特許第6362551号(P6362551)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362551
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】エレベータ用ロープの長さ測定器
(51)【国際特許分類】
   B66B 7/12 20060101AFI20180712BHJP
   B66B 5/00 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   B66B7/12 Z
   B66B5/00 D
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-23046(P2015-23046)
(22)【出願日】2015年2月9日
(65)【公開番号】特開2016-145100(P2016-145100A)
(43)【公開日】2016年8月12日
【審査請求日】2017年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田根 康秀
【審査官】 三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−185688(JP,A)
【文献】 特開平06−185922(JP,A)
【文献】 特開平06−241771(JP,A)
【文献】 実開昭56−110303(JP,U)
【文献】 実開昭58−129104(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00−7/12
G01B 5/00−5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路の天井側から下方のエレベータ乗りかご又はカウンタ錘へ向かってワイヤロープに沿って降下し、前記ワイヤロープの長さを測定する測定器であって、
前記ワイヤロープに抱き付き前記ワイヤロープに沿って降下可能な本体と、
前記本体に回転可能に軸支され、前記ワイヤロープに押圧され前記本体の降下量だけ回転する回転子と、
前記回転子の回転数を計測して移動距離を表示する表示器と、
前記本体が乗りかごまたはカウンタ錘まで降下したときの前記表示器の表示値を固定するストッパと、
前記本体を吊り下げ可能に吊り下げるための吊り下げロープと、を備えている、
エレベータ用ロープの長さ測定器。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベータ用ロープの長さ測定器において、
前記回転子を間に挟んで前記ワイヤロープと向かい合うように前記本体に配置され、前記ワイヤロープに対して磁気的引力を作用させて前記回転子を前記ワイヤロープに押圧するマグネットをさらに備えている、エレベータ用ロープの長さ測定器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ乗りかごとカウンタ錘とを吊り下げるワイヤロープの長さを測定する測定器、特に天井側からワイヤロープに沿って降下して長さを測定する測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、エレベータ乗りかごとカウンタ錘とを吊り下げているワイヤロープは経年摩耗によって劣化するため定期的に新しいワイヤロープに交換する必要があり、この新しいワイヤロープの長さを決定するために使用中の旧いワイヤロープの長さを測定する必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、巻尺の測定目盛帯が連結されたリングを昇降路直上の機械室からワイヤロープに沿ってエレベータ乗りかごおよびカウンタ錘に向かって降下させ、この測定目盛帯の目盛を読むことによってワイヤロープの長さを測定する長さ測定器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−240342
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された長さ測定器では、エレベータ乗りかごの天井およびカウンタ錘上端で測定目盛帯の先端をクランプ等の固定具で固定した上で、直上の機械室で測定目盛帯の目盛を読む必要があるため作業に手間がかかるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、乗りかごの天井やカウンタ錘上端に固定する手間を要することなくワイヤロープの長さを簡単に測定することができるエレベータ用ロープの長さ測定器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエレベータ用ロープの長さ測定器は、昇降路の天井側から下方のエレベータ乗りかご又はカウンタ錘へ向かってワイヤロープに沿って降下し、ワイヤロープの長さを測定する測定器であり、ワイヤロープに抱き付きワイヤロープに沿って降下可能な本体と、本体に回転可能に軸支され、ワイヤロープに押圧され本体の降下量だけ回転する回転子と、回転子の回転数を計測して移動距離を表示する表示器と、本体が乗りかごまたはカウンタ錘まで降下したときの表示器の表示値を固定するストッパと、本体を吊り下げ可能に吊り下げるための吊り下げロープと、を備えるものである。
【0008】
本発明に係るエレベータ用ロープの長さ測定器において、回転子を間に挟んでワイヤロープに向かい合うように本体に配置され、ワイヤロープに対して磁気的引力を作用させて回転子をワイヤロープに押圧するマグネットをさらに備えることが好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るエレベータ用ロープの長さ測定器によれば、ワイヤロープに押圧されて回転子が回転し、その回転数が計測されることによって移動距離が表示され、ストッパによって乗りかごまたはカウンタ錘まで本体が降下したときの表示値が固定された状態で本体が引き上げられる。このため、例えば、昇降路の天井側に設けられた機械室から本体を下方の乗りかごまたはカウンタ錘まで降下させて引き上げることによってワイヤロープの長さを測定することができる。この結果、乗りかごの天井やカウンタ錘上端に固定することなくワイヤロープの長さを簡単に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る第1の実施形態であるエレベータ用ロープの長さ測定器が適用されるエレベータの全体構成を示す図である。
図2図1に含まれるエレベータ用ロープの長さ測定器の側面図である。
図3図1に含まれるエレベータ用ロープの長さ測定器の上面側の構成を示す図である。
図4図1に含まれるエレベータ用ロープの長さ測定器をワイヤロープから取り外した状態を図3と同様に示す図である。
図5】本発明に係る第2の実施形態であるエレベータ用ロープの長さ測定器の上面側の構成を示す図である。
図6図5に示すA-A断面におけるエレベータ用ロープの長さ測定器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る実施形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等にあわせて適宜変更することができる。また、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて用いることは当初から想定されている。
【0012】
図1は、本発明に係る第1の実施形態であるエレベータ用ロープの長さ測定器が適用されるエレベータ10の全体構成を示す図である。エレベータ10は、ワイヤロープ11、巻上機12、沿わせ車12a、乗りかご16、カウンタ錘18およびエレベータ用ロープの長さ測定器20を備えている。
【0013】
ワイヤロープ11は、巻上機12および沿わせ車12aに巻き掛けられており、一端が乗りかご16のジョイント16aを経由して乗りかご16の天井部にボルトで固定され、他端がカウンタ錘18のジョイント18aに接続されている。また、乗りかご16とジョイント16aとの間には急停止時の衝撃を緩和するためにスプリング16bが取り付けられている。巻上機12は、昇降路Rの直上に設けられた機械室14に設置されている。巻上機12は、図示しない電動機の回転駆動力によって巻き掛けられたワイヤロープ11を介して乗りかご16およびカウンタ錘18を相対的に昇降させる。カウンタ錘18は、巻上機12が乗りかご16を引き揚げるときの負荷を軽減するための釣り合い重りである。
【0014】
図2は、図1に含まれるエレベータ用ロープの長さ測定器20の側面構成を示す部分拡大図であり、図3は、図1に含まれるエレベータ用ロープの長さ測定器20の上面の構成を示す図である。図4は、エレベータ用ロープの長さ測定器20をワイヤロープ11から取り外した状態を示す図である。
【0015】
エレベータ用ロープの長さ測定器20は、ワイヤロープ11に抱き付きワイヤロープ11に沿って降下可能に形成された本体22と、この本体22を吊り下げるための吊り下げロープ31を備えている。この本体22は、箱状の外形を呈しており、図3に示すように、ワイヤロープ11を嵌め込むための略U字状のガイド溝24が側面に上下方向に沿って形成されている。本体22のガイド溝24に隣接する角部の上下方向における中央部には切り欠き部22aが形成されている。この切り欠き部22aの上側に半円形を成す板状の突出部である回転支持部22cが1つ設けられ、切り欠き部22aの下側に半円形を成す板状の突出部である回転支持部22dが所定の隙間を挟んで2つ設けられている。
【0016】
本体22は、ワイヤロープ11をガイド溝24との間で挟み込む回転子27が軸支された揺動アーム26を有している。この揺動アーム26は、上下方向に長い板状の外形を有し、一側面に長手方向と直交する方向に突出する半円形を成す板状の突出部26a,26bが設けられている。突出部26aは上記回転支持部22cを挟み込むように上端側に2つ設けられ、突出部26bは上記2つの回転支持部22dに挟み込まれるように下端側に1つ設けられている。そして、各回転支持部22c,22dおよび突出部26a,26bに設けられた貫通孔に回転軸26cが挿通されることによって揺動アーム26がガイド溝24の長手方向と直交する方向に回転可能に本体22に支持されている。揺動アーム26は、回転軸26cに挿嵌された2つの弾性バネ28によってガイド溝24の方へ付勢されている。このため、回転子27がワイヤロープ11に押圧され、本体22の降下量だけ回転子27が回転する。本実施形態では、揺動アーム26を介して弾性バネ28の付勢力を回転子27に作用させる例を挙げているが、揺動アーム26を設ける代わりに、本体22に固定支持された片持ちアームを設けてもよい。より具体的には、回転子27における回転軸の一端をガイド溝24の方に移動可能に軸支する長溝を上記片持ちアームに形成し、この長溝の中にガイド溝24の方に回転子27を付勢する弾性バネを内蔵させるようにしてもよい。この場合には、揺動アーム26を介さずに弾性バネの付勢力を回転子27に直接作用させることができる。
また、回転子27は、ワイヤロープ11との接触面積を大きくするために周面が略U字状に形成されている。これにより、ワイヤロープ11との間における摩擦抵抗を大きくして滑り難くすることで空回りし難くしている。なお、回転子27の周面の形状は、略U字状に限定されるものではなく、その他、例えば略V字状に形成してもよいし、さらにワイヤロープ11に付着している油が抜け易くするために周方向に沿って溝を設けてもよい。回転子27には回転板61が同軸に固定され、回転板61の側周に配置された光学パターンを読み取ることで回転板61の回転量、すなわちワイヤロープ11の長さを測定することができる。
【0017】
本体22は、回転子27の回転を検知する回転センサ30と、この回転センサ30からの信号に基づいて回転数を計測するとともに回転数から移動距離を算出して表示する表示器32とをさらに有している。この回転センサ30は、回転板61の両側面に対向する発光器と受光器とを含み揺動アーム26に取り付けられている。表示器32は上記移動距離を表示する表示面32aを有し、この表示面32aが本体22のガイド溝24と反対側の面に露出するように本体22に内蔵されている。表示器32は、本体22を上下方向に貫通するように設けられた円柱状のストッパ32bを有している。このストッパ32bは、本体22の方へ押圧されることによって表示面32aに表示される表示値を固定する機能を有している。
【0018】
また、本体22は、例えば金属材料から構成され、回転子27およびガイド溝24によってワイヤロープ11を挟み込みつつ本体22が降下できる程度の重量を有するように形成されている。なお、本体22が軽量なため降下し難い場合には、別途、本体22に例えば両面テープやボルト等でウェイトを取り付けることによって自重を調整するようにしてもよい。
【0019】
吊り下げロープ31は、本体22の上端部に設けられた係合部22bに連結されている。これにより、本体22を吊り下げながらワイヤロープ11に沿ってゆっくりと降下させるとともに、測定完了後に本体22を引き上げて回収することができる。
【0020】
続いて、エレベータ用ロープの長さ測定器20を用いたワイヤロープ11の長さ測定方法について説明する。
【0021】
図1に示すように、作業者は、エレベータ用ロープの長さ測定器20の本体22に設けられたガイド溝24にワイヤロープ11を嵌め込んだ状態で機械室14の床面のスリット14aから昇降路Rの内部へ吊り下げロープ31で吊り下げつつ本体22を降下させる。エレベータ用ロープの長さ測定器20は、乗りかご16のジョイント16aまで降下するとストッパ32bが押圧されて表示器32の表示値が固定される。そして、作業者が吊り下げロープ31によって本体22を機械室14へと引き上げて上記の表示値を確認することにより、ジョイント16aおよびスリット14aの間のワイヤロープ11の長さを測定することができる。同様にして、機械室14の床面に設けられたスリット14bとカウンタ錘18のジョイント18aとの間のワイヤロープ11の長さについても長さ測定器20によって測定することができる。
【0022】
そして、作業者は、巻上機12を経由して各スリット14a,14bに至るワイヤロープ11の長さと、乗りかご16とジョイント16aとの間のワイヤロープ11の長さとを巻尺等を用いて別途測定し、上記の長さ測定器20によって測定した長さと足し合わせることによってワイヤロープ11の全長を測定することができる。その結果、エレベータ用ロープの長さ測定器20によれば、乗りかご16の天井やカウンタ錘18の上端に測定器を固定するといった手間を要することなくワイヤロープ11の全長を簡単に測定することができる。
【0023】
図5は、本発明に係る第2の実施形態であるエレベータ用ロープの長さ測定器40の上面構成を示す部分拡大図である。図6は、図5に示すA−A断面における長さ測定器40の断面構成を示す図である。
【0024】
以下において上記第1実施形態におけるエレベータ用ロープの長さ測定器20と構成が共通する部分については適宜説明を省略するとともに、構成が異なる部分についてのみ説明するものとする。
【0025】
エレベータ用ロープの長さ測定器40は、本体42、および、吊り下げロープ31を備えている。本体42は回転子43を有し、この回転子43は略U字状に形成されたガイド溝44に軸支されている。より詳しくは、回転子43の回転軸43aは、ガイド溝44の対向する両側面にそれぞれ形成されたスライド溝44aにワイヤロープ11と接近または離間する方向に揺動可能に係合されるとともに、本体42に一端を固定支持された略L字状の板ばね45によってワイヤロープ11の方へ付勢されている。
【0026】
本体42は、略C字形状を呈する上マグネット48および下マグネット50が回転子43を間に挟んで対向するようにガイド溝44の上下両端部にそれぞれ設けられている。各マグネット48,50の開口端は、ワイヤロープ11に向き合うようにそれぞれ近接配置されている。本体42は、各マグネット48,50の磁気的引力によってワイヤロープ11に引き寄せられ、回転子43が板ばね45によって付勢されつつワイヤロープ11に押圧されて密着している。一方、各マグネット48,50は、上記回転子43がワイヤロープ11に当接することによってワイヤロープ11に吸着しない位置に保持されている。また、本体42および回転子43は、例えば、アルミニウムやステンレス等の非磁性金属材料や樹脂材料によって形成すればよい。これにより、本体42や回転子43がワイヤロープ11に磁気的引力によって吸着してしまうことが防止され、本体42をスムーズに降下させることができる。
【0027】
本体42は、上記回転子43を軸支するガイド溝44の先端部52がワイヤロープ11の方へ張り出してワイヤロープ11の周囲を取り囲むように形成されている。
【0028】
エレベータ用ロープの長さ測定器40は、ガイド溝44の底面部に上記表示器32と同様の機能を有する表示器46をさらに有している。この表示器46は、回転子43の回転を検出するセンサ54と電気的に接続されている。センサ54は、回転子43の回転軸43aの一端に取り付けられ、回転子43の揺動に伴ってスライド溝62の内部を移動可能に設けられている。また、表示器46は、回転子43に対向する側面に円柱状のストッパ56が取り付けられ、このストッパ56が下マグネット50の方へ延出するように形成されている。このストッパ56は、上記のストッパ32bと同様の機能を有し、本体42が降下したときに乗りかご16のジョイント16aまたはカウンタ錘18のジョイント18aに押圧されることによって表示器46に表示されている表示値を固定する機能を有している。
【0029】
上記エレベータ用ロープの長さ測定器40によれば、各マグネット48、50の磁気的引力によってワイヤロープ11に本体42を吸着させつつ降下させて上記長さ測定器20と同様にワイヤロープ11の長さを測定することができる。
【0030】
なお、本発明に係るエレベータ用ロープの長さ測定器は、上述した実施形態およびその変形例の構成に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項およびその均等の範囲内で種々の改良や変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0031】
10 エレベータ、11 ワイヤロープ、14 機械室、20,40 エレベータ用ロープの長さ測定器、22,42 本体、27,43 回転子、31 吊り下げロープ、32,46 表示器、32b,56 ストッパ、48 上マグネット、50 下マグネット、R 昇降路。


図1
図2
図3
図4
図5
図6