特許第6362557号(P6362557)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362557
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】移動基地局及び位置登録方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 64/00 20090101AFI20180712BHJP
   H04W 60/04 20090101ALI20180712BHJP
   H04W 4/029 20180101ALI20180712BHJP
   H04W 84/00 20090101ALI20180712BHJP
   G01S 5/02 20100101ALI20180712BHJP
【FI】
   H04W64/00 160
   H04W60/04
   H04W4/029
   H04W84/00 110
   G01S5/02 Z
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-39777(P2015-39777)
(22)【出願日】2015年3月2日
(65)【公開番号】特開2016-163165(P2016-163165A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(74)【代理人】
【識別番号】100145698
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 俊介
(72)【発明者】
【氏名】野一色 裕人
【審査官】 新井 寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−058055(JP,A)
【文献】 特開2003−299133(JP,A)
【文献】 特開2014−241563(JP,A)
【文献】 特開2002−171553(JP,A)
【文献】 特表2012−524901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 − 7/26
H04W 4/00 − 99/00
G01S 5/02
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信装置が無線通信可能な無線エリアを形成する移動基地局であって、
前記無線エリア内の通信装置に対して、当該無線エリアを識別する識別情報を報知する報知部と、
前記識別情報とは異なる識別情報を保持している通信装置から、位置登録要求を受信する受信部と、
受信した前記位置登録要求に基づいて、前記通信装置の位置情報を登録する登録部と、
前記報知部が報知する前記識別情報を、自身の位置の変化に応じて変更する変更部と、
自身の位置の変化量に対する閾値を設定する設定部と、を備え、
前記変更部は、前記変化量が前記閾値を超えると、前記報知部が報知する前記識別情報を変更する、移動基地局。
【請求項2】
前記変更部が変更する識別情報の候補である候補識別情報を複数記憶する記憶部と、
前記位置登録要求を受信すると、当該位置登録要求を行った通信装置に対して、前記報知部が報知した前記識別情報に加え、複数の前記候補識別情報のうちの少なくとも一の候補識別情報を送信する送信部と、
を備える請求項1に記載の移動基地局。
【請求項3】
前記送信部は、前記位置登録要求を行った複数の通信装置の夫々に対して異なる候補識別情報を送信する、
請求項に記載の移動基地局。
【請求項4】
通信装置の位置を登録する位置登録方法であって、
無線エリアを形成する基地局から、当該無線エリア内の通信装置に対して、当該無線エリアを識別する識別情報を報知するステップと、
報知された前記識別情報とは異なる識別情報を保持している通信装置から、前記基地局に対して位置登録要求を送信するステップと、
前記位置登録要求に基づいて、前記通信装置の位置情報を登録するステップと、
前記基地局を移動するステップと、
前記基地局の位置の変化に応じて、当該基地局が報知する識別情報を変更するステップと、
自身の位置の変化量に対する閾値を設定するステップと、
を含み、
前記識別情報を変更するステップでは、前記変化量が前記閾値を超えると、報知する前記識別情報を変更する、
位置登録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置の位置を把握することで、ユーザの位置を確認する移動基地局及び位置登録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
災害、海難、山岳事故等の被災者(遭難者)の人命救助には、効果的な時間が限られていることから、災害等が発生してからできる限り早急に被災者の位置を把握することが望まれる。被災者の位置を把握するための方法として、GPS(Global Positioning System)が着目されており、「人命救助等におけるGPS位置情報の取扱いに関するとりまとめ(総務省 報道資料)」等のように広く検討が行われている。
【0003】
また、特許文献1には、GPSを用いてユーザの位置を確認する方法、具体的には、常時又は間欠的にGPS信号を送信し続ける通信装置を装着した状態でレジャーを行うことで、遭難したユーザの位置を早急に確認可能にする方法が開示されている。また、特許文献1の方法では、通信装置にユーザの個人情報を予め登録しておくことで、遭難したユーザを一意に特定可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−325634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
GPS機能は多くの通信装置が具備しており、また、GPSの測位精度も数メートル〜数十メートルと高いため、被災者の位置を確認するための方法として有用である。しかしながら、GPSでは、衛星からの信号を元に測位を行うため、衛星への見通しが必要であるとともに、即位した位置情報をサーバ等に送信するためには、専用のアプリケーションが必要である等の様々な制約が存在する。
また、災害や遭難等が発生することを予測することは困難であるため、特許文献1のように、GPS信号を自動的に送信する特殊な通信装置や、個人情報の事前の登録を要求する方法は、適用場面が著しく限定される。
【0006】
一方、UMTS(Universal Mobile Telecommunications System)、UTRAN(UMTS Terrestrial Radio Access Network)及びeUTRAN(evolved UTRAN)等の広域無線システムでは、当該広域無線システムを利用する携帯電話やスマートフォン等の通信装置の位置をルーティングエリア(RA: Routing Area)やトラッキングエリア(TA: Tracking Area)等という単位で管理している。なお、以後の説明ではトラッキングエリアを例として用いるがそれに限定されるものではない。
【0007】
この広域無線システムにおける通信装置の位置登録は、着信時の呼び出し(ページング)等のために行うものであり、専用のアプリケーションやユーザの操作等を必要とすることなく、通信装置が広域無線システムのために基本的に備える機能により自動的に行われる。そのため、被災地等において被災者が通信装置を操作できない状況にあったとしても、当該通信装置の位置情報を自動的に確認することができる。
一方、トラッキングエリアは、一又は複数の基地局(eNodeB)によりカバーされるため、数百メートル〜数キロメートルといった広範囲のエリアであり、被災者の位置を把握するためには精度が不十分という問題がある。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、通信装置に特別な改修を加えることなく、精度良く通信装置の位置を把握可能な移動基地局及び位置登録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様においては、通信装置が無線通信可能な無線エリアを形成する移動基地局であって、前記無線エリア内の通信装置に対して、当該無線エリアを識別する識別情報を報知する報知部と、前記識別情報とは異なる識別情報を保持している通信装置から、位置登録要求を受信する受信部と、受信した前記位置登録要求に基づいて、前記通信装置の位置情報を登録する登録部と、前記報知部が報知する前記識別情報を、自身の位置の変化に応じて変更する変更部と、を備える移動基地局を提供する。
【0010】
また、自身の位置の変化量に対する閾値を設定する設定部を更に備え、前記変更部は、前記変化量が前記閾値を超えると、前記報知部が報知する前記識別情報を変更することとしてもよい。
【0011】
また、前記変更部が変更する識別情報の候補である候補識別情報を複数記憶する記憶部と、前記位置登録要求を受信すると、当該位置登録要求を行った通信装置に対して、前記報知部が報知した前記識別情報に加え、前記複数の候補識別情報のうちの少なくとも一の候補識別情報を送信する送信部とを更に備えることとしてもよい。
【0012】
また、前記送信部は、前記位置登録要求を行った複数の通信装置の夫々に対して異なる候補識別情報を送信することとしてもよい。
【0013】
本発明の第2の態様においては、通信装置の位置を登録する位置登録方法であって、無線エリアを形成する前記基地局から、当該無線エリア内の通信装置に対して、当該無線エリアを識別する識別情報を報知するステップと、報知された前記識別情報とは異なる識別情報を保持している通信装置から、前記基地局に対して位置登録要求を送信するステップと、前記位置登録要求に基づいて、前記通信装置の位置情報を登録するステップと、前記基地局を移動するステップと、前記基地局の位置の変化に応じて、当該基地局が報知する識別情報を変更するステップと、を含む位置登録方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、通信装置に特別な改修を加えることなく、精度良く通信装置の位置を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】移動基地局の概要を示す図である。
図2】移動基地局の機能構成を示すブロック図である。
図3】記憶部に記憶されるエリア識別子リスト及び位置登録リストの一例を示す図である。
図4】追加機能の動作例を示す図である。
図5】送信部が送信するエリア識別子のリストの一例を示す図である。
図6】移動基地局及び通信装置の動作の流れを示す動作フローである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[移動基地局1の概要]
初めに、図1を参照して、本発明の移動基地局1の概要について説明する。移動基地局1は、所定の移動手段により移動可能な基地局であり、図1(A)に示すように、携帯電話やスマートフォン等の通信装置100が無線通信可能な無線エリアを形成する。なお、所定の移動手段としては、陸上移動、水上移動及び空中移動等の任意の手段を用いることができ、本実施形態では、一例として、気球やヘリコプター等による空中移動を想定している。
移動基地局1は、エリア特定機能2、追加機能3及び測位機能4を備える。
【0017】
エリア特定機能2は、通信装置100が在圏する無線エリアを特定するための機能であり、eUTRAN等の広域無線システムにおいて位置登録機能等として既に実装されている機能である。
具体的には、eUTRANを用いたセルラー通信では、通信装置100から所定のタイミングで送信されるTAU(Tracking Area Update)やAttach Request、Service Requestと呼ばれる制御信号に基づいて、当該通信装置100が在圏する無線エリアを把握している。
【0018】
ここで、通信装置100がTAUを送信するタイミングは、前回送信時から一定の時間が経過した場合、接続先の基地局(eNodeB)が変わった場合、通信装置100の電源がONになった場合等であるが、本実施形態では、2点目の接続先の基地局が変わった場合に着目している。
【0019】
広域無線システムにおいて、基地局には、自身が管理する無線エリアの識別子であるTAC(Tracking Area Code)が設定されており、その情報を通信装置100に対して報知している。通信装置100は、直前に自身が在圏していたTAを含むTAリストを保持しており、基地局から報知されたTAと保持しているTAリストとを比較し、報知されたTAがTAリストに含まれていない場合に、接続先の基地局が変わったと判定してTAUを送信する。
広域無線システムでは、このTAUを受けると、通信装置100が当該時点で在圏しているTAを含むTAリストをTAUA(Tracking Area Update Accept)に格納して、通信装置100に対して返信する。通信装置100では、TAUAを受信すると、自身が保持するTAリストを更新することで、広域無線システムにおいて通信装置100が在圏する無線エリアが把握される。
【0020】
エリア特定機能2では、通信装置100から送信されたTAUに基づいて、通信装置100の位置登録処理、即ち、通信装置100が在圏する無線エリアを特定する。
なお、eUTRANにおいて、通信装置100の位置登録処理は、基地局ではなく、基地局に接続されたコアネットワークであるEPC(Evolved Packet Core)のMME(Mobility Management Entity)において行われる。この点、本発明の移動基地局1は、基地局に加えサーバを備えることでエリア特定機能2を発揮することとしてもよく、また、バックボーンインフラとしてのMMEと協働することでエリア特定機能2を発揮することとしてもよい。本実施形態では、説明を簡易にするため、移動基地局1は、基地局とサーバとにより構成されるものとする。
【0021】
測位機能4は、自身(移動基地局1)の位置を測定する機能である。なお、移動基地局1の位置を測定する方法は任意であり、例えば、GPSを利用して測位することとしてもよく、また、移動するルートとスケジュールが決まっている場合には、時刻等から測位することとしてもよい。
【0022】
移動基地局1では、自身が移動することで、自身が形成する無線エリアの位置も変化する。そこで、移動基地局1は、エリア特定機能2により特定した通信装置100が在圏する無線エリアと、測位機能4により特定した自身(無線エリア)の位置との関係から、通信装置100の位置情報を特定する。
【0023】
ところで、既存の広域無線システムでは、無線エリアの識別子であるTAC(以下、「エリア識別子」と呼ぶ)を、基地局に対して固定的に割り当てている。エリア識別子を固定にした場合、基地局が移動したとしても、通信装置100は、移動の前後において同一の基地局に接続されていると判定するため、通信装置100の位置を精度良く特定することができない。
この点、移動基地局1が形成する無線エリアに対してエリア識別子「1」が設定されており、移動基地局1が地点A、地点B、地点Cの順に移動する場合(図1(B))を例にとり、説明する。
【0024】
図1(B)に示すように、地点Aにおいて、移動基地局1は、自身の無線エリアに対してエリア識別子「1」を報知する。この報知を受け、通信装置100は、TAU(以下、「位置登録要求」と呼ぶ)を送信することで位置登録を行うとともに、エリア識別子「1」を含むTAリストが格納されたTAUA(以下、「位置登録応答」と呼ぶ)を受信することで、自身が保持するTAリストを更新する。
その後、移動基地局1が地点B及び地点Cに移動すると、移動基地局1は、自身の無線エリアに対してエリア識別子「1」を報知するが、通信装置100では、エリア識別子「1」を含むTAリストを保持しているため、移動基地局1に対して位置登録要求を送信することがない。
【0025】
その結果、移動基地局1では、自身が地点Aに存在するときに形成した無線エリアであるエリア200の範囲を、通信装置100が存在する位置として特定することになるが、エリア200は広範囲であるため、エリア特定機能2及び測位機能4だけでは、通信装置100の位置を精度良く特定することができない。これは、エリア特定機能2及び測位機能4では、ページング等の通信のために必要となる精度(トラッキングエリアや基地局の単位)で位置を把握すればよいためである。
【0026】
追加機能3は、通信装置100の位置特定の精度を向上させるために発揮され、固定的であったエリア識別子を、移動基地局1の移動に合わせて変更する機能である。
一例として、図1(C)に示すように、追加機能3は、移動基地局1が地点Aに存在する場合に、当該移動基地局1が形成する無線エリアのエリア識別子を「1」にセットし、その後、移動基地局1が地点Bに移動するとエリア識別子を「2」に変更し、その後、移動基地局1が地点Cに移動するとエリア識別子を「3」に変更する。
【0027】
通信装置100からすると、地点A、地点B、地点Cの夫々において、移動基地局1から異なるエリア識別子が報知されるため、夫々のタイミングにおいて、位置登録要求を送信することになる。その結果、追加機能3を移動基地局1に追加することで、通信装置100の位置をエリア200(図1(B))からエリア210(図1(C))の範囲に絞ることができ、通信装置100に改修を加えることなく、精度良く通信装置100の位置を特定することができる。
また、エリア識別子を変更する間隔や、移動基地局1が形成する無線エリアのサイズを調整することで、運用者(救助者)が所望する粒度で通信装置100の位置を特定することができ、好適である。なお、無線エリアのサイズは、例えば、移動基地局1の送信電力や利用する周波数帯を調整することで調整することができる。
【0028】
以下、図面を参照して本発明の移動基地局1を実現するための具体的な構成等について説明する。
【0029】
[移動基地局1の機能構成]
図2は、移動基地局1の機能構成を示すブロック図である。図2に示すように、移動基地局1は、通信部5と、記憶部6と、制御部7と、を含んで構成される。
通信部5は、送信アンテナ及び受信アンテナを含んで構成され、制御部7から出力された信号を変調してRF(Radio Frequency)信号を生成し、送信アンテナを介して周囲の通信機器に対して無線送信する。また、通信部5は、受信アンテナを介して受信したRF信号を復調して制御部7に出力する。
【0030】
記憶部6は、例えば、ROM及びRAM等により構成される。記憶部6は、制御部7を機能させるための各種プログラムや各種データを記憶する。また、記憶部6は、エリア識別子リスト及び位置登録リストを記憶する。ここで、エリア識別子リスト及び位置登録リストの一例を、図3に示す。
【0031】
図3(A)は、エリア識別子リストに記憶される情報の一例である。エリア識別子リストは、移動基地局1が報知するエリア識別子を複数記憶する。本実施形態では、移動基地局1は、自身の位置の変化に応じてエリア識別子を変更するため、エリア識別子リストは、変更するエリア識別子の候補である候補エリア識別子を複数記憶するものといえる。
【0032】
図3(B)は、位置登録リストに記憶される情報の一例である。位置登録リストは、通信装置100から位置登録要求(TAU)を受信するたびに更新され、当該通信装置100の位置を特定するための情報を記憶する。
なお、通信装置100の位置を特定するための情報とは、例えば、当該通信装置100から位置登録要求を受信した時刻、位置登録要求を受信した際に報知していたエリア識別子等の任意の情報である。移動基地局1にとって自身の位置等は既知であるため、位置登録要求を受信するたびに位置登録リストを更新することで、自身(無線エリア)の位置と、通信装置100の在圏の有無とが紐づけられ、結果、通信装置100の位置を特定することができる。
【0033】
図2に戻り、制御部7は、例えば、CPUにより構成され、記憶部6に記憶されている各種プログラムを実行することにより、上述したエリア特定機能2、追加機能3及び測位機能4を発揮する。なお、測位機能4は上述した通りであるため、以下では、エリア特定機能2及び追加機能3について説明し、測位機能4についての詳細な説明は省略する。
エリア特定機能2を発揮する場合、制御部7は、報知部21と、受信部22と、送信部23と、登録部24とを含んで構成される。
【0034】
報知部21は、移動基地局1が形成する無線エリア内の通信装置100に対して、当該無線エリアを識別するエリア識別子を報知する。受信部22は、報知部21が報知したエリア識別子とは異なるエリア識別子を保持している通信装置100から、位置登録要求を受信する。
送信部23は、通信装置100から位置登録要求を受信すると、当該通信装置100に対して位置登録応答を行う。具体的には、送信部23は、通信装置100に対して報知部21が報知したエリア識別子を含むエリア識別子のリストを送信することで、位置登録応答を行う。なお、送信部23が送信するエリア識別子のリストの詳細については、図5において後述する。
【0035】
登録部24は、位置登録要求を受信すると、当該位置登録要求を行った通信装置100の位置情報を登録する。具体的には、登録部24は、受信した位置登録要求に基づいて、図3(B)に示す位置登録リストを更新することで、通信装置100の位置情報を登録する。一の通信装置100に対して、位置情報の登録を繰り返し行うことで、当該通信装置100の詳細な位置が絞られることになる。
【0036】
追加機能3は、報知部21が報知するエリア識別子を移動基地局1の移動に合わせて変更する機能である。ここで、図4は、追加機能3の動作例を示す図である。図4に示すように、移動基地局1は、所定の条件を満たすまでは同一のエリア識別子を報知し、当該条件を満たすと報知するエリア識別子を異なるエリア識別子に変更する。
【0037】
ここで、所定の条件としては、任意の条件を用いることができ、例えば、移動前後の距離や時間を用いることとしてもよく、また、移動基地局1の位置登録に関する処理負荷等を用いることとしてもよい。位置登録に関する処理負荷からは、同一のエリア識別子で識別される無線エリア内に存在する通信装置100の台数を判定することができるため、処理負荷を判定条件として用いることで、無線エリア内に一定数の通信装置100を発見したタイミングでエリア識別子を変更することができる。
なお、これら条件は、単独で用いることとしてもよく、夫々を任意に組み合わせて用いることとしてもよい。
【0038】
図2に戻り、追加機能3を発揮する場合、制御部7は、検出部31と、設定部32と、変更部33とを含んで構成される。
【0039】
検出部31は、移動基地局1の位置の変化量を検出する。上述のようにエリア識別子は、様々な条件に応じて変更することができるため、検出部31は、用いる条件に応じた変化量を検出する。例えば、判定条件として距離を用いる場合には座標の変化量を検出し、時間を用いる場合には経過時間を検出し、処理負荷を用いる場合には総負荷量を検出する。
【0040】
設定部32は、移動基地局1の位置の変化量に対して、エリア識別子を変更する閾値(判定条件)を設定する。この閾値を適宜設定することで、運用者が所望する粒度で通信装置100の位置を特定することができる。
なお、設定部32は、静的な閾値を設定することとしてもよく、また、動的な閾値を設定することとしてもよい。静的な閾値とは、固定的な閾値であり、例えば、移動基地局1が災害現場を1周する間は大きな閾値を設定しておくことで、通信装置100の大まかな位置を把握し、その後、当該大まかな位置に対して小さな閾値を設定することで、通信装置100の詳細な位置を把握するといった運用方法が想定される。また、動的な閾値とは、移動基地局1が災害現場を1周する間も変化する閾値であり、例えば、処理負荷に応じて閾値を変更することで、多くの通信装置100が存在するエリアの近傍のエリアを詳細に探索するといった運用方法が想定される。
【0041】
変更部33は、報知部21が報知するエリア識別子を、移動基地局1の位置の変化に応じて変更する。なお、移動基地局1の位置の変化は、上述したように距離、時間、処理負荷等の任意の情報に基づいて検出することができ、変更部33は、検出した変化量が閾値を超えた場合に、エリア識別子を変更する。
変更部33は、記憶部6に記憶されているエリア識別子リストに含まれる候補エリア識別子を参照して、当該候補エリア識別子の中から選択した一のエリア識別子を、報知部21が報知するエリア識別子として変更する。そのため、移動基地局1にとって、変更するエリア識別子は、既知の識別子であることになる。
【0042】
変更部33(追加機能3)が報知するエリア識別子を変更すると、報知部21(エリア特定機能2)は、移動基地局1が形成する無線エリア内の通信装置100に対して変更後のエリア識別子を報知する。通信装置100からすると、自身(通信装置100)は移動していないにも関わらず、報知されるエリア識別子が異なるために接続先の基地局が変わったと判定し、移動基地局1に対して再度の位置登録要求を行うことになる。
その結果、通信装置100に改修を加えることなく、かつ、通信装置100のユーザ(被災者)の操作を必要とすることなく、精度良く通信装置100の位置を把握することができる。
【0043】
以上、移動基地局1の機能構成について説明した。続いて、図5を参照して、送信部23が通信装置100に対して送信するエリア識別子のリストについて説明する。
移動基地局1の位置が変化するたびに通信装置100の位置登録を行うことで、上述のように通信装置100の位置を精度良く把握できるという利点が一方で、移動基地局1の処理負荷が増加してしまうという問題がある。送信部23は、少なくとも報知部21が報知したエリア識別子を含むエリア識別子のリストを送信することで、移動基地局1の処理負荷を軽減する。なお、測位精度の向上と処理負荷の軽減とはトレードオフの関係にあり、運用者が適宜設定することができる。
【0044】
上述のように移動基地局1にとって変更する候補エリア識別子は既知である。そこで、送信部23は、報知部21が報知したエリア識別子に加え、複数の候補エリア識別子のうちの少なくとも一の候補識別情報を、位置登録要求を行った通信装置100に対して送信する。
【0045】
図5(A)に示す例の場合、報知部21がエリア識別子「1」を報知している状態で位置登録要求を行った通信装置100に対して、移動基地局1(送信部23)は、当該エリア識別子「1」に加え、将来変更する予定のエリア識別子「2」を送信している。その結果、移動に伴い報知するエリア識別子が「1」から「2」に変更された場合であっても、通信装置100は、移動基地局1に対して再度の位置登録要求を行うことがなく、移動基地局1の処理負荷を軽減することができる。
なお、将来変更する予定のエリア識別子とは、位置登録に関する処理負荷の軽減という観点からは、現在の無線エリアと一部が重複する無線エリアに対して設定するエリア識別子であることが好ましい。
【0046】
また、送信部23は、複数の通信装置100から位置登録要求を受け付けた場合に、当該複数の通信装置100の夫々に対して異なる候補エリア識別情報を送信することとしてもよい。
図5(B)に示す例の場合、移動基地局1(送信部23)は、現在報知中のエリア識別子「1」に加え、通信装置100Aに対しては、エリア識別子「3」を送信し、通信装置100Bに対しては、通信装置100Aに送信するエリア識別子「3」とは異なるエリア識別子「2」を送信している。これにより、移動に伴い報知するエリア識別子が「1」から「2」に変更された場合であっても、通信装置100Aは位置登録要求を行う一方で、通信装置100Bは位置登録要求を行わない。その結果、通信装置100Aについては位置を精度良く測定することができるとともに、移動基地局1の処理負荷を軽減することができる。
【0047】
なお、通信装置100毎に候補エリア識別情報を異ならせる方法は任意であり、例えば、位置登録要求を受け付けた時刻に応じて異ならせることとしてもよく、また、一の無線エリアにおいて所定台数を超える通信装置100から位置登録要求を受け付けるとその後、候補エリア識別情報を異ならせることとしてもよい。
【0048】
[移動基地局1及び通信装置100の動作]
続いて、通信装置100の位置を把握する際の移動基地局1及び通信装置100の動作について説明する。図6は、移動基地局1及び通信装置100の動作の流れを示す動作フローである。
【0049】
初めに、ステップS1において、移動基地局1は、周囲の通信装置に対して自身が形成している無線エリアを識別するエリア識別子「1」を報知する。図6に示す例では、通信装置A,Bは、移動基地局1の無線エリア内に存在する一方で、通信装置Cは、当該無線エリア内に存在しない。その結果、ステップS2,S3に示すように、通信装置A,Bは、移動基地局1に対して位置登録要求を行う一方で、ステップS4に示すように、通信装置Cは位置登録要求を行わない。
通信装置A,Bから位置登録要求を受け付けると、移動基地局1は、当該位置登録要求に応じて位置登録応答を行う。図6に示す例では、移動基地局1は、ステップS2において、通信装置Aに対しては、エリア識別子「1」「3」を含むリストを送信し、ステップS3において、通信装置Bに対しては、エリア識別子「1」「2」を含むリストを送信している。通信装置A,Bでは、受信したリストに基づいて、自身が保持するエリア識別子のリストを更新する。
【0050】
続いて、ステップS5において、移動基地局1は、自身の位置の変化に応じて報知するエリア識別子を「1」から「2」に変更する。続いて、ステップS6において、移動基地局1は、周囲の通信装置に対して自身が形成している無線エリアを識別するエリア識別子「2」を報知する。図6に示す例では、通信装置A,B,Cの全てが移動基地局1の無線エリア内に存在している。
【0051】
通信装置Aは、ステップS3において保持するエリア識別子のリストをエリア識別子「1」「3」に更新しているため、報知されたエリア識別子「2」を保持していない。そこで、通信装置Aは、ステップS7において、移動基地局1に対して位置登録要求を行い、移動基地局1は、当該位置登録要求に応じて位置登録応答を行う。図6に示す例では、移動基地局1は、通信装置Aに対して、エリア識別子「2」「4」を含むリストを送信している。
【0052】
他方、通信装置Bは、ステップS3において保持するエリア識別子のリストをエリア識別子「1」「2」に更新しているため、報知されたエリア識別子「2」を保持している。そのため、ステップS8に示すように、通信装置Bは、位置登録が不要であり、位置登録要求を行わない。
【0053】
また、通信装置Cは、ステップS9において、移動基地局1に対して位置登録要求を行い、移動基地局1は、当該位置登録要求に応じて位置登録応答を行う。図6に示す例では、移動基地局1は、通信装置Cに対して、エリア識別子「2」「3」を含むリストを送信している。
【0054】
続いて、ステップS10において、移動基地局1は、自身の位置の変化に応じて報知するエリア識別子を「2」から「3」に変更する。続いて、ステップS11において、移動基地局1は、周囲の通信装置に対して自身が形成している無線エリアを識別するエリア識別子「3」を報知する。図6に示す例では、通信装置B,Cは、移動基地局1の無線エリア内に存在する一方で、通信装置Aは、当該無線エリア内に存在しない。
【0055】
その結果、ステップS12に示すように、通信装置Aは位置登録要求を行わない。また、通信装置Cは、報知されたエリア識別子「3」を保持しているため、ステップS14に示すように、位置登録が不要であり、位置登録要求を行わない。
他方、通信装置Bは、報知されたエリア識別子「3」を保持していない。そこで、通信装置Bは、ステップS13において、移動基地局1に対して位置登録要求を行い、移動基地局1は、当該位置登録要求に応じて位置登録応答を行う。図6に示す例では、移動基地局1は、通信装置Bに対して、エリア識別子「3」「4」を含むリストを送信している。
【0056】
移動基地局1では、これら動作を繰り返し、被災現場等を探索する。その後、移動基地局1は、ステップS15において、通信装置100の位置をマッピングし、処理を終了する。具体的には、移動基地局1は、自身が移動することで位置を変更する無線エリアと、通信装置100の位置登録要求とを紐づけることで、通信装置100の位置をマッピングする。これにより、通信装置100の位置を把握することができる。
【0057】
[移動基地局1の効果]
移動基地局1は、自身が形成する無線エリアに対して当該無線エリアを識別するエリア識別子を報知するところ、自身の位置が変化すると報知するエリア識別子を変更する。携帯電話やスマートフォン等の通信装置100では、報知されるエリア識別子が変わると接続先の基地局が変わったと判定して、再度の位置登録を行う。その結果、エリア識別子を変更することを繰り返すことで、通信装置100の位置をマッピングしていくことができる。
通信装置100によるこのような位置登録は、常時行われているものであり、通信装置100が基本的に備える機能であるため、移動基地局1によれば、通信装置100に何らの改修を加えることなく、通信装置の位置を精度良く把握することができる。
【0058】
また、移動基地局1では、自身の位置の変化量に対する閾値を設定し、この閾値に基づいてエリア識別子を変更する。大きな閾値を設定することで被災現場等を大まかに探索することができ、また、小さな閾値を設定することで被災現場等を詳細に探索することができる。その結果、移動基地局1によれば、運用者が所望する粒度で通信装置100の位置を特定することができる。
【0059】
また、移動基地局1では、位置登録要求を行った通信装置100に対して、報知したエリア識別子に加え、後に報知する可能性のある候補エリア識別子を送信する。これにより、通信装置100が位置登録要求を行う頻度を調整することができるため、移動基地局1の処理負荷を軽減することができる。
このとき、移動基地局1は、複数の通信装置100の夫々に対して異なる候補エリア識別子を送信することで、通信装置100の測位精度と移動基地局1の処理負荷とを適切に調整することができ、好適である。
【0060】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。特に、装置の分散・統合の具体的な実施形態は以上に図示するものに限られず、その全部又は一部について、種々の付加等に応じて、又は、機能負荷に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【符号の説明】
【0061】
1・・・移動基地局
2・・・エリア特定機能
21・・・報知部
22・・・受信部
23・・・送信部
24・・・登録部
3・・・追加機能
31・・・検出部
32・・・設定部
33・・・変更部
4・・・測位機能
100・・・通信装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6