特許第6362604号(P6362604)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6362604コーティング可能な組成物、光触媒物品、及びその製造方法
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  • 特許6362604-コーティング可能な組成物、光触媒物品、及びその製造方法 図000015
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362604
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】コーティング可能な組成物、光触媒物品、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/02 20060101AFI20180712BHJP
   B01J 21/08 20060101ALI20180712BHJP
   C09D 1/00 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   B01J35/02 J
   B01J21/08 M
   C09D1/00
【請求項の数】4
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-534547(P2015-534547)
(86)(22)【出願日】2013年9月16日
(65)【公表番号】特表2015-530246(P2015-530246A)
(43)【公表日】2015年10月15日
(86)【国際出願番号】US2013059941
(87)【国際公開番号】WO2014052074
(87)【国際公開日】20140403
【審査請求日】2016年9月14日
(31)【優先権主張番号】61/705,935
(32)【優先日】2012年9月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】サン, フューシャ
(72)【発明者】
【氏名】ジン, ナイヨン
(72)【発明者】
【氏名】チェン, シュエ‐フア
【審査官】 安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−505295(JP,A)
【文献】 特開2003−055580(JP,A)
【文献】 特表2012−522110(JP,A)
【文献】 特開2003−171578(JP,A)
【文献】 特開2005−105138(JP,A)
【文献】 特開平10−139482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
C09D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング可能な組成物の製造方法であって、
水性液体媒体に分散されたシリカナノ粒子を含む第1の組成物を提供する工程であって、前記シリカナノ粒子が、100ナノメートル以下の平均粒径を有し、前記第1の組成物が6より大きいpHを有する工程と、
無機酸を使用して、前記第1の組成物を4以下のpHに酸性化し、第2の組成物を提供する工程と、
チタン化合物を含む少なくとも1種の金属化合物を前記第2の組成物に溶解し、前記コーティング可能な組成物を形成する工程と、を含み、
前記チタン化合物が、TiOSO・2HO、TiOSO・H2SO・xHO、TiOCl、及びTiClからなる群から選択される少なくとも一つである、方法。
【請求項2】
光触媒物品の製造方法であって、
a)水性液体媒体に分散されたシリカナノ粒子を含む第1の組成物を提供する工程であって、前記シリカナノ粒子が、100ナノメートル以下の平均粒径を有し、前記第1の組成物が6より大きいpHを有する、工程と、
b)無機酸を使用して、前記組成物を4以下のpHに酸性化し、第2の組成物を提供する工程と、
c)少なくとも1種の金属の化合物を前記第2の組成物に溶解し、コーティング可能な組成物を提供する工程であって、前記少なくとも1種の金属化合物が、チタン化合物を含む、工程と、
d)前記コーティング可能な組成物の層を基材の表面上へコーティングする工程と、
e)前記コーティング可能な組成物を少なくとも部分的に乾燥し、光触媒層を提供する工程と、を含み、
前記チタン化合物が、TiOSO・2HO、TiOSO・H2SO・xHO、TiOCl、及びTiClからなる群から選択される少なくとも一つである、方法。
【請求項3】
チタン陽イオンを含有する非晶質シリカマトリックスを含む光触媒組成物であって、前記非晶質シリカマトリックスが、100ナノメートル以下の平均粒径の粒径分布を有する相互接続されたシリカナノ粒子を含み、大多数の前記チタン陽イオンが、前記非晶質シリカマトリックスに個別に配置され、前記チタン陽イオンが、シリコン及びチタン陽イオンの総モル数の0.2〜40モル・パーセントを構成する、光触媒組成物。
【請求項4】
基材の表面上に配置されている非晶質光触媒組成物の層を含む光触媒物品であって、前記非晶質光触媒組成物が、チタン陽イオンを含有するシリカマトリックスを含み、前記シリカマトリックスが、100ナノメートル以下の平均粒径の粒径分布を有する相互接続されたシリカナノ粒子を含み、大多数の前記チタン陽イオンが、前記シリカマトリックスに個別に配置され、前記チタン陽イオンが、シリコン及びチタン陽イオンの総モル数の0.2〜40モル・パーセントを構成する、光触媒物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光触媒性を有する物品、光触媒コーティングを形成する組成物、及びその製造方法に広く関する。
【背景技術】
【0002】
フィンガープリントなどの有機材料、有機環境汚染物質、及び微生物の光触媒酸化反応(PCO)は、結晶性の二酸化チタンコーティングを紫外線に暴露することによって行われる。このプロセスは、ヒドロキシルラジカル及び超酸化物イオンを生成し、これは、有機材料を(例えば、二酸化炭素及び水へ)酸化させることが可能である反応性の高い種である。
【0003】
二酸化チタン(チタニア、TiO)は、ルチル、アナターゼ、及びブルッカイトの3つの結晶性変態で存在する。TiOの光活動性は、よく理解されている。ルチル及びブルッカイトと比較して、アナターゼは、最も高い光触媒活性を示す。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様では、本開示は、コーティング可能な組成物の製造方法であって、
水性液体媒体に分散されたシリカナノ粒子を含む第1の組成物を提供する工程であって、シリカナノ粒子が、100ナノメートル以下の平均粒径を有し、第1の組成物が、6より大きいpHを有する工程と、
無機酸を使用して、第1の組成物を4以下のpHに酸性化し、第2の組成物を提供する工程と、
チタン化合物を含む少なくとも1種の金属化合物を第2の組成物に溶解し、コーティング可能な組成物を形成する工程と、を含む、方法を提供する。
【0005】
本開示によるコーティング可能な組成物は、例えば、光触媒物品を製造するのに有用である。
【0006】
したがって、更に別の態様では、本開示は、光触媒物品の製造方法であって、
a)水性液体媒体に分散されたシリカナノ粒子を含む第1の組成物を提供する工程であって、シリカナノ粒子が、100ナノメートル以下の平均粒径を有し、第1の組成物が、6より大きいpHを有する、提供する工程と、
b)無機酸を使用して、組成物を4以下のpHに酸性化し、第2の組成物を提供する工程と、
c)少なくとも1種の金属の化合物を第2の組成物に溶解し、コーティング可能な組成物を提供する工程であって、前記少なくとも1種の金属化合物が、チタン化合物を含む、溶解する工程と、
d)コーティング可能な組成物の層を基材の表面上へコーティングする工程と、
e)コーティング可能な組成物を少なくとも部分的に乾燥し、光触媒層を提供する工程と、を含む、方法を提供する。
【0007】
更に別の態様では、本開示は、前述の本開示の方法に従って製造された光触媒物品を提供する。
【0008】
更に別の態様では、本開示は、チタン陽イオンを含有する非晶質シリカマトリックスを含む光触媒組成物であって、非晶質シリカマトリックスが、100ナノメートル以下の平均粒径の平均粒径分布を有する相互接続されたシリカナノ粒子を含み、大多数のチタン陽イオンが、非晶質シリカマトリックスに個別に配置され、チタン金属陽イオンが、シリコン及びチタン陽イオンの総モル数の0.2〜40モル・パーセントを構成する、光触媒組成物を提供する。
【0009】
更に別の態様では、本開示は、基材の表面上に配置されている非晶質光触媒組成物の層を含む光触媒物品であって、非晶質光触媒組成物が、チタン陽イオンを含有するシリカマトリックスを含み、シリカマトリックスが、100ナノメートル以下の平均粒径の粒径分布を有する相互接続されたシリカナノ粒子を含み、大多数のチタン陽イオンが、シリカマトリックスに個別に配置され、チタン陽イオンが、シリコン及びチタン陽イオンの総モル数の0.2〜40モル・パーセントを構成する、光触媒物品を提供する。
【0010】
有利なことに、本開示による光触媒組成物、及びそれらを含む物品は、光に曝されたとき、自浄性を有する。
【0011】
本明細書で言及されるシリカマトリックスは、非晶質又は部分的に非晶質であってもよい。
【0012】
本明細書において使用する場合、
用語「シリカナノ粒子の分散」は、個々のシリカナノ粒子が分散された分散を指し、ヒュームドシリカの分散を指さず、鎖状に凝集された焼結一次シリカ粒子を有する。
用語「本質的に含まない」は、1重量パーセント未満の、典型的には、0.1重量パーセント未満の、より典型的には、0.01重量パーセント未満の含有を意味する。
用語「不揮発性の有機化合物を本質的に含まない」は、1気圧(100kPa)で摂氏150°を超える沸点を有する有機化合物の1重量パーセント未満の含有を意味する。
用語「非晶質シリカマトリックスに個別に配置される」は、金属陽イオンに関して、金属陽イオンが、酸素を介してシリコンと結合し、分離した金属相として存在しないことを意味する。
用語「ナノ粒子」は、1〜200ナノメートルの粒径を有する粒子を指す。
用語「有機化合物」は、少なくとも1つの炭素−炭素結合及び/又は炭素−水素結合を含有する任意の化合物を指す。
用語「光触媒性」は、紫外線の存在下において有機材料を触媒的に酸化することができることを意味する。
用語「金属陽イオン」は、少なくとも2+の電荷を有する金属イオンを指す。
用語「シリカ」は、シリカナノ粒子及びシリカゾルに関して使用され、式SiO・nHO、により表わされる化合物を指す。ここで、nは、0以上の数である。
【0013】
本開示の特徴及び利点は、発明を実施するための形態、及び添付の特許請求の範囲を考慮することで更に深い理解が得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示による例示の光触媒物品100の概略側面図である。
【0015】
本開示の原理の範囲及び趣旨の範囲内に含まれる他の多くの改変例及び実施形態が当業者によって考案され得る点は理解されるはずである。図は、縮尺どおりに描かれていない場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
初期組成物は、水性液体媒体に分散されたシリカナノ粒子を含み、シリカナノ粒子は、100ナノメートル以下の平均粒径の粒径分布を有し、初期組成物は、6より大きいpHを有する。
【0017】
シリカナノ粒子は、100ナノメートル(nm)以下の平均粒径を有する。幾つかの実施形態では、シリカナノ粒子は、75nm以下、45nm以下、40nm以下、35nm以下、30nm以下、25nm以下、20nm以下、15nm以下、又は更に10nm未満の平均粒径を有する。これは必要条件ではないが、典型的には、シリカナノ粒子は、4nm以上の平均粒径を有する。平均一次粒径は、例えば、透過型電子顕微鏡検査を使用して測定することができる。本明細書において使用する場合、用語「粒径」は、粒子の最長の寸法を指し、これは、球状粒子については直径である。
【0018】
もちろん、粒径200nmを超える(例えば、粒径2マイクロメートルまでの)シリカ粒子もまた含まれてもよいが、典型的には、少量である。
【0019】
シリカナノ粒子は、例えば、の多分散性が2.0以下、又は更に1.5以下である、狭い粒径分布を有することが望ましい。幾つかの実施形態では、シリカナノ粒子は、150平方メートル毎グラム(m/g)を超える、200m/gを超える、又は更には400m/gを超える表面積を有する。
【0020】
幾つかの実施形態では、40nm以下の平均粒径(例えば、直径)を有するシリカナノ粒子の量は、初期組成物及び/又はコーティング可能な組成物の総重量に対して、少なくとも0.1重量パーセント、好ましくは、少なくとも0.2重量パーセントである。幾つかの実施形態では、40nm以下の粒径(例えば、直径)を有するシリカナノ粒子の濃度は、初期組成物の総重量に対して、20重量パーセント以下、又は更に15重量パーセント以下である。
【0021】
シリカナノ粒子は、ポリモーダルな粒径分布を有してもよい。例えば、ポリモーダルな粒径分布は、5〜2000ナノメートル、好ましくは、20〜150ナノメートルの範囲内の粒径の第1のモード、及び1〜45ナノメートル、好ましくは、2〜25ナノメートルの範囲内の第2の粒径を有する第2のモードを有してもよい。
【0022】
初期組成物に含まれるナノ粒子(例えば、シリカナノ粒子)は、任意の所望の縦横比の球状又は非球状であってもよい。縦横比は、ナノ粒子の平均最短寸法とそれらの平均最長寸法の比を指す。非球状ナノ粒子の縦横比は、多くの場合、少なくとも2:1、少なくとも3:1、少なくとも5:1、又は少なくとも10:1である。非球状ナノ粒子は、例えば、ロッド、楕円、及び/又は針の形状を有してもよい。ナノ粒子の形状は、規則的であっても不規則的であってもよい。コーティングの有孔率は、典型的には、コーティング可能な組成物中の規則的及び不規則的な形状のナノ粒子の量を変更することによって、かつ/又は、コーティング可能な組成物中の球状及び非球状のナノ粒子の量を変更することによって変動し得る。
【0023】
幾つかの実施形態では、初期組成物におけるシリカナノ粒子の総重量は、少なくとも0.1重量パーセント、典型的には少なくとも1重量パーセント、より典型的には、少なくとも2重量パーセントである。幾つかの実施形態では、組成物におけるシリカナノ粒子の総重量は、40重量パーセント以下、好ましくは、10重量パーセント以下、より典型的には、7重量パーセント以下である。
【0024】
シリカゾルは、水性液体媒体におけるシリカナノ粒子の安定な分散液であり、当該技術分野において公知であり、市販されている。非水性シリカゾル(シリカオルガノゾルとも呼ばれる)を使用してもよく、非水性シリカゾルはシリカゾル分散液であり、液相は有機溶媒であるか、又は有機溶媒を含有する水性混合物である。本開示の実施において、シリカゾルは、液相が分散物と相溶性があり、典型的には水性溶媒であり、任意で有機溶媒を含むように選択される。これは必要条件ではないが、典型的には、初期組成物は、ヒュームドシリカを含まない、又は本質的に含まない。
【0025】
水又は水−アルコール溶液におけるシリカナノ粒子分散液(例えば、シリカゾル)は、例えば、LUDOX(E.I.du Pont de Nemours and Co.(Wilmington、Delaware)により市販)、NYACOL(Nyacol Co.(Ashland、Massachusetts)により市販)、及びNALCO(Ondea Nalco Chemical Co.(Oak Brook、Illinois)により製造)などの商標名で市販されている。1つの有用なシリカゾルは、NALCO 2326で、これは、5ナノメートルの平均粒径を有するシリカゾルとして市販されており、pH=10.5、及び固形分15固体重量パーセントである。他の市販されているシリカナノ粒子としては、Nalco Chemical Co.から入手可能な、NALCO 1115(球状、平均粒径4nm、15固体重量パーセントの分散液、pH=10.4)、NALCO 1130(球状分散、平均粒径8nm、30固体重量パーセントの分散液、pH=10.2)、NALCO 1050(球状、平均粒径20nm、50固体重量パーセントの分散液、pH=9.0)、NALC0 2327(球状、平均粒径20nm、40固体重量パーセントの分散液、pH=9.3)、NALCO 1030(球状、平均粒径13nm、30固体重量パーセントの分散液、pH=10.2)、及びDVSZN004(球状、45nm、42固体重量パーセントの分散液)などの商品名で市販されているものが挙げられる。
【0026】
上述の平均シリカナノ粒子径の制約が得られる場合、針状シリカナノ粒子がまた使用されてもよい。
【0027】
有用な針状シリカナノ粒子は、日産化学工業(日本、東京)より商標名スノーテックスUP(SNOWTEX-UP)の水性懸濁液として入手することができる。この混合物は、20〜21%(w/w)の針状シリカ、0.35%(w/w)未満のNaO、及び水からなる。粒子は、直径約9〜15ナノメートルであり、長さ40〜200ナノメートルである。懸濁液の粘度は、25℃において<100mPa、pHは、約9〜10.5、及び比重は、20℃において約1.13である。
【0028】
他の有用な針状シリカナノ粒子は、日産化学工業による商標名スノーテックスPS−S(SNOWTEX-PS-S)及びスノーテックスPS−M(SNOWTEX-PS-M)の、水性懸濁液として入手することができ、これは真珠の連なりの形態を有している。この混合物は、20〜21%(w/w)のシリカ、0.2%(w/w)未満のNaO、及び水からなる。スノーテックスPS−M(SNOWTEX-PS-M)の粒子は、直径約18〜25ナノメートルであり、長さ80〜150ナノメートルである。動的光散乱法による粒度は、80〜150nmである。懸濁液の粘度は、25℃において<100mPas、pHは、約9〜10.5、及び比重は、20℃において約1.13である。スノーテックスPS−S(SNOWTEX-PS-S)は、10〜15nmの粒子直径及び80〜120nmの長さを有する。
【0029】
低水性及び非水性シリカゾル(シリカオルガノゾルとも呼ばれる)が使用されてもよく、これらは、液相が有機溶媒又は水性有機溶媒であるシリカゾル分散液である。本開示の実施において、シリカナノ粒子ゾルは、その液相が、意図されるコーティング組成物と相溶性があり、典型的には、水性又は低水性有機溶媒であるように選択される。
【0030】
8以上のpHを有するシリカゾルはまた、米国特許第5,964,693号(Brecau et al.)に記載される方法に従って調製することができる。
【0031】
必要に応じて、初期組成物は、例えば、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化錫、酸化アンチモン、アンチモンドープ酸化錫、酸化インジウム、錫ドープ酸化インジウム、又は酸化亜鉛を含むナノ粒子を含む他のナノ粒子を更に含むことができる。
【0032】
初期組成物は、6より大きいpH、より典型的には、7より大きいpH、より典型的には、8より大きいpH、及び更により典型的には、9より大きいpHを有する。
【0033】
幾つかの実施形態では、初期組成物は、不揮発性の有機化合物を本質的に含まない。幾つかの実施形態では、初期組成物は、有機界面活性剤を本質的に含まない。
【0034】
初期組成物の水性液体媒体は、(水に加えて)少なくとも1つの揮発性有機溶媒を含んでもよい。好適な揮発性有機溶媒の例としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、及びそれらの組合せなど、水と混和性である揮発性有機溶媒が挙げられる。しかしながら、多くの用途にとって、揮発性有機化合物の削減又は排除は望ましく、かつ、有利なことに、本開示は、揮発性有機溶媒を本質的に含まない初期組成物及び/又はコーティング可能な組成物を使用して実施することができる。
【0035】
初期組成物は、それが4以下、典型的には3未満、又は更には2未満のpHを有し、それによってコーティング可能な組成物を提供するまで、無機酸の添加によって酸性化される。有用な無機酸(即ち、鉱酸)は、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、過塩素酸、塩素酸、及びそれらの組合せを含む。これは必要条件ではないが、典型的には、無機酸は、それが2以下、1未満、又は更に0未満のpKを有するように選択される。理論に束縛されるものではないが、本発明者らは、pHが下がるにつれてシリカナノ粒子の一部に凝集が生じ、凝集したナノ粒子を含む分散液が得られると考えている。
【0036】
この段階において、少なくとも1種のチタン化合物、及び必要に応じて少なくとも1種の他の金属化合物が、(例えば、溶解されて)酸性化された組成物と組み合わされ、それによって、概して混合しながら、コーティング可能な組成物を提供する。上記組成物における様々な成分の組合せは、任意の好適な混合技術を使用して実施されてもよい。例としては、組成物の全ての成分の添加中又は添加後の、組成物のかき混ぜ、振盪、及びさもなければ撹拌が挙げられる。
【0037】
有用なチタン化合物としては、例えば、TiOSO・2HO、TiOSO・HSO・xHO、TiOCl、及びTiClが挙げられる。
【0038】
任意の(複数種類の)金属化合物(及びそこに含有される任意の金属陽イオン)は、元素の周期表の第2族から第15族(例えば、第2族、第3族、第4族、第5族、第6族、第7族、第8族、第9族、第10族、第11族、第12族、第13族、第14族、第15族、及びそれらの組合せ)のいずれかにおける、チタン以外の、金属(又は金属陽イオン)を含んでもよい。
【0039】
(複数種類の)金属化合物に含有される任意の他の金属陽イオンは、n+の電荷を有してもよい。ここでnは、例えば、整数≧2(例えば、2、3、4、5、又は6)を表す。金属化合物は、結果として得られる防汚組成物において、所望のレベルの金属取り込みを達成するために、水への十分な溶解度を有するべきである。例えば、(複数種類の)金属化合物は、(複数種類の)金属塩を含んでもよい。有用な金属化合物の例としては、銅化合物(例えば、CuCl又はCu(NO)、白金化合物(例えば、HPtCl)、アルミニウム化合物(例えば、Al(NO・9HO)、ジルコニウム化合物(例えば、ZrCl又はZrOCl・8HO)、亜鉛化合物(例えば、Zn(NO・6HO)、鉄化合物(例えば、FeCl・6HO又はFeCl)、錫化合物(例えば、SnCl及びSnCl・5HO)、及びそれらの組合せが挙げられる。
【0040】
本開示によるコーティング可能な組成物は、例えば、着色剤(類)、界面活性剤(類)、増粘剤(類)、チキソトロープ剤(類)、又はレベリング補助剤(類)など、1つ以上の任意の添加剤を更に含んでもよい。
【0041】
幾つかの実施形態では、コーティング可能な組成物は、添加された界面活性剤を含んでもよいが、発明者らは、本開示によるコーティング可能な組成物が、界面活性剤を添加することなく、少なくとも疎水性表面の一部を湿潤させることを予期せず発見した。
【0042】
コーティング可能な組成物における固形分は、シリカを30〜99重量パーセント、望ましくはシリカを60〜97.5重量パーセント、より望ましくはシリカを80〜95重量パーセント含んでもよく、他の量であってもよい。
【0043】
同様に、コーティング可能な組成物は、シリコン及び金属イオンの総モル数に対して、(チタン化合物及び任意の非チタン金属陽イオンを含む(複数種類の)金属化合物に含有される金属イオンを0.2〜40モル・パーセント、好ましくは金属イオンを0.5〜25モル・パーセント、より好ましくは金属イオンを1.0〜20.0重量パーセント含んでもよく、他の量であってもよい。
【0044】
これは必要条件ではないが、一度製造されると、コーティング組成物は、典型的には、ある温度範囲にわたって、長期間にわたって安定である。コーティング組成物は、基材上にコーティングされ、少なくとも部分的に乾燥され、典型的には実質的に完全に乾燥されてもよい。
【0045】
理論に束縛されるものではないが、本発明者らは、乾燥プロセスの間、凝縮プロセスによって、接触点において、シリカナノ粒子間及び/又は凝集体間の化学結合がもたらされ、シリカマトリックスを形成し、金属陽イオンは、個別にシリカマトリックスに組み込まれ、非晶質組成物が得られると考えている。
【0046】
コーティング可能な組成物は、光触媒性のコーティングされた物品を形成するために、基材の表面と接触し、少なくとも部分的に乾燥することができる。予想外に、本発明者らは、本開示によるコーティング可能な組成物は、基材の表面に接触し、少なくとも部分的に乾燥することができ、アナターゼチタニアが存在するように見えないにも関わらず、予想外の光触媒性を有する欠陥の無い層を提供することを発見した。コーティング可能な組成物を乾燥する好適な方法としては、例えば、室温付近での空気中の蒸発、オーブン、熱風送風機、赤外線ヒータ、及び加熱された缶(hot can)などが挙げられる。これは必要条件ではないが、乾燥は、典型的には、コーティング可能な組成物が実質的に完全に乾燥するまで実施される。一度基材に接触し、少なくとも部分的に乾燥されると、光触媒層は、例えば、少なくとも1時間(hr)、少なくとも4時間、少なくとも8時間、少なくとも24時間、少なくとも72時間、少なくとも1週間、又は更に少なくとも2週間など、光触媒層の防汚性が改善することができる一定期間ねかされてもよい。
【0047】
図1を参照すると、光触媒物品100は、基材130の表面120に配置される光触媒層110を含んでいる。コーティング可能な組成物を基材の表面に接触させる好適な方法の例としては、ロールコーティング、スプレーコーティング、グラビアコーティング、ディップコーティング、カーテンコーティングが挙げられる。これは必要条件ではないが、典型的には、光触媒層は、0.02〜100マイクロメートル、好ましくは0.05〜10.0マイクロメートルの範囲内の厚さを有する。
【0048】
典型的には、本開示による光触媒層は、少なくとも実質的に透き通っているが、これは必要条件ではない。
【0049】
好適な基材の例としては、実質上、任意の寸法安定性材料が挙げられる。例としては、ガラス基材(例えば、鏡、窓、フロントガラス、テーブル、レンズ、及びプリズム)、金属基材、セラミック基材、有機ポリマー基材(例えば、成形ポリマー物品、自動車用塗料及びクリアコート、ポリマーフィルム、再帰反射シート、屋内看板、及び屋外看板)、及び布地(例えば、室内装飾用布地)が挙げられる。幾つかの実施形態では、基材は、ガラス又は有機ポリマーの少なくとも1つを含む。幾つかの実施形態では、有機ポリマーは、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、アリルジグリコールカーボネート、アリル樹脂(例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA))、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ホモエポキシポリマー、ポリジアミン付きエポキシ付加ポリマー及び/又はポリジチオール、ポリアミド(例えば、ナイロン6及びナイロン6、6)、ポリイミド、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン)、オレフィンコポリマー(例えば、ポリエチレンコポリマー)、及びセルロースエステル(例えば、セルロースアセテート及びセルロースブチレート)、並びにそれらの組合せの少なくとも1種を含む。
【0050】
(本開示の選択された実施形態)
第1の実施形態では、本開示は、コーティング可能な組成物の製造方法であって、
水性液体媒体に分散されたシリカナノ粒子を含む第1の組成物を提供する工程であって、シリカナノ粒子が、100ナノメートル以下の平均粒径を有し、第1の組成物が、6より大きいpHを有する工程と、
無機酸を使用して、第1の組成物を4以下のpHに酸性化し、第2の組成物を提供する工程と、
チタン化合物を含む少なくとも1種の金属化合物を第2の組成物に溶解し、コーティング可能な組成物を形成する工程と、を含む、方法を提供する。
【0051】
第2の実施形態では、本開示は、シリカナノ粒子が、50ナノメートル以下の平均粒径を有する、第1の実施形態に従う方法を提供する。
【0052】
第3の実施形態では、本開示は、少なくとも1種の金属化合物が、亜鉛化合物を更に含む、第1又は第2の実施形態に従う方法を提供する。
【0053】
第4の実施形態では、本開示は、少なくとも1種の金属化合物が、錫化合物を更に含む、第1〜第3の実施形態のいずれか1つに従う方法を提供する。
【0054】
第5の実施形態では、本開示は、コーティング可能な組成物が、有機不揮発性化合物を本質的に含まない、第1〜第4の実施形態のいずれか1つに従う方法を提供する。
【0055】
第6の実施形態では、本開示は、第1の組成物が、水性液体媒体に分散されたポリマー粒子を更に含む、第1〜第5の実施形態のいずれか1つに従う方法を提供する。
【0056】
第7の実施形態では、本開示は、第1〜第6の実施形態のいずれか1つに記載の方法に従って製造されたコーティング可能な組成物を提供する。
【0057】
第8の実施形態では、本開示は、光触媒物品の製造方法であって、
a)水性液体媒体に分散されたシリカナノ粒子を含む第1の組成物を提供する工程であって、シリカナノ粒子が、100ナノメートル以下の平均粒径を有し、第1の組成物が6より大きいpHを有する、提供する工程と、
b)無機酸を使用して、組成物を4以下のpHに酸性化し、第2の組成物を提供する工程と、
c)少なくとも1種の金属の化合物を第2の組成物に溶解し、コーティング可能な組成物を提供する工程であって、前記少なくとも1種の金属化合物が、チタン化合物を含む、溶解する工程と、
d)コーティング可能な組成物の層を基材の表面上へコーティングする工程と、
e)コーティング可能な組成物を少なくとも部分的に乾燥し、光触媒層を提供する工程と、を含む、方法を提供する。
【0058】
第9の実施形態では、本開示は、シリカナノ粒子が、50ナノメートル以下の平均粒径を有する、第8の実施形態に従う方法を提供する。
【0059】
第10の実施形態では、本開示は、少なくとも1種の金属化合物が、亜鉛化合物を更に含む、第8又は第9の実施形態に従う方法を提供する。
【0060】
第11の実施形態では、本開示は、少なくとも1種の金属化合物が、錫化合物を更に含む、第8〜第10の実施形態のいずれか1つに従う方法を提供する。
【0061】
第12の実施形態では、本開示は、第1の組成物が、水性液体媒体に分散されたポリマー粒子を更に含む、第8〜第11の実施形態のいずれか1つに従う方法を提供する。
【0062】
第13の実施形態では、本開示は、基材が、ガラス又は有機ポリマーを含む、第8〜第12の実施形態のいずれか1つに従う方法を提供する。
【0063】
第14の実施形態では、本開示は、有機ポリマーが、ポリエチレンテレフタレート又はポリメチルメタクリレートの少なくとも1種を含む、第8〜第13の実施形態のいずれか1つに従う方法を提供する。
【0064】
第15の実施形態では、本開示は、光触媒層が光学的に透明である、第8〜第14の実施形態のいずれか1つに従う方法を提供する。
【0065】
第16の実施形態では、本開示は、光触媒層が、0.02〜100マイクロメートルの範囲内の厚さを有する、第8〜第15の実施形態のいずれか1つに従う方法を提供する。
【0066】
第17の実施形態では、本開示は、無機酸が、0以下のpKを有する、第8〜第16の実施形態のいずれか1つに従う方法を提供する。
【0067】
第18の実施形態では、本開示は、工程b)が、第1の組成物を2以下のpHに酸性化する工程を含む、第8〜第17の実施形態のいずれか1つに従う方法を提供する。
【0068】
第19の実施形態では、本開示は、コーティング可能な組成物が、有機不揮発性化合物を本質的に含まない、第8〜第18の実施形態のいずれか1つに従う方法を提供する。
【0069】
第20の実施形態では、本開示は、第8〜第19の実施形態のいずれか1つに従う方法に従って製造された、光触媒物品を提供する。
【0070】
第21の実施形態では、本開示は、光触媒物品が、再帰反射シートを含む、第20の実施形態に従う光触媒物品を提供する。
【0071】
第22の実施形態では、本開示は、チタン陽イオンを含有する非晶質シリカマトリックスを含む光触媒組成物であって、非晶質シリカマトリックスが、100ナノメートル以下の平均粒径の粒径分布を有する相互接続されたシリカナノ粒子を含み、大多数のチタン陽イオンが、非晶質シリカマトリックスに個別に配置され、チタン金属陽イオンが、シリコン及びチタン陽イオンの総モル数の0.2〜40モル・パーセントを構成する、光触媒組成物を提供する。
【0072】
第23の実施形態では、本開示は、非晶質シリカマトリックス含有が、銅化合物、白金化合物、亜鉛化合物、鉄化合物、錫化合物、及びそれらの組合せからなる群から選択される金属陽イオンを更に含有する、第22の実施形態に従う光触媒組成物を提供する。
【0073】
第24の実施形態では、本開示は、シリカナノ粒子が、50ナノメートル以下の平均粒径を有する、第22又は第23の実施形態に従う光触媒組成物を提供する。
【0074】
第25の実施形態では、本開示は、シリカナノ粒子が、25ナノメートル以下の平均粒径を有する、第22〜第24の実施形態のいずれか1つに従う光触媒組成物を提供する。
【0075】
第26の実施形態では、本開示は、光触媒組成物が、有機不揮発性化合物を本質的に含まない、第22〜第25の実施形態のいずれか1つに従う光触媒組成物を提供する。
【0076】
第27の実施形態では、本開示は、基材の表面上に配置されている非晶質光触媒組成物の層を含む光触媒物品であって、非晶質光触媒組成物が、チタン陽イオンを含有するシリカマトリックスを含み、シリカマトリックスが、100ナノメートル以下の平均粒径の粒径分布を有する相互接続されたシリカナノ粒子を含み、大多数のチタン陽イオンが、シリカマトリックスに個別に配置され、チタン陽イオンが、シリコン及びチタン陽イオンの総モル数の0.2〜40モル・パーセントを構成する、光触媒物品を提供する。
【0077】
第28の実施形態では、本開示は、非晶質シリカマトリックスが、銅化合物、白金化合物、亜鉛化合物、鉄化合物、錫化合物、及びそれらの組合せからなる群から選択される金属陽イオンを更に含有する、第27の実施形態に従う光触媒物品を提供する。
【0078】
第29の実施形態では、本開示は、シリカナノ粒子が、50ナノメートル以下の平均粒径を有する、第27又は第28の実施形態に従う光触媒物品を提供する。
【0079】
第30の実施形態では、本開示は、シリカナノ粒子が、25ナノメートル以下の平均粒径を有する、第27〜第29の実施形態のいずれか1つに従う光触媒物品を提供する。
【0080】
第31の実施形態では、本開示は、基材が、ガラス又は有機ポリマーを含む、第27〜第30の実施形態のいずれか1つに従う光触媒物品を提供する。
【0081】
第32の実施形態では、本開示は、有機ポリマーが、ポリメチルメタクリレート又はポリエチレンテレフタレートの少なくとも1種を含む、第27〜第31の実施形態のいずれか1つに従う光触媒物品を提供する。
【0082】
第33の実施形態では、本開示は、光触媒層が、光学的に透明である、第27〜第32の実施形態のいずれか1つに従う光触媒物品を提供する。
【0083】
第34の実施形態では、本開示は、光触媒層が、0.02〜100マイクロメートルの範囲内の厚さを有する、第27〜第33の実施形態のいずれか1つに従う光触媒物品を提供する。
【0084】
第35の実施形態では、本開示は、コーティング可能な組成物が、有機不揮発性化合物を本質的に含まない、第27〜第34の実施形態のいずれか1つに従う光触媒物品を提供する。
【0085】
第36の実施形態では、基材が、再帰反射シートを含む、第27〜第35の実施形態のいずれか1つに従う光触媒物品を提供する。
【0086】
以下の非限定的な実施例によって本開示の目的及び利点を更に例示するが、これらの実施例に記載する特定の材料及びその量、並びに他の条件及び詳細は、本開示を不当に限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0087】
特に記載がない限り、実施例における部、割合、比率などはいずれも重量基準である。実施例では、「%T」は、透過率パーセントを意味し、「%H」は、ヘイズパーセントを意味し、「分(minute(s))」は、「min」として略記され、「時間(hour(s))」は、「hr(s)」として略記される。
【0088】
材料:
NALCO 1115(4nm)、NALCO 1050(20nm)、及びNALCO DVSZN004(45nm)のコロイド状シリカは、Nalco Chemical Company(Naperville、Illinois)から、それぞれの商品名NALCO 1115、NALCO 1050、及びNALCO DVSZN004コロイド状シリカで入手した。
【0089】
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(50マイクロメートル厚)は、E.I.du Pont de Nemours(Wilmington、Delaware)から、商品名MELINEX 618で入手した。
【0090】
ソーダ石灰ガラススライドは、VWR international(West Chester、Pennsylvania)から入手し、SOLITEガラスは、Swift Glass Inc.(Elmira Heights、New York)から入手した。これらのガラススライドは、VWR I nternationalのALCONOXクレンザーによる穏やかな擦り洗いによって前処理され、その後、使用前に脱イオン水で十分に洗浄された。
【0091】
TiOSO・2HOは、NOAH Technologies Corporation(San Antonio、Texas)から入手した。
【0092】
Zn(NO・6HOは、Mallinckrodt Baker,Inc.(Phillipsburg、New Jersey)から入手した。
【0093】
Cu(NO・3HOは、Morton Thiokol Inc.(Danvers、Massachusetts)から入手した。
【0094】
SnCl・5HOは、Sigma−Aldrich Co.(Saint Louis、Missouri)から入手した。
【0095】
メチレンブルーは、Mallinckrodt Inc.(Paris、Kentucky)から入手した。
【0096】
ガラス及びプラスチック基材のためのコーティング手順
コーティングされたサンプルを、R D Specialties(Webster、New York)の#6巻線コーティングロッド又は242.6mm/minの引き上げ速度でのディップコータのいずれかを使用して、分散溶液をコーティングすることによって生成した。公称湿式コーティング厚=14マイクロメートルであった。乾式コーティング厚は、約100nm〜300nmであった。ガラス基材については、コーティングされたサンプルは、指示通り、120℃で10分間加熱され、続いて300℃〜700℃の温度で2分間加熱された。PET基材については、コーティングされたサンプルは、120℃で10分間加熱された。
【0097】
ガラス基材上にメチレンブルーをコーティングするための手順
メチレンブルーを、脱イオン水に溶解し、1mg/mLに希釈した。メチレンブルー溶液を、242.6mm/minの引き上げ速度でディップコータを使用して、ガラス基材上のチタン変性されたシリカコーティングされた表面及びシリカ上にコーティングした。
【0098】
PETフィルム基材上にメチレンブルーをコーティングするための手順
メチレンブルーを、脱イオン水に溶解し、1ミリグラム/ミリリットル(mg/mL)の濃度に希釈した。メチレンブルー溶液を、#6巻線コーティングロッドを使用して、PET基材上のチタン変性されたシリカコーティングされた表面及びシリカ上にコーティングした。
【0099】
光触媒性試験に使用されるUVランプチャンバ
UVチャンバA:365nmにおいて最大のスペクトル出力を有するUVランプチャンバは、The Southern New England Ultraviolet,Inc.(New Haven、Connecticut)から入手可能な、16個の低圧水銀球を装備するRayonetチャンバリアクタ(RPR−100型)であった。照射されるサンプルは、光反応器の中央に定置した。
【0100】
UVチャンバB:254nmにおいて最大のスペクトル出力を有するUVランプチャンバは、3インチ(7.6cm)の中央部の上に離間された6つの殺菌ランプ(Philips TUV G15T8殺菌球、低圧水銀、15W、254nm、Royal Philips Electronics(Amsterdam、The Netherlands)により市販)の平面的なバンク(bank)であった。サンプルは、殺菌ランプまで3インチ(7.6cm)の距離の位置へ定置した。
【0101】
メチレンブルーの光触媒性劣化試験
コーティングされたガラススライド又はPETフィルムを、光触媒性能試験(上記)のために指示されたUVランプチャンバに入れた。照射時間は、指示通り15分〜5時間であった。
【0102】
透過率、ヘイズ及び吸光度測定
透過率及びヘイズ測定は、BYK−Gardner USA(Columbia、MD、USA)から購入したHAZE−GUARD PLUSを使用して行った。300nm〜900nmの波長における透過率及び吸光度は、PerkinElmer Inc.(Waltham、Massachusetts、USA)のUV−Visスペクトロメータを使用して行った。
【0103】
コーティング溶液の調製
酸性化されたシリカナノ粒子分散液:(複数種類の)コロイド状シリカNALCO 1115、NALCO 1050、及びNALCO DVSZN004を、脱イオン水で10〜3重量パーセントに希釈し、濃縮された水性HNOで、pH=2.0〜3.0に個々に酸性化した。
【0104】
酸性化された混合シリカナノ粒子分散液:(複数種類の)コロイド状シリカNALCO 1115、NALCO 1050、及びNALCO DVSZN004を、脱イオン水で希釈し、所望の比率で混合した。その後、溶液混合物を、pH=2〜3に酸性化した。所望の量の金属化合物を、シリカ溶液に添加した。
【0105】
チタン変性されたシリカコーティング溶液の調製
チタン変性されたシリカコーティング溶液を、TiOSO・2HOの水性溶液を酸性化されたシリカナノ粒子溶液懸濁液に添加することによって調製した。
【0106】
比較実施例A
NALCO 1115(4nm)及びNALCO 1050(20nm)を、個別に、脱イオン水で10重量パーセントに希釈した。それらを、3:7のそれぞれの重量比で混合し、続いて、得られた分散液を、HNOを使用して、pH=2〜3に酸性化した。酸性化された分散液を、#6巻線コーティングロッドを使用して、閃光灯処理したPETフィルム上にコーティングした。コーティングされたサンプルを、120℃で10分間加熱した。
【0107】
(実施例1)
比較実施例A(2.0g)を、脱イオン水において、10重量パーセントのTiOSO・2HO溶液0.8571gと混合した。得られた酸性化された分散液は、TiOSO・2HOを29.7重量パーセント含有し、この分散液を、#6巻線コーティングロッドを使用して、閃光灯処理したPETフィルム上にコーティングした。コーティングされたサンプルを、120℃で10分間加熱した。
【0108】
(実施例2)
比較実施例A(2.0g)を、脱イオン水において、10重量パーセントのTiOSO・2HO溶液4.6667gと混合した。得られた酸性化された分散液は、TiOSO・2HOを69.3重量パーセント含有し、この分散液を、#6巻線コーティングロッドを使用して、閃光灯処理したPETフィルム上にコーティングした。コーティングされたサンプルを、120℃で10分間加熱した。
【0109】
比較実施例A及び実施例1〜2を、#6巻線コーティングロッドを使用して、脱イオン水(1mg/mL)中のメチレンブルー(MB)の溶液でコーティングし、室温で乾燥させた。染料コーティングされたサンプルを、UVチャンバAに入れ、365nmで照射した。サンプルを、1時間毎にチャンバから取り出し、透過率パーセント及びヘイズパーセントを測定した。結果を表1に報告する。結果は、チタンドープシリカコーティングが、シリカコーティング自体よりも、MBのより高い劣化率を有することを示している。
【0110】
【表1】
【0111】
比較実施例B
NALCO 1115(4nm)及びNALCO DVSZN004(45nm)を、個別に、脱イオン水で10重量パーセントに希釈した。それらを、1:2のそれぞれの重量比で混合し、続いて、得られた分散液を、HNOを使用して、pH=2〜3に酸性化した。酸性化された分散液を、#6巻線コーティングロッドを使用して、閃光灯処理したPETフィルム上にコーティングした。コーティングされたサンプルを、120℃で10分間加熱した。
【0112】
(実施例3)
比較実施例B(2.0g)を、脱イオン水中の10重量パーセントのTiOSO・2HO溶液0.8571gと混合した。得られた酸性化された分散液は、TiOSO・2HOを29.7重量パーセント含有し、この分散液を、#6巻線コーティングロッドを使用して、閃光灯処理したPETフィルム上にコーティングした。コーティングされたサンプルを、120℃で10分間加熱した。
【0113】
比較実施例B及び実施例3を、#6巻線コーティングロッドを使用して、脱イオン水(1mg/mL)脱イオン水溶液中のメチレンブルー(MB)の溶液でコーティングし、室温で乾燥させた。メチレンブルーでコーティングされなかった比較実施例Bのサンプルもまた使用した。染料コーティングされたサンプルを、UVチャンバAに入れ、365nmで照射した。サンプルを、1時間毎にチャンバから取り出し、透過率パーセント及びヘイズパーセントを測定した。結果を表2に報告する。結果は、チタンドープシリカコーティングが、シリカコーティング自体よりも、MBのより高い劣化率を有することを示している。
【0114】
比較実施例B及び実施例3を、#6巻線コーティングロッドを使用して、脱イオン水(1mg/mL)中のメチレンブルー(MB)溶液でコーティングし、室温で乾燥させた。メチレンブルーでコーティングされなかった比較実施例Bのサンプルもまた使用した。染料コーティングされたサンプルを、UVチャンバBに入れ、254nmで照射した。サンプルを、15分毎にチャンバから取り出し、透過率パーセント及びヘイズパーセントを測定した。結果を表3に報告する。結果は、チタンドープシリカコーティングが、シリカコーティング自体よりも、MBのより高い劣化率を有することを示している。
【0115】
【表2】
【0116】
【表3】
【0117】
(実施例4)
比較実施例B(180グラム)を、45.0グラムのTiOSO・2HO溶液(10重量パーセント)と混合し、TiOSO・2HOを19.8重量パーセント含有する10重量パーセント溶液分散液を得た。50グラムの上記混合物を、脱イオン水により100グラムに希釈し、5固体重量パーセントの分散液が得られた。得られた酸性化された分散溶液は、全固形分の19.8重量パーセントのTiOSO・2HOを含有した。
【0118】
比較実施例B及び実施例4のそれぞれの3つのサンプルを、242.6mm/minの引き上げ速度で、SOLITEガラス基材上にディップコーティングした。コーティングされたサンプルを、120℃で10分間加熱した。比較実施例B及び実施例4のサンプルを、600℃で2分間、更に加熱した。比較実施例B及び実施例4の異なるサンプルを、それらの120℃での10分間の初期加熱の後、700℃で2分間加熱した。得られた6つのサンプルを、同じ速度のディップコータを使用して、1mg/mLの脱イオン水溶液の濃度のメチレンブルー(MB)によってコーティングし、室温で乾燥させた。
【0119】
MBコーティングされたサンプルを、UVチャンバAに入れた。サンプルを、1時間毎にチャンバから取り出し、透過率を測定した。結果を表4に報告する。結果は、チタンドープシリカコーティングが、低温及び高温処理後、シリカコーティング自体よりも、大きい透過率の変化を有することを示している。
【0120】
【表4】
【0121】
(実施例5)
比較実施例B(100g)を、40.920グラムのTiOSO・2HO(脱イオン水中の10重量パーセント)と混合した。得られた10固体重量パーセントの酸性化分散溶液は、全固形分の28.8重量パーセントのTiOSO・2HOを含有した。
【0122】
(実施例6)
実施例5(45g)を、45グラムの脱イオン水と混合した。得られた5個体重量パーセントの酸性化分散溶液は、全固形分の28.8重量パーセントのTiOSO・2HOを含有した。
【0123】
実施例5〜6のチタンドープシリカコーティングサンプルを、#6巻線コーティングロッドを使用して、分散溶液実施例5及び実施例6をコーティングすることによって、PET基材上に生成した。全てのコーティングされたサンプルを、120℃で10分間加熱した。実施例5及び実施例6のサンプルを、#6巻線コーティングロッドを使用して、脱イオン水(1mg/mL)中のメチレンブルー溶液で更にコーティングし、室温で乾燥させた。実施例5及び実施例6のMBコーティングされたサンプルを、UVチャンバA又はBに入れ、光触媒活性試験を行った。サンプルは、UVチャンバBのサンプルについては15分毎に、UVチャンバAのサンプルについては1時間毎にチャンバから取り出し、透過率測定を行った。表5及び6に結果を報告する。
【0124】
比較実施例C
比較実施例B(100g)を、45.478グラムのZn(NO・6HO(脱イオン水中10重量パーセント)と混合した。得られた10固体重量パーセントの酸性化分散溶液は、全固形分の30.6重量パーセントのZn(NO・6HOを含有した。
【0125】
(実施例7)
比較実施例C(45g)を、45グラムの脱イオン水と混合した。得られた5固体重量パーセントの酸性化分散溶液は、全固形分の30.6重量パーセントのZn(NO・6HOを含有した。
【0126】
比較実施例C及び実施例7を、#6巻線コーティングロッドを使用して、PET基材上にコーティングした。全てのコーティングされたサンプルを、120℃で10分間加熱した。比較実施例Cの2つのコーティングされたサンプル及び実施例6の2つのコーティングされたサンプルを、#6巻線コーティングロッドを使用して、脱イオン水(1mg/mL)中のメチレンブルー溶液によって更にコーティングし、室温で乾燥させた。MBコーティングされたサンプルを、UVチャンバA又はUVチャンバBに入れ、光触媒活性試験を行った。MBコーティングされたサンプルを、UVチャンバBのサンプルについては15分毎に、UVチャンバAのサンプルについては1時間毎にチャンバから取り出し、透過率測定を行った。表5及び6に結果を報告する。
【0127】
(実施例8)
比較実施例B(100グラム)を、40.920グラムのTiOSO TiOSO・2HO(脱イオン水中10固体重量パーセント)及び22.739グラムのZn(NO・6HO(脱イオン水中10固体重量パーセント)と混合した。得られた10重量パーセントのコーティング溶液は、TiOSO・2HO(24.7重量パーセント)及びZn(NO・6HO(13.6重量パーセント)を含有した。
【0128】
(実施例9)
実施例8(45.0g)を、45.0グラムの脱イオン水で希釈した。得られた5固体重量パーセントのコーティング溶液は、全固形分の24.7重量パーセントのTiOSO・2HO及び全固形分の13.6重量パーセントのZn(NO・6HOを含有した。
【0129】
(実施例10)
比較実施例B(100g)を、40.920グラムのTiOSO・2HO(脱イオン水中10固体重量パーセント)及び45.478グラムのZn(NO・6HO(脱イオン水中10固体重量パーセント)と混合した。得られた10固体重量パーセントのコーティング溶液は、TiOSO・2HO(全固形分の21.7重量パーセント)及びZn(NO・6HO(全固形分の23.9重量パーセント)を含有した。
【0130】
(実施例11)
実施例10(45.0g)を、45.0グラムの脱イオン水で希釈した。得られた5固体重量パーセントのコーティング溶液は、TiOSO・2HO(全固形分の21.7重量パーセント)及びZn(NO・6HO(全固形分の23.9重量パーセント)を含有した。
【0131】
実施例8〜11を、#6巻線コーティングロッドを使用して、PETフィルム基材上にコーティングした。全てのコーティングされたサンプルを、120℃で10分間加熱した。実施例8〜11のそれぞれの2つのコーティングされたサンプルを、#6巻線コーティングロッドを使用して、脱イオン水(1mg/mL)中のメチレンブルー(MB)溶液で更にコーティングし、室温で乾燥させた。
【0132】
MBコーティングされたサンプルを、UVチャンバA及びBに別々に入れ、光触媒活性試験を行った。コーティングされたサンプルを、UVチャンバBのサンプルについては15分毎に、UVチャンバAのサンプルについては1時間毎にチャンバから取り出し、透過率測定を行った。照射後のコーティングサンプルの透過率の変化を、表5(UVチャンバBを使用)及び表6(UVチャンバAを使用)に報告する。結果は、バイメタルの亜鉛及びチタンドープシリカコーティングが、チタンドープシリカコーティングのみよりも良好な光触媒性能を有することを示している。
【0133】
【表5】
【0134】
【表6】
【0135】
比較実施例B〜Cのコーティングされたサンプル、及びソーダ石灰ガラススライド上の実施例5〜11を、242.6mm/minの引き上げ速度でディップコータを使用して、普通のガラス基材上に製造した。全てのコーティングされたサンプルを、120℃で10分間加熱した。サンプルを、脱イオン水(1mg/mL)中のメチレンブルー(MB)溶液で更にディップコーティングし、室温で乾燥させた。
【0136】
MBコーティングされたサンプルを、UVチャンバA及びBに別々に入れ、光触媒活性試験を行った。コーティングされたサンプルを、UVチャンバBのサンプルについては15分毎に、UVチャンバAのサンプルについては1時間毎にチャンバから取り出し、透過率測定を行った。照射後のコーティングサンプルの透過率の変化を、表7(UVチャンバBを使用)及び表8(UVチャンバAを使用)に報告する。結果は、バイメタルの亜鉛及びチタンドープシリカコーティングは、チタンドープシリカコーティングのみよりも良好な光触媒性能を有することを示している。結果は、ガラス基材上のバイメタルの亜鉛及びチタンドープシリカコーティングは、チタンドープシリカコーティングのみよりも良好な光触媒性能を有することを示している。
【0137】
【表7】
【0138】
【表8】
【0139】
比較実施例Cのコーティングされたサンプル、並びにソーダ石灰ガラススライド上の実施例5、8、及び10を、242.6mm/minの引き上げ速度でディップコータを使用して、ソーダ石灰ガラス基材上に製造した。全てのコーティングされたサンプルを、120℃で10分間、続いて、700℃で2分間加熱した。コーティングされたサンプルを、脱イオン水(1mg/mL)中のメチレンブルー(MB)溶液で更にディップコーティングし、室温で乾燥させた。
【0140】
MBコーティングされたサンプルを、UVチャンバA及びBに別々に入れ、光触媒活性試験を行った。コーティングされたサンプルを、UVチャンバBのサンプルについては15分毎に、UVチャンバAのサンプルについては1時間毎にチャンバから取り出し、透過率測定を行った。照射後のコーティングサンプルの透過率の変化を、表9(UVチャンバBを使用)及び表10(UVチャンバAを使用)に報告する。結果は、バイメタルの亜鉛及びチタンドープシリカコーティングは、チタンドープシリカコーティングのみよりも良好な光触媒性能を示すことを示している。結果は、ガラス基材上の亜鉛/チタンドープシリカコーティングは、700℃での高温処理後、チタンドープシリカコーティングのみよりも良好な光触媒性能を有することを示している。
【0141】
【表9】
【0142】
【表10】
【0143】
(実施例12)
比較実施例B(100g)を、40.920グラムのTiOSO・2HO(脱イオン水中10固体重量パーセント)及び14.767グラムのSnCl・5HO(脱イオン水中10固体重量パーセント)と混合した。得られた10重量パーセントのコーティング溶液は、TiOSO・2HO(全固形分の26.0重量パーセント)及びSnCl・5HO(全固形分の9.3重量パーセント)を含有した。
【0144】
(実施例13)
比較実施例B(100g)を、40.920グラムのTiOSO・2HO(脱イオン水10固体重量パーセント)及び29.534グラムのSnCl・5HO(脱イオン水中10固体重量パーセント)と混合した。得られた10重量パーセントのコーティング溶液は、TiOSO・2HO(全固形分の23.8重量パーセント)及びSnCl・5HO(全固形分の17.0重量パーセント)を含有した。
【0145】
実施例5、12、及び13を、#6巻線コーティングロッドを使用してPETフィルム上に、かつ、242.6mm/minの引き上げ速度でディップコータを使用して、ソーダ石灰ガラススライド上にコーティングした。全てのコーティングされたサンプルを、120℃で10分間加熱した。コーティングされたサンプルを、#6巻線コーティングロッドを使用して、脱イオン水(1mg/mL)中でメチレンブルー(MB)溶液で更にコーティングし又はディップコーティングして、室温で乾燥させた。
【0146】
MBコーティングされたサンプルを、UVチャンバA及びBに別々に入れ、光触媒活性試験を行った。コーティングされたサンプルを、UVチャンバBのサンプルについては15分毎に、UVチャンバAのサンプルについては1時間毎にチャンバから取り出し、透過率測定を行った。照射後のコーティングサンプルの透過率の変化を、表11(UVチャンバBを使用)及び表12(UVチャンバAを使用)に報告する。結果は、表11〜12において報告される。結果は、錫/チタンドープシリカコーティングは、チタンドープシリカコーティングのみよりも良好な光触媒性能を有することを示している。
【0147】
【表11】
【0148】
【表12】
【0149】
X線散乱分析のための試験方法
反射配置データは、PANalytical Empyrean回折計、銅Kα放射線、及び散乱放射線のPIXcel検出器レジストリを使用することにより、サーベイスキャンの形態で収集した。回折計には、可変入射ビームスリット及び回折ビームスリットが装着されていた。0.04度の刻み幅及び1200秒のドウェル時間を用いて、5〜80度(2θ)の結合連続モードで、サーベイスキャンを行った。40kV及び40mAのX線発生装置設定を使用した。
【0150】
実施例14〜16及び比較実施例D
実施例14〜16は、#6巻線コーティングロッド(公称湿式コーティング厚=14マイクロメートル)を使用して、コーティング金属ドープシリカ分散液をソーダ石灰ガラス基材(Brin Northwestern GlassCompany(Minneapolis、Minnesota)から入手)にコーティングすることによって調製した。金属ドープコロイド状シリカ分散液は、NALCO 1115シリカゾルを脱イオン水で10固体重量パーセントに希釈し、希釈されたシリカゾルを濃縮されたHNOで約2〜3のpHに酸性化し、続いて所望の量の水性金属化合物溶液(10重量パーセントのSnCl・5HO、TiOSO・2HO、又はZn(NO・6HO)を添加することによって調製した。実施例14〜16のそれぞれのコーティング組成物に添加された金属陽イオンの量及び種類を、以下の表13に要約する。コーティングされたサンプルは、続いて室温で乾燥させ、その後、120℃で10分間更に硬化させた。最終的なコーティングされたサンプルは、光学的に透明であり、かつ透き通っていた。分析のための粉末を、コーティングをガラス基材から削り取ることによって収集した。このように調製されたサンプルを、上記のX線散乱分析の試験方法に従って分析した。その結果を以下の表13に報告する。
【0151】
比較実施例Dは、#6巻線コーティングロッド(公称湿式コーティング厚=14マイクロメートル)を使用して、シリカ分散液をソーダ石灰ガラス基材上にコーティングすることによって調製した。シリカ分散液は、NALCO 1115シリカゾルを脱イオン水で10固体重量パーセントに希釈し、希釈されたシリカゾルを濃縮されたHNOで約2〜3のpHに酸性化することによって調製した。コーティングされたサンプルは、続いて室温で乾燥させ、その後、120℃で10分間更に硬化させた。最終的なコーティングされたサンプルは、光学的に透明であり、かつ透き通っていた。粉末を、コーティングをガラス基材から削り取ることによって収集し、続いて、実施例16と同じ比のシリカ/金属化合物を有するように所望の量の固形分のTiOSO・2HO粉末と混合した。
【0152】
【表13】
【0153】
当業者であれば、より詳細に添付の特許請求の範囲に記載される本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく本開示に対する他の改変及び変更を実施することが可能である。様々な実施形態の態様を様々な実施形態の他の態様と部分的若しくは全体的に互換すること又は組み合わせることが可能であることが理解される。特許証のための上記の出願において引用された、参照文献、特許、又は特許出願はいずれも一貫性を有するようにそれらの全容を参照することにより本明細書に援用される。これらの援用文献の一部と本出願との間に不一致又は矛盾がある場合、上記の説明文における情報が優先するものとする。特許請求される開示を当業者が実施することを可能ならしめるために示される上記の説明は、特許請求の範囲及びその全ての均等物によって規定される本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1