特許第6362589号(P6362589)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6362589水性配合物を用いて製造した感熱画像受容体要素
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362589
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】水性配合物を用いて製造した感熱画像受容体要素
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/382 20060101AFI20180712BHJP
   B41M 5/50 20060101ALI20180712BHJP
   B41M 5/52 20060101ALI20180712BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20180712BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   B41M5/382 300
   B41M5/382 400
   B41M5/50 320
   B41M5/50 420
   B41M5/52 300
   B41M5/52 400
   B32B27/30 A
   B32B27/36
【請求項の数】17
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2015-516051(P2015-516051)
(86)(22)【出願日】2013年5月24日
(65)【公表番号】特表2015-525154(P2015-525154A)
(43)【公表日】2015年9月3日
(86)【国際出願番号】US2013042558
(87)【国際公開番号】WO2013184396
(87)【国際公開日】20131212
【審査請求日】2016年5月17日
(31)【優先権主張番号】13/858,132
(32)【優先日】2013年4月8日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/491,906
(32)【優先日】2012年6月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514012708
【氏名又は名称】コダック アラリス インク
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クン テ−ミン
(72)【発明者】
【氏名】ジゼル ピーター ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ミュールバウアー ジョン レオナード
【審査官】 小川 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−229987(JP,A)
【文献】 特開2011−073204(JP,A)
【文献】 特開2009−056598(JP,A)
【文献】 特開2001−121829(JP,A)
【文献】 特開平11−334228(JP,A)
【文献】 特開平11−321139(JP,A)
【文献】 特開平11−263076(JP,A)
【文献】 特開平08−332781(JP,A)
【文献】 特開平06−024156(JP,A)
【文献】 特開2007−118413(JP,A)
【文献】 特開2003−237248(JP,A)
【文献】 特開2000−094842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/382
B32B 27/30
B32B 27/36
B41M 5/50
B41M 5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、前記支持体の少なくとも一方の側にあり、25℃以上のTを持つ乾燥画像受容層と、を含む感熱画像受容体要素であって、
前記乾燥画像受容層は、前記感熱画像受容体要素の最外層であって、0.5μm以上、5μm以下の乾燥厚さを持ち、本質的に、
(1)置換または非置換のヒドロキシル、ホスホ、ホスホナート、スルホ、スルホナート、カルボキシ、またはカルボキシラート基を含む水分散性アクリルポリマーと、
(2)30℃以下のTを持つ水分散性ポリエステルと、
から成るポリマーバインダマトリックスを含み、
前記水分散性アクリルポリマーは、含有量が、全乾燥画像受容層重量の55質量%以上であり、前記水分散性ポリエステルに対する乾燥比が、1:1以上、20:1以下であることを特徴とする感熱画像受容体要素。
【請求項2】
前記乾燥画像受容層は、35℃以上、70℃以下のTを持つことを特徴とする、請求項1に記載の感熱画像受容体要素。
【請求項3】
前記水分散性ポリエステルは、−10℃以上、30℃以下のTを持つことを特徴とする、請求項1または2に記載の感熱画像受容体要素。
【請求項4】
前記水分散性アクリルポリマーの含有量は、全乾燥画像受容層重量の60質量%以上、90質量%以下であり、前記ポリマーバインダマトリックス中における前記水分散性アクリルポリマーの前記水分散性ポリエステルに対する重量比は、4:1から15:1までであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の感熱画像受容体要素。
【請求項5】
前記水分散性アクリルポリマーは、(a)1つ以上のエチレン性不飽和重合性アクリラートまたはメタクリラートから誘導した繰り返し単位であって、アクリラート部分またはメタクリラート部分のエステルが、非環式アルキルエステル、シクロアルキルエステル、またはアリールエステル基である、繰り返し単位と、(b)1つ以上のカルボキシ含有またはスルホ含有エチレン性不飽和重合性アクリラートまたはメタクリラートから誘導した繰り返し単位と、(c)必要に応じて、スチレンまたはスチレン誘導体から誘導した繰り返し単位と、を含み、
前記(a)繰り返し単位は、全繰り返し単位の20モル%以上、99モル%以下を占め、前記(b)繰り返し単位は、1モル%以上、10モル%以下を占めることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の感熱画像受容体要素。
【請求項6】
前記水分散性アクリルポリマーは、ヒドロキシルまたはカルボキシ基で架橋していることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の感熱画像受容体要素。
【請求項7】
前記支持体は、ポリマーフィルム、セルロース紙ベース、合成紙ベースおよび樹脂被覆セルロース紙ベースからなる群から選択される支持体であって、前記支持体は導電剤を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の感熱画像受容体要素。
【請求項8】
前記支持体の両側に、同じ、または異なる乾燥画像受容層を含む、二重感熱画像受容体要素であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の感熱画像受容体要素。
【請求項9】
前記乾燥画像受容層は、前記支持体の片側または両側に直接配置されていることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の感熱画像受容体要素。
【請求項10】
前記支持体と、前記支持体の片側または両側の前記乾燥画像受容層との間に、中間層を更に含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の感熱画像受容体要素。
【請求項11】
感熱供与体要素と、請求項1〜10のいずれか一項に記載の感熱画像受容体要素とを含み、感熱画像が熱転写するように前記感熱供与体要素及び前記感熱画像受容体要素が配置されている画像形成部品。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の感熱画像受容体要素の製造法であって、
前記製造法は、
水性画像受容層配合物を支持体の片側または両側に塗布する工程と、
前記水性画像受容層配合物を乾燥させて、前記支持体の片側または両側に乾燥画像受容層を形成する工程と、
を含み、
前記水性画像受容層配合物は、本質的に、
(1)置換または非置換のヒドロキシル、ホスホ、ホスホナート、スルホ、スルホナート、カルボキシ、またはカルボキシラート基を含む水分散性アクリルポリマーと、
(2)30℃以下のTを持つ水分散性ポリエステルと、
から成るポリマーバインダ組成物を含み、
前記水分散性アクリルポリマーは、含有量が、生成する全乾燥画像受容層重量の55質量%以上であり、前記ポリマーバインダマトリックス中における前記水分散性ポリエステルに対する乾燥比が、1:1以上、20:1以下であることを特徴とする、感熱画像受容体要素の製造法。
【請求項13】
前記水性画像受容層配合物は、前記水分散性アクリルポリマーのための架橋剤を更に含むことを特徴とする、請求項12に記載の製造法。
【請求項14】
前記水性画像受容層配合物を70℃以上の温度で熱処理することを特徴とする、請求項12または13に記載の製造法。
【請求項15】
前記水性画像受容層配合物を前記支持体に塗布し、乾燥させて、所定のパターンの乾燥画像受容層を形成することを特徴とする、請求項12〜14のいずれか一項に記載の製造法。
【請求項16】
同じ水性画像受容層配合物を前記支持体の両側に塗布することを特徴とする、請求項12〜15のいずれか一項に記載の製造法。
【請求項17】
透明ポリマーフィルム、1つ以上の色素像、または透明ポリマーフィルムと1つ以上の色素像の両方を、感熱供与体要素から、請求項1〜10のいずれか一項に記載の乾燥感熱画像受容要素の前記画像受容層へ、画像の形に転写する工程を含むことを特徴とする、感熱画像の製造法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性画像受容層を備えた感熱画像受容体要素に関する。本発明はまた、この感熱画像受容体要素の製造法と、これを用いた、供与体要素からの熱転写による色素像の生成法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラまたは読取装置で得た画像を印刷するための熱転写装置が開発されている。このような印刷法の1つでは、まず、カラーフィルタで電子画像を色分解する。次に、それぞれの色分解画像を電気信号に変換する。更に、これらの信号をサーマルプリンタに伝える。印刷するには、シアン、マゼンタ、またはイエローの色素供与体要素を、感熱画像受容体要素と向かい合わせて置く。次に、この2つをサーマルプリントヘッドとプラテンローラの間に差し込む。ライン型のサーマルプリントヘッドを用いて、色素供与体シートの裏から熱を加える。サーマルプリントヘッドには多くの加熱素子があり、シアン、マゼンタ、またはイエロー信号の1つに応じて、これを逐次的に加熱する。この工程を別の色についても繰り返す。こうして、画面上に見えるオリジナル画像に対応したカラーハードコピーが得られる。
【0003】
感熱色素受容層を製造するための様々な取り組みが提案されている。色素像受容層配合物の溶媒コーティングは一般的な方法である。しかし、この配合物を被覆するために溶媒を使用すると、費用、環境災害および廃棄物の問題、有害な製造工程など、様々な問題が生じる。これらの問題の管理には特別な予防策が必要である。例えば、有機溶媒被覆配合物および方法が、米国特許第5,356,859号(Lumほか)に記載されている。
【0004】
別の取り組みは、色素像受容層配合物を支持体上にホットメルト押出するものである。感熱画像受容体要素の製造において、複数の層を同時押出することができる。この方法は、有用な感熱画像受容体要素を効率良く製造できるが、押出工程で高温を使用するため、色素像受容層に加えることのできる材料の種類が限定されてしまう。米国特許第7,993,559号(Dontulaほか)および米国特許出願公開第2010/0330306号(Dontulaほか)は、押出した柔軟層および帯電防止下塗り層を含む、複数の押出層を備えた画像形成要素について述べている。米国特許出願公開第2008/0220190号(Majumdarほか)は、水性下塗り層をその上に備えた支持体と、押出した色素受容層とを含む画像記録要素について述べている。更に、米国特許出願公開第2011/0091667号(Majumdarほか)および米国特許出願公開第2010/0330306号(Dontulaほか)は、押出した柔軟層と、これを画像受容層に付着させる帯電防止層とを含む、感熱色素転写受容体要素について述べている。
【0005】
更に別の取り組みは、色素像受容層の製造に水性コーティング配合物を使用するものである。この配合物は典型的に、バインダマトリックスとして水溶性または水分散性ポリマーを含む。このような配合物を調製するいくつかの試みが、例えば、米国特許出願公開第2011/0027505号(Majumdarほか)および米国特許出願公開第2011/0117299号(Kungほか)に記載されている。
【0006】
水性コーティング法および配合物は先の理由で好ましいが、高速印刷のために、色素供与体要素と感熱画像受容体要素とが、2つの要素の接触面で粘着せずに滑らかに分離することが必要とされる典型的な顧客の印刷環境では、水性被覆色素像受容層が問題を生じることがある。高湿度環境中でこのような画像印刷を行うと、水性被覆色素像受容体層の粘着が特に問題となる。更に、このような感熱画像受容体要素では、熱生成した画像に適切な色素濃度が十分に得られないことが多い。また、水性被覆層は水に触れると崩壊してしまう。
【0007】
本産業では、文献に記載されている様々な提案された解決法で、この問題に積極的に取り組んできた。例えば、米国特許出願公開第2009/0061124号(Koideほか)は、色素像受容層での様々なラテックスポリマーの使用について述べており、このラテックスポリマーは通常、少なくとも一部を塩化ビニルから調製する。あるいは、米国特許第7,820,359号(Yoshitaniほか)は、色素像受容層でのラテックスポリマーの使用について述べており、このラテックスポリマーは、アルキレンオキシ側鎖を持つ特定のモノマーと、不飽和ニトリル、スチレン、またはスチレン誘導体のいずれかとから誘導する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,356,859号
【特許文献2】米国特許第7,993,559号
【特許文献3】米国特許出願公開第2010/0330306号
【特許文献4】米国特許出願公開第2008/0220190号
【特許文献5】米国特許出願公開第2011/0091667号
【特許文献6】米国特許出願公開第2010/0330306号
【特許文献7】米国特許出願公開第2011/0027505号
【特許文献8】米国特許出願公開第2011/0117299号
【特許文献9】米国特許出願公開第2009/0061124号
【特許文献10】米国特許第7,820,359号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
水性被覆色素像受容層配合物の使用に伴う様々な問題に対する全ての既知の取り組みにも拘わらず、感熱色素転写要素を貯蔵または使用する場所の相対湿度に関係なく、生成する画像が安定し、また十分な濃度となるよう、このような配合物(およびそれから得た乾燥層)の相対湿度の変動に対する耐性の向上が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、支持体と、支持体の少なくとも一方の側に、25℃以上のTを持つ乾燥画像受容層と、を含む感熱画像受容体要素を提示する。この乾燥画像受容層は、感熱画像受容体要素の最外層であって、0.5μm以上、5μm以下の乾燥厚さを持ち、本質的に、(1)化学反応した、または化学反応していない、ヒドロキシル、ホスホ、ホスホナート、スルホ、スルホナート、カルボキシ、またはカルボキシラート基を含む水分散性アクリルポリマーと、(2)30℃以下のTを持つ水分散性ポリエステルと、から成るポリマーバインダマトリックスを含む。水分散性アクリルポリマーの含有量は、全乾燥画像受容層の55質量%以上であり、ポリマーバインダマトリックス中における水分散性ポリエステルに対する乾燥比は、1:1以上、例えば、1:1以上、20:1以下である。
【0011】
本発明の一部の詳細な実施の形態は、支持体と、支持体の片側または両側に、35℃以上、60℃以下のTを持つ乾燥画像受容層と、を含む感熱画像受容体要素を含む。この乾燥画像受容層は感熱画像受容体要素の最外層であって、1μm以上、3μm以下の乾燥厚さを持ち、本質的に、(1)化学反応した、または化学反応していない、カルボキシまたはカルボキシラート基を含む水分散性アクリルポリマーと、(2)0℃以上、20℃以下のTを持つ水分散性塗膜形成ポリエステルと、から成るポリマーバインダマトリックスを含む。水分散性アクリルポリマーは、(a)4以上の炭素原子を含む、非環式アルキルエステル、シクロアルキルエステル、またはアリールエステル基を含む、1つ以上のエチレン性不飽和重合性アクリラートまたはメタクリラートと、(b)1つ以上のカルボキシ含有またはカルボン酸塩含有エチレン性不飽和重合性アクリラートまたはメタクリラートと、(c)必要に応じて、スチレンまたはスチレン誘導体と、から誘導した繰り返し単位を含み、(a)繰り返し単位は、全繰り返し単位の20モル%以上、99モル%以下を占め、(b)繰り返し単位は、1モル%以上、10モル%以下を占める。水分散性塗膜形成ポリエステルは水分散性基を含んでいる。水分散性アクリルポリマーの含有量は、全乾燥画像受容層重量の60質量%以上、80質量%以下であり、ポリマーバインダマトリックス中における水分散性ポリエステルに対する乾燥比は、4:1以上、15:1以下である。
【0012】
更に本発明は、感熱供与体要素と熱的に関連した、本発明の感熱画像受容体要素を含む画像形成部品を提示する。
【0013】
更に、本発明の感熱画像受容体要素の製造法は、水性画像受容層配合物を支持体の片側または両側に塗布する工程と、水性画像受容層配合物を乾燥させて、支持体の片側または両側に乾燥画像受容層を形成する工程と、を含む。水性画像受容層配合物は、本質的に、(1)化学反応していない、ヒドロキシル、ホスホ、ホスホナート、スルホ、スルホナート、カルボキシ、またはカルボキシラート基を含む水分散性アクリルポリマーと、(2)30℃以下のTを持つ水分散性塗膜形成ポリエステルと、から成るポリマーバインダ組成物を含む。水分散性アクリルポリマーの含有量は、生成する全乾燥画像受容層重量の55質量%以上であり、ポリマーバインダマトリックス中における水分散性塗膜形成ポリエステルに対する乾燥比は、1:1以上、20:1以下である。
【0014】
本発明はまた、透明ポリマーフィルム、1つ以上の色素像、または透明ポリマーフィルムと1つ以上の色素像の両方を、感熱供与体要素から、本発明の乾燥感熱画像受容要素の画像受容層へ、画像の形に転写する工程を含む、熱転写の製造法を提示する。
【発明の効果】
【0015】
水性配合物に、独自のポリマーの組み合わせを適用し、相対湿度に対して感受性の低い、感熱画像受容体要素の画像受容層を製造する。ポリマーのこの組み合わせは、2種類の必須のポリマー、(1)文中に定義する水分散性アクリルポリマーと、(2)30℃以下のTを持つ水分散性ポリエステルとを含む。本発明の感熱画像受容体要素は、相対湿度の変化による感熱印刷濃度変化が小さいことが分かった。この長所は、(1)または(2)の種類のポリマーを単独で使用したのでは達成できない。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<定義>
文中に記載の組成物、配合物、および層の様々な成分を定義するために文中で使用する、単数形“a”、“an”、および“the”は、別途指示のない限り、1つ以上の当該成分を含む(つまり、複数の指示対象を含む)ことを意味する。
【0017】
本願中で明確に定義されていない各用語は、当業者に一般的に認められている意味を持つものと理解すべきである。ある用語がその文脈において無意味である、または本質的に無意味であると解釈される場合、その語の定義は、標準的な辞書から採るべきである。
【0018】
文中に明記されている様々な範囲の中で使用する数値は、別途明確に指示されていない限り、記述の範囲内の最小および最大値の前にいずれも語“約”が付いているように、近似値であると見なす。このように、記述の範囲を僅かに上下に外れる値を使用して、値が範囲内にあるのとほぼ同じ結果が得られる。更に、これらの範囲の開示は、最小値と最大値の間の全ての値を含む連続的な範囲を意図している。
【0019】
別途指示のない限り、用語“感熱画像受容体要素”および“受容体要素”は、本発明の実施の形態を指すために、どちらを使用しても良い。
【0020】
用語“二重”は、基材(後述)の両側にそれぞれ乾燥画像受容層(後述)があるため、それぞれの側で感熱画像(透明ポリマーフィルムまたは色素像)を形成可能な、本発明の実施の形態を指すために使用するが、本発明の方法では、感熱画像を常に基材の両側に形成する必要はない。“二重”要素は“両面”要素としても知られている。
【0021】
ガラス転移温度(T)は、示差走査熱量測定法(DSC)および既知の手法、例えば、試料組成物と参照物質とを同じ温度に保ちながら一定速度で加熱し、両者の投入電力の差を測定する方法を用いて求められる。投入電力の差を温度の関数としてプロットし、曲線の勾配が鋭く変化する温度を一般に試料ポリマーまたは乾燥画像受容層組成物のTとする。
【0022】
別途指示のない限り、%固体または質量%は、特定の組成物または層の全乾燥重量に関連して示される。
【0023】
用語“感熱供与体要素”は、色素、インク、透明フィルム、または金属の熱転写に使用する要素(後述)を指すために用いる。それぞれの感熱供与体要素が1つの色素またはインクのみを転写する必要はない。
【0024】
用語“熱的に関連”は、色素、金属、または薄いポリマーフィルムを熱転写できる関係に置かれた2つの異なる要素を指すために用いる。このような関係では一般に、2つの要素を加熱しながら物理的に密着させる必要がある。
【0025】
用語“水性被覆”は、水性コーティング配合物を塗布または被覆した層を指すために用いる。
【0026】
別途指示のない限り、用語“ポリマー”および“樹脂”は、同じものを意味する。別途指示のない限り、用語“アクリルポリマー”は、有機骨格に沿って同じ繰り返し単位を含むホモポリマーと、骨格に沿って2つ以上の異なる繰り返し単位を含む共重合体の両方を含むことを意図している。
【0027】
用語“エチレン性不飽和重合性モノマー”は、重合して炭素原子から成る有機骨格鎖と、必要に応じて、有機骨格に結合した様々な側鎖とを形成する、1つ以上のエチレン性不飽和重合基(ビニル基など)を持つ有機化合物を指す。特定のエチレン性不飽和重合性モノマーの重合生成物を、有機骨格内において“繰り返し単位”と呼ぶ。本発明の実施において使用する水分散性アクリルポリマー内の様々な繰り返し単位は、あるポリマーの骨格に沿ってランダムに散らばっており、たとえ共通する繰り返し単位の塊が見られても、有機骨格に沿って意図的に形成したものではない。
【0028】
用語“水分散性の”および“水分散性”は、本発明の実施において使用する、アクリルポリマー、ポリエステル、および剥離剤に関連して使用する場合、これらのポリマーを製造する際、または支持体へ被覆する際に、これらが一般に水媒体中に分散する性質を指す。これは、アクリルポリマーおよびポリエステルが水分散液の形で一般的に供給および使用されることを意味する。これらは水媒体には溶解しないが、水媒体中では簡単に沈殿しない。これらの用語は、塗布および乾燥後のアクリルポリマーおよびポリエステルが、水媒体に再分散可能であると言っているのではない。正しくは、このようなアクリルポリマーおよびポリエステルは、支持体上で乾燥すると、水や水溶液に触れても一般的に損なわれることはない。
【0029】
用語“無空洞性(non-voided)”は、固体または液体が全く加えられておらず、あるいは気体を含む空隙のない、層または支持体を指すために用いる。
【0030】
用語“空洞性(voided)”は、当該技術で公知の微小空洞性ポリマーおよび細孔性材料を含む層または支持体を指すために用いる。
【0031】
<感熱画像受容体要素>
感熱画像受容体要素は、支持体(後述)の片側または両側(反対側)に乾燥画像受容層を含んでいる。色素、透明フィルム、または金属の転写が起きるよう、乾燥画像受容層は最外層である。乾燥画像受容層と支持体との間に1つ以上の中間層(後述)を設けても良い。
【0032】
画像受容層:
画像受容層は、感熱画像受容体要素の最外層であり、一般に25℃以上、70℃以下、典型的に35℃以上、70℃以下、更に35℃以上、60℃以下のTを持つ。乾燥画像受容層のTは、特定の感熱画像受容体要素のために設計した、必要とされるポリマー(1)および(2)(後述)と、任意の成分とを含む乾燥画像受容層配合物を、前述のようにDSCで求めて測定する。
【0033】
乾燥画像受容層の乾燥厚さは、0.5μm以上、5μm以下、典型的に1μm以上、3μm以下である。この乾燥厚さは、適当な走査型電子顕微鏡や別の適当な手段で10箇所以上を測定した平均値であり、層内の何箇所かが記載の平均乾燥厚さを超えていても良い。
【0034】
乾燥画像受容層は、本質的に、(1)1つ以上の水分散性アクリルポリマーと、(2)1つ以上の水分散性ポリエステルと、から成るポリマーバインダマトリックスを含む。1つ以上の水分散性アクリルポリマーは、化学反応した、または化学反応していない、ヒドロキシル、ホスホ、ホスホナート、スルホ、スルホナート、カルボキシ、またはカルボキシラート基、特に、化学反応した、または化学反応していない、カルボキシまたはカルボキシラート基をそれぞれ含んでいる。例えば、水分散性アクリルポリマーは、ヒドロキシルまたはカルボキシ基で架橋して(一般に、画像受容層配合物を支持体に塗布後)、アミノエステル、ウレタン、アミド、または尿素基を生成する。所望ならば、同じまたは異なる反応基を持つ、これらの水分散性アクリルポリマーの混合物を使用しても良い。
【0035】
このような水分散性アクリルポリマーは、生成する乾燥画像受容層が所望の特性(T、架橋性、転写した色素の耐褪色性、熱転写性)を持つような、1つ以上のエチレン性不飽和重合性モノマーから作ることができる。一般に、繰り返し単位を含む有用な水分散性アクリルポリマーは、主に(50モル%を超える)、所望の特性を生じる1つ以上のエチレン性不飽和重合性モノマーから誘導する。残りの繰り返し単位は、別のエチレン性不飽和重合性モノマーから誘導することができる。
【0036】
例えば、水分散性アクリルポリマーは、(a)非環式アルキルエステル、シクロアルキルエステル、またはアリールエステル基を含む、1つ以上のエチレン性不飽和重合性アクリラートまたはメタクリラートと、(b)1つ以上のカルボキシ含有またはスルホ含有エチレン性不飽和重合性アクリラートまたはメタクリラートと、(c)必要に応じて、スチレンまたはスチレン誘導体と、から誘導した繰り返し単位を含む。
【0037】
非環式アルキルエステル、シクロアルキルエステル、またはアリールエステル基は、置換または非置換であり、14以下の炭素原子を含んでいる。非環式アルキルエステル基は、直鎖または分枝、置換または非置換のアルキル基(アリール置換アルキル基、アリールオキシ置換アルキル基を含む)を含み、1以上、22以下の炭素原子を含むことができる。シクロアルキルエステル基は、一般に、環中に5以上、10以下の炭素原子を含み、置換または置換環状エステル基(アルキル置換環状エステル環を含む)であっても良い。有用なアリールエステル基としては、フェニルエステルおよびナフチルエステル基が挙げられ、これは、非置換であっても、芳香環上に1つ以上の基が置換していても良い。
【0038】
(a)エチレン性不飽和重合性アクリラートまたはメタクリラートの代表的な例としては、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸2−フェノキシエチル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、アクリル酸2−クロロエチル、2−プロピルアクリル酸ベンジル、2−ブロモアクリル酸n−ブチル、フェノキシアクリラート、およびフェノキシメタクリラートが挙げられる(但し、これらに限定しない)。特に有用な(a)エチレン性不飽和重合性アクリラートおよびメタクリラートとしては、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸t−ブチル、およびアクリル酸2−フェノキシエチルが挙げられる。
【0039】
代表的な(b)ヒドロキシ、ホスホ、カルボキシ、またはスルホ含有エチレン性不飽和重合性アクリラートおよびメタクリラートとしては、例えば、以下の化合物:アクリル酸、ナトリウム塩、メタクリル酸、カリウム塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ナトリウム塩、メタクリル酸2−スルホエチル、ナトリウム塩、メタクリル酸3−スルホプロピル、ナトリウム塩、および同様の化合物から誘導されたものであってよい。水分散性アクリルポリマーが、化学反応した、または化学反応していない、カルボキシまたはカルボキシラート基を含むよう、アクリル酸およびメタクリル酸、またはその塩が特に有用である。
【0040】
(c)エチレン性不飽和重合性モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−アセトキシスチレン、2−ブロモスチレン、α−ブロモスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−エトキシスチレン、3−トリフルオロメチルスチレン、4−ビニル安息香酸、ビニルベンジルクロリド、酢酸ビニルベンジル、ビニルトルエンが挙げられる(但し、これらに限定しない)。特にスチレンが有用である。これらの水分散性アクリルポリマー中では、(a)繰り返し単位が、一般に、全繰り返し単位の20モル%以上、99モル%以下を占め、より典型的には、ポリマー中の全繰り返し単位の30モル%以上、98モル%以下を占める。
【0041】
(b)繰り返し単位は、一般に、ポリマー中の全繰り返し単位の1モル%以上、10モル%以下、典型的に2モル%以上、4モル%以下を占める。
【0042】
一部の実施の形態では、水分散性アクリルポリマー中のペンダント酸基の量が少ない方が良いため、例えば、()繰り返し単位から誘導した繰り返し単位が、ポリマー中の全繰り返し単位の1モル%以上、3モル%以下を占める。
【0043】
(c)エチレン性重合性モノマーを用いて水分散性アクリルポリマーを調製する場合、これらのモノマーから誘導した繰り返し単位の含有量は、一般に、ポリマー中の全繰り返し単位の30モル%以上、80モル%以下、典型的に50モル%以上、70モル%以下である。
【0044】
本発明の実施において使用する水分散性アクリルポリマーは、入手し易い反応物と公知の付加重合条件および遊離基開始剤とを用いて調製できる。本発明で使用するいくつかの代表的な共重合体の調製は、後で実施例の前に示す。例えば、いくつかの有用な水分散性アクリルポリマーは、フジクラ(日本)、DSM、Eastman Kodak Companyから入手できる。本発明で有用な代表的なアクリル共重合体を後の実施例に示す。一般に、水分散性アクリルポリマーは水分散液として提供される。
【0045】
更に、有用な水分散性アクリルポリマーは、サイズ排除クロマトグラフィによる測定で、一般に5,000以上、100万以下の数平均分子量(M)を持つ。
【0046】
ポリマーバインダマトリックス中に存在する、(2)1つ以上の水分散性ポリエステルは、それぞれ、30℃以下のT、典型的に−10℃以上、30℃以下、更に0℃以上、20℃以下のTを持つ。一般に、水分散性ポリエステルは、被覆および乾燥すると一般に均一なフィルムとなる塗膜形成ポリマーである。このようなポリエステルは、水分散性を高めるため、スルホ、スルホナート、カルボキシル、またはカルボキシラート基などのいくつかの水分散性基を含んでいる。これらの水分散性ポリエステルの混合物も使用できる。有用な水分散性ポリエステルは、既知の二酸を適当なジオールと反応させて調製できる。多くの実施の形態において、ジオールは脂肪族グリコール、二酸は、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族二酸であり、これらを適当なモル比とする。二酸の混合物をグリコールの混合物と反応させても良い。水分散性を向上させるため、二酸またはジオールの一方または両方に、適当なスルホまたはカルボキシ基を加えても良い。市販の有用な水分散性ポリエステルを後の実施例に示す。有用な2つの水分散性ポリエステルは、イソフタル酸とジエチレングリコールとのコポリエステルと、イソフタル酸およびテレフタル酸の混合物とエチレングリコールおよびネオペンチルグリコールとから生成した共重合体である。
【0047】
本発明で有用な水分散性ポリエステルは、東洋紡、Eastman Chemical Companyなどのいくつかの製造業者から入手可能であり、既知の開始材料と重縮合条件を用いて簡単に調製することもできる。
【0048】
このように、一部の実施の形態において、感熱画像受容体要素は、(a)4以上の炭素原子を含む、非環式アルキル、シクロアルキル、またはアリールエステル基を含む、1つ以上のエチレン性不飽和重合性アクリラートまたはメタクリラートと、(b)1つ以上のカルボキシ含有またはスルホ含有エチレン性不飽和重合性アクリラートまたはメタクリラートと、(c)必要に応じて、スチレンまたはスチレン誘導体と、から誘導した繰り返し単位を含む水分散性アクリルポリマーを含み、(a)繰り返し単位は、全繰り返し単位の、10モル%以上、99モル%以下を占め、(b)繰り返し単位は、1モル%以上、10モル%以下を占める。
【0049】
例えば、乾燥画像受容層中の水分散性アクリルポリマーを、適当な架橋剤(後述)を用いてヒドロキシルまたはカルボキシ基で架橋し、アミノエステル、ウレタン、アミド、または尿素基を生成することができる。
【0050】
1つ以上の水分散性アクリルポリマーの含有量は、全乾燥画像受容層重量の55質量%以上、典型的に60質量%以上、90質量%以下である。
【0051】
更に、1つ以上の水分散性アクリルポリマーの、ポリマーバインダマトリックス中における水分散性ポリエステルに対する乾燥比は、1:1以上、典型的に4:1以上、20:1以下、更に1:1以上、20:1以下、あるいは4:1以上、15:1以下である。ポリマーバインダマトリックスは乾燥画像受容層の主要構造を形成し、前述の(1)および(2)ポリマー以外のポリマーは本質的に含まれない。しかし、別の目的のために、少量(全乾燥層重量の10質量%未満)の別のポリマーを乾燥画像受容層に加えても良い。
【0052】
乾燥画像受容層(およびその製造に使用する配合物。後述)には、様々な特性を与えるよう、または、特定の条件を強化するように意図した、様々な任意の成分を加えることができる。乾燥画像受容層は、アクリルポリマーを製造する際に、または、商業的利用のため水性配合物に懸濁させる際に、それと共に加えられた1つ以上の界面活性剤を含んでいても良い。
【0053】
一部の実施の形態において、乾燥画像受容層は、感熱画像形成の際に感熱供与体要素と本発明の感熱画像受容体要素の間の粘着性を低下させる、1つ以上の水分散性剥離剤を含んでいる。これらの化合物は一般に非水溶性であるが、画像受容層配合物(前述)中に一様に分散できるよう、水分散性である。更に、これらの化合物により、形成および乾燥の際、乾燥画像受容層に均一な薄膜が生成し易くなる。これらの化合物は、ポリマーでもポリマーでなくても良いが、一般にはポリマーである。このような化合物は、被覆して、乾燥画像受容層中で乾燥した後は、通常、再分散しない。
【0054】
有用な水分散性剥離剤としては、水分散性フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、変性シリコーン油(エポキシ変性、カルボキシ変性、アミノ変性、アルコール変性、フッ素変性、アルキルアリールアルキル変性など、また当該技術で知られているその他のもの)、ポリシロキサンが挙げられる(但し、これらに限定しない)。有用な変性ポリシロキサンとしては、米国特許第5,356,859号(Lumほか)に記載されているような、45を超えるアルコキシド単位を含む、少なくとも1つのアルキレンオキシドペンダント鎖を持つ水分散性ポリオキシアルキレン変性ジメチルシロキサングラフト共重合体が挙げられる(但し、これに限定しない)。その他の有用な剥離剤としては、Siltech Corporationから、Siltech(登録商標)の商品名でエマルションとして市販されている、架橋したアミノ変性ポリジメチルシロキサンが挙げられる。このような種類の有用な市販品を後の実施例にいくつか示す。
【0055】
乾燥画像受容層中の1つ以上の水分散性剥離剤の有用な量は、一般に、乾燥画像受容層の全重量の0.5質量%以上、10質量%以下、典型的に1質量%以上、5質量%以下である。水分散性剥離剤の量は、その化合物が供給される配合物またはエマルションの量ではなく、その化合物の量を指している。
【0056】
乾燥画像受容層には、残った架橋剤が含まれていても良い。画像受容層配合物に使用された架橋剤の大部分は感熱画像受容体要素の製造の間に反応するが、一部が乾燥画像受容層中に残ることがある。有用な架橋剤を後に示す。
【0057】
乾燥画像受容層は更に、水性被覆配合物用として当該技術で知られている、可塑剤、消泡剤、コーティング助剤、電荷調整剤、増粘剤または粘度調整剤、ブロッキング防止剤、UV吸収剤、合体剤、つや消しビーズ(有機つや消し粒子など)、酸化防止剤、安定剤、充填剤の1つ以上を含んでいても良い。これらの任意の追加物は、既知量を加えることができるが、通常、それぞれの含有量が全乾燥画像受容層重量の5質量%を超えることはない。
【0058】
中間層:
乾燥画像受容層は感熱画像受容体要素の最外層であるが、受容体要素に、乾燥画像受容層と支持体(後述)との間に配置した1つ以上の中間層が含まれていても良い。このような中間層は、帯電防止性、断熱性、接着性、画像耐久性の向上、またはこれらの性質の様々な組み合わせなど(但し、これらに限定しない)、様々な役割を果たすことができる。1つ以上の中間層は、一般に、水性配合物を用いて被覆するが、有機溶媒を用いて、あるいは支持体上に押出して被覆しても良い。
【0059】
例えば、“断熱層”、例えば、米国特許第7,695,762号(Sekiyaほか)の第8〜9段に記載されているような“断熱層”を加えて、高い断熱性とクッション性を与えることも可能である。このような断熱層には、親水性バインダなどの1つ以上のバインダ中に分散させた微粒子(例えば、米国特許第7,695,762号の第11〜12段に記載されているような)を加えても良い。このような微粒子は、多孔性または中空のポリマー粒子、その他同様の粒子材料、例えば、米国特許第7,906,267号(Shinoharaほか)、米国特許第7,968,496号(Iritaほか)、および欧州特許出願公開第2,042,334A2号(Koideほか)に記載のものでも良い。
【0060】
断熱層の代わりに、あるいは断熱層に加えて、別の有用な中間層を用いても良い。このような中間層は、溶媒に対する抵抗力を与え、色素拡散に対する障壁として働き、層間の接着性を高め、防幻性を与え、凹凸を小さくすることができる。また、米国特許第7,954,762号(前述)の10段に記載されているような、親水性バインダなどの適当なバインダ中に分散させた蛍光増白剤を含むものでも良い。
【0061】
更に、例えば、米国特許出願公開第2001/0034303号(Uenoほか)に記載されているように、クッション層として中間層を設け、印刷の際の感熱色素像転写再現性を高めることも可能である。
【0062】
その他の中間層、その組成、および目的は、例えば、米国特許第7,820,359号(Yoshitaniほか。特に[0111])に記載されている。
【0063】
支持体:
感熱画像受容体要素は、適当な支持体上に配置した上記の1つ以上の層を含んでいる。前述のように、これらの層は、支持体の片側または両側に配置することができる。最も外側の面から支持体へ、感熱画像受容体要素は、乾燥画像受容層と、必要に応じて1つ以上の中間層を含んでいる。しかし、多くの実施の形態では、乾燥画像受容層を、支持体の片側または両側に直接配置する。特に有用な支持体は、ポリマーフィルム、セルロース繊維を含む未加工紙ベース、合成ポリマー繊維を含む合成紙ベース、または樹脂コートセルロース紙ベースを含むものである。しかし、織物およびポリマーフィルムなど、別のベース支持体も使用できる。支持体は、本件に記載の層配合物を適切に塗布できるならば、感熱画像形成用途に一般的に使用されるどのような材料から成るものでも良い。
【0064】
紙ベースの片側または両側に使用する樹脂は、望ましい曲げ特性を持つよう、適当な乾燥厚さに調節した、ポリオレフィン類のような熱可塑性物質、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、これらの樹脂の共重合体、これらの樹脂の混合物などである。この樹脂層の表面粗さは、感熱画像形成プリンタにおいて望ましい運搬特性となるよう調節する。
【0065】
支持体は透明でも不透明でも、反射性でも無反射性でも良い。不透明支持体としては、普通紙、コート紙、樹脂コート紙(ポリオレフィンコート紙など)、合成紙、低密度発泡コア系支持体および低密度発泡コア系紙、印画紙支持体、溶融押出コート紙、およびポリオレフィンラミネート紙が挙げられる。
【0066】
紙には印画紙のような高級紙から新聞用紙のような低価格紙まで広範囲の紙が含まれる。ある実施の形態では、米国特許第5,288,690号(Warnerほか)および米国特許第5,250,496号(Warnerほか)に記載の、Ektacolor(登録商標)紙(Eastman Kodak Co.)を使用する。紙は、標準的な連続式長網抄紙機や、最新の製紙機械で製造する。当該技術において製紙用として知られているどのようなパルプを用いても良い。広葉樹さらし化学クラフトパルプは、明るく、滑らかな初期表面が得られ、強さを保ちつつ、形成が良好であるため、有用である。本発明で有用な紙のキャリパーは、一般に50μm以上、230μm以下、典型的に100μm以上、190μm以下であり、こうすると、画像形成した要素全体の厚さが、顧客の望む、また既存の装置での加工に好ましい範囲に入る。画像が見えにくくならないよう、紙は“滑らか”であっても良い。必要に応じて、疎水性(サイジング)、湿潤強度、および乾燥強度を与える化学添加剤を使用する。必要に応じて、TiO、タルク、雲母、BaSO、CaCO粘土などの無機充填材を用いて、光学的特性を良くし、コストを下げても良い。必要に応じて、色素、殺生物剤、加工用薬品も使用できる。更に、紙に、乾式または湿式カレンダー加工などの平滑化操作や、インラインまたはオフラインの紙塗工機に通してのコーティングを行っても良い。
【0067】
特に有用な支持体は、両側に樹脂を被覆した紙ベースである。2軸配向性ベース支持体は、紙ベースと、紙ベースの片側または両側にラミネートした2軸配向ポリオレフィンシート(典型的に、ポリプロピレン)とを含んでいる。市販の配向および非配向ポリマーフィルム、例えば、不透明の2軸配向ポリプロピレンまたはポリエステルなども使用できる。このような支持体には、不透過度を高めるため、顔料、空気細孔、または泡空隙を加えても良い。更に、支持体は、微孔性材料(ペンシルベニア州ピッツバーグ、PPG Industries, Inc.より Teslin(登録商標)の商標名で市販のポリエチレンポリマー含有材料など)、Tyvek(登録商標)合成紙(DuPont Corp.)、Duraform(登録商標)などの含浸紙、OPPalyte(登録商標)フィルム(Mobil Chemical Co.)、また、米国特許第5,244,861号に記載の複合フィルムを含んでいても良い。例えば、米国特許第4,377,616号(Ashcraftほか)、米国特許第4,758,462号(Parkほか)、米国特許第4,632,869号(Parkほか)に、有用な複合材シートが示されている。
【0068】
支持体は空洞性でも良い。これは、固体または液体を加えて形成した空洞、あるいは気体の入った“空洞”を意味する。完成した包装シートコア中に残留する、空洞形成粒子は、所望の形状と大きさの空隙を形成するため、直径が少なくとも0.1から10μmまでであり、一般に丸い形をしている。一部の実施の形態では、微小空洞性ポリマーフィルムが特に有用である。例えば、支持体として使用可能なこれらの特性を備えた商品のいくつかは、350K18(ExxonMobil製)、KTS−107(韓国、HSI製)として市販されている。
【0069】
2軸配向シートは、少なくとも1層を含むと述べたが、2軸配向シートの特性を変えるように働く追加の層を設けても良い。この層に、染料(tints)、帯電防止または導電材料、またはスリップ剤を加えて、独自の特性を持つシートを生成しても良い。2軸配向シートに表面層を形成しても良い。この層は文中で表皮層と呼ばれ、接着性を向上させると考えられ、あるいは、支持体および写真要素に面している。所望ならば、10層もの2軸配向押出を行って、いくつかの特定の望ましい特性を得ても良い。2軸配向シートは、同じポリマー材料の層で作っても、異なるポリマー組成物の層で作っても良い。
【0070】
有用な透明支持体は、ガラス、セルロース誘導体(セルロースエステル、三酢酸セルロース、二酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロースなど)、ポリエステル(ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリ(ブチレンテレフタレート)、これらの共重合体など)、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリスルホン、ポリアクリラート、ポリエーテルイミド、およびこれらの混合物から成る。文中で使用する用語“透明”は、可視光をあまり偏向または吸収することなく、透過させる能力を意味する。
【0071】
感熱画像受容体要素に使用する支持体の厚さは、50μm以上、500μm以下、典型的に75μm以上、350μm以下である。所望ならば、酸化防止剤、増白剤、帯電防止または導電剤、可塑剤、その他の既知の添加剤を支持体に加えても良い。
【0072】
基材(未加工紙原料など)中の有用な帯電防止剤としては、金属粒子、金属酸化物、無機酸化物、金属アンチモン酸塩、無機非酸化物、導電性ポリマー(その例は、米国特許出願公開第2011/0091667号(前述)に記載)が挙げられる(但し、これらに限定しない)。特に有用な帯電防止剤は無機または有機電解質である。アルカリ金属塩およびアルカリ土類塩(または電解質)(塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムなど)、およびポリ酸を含む電解質が有用である。例えば、アルカリ金属塩としては、ポリ酸のリチウム、ナトリウム、またはカリウム塩、例えば、ポリアクリル酸、ポリ(メタクリル酸)、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、ポリ(スルホン酸)、またはこれらの化合物の混合ポリマーの塩などが挙げられる。あるいは、未加工ベース支持体に導電性を与える、交換イオンを含むスメクタイト粘土などの様々な粘土類を、未加工ベース支持体に加えても良い。米国特許第4,542,095号(Steklenskiほか)および米国特許第5,683,862号(Majumdarほか)に記載の、重合したアルキレンオキシドとアルカリ金属塩との組み合わせなどの重合したアルキレンオキシドが、電解質として有用である。
【0073】
支持体(セルロース未加工ベース支持体など)中の帯電防止剤の含有量は、全支持体乾燥重量の0.5質量%以下、典型的に0.01質量%以上、0.4質量%以下である。
【0074】
別の実施の形態において、ベース支持体は、典型的にセルロースを含まず、1つ以上のフランジ層を接着したポリマーコアを備えた合成紙を含むものである。ポリマーコアは、ホモポリマー(ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、その他典型的な熱可塑性ポリマーなど)、それらの共重合体またはその混合物、あるいは、他のポリマー系(ポリウレタン、ポリイソシアヌレートなど)を含む。これらの材料は、引き延ばして空隙を生じさせたり、または、発泡剤を用いて、固体ポリマーマトリックスと気相の2相から成るものに膨らませてあっても良い。有機(ポリマー、繊維状)または無機(ガラス、セラミック、金属)由来の充填剤の形で、他の固体材料が存在しても良い。
【0075】
更に別の実施の形態において、支持体は、セルロースを含まず、発泡ポリマーコアまたは1つ以上のフランジ層を接着した発泡ポリマーコアを備えた合成紙を含むものである。ポリマーコアでの使用について述べたポリマーも、当該技術で公知の多くの機械的、化学的、または物理的手段で行われる、発泡ポリマーコア層の製造に使用できる。
【0076】
多くの実施の形態では、ポリエチレン、ポリプロピレン、その混合物、その共重合体などのポリオレフィンを、化学発泡剤と共に発泡ポリマーコア中のマトリックスポリマーとして使用する。化学発泡剤は、重炭酸ナトリウムおよびそれとクエン酸との混合物、有機酸塩、アゾジカルボンアミド、アゾビスホルムアミド、アゾビスイゾブチロニトリル、ジアゾアミノベンゼン、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、N,N’−ジニトロソペンタメチルテトラミン(DNPA)、水素化ホウ素ナトリウム、当該技術で良く知られるその他の発泡剤などである。有用な化学発泡剤は、重炭酸ナトリウム/クエン酸混合物、アゾジカルボンアミドであるが、他のものも使用できる。これらの発泡剤を、発泡助剤、核生成剤、架橋剤と共に使用しても良い。
【0077】
感熱画像受容体要素が支持体の片側だけに乾燥画像受容層を備えている場合、適当なポリマーを用いて支持体の“裏側”(非画像形成面)にスリップ層またはアンチカール層を塗布すると有益である。適当なポリマーとしては、アクリラートまたはメタクリラートポリマー、ビニル樹脂(塩化ビニルと酢酸ビニルから誘導した共重合体など)、ポリ(ビニルアルコール−コ−ビニルブチラール)、ポリ酢酸ビニル、酢酸セルロース、エチルセルロースなどが挙げられる。更に、裏側のスリップ層に、当該技術で公知の1つ以上の適当な帯電防止剤または抗伝導剤(anti-conductive agents)を加えても良い。このスリップ層には更に、例えば、米国特許第5,866,506号(Tuttほか)に記載されているような、油類、半結晶性有機固体(蜜ろうなど)、ポリ(ビニルステアリル)、ペルフルオロアルキルエステルポリエーテル、ポリカプロラクトン、シリコーン油、これらの組み合わせなどの滑剤を加えても良い。有用なアンチカール層は、ポリエチレンとポリプロピレンとの混合物など、1つ以上のポリオレフィンを含むものである。
【0078】
<画像受容体要素の製造法>
本発明の感熱画像受容体要素は、支持体の少なくとも一方の側に水性画像受容層配合物を塗布して製造し、一部の実施の形態では、同じ、または異なる水性受容層配合物を支持体の反対側に塗布して、二重感熱画像受容要素とする。
【0079】
塗布した水性画像受容層配合物は、本質的に前述の(1)および(2)ポリマー成分と、任意の追加物、例えば、水分散性アクリルポリマー(前述)のための界面活性剤(前述)、1つ以上の剥離剤、1つ以上の架橋剤(後述)、前述のその他の追加物などから成る、ポリマーバインダ組成物を含む。このような配合物中における水分散性アクリルポリマーと水分散性ポリエステルの重量比は、1:1以上、20:1以下、典型的に4:1以上、15:1以下である。これらの配合物は、適当な装置および条件を用いて塗布する方法、例えば、ホッパーコーティング、カーテンコーティング、ロッドコーティング、グラビアコーティング、ローラーコーティング、浸漬コーティング、スプレーコーティングなど、有用な手法を用いて支持体に塗布する(但し、これらに限定しない)。支持体材料は先に述べたが、画像受容層配合物を塗布する前に、支持体に、酸エッチング、火炎処理、コロナ放電処理、グロー放電処理など、適当な手法を用いて処理を行って接着性を高めても良く、あるいは、適当な下塗り層で処理しても良い。
【0080】
配合物を塗布した後、20℃以上、100℃以下の適当な条件下、典型的に60℃以上の温度で乾燥する。乾燥は、所望ならばオーブンまたは乾燥室内で、特に、製造装置または生産ライン内で行う。乾燥は、水性画像受容層配合物の架橋を、特に、適当な架橋剤を使用する、水分散性アクリルポリマー中の反応基による架橋を促進する。架橋により、支持体や、乾燥画像受容層の下に設けた中間層への乾燥画像受容層の接着性が向上する。
【0081】
所望ならば、画像受容層配合物を乾燥した後、追加熱処理を行って、水分散性アクリルポリマーの少なくとも一部の架橋を促す。この熱処理は、オーブンなどの適当な装置を用いた適当な方法で、70℃以上の温度、画像受容層配合物中の95%以上の水分の除去に必要な時間、行う。
【0082】
水性画像受容層配合物に加える有用な架橋剤は、ポリマーバインダマトリックスに組み込まれた水分散性アクリルポリマーの特定の反応基と反応するように選ぶ。例えば、反応性カルボキシルおよびカルボキシラート基では、有用な架橋剤はカルボジイミドおよびアジリジンである。
【0083】
水性画像受容層配合物中の1つ以上の架橋剤の含有量は、配合物中の水分散性アクリルポリマーの反応基に対して、本質的に1:1モル比以下である。一般に、配合物には、僅かに過剰または過剰でない量の架橋剤を用いる。一般に、有用な架橋剤としては、メラミンホルムアルデヒド樹脂、グリコールウリル(glycoluril)ホルムアルデヒド樹脂、ポリカルボン酸および無水物、ポリアミン、エピハロヒドリン、ジエポキシド、ジアルデヒド、ジオール、カルボン酸ハロゲン化物、ケテン、アジリジン、カルボジイミド、イソシアナート、これらの混合物などの有機化合物が挙げられる(但し、これらに限定しない)。
【0084】
水性画像受容層配合物は一般に、支持体表面の大部分または全体を覆うよう、均一に支持体に塗布するが、所定のパターンの乾燥画像受容層ができるように、支持体に塗布および乾燥することもある。
【0085】
水性画像受容層配合物は、支持体の片側または両側に直接塗布できるが、一部の実施の形態では、先に述べたように、1つ以上の中間層配合物を支持体の片側または両側に直接塗布して、1つ以上の中間層を形成しても良い。1つ以上の中間層配合物を塗布および乾燥して1つ以上の中間層を形成した後、支持体の片側または両側の1つ以上の中間層に水性画像受容層配合物を塗布する。例えば、クッション性、断熱性、帯電防止性、その他望ましい特性を得るための適当な配合物を用いて中間層を被覆し、製造可能性、要素安定性、感熱画像転写性、画像安定性を高める。
【0086】
中間層配合物も、一般に、様々なポリマー成分と任意の充填剤、界面活性剤、帯電防止剤、その他所望の成分を、水または水/アルコール溶媒中に分散または溶解させた水性組成物として塗布する。前述のように、中間層配合物は適当な手法を用いて塗布する。
【0087】
<感熱供与体要素>
本発明の感熱画像受容体要素と共に感熱供与体要素を使用して、色素、透明ポリマーフィルム、または金属効果を熱転写することができる。このような感熱供与体要素は、一般に、インクまたは色素含有層(しばしば、感熱色素供与体層としても知られている)、熱によって転写可能なポリマーフィルム、あるいは、金属粒子またはフレークから成る層をその上に備えた支持体を含む。
【0088】
感熱供与体要素には、熱の作用によって感熱画像受容体要素の乾燥画像受容層へ転写可能であれば、どのようなインクまたは色素を使用しても良い。感熱供与体要素は、例えば、米国特許第4,916,112号(Henzelほか)、米国特許第4,927,803号(Baileyほか)、米国特許第5,023,228号(Henzel)に記載されている。感熱色素転写印刷法では、シアン、マゼンタ、またはイエローのインクまたは色素の逐次的繰り返し領域(例えば、パッチ)を被覆したポリ(エチレンテレフタレート)支持体を含む、感熱供与体要素を使用する。各色についてインクまたは色素転写工程を逐次的に行うと、感熱画像受容体要素の片側または両側に多色のインクまたは色素転写画像が得られる。支持体は、標識、識別、または文字列のための黒色インクを含んでいても良い。
【0089】
感熱供与体要素はまた、感熱画像受容体要素へ(感熱画像受容体要素の、転写された色素像の上に、または色素のない部分に)熱転写可能な透明保護層(“ラミネート”)を含んでいても良い。この工程を1色だけを用いて行うと単色のインクまたは色素転写画像が得られる。
【0090】
感熱供与体要素は、通例、色素含有層をその上に備えた支持体を含んでいる。色素含有層には、熱の作用によって乾燥画像受容層へ転写可能であれば、どのような色素を用いても良い。米国特許第7,160,664号(Goswamiほか)に記載のマゼンタ色素などの拡散性染料で、特に良い結果が得られている。
【0091】
感熱供与体要素は、感熱印刷に適した色素を含む単色領域(パッチ)または多色領域(パッチ)を含む。ここでいう“色素”は、1つ以上の染料、顔料、着色料、またはこれらの組み合わせであり、必要に応じて、当業者に知られているバインダまたはキャリア中に含まれている。例えば、色素層は、マゼンタ染料の組合せを含み、更に、少なくとも1つのビス−ピラゾロン−メチン染料と少なくとも1つの別のピラゾロン−メチン染料を含むイエロー色素ドナーパッチ、少なくとも1つのインドアニリンシアン染料を含むシアン色素ドナーパッチを含むことができる。色素は、色相、耐光性、色素含有層バインダおよび乾燥画像受容層バインダへの色素の溶解性を考慮して選ぶ。
【0092】
更に、有用な色素の例は、米国特許第4,541,830号(Hottaほか)、米国特許第4,698,651号(Mooreほか)、米国特許第4,695,287号(Evansほか)、米国特許第4,701,439号(Evansほか)、米国特許第4,757,046号(Byersほか)、米国特許第4,743,582号(Evansほか)、米国特許第4,769,360号(Evansほか)、米国特許第4,753,922号(Byersほか)、米国特許第4,910,187号(Satoほか)、米国特許第5,026,677号(Vanmaele)、米国特許第5,101,035号(Bachほか)、米国特許第5,142,089号(Vanmaele)、米国特許第5,374,601号(Takiguchiほか)、米国特許第5,476,943号(Komamuraほか)、米国特許第5,532,202号(Yoshida)、米国特許第5,635,440号(Eguchiほか)、米国特許第5,804,531号(Evansほか)、米国特許第6,265,345号(Yoshidaほか)、米国特許第7,501,382号(Fosterほか)、米国特許出願公開第2003/0181331号(Fosterほか)、米国特許出願公開第2008/0254383号(Soejimaほか)に見られる。
【0093】
色素を単独で、または組み合わせて使用すると、単色の色素供与体層または黒色の色素供与体層が得られる。転写して得られる色素像の色素が0.05g/mから1g/mとなるような量で、色素を供与体転写要素に使用する。
【0094】
色素と任意の追加物は通常、色素含有層中の適当なバインダに加えられる。このようなバインダは当該技術で良く知られており、セルロースポリマー、様々な種類のポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、スチレン含有ポリオール樹脂、これらの組み合わせ、更に、例えば、米国特許第6,692,879号(Suzukiほか)、米国特許第8,105,978号(Yoshizawaほか)、米国特許第8,114,813号(Yoshizawaほか)、米国特許第8,129,309号(Yokozawaほか)、米国特許出願公開第2005/0227023号(Arakiほか)、米国特許出願公開第2009/0252903号(Teramaeほか)に記載のものが挙げられる。
【0095】
色素含有層には更に、界面活性剤、酸化防止剤、UV吸収剤、非転写性着色料などの様々な追加物を、当該技術で公知の量で加えても良い。例えば、有用な酸化防止剤または光安定剤が、例えば、米国特許第4,855,281号(Byers)、米国特許出願公開第2010/0218887号、米国特許出願公開第2011/0067804号(いずれもVreeland)に記載されている。Vreelandの文献に記載されているヒンダードアミンから誘導したN−オキシラジカルは、転写した色素層中でも、転写色素像に塗布した保護オーバーコート中でも、熱転写色素像の光安定剤として特に有用である。
【0096】
ポリマーフィルム(“ラミネート”)は、供与体転写要素から感熱画像受容体要素へ熱転写することができる。このようなポリマーフィルムの組成物は、例えば、米国特許第6,031,556号(Tuttほか)、米国特許第6,369,844号(Neumannほか)に記載されているように、当該技術で知られている。前述のVreelandの2つの文献は、保護ポリマーフィルム、その組成、および使用について述べている。
【0097】
一部の実施の形態において、感熱供与体要素は、感熱画像受容体要素へ熱転写可能な金属または金属塩の層を含んでいる。このような金属は、金属効果、ハイライトを生じ、または、後に転写される色素像のアンダーコートとなる。転写可能な有用な金属としては、金、銅、銀、アルミニウム、その他、後に述べるものが挙げられる(但し、これらに限定しない)。このような感熱供与体要素は、例えば、米国特許第5,312,683号(Chouほか)、米国特許第6,703,088号(Hayashiほか)に記載されている。
【0098】
感熱供与体要素の裏側には、例えば、前述のVreelandの文献に記載されているような、“スリップ”または“滑性”層があっても良い。
【0099】
<画像形成部品および感熱画像形成>
熱転写手段を用いて1つ以上の側に熱転写を行う、または画像(例えば、色素、金属、または透明フィルム)を形成するため、感熱画像受容体要素を、1つ以上の感熱供与体要素と組み合わせて、または“熱的に関連”させて、本発明の部品中で使用する。感熱画像受容体要素の同じ側、反対側、または両側に複数の熱転写を行うと、感熱画像受容体要素の基材の片側または両側に、多色画像、ポリマーフィルム、または金属画像ができる。前述のように、基材の片側または両側に金属の層またはパターンを形成しても良い。更に、保護ポリマーフィルム(トップコート)を基材の片側または両側に塗布して、例えば、基材の片側または両側の多色画像を保護オーバーコートまたは“ラミネート”で覆うことができる。
【0100】
熱転写は、一般に、感熱供与体要素と本発明の感熱画像受容体要素を画像の形に加熱する工程と、色素、金属、または透明フィルム画像を、前述の感熱画像受容体要素に転写して、色素、金属、またはポリマーフィルム画像を形成する工程とを含む。このように、一部の実施の形態では、色素像とポリマーフィルムの両方を、1つ以上の感熱供与体要素から、感熱画像受容体要素の乾燥画像受容層へ画像の形に転写する。
【0101】
シアン、マゼンタ、イエローの色素(必要に応じて、ブラックの染料または顔料)の逐次的な繰り返し領域を被覆したポリ(エチレンテレフタレート)支持体を含む感熱色素供与体要素を使用し、各色について色素転写工程を逐次的に行うと、感熱画像受容体要素の支持体の片側または両側に、3色(または4色)の色素転写画像が得られる。同じまたは異なる工程で、ポリマーフィルムの熱転写を行い、支持体の片側または両側に保護オーバーコートを形成しても良い。前述のように、感熱供与体要素を用いて、感熱画像転写要素の片側または両側に金属を転写しても良い。
【0102】
インク、色素、金属、またはポリマーフィルムの感熱供与体要素から感熱画像受容体要素への転写に使用可能なサーマルプリントヘッドは市販されている。例えば、富士通サーマルヘッド(FTP−040 MCS001)、TDKサーマルヘッド(F415 HH7−1089)、または Rohmサーマルヘッド(KE 2008−F3)が使用できる。あるいは、転写のための別の公知のエネルギー源、例えば、英国特許出願公開第2,083,726A号に記載のレーザーなども使用できる。
【0103】
感熱供与体要素の色素含有層、ポリマーフィルム、または金属が、乾燥画像受容層と熱的に関連し、または密接に接触するよう、画像形成部品は一般に、(a)感熱供与体要素と、(b)感熱供与体要素と重なる関係にある、本発明の感熱画像受容体要素と、を含んでいる。画像形成は、この部品を用い、既知の工程を用いて行うことができる。
【0104】
3色画像を得る場合、サーマルプリントヘッドまたはレーザーで熱を加える間、3つの異なる時間にこの画像形成部品を形成する。第1の色素を第1の感熱供与体要素から転写した後、この要素を剥がし取る。次に、第2の感熱供与体要素(または、異なる色素領域を備えた同じ感熱供与体要素の別の領域)を乾燥画像受容層と見当合わせして、この工程を繰り返す。同じ方法で、3番目以降の色画像を得る。金属層(またはパターン)あるいは透明ラミネート保護フィルムも同様に得られる。
【0105】
画像形成法は、シングルヘッド印刷装置またはデュアルヘッド印刷装置(どちらかのヘッドを用いて支持体の片側または両側に画像形成する)のいずれかを用いて行う。本発明の二重感熱画像受容体要素は、画像形成前、形成中、または形成後に、キャプスタンローラを用いて印刷操作中に移動させても良い。一部の例では、二重感熱画像受容体要素を回転カルーセル内に設置し、これを用いて、二重感熱画像受容体要素のどちらかの側を、プリントヘッドと画像形成に関係する位置に置く。このようにして、透明フィルム、金属パターンまたは層を、様々な転写色画像と共に、片側または両側に転写する。
【0106】
本発明の二重感熱画像受容体要素は、更に、アルミニウム、銅、銀、金、チタンニッケル、鉄、クロム、または亜鉛など(但し、これらに限定しない)の金属の均一な、またはパターン様の転写を、基材の片側または両側に受けることができる。このような金属化“層”は、単色または多色画像上に置いても、あるいは、金属化層が唯一の“画像”であっても良い。金属含有粒子も転写できる。金属または金属含有粒子は、ポリマーバインダと共に、またはこれを用いずに転写する。例えば、米国特許第5,312,683号(前述)に記載されているように、熱軟化性バインダに加えた金属フレークを転写する。アルミニウム粉末の転写は、米国特許第6,703,088号(前述)に記載されている。必要ならば、複数の金属を熱転写して、独特の金属効果を生じさせても良い。例えば、1つの金属を転写して均一な金属層を形成し、第2の金属を転写して、均一な金属層上に所望のパターンを形成する。転写用の金属または金属含有粒子は、感熱供与体要素内では、これらの材料から成るリボンまたはストリップとなっていても良い。
【0107】
本発明では、少なくとも次のような実施の形態およびその組み合わせを提示するが、本明細書の内容から当業者が認識するように、態様の別の組み合わせも本発明に含まれるものとする。
1.支持体と、支持体の少なくとも一方の側に、25℃以上のTを持つ乾燥画像受容層と、を含む感熱画像受容体要素であって、
この乾燥画像受容層は、感熱画像受容体要素の最外層であって、0.5μm以上、5μm以下の乾燥厚さを持ち、本質的に、
(1)化学反応した、または化学反応していない、ヒドロキシル、ホスホ、ホスホナート、スルホ、スルホナート、カルボキシ、またはカルボキシラート基を含む水分散性アクリルポリマーと、
(2)30℃以下のTを持つ水分散性ポリエステルと、
から成るポリマーバインダマトリックスを含み、
水分散性アクリルポリマーの含有量は、全乾燥画像受容層重量の55質量%以上であり、水分散性ポリエステルに対する乾燥比は、1:1以上、例えば、1:1以上、20:1以下である。
2.実施の形態1の感熱画像受容体要素であって、水分散性アクリルポリマーは、化学反応した、または化学反応していない、カルボキシまたはカルボキシラート基を含む。
3.実施の形態1または2の感熱画像受容体要素であって、乾燥画像受容層は、35℃以上、70℃以下のTを持つ。
4.実施の形態1から3のいずれかの感熱画像受容体要素であって、水分散性ポリエステルは、−10℃以上、30℃以下のTを持つ。
5.実施の形態1から4のいずれかの感熱画像受容体要素であって、水分散性アクリルポリマーの含有量は、全乾燥画像受容層重量の60質量%以上、90質量%以下であり、ポリマーバインダマトリックス中における水分散性アクリルポリマーの水分散性ポリエステルに対する重量比は、4:1から15:1までである。
6.実施の形態1から5のいずれかの感熱画像受容体要素であって、水分散性アクリルポリマーは、(a)4以上の炭素原子を含む、非環式アルキルエステル、シクロアルキルエステル、またはアリールエステル基を含む、1つ以上のエチレン性不飽和重合性アクリラートまたはメタクリラートと、(b)1つ以上のカルボキシ含有またはスルホ含有エチレン性不飽和重合性アクリラートまたはメタクリラートと、(c)必要に応じて、スチレンまたはスチレン誘導体と、から誘導した繰り返し単位を含み、
(a)繰り返し単位は、全繰り返し単位の20モル%以上、99モル%以下を占め、(b)繰り返し単位は、1モル%以上、10モル%以下を占める。
7.実施の形態1から6のいずれかの感熱画像受容体要素であって、水分散性アクリルポリマーは、ヒドロキシルまたはカルボキシ基で架橋して、アミノエステル、ウレタン、アミド、または尿素基を形成する。
8.実施の形態1から7のいずれかの感熱画像受容体要素であって、支持体は、ポリマーフィルム、または樹脂被覆セルロース紙ベースである。
9.実施の形態1から8のいずれかの感熱画像受容体要素であって、支持体は、微小空洞性ポリマーフィルムである。
10.実施の形態1から8のいずれかの感熱画像受容体要素であって、支持体は、セルロース紙ベースまたは合成紙ベースを含み、支持体は、必要に応じて導電剤を含む。
11.支持体の両側に、同じ、または異なる乾燥画像受容層を含む、二重感熱画像受容体要素である、実施の形態1から10のいずれかの感熱画像受容体要素。
12.実施の形態1から11のいずれかの感熱画像受容体要素であって、乾燥画像受容体層は、支持体の片側または両側に直接配置されている。
13.支持体と、支持体の片側または両側の乾燥画像受容層との間に、中間層を更に含む、実施の形態1から12のいずれかの感熱画像受容体要素。
14.支持体と、支持体の片側または両側に、35℃以上、60℃以下のTを持つ乾燥画像受容層と、を含む感熱画像受容体要素であって、
この乾燥画像受容層は、感熱画像受容体要素の最外層であって、1μm以上、3μm以下の乾燥厚さを持ち、本質的に、
(1)化学反応した、または化学反応していない、カルボキシまたはカルボキシラート基を含む水分散性アクリルポリマーと、
(2)0℃以上、20℃以下のTを持つ水分散性塗膜形成ポリエステルと、
から成るポリマーバインダマトリックスを含み、
水分散性アクリルポリマーは、(a)4以上の炭素原子を含む、非環式(acrylic)アルキルエステル、シクロアルキルエステル、またはアリールエステル基を含む、1つ以上のエチレン性不飽和重合性アクリラートまたはメタクリラートと、(b)1つ以上のカルボキシ含有またはカルボン酸塩含有エチレン性不飽和重合性アクリラートまたはメタクリラートと、(c)必要に応じて、スチレンまたはスチレン誘導体と、から誘導した繰り返し単位を含み、
(a)繰り返し単位は、全繰り返し単位の20モル%以上、99モル%以下を占め、(b)繰り返し単位は、1モル%以上、10モル%以下を占め、
水分散性塗膜形成ポリエステルは水分散性基を含み、
水分散性アクリルポリマーの含有量は、全乾燥画像受容層重量の60質量%以上、90質量%以下であり、ポリマーバインダマトリックス中における水分散性ポリエステルに対する乾燥比は、4:1以上、20:1以下である。
15.感熱供与体要素と熱的に関連した、実施の形態1から14のいずれかの感熱画像受容体要素を含む画像形成部品。
16.実施の形態1から14のいずれかの感熱画像受容体要素の製造法であって、
水性画像受容層配合物を支持体の片側または両側に塗布する工程と、
水性画像受容層配合物を乾燥させて、支持体の片側または両側に乾燥画像受容層を形成する工程と、
を含み、
水性画像受容層配合物は、本質的に、
(1)化学反応した、または化学反応していない、ヒドロキシル、ホスホ、ホスホナート、スルホ、スルホナート、カルボキシ、またはカルボキシラート基を含む水分散性アクリルポリマーと、
(2)30℃以下のTを持つ水分散性ポリエステルと、
から成るポリマーバインダ組成物を含み、
水分散性アクリルポリマーの含有量は、生成する全乾燥画像受容層重量の55質量%以上であり、ポリマーバインダマトリックス中における水分散性ポリエステルに対する乾燥比は、1:1以上、20:1以下である。
17.実施の形態16の製造法であって、水性画像受容層配合物は、水分散性アクリルポリマーのための架橋剤を更に含んでいる。
18.実施の形態16または17の製造法であって、水性画像受容層配合物を70℃以上の温度で熱処理する。
19.実施の形態16から18のいずれかの製造法であって、水性画像受容層配合物を支持体に塗布し、乾燥させて、所定のパターンの乾燥画像受容層を形成する。
20.実施の形態16から19のいずれかの製造法であって、同じ水性画像受容層配合物を支持体の両側に塗布する。
21.感熱画像の製造法であって、透明ポリマーフィルム、1つ以上の色素像、または透明ポリマーフィルムと1つ以上の色素像の両方を、感熱供与体要素から、実施の形態1から14のいずれかの乾燥感熱画像受容要素の画像受容層へ、画像の形に転写する工程を含む。
【実施例】
【0108】
以下の実施例は、本発明の実施を詳しく説明するために提示するものであって、いかなる方法によっても制限しようと意図するものではない。
【0109】
感熱画像受容体要素中において評価するため、様々な共重合体を調製した。これらの共重合体は、以下の手順および成分を用いて調製した。エチレン性不飽和重合性モノマーのエマルションは、以下の組成で調製した。
モノマーエマルション:
モノマー類(表I) 400g
水 395g
Rhodacal(登録商標)A-246L 界面活性剤(Solvay Rhodia) 5g
反応器の内容物:
水 195g
Rhodacal(登録商標)A-246L 界面活性剤 5g
45% KOH 1.54g
“ACVA” 2g
【0110】
重合工程は次のように行った。
1)水とRhodacal(登録商標)A-246L 界面活性剤とを反応器に加え、この混合物を75℃に加熱する。
2)次の表Iに示すエチレン性不飽和重合性モノマーを、それぞれのモノマーに対する開始モル%で用いて、エマルションを調製する。
3)アゾビスシアノ吉草酸(ACVA)遊離基開始剤と、45質量%の水酸化カリウムを反応器に加える。
4)6時間かけてモノマーエマルションを反応器へ量り入れる。
5)反応混合物を75℃で更に3時間保持した後、反応混合物を25℃まで冷やす。
6)1N KOHを用いて、反応混合物を所望のpHに調整する。
【0111】
【表1】
【0112】
【表2】
【0113】
表Iに示したエチレン性不飽和重合性モノマーを用いて調製した共重合体(エマルションとして)の化学的組成および特性を次の表IIに示す。
【0114】
【表3】
【0115】
<本発明の実施例および比較例:感熱画像受容体要素の製造>
乾燥被覆率が2.2g/mの色素像受容層ができるように設計した水性画像受容層配合物を用いて、全ての対照例および本発明の実施例I1〜I58を調製した。本発明の実施例I59〜I73では、乾燥被覆率が1.1g/mの画像受容層ができるように、水性画像受容層配合物を設計した。更に、全ての水性画像受容層配合物は、約10%固体を含むように設計した。これには、次の表IIIのそれぞれの配合物について示された、全ての固体成分が含まれる。
【0116】
対照のC1配合物では、固体の全てが水分散性ポリエステル(Vylonal(登録商標)MD-1480、東洋紡より、25質量%水分散液として提供)であり、これが、生成する色素像受容層中の固体の100%である。対照C1画像受容層配合物は、軽くかき混ぜながら、水に水分散性ポリエステルのみを分散させて調製した。対照C2画像受容層配合物は、固体の98%を同じ水分散性ポリエステル分散液から、また、固体の2%を剥離剤(Siltech(登録商標)E2150)から得て、同様に調製した。
【0117】
対照配合物C3〜C31と、本発明の配合物I1〜I29を調製するため、剥離剤(35質量%分散液)を約258gの水で希釈後、軽くかき混ぜながらアクリルポリマーエマルション(%固体については表II参照)をこの混合物に加えた。対照配合物C3〜C31は、水分散性ポリエステルを含まなかった。
【0118】
本発明の配合物I1〜I29のそれぞれで、生成した画像受容層は、30質量%の水分散性ポリエステル(Vylonal(登録商標)MD-1480、25質量%水分散液として東洋紡より提供)と、67質量%のアクリルポリマーと、3質量%の剥離剤(Siltech(登録商標)E2150、35質量%水分散液としてSiltechより提供)を含んでいた。
【0119】
本発明の配合物I30〜I58のそれぞれで、生成した画像受容層は、30質量%の水分散性ポリエステル(Vylonal(登録商標)MD-1480、25質量%水分散液として東洋紡より提供)と、64質量%のアクリルポリマーと、4質量%の架橋剤(カルボジイミドXL−1、40質量%水分散液としてDSMより提供)と、2質量%の剥離剤(Siltech(登録商標)E2150)を含んでいた。本発明の配合物I30〜I58を調製するため、剥離剤(35質量%分散液)を約243gの水で希釈後、軽くかき混ぜながら、約42gのポリエステル分散液(25質量%分散液)をこの混合物に加え、次に、アクリルポリマー(%固体については表II参照)とカルボジイミド架橋剤XL−1(40質量%分散液)を加えた。
【0120】
本発明の配合物I59〜I73のそれぞれで、生成した画像受容層は、15質量%の水分散性ポリエステル(Vylonal(登録商標)MD-1480、25質量%水分散液として東洋紡より提供)と、32質量%のアクリルポリマーと、1質量%の架橋剤(カルボジイミドXL−1、40質量%水分散液としてDSMより提供)と、1質量%の剥離剤(Siltech(登録商標)E2150)とを含んでいた。
【0121】
本発明の配合物I74およびI75のそれぞれで、生成した画像受容層は、それぞれ、9質量%および6.8質量%の水分散性ポリエステル(Vylonal(登録商標)MD-1480、25質量%水分散液として東洋紡より提供)と、80.8質量%および81.2質量%のアクリルポリマーと、9質量%および11質量%の架橋剤(カルボジイミドXL−1、40質量%水分散液としてDSMより提供)と、1.2質量%および1質量%の剥離剤(Siltech(登録商標)E2150)を含んでいた。
【0122】
紙原料ベースの反対側に微小空洞層を備えた基材(米国、ExxonMobil製の、ExxonMobil Vulcanラミネート)から成る試料上に、それぞれの色素像受容層配合物をマシンコートし、乾燥させて、生成する乾燥画像受容層の乾燥被覆率を1.32g/mとした。どの感熱画像受容要素にも、支持体と乾燥画像受容層との間に中間層は無かった。
【0123】
紙原料ベースの反対側に微小空洞層を設けた基材(韓国、HSI製のKTS-107ラミネートなど)の試料に、それぞれの色素像受容層配合物をマシンコートし、乾燥して、生成する乾燥画像受容層の乾燥被覆率を2.2(または1.1)g/mとした。どの感熱画像受容要素にも、支持体と乾燥画像受容層との間に中間層は無かった。
【0124】
対照および本発明の色素像受容層配合物と、生成した感熱画像受容体要素のそれぞれについて、以下のようにして様々な特性を評価した。
【0125】
コーティング品質:
コーティング品質を目視検査し(拡大せず)、3段階で評価した。目視評価“不良”は、被覆および乾燥した画像受容層にコーティングラインが見え、ちりめんじわ(まだら)が非常に目立ち、不均一であったことを意味する。目視評価“OK”は、多少のコーティングラインとちりめんじわが見えたが、乾燥画像受容層の品質は許容範囲であったことを意味する。目視評価“良”は、乾燥画像受容層に非常に均一な光沢があり、滑らかで、目立ったコーティングラインやちりめんじわがなかったことを意味する。
【0126】
供与体−受容体粘着性:
“印刷”後、または、供与体要素と感熱画像受容体要素から成る感熱部品の製造後に、供与体−受容体粘着性を目視で評価した(拡大せず)。評価“不良”は、感熱色素転写(印刷)の際に、供与体要素中の色素供与体層が、一般に、供与体要素支持体から剥がれたことを意味する。評価“OK”は、色素供与体層は供与体要素支持体から剥がれなかったが、プリンタにチャタリングノイズ(chattering noise)があり、生成した熱転写色素像の一部に多少のチャタリングライン(chattering line)があったことを意味する。評価“良”は、生成した熱転写色素像に、粘着による欠陥が見られなかったことを意味する。
【0127】
無彩色スケール変化:
高品質のハイライトプリントでは、光学濃度の滑らかな段階的変化が重要である。このため、ハイライト印刷の場合などにおける、低光学濃度領域での無彩色スケール変化の指標を目視評価した(拡大せず)。これは、最小濃度(Dmin、またはエネルギーステップ18)から最大濃度(Dmax>1.5、またはエネルギーステップ1)まで、18階調で光学濃度を漸増させて、特定の画像が消失し、または光学濃度の不連続が認められたステップ(ステップx)を求めるものである。これはまた、感度曲線(つまり、光学濃度とエネルギーステップとの対比)と、関連する感度データで効果的に表わすことができる。
【0128】
“不良”の評価は、ステップxとステップ18(またはDmin)との光学濃度の差、つまりΔODが0.015より小さい、あるいは、ステップxとステップ18(またはDmin)の間の感度曲線の最小二乗勾配が0.002(絶対値)より小さかったことを意味する。“OK”の評価は、ステップxとステップ18(またはDmin)の光学濃度差(ΔOD)が少なくとも0.010から0.058、あるいは、ステップxとステップ18(またはDmin)の間の感度曲線の最小二乗勾配が少なくとも0.002から0.006(絶対値)であったことを意味する。“良”の評価は、ステップxとステップ18(またはDmin)の光学濃度の差、即ち、ΔODが0.042より大きい、あるいは、ステップxとステップ18(またはDmin)の間の感度曲線の最小二乗勾配が0.006(絶対値)より大きかったことを意味する。
【0129】
中性のDmax(中性の赤、緑、または青):
本発明の実施で使用する中性のDmaxは、色素供与体要素と、感熱画像受容体要素と、感熱印刷条件の所定の組み合わせを用いて画像形成した感熱プリントから得られる、中性色相の目標最大光学濃度の指標である。目標中性色相(中性のDmax)は、それぞれの色素供与体要素パッチから熱転写したイエロー、マゼンタ、およびシアン色素の複合物で構成されているため、各色素の光学濃度(つまり、Dmax(中性の赤)、Dmax(中性の緑)、およびDmax(中性の青))を、印刷した感熱画像からGretag Macbeth SpectroScan装置を用いて個別に得ることができる。以下の表IIIに示す結果では、小さい絶対値は、Dmaxにおける目標光学濃度からの画像色のずれが小さい、つまり、カラー画像が目標光学濃度により近いことを示しているため、絶対値は小さいほうが良い。
【0130】
これらの評価の結果を以下の表IIIに示す。この結果から、対照配合物および感熱画像受容体要素はいくつかの良好な品質を示したが、所望の特性全てを一貫して示さないことが明らかである。しかし、本発明の配合物および感熱画像受容体要素は、必要な特性の全てではないがその大半について望ましい結果を示した。
【0131】
特に、塗膜形成ポリエステルが含まれないと、コーティング品質(塗膜形成性の結果として)と、下の表IIIに挙げたような全体的な印刷(画像)性能(供与体−受容体粘着性、印刷均一性、色素転写効率(Dmaxなど)等)は、一般に悪くなり、高品質カラー画像として好ましくなくなる。例えば、対照のC3〜C5、本発明のI1〜I3、本発明のI30〜32を比較すると、コーティング品質と供与体−受容体粘着性が、本発明の実施例と比べて対照例は不良である。対照のC8〜23およびC28、本発明のI6〜I18、本発明のI25〜I50を比較すると、全ての例で良好な供与体−受容体粘着性を示したが、対照例のDmax値は、本発明の実施例のDmax値よりも著しく悪かった。
【0132】
アクリルラテックスが含まれない場合(対照C1およびC2)、感熱印刷工程の際、ドナーリボン(要素)が離れにくく、一般に、感熱画像受容要素に強く貼り付いて深刻な印刷および印刷品質の問題を生じる。更に、対照C1の画像受容層は、特に、ロール状またはカットシート積層型であると、感熱画像受容体要素の反対側に付着し易い。対照C1(剥離剤なし)と対照C2(剥離剤)とを比較すると、画像受容層配合物中に水分散性剥離剤があると、感熱印刷工程の際、供与体要素が感熱画像受容体要素に貼り付きにくくなることがわかる。
【0133】
色素像受容層配合物に架橋剤を加えると、供与体−受容体粘着問題が低減(供与体−受容体剥離性が向上)して、画像受容層に必要な剥離剤が少なくなる。これはまた、透明ラミネート保護フィルムと画像受容層の間の接着性も向上させるため、好ましい特性である。
【0134】
【表4】
【0135】
【表5】
【0136】
【表6】
【0137】
【表7】
【0138】
【表8】
【0139】
【表9】
【0140】
【表10】