和液は、前記アルコールより高い粘度を有する第二の性質と、前記した導電性ペーストを構成する2種類の有機金属化合物の双方の熱分解温度より沸点が低い第三の性質とからなる、これら3つの性質を兼備する有機化合物であり、該有機化合物を用いて前記導電性ペーストを作成し、該導電性ペーストを用いて積層セラミック基板の導電層を形成することを特徴とする、積層セラミック基板の製造方法である。
【0026】
つまり、
カルボン酸ビニルエステル類とメタクリル酸エステル類からなるいずれかのエステル類、ないしはグリコール類、ないしはグリコールエーテル類からなるいずれかの有機化合物には、第一にアルコールに溶解ないしは混和し、第二にアルコール溶解液ないしはアルコール混和液は前記アルコールより高い粘度を有し、第三に熱処理で金属と金属酸化物を析出する2種類の有機金属化合物の双方の熱分解温度より沸点が低い、これら3つの性質を兼備する有機化合物がある。
従って、2種類の有機金属化合物のアルコール分散液に、前記したいずれかの有機化合物を混合すると、アルコール分散液より高い粘度を有する液状物質となって導電性ペーストが製造できる。この導電性ペーストを積層したセラミックグリーンシートに真空含浸して熱処理する。最初にアルコールが気化し、次いで有機化合物が気化し、さらに昇温すると、2種類の有機金属化合物が熱分解して金属微粒子の集まりと金属酸化物微粒子の集まりを析出し、積層されたセラミックグリーンシート同士の間隙と表面の凹部とが、微粒子の集まりの2重構造で埋め尽くされる。このため、本手段における有機化合物は、17段落と18段落とに記載した導電性ペーストの原料になる。
【0027】
前記した積層セラミック基板の製造方法における絶縁層を形成する絶縁性ペーストは、熱分解で金属酸化物を析出する有機金属化合物をアルコールに分散した分散液と、前記有機金属化合物の熱分解温度より沸点が低い性質を持つ有機化合物とからなり、これら2種類の液状物質を混合して絶縁性ペーストを作成し、該絶縁性ペーストを用いて前記絶縁層を形成することを特徴とする、積層セラミック基板の製造方法である。
【0028】
つまり、本手段に依れば、絶縁性ペーストは金属酸化物粉を含まない低粘度の液状物質である。このため、導電パターンが形成される部位を除くセラミックグリーンシートの表面の大部分に、絶縁性ペーストをスクリーン印刷すると、表面の凹部にも絶縁性ペーストが入り込んで、ごく薄い膜状体がセラミックグリーンシートの表面に形成される。
すなわち、有機金属化合物のアルコール分散液に、有機化合物を溶解ないしは混和させると、有機金属化合物のアルコール分散液より粘度が高まり、セラミックグリーンシートへのスクリーン印刷が可能になる。いっぽう、従来は、有機化合物のビヒクル中に密度が大きい金属酸化物粉を分散した絶縁性ペーストをスクリーン印刷するため、金属酸化物粉末がビヒクルと一体となって印刷されるための粘度が必要になる。さらに、ビヒクルが気化した後に、金属酸化物粉が互いに近接することで絶縁層が形成されるため、ビヒクル中の金属酸化物粉の分散割合が高く、絶縁性ペーストの粘度が高まる。このため、従来の絶縁性ペーストをスクリーン印刷しても、セラミックグリーンシートの表面の凹部に絶縁性ペーストは入り込めない。これに対し、本手段の絶縁性ペーストは、金属酸化物粉を含まない液状物質で構成されるため、従来における絶縁性ペーストより粘度は著しく低く、セラミックグリーンシート表面の微細な凹部にも絶縁性ペーストが入り込む。
次に、絶縁性ペーストが印刷されたセラミックグリーンシートを重ね合わせ、圧縮荷重を加えて積層すると、セラミックグリーンシートの表面の凸部が互いに接近して重なり合う。この際、絶縁性ペーストの薄い膜状体にも荷重が加わり、膜状体はさらに表面の凹部に入り込み、表面の凹凸とグリーンシートの微細な間隙は絶縁性ペーストで充填される。
さらに、積層したセラミックグリーンシートを真空含浸装置に入れて導電性ペーストを真空含浸する。この際、絶縁性ペーストからアルコールが気化して脱気し、高沸点の有機化合物と有機金属化合物とが残る。いっぽうアルコールが気化すると体積が縮小するが、積層したセラミックグリーンシートには圧縮荷重が加えられているため、セラミックグリーンシートの表面の凸部がさらに接近し、表面の凹部とセラミックグリーンシートの微細な間隙に、高沸点の有機化合物と有機金属化合物とが残留する。この残留物が存在することで、真空含浸の際に、アルコールが気化した導電性ペーストは、積層したセラミックグリーンシートの繋ぎ目から、セラミックグリーンシート同士の狭い間隙に浸透できず、スクリーン印刷された絶縁層は乱されない。この結果、積層したセラミックグリーンシート同士の微細な間隙は、18段落で説明した導電層を形成するアルコールが気化した導電性ペーストと、絶縁層を形成するアルコールが気化した絶縁性ペーストとからなる2種類の液状ペーストで充填される。
この後、積層したセラミックグリーンシートを真空含浸装置から取り出し、圧縮荷重を加えて熱処理する。最初に、絶縁性ペーストの薄い膜から高沸点の有機化合物が気化し、セラミックグリーンシートからバインダーが気化する。有機化合物とバインダーとが気化すると、絶縁性ペーストの薄い膜状体の体積が縮小するが、圧縮荷重によってセラミックグリーンシートの表面の凸部が接近し、表面の凹部と微細な間隙に、より微細な有機金属化合物の粉体が残る。この結果、積層したセラミックグリーンシートの微細な間隙は、18段落で説明した導電層を形成する2種類の有機金属化合物の微細粉と、絶縁層を形成する有機金属化合物の微細粉とによって隙間なく充填される。
さらに温度を上げると、有機金属化合物の熱分解が始まる。つまり、有機金属化合物を構成する有機酸の沸点を超えると、有機金属化合物は有機酸と金属酸化物に分解する。さらに昇温して有機酸を短時間で気化させると、10−100nmの大きさに入る金属酸化物微粒子の集まりが析出する。こうして、積層されたセラミックグリーンシートの表面の凹部と微細な間隙には、18段落で説明した導電層を形成する2種類の微粒子の2重構造と、絶縁層を形成する金属酸化物微粒子の集まりで隙間なく充填される。
なお、絶縁層を形成する有機金属化合物は有機酸の沸点で熱分解が始まり、同様に、導電層を形成する2種類の有機金属化合物も、有機酸の沸点で熱分解が始まる。従って、本手段における有機金属化合物が、18段落で説明したいずれか一方の有機金属化合物と同一の有機金属化合物である場合は、導電層の金属酸化物微粒子が析出すると、同時に、同一の金属酸化物微粒子が析出して絶縁層を形成する。
いっぽう、金属酸化物の微粒子同士は互いに金属結合ないしは共有結合しない。このため、金属酸化物微粒子に応力が加わると、金属酸化物微粒子は容易に移動する。従って、積層したセラミックグリーンシートには常時圧縮荷重が加えられているため、セラミックグリーンシート表面の凹部と微細な間隙とに空隙が形成されると、圧縮応力によって空隙が縮小され、縮小された空隙を、より微細な金属酸化物微粒子が移動して埋める。このため、絶縁層を形成する絶縁性ペーストにおける有機金属化合物の量を、導電層を形成する導電性ペーストにおける2種類の有機金属化合物の量と同程度にすれば、積層したセラミックグリーンシートの表面の凹部と微細な間隙は、導電層を形成する2種類の微粒子の2重構造と、絶縁層を形成する金属酸化物微粒子の集まりで隙間なく充填され空隙が発生しない。
さらに昇温して、一定時間この高い温度に保持し、セラミック粉体を焼結する。この後室温まで徐冷し、圧縮荷重を解除する。セラミック粉体の焼結が進むと、粉末粒子間の気孔の減少と消滅とによって空隙が形成されるが、この際、導電層と同様に、圧縮応力によって空隙が縮小され、金属酸化物微粒子が移動して縮小した空隙を埋める。この結果、積層されたセラミック基板の狭い間隙と表面の凹部とは、導電層を形成する2種類の微粒子の2重構造と絶縁層を形成する金属酸化物微粒子の集まりで隙間なく充填される。このため、セラミック基板の厚みが薄くても、セラミック基板は脆性破壊しない。また、金属酸化物微粒子がセラミック基板同士の狭い間隙を隙間なく充填するため、金属酸化物微粒子は狭い間隙から脱落せず、セラミック基板間の絶縁性が確保される。
以上に説明したように、本特徴手段に依れば、有機金属化合物の熱分解後においては、空隙が形成されると、圧縮応力によって空隙が縮小され、より微細な金属酸化物微粒子が移動して縮小した空隙を埋めるため、積層したセラミックグリーンシートの表面の凹部と微細な間隙は、導電層を形成する2種類の微粒子の2重構造と、絶縁層を形成する金属酸化物微粒子の集まりで隙間なく充填される。同様に、セラミック粉体の焼結時に空隙が形成されるが、圧縮応力によって空隙が縮小され、より微細な金属酸化物微粒子が移動して縮小した空隙を埋めるため、セラミック粉体の焼結後も、積層されたセラミック基板の狭い間隙と表面の凹部は、導電層を形成する2種類の微粒子の2重構造と絶縁層を形成する金属酸化物微粒子の集まりで隙間なく充填される。従って、本手段によれば、12段落で説明した第三の課題が解決できる。
【0029】
前記した絶縁性ペーストを構成する有機金属化合物は、カルボン酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、金属イオンに配位結合したカルボン酸金属化合物であり、該カルボン酸金属化合物を前記有機金属化合物として用いて前記絶縁性ペーストを作成し、該絶縁性ペーストを用いて絶縁層を形成することを特徴とする、積層セラミック基板の製造方法。
【0030】
つまり、本手段によれば、このような特徴を持つカルボン酸金属化合物は、26段落で説明したカルボン酸金属化合物と同様に、熱分解によって金属酸化物を析出する。従って、こうしたカルボン酸金属化合物は、27段落と28段落とに記載した絶縁性ペーストの原料になる。
このようなカルボン酸金属化合物を、絶縁層を形成する絶縁性ペーストの原料として用い、導電パターンが形成される部位を除くセラミックグリーンシートの表面に絶縁性ペーストをスクリーン印刷する。このセラミックグリーンシートを重ね合わせ、圧縮荷重を加えて積層し、積層したセラミックグリーンシートに導電性ペーストを真空含浸し、さらに圧縮荷重を加えて熱処理すると、セラミック基板同士の狭い間隙は、微粒子の集まりの2重構造からなる導電層と、金属酸化物微粒子の集まりからなる絶縁層で埋め尽くされる。
絶縁層を形成するカルボン酸金属化合物はカルボン酸の沸点で熱分解が始まり、同様に導電層を形成するカルボン酸金属化合物も、カルボン酸の沸点で熱分解が始まる。このため、本特徴手段におけるカルボン酸金属化合物が、24段落で説明したカルボン酸金属化合物と同一のカルボン酸金属化合物である場合は、24段落で説明した導電性ペーストが熱分解して金属酸化物微粒子を析出すると同時に、本手段における絶縁性ペーストが熱分解して同一の金属酸化物微粒子を析出して絶縁層を形成する。
以上に説明したように、本手段のカルボン酸金属化合物は、27段落と28段落とに記載した絶縁性ペーストの原料になる。
【0031】
前記した絶縁性ペーストを構成する有機化合物は、カルボン酸ビニルエステル類とメタクリル酸エステル類とからなるいずれかのエステル類、ないしはグリコール類、ないしはグリコールエーテル類からなるいずれかの有機化合物であり、該有機化合物は、アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、アルコールに溶解した溶解液、ないしはアルコールに混和した混和液は、前記アルコールより高い粘度を有する第二の性質と、絶縁性ペーストを構成する有機金属化合物の熱分解温度より沸点が低い第三の性質とからなる、これら3つの性質を兼備する有機化合物であり、該有機化合物を用いて前記絶縁性ペーストを作成し、該絶縁性ペーストを用いて絶縁層を形成することを特徴とする、積層セラミック基板の製造方法である。
【0032】
つまり、本手段に依れば、
これら3つの性質を兼備する有機化合物は、17段落と18段落とに記載した導電性ペーストの原料になるとともに、27段落と28段落とに記載した絶縁性ペーストの原料になる。
すなわち、熱分解で金属酸化物を析出する有機金属化合物のアルコール分散液に、本手段におけるいずれかの有機化合物を混合すると、アルコール分散液より高い粘度を有する絶縁性ペーストが製造できる。この絶縁性ペーストを用いて、セラミックグリーンシートの表面の導電パターンが形成される部位を除く表面をスクリーン印刷する。このセラミックグリーンシートを互いに重ね合わせ、圧縮荷重を加えて積層し、積層したセラミックグリーンシートに導電性ペーストを真空含浸し、さらに、圧縮荷重を加えて熱処理する。最初にアルコールが気化し、次いで有機化合物が気化し、さらに昇温すると、有機金属化合物が熱分解する。この結果、セラミックグリーンシート同士の間隙と表面の凹部とが、微粒子の集まりの2重構造からなる導電層と、金属酸化物微粒子の集まりからなる絶縁層とで埋め尽くされる。
以上に説明したように、本特徴手段における有機化合物は、27段落と28段落とに記載した絶縁性ペーストの原料になる。
【0033】
前記した積層セラミック基板の製造方法における第四工程の処理における積層されたセラミックグリーンシートに加える圧縮荷重を、前記した積層セラミック基板の製造方法における第二工程の処理及び第三工程の処理における積層されたセラミックグリーンシートに加える圧縮荷重より大きな圧縮荷重として加え、前記した積層セラミック基板の製造方法に準じてセラミック基板の複数枚が積層された積層セラミック基板を製造することを特徴とする、積層セラミック基板の製造方法である。
【0034】
つまり、本手段に依れば、
導電性ペーストを構成する2種類の有機金属化合物の双方が熱分解される前に加える圧縮荷重に比べ、双方が熱分解された後に加える圧縮荷重の大きさが大きいため、熱分解で生成された金属酸化物微粒子の集まりにより大きな応力が加わり、金属酸化物微粒子が移動しやすくなる。これによって、金属粒子の焼結とセラミック粉体の焼結に際して空隙が形成されるが、より微細な金属酸化物微粒子が容易に移動して空隙を常に埋める。この結果、セラミック基板同士の間隙と表面の凹部とは、導電層と金属酸化物微粒子の集まりで埋め尽くされる。このため、導電層がセラミック基板から剥離せず、脆性のセラミック基板にクラックが入らない。また、セラミックグリーンシートに加えられる圧縮荷重が小さいため、セラミックグリーンシートが圧縮応力で変形しない。
なお、金属微粒子の集まりは、互いに複数の接触点における金属結合で結合され、この結合力より大きな圧力を受けると、金属微粒子の集まりが変形する。いっぽう、金属酸化物微粒子同士は互いに結合していないため、金属酸化物微粒子は応力を受けると容易に移動する。従って、セラミックグリーンシート同士の狭い間隙と表面の凹部に空隙が形成されると、金属酸化物微粒子が優先して移動して空隙を埋める。いっぽう、金属粒子の焼結が始まると、金属粒子の集まりは変形しにくくなるが、金属酸化物微粒子同士は互いに結合せず、金属酸化物微粒子が容易に移動する。また、セラミック粉体の焼結が進むと、微小な間隙が形成されるが、この際にも金属酸化物微粒子同士は互いに結合せず、金属酸化物微粒子が容易に移動する。こうして、金属酸化物微粒子の移動によって、セラミック基板同士の間隙と表面の凹部とは、導電層と金属酸化物微粒子の集まりで埋め尽くされる。
以上に説明したように、本手段に依れば、セラミック基板同士の間隙と表面の凹部とは、導電層と金属酸化物微粒子の集まりで埋められるため、導電層がセラミック基板から剥離せず、脆性のセラミック多結晶体にクラックが入らない。このため、本特徴手段は、10段落で説明した4つの課題と12段落で説明した第二の課題を解決する手段になる。
また、絶縁性ペーストについても、絶縁性ペーストを構成する有機金属化合物が熱分解される前に加える圧縮荷重に比べ、熱分解された後に加える圧縮荷重の大きさが大きいため、熱分解で生成された金属酸化物微粒子の集まりにより大きな応力が加わり、金属酸化物微粒子が移動しやすくなる。これによって、導電層の形成時とセラミック粉体の焼結時に空隙が形成されるが、絶縁層が形成される部位においては、より微細な金属酸化物微粒子が移動して空隙を常に埋める。この結果、セラミック基板同士の狭い間隙と表面の凹部とは、微粒子の集まりの2重構造からなる導電層と、金属酸化物微粒子の集まりからなる絶縁層で埋め尽くされ、空隙が形成されない。このため、脆性のセラミック基板にクラックが入らない。また、セラミックグリーンシートに加わる圧縮荷重が小さいため、セラミックグリーンシートが圧縮応力で変形しない。
以上に説明したように、本特徴手段に依れば、セラミック基板同士の狭い間隙と表面の凹部とは、微粒子の集まりの2重構造からなる導電層と、金属酸化物微粒子の集まりからなる絶縁層で埋め尽くされ、空隙が形成されない。このため、セラミック基板に応力が加わっても、脆性のセラミック基板にクラックが入ることはない。従って、本特徴手段は、12段落で説明した第三の課題を解決する手段になる。
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