特許第6362585号(P6362585)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6362585-無段変速機 図000002
  • 特許6362585-無段変速機 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362585
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】無段変速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 9/12 20060101AFI20180712BHJP
【FI】
   F16H9/12 B
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-254051(P2015-254051)
(22)【出願日】2015年12月25日
(65)【公開番号】特開2017-116043(P2017-116043A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年3月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129643
【弁理士】
【氏名又は名称】皆川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】嶋本 雅夫
(72)【発明者】
【氏名】松本 恭太
(72)【発明者】
【氏名】檀上 弥輝
【審査官】 塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−080582(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/047205(WO,A1)
【文献】 特開平03−121343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ハウジングと、
前記第1ハウジングと結合される第2ハウジングと、
前記第1ハウジングに取り付けられ、プライマリプーリとセカンダリプーリとに無端状のベルトが巻き掛けられた構成のベルト伝達機構と、
前記第2ハウジングに取り付けられ、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとが結合された状態で前記ベルト伝達機構と係合する係合部材と、
前記第2ハウジングに固定されるオイルポンプとを含み、
前記オイルポンプは、前記ベルト伝達機構と前記係合部材との間に配置されて、少なくとも一部が前記係合部材の少なくとも一部と回転軸線方向に対向するように配置されている、無段変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト式の無段変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される変速機として、ベルト式の無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)が広く知られている。
【0003】
図2は、従来のベルト式の無段変速機101の要部の構成を示す断面図である。なお、図2では、図面の視認性向上のため、ハッチングの付与が省略されている。
【0004】
無段変速機101は、プライマリプーリ102とセカンダリプーリ103とに無端状のベルト104が巻き掛けられた構成を有している。
【0005】
プライマリプーリ102は、プライマリ軸105と一体に形成された固定シーブ106と、固定シーブ106にベルト104を挟んで対向配置され、プライマリ軸105にその軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持された可動シーブ107とを備えている。
【0006】
セカンダリプーリ103は、セカンダリ軸108と一体に形成された固定シーブ109と、固定シーブ109にベルト104を挟んで対向配置され、セカンダリ軸108にその軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持された可動シーブ110とを備えている。可動シーブ110は、ベルト104に初期挟圧を与えるためのバイアススプリング111により、固定シーブ109側に付勢されている。
【0007】
また、無段変速機101は、第1ハウジング112および第2ハウジング113を備えている。プライマリ軸105およびセカンダリ軸108の一端部は、それぞれベアリング114,115を介して、第1ハウジング112に支持されている。ベアリング115の外輪(アウタレース)116は、第1ハウジング112とプレート117とに回転軸線方向から挟まれている。プレート117が第1ハウジング112にボルト118で締結されることにより、ベアリング114は、第1ハウジング112に脱落不能に固定されている。
【0008】
無段変速機101の組み立ての際には、プライマリ軸105およびセカンダリ軸108がそれぞれ挿通されたベアリング113,114が第1ハウジング112に取り付けられ、プレート117が第1ハウジング112にボルト118で締結される。これにより、プライマリプーリ102が第1ハウジング112に保持され、バイアススプリング111の付勢力によりプライマリプーリ102の固定シーブ109と可動シーブ110との間に挟持されたベルト104を介して、セカンダリプーリ103が吊り下げられる。そして、第2ハウジング113が第1ハウジング112の下方に配置されて、第1ハウジング112に保持されたプライマリプーリ102、セカンダリプーリ103およびベルト104からなるベルト伝達機構が第2ハウジング113内に挿入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−176890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
かかる構成では、ベアリング114を第1ハウジング112に固定するために、プレート117およびボルト118が必要であり、それ以外にも、ボルト118と第1ハウジング112との隙間からのオイル漏れを防止するためのシール部材119が必要である。プレート117を省略することができれば、ボルト118およびシール部材119が不要となるので、部品点数を削減することができ、無段変速機101のコストを低減することができる。
【0011】
プレート117を省略した場合、ベアリング114が第1ハウジング112に固定されないので、無段変速機101の組み立ての際には、第1ハウジング112を第2ハウジング113の下方に配置して、第2ハウジング113をベルト伝達機構に上方から被せることになる。しかしながら、第2ハウジング113内に、たとえば、プライマリ軸105とスプライン嵌合されるギヤ121が設けられている場合、第2ハウジング113内を下方に向けると、ギヤ121が第2ハウジング113から脱落してしまう。
【0012】
本発明の目的は、部品点数の削減およびコストの低減を図ることができる、無段変速機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の目的を達成するため、本発明に係る無段変速機は、第1ハウジングと、第1ハウジングと結合される第2ハウジングと、第1ハウジングに取り付けられ、プライマリプーリとセカンダリプーリとに無端状のベルトが巻き掛けられた構成のベルト伝達機構と、第2ハウジングに取り付けられ、第1ハウジングと第2ハウジングとが結合された状態でベルト伝達機構と係合する係合部材と、第2ハウジングに固定されるオイルポンプとを含み、オイルポンプは、少なくとも一部が係合部材の少なくとも一部と回転軸線方向に対向するように配置されている。
【0014】
この構成によれば、第1ハウジングにベルト伝達機構が取り付けられ、第2ハウジングに係合部材が取り付けられている。第2ハウジングには、オイルポンプが固定されている。オイルポンプは、その少なくとも一部が係合部材の少なくとも一部と回転軸線方向に対向し、それらの対向部分が回転径方向に互いにオーバラップしている。そのため、無段変速機の組み立ての際に、ベルト伝達機構が第1ハウジングに取り付けられ、係合部材およびオイルポンプが第2ハウジングに取り付けられた後、第2ハウジングを第1ハウジングの上方にその内側を下方に向けて配置しても、係合部材が第2ハウジングから脱落することを抑制できる。
【0015】
無段変速機には、通常、オイルポンプが設けられているので、そのオイルポンプを利用して第2ハウジングからの係合部材の脱落を抑制することにより、係合部材を第2ハウジングに固定する部材を追加する必要をなくすことができる。そして、無段変速機の組み立ての際には、第1ハウジングを第2ハウジングの下方に配置できるので、ベルト伝達機構を第1ハウジングに固定するための部材、つまり図2に示されるプレート117を省略することができる。
【0016】
よって、無段変速機の部品点数の削減およびコストの低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、無段変速機の部品点数の削減およびコストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る無段変速機の要部の構成を示す断面図である。
図2】従来のベルト式の無段変速機の要部の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0020】
<構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る無段変速機1の要部の構成を示す断面図である。なお、図1では、図面の視認性向上のため、ハッチングの付与が省略されている。
【0021】
無段変速機1は、互いに結合される第1ハウジング11および第2ハウジング12を備えている。
【0022】
第1ハウジング11には、ベルト伝達機構13が取り付けられる。ベルト伝達機構13には、プライマリプーリ14、セカンダリプーリ15およびベルト16が含まれる。
【0023】
プライマリプーリ14は、固定シーブ21、可動シーブ22およびピストン23を備えている。固定シーブ21には、プライマリ軸24が一体に形成されている。プライマリ軸24は、固定シーブ21から回転軸線方向の両側に延出している。可動シーブ22は、プライマリ軸24に外嵌され、プライマリ軸24に回転軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持されている。ピストン23は、可動シーブ22に対して固定シーブ21側と反対側に配置されて、プライマリ軸24に固定されている。
【0024】
セカンダリプーリ15は、固定シーブ31、可動シーブ32およびピストン33を備えている。固定シーブ31には、セカンダリ軸34が一体に形成されている。セカンダリ軸34は、固定シーブ31から回転軸線方向の両側に延出している。可動シーブ32は、セカンダリ軸34に外嵌され、セカンダリ軸34に回転軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持されている。ピストン33は、可動シーブ32に対して固定シーブ31側と反対側に配置されて、セカンダリ軸34に固定されている。また、可動シーブ32とピストン33との間には、ベルト16に初期挟圧(初期推力)を与えるためのバイアススプリング35が介在されている。バイアススプリング35の弾性力により、可動シーブ32およびピストン33は、互いに離間する方向に付勢されている。
【0025】
プライマリ軸24の可動シーブ22側の端部41には、アダプタ42が相対回転不能に固定されている。プライマリ軸24の端部41は、アダプタ42およびベアリング43を介して、第1ハウジング11に支持されている。セカンダリ軸34の固定シーブ31側の端部44は、ベアリング45を介して、第1ハウジング11に支持されている。
【0026】
第2ハウジング12内には、ギヤ46が設けられている。ギヤ46は、ベアリング47を介して、第2ハウジング12に支持されている。ギヤ46のボス48の内周面には、スプライン49が形成されている。これに対応して、プライマリ軸24の可動シーブ22側と反対側の端部50には、その外周面にスプライン51が形成されている。第1ハウジング11と第2ハウジング12とが互いに結合された状態では、プライマリ軸24の端部50がギヤ46のボス48内に挿通され、プライマリ軸24とギヤ46とがスプライン49,51によりスプライン嵌合している。
【0027】
また、第2ハウジング12内には、オイルポンプ61が設けられている。オイルポンプ61は、その一部がギヤ46のリム62と回転軸線方向に対向するように、言い換えれば、オイルポンプ61の一部とギヤ46のリム62とが回転径方向に互いにオーバラップするように配置されて、ボルト63により第2ハウジング12に固定されている。
【0028】
無段変速機1の組み立ての際には、プライマリプーリ14とセカンダリプーリ15とにベルト16が巻き掛けられる。そして、プライマリ軸24およびセカンダリ軸34がそれぞれ挿通されたベアリング43,45が第1ハウジング11に取り付けられる。これにより、ベルト伝達機構13が第1ハウジング11に取り付けられる。また、ギヤ46のボス48がベアリング47に挿通され、ベアリング47が第2ハウジング12に取り付けられる。その後、オイルポンプ61が第2ハウジング12にボルト63により固定される。
【0029】
第1ハウジング11がベルト伝達機構13を上方に向けて配置され、第2ハウジング12がその内部を下方に向けて第1ハウジング11の上方に配置される。そして、第2ハウジング12内にベルト伝達機構13が収容されるように、第1ハウジング11と第2ハウジング12とが結合される。
【0030】
<作用効果>
以上のように、第1ハウジング11にベルト伝達機構13が取り付けられ、第2ハウジング12にギヤ46が取り付けられている。第2ハウジング12には、オイルポンプ61が固定されている。オイルポンプ61は、その一部がギヤ46のリム62と回転軸線方向に対向している。そのため、無段変速機1の組み立ての際に、ベルト伝達機構13が第1ハウジング11に取り付けられ、ギヤ46およびオイルポンプ61が第2ハウジング12に取り付けられた後、第2ハウジング12を第1ハウジング11の上方にその内側を下方に向けて配置しても、ギヤ46が第2ハウジング12から脱落することを抑制できる。
【0031】
無段変速機1には、通常、オイルポンプ61が設けられているので、オイルポンプ61を利用して第2ハウジング12からのギヤ46の脱落を抑制することにより、ギヤ46を第2ハウジング12に固定する部材を追加する必要をなくすことができる。そして、無段変速機1の組み立ての際には、第1ハウジング11を第2ハウジング12の下方に配置できるので、ベルト伝達機構13を第1ハウジング11に固定するための部材、つまり図2に示されるプレート117を省略することができる。
【0032】
よって、無段変速機1の部品点数の削減およびコストの低減を図ることができる。
【0033】
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。また、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 無段変速機
11 第1ハウジング
12 第2ハウジング
13 ベルト伝達機構
14 プライマリプーリ
15 セカンダリプーリ
16 ベルト
46 ギヤ(係合部材)
61 オイルポンプ
62 リム
63 ボルト
図1
図2