【実施例】
【0009】
まず、実施例に係る車両用シートの構造について
図1を用いて説明する。
図1は実施例に係る車両用シートを説明する側面図である。
【0010】
実施例に係る車両用シート1は、前後移動可能なシートクッション10と、シートクッション10に対して傾動可能なシートバック20と、シートバック20に接続されるヘッドレスト30と、を備える。
【0011】
シートクッション10の下面側すなわちシートクッション10の座面側とは反対側の面には、シートクッション10の車両に対する前後位置を調整する左右一対のスライドアジャスタ40が設けられている。左右それぞれのスライドアジャスタ40は、シートクッション10の下面側に固定されたアッパレール41および車両の床に固定されたロアレール42から構成されている。アッパレール41はシートクッション10の下部のアッパライザ50に固定されている。アッパレール41とロアレール42とを係合させ、ロアレール42上においてアッパレール41をスライドさせることにより、シートクッション10の車両に対する前後位置すなわち車両用シート1の車両に対する前後位置を調整することができる。スライドアジャスタ40には、操作レバー43が設けられている。操作レバー43を用いて、ロアレール42上におけるアッパレール41の前後スライド(前後移動)を操作することができる。また、操作レバー43でロックを解除することにより、ロアレール42上におけるアッパレール41の前後スライド(前後移動)が可能になる。
【0012】
次に、スライドアジャスタの詳細について
図2〜4を用いて説明する。
図2は実施例に係るスライドアジャスタのロック解除機構の斜視図であり、保護部材を省略して示す図である。
図3は実施例に係るスライドアジャスタのロック解除機構の斜視図であり、保護部材を省略しないで示す図である。
図4は実施例に係るスライドアジャスタの断面図である。
【0013】
左側のスライドアジャスタ40には、アッパレール41の前後動を規制するロック機構44と、U字形状の操作レバー43の操作に連動する係合部でアッパレール41の前後動の規制を解除して、車両用シート1の前後位置を所望の位置に設定するロック解除機構45が設けられている。ロック機構44は、アッパレール41に装着されるストッパ44aと、ストッパ44aに付勢力を付与する板状スプリング44cを備える。
ロック解除機構45は、ストッパ44aを動作させるブラケット45aと、操作レバー43およびブラケット45aの双方に付勢力を付与する針金状スプリング45cとを備えている。なお、ロック解除機構45はアッパレール41の前後方向の中央付近(
図1の破線円A)に配置される。
【0014】
より具体的には、ロック機構44は、通常は、
図4に示すように、板状スプリング44cの付勢力によってストッパ44aが回転軸44b周りに反時計方向に向けて付勢され、ロック状態を維持する。ロック解除機構45は、通常は、
図2に示すように、針金状スプリング45cの付勢力によってブラケット45aが支持軸45b回りに時計方向に向けて付勢され、操作レバー43が下方に下がった状態になると共に、ブラケット45aの後方部とストッパ44aは離れた状態となるためストッパ44aは力を受けずロック状態を維持する。これらによって、アッパレール41の前後動が規制された状態になっている。
【0015】
この状態で車両用シート1の着座者が、
図2の矢印Bに示すように、操作レバー43を上方に向けて操作すると、操作レバー43が針金状スプリング45cの付勢力に抗して支持軸45b回りに反時計方向に回動し、この回動によってブラケット45aが針金状スプリング45cの付勢力に抗して、
図2の矢印Cに示すように、ストッパ44aを下方に向けて移動させることになる。このストッパ44aの下方への移動は、ストッパ44aが板状スプリング44cの付勢力に抗して回転軸44b周りに時計方向に回動することになり、スライドアジャスタ40をロック状態から解除し、これによって、アッパレール41はロアレール42に案内されつつ前後動が可能になる。
【0016】
したがって、着座者は、操作レバー43を上方に向けて操作しながら腰をずらすことによって車両用シート1を所望の前後位置に位置設定することができる。そして、所望の前後位置が決まった状態で操作レバー43から手を離すことにより、針金状スプリング45cの付勢力によって操作レバー43が下方位置に移動すると共に、ブラケット45aが支持軸45b回りに時計方向に回動することによって前述のとおりアッパレール41の前後動が再度ロックされた状態になる。
【0017】
図3および
図4に示すように、保護部材51はアッパライザ50に取り付けられ、ブラケット45aがストッパ44aに接続される部分の周りに配置される。保護部材51はU字状のワイヤで構成される。ストッパ44aに接続される部分を含み、平面視でブラケット45aの支持軸45bから後方部分の1/2以上が保護部材51に含まれている。操作レバー43を引き上げなくても、
図3の矢印Dに示すように、直接、ブラケット45aを上から押すことができるとストッパ44aが下がり、スライドアジャスタ40のロックは解除される。しかし、
図3に示すような保護部材51を設けることにより、保護部材51が支持軸45bから遠い部分のブラケット45aをガードし、上から押し込むことができなくなる。
【0018】
次に、実施例の作用効果について
図5を用いて説明する。
図5は実施例に係る車両用シートおよび後席用の車両用シートの側面図である。
【0019】
前席の車両用シート1の下部に高さのある広いスペースがあると、後席の車両用シート2の着座者の足や床に置いた荷物等が、ロック解除機構45に直接接触する可能性がある。具体的には、後席用の車両用シート2の着座者が前席の車両用シート1のロック解除機構45のブラケット45aを上から足で踏み込んでスライドアジャスタのロックを解除する可能性がある。しかし、実施例では保護部材51がブラケット45aの上方の周りに配置されるので、着座者はストッパ44aに接続しているブラケット45aを足で踏むことができない。これにより、運転中の不測のスライドアジャスタ40のロック解除を回避することができる。
【0020】
また、保護部材51はワイヤで構成されているので、樹脂等でロック解除機構45の全体を覆う場合に比べて、容易に製作することができ、コストを低減することができる。
【0021】
以上、本発明者らによってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。
【0022】
例えば、実施例では、ロック解除機構45を左側のスライドアジャスタに設けた例を説明したが、ロック解除機構45を右側または両側のスライドアジャスタに設けてもよい。