特許第6362535号(P6362535)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362535
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】ベローズポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 43/08 20060101AFI20180712BHJP
   F04B 43/10 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   F04B43/08 A
   F04B43/10
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-262753(P2014-262753)
(22)【出願日】2014年12月25日
(65)【公開番号】特開2016-121636(P2016-121636A)
(43)【公開日】2016年7月7日
【審査請求日】2017年7月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 篤
(72)【発明者】
【氏名】永江 慶士
【審査官】 岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−324926(JP,A)
【文献】 特開2000−2187(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/143469(WO,A1)
【文献】 米国特許第5224841(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 43/08
F04B 43/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉された2つの空気室のうち、一方の空気室に加圧空気を供給することでベローズを伸長動作させて移送流体を吸入し、他方の空気室に加圧空気を供給することで前記ベローズを収縮動作させて移送流体を吐出するベローズポンプ装置であって、
前記一方の空気室に供給する加圧空気の空気圧である第1空気圧、及び前記他方の空気室に供給する加圧空気の空気圧である第2空気圧を調整する電空レギュレータと、
前記ベローズの伸長動作時における少なくとも伸長終了時点で、前記第1空気圧が前記第2空気圧よりも低くなるように前記電空レギュレータを制御する制御部と、を備えていることを特徴とするベローズポンプ装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記ベローズの伸長開始時点から伸長終了時点までの間に、前記第1空気圧が連続または不連続に変化するように前記電空レギュレータを制御する請求項1に記載のベローズポンプ装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記伸長開始時点からその伸長動作の所定の途中時点までの伸長前半期間のほうが、前記途中時点から前記伸長終了時点までの伸長後半期間よりも前記第1空気圧が高くなるように前記電空レギュレータを制御する請求項2に記載のベローズポンプ装置。
【請求項4】
前記途中時点は、前記ベローズが慣性力によって伸長終了位置まで伸長することが可能な時点である請求項3に記載のベローズポンプ装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記ベローズの伸長開始時点から伸長終了時点まで前記第1空気圧が一定となるように前記電空レギュレータを制御する請求項1に記載のベローズポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベローズポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造や化学工業等において、薬液や溶剤等の移送流体を送給させるために使用されるベローズポンプとして、例えば、特許文献1に記載されているように、密閉された2つの空気室のうち、一方の空気室に加圧空気を供給することでベローズを伸長動作させて移送流体を吸入し、他方の空気室に加圧空気を供給することでベローズを収縮動作させて移送流体を吐出するように構成されたものが知られている。
【0003】
このようなベローズポンプにおいては、移送流体の吐出流量を増加させるために、各空気室に供給する加圧空気の空気圧を上げることが一般的に行われる。しかし、前記空気圧を上げると、ベローズの伸長動作による移送流体の吸い込みから、ベローズの収縮動作による移送流体の吐出に切り換わったときに、瞬間的に大きな圧力変動(圧力上昇)が生じ、「ウォータハンマ」と呼ばれる衝撃圧力が発生する。この衝撃圧力が発生すると、当該衝撃圧力による振動がポンプ、配管又は機器に伝播し、これらのポンプ等が破損する恐れがある。また、吸込時の負圧が大きくなることで、液体の沸騰(ベーパーやキャビテーション等)が発生し、半導体製造プロセス等に悪影響を及ぼす恐れもある。
【0004】
そこで、従来のベローズポンプでは、例えば、特許文献2に記載されているように、前記衝撃圧力を抑制する対策として、移送流体が吸い込まれるベローズ内の容積を増加させるように弾性変形可能な隔壁がベローズの端部に設けられている。この隔壁は、ベローズ内で圧力上昇が発生したときに弾性変形することで、前記圧力上昇を吸収してポンプ等の振動を低減するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−123959号公報
【特許文献2】特開2010−196541号公報(図3参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の衝撃圧力を抑制する対策では、弾性変形可能な隔壁を有する専用のベローズを製作する必要があるため、既設のベローズポンプに採用することが困難であった。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、作動流体の吸い込みから吐出に切り換わるときに発生する衝撃圧力を、既設のベローズポンプでも容易に抑制することができるベローズポンプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のベローズポンプ装置は、密閉された2つの空気室のうち、一方の空気室に加圧空気を供給することでベローズを伸長動作させて移送流体を吸入し、他方の空気室に加圧空気を供給することで前記ベローズを収縮動作させて移送流体を吐出するベローズポンプ装置であって、前記一方の空気室に供給する加圧空気の空気圧である第1空気圧、及び前記他方の空気室に供給する加圧空気の空気圧である第2空気圧を調整する電空レギュレータと、前記ベローズの伸長動作時における少なくとも伸長終了時点で、前記第1空気圧が前記第2空気圧よりも低くなるように前記電空レギュレータを制御する制御部と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
上記のように構成されたベローズポンプ装置によれば、少なくともベローズの伸長終了時点で、その伸長時に一方の空気室に供給される加圧空気の第1空気圧は、ベローズの収縮時に他方の空気室に供給される加圧空気の第2空気圧よりも低くなるように電空レギュレータにより調整される。これにより、ベローズの伸長動作による移送流体の吸い込みから、ベローズの収縮動作による移送流体の吐出に切り換わったときの圧力変動を抑えることができるため、その切り換わり時に衝撃圧力が発生するのを抑制することができる。また、既設のベローズポンプであっても、電空レギュレータと制御部とを追加することで、作動流体の吸い込みから吐出に切り換わるときに発生する衝撃圧力を容易に抑制することができる。
【0009】
上記ベローズポンプ装置において、前記制御部は、前記ベローズの伸長開始時点から伸長終了時点までの間に、前記第1空気圧が連続または不連続に変化するように前記電空レギュレータを制御するのが好ましい。
この場合、ベローズの伸長開始時点から伸長終了時点までの間において、第1空気圧の圧力変化の自由度を高めることができる。
【0010】
上記ベローズポンプ装置において、前記制御部は、前記伸長開始時点からその伸長動作の所定の途中時点までの伸長前半期間のほうが、前記途中時点から前記伸長終了時点までの伸長後半期間よりも前記第1空気圧が高くなるように前記電空レギュレータを制御するのが好ましい。
この場合、ベローズの伸長開始時点から途中時点までの伸長前半期間の伸長速度を、その途中時点から伸長終了時点までの伸長後半期間の伸長速度よりも速くすることができる。これにより、ベローズの伸長時に第1空気圧が低くなることに起因してベローズの伸長時間が長くなり過ぎるのを抑制することができる。その結果、流体の吐出流量が減少するのを抑制することができる。
【0011】
上記ベローズポンプ装置において、前記途中時点は、前記ベローズが慣性力によって伸長終了位置まで伸長することが可能な時点であるのが好ましい。
この場合、ベローズを、その伸長動作の途中時点から慣性力によって伸長終了位置まで伸長させることができるため、前記途中時点から伸長終了時点までの伸長後半期間において、第1空気圧をベローズの伸長動作に必要な空気圧よりも低くすることができる。これにより、ベローズの伸長動作から収縮動作に切り換わったときの圧力変動をさらに効果的に抑えることができる。
【0012】
上記ベローズポンプ装置において、前記制御部は、前記ベローズの伸長開始時点から伸長終了時点まで前記第1空気圧が一定となるように前記電空レギュレータを制御しても良い。
この場合、第1空気圧を連続または不連続に変化させるように制御する場合に比べて、電空レギュレータの制御が容易となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のベローズポンプ装置によれば、作動流体の吸い込みから吐出に切り換わるときに発生する衝撃圧力を、既設のベローズポンプでも容易に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係るベローズポンプ装置の概略構成図である。
図2】ベローズポンプの断面図である。
図3】ベローズポンプの動作を示す説明図である。
図4】ベローズポンプの動作を示す説明図である。
図5】電空レギュレータの制御例を示すグラフである。
図6】従来のベローズポンプから吐出される移送流体の吐出圧力を示すグラフである。
図7】本発明のベローズポンプから吐出される移送流体の吐出圧力を示すグラフである。
図8】電空レギュレータの他の制御例を示すグラフである。
図9】電空レギュレータのさらに他の制御例を示すグラフである。
図10】本発明の第2実施形態に係るベローズポンプ装置の概略構成図である。
図11】第2実施形態に係るベローズポンプの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
[第1実施形態]
<ベローズポンプの全体構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係るベローズポンプ装置の概略構成図である。本実施形態のベローズポンプ装置は、例えば半導体製造装置において薬液や溶剤等の移送流体を一定量供給するときに用いられる。このベローズポンプ装置は、ベローズポンプ1と、当該ベローズポンプ1に加圧空気(作動流体)を供給するエアコンプレッサ等の空気供給装置2と、前記加圧空気の空気圧を調整する機械式レギュレータ3及び2個の第1及び第2電空レギュレータ51,52と、2個の第1及び第2電磁弁4,5と、制御部6とを備えている。
【0016】
図2は、本実施形態に係るベローズポンプ1の断面図である。
本実施形態のベローズポンプ1は、ポンプヘッド11と、このポンプヘッド11の左右方向(水平方向)の両側に取り付けられる一対のポンプケース12と、各ポンプケース12の内部において、ポンプヘッド11の左右方向の側面に取り付けられる2個の第1及び第2ベローズ13,14と、各ベローズ13,14の内部において、ポンプヘッド11の左右方向の側面に取り付けられる4個のチェックバルブ15,16と、を備えている。
【0017】
<ベローズの構成>
第1及び第2ベローズ13,14は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)等のフッ素樹脂により有底筒形状に形成され、その開放端部に一体形成されたフランジ部13a,14aはポンプヘッド11の側面に気密状に押圧固定されている。第1及び第2ベローズ13,14の各周壁は蛇腹形状に形成され、互いに独立して水平方向に伸縮可能に構成されている。具体的には、第1及び第2ベローズ13,14は、後述する作動板19の外面がポンプケース12の底壁部12aの内方側面に当接する最伸長状態と、後述するピストン体23の内方側面がポンプケース12の底壁部12aの外方側面に当接する最収縮状態との間で伸縮するようになっている。
第1及び第2ベローズ13,14の底部の外面には、ボルト17及びナット18により作動板19が連結部材20の一端部とともに固定されている。
【0018】
<ポンプケースの構成>
ポンプケース12は、有底円筒状に形成されており、その開口周縁部は、対応するベローズ13(14)のフランジ部13a(14a)に気密状に押圧固定されている。これにより、ポンプケース12の内部には、気密状態が保持された吐出側空気室21が形成されている。
ポンプケース12には吸排気ポート22がそれぞれ設けられており、吸排気ポート22は、電磁弁4(5)、電空レギュレータ51(52)及び機械式レギュレータ3を介して空気供給装置2に接続されている(図1参照)。これにより、空気供給装置2から機械式レギュレータ3、電空レギュレータ51(52)及び電磁弁4(5)及び吸排気ポート22を介して吐出側空気室21の内部に加圧空気を供給することで、ベローズ13(14)が収縮するようになっている。
【0019】
また、各ポンプケース12の底壁部12aには、前記連結部材20が水平方向に摺動可能に支持されており、この連結部材20の他端部にはピストン体23がナット24により固定されている。ピストン体23は、前記底壁部12aの外方側面に一体に設けられた円筒状のシリンダ体25の内周面に対して、気密状態を保持しながら水平方向へ摺動可能に支持されている。これにより、前記底壁部12a、シリンダ体25、及びピストン体23とによって囲まれた空間は、気密状態が保持された吸込側空気室26とされている。
【0020】
前記シリンダ体25には吸込側空気室26に連通する吸排気口25aが形成されており、この吸排気口25aは、前記電磁弁4(5)、電空レギュレータ51(52)及び機械式レギュレータ3を介して空気供給装置2に接続されている(図1参照)。これにより、空気供給装置2から機械式レギュレータ3、電空レギュレータ51(52)及び電磁弁4(5)及び吸排気口25aを介して吸込側空気室26の内部に加圧空気を供給することで、ベローズ13(14)が伸長するようになっている。
各ポンプケース12の底壁部12aの下方には、移送流体の吐出側空気室21への漏洩を検知するための漏洩センサ40が取り付けられている。
【0021】
以上の構成により、図2左側の吐出側空気室21が形成されたポンプケース12と、図2左側の吸込側空気室26を形成するピストン体23及びシリンダ体25とにより、第1ベローズ13を最伸長状態と最収縮状態との間で連続して伸縮動作させる第1エアシリンダ部(第1駆動装置)27が構成されている。
また、図2右側の吐出側空気室21が形成されたポンプケース12と、図2右側の吸込側空気室26が形成されたピストン体23及びシリンダ体25とにより、第2ベローズ14を最伸長状態と最収縮状態との間で連続して伸縮動作させる第2エアシリンダ部(第2駆動装置)28が構成されている。
【0022】
<検知手段の構成>
第1エアシリンダ部27のシリンダ体25には、一対の近接センサ29A,29Bが取り付けられ、ピストン体23には各近接センサ29A,29Bにより検知される被検知板30が取り付けられている。被検知板30は、ピストン体23とともに往復動することで、近接センサ29A,29Bに交互に近接することにより検知される。
【0023】
近接センサ29Aは、第1ベローズ13が最収縮状態のときに被検知板30を検知する位置に配置されている。近接センサ29Bは、第1ベローズ13が最伸長状態のときに被検知板30を検知する位置に配置されている。各近接センサ29A,29Bの検知信号は制御部6に送信される。本実施形態では、上記一対の近接センサ29A,29Bにより、第1ベローズ13の伸縮状態を検知する第1検知手段29が構成されている。
【0024】
同様に、第2エアシリンダ部28のシリンダ体25には、一対の近接センサ31A,31Bが取り付けられ、ピストン体23には各近接センサ31A,31Bより検知される被検知板32が取り付けられている。被検知板32は、ピストン体23とともに往復動することで、近接センサ31A,31Bに交互に近接することにより検知される。
【0025】
近接センサ31Aは、第2ベローズ14が最収縮状態のときに被検知板32を検知する位置に配置されている。近接センサ31Bは、第2ベローズ14が最伸長状態のときに被検知板32を検知する位置に配置されている。各近接センサ31A,31Bの検知信号は制御部6に送信される。本実施形態では、一対の近接センサ31A,31Bにより、第2ベローズ14の伸縮状態を検知する第2検知手段31が構成されている。
【0026】
空気供給装置2によって生成された加圧空気は、第1検知手段29の一対の近接センサ29A,29Bが被検知板30を交互に検知することで、第1エアシリンダ部27の吸込側空気室26と吐出側空気室21とに交互に供給される。これにより、第1ベローズ13は連続して伸縮動作する。
【0027】
また、前記加圧空気は、第2検知手段31の一対の近接センサ31A,31Bが被検知板32を交互に検知することで、第2エアシリンダ部28の吸込側空気室26と吐出側空気室21とに交互に供給される。これにより、第2ベローズ14は連続して伸縮動作する。その際、第2ベローズ14の伸長動作は第1ベローズ13の収縮動作時に行われ、第2ベローズ14の収縮動作は主に第1ベローズ13の伸長動作時に行われる。このように、第1ベローズ13及び第2ベローズ14は、交互に伸縮動作を繰り返すことで、各ベローズ13,14の内部への移送流体の吸込と吐出とが交互に行われ、当該移送流体が移送されるようになっている。
【0028】
なお、第1及び第2検知手段29,31は、近接センサによって構成されているが、リミットスイッチ等の他の検知手段により構成されていても良い。また、第1及び第2検知手段29,31は、第1及び第2ベローズ13,14の最伸長状態と最伸縮状態とを検知しているが、伸縮途中の状態を検知するようにしても良い。
【0029】
<ポンプヘッドの構成>
ポンプヘッド11は、PTFEやPFA等のフッ素樹脂から形成されている。ポンプヘッド11の内部には、移送流体の吸込通路34と吐出通路35とが形成されており、この吸込通路34及び吐出通路35は、ポンプヘッド11の外周面において開口し、当該外周面に設けられた吸込ポート及び吐出ポート(いずれも図示省略)に接続されている。吸込ポートは移送流体の貯留タンク等に接続され、吐出ポートは移送流体の移送先に接続される。また、吸込通路34及び吐出通路35は、それぞれポンプヘッド11の左右両側面に向けて分岐するとともに、ポンプヘッド11の左右両側面において開口する吸込口36及び吐出口37を有している。各吸込口36及び各吐出口37は、それぞれチェックバルブ15,16を介してベローズ13,14の内部と連通している。
【0030】
<チェックバルブの構成>
各吸込口36及び各吐出口37には、チェックバルブ15,16が設けられている。
吸込口36に取り付けられたチェックバルブ15(以下、「吸込用チェックバルブ」ともいう)は、バルブケース15aと、このバルブケース15aに収容された弁体15bと、この弁体15bを閉弁方向に付勢する圧縮コイルバネ15cとを有している。バルブケース15aは有底円筒形状に形成されており、その底壁にはベローズ13,14の内部に連通する貫通孔15dが形成されている。弁体15bは、圧縮コイルバネ15cの付勢力により吸込口36を閉鎖(閉弁)し、ベローズ13,14の伸縮に伴う移送流体の流れによる背圧が作用すると吸込口36を開放(開弁)するようになっている。
これにより、吸込用チェックバルブ15は、自身が配置されているベローズ13,14が伸長したときに開弁して、吸込通路34からベローズ13,14内部に向かう方向への移送流体の吸引を許容し、当該ベローズ13,14が収縮したときに閉弁して、ベローズ13,14内部から吸込通路34に向かう方向への移送流体の逆流を阻止する。
【0031】
吐出口37に取り付けられたチェックバルブ16(以下、「吐出用チェックバルブ」ともいう)は、バルブケース16aと、このバルブケース16aに収容された弁体16bと、この弁体16bを閉弁方向に付勢する圧縮コイルバネ16cとを有している。バルブケース16aは有底円筒形状に形成されており、その底壁にはベローズ13,14の内部に連通する貫通孔16dが形成されている。弁体16bは、圧縮コイルバネ16cの付勢力によりバルブケース16aの貫通孔16dを閉鎖(閉弁)し、ベローズ13,14の伸縮に伴う移送流体の流れによる背圧が作用するとバルブケース16aの貫通孔16dを開放(開弁)するようになっている。
【0032】
これにより、吐出用チェックバルブ16は、自身が配置されているベローズ13,14が収縮したときに開弁して、ベローズ13,14内部から吐出通路35に向かう方向への移送流体の流出を許容し、当該ベローズ13,14が伸長したときに閉弁して、吐出通路35からベローズ13,14内部に向かう方向への移送流体の逆流を阻止する。
【0033】
<ベローズポンプの動作>
次に、本実施形態のベローズポンプ1の動作を図3及び図4を参照して説明する。なお、図3及び図4においては第1及び第2ベローズ13,14の構成を簡略化して示している。
図3に示すように、第1ベローズ13が収縮し、第2ベローズ14が伸長した場合、ポンプヘッド11の図中左側に装着された吸込用チェックバルブ15及び吐出用チェックバルブ16の各弁体15b,16bは、第1ベローズ13内の移送流体から圧力を受けて各バルブケース15a,16aの図中右側にそれぞれ移動する。これにより吸込用チェックバルブ15が閉じるともに、吐出用チェックバルブ16が開き、第1ベローズ13内の移送流体が吐出通路35からポンプ外へ排出される。
【0034】
一方、ポンプヘッド11の図中右側に装着された吸込用チェックバルブ15及び吐出用チェックバルブ16の各弁体15b,16bは、第2ベローズ14による吸引作用によって各バルブケース15a,16aの図中右側にそれぞれ移動する。これにより吸込用チェックバルブ15が開くとともに、吐出用チェックバルブ16が閉じ、吸込通路34から第2ベローズ14内に移送流体が吸い込まれる。
【0035】
次に、図4に示すように、第1ベローズ13が伸長し、第2ベローズ14が収縮した場合、ポンプヘッド11の図中右側に装着された吸込用チェックバルブ15及び吐出用チェックバルブ16の各弁体15b,16bは、第2ベローズ14内の移送流体から圧力を受けて各バルブケース15a,16aの図中左側に移動する。これにより吸込用チェックバルブ15が閉じるともに、吐出用チェックバルブ16が開き、第2ベローズ14内の移送流体が吐出通路35からポンプ外へ排出される。
【0036】
一方、ポンプヘッド11の図中左側に装着された吸込用チェックバルブ15及び吐出用チェックバルブ16の各弁体15b,16bは、第1ベローズ13による吸引作用によって各バルブケース15a,16aの図中左側に移動する。これにより吸込用チェックバルブ15が開くとともに、吐出用チェックバルブ16が閉じ、吸込通路34から第1ベローズ13内に移送流体が吸い込まれる。
以上の動作を繰り返し行うことで、左右のベローズ13,14は、交互に移送流体の吸引と排出とを行うことができる。
【0037】
<電磁弁の構成>
図1において、第1電磁弁4は、第1エアシリンダ部27の吐出側空気室21及び吸込側空気室26のうち、一方の空気室への加圧空気の給排、及び他方の空気室内への加圧空気の給排を切り換えるものである。第1電磁弁4は、例えば、一対のソレノイド4a,4bを有する三位置の電磁切換弁からなる。各ソレノイド4a,4bは制御部6から受けた指令信号に基づいて励磁されるようになっている。
【0038】
第2電磁弁5は、第2エアシリンダ部28の吐出側空気室21及び吸込側空気室26のうち、一方の空気室への加圧空気の給排、及び他方の空気室内への加圧空気の給排を切り換えるものである。第2電磁弁5は、例えば一対のソレノイド5a,5bを有する三位置の電磁切換弁からなる。各ソレノイド5a,5bは制御部6から指令信号を受けて励磁されるようになっている。
なお、本実施形態の第1及び第2電磁弁4,5は、三位置の電磁切換弁からなるが、中立位置を有しない二位置の電磁切換弁であっても良い。
【0039】
図1において、第1エアシリンダ部27の吐出側空気室21(吸排気ポート22)と第1電磁弁4との間には、第1急速排気弁61が吐出側空気室21に隣接して配置されている。第1急速排気弁61は、加圧空気を排出する排気口61aを有しており、第1電磁弁4から吐出側空気室21への加圧空気の流れを許容するとともに、吐出側空気室21から流れ出た加圧空気を排気口61aから排出するようになっている。これにより、吐出側空気室21内の加圧空気を、第1電磁弁4を介することなく、第1急速排気弁61から迅速に排出することができる。
【0040】
同様に、第2エアシリンダ部28の吐出側空気室21(吸排気ポート22)と第2電磁弁5との間には、第2急速排気弁62が吐出側空気室21に隣接して配置されている。第2急速排気弁62は、加圧空気を排出する排気口62aを有しており、第2電磁弁5から吐出側空気室21への加圧空気の流れを許容するとともに、吐出側空気室21から流れ出た加圧空気を排気口62aから排出するようになっている。これにより、吐出側空気室21内の加圧空気を、第2電磁弁5を介することなく、第2急速排気弁62から迅速に排出することができる。
【0041】
なお、各エアシリンダ部27,28の吸込側空気室26(吸排気口25a)と、対応する電磁弁4,5との間には急速排気弁は配置されていない。吸込側に急速排気弁を取り付けた場合、吐出側に急速排気弁を取り付けた場合と同様の効果が得られるが、その効果は吐出側ほど大きくない。そのため、本実施形態では、吸込側の急速排気弁はコスト面より設置していない。
【0042】
<制御部の構成>
制御部6は、第1検知手段29及び第2検知手段31(図2参照)の検知結果に基づいて、各電磁弁4,5を切り換えることで、ベローズポンプ1の第1エアシリンダ部27及び第2エアシリンダ部28の各駆動を制御するものである。
【0043】
具体的には、制御部6は、第1検知手段29及び第2検知手段31の検知結果に基づいて、第1ベローズ13が最収縮状態となる手前で第2ベローズ14を最伸長状態から収縮させるとともに、第2ベローズ14が最収縮状態となる手前で第1ベローズ13を最伸長状態から収縮させるように、第1及び第2エアシリンダ部27,28を駆動制御する。
【0044】
これにより、一方のベローズの収縮(吐出)から伸長(吸い込み)への切り換えタイミングにおいて、他方のベローズは既に収縮して移送流体を吐出しているので、前記切り換えタイミングにおいて移送流体の吐出圧力が大きく落ち込むのを低減することができる。その結果、ベローズポンプ1の吐出側の脈動を低減することができる。
【0045】
なお、本実施形態の制御部6は、一方のベローズ13(14)が最収縮状態となる手前で他方のベローズ14(13)を最伸長状態から収縮させているが、一方のベローズ13(14)が最収縮状態となったときに、他方のベローズ14(13)を最伸長状態から収縮させるように制御しても良い。但し、ベローズポンプ1の吐出側の脈動を低減するという観点では、本実施形態のように制御するのが好ましい。
【0046】
<電空レギュレータの構成>
図1及び図2において、第1電空レギュレータ51は、機械式レギュレータ3と第1電磁弁4との間に配置されている。第1電空レギュレータ51は、第1エアシリンダ部27の吸込側空気室26に供給する加圧空気の空気圧である第1空気圧、及び第1エアシリンダ部27の吐出側空気室21に供給する加圧空気の空気圧である第2空気圧を調整する。
【0047】
第2電空レギュレータ52は、機械式レギュレータ3と第2電磁弁5との間に配置されている。第2電空レギュレータ52は、第2エアシリンダ部28の吸込側空気室26に供給する加圧空気の空気圧である第1空気圧、及び第2エアシリンダ部28の吐出側空気室21に供給する加圧空気の空気圧である第2空気圧を調整する。
【0048】
なお、電空レギュレータ51,52は、電磁弁4,5の上流側に配置されているが、電磁弁4,5の下流側に配置されていても良い。但し、この場合には、電空レギュレータ51,52の一次側に、電磁弁4,5を切り換えたときに生じる衝撃圧力が作用するので、電空レギュレータ51,52の故障を防止するという観点では、電磁弁4,5の上流側に電空レギュレータ51,52を配置するのが好ましい。
【0049】
<電空レギュレータの制御例>
図2において、制御部6は、第1及び第2検知手段29,31の検知結果に基づいて、ベローズ13(14)の伸長動作時における少なくとも伸長終了時点で、吸込側空気室26に供給する加圧空気の第1空気圧が吐出側空気室21に供給する加圧空気の第2空気圧よりも低くなるように各電空レギュレータ51,52を制御する。
本実施形態の制御部6は、ベローズ13(14)の伸長開始時点から伸長終了時点までの間、第1空気圧が第2空気圧よりも低い圧力値で一定となるように各電空レギュレータ51,52を制御している。
【0050】
図5は、本実施形態の制御部6による電空レギュレータ51(52)の制御例を示すグラフである。図5において、制御部6は、ベローズ13(14)が移送流体の吐出時に収縮する収縮期間T2の間、第2空気圧が一定の空気圧P2(例えば0.50MPa)となるように電空レギュレータ51(52)を制御する。また、制御部6は、ベローズ13(14)が移送流体の吸い込み時に伸長する伸長期間T1の間、第1空気圧が前記空気圧P2よりも低い一定の空気圧P1(例えば0.15MPa)となるように電空レギュレータ51(52)を制御する。
【0051】
これにより、ベローズ13(14)の収縮開始時点から収縮終了時点(最収縮時点)までの収縮期間T2において、エアシリンダ部27(28)の吐出側空気室21には高い空気圧P2の加圧空気が供給される。また、ベローズ13(14)の伸長開始時点から伸長終了時点(最伸長時点)までの伸長期間T1において、エアシリンダ部27(28)の吸込側空気室26には低い空気圧P1の加圧空気が供給される。
【0052】
エアシリンダ部27(28)の吸込側空気室26に供給される加圧空気が低い空気圧になると、その分だけベローズ13(14)の伸長速度は遅くなる。したがって、前記空気圧P1は、一方のベローズ13(14)の伸長開始時点から、当該伸長開始時点において収縮中の他方のベローズ14(13)の収縮終了時点までの収縮期間内に、前記一方のベローズ13が最伸長状態となるように設定される。
【0053】
なお、本実施形態では、制御部6が制御する第1電空レギュレータ51の第1及び第2空気圧と、第2電空レギュレータの第1及び第2空気圧は、それぞれ同じ値P1,P2に設定されているが、各電空レギュレータによって異なる値に設定されていても良い。
【0054】
図6は、従来のベローズポンプから吐出される移送流体の吐出圧力を示すグラフである。このグラフは、ベローズポンプの吸込側空気室および吐出側空気室にそれぞれ供給する加圧空気の第1空気圧及び第2空気圧をいずれも0.5MPaに設定した場合の吐出圧力を示している。
図6に示すように、従来のベローズポンプにおいて発生する衝撃圧力の最大値は0.593MPaである。
【0055】
図7は、本実施形態のベローズポンプ1から吐出される移送流体の吐出圧力を示すグラフである。このグラフは、ベローズポンプの吐出側空気室に供給する加圧空気の第2空気圧を0.50MPaに設定し、ベローズポンプの吸込側空気室に供給する加圧空気の第1空気圧を0.15MPaに設定した場合の吐出圧力を示している。
図7に示すように、本実施形態のベローズポンプ1において発生する衝撃圧力の最大値は0.159MPaであり、従来のベローズポンプに比べて衝撃圧力が大幅に低減されているのが分かる。
【0056】
<効果について>
以上、本実施形態のベローズポンプ装置によれば、ベローズ13(14)の伸長動作時に吸込側空気室26に供給される加圧空気の第1空気圧は、ベローズ13(14)の収縮動作時に吐出側空気室21に供給される加圧空気の第2空気圧よりも低くなるように電空レギュレータ51(52)が制御される。これにより、ベローズ13(14)の伸長動作による移送流体の吸い込みから、ベローズ13(14)の収縮動作による移送流体の吐出に切り換わるときの圧力変動を抑えることができるため、その切り換わり時に衝撃圧力が発生するのを抑制することができる。したがって、既設のベローズポンプであっても、電空レギュレータ51(52)と制御部6とを追加することで、作動流体の吸い込みから吐出に切り換わるときに発生する衝撃圧力を容易に抑制することができる。
【0057】
また、制御部6は、ベローズ13(14)の伸長開始時点から伸長終了時点まで第1空気圧が一定となるように電空レギュレータ51(52)を制御するので、第1空気圧を連続または不連続に変化させるように制御する場合に比べて、電空レギュレータ51(52)の制御が容易となる。
【0058】
また、一方のベローズ13(14)の伸長動作時に、吸込側空気室26に供給される加圧空気の第1空気圧は、当該伸長動作時に収縮している他方のベローズ14(13)が最収縮するまでに、当該一方のベローズ13(14)が最伸長状態となるように設定されているので、以下の作用効果を奏する。すなわち、一方のベローズ13(14)の伸長速度が低空気圧により遅くなっても、その間に収縮している他方のべローズ14(13)の収縮終了時点までの収縮期間内に一方のベローズ13(14)の伸長動作が終了するため、各ベローズ13,14の収縮動作による移送流体の吐出量が減少することなく、衝撃圧力を抑制することができる。
【0059】
<電空レギュレータの他の制御例>
図8は、制御部6による電空レギュレータ51(52)の他の制御例を示すグラフである。
図8において、制御部6は、ベローズ13(14)の伸長開始時点から伸長終了時点までの間、つまりベローズ13(14)が移送流体の吸い込み時に伸長する伸長期間T1の間において、吸込側空気室26に供給する加圧空気の第1空気圧が不連続に変化するように各電空レギュレータ51,52を制御している。
【0060】
具体的には、制御部6は、ベローズ13(14)の伸長開始時点からその伸長動作の所定の途中時点までの伸長前半期間T11のほうが、前記途中時点から伸長終了時点までの伸長後半期間T12よりも第1空気圧が高くなるように電空レギュレータ51(52)を制御する。
前記途中時点は、ベローズ13(14)が慣性力によって伸長終了位置まで伸長することが可能な時点とするのが好ましい。具体的には、前記途中時点は、伸長後半期間T12が伸長期間T1の30〜50%となるように設定されるのが好ましい。
【0061】
ここでは、前記途中時点は、伸長後半期間T12が伸長期間T1の30%となるように設定されている。そして、制御部6は、伸長前半期間T11における第1空気圧が、吐出側空気室21に供給する加圧空気の第2空気圧と同じ一定の空気圧P2となるように電空レギュレータ51(52)を制御している。また、制御部6は、伸長後半期間T12における第1空気圧が、前記空気圧P2よりも低い一定の空気圧P1となるように電空レギュレータ51(52)を制御している。
【0062】
これにより、ベローズ13(14)の収縮開始時点から収縮終了時点までの収縮期間T2、及びベローズ13(14)の伸長開始時点から途中時点までの伸長前半期間T11において、エアシリンダ部27(28)の吐出側空気室21及び吸込側空気室26には高い空気圧P2の加圧空気が供給される。また、ベローズ13(14)の前記途中時点から伸長終了時点までの伸長後半期間T12において、エアシリンダ部27(28)の吸込側空気室26には低い空気圧P1の加圧空気が供給される。
【0063】
以上、図8に示す他の制御例によれば、制御部6は、ベローズ13(14)の伸長開始時点から伸長終了時点までの間において、吸込側空気室26に供給する加圧空気の第1空気圧が不連続に変化するように電空レギュレータ51(52)を制御するため、その変化するタイミング(ここでは途中時点)を自由に設定することができる。したがって、ベローズ13(14)の伸長開始時点から伸長終了時点までの間において第1空気圧の圧力変化の自由度を高めることができる。
【0064】
また、制御部6は、ベローズ13(14)の伸長前半期間のほうが伸長後半期間よりも第1空気圧が高くなるように電空レギュレータ51(52)を制御するため、ベローズ13(14)の伸長前半期間の伸長速度を伸長後半期間の伸長速度よりも速くすることができる。これにより、ベローズ13(14)の伸長時に第1空気圧が低くなることに起因してベローズの伸長時間が長くなり過ぎるのを抑制することができる。その結果、流体の吐出流量が減少するのを抑制することができる。
【0065】
また、ベローズ13(14)を、その伸長動作の途中時点から慣性力によって伸長終了位置まで伸長させることができるため、前記途中時点から伸長終了時点までの伸長後半期間において、第1空気圧をベローズ13(14)の伸長動作に必要な空気圧よりも低くすることができる。これにより、ベローズ13(14)の伸長動作から収縮動作に切り換わったときの圧力変動をさらに効果的に抑えることができる。
【0066】
図9は、制御部6による電空レギュレータ51(52)のさらに他の制御例を示すグラフである。
図9において、制御部6は、ベローズ13(14)の伸長開始時点から伸長終了時点までの間、つまりベローズ13(14)が移送流体の吸い込み時に伸長する伸長期間T1の間において、吸込側空気室26に供給する加圧空気の第1空気圧が連続して変化するように各電空レギュレータ51,52を制御している。
【0067】
具体的には、制御部6は、まずベローズ13(14)の伸長開始時点において、第1空気圧を吐出側空気室21に供給する加圧空気の第2空気圧と同じ空気圧P2となるように各電空レギュレータ51,52を制御する。そして、制御部6は、例えば図中の実線で示すように、第1空気圧をベローズ13(14)の伸長時間に対して正比例して減少させ、ベローズ13(14)の伸長終了時点で最も低い空気圧P1となるように各電空レギュレータ51,52を制御する。
【0068】
なお、ここでは、第1空気圧を連続して変化させる制御例として、第1空気圧をベローズ13(14)の伸長時間に対して正比例して減少させているが、図中の一点鎖線で示すように第1空気圧を前記伸長時間に対して反比例して減少させたり、図中の二点鎖線や破線で示すように変化させたりしても良い。
また、図8に示す4種類の制御例では、ベローズ13(14)の伸長開始時点における第1空気圧は、いずれも第2空気圧と同じ値(空気圧P2)に設定されているが、第2空気圧と異なる値に設定されていても良い。この場合、ベローズ13(14)の伸長開始時点における第1空気圧を、その伸長終了時点の空気圧P1以下に設定しても良い。
【0069】
以上、図9に示す他の制御例によれば、制御部6は、ベローズ13(14)の伸長開始時点から伸長終了時点までの間において、吸込側空気室26に供給する加圧空気の第1空気圧が連続して変化するように電空レギュレータ51(52)を制御するため、ベローズ13(14)の伸長開始時点から伸長終了時点までの間において第1空気圧の圧力変化の自由度を高めることができる。
【0070】
なお、本実施形態の図5図8および図9に示した制御例において、制御部6は、第2空気圧が一定の空気圧P2となるように電空レギュレータ51(52)を制御する例を説明したが、必ずしも一定の空気圧P2となるように制御しなくても良い。
例えば、制御部6は、ベローズポンプ1から吐出される流体の吐出圧力が落ち込むのを低減することを目的として、ベローズ13(14)が収縮するに従って第2空気圧を上昇させるように制御してもよい。この場合、制御部6は、ベローズ13(14)の伸長動作時における少なくとも伸長終了時点の第1空気圧が、第2空気圧の最大値よりも低くなるように電空レギュレータ51(52)を制御すればよい。
【0071】
[第2実施形態]
図10は、本発明の第2実施形態に係るベローズポンプ装置の変形例を示す概略構成図である。本実施形態のベローズポンプ装置は、ベローズポンプ1と、当該ベローズポンプ1に加圧空気(作動流体)を供給するエアコンプレッサ等の空気供給装置2と、前記加圧空気の空気圧を調整する機械式レギュレータ3及び単一の電空レギュレータ52と、単一の電磁弁5と、制御部6とを備えている。
【0072】
図11は、第2実施形態に係るベローズポンプの断面図である。
本実施形態のベローズポンプ1は、アキュムレータ内蔵型であり、ポンプヘッド11と、このポンプヘッド11の左右方向の一方側(図10の右側)に取り付けられたエアシリンダ部28と、ポンプヘッド11の左右方向の他方側(図10の左側)に取り付けられたアキュムレータ部70とを備えている。
【0073】
ポンプヘッド11の内部には、吸込通路34、吐出通路35及び連絡通路38が形成されている。吸込通路34は、L字形に形成されており、一端がポンプヘッド11の外周面において開口し、当該外周面に設けられた吸込ポート(図示省略)に接続されている。吸込通路34の他端には、ポンプヘッド11のエアシリンダ部28側の側面(図10では右側面)において開口した吸込口36が形成されている。吸込口36は、吸込用チェックバルブ15を介してベローズ14の内部と連通している。
【0074】
吐出通路35は、L字形に形成されており、一端がポンプヘッド11の外周面において開口し、当該外周面に設けられた吐出ポート(図示省略)に接続されている。吐出通路35の他端には、ポンプヘッド11のアキュムレータ部70側の側面(図10では左側面)において開口した吐出口37が形成されている。
【0075】
連絡通路38は、ポンプヘッド11を水平方向に貫通して形成されており、一端がポンプヘッド11のアキュムレータ部70側の側面(図10では左側面)において開口し、他端がポンプヘッド11のエアシリンダ部28側の側面(図10では右側面)において開口している。この他端側の開口は、吐出用チェックバルブ16を介してベローズ14の内部と連通している。
【0076】
アキュムレータ部70は、ポンプヘッド11に取り付けられたアキュムレータケース71と、このアキュムレータケース71の内部においてポンプヘッド11の側面に取り付けられたアキュムレータベローズ72と、圧力自動調整機構73とを有している。
【0077】
アキュムレータベローズ72は、有底筒形状に形成され、その開放端部がポンプヘッド11に固定されている。アキュムレータベローズ72の周壁は蛇腹形状に形成されて水平方向に伸縮可能に構成されている。ポンプヘッド11の側面とアキュムレータベローズ72の内壁によって囲まれた空間が、容積変化可能なアキュムレータ室74とされている。
【0078】
アキュムレータケース71は、有底筒形状に形成され、ポンプヘッド11の側面とアキュムレータベローズ72の外壁とアキュムレータケース71の内壁によって囲まれた空間がアキュムレータ空気室75とされ、このアキュムレータ空気室75には、脈動低減用の空気が封入されている。
【0079】
圧力自動調整機構73は、アキュムレータ空気室75内の空気圧をエアシリンダ部28により吐出される移送流体の吐出圧とこの変動に応じてバランスさせるための自動給気弁機構73aおよび自動排気弁機構73bとで構成されており、アキュムレータケース71の底壁に取り付けられている。
アキュムレータケース71の底壁の下方には、移送流体のアキュムレータ空気室75への漏洩を検知するための漏洩センサ76が取り付けられている。
【0080】
以上の構成により、エアシリンダ部28のベローズ14が収縮した場合、吸入用チェックバルブ15及び吐出用チェックバルブ16の各弁体15b,16bは、ベローズ14内の移送流体から圧力を受けて各バルブケース15a,16aの図中左側にそれぞれ移動する。これにより吸込用チェックバルブ15が閉じるともに、吐出用チェックバルブ16が開き、ベローズ14内の移送流体が連絡通路38よりアキュムレータ室74に流出し、このアキュムレータ室74に一時的に貯留された移送流体は、吐出通路35からポンプ外へ排出される。
【0081】
逆に、エアシリンダ部28のベローズ14が伸長した場合、吸込用チェックバルブ15及び吐出用チェックバルブ16の各弁体15b,16bは、ベローズ14による吸引作用によって各バルブケース15a,16aの図中右側にそれぞれ移動する。これにより吸込用チェックバルブ15が開くとともに、吐出用チェックバルブ16が閉じ、吸込通路34からベローズ14内に移送流体が吸い込まれる。
【0082】
以上の動作を繰り返し行うことで、ベローズ14は、移送流体の吸引と排出とを交互に行うことができる。その際、エアシリンダ部28により吐出される移送流体の吐出圧が、その脈動により吐出圧曲線の山部にある場合、アキュムレータベローズ72は、アキュムレータ室74の容積を拡大するように伸長する。これにより、アキュムレータ室74より流出する移送流体の流量は、当該アキュムレータ室74に流入する流量よりも少なくなる。
【0083】
また、前記吐出圧は、その脈動により吐出圧曲線の谷部にさしかかると、アキュムレータベローズ72の伸長に伴って圧縮されたアキュムレータ空気室75の封入空気圧よりも低くなるので、アキュムレータベローズ72は、アキュムレータ室74の容積を縮小するように収縮する。これにより、アキュムレータ室74より流出する移送流体の流量は、当該アキュムレータ室74に流入する流量よりも多くなる。すなわち脈動が吸収減衰されて略平滑化された吐出圧で液体を移送する。
【0084】
図10及び図11において、制御部6は、第1実施形態と同様に、ベローズ13(14)の伸長開始時点から伸長終了時点までの間、第1空気圧が第2空気圧よりも低い圧力値で一定となるように各電空レギュレータ51,52を制御している。
これにより、ベローズ14の収縮開始時点から収縮終了時点(最収縮時点)までの収縮期間において、エアシリンダ部28の吐出側空気室21には高い空気圧の加圧空気が供給される。また、ベローズ14の伸長開始時点から伸長終了時点(最伸長時点)までの伸長期間において、エアシリンダ部28の吸込側空気室26には低い空気圧の加圧空気が供給される。
なお、第2実施形態において説明を省略した点は、第1実施形態と同様である。
【0085】
以上、本実施形態のベローズポンプ装置においても、ベローズ14の伸長動作時に吸込側空気室26に供給される加圧空気の第1空気圧は、ベローズ14の収縮動作時に吐出側空気室21に供給される加圧空気の第2空気圧よりも低くなるように電空レギュレータ52が制御される。これにより、ベローズ14の伸長動作による移送流体の吸い込みから、ベローズ14の収縮動作による移送流体の吐出に切り換わるときの圧力変動を抑えることができるため、その切り換わり時に衝撃圧力が発生するのを効果的に抑制することができる。したがって、既設のベローズポンプであっても、電空レギュレータ52と制御部6とを追加することで、作動流体の吸い込みから吐出に切り換わるときに発生する衝撃圧力を容易に抑制することができる。
【0086】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において適宜変更できるものである。
例えば、制御部6による電空レギュレータ51(52)の制御は、上記実施形態に示す制御例に限定されるものではなく、少なくともベローズ14(15)の伸長終了時点で第1空気圧が第2空気圧よりも低くなるように制御されていれば良い。
【符号の説明】
【0087】
6 制御部
13 第1ベローズ(ベローズ)
14 第2ベローズ(ベローズ)
21 吐出側空気室(他方の空気室)
26 吸込側空気室(一方の空気室)
51 第1電空レギュレータ(電空レギュレータ)
52 第2電空レギュレータ(電空レギュレータ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11