特許第6362649号(P6362649)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362649
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/08 20060101AFI20180712BHJP
【FI】
   B60N2/08
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-164665(P2016-164665)
(22)【出願日】2016年8月25日
(65)【公開番号】特開2018-30485(P2018-30485A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2017年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】横山 太一
(72)【発明者】
【氏名】庄司 雄大
(72)【発明者】
【氏名】古田 容造
(72)【発明者】
【氏名】高橋 邦尭
(72)【発明者】
【氏名】華野 政和
(72)【発明者】
【氏名】中野 満
【審査官】 森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−515328(JP,A)
【文献】 特開2012−11893(JP,A)
【文献】 特開2010−30558(JP,A)
【文献】 独国特許発明第102006021884(DE,B3)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/06 − 2/10
2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートは、
シートクッションと、
シートバックと、
前記シートクッションを前後に移動調整するスライドアジャスタと、
前記シートクッションを支持するアッパライザと、
を備え、
前記スライドアジャスタは、
前記アッパライザに固定されるアッパレールと、
車両の床に固定されるロアレールと、
前記アッパレールの前後移動を制御するロック機構と、
前記ロック機構のロックを解除するロック解除機構と、
前記アッパレールよりも前記シートクッションの中心側に配設される操作レバーと、
前記ロック解除機構を保護する保護部材と、
を備え、
前記ロック解除機構は、
前記操作レバーに連動するブラケット
を備え、
前記ロック機構は、
前記ブラケットにより上下動するストッパ
を備え、
前記ロック解除機構は、前記ブラケットを介して前記ロック機構のストッパを下げることにより、前記スライドアジャスタのロックを解除し、
前記保護部材は、U字状のワイヤで構成され、前記操作レバーの操作以外により前記ストッパを押し込むことを抑制するように構成され
平面視で前記U字状のワイヤ内に前記ストッパおよび前記ブラケットの支持軸から後方部分のうち前記ストッパを下げる部分を始点として前方向へ向けて1/2以上が入っている。
【請求項2】
請求項1の車両用シートにおいて、
前記保護部材は前記アッパライザに固定され、その固定位置は前記ブラケットよりも上方である。
【請求項3】
請求項2の車両用シートにおいて、
前記ロック機構は、さらに、前記ストッパを回転軸周りに付勢し、ロック状態を維持する板状スプリングを備え、
前記ストッパが前記ブラケットと当接する部分は前記ロアレールよりも前記シートクッションの中心側に位置する。
【請求項4】
請求項3の車両用シートにおいて、
前記ロック解除機構は、さらに、前記操作レバーおよび前記ブラケットの双方に付勢力を付与する針金状スプリングを備える。
【請求項5】
請求項4の車両用シートにおいて、
前記針金状スプリングの付勢力によって前記操作レバーが支持軸回りに第一方向に向けて付勢され、前記操作レバーが下方に下がった状態になると共に、前記ブラケットも前記針金状スプリングの付勢力によって前記支持軸回りに第一方向に向かう力を受け、前記ストッパには力が加わらず、前記スライドアジャスタはロック状態を維持する。
【請求項6】
請求項4の車両用シートにおいて、
前記操作レバーを上方に向けて操作すると、前記操作レバーが前記針金状スプリングの付勢力に抗して支持軸回りに第二方向に回動し、この回動によって前記ブラケットが前記針金状スプリングの付勢力に抗して、前記ストッパを下方に移動し、前記スライドアジャスタはロック解除状態になる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は車両用シートに関し、例えばシート位置調整機構を備える車両用シートに適用可能である。
【背景技術】
【0002】
車両用シートは、車両の運転時にステアリングやペダル、レバー、スイッチ類を安全に無理なく操作でき、また、道路をよく見渡すことができるよう、シートの前後位置を調整するスライドアジャスタやシートバックの角度を調整するリクライニングアジャスタなど、乗員の体格に合わせて運転姿勢を調整する様々な調整機能を備えている。スライドアジャスタによるシートの前後位置調整は、シートの下部前端にある操作レバーを引いてシートのロック状態を解除し、シートを車両前後方向に動かし、最適な位置で操作レバーを離してシートをロックしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭60−125230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スライドアジャスタのロック解除機構を、スライドアジャスタの側面に取り付けることがある。車両用シート下にスペースを有する場合、後席乗員の足や床に置いた荷物等がロック解除機構に干渉し、不意にロックを解除してしまう可能性がある。
本開示の課題は、スライドアジャスタのロック解除機構に干渉しない車両用シートを提供することにある。
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
すなわち、車両用シートは、シートクッションと、シートバックと、前記シートクッションを前後に移動調整するスライドアジャスタと、前記シートクッションを支持するアッパライザと、を備える。前記スライドアジャスタは、前記アッパライザに固定されるアッパレールと、車両の床に固定されるロアレールと、前記アッパレールの前後移動を制御するロック機構と、前記ロック機構のロックを解除するロック解除機構と、前記アッパレールよりも内側に配設される操作レバーと、前記ロック解除機構を保護する保護部材とを備える。前記ロック解除機構は、前記操作レバーに連動するブラケットを備える。前記ロック機構は、前記ブラケットにより上下動するストッパを備える。前記ロック解除機構は、前記ブラケットを介して前記ロック機構のストッパを下げることにより、前記スライドアジャスタのロックを解除する。前記保護部材は、ワイヤで構成され、前記操作レバーの操作以外により前記ストッパを押し込むことを抑制するように構成される。
【発明の効果】
【0006】
上記車両用シートによれば、スライドアジャスタのロック解除機構に干渉しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は実施例に係る車両用シートの側面図である。
図2図2は実施例に係るスライドアジャスタのロック解除機構の斜視図である。
図3図3は実施例に係るスライドアジャスタのロック解除機構の斜視図である。
図4図4は実施例に係るスライドアジャスタの断面図である。
図5図5は実施例に係る車両用シートおよび後席用の車両用シートの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施例について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。なお、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。なお、本明細書における前後方向、上下方向、左右方向などの方向は、図1に示したY軸正方向が前方向、Y軸負方向が後方向、X軸正方向が右方向、X軸負方向が左方向、Z軸正方向が上方向、Z軸負方向が下方向と規定される。
【実施例】
【0009】
まず、実施例に係る車両用シートの構造について図1を用いて説明する。図1は実施例に係る車両用シートを説明する側面図である。
【0010】
実施例に係る車両用シート1は、前後移動可能なシートクッション10と、シートクッション10に対して傾動可能なシートバック20と、シートバック20に接続されるヘッドレスト30と、を備える。
【0011】
シートクッション10の下面側すなわちシートクッション10の座面側とは反対側の面には、シートクッション10の車両に対する前後位置を調整する左右一対のスライドアジャスタ40が設けられている。左右それぞれのスライドアジャスタ40は、シートクッション10の下面側に固定されたアッパレール41および車両の床に固定されたロアレール42から構成されている。アッパレール41はシートクッション10の下部のアッパライザ50に固定されている。アッパレール41とロアレール42とを係合させ、ロアレール42上においてアッパレール41をスライドさせることにより、シートクッション10の車両に対する前後位置すなわち車両用シート1の車両に対する前後位置を調整することができる。スライドアジャスタ40には、操作レバー43が設けられている。操作レバー43を用いて、ロアレール42上におけるアッパレール41の前後スライド(前後移動)を操作することができる。また、操作レバー43でロックを解除することにより、ロアレール42上におけるアッパレール41の前後スライド(前後移動)が可能になる。
【0012】
次に、スライドアジャスタの詳細について図2〜4を用いて説明する。図2は実施例に係るスライドアジャスタのロック解除機構の斜視図であり、保護部材を省略して示す図である。図3は実施例に係るスライドアジャスタのロック解除機構の斜視図であり、保護部材を省略しないで示す図である。図4は実施例に係るスライドアジャスタの断面図である。
【0013】
左側のスライドアジャスタ40には、アッパレール41の前後動を規制するロック機構44と、U字形状の操作レバー43の操作に連動する係合部でアッパレール41の前後動の規制を解除して、車両用シート1の前後位置を所望の位置に設定するロック解除機構45が設けられている。ロック機構44は、アッパレール41に装着されるストッパ44aと、ストッパ44aに付勢力を付与する板状スプリング44cを備える。
ロック解除機構45は、ストッパ44aを動作させるブラケット45aと、操作レバー43およびブラケット45aの双方に付勢力を付与する針金状スプリング45cとを備えている。なお、ロック解除機構45はアッパレール41の前後方向の中央付近(図1の破線円A)に配置される。
【0014】
より具体的には、ロック機構44は、通常は、図4に示すように、板状スプリング44cの付勢力によってストッパ44aが回転軸44b周りに反時計方向に向けて付勢され、ロック状態を維持する。ロック解除機構45は、通常は、図2に示すように、針金状スプリング45cの付勢力によってブラケット45aが支持軸45b回りに時計方向に向けて付勢され、操作レバー43が下方に下がった状態になると共に、ブラケット45aの後方部とストッパ44aは離れた状態となるためストッパ44aは力を受けずロック状態を維持する。これらによって、アッパレール41の前後動が規制された状態になっている。
【0015】
この状態で車両用シート1の着座者が、図2の矢印Bに示すように、操作レバー43を上方に向けて操作すると、操作レバー43が針金状スプリング45cの付勢力に抗して支持軸45b回りに反時計方向に回動し、この回動によってブラケット45aが針金状スプリング45cの付勢力に抗して、図2の矢印Cに示すように、ストッパ44aを下方に向けて移動させることになる。このストッパ44aの下方への移動は、ストッパ44aが板状スプリング44cの付勢力に抗して回転軸44b周りに時計方向に回動することになり、スライドアジャスタ40をロック状態から解除し、これによって、アッパレール41はロアレール42に案内されつつ前後動が可能になる。
【0016】
したがって、着座者は、操作レバー43を上方に向けて操作しながら腰をずらすことによって車両用シート1を所望の前後位置に位置設定することができる。そして、所望の前後位置が決まった状態で操作レバー43から手を離すことにより、針金状スプリング45cの付勢力によって操作レバー43が下方位置に移動すると共に、ブラケット45aが支持軸45b回りに時計方向に回動することによって前述のとおりアッパレール41の前後動が再度ロックされた状態になる。
【0017】
図3および図4に示すように、保護部材51はアッパライザ50に取り付けられ、ブラケット45aがストッパ44aに接続される部分の周りに配置される。保護部材51はU字状のワイヤで構成される。ストッパ44aに接続される部分を含み、平面視でブラケット45aの支持軸45bから後方部分の1/2以上が保護部材51に含まれている。操作レバー43を引き上げなくても、図3の矢印Dに示すように、直接、ブラケット45aを上から押すことができるとストッパ44aが下がり、スライドアジャスタ40のロックは解除される。しかし、図3に示すような保護部材51を設けることにより、保護部材51が支持軸45bから遠い部分のブラケット45aをガードし、上から押し込むことができなくなる。
【0018】
次に、実施例の作用効果について図5を用いて説明する。図5は実施例に係る車両用シートおよび後席用の車両用シートの側面図である。
【0019】
前席の車両用シート1の下部に高さのある広いスペースがあると、後席の車両用シート2の着座者の足や床に置いた荷物等が、ロック解除機構45に直接接触する可能性がある。具体的には、後席用の車両用シート2の着座者が前席の車両用シート1のロック解除機構45のブラケット45aを上から足で踏み込んでスライドアジャスタのロックを解除する可能性がある。しかし、実施例では保護部材51がブラケット45aの上方の周りに配置されるので、着座者はストッパ44aに接続しているブラケット45aを足で踏むことができない。これにより、運転中の不測のスライドアジャスタ40のロック解除を回避することができる。
【0020】
また、保護部材51はワイヤで構成されているので、樹脂等でロック解除機構45の全体を覆う場合に比べて、容易に製作することができ、コストを低減することができる。
【0021】
以上、本発明者らによってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。
【0022】
例えば、実施例では、ロック解除機構45を左側のスライドアジャスタに設けた例を説明したが、ロック解除機構45を右側または両側のスライドアジャスタに設けてもよい。
【符号の説明】
【0023】
1・・・車両用シート
10・・・シートクッション
20・・・シートバック
30・・・ヘッドレスト
40・・・スライドアジャスタ
41・・・アッパレール
42・・・ロアレール
43・・・操作レバー
44・・・ロック機構
44a・・・ストッパ
44b・・・回転軸
44c・・・板状スプリング
45・・・ロック解除機構
45a・・・ブラケット
45b・・・支持軸
45c・・・針金状スプリング
50・・・アッパライザ
51・・・保護部材
図1
図2
図3
図4
図5