(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記表基材の素材である前記金属板は、溶融Zn系めっき鋼板、溶融Alめっき鋼板、溶融Zn系めっきステンレス鋼板、溶融Alめっきステンレス鋼板、ステンレス鋼板、塗装溶融Zn系めっき鋼板、塗装溶融Alめっき鋼板、塗装溶融Zn系めっきステンレス鋼板、塗装溶融Alめっきステンレス鋼板又は塗装ステンレス鋼板からなる
ことを特徴とする請求項1に記載の金属屋根材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の金属屋根材は、屋根材としての機能を確保するために一定の厚みを有している。しかし、折り曲げて箱形にしただけの屋根材であるので、以下のような問題が生じている。すなわち、近年、屋根への太陽電池モジュール搭載が急増している。この太陽電池モジュールは、一般に締結金具等を介して屋根下地の上に並べて配置されるが構造的制約や意匠性の観点、さらにはモジュール締結用部材の小型化などの理由により、屋根材をより薄くすることが求められている。しかし、従来の曲げ加工による金属屋根材では、薄くすると耐風圧性能が低下する問題がある。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、耐風圧性能を向上させることができる金属屋根材及びその製造方法並びに屋根葺き構造及び屋根葺き方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る金属屋根材は、屋根下地の上に他の金属屋根材とともに並べて配置される金属屋根材であって、
鋼板からなる金属板を素材とする箱形の表基材と、表基材の開口を塞ぐように表基材の裏側に配置された裏基材と、表基材と裏基材との間に充填された発泡樹脂からなる芯材とを備え、軒側端部から離れた位置で表基材、裏基材及び芯材を貫通するように止部材が打たれることにより屋根下地に固定され、他の金属屋根材と連結される突出片を周縁部に有しない金属屋根材であり、表基材は、周方向に連続する側壁部を有するとともに、高さが4mm以上かつ8mm以下とされており、
表基材を構成する金属板の板厚は0.27mm以上かつ0.5mm以下であり、金属屋根材は、長手方向と短手方向とを有し、長手方向が屋根の軒方向に沿わされるとともに、短手方向が屋根の軒棟方向に沿わされるように適合されており、長手方向に係る金属屋根材の寸法が短手方向に係る金属屋根材の寸法の略2倍とされており、側壁部
の全体は、加工硬化により金属板よりも
ビッカース硬
さが
1.4〜1.6倍に高められている。
【0007】
また、本発明に係る金属屋根材の製造方法は、
鋼板からなる金属板を素材とする箱形の表基材と、表基材の開口を塞ぐように表基材の裏側に配置された裏基材と、表基材と裏基材との間に充填された発泡樹脂からなる芯材とを備え、軒側端部から離れた位置で表基材、裏基材及び芯材を貫通するように止部材が打たれることにより屋根下地に固定され、他の金属屋根材と連結される突出片を周縁部に有しない金属屋根材の製造方法であって、金属板に絞り加工又は張出し加工を施して、周方向に連続する側壁部を有するとともに、高さが4mm以上かつ8mm以下とされている表基材を形成することを含み、
表基材を構成する金属板の板厚は0.27mm以上かつ0.5mm以下であり、金属屋根材は、長手方向と短手方向とを有し、長手方向が屋根の軒方向に沿わされるとともに、短手方向が屋根の軒棟方向に沿わされるように適合されており、長手方向に係る金属屋根材の寸法が短手方向に係る金属屋根材の寸法の略2倍とされており、側壁部
の全体は、加工硬化により金属板よりも
ビッカース硬
さが
1.4〜1.6倍に高められている。
【0008】
また、本発明に係る屋根葺き構造は、
鋼板からなる金属板を素材とする箱形の表基材と、表基材の開口を塞ぐように表基材の裏側に配置された裏基材と、表基材と裏基材との間に充填された発泡樹脂からなる芯材とをそれぞれ有し、表基材は、周方向に連続する側壁部を有するとともに、高さが4mm以上かつ8mm以下とされており、
表基材を構成する金属板の板厚は0.27mm以上かつ0.5mm以下であり、金属屋根材は、長手方向と短手方向とを有し、長手方向が屋根の軒方向に沿わされるとともに、短手方向が屋根の軒棟方向に沿わされるように適合されており、長手方向に係る金属屋根材の寸法が短手方向に係る金属屋根材の寸法の略2倍とされており、側壁部
の全体は、加工硬化により金属板よりも
ビッカース硬
さが
1.4〜1.6倍に高められている複数の金属屋根材を備え、互いの側壁部を突き合わせながら複数の金属屋根材が屋根下地の上に並べて配置されるとともに、軒側端部から離れた位置で表基材、裏基材及び芯材を貫通するように止部材が打たれることにより複数の金属屋根材が屋根下地に固定されており、複数の金属屋根材は、他の金属屋根材と連結される突出片を周縁部に有しない。
【0009】
また、本発明に係る屋根葺き方法は、
鋼板からなる金属板を素材とする箱形の表基材と、表基材の開口を塞ぐように表基材の裏側に配置された裏基材と、表基材と裏基材との間に充填された発泡樹脂からなる芯材とをそれぞれ有し、表基材は、周方向に連続する側壁部を有するとともに、高さが4mm以上かつ8mm以下とされており、
表基材を構成する金属板の板厚は0.27mm以上かつ0.5mm以下であり、金属屋根材は、長手方向と短手方向とを有し、長手方向が屋根の軒方向に沿わされるとともに、短手方向が屋根の軒棟方向に沿わされるように適合されており、長手方向に係る金属屋根材の寸法が短手方向に係る金属屋根材の寸法の略2倍とされており、側壁部
の全体は、加工硬化により金属板よりも
ビッカース硬
さが
1.4〜1.6倍に高められている複数の金属屋根材を用い、互いの側壁部を突き合わせながら複数の金属屋根材を屋根下地の上に並べて配置するとともに、軒側端部から離れた位置で表基材、裏基材及び芯材を貫通するように止部材を打つことにより複数の金属屋根材を屋根下地に固定することを含み、複数の金属屋根材は、他の金属屋根材と連結される突出片を周縁部に有しない。
【発明の効果】
【0010】
本発明の金属屋根材及びその製造方法並びに屋根葺き構造及び屋根葺き方法によれば、表基材が、金属板に絞り加工又は張出し加工が施されることで形成された周方向に連続する側壁部を有するとともに、高さが4mm以上かつ8mm以下とされているので、耐風圧性能を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1による金属屋根材1を示す平面図であり、
図2は
図1の線II−IIに沿う断面図である。
【0013】
図1及び
図2に示す金属屋根材1は、家屋等の建物の屋根下地の上に他の金属屋根材とともに並べて配置されるものである。
図2に特に表れているように、金属屋根材1は、表基材10、裏基材11及び芯材12を有している。
【0014】
表基材10は、金属板を素材とするものであり、金属屋根材1が屋根下地の上に配置された際に屋根の外面に表れる部材である。
【0015】
表基材10の素材である金属板としては、溶融Zn系めっき鋼板、溶融Alめっき鋼板、溶融Zn系めっきステンレス鋼板、溶融Alめっきステンレス鋼板、ステンレス鋼板、塗装溶融Zn系めっき鋼板、塗装溶融Alめっき鋼板、塗装溶融Zn系めっきステンレス鋼板、塗装溶融Alめっきステンレス鋼板、塗装ステンレス鋼板、塗装Al板又は塗装Ti板を用いることができる。
【0016】
金属板の厚みは0.27mm以上かつ0.5mm以下であることが好ましい。金属板の厚みの増加に伴い、屋根材の強度が増大するが重量も増す。金属板の厚みを0.27mm以上とすることで、屋根材として必要とされる強度を十分に確保でき、耐風圧性や踏み潰れ性を十分に得ることができる。金属板の厚みを0.5mm以下とすることで、金属屋根材1の重量が大きくなりすぎることを回避でき、太陽電池モジュール、太陽光温水器、エアコン室外機、融雪関連機器等の機器を屋根上に設けた際の屋根の総重量を抑えることができる。
【0017】
表基材10は、天板部101及び側壁部102を有する箱形に形成されている。この表基材10は、金属板に絞り加工又は張り出し加工が施されることで形成される。これにより、側壁部102は、表基材10の周方向に連続した壁面とされている。側壁部102が周方向に連続した壁面とされることで、表基材10に加わる応力を側壁部102全体で受けることができ、金属屋根材1の耐風圧性能を向上させることができる。耐風圧性能とは、強い風に対して座屈せずに金属屋根材1が耐えられる性能である。
【0018】
特に、表基材10の金属板として鋼板(溶融Zn系めっき鋼板、溶融Alめっき鋼板、溶融Zn系めっきステンレス鋼板、溶融Alめっきステンレス鋼板、ステンレス鋼板、Al板、Ti板、塗装溶融Zn系めっき鋼板、塗装溶融Alめっき鋼板、塗装溶融Zn系めっきステンレス鋼板、塗装溶融Alめっきステンレス鋼板、塗装ステンレス鋼板)が用いられる場合、絞り加工又は張り出し加工により表基材10を形成した際に、加工硬化により側壁部102の硬度が高められている。具体的には、側壁部102のビッカース硬
さは、加工前に比べて1.4〜1.6倍程度増大されている。上述のように側壁部102が周方向に連続する壁面とされるとともに、加工硬化により側壁部102の硬度が高められることにより、金属屋根材1の耐風圧性能が著しく向上する。
【0019】
なお、
図5に示す従来構成のように金属板を屈曲して箱形を形成した場合、側壁部の間に切れ目が生じる。切れ目により独立した側壁部は、表基材に加わる応力を個々に受ける。このため、側壁部102が周方向に連続した壁面とされる本実施の形態の構成と比較して、より弱い風でも金属屋根材が座屈してしまう。また、金属板を屈曲しただけでは、側壁部全体に加工硬化は生じない。
【0020】
裏基材11は、表基材10の開口を塞ぐように表基材10の裏側に配置された部材である。裏基材11としては、アルミ箔、アルミ蒸着紙、水酸化アルミ紙、炭酸カルシウム紙、樹脂フィルム又はガラス繊維紙等の軽量な素材を用いることができる。これらの軽量な素材を裏基材11に用いることで、金属屋根材1の重量が増大することを回避することができる。
【0021】
芯材12は、表基材10と裏基材11との間に充填された発泡樹脂からなる。表基材10と裏基材11との間に発泡樹脂が充填されることで、樹脂シート等の裏打ち材を表基材10の裏側に張り付ける態様よりも、表基材10の内部に芯材12を強固に密着させることができ、雨音性、断熱性及び耐踏み潰れ性等の屋根材に求められる性能を向上させることができる。
【0022】
なお、従来構成のように側壁部の間に切れ目が形成されている構成においては、切れ目から発泡樹脂が漏れることを回避するために、切れ目を封じる作業が必要となる。一方、本実施の形態の構成のように側壁部102が周方向に連続した壁面とされることで、そのような作業は不要とされる。
【0023】
芯材12の素材としては、特に制限が無く、ウレタン、フェノール、ヌレート樹脂等を用いることができる。ただし、屋根材においては不燃認定材料を使用することが必須となる。不燃材料認定試験は、ISO5660−1コーンカロリーメーター試験法に準拠した発熱性試験が実施される。芯材12となる発泡樹脂が発熱量の多いウレタンなどの場合は、表基材100の厚みを薄くしたり、発泡樹脂に無機発泡粒子を含有させたりすることができる。
【0024】
芯材12が充填される表基材10の高さhは、4mm以上かつ8mm以下とされる。表基材100の高さhを4mm以上とすることで、表基材10の強度を高くし、耐風圧性を向上させることができる。また、表基材10の高さhを8mm以下とすることで、芯材12の有機質量が多くなりすぎることを回避して、より確実に不燃材料認定を得ることができるようにしている。
【0025】
次に、
図3は
図1及び
図2の金属屋根材1を用いた屋根葺き構造及び屋根葺き方法を示す説明図であり、
図4は
図3の軒棟方向3にずらして配置された2つの金属屋根材1の関係を示す説明図である。
【0026】
図3に示すように、金属屋根材1は、その表基材10の側端が他の金属屋根材1の表基材10の側端と突き合わされながら屋根下地の上に配置される。より詳細には、複数の金属屋根材1は、軒と平行な方向2に関して互いの表基材10の側端が突き合わされながら屋根下地の上に並べて配置される。各金属屋根材1は、くぎ等の止部材4により屋根下地に固定される。
図3では、図が複雑になることを避けるため、1つの金属屋根材1のみについて止部材4を示し、他の金属屋根材1に関する止部材4の図示を省略している。
【0027】
表基材10の側端が突き合わされるとは、隣り合う表基材10の側端が互いに接触されるか、又は隣り合う金属屋根材1の表基材10の側端が近接されることを意味する。並べて配置される金属屋根材1は同じ構成を有する。但し、屋根の端等の異なる条件の位置においては、他の金属屋根材を用いることもできる。
【0028】
また、複数の金属屋根材1は、軒棟方向3に関して軒側の金属屋根材1の棟側端部の上に棟側の金属屋根材1の軒側端部が重ねられながら屋根下地の上に配置される。少なくとも1部分の止部材4は、軒側の金属屋根材1と棟側の金属屋根材1との両方を貫通するように打たれる。このように軒側の金属屋根材1と棟側の金属屋根材1との両方を貫通するように止部材4が打たれることで、
図5に示すように棟側の金属屋根材1を軒側の金属屋根材1とほぼ平行に配置することができ、棟側の金属屋根材1の軒側端部が浮き上がることを低減できる。棟側の金属屋根材1の軒側端部が浮き上がりを低減することで、屋根の水密性を向上させることができる。
【0029】
図3に示すように、軒棟方向3に関して金属屋根材1が重なる長さL2は、棟側の金属屋根材1が軒側の金属屋根材1と重ならない長さL1よりも大きくされる(L2>L1)。これにより、より広い領域で軒側の金属屋根材1と棟側の金属屋根材1との両方を貫通するように止部材4を打つことができる。
【0030】
次に、実施例を挙げる。本発明者は、以下の条件にて金属屋根材1を供試材として試作した。
【0031】
表基材10の素材は、0.20〜0.8mmの塗装溶融Zn−55%Alめっき鋼板、塗装溶融Zn−6%Al−3%Mgめっき鋼板又は塗装溶融Alめっき鋼板を使用した。
裏基材11のとしては、0.2mmガラス繊維紙、0.2mmAl蒸着紙、0.2mmPE樹脂フィルム、0.1mmAl箔を使用した。
芯材12としては、2液混合型の発泡樹脂を使用した。ポリオール成分とイソシアネート、フェノールもしくはヌレート成分の混合比率は重量比で1:1とした。
また、比較のために、コンクリート、合成樹脂シートも供試した。
【0032】
表基材10を所定の屋根材厚みと形状となるように加工した。加工はプレス機により絞りもしくは張出し加工を行った。加工後の側壁部のビッカース硬
さが、加工前に比べ1.4〜1.6倍となるように、金型のクリアランスや成形速度、表面潤滑性、加工時の素材温度を調整した。比較として、ベンダーにより90°折曲げにより箱形状の屋根材も作成した。
【0033】
加工した表基材10は、表基材10の開口を塞ぐように表基材10の裏側に裏基材11を配置し、市販の高圧注入機により表基材10と裏基材11との間の空隙に発泡樹脂を注入した。樹脂発泡は、温水循環により70℃に温度調整した金型内で2分保持した後、金型から屋根材を取出し、室温20℃の条件下で5分間静置し、樹脂の発泡を完了させた。
【0034】
樹脂の発泡を完了させた後に、フランジ部を切断し、ベンダーにより曲げ加工した。最終的な金属屋根材1の寸法は、414mm×910mmとした。また、最終的な屋根材の厚みは4mm〜8mmの範囲とした。
【0035】
また、比較のために、表基材として0.3mm塗装溶融Zn−55%Al合金めっき鋼板をベンダーにより4辺を内側に90°曲げて箱形とし、上述の方法で発泡樹脂を注入した金属屋根材も試作した(従来構成)。
【0036】
裏基材には0.2mmのガラス繊維紙を使用した。なお、屋根材の寸法は厚み6mmとし、その他の条件は上記した条件と同一とした。
また、比較のために、発泡樹脂を注入しない金属屋根材、市販の0.3mmの断熱ポリエチレンシートを接着剤により加工した表基材に接着した屋根材も試験に供した。
【0037】
本発明者は、上記した供試材を用いて、(1)屋根材の耐風圧性評価、(2)屋根材重量の評価、(3)屋根材の踏み潰れ性の評価及び(4)断熱性の評価を行った。その結果を以下の表に示す。
【0039】
(1)屋根材耐風圧性の評価基準認定
耐風圧性試験は日本工業規格A1515に沿って行った。すなわち、動風圧試験装置を使用し、加圧プロセスで加圧したときの試験体の破壊の有無を観察した。耐風圧性の評価は破壊に至ったときの破壊圧力により評価し、破壊圧力が負圧6,000N/m
2以上を◎、負圧5,000N/m
2以上6,000N/m
2未満を○、負圧2250以上5000N/m
2未満を△、負圧2250N/m
2未満を×とした。
【0040】
(2)屋根材重量の評価基準
屋根材の単重を計測し、以下の基準により評価した。なお、本評価基準は、標準的な130N/m
2の太陽電池モジュールが屋根に搭載されたことを想定し、屋根材を含む屋根全体の重量から以下の評価基準により評価した。
○:屋根材単重が250N/m
2未満
×:屋根材単重が250N/m
2以上
【0041】
(3)屋根材の踏み潰れ性
屋根材の中央部に体重65〜75kgの人が片足で立ち、全体重を屋根材に加えた後、負荷のない状態での屋根材の変形を目視による評価した。 著しい変形がある場合を×、軽微な変形がある場合を△、変形がない場合を○とした。
【0042】
(4)断熱性の評価方法と評価基準
雨水の滞留状態を評価した模擬屋根の表基材表面及び野地板の裏面に熱電対を取り付けた。この模擬屋根の表面から180mmの位置に12個のランプ(100/110V、150W)を均等に配置し、ランプ出力60%にて照射1時間経過後の野地板裏温度を熱電対によって測定することで断熱性を評価した。
断熱性は、以下の基準により評価した。
○:野地板裏温度が50℃未満。
△:野地板裏温度が50〜55℃。
×:野地板裏温度が55℃以上。
【0043】
表1において、No.10〜12は、耐風圧性の評価が×になった。これは、No.10〜12の表基材を従来構成と同様に折り曲げ加工により形成しているためと考えられる。一方、他の供試材では絞り加工又は張り出し加工により表基材を形成しているので、耐風圧性の評価が△、○又は◎になった。これにより、絞り加工又は張り出し加工により表基材を形成することの優位性が確認された。
【0044】
また、No.9,13は、耐風圧性の評価が△になった。これは、No.9は芯材12が省略され、No.13は表基材の高さhが4mmより低くされているためと考えられる。このため、絞り加工又は張り出し加工により表基材を形成する構成において、芯材12を設けるとともに、表基材の高さhを4mm以上とすることを優位性が確認された。なお、表1には特に試験結果等を示さないが、表基材10の高さを8mm以下とすることで、芯材12の有機質量が多くなりすぎることを回避して、より確実に不燃材料認定を得ることができる。
【0045】
また、No.13は、表基材の厚みが0.27mm未満であることも耐風圧性の低下を引き起こしていると考えられる。また、No.14の表基材の厚みは0.5mmを超えており、屋根材重量が×の評価となった。この結果から、表基材10を構成する金属板の板厚が0.27mm以上かつ0.5mm以下であることの優位性が確認された。
【0046】
No.8は、耐風圧性の評価が○となった。これにより、Al等の鋼板以外の金属でも、絞り加工又は張り出し加工により表基材を形成することにより、良好な耐風圧性能を向上させることができることが確認された。
【0047】
No.1〜7は、耐風圧性の評価が◎になった。これにより、絞り加工又は張り出し加工を鋼板に行うことで、加工硬化により側壁部102の硬度が高められて、金属屋根材1の耐風圧性能が著しく向上することが確認された。
【0048】
なお、表1には特に試験結果等を示さないが、裏基材をガラス繊維紙、Al蒸着紙、PE樹脂負フィルム、Al箔などの軽量な素材を用いることにより金属屋根材1の重量が大きくなりすぎることを回避できる。裏基材に表基材の様な金属板を適用すると屋根材重量が大きくなり問題が生じる。
【0049】
このような金属屋根材1及びその製造方法並びに屋根葺き構造及び屋根葺き方法によれば、表基材10が、金属板に絞り加工又は張出し加工が施されることで形成された周方向に連続する側壁部102を有するとともに、高さが4mm以上かつ8mm以下とされているので、耐風圧性能を向上させることができる。これにより、耐風圧性能を維持しつつ、従来構成よりも薄い屋根材を提供することができる。
【0050】
また、表基材10の素材である金属板が、溶融Zn系めっき鋼板、溶融Alめっき鋼板、溶融Zn系めっきステンレス鋼板、溶融Alめっきステンレス鋼板、ステンレス鋼板、塗装溶融Zn系めっき鋼板、塗装溶融Alめっき鋼板、塗装溶融Zn系めっきステンレス鋼板、塗装溶融Alめっきステンレス鋼板又は塗装ステンレス鋼板からなるので、絞り加工又は張出し加工により側壁部102の硬度を向上させることができ、耐風圧性能をさらに向上させることができる。
【0051】
また、表基材10を構成する金属板の板厚が0.27mm以上かつ0.5mm以下であるので、耐風圧性能を確保しつつ、重量の増加を抑えることができる。
【0052】
さらに、裏基材11が、アルミ箔、アルミ蒸着紙、水酸化アルミ紙、炭酸カルシウム紙、樹脂フィルム又はガラス繊維紙からなるので、金属屋根材1の重量が大きくなりすぎることを回避できる。