(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のゴム組成物は、白色充填剤、および下記式(1)で表される化合物を含有するゴム組成物である。
【化4】
(式(1)中、R
1は、炭素数8〜14のアルキル基またはアルケニル基を表し、該アルキル基およびアルケニル基は直鎖状、分枝鎖状および環状の何れでもよく、また、R
2はヒドロキシアルキル基またはオキシアルキレンユニットを有するヒドロキシアルキル基を表す。)
【0015】
前記ゴム成分としては特に限定されず、天然ゴム(NR)およびポリイソプレンゴム(IR)を含むイソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)などのジエン系ゴム成分やブチル系ゴム成分が挙げられる。これらのゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、低燃費性や耐摩耗性、耐久性、ウェットグリップ性能のバランスの観点からSBRおよびBRを含有することが好ましい。
【0016】
スチレンブタジエンゴム(SBR)としては、特に限定されず、乳化重合SBR(E−SBR)、溶液重合SBR(S−SBR)などが挙げられ、油展されていても、油展されていなくてもよい。なかでも、グリップ性能の観点から、油展かつ高分子量のSBRが好ましい。また、フィラーとの相互作用力を高めた末端変性S−SBRや、主鎖変性S−SBRも使用可能である。これらSBRは、1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
SBRのスチレン含量は、グリップ性能の観点から、16質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、25質量%以上がさらに好ましく、30質量%以上が特に好ましい。また、スチレン含量が多すぎると、スチレン基が隣接し、ポリマーが硬くなりすぎ、架橋が不均一となりやすく、高温走行時のブロー性が悪化するおそれがあり、また、温度依存性が増大し、温度変化に対する性能変化が大きくなってしまい、走行中・後期の安定したグリップ性能が良好に得られない傾向があることから、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。なお、本明細書において、SBRのスチレン含量は、
1H−NMR測定により算出される。
【0018】
SBRのビニル含量は、ゴム組成物のHs、グリップ性能の観点から、10%以上が好ましく、15%以上がより好ましい。また、グリップ性能、EB(耐久性)、耐摩耗性の観点から、90%以下が好ましく、80%以下がより好ましく、70%以下がさらに好ましく、60%以下が特に好ましい。なお、本明細書において、SBRのビニル含量(1,2−結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0019】
SBRはまた、ガラス転移温度(Tg)が−45℃以上であることが好ましく、−40℃以上であることがより好ましい。該Tgは、10℃以下であることが好ましく、温帯冬期での脆化クラック防止の観点から5℃以下であることがより好ましい。なお、本明細書において、SBRのガラス転移温度は、JIS K 7121に従い、昇温速度10℃/分の条件で示差走査熱量測定(DSC)を行って測定される値である。
【0020】
SBRの重量平均分子量(Mw)は、グリップ性能やブロー性の観点から、70万以上が好ましく、90万以上がより好ましく、100万以上がさらに好ましい。また、ブロー性の観点から、重量平均分子量は200万以下が好ましく、180万以下がより好ましい。なお、本明細書において、SBRの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ−M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0021】
SBRのゴム成分中の含有量は、十分なグリップ性能が得られるという理由から、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上がより好ましい。レース用タイヤとする場合は、80質量%以上が特に好ましく、グリップ性能の観点からは100質量%が好ましい。
【0022】
なかでも、より高いグリップ性能、ブロー性を発揮することができるという理由から、スチレン含量が16〜60質量%のSBRを40質量%以上含むことが好ましく、スチレン含量が25〜55質量%のSBRを50質量%以上含むことがより好ましい。
【0023】
BRとしては、特に限定されず、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のBR130B、BR150B等の高シス含有量のBR、日本ゼオン(株)製のBR1250H等の変性BR、宇部興産(株)製のVCR412、VCR617等のシンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR、ランクセス(株)製のBUNA−CB25等の希土類元素系触媒を用いて合成されるBR等を使用できる。これらBRは、1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、低燃費性、耐摩耗性の観点から、希土類元素系触媒を用いて合成されるBR(希土類系BR)が好ましい。
【0024】
上記希土類系BRは、希土類元素系触媒を用いて合成されたブタジエンゴムであり、シス含量が高く、かつビニル含量が低いという特徴を有している。希土類系BRとしては、タイヤ製造において一般的なものを使用できる。
【0025】
希土類系BRの合成に使用される希土類元素系触媒としては、公知のものが使用でき、例えば、ランタン系列希土類元素化合物、有機アルミニウム化合物、アルミノキサン、ハロゲン含有化合物、必要に応じてルイス塩基を含む触媒などが挙げられる。これらのなかでも、ランタン系列希土類元素化合物としてネオジム(Nd)含有化合物を用いたNd系触媒が特に好ましい。
【0026】
ランタン系列希土類元素化合物としては、原子番号57〜71の希土類金属のハロゲン化物、カルボン酸塩、アルコラート、チオアルコラート、アミド等が挙げられる。なかでも、前記Nd系触媒が、高シス含量、低ビニル含量のBRが得られる点で好ましい。
【0027】
有機アルミニウム化合物としては、AlR
aR
bR
c(式中、R
a、R
b、R
cは、同一若しくは異なって、水素または炭素数1〜8の炭化水素基を表す。)で表されるものを使用できる。アルミノキサンとしては、鎖状アルミノキサン、環状アルミノキサンが挙げられる。ハロゲン含有化合物としては、AlX
kR
d3-k(式中、Xはハロゲン、R
dは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基またはアラルキル基、kは1、1.5、2または3を表す。)で表されるハロゲン化アルミニウム:Me
3SrCl、Me
2SrCl
2、MeSrHCl
2、MeSrCl
3などのストロンチウムハライド;四塩化ケイ素、四塩化錫、四塩化チタン等の金属ハロゲン化物が挙げられる。ルイス塩基は、ランタン系列希土類元素化合物を錯体化するのに用いられ、アセチルアセトン、ケトン、アルコール等が好適に用いられる。
【0028】
希土類元素系触媒は、ブタジエンの重合の際に、有機溶媒(n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、トルエン、キシレン、ベンゼン等)に溶解した状態で用いても、シリカ、マグネシア、塩化マグネシウム等の適当な担体上に担持させて用いてもよい。重合条件としては、溶液重合または塊状重合のいずれでもよく、好ましい重合温度は−30〜150℃であり、重合圧力は他の条件に依存して任意に選択してもよい。
【0029】
希土類系BRのシス1,4結合含有率(シス含量)は、耐久性や耐摩耗性の観点から、90質量%以上が好ましく、93質量%以上がより好ましく、95質量%以上がより好ましい。
【0030】
希土類系BRのビニル含量は、耐久性や耐摩耗性の観点から、1.8質量%以下が好ましく、1.5質量%以下がより好ましく、1.0質量%以下がさらに好ましく、0.8質量%以下が特に好ましい。なお、本明細書において、BRのビニル含量(1,2−結合ブタジエン単位量)およびシス含量(シス1,4結合含有率)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0031】
BRを含有する場合の、ゴム成分中のBRの含有量は、耐摩耗性、グリップ性能、低燃費性の観点から、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。また該含有量は、耐摩耗性、グリップ性能、低燃費性の観点から、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、グリップ性能が必要なタイヤでは40質量%以下が好ましい。
【0032】
前記白色充填剤としては、水酸化アルミニウム、アルミナ(酸化アルミニウム)、炭酸カルシウム、タルクなどが挙げられ、これらの白色充填剤を単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。耐摩耗性、耐久性、ウェットグリップ性能および低燃費性に優れるという理由から、シリカおよび/または水酸化アルミニウムを含有することが好ましい。
【0033】
シリカのBET比表面積は、耐摩耗性能、ウェットグリップ性能および加工性の観点から、70〜300m
2/gが好ましく、80〜280m
2/gがより好ましく、90〜250m
2/gがさらに好ましい。なお、本明細書におけるシリカのN
2SAは、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0034】
シリカを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ウェットグリップ性能の観点から、40質量部以上が好ましく、50質量部以上がより好ましい。また、シリカの含有量は、加工性、加硫後の冷却に伴うシュリンクを抑制する、破断抗力(TB)を確保するという理由から、150質量部以下が好ましく、140質量部以下がより好ましい。
【0035】
シリカは、シランカップリング剤と併用することが好ましい。シランカップリング剤としては、ゴム工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができ、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、Momentive社製のNXT−Z100、NXT−Z45、NXTなどのメルカプト系(メルカプト基を有するシランカップリング剤)、ビニルトリエトキシシランなどのビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシランなどのニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどのクロロ系などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、スルフィド系、メルカプト系がシリカとの結合力が強く、低燃費特性に優れるという点から好ましい。また、メルカプト系を使用すると、低燃費特性および耐摩耗性を好適に向上できるという点からも好ましい。
【0036】
メルカプト系のシランカップリング剤は、低燃費特性および耐摩耗性に優れる一方、老化防止剤として2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体(TMQ)を含有する場合は連鎖的なラジカル反応を起こすという問題がある。しかしながら、後述する式(3)で表される老化防止剤または式(4)で表される老化防止剤を含有することで、メルカプト系のシランカップリング剤によるラジカル化を抑制することができる。さらには、TMQなどのジヒドロキノリンを有する老化防止剤を含有しないことがメルカプト系のシランカップリング剤によるラジカル化をより抑制できるという理由から好ましい。
【0037】
シランカップリング剤を含有する場合のシリカ100質量部に対する含有量は、十分なフィラー分散性の改善効果や、粘度低減等の効果が得られるという理由から、4.0質量部以上であることが好ましく、6.0質量部以上であることがより好ましい。また、十分なカップリング効果、シリカ分散効果が得られず、補強性が低下するという理由から、シランカップリング剤の含有量は、12質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましい。
【0038】
水酸化アルミニウムのBET比表面積は、ウェットグリップ性能の観点から、5m
2/g以上が好ましく、10m
2/g以上が好ましく、12m
2/g以上がより好ましい。また、水酸化アルミニウムのBET比表面積は、水酸化アルミニウムの分散性、再凝集防止、耐摩耗性の観点から、50m
2/g以下が好ましく、45m
2/g以下がより好ましく、40m
2/g以下がさらに好ましい。なお、本明細書における水酸化アルミニウムのBET比表面積は、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0039】
水酸化アルミニウムの平均粒子径(D50)は、水酸化アルミニウムの分散性、再凝集防止、耐摩耗性の観点から、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上がさらに好ましい。また、水酸化アルミニウムの平均粒子径(D50)は、耐摩耗性の観点から、3.0μm以下が好ましく、2.0μmがより好ましい。なお、本明細書における平均粒子径(D50)とは、粒子径分布測定装置により求めた粒子径分布曲線の積算質量値50%の粒子径である。
【0040】
水酸化アルミニウムを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、グリップ性能の観点から、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましい。また、水酸化アルミニウムの含有量は、耐摩耗性の観点から、50質量部以下が好ましく、45質量部以下がより好ましく、40質量部以下がさらに好ましい。
【0041】
本発明のゴム組成物は、下記式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする。
【化5】
(式(1)中、R
1は、炭素数8〜14のアルキル基またはアルケニル基を表し、該アルキル基およびアルケニル基は直鎖状、分枝鎖状および環状の何れでもよく、また、R
2はヒドロキシアルキル基またはオキシアルキレンユニットを有するヒドロキシアルキル基を表す。)
【0042】
この化合物を含有することにより、白色充填剤の表面がこの化合物とシランカップリング剤により覆われ、白色充填剤同士の凝集を抑制すること、および配合物の粘度を低減させることができるため、ゴム中での白色充填剤の分散性を効率的に向上させることができる。また、白色充填剤同士の凝集が抑制され、白色充填剤の凝集体に包み込まれたオクルードラバーを減らすことができる。その結果、ゴム組成物の加工性、低燃費性および耐摩耗性をも向上させることができる。
【0043】
式(1)で表される化合物は、従来の白色充填剤を含有するゴム組成物の加工性等を改善するために配合されている脂肪酸モノエタノールアミドおよび脂肪酸ジエタノールアミドと比べ、窒素原子がメチル化されていること、すなわち、窒素原子に結合する置換基の1つがメチル基であることを特徴とする。窒素原子をメチル化することにより、結晶化が起こり難くなり、常温で化合物が液状となるため、配合物の粘度の低減効果に優れ、ゴム中の白色充填剤の分散性をより向上させることができる。
【0044】
式(1)中のR
1は、配合物の粘度、スコーチタイム、および低燃費性の観点から、炭素数8〜14のアルキル基またはアルケニル基であり、該アルキル基およびアルケニル基は、直鎖状、分枝鎖状および環状の何れでもよい。例えば、オクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基(ラウリル基)、トリデシル基、イソトリデシル基などのアルキル基、オクテン基、ノネン基、デセン基などのアルケニル基が挙げられる。なお、アルキル基および/またはアルケニル基が異なる2種以上の化合物を含むヤシ油脂肪酸などであってもよい。また、該化合物の原料となる脂肪酸としては、好ましくは、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸などが挙げられる。式(1)におけるR
1の炭素数が14を超える場合は、アミドやOH基などの極性基の密度が低くなり、極性が下がるため白色充填剤の表面への吸着性能が低下する傾向がある。
【0045】
また、式(1)中のR
2は、ヒドロキシアルキル基またはオキシアルキレンユニットを有するヒドロキシアルキル基である。前記アルキル基としては、炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖のアルキル基が好ましく、炭素数2〜3のアルキル基がより好ましい。さらに、上記式(1)中のR
2は、下記式(2)で表されるものが好ましく、R
6は炭素数1〜6のアルキレン基であり、また、nは1〜5となる数であることが好ましい。
−(R
3O)
n−H (2)
中でも、R
3が、エチレン基やプロピレン基が好ましく、nは1〜3となるものが好ましく、1がより好ましく、R
3が、エチレン基であり、かつnが1がより更に好ましい。なお、n個のR
3は同一でも異なっていてもよい。
【0046】
式(1)で表される具体的な化合物としては、ヤシ油脂肪酸N−メチルエタノールアミド、パーム核油脂肪酸N−メチルエタノールアミド、ラウリル酸N−メチルエタノールアミドなどが挙げられる。
【0047】
式(1)で表される化合物のゴム成分100質量部に対する含有量は、白色充填剤の表面を覆い、粘度低減効果を発現するという理由から、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましい。また、該化合物の含有量は、熱酸化劣化を有効に抑制し、ゴム成分と白色充填剤との反応を阻害しないという理由から、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0048】
白色充填剤を含有するゴム配合に、前記式(1)で表される化合物を配合すると、該化合物が白色充填剤の表面を疎水化することにより、シリカ同士の凝集が抑制され、加工性が良好となるものと推察される。さらには、前述のようにメチル化されている前記式(1)で表される化合物は液状であるため、ゴム配合の粘度を低減することができるため、ゴム中の白色充填剤の分散性をより向上させることができる。
【0049】
本発明に係るゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般的に使用される配合剤、例えば、カーボンブラック、樹脂成分、オイル、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、加硫剤、加硫促進剤などを適宜配合することができる。
【0050】
前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N
2SA)は、グリップ性能の観点から、80m
2/g以上であり、100m
2/g以上が好ましく、140m
2/g以上がより好ましく、151m
2/g以上がさらに好ましく、195m
2/g以上が特に好ましい。また、N
2SAは、良好なフィラー分散性を確保するという観点から、600m
2/g以下が好ましく、500m
2/g以下がより好ましく、400m
2/g以下が更に好ましい。なお、カーボンブラックのN
2SAは、JIS K 6217−2:2001に準拠してBET法で求められる。
【0051】
カーボンブラックのゴム成分100質量部に対する含有量は、紫外線クラック防止性能を確保するという理由から3質量部以上である。好ましいカーボンブラックの含有量は、使用されるタイヤ部材や、タイヤに期待されるグリップ性能、耐摩耗性、低燃費性により異なる。汎用タイヤのトレッド部など、シリカによりウェットグリップ性能を確保するタイヤの場合は、ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量は5〜30質量部が好ましい。また、レース用タイヤのトレッド部など、カーボンブラックによりドライグリップ性能や耐摩耗性を確保するタイヤの場合は、ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量は、40〜140質量部が好ましい。
【0052】
前記老化防止剤としては、下記式(3)で表される老化防止剤または下記式(4)で表される老化防止剤を含有することが、混練り時の連鎖的なラジカル反応を抑制すること、タイヤトレッドに求められる耐候性や耐熱酸化劣化性能を向上させることができるという理由から好ましい。
【0054】
式(3)中、各R
4は、それぞれ独立して、置換基を有していても良いC
1〜C
20のアルキル基、置換基を有していても良いフェニル基または置換基を有していても良いベンジル基を表し、R
5は、置換基を有していても良いC
1〜C
10のアルキル基または置換基を有していても良いC
5〜C
12のシクロアルキル基を表す。
【0055】
R
4のC
1〜C
20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノチル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基などが挙げられる。なかでも、C
8〜C
12のアルキル基が好ましく、C
8のn−オクチル基およびC
12のn−ドデシル基がより好ましい。
【0056】
また、R
5の置換基を有していても良いC
1〜C
20のアルキル基、置換基を有していても良いフェニル基または置換基を有していても良いベンジル基の置換基としては、具体的には水酸基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基等のC
1〜C
6アルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基等のC
1〜C
6のアルコキシ基、−OCOR
7基、−COOR
8基、−CONR
9R
10基などが挙げられる。
【0057】
R
7およびR
8は、それぞれ独立してC
1〜C
20アルキル基またはC
2〜C
8アルケニル基を表し、R
9およびR
10はそれぞれ独立して水素、C
1〜C
20アルキル基またはC
2〜C
8アルケニル基を表す。
【0058】
C
1〜C
20アルキル基として具体的にはR
4の具体例と同様のものを例示することができる。C
2〜C
8アルケニル基として、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1,3−ブタンジエニル基、2−メチル−2−プロペニル基などが挙げられる。
【0059】
R
5のC
1〜C
10アルキル基として具体的にはR
4の具体例として例示されたもののうち、C
1〜C
10の条件を満たすものが挙げられる。なかでも、C
1〜C
3のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0060】
C
5〜C
12シクロアルキル基としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、シクロデシルなどが挙げられる。置換基を有していても良いC
1〜C
10のアルキル基または置換基を有していても良いC
3〜C
12シクロアルキル基の置換基としては、具体的には水酸基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基等のC
1〜C
6アルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基等のC
1〜C
6のアルコキシ基などが挙げられる。
【0061】
式(3)で表される具体的な老化防止剤としては、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール(川口化学工業(株)のANTAGE HP−400、BASF社製のIRGANOX1520L)や、4,6−ビス(ドデシルチオメチル)−o−クレゾール(川口化学工業(株)のANTAGE HP−500、BASF社製のIRGANOX1726)などが挙げられる。
【0063】
式(4)中、各R
6は、それぞれ独立して、C
1〜C
10のアルキル基を表す。
【0064】
R
6のC
1〜C
10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノチル基、n−デシル基、などが挙げられる。なかでも、C
1〜C
3のアルキル基が好ましく、メチル基およびエチル基がより好ましい。
【0065】
式(4)で表される具体的な老化防止剤としては、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(川口化学工業(株)のANTAGE W−400)や、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール(川口化学工業(株)のANTAGE W−500)などが挙げられる。
【0066】
式(3)で表される老化防止剤または式(4)で表される老化防止剤のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、0.7質量部以上がさらに好ましい。0.1質量部未満の場合は該老化防止剤による効果が不十分となる傾向がある。また、該老化防止剤の含有量は、10質量部以下が好ましく、3.0質量部以下がより好ましく、2.5質量部以下がさらに好ましい。10質量部を超える場合は、低燃費性能が悪化する傾向がある。
【0067】
前記老化防止剤としては、前記式(3)または式(4)の老化防止剤に加えて、他の老化防止剤を含有することができる。他の老化防止剤としては特に限定されず、ゴム分野で使用されているものが使用可能であり、例えば、キノリン系、キノン系、フェノール系、フェニレンジアミン系老化防止剤などが挙げられる。ラジカル連鎖禁止型の老化防止剤であり、連鎖的なラジカル反応を停止することができることから、フェニレンジアミン系老化防止剤を好適に使用できる。フェニレンジアミン系老化防止剤としては、前記のN−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン(6PPD)などが挙げられる。
【0068】
他の老化防止剤の配合量は特に限定されず従来の配合量に従って配合すればよい。但し、フェニレンジアミン系老化防止剤は、耐オゾン性、耐熱酸化劣化性を併せ持つという理由から、ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましい。また、低燃費性の観点から、5.0質量部以下が好ましく、4.5質量部以下がより好ましい。
【0069】
なお、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体(TMQ)などのジヒドロキノリンを有する老化防止剤は、混練中にラジカル反応による連鎖的劣化反応、それによるポリマー開裂を起こすおそれがあることから、ジヒドロキノリンを有する老化防止剤のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.5質量部以下が好ましく、0.3質量部以下がより好ましく、0質量部(実質的に含有しない)がより好ましい。
【0070】
本発明のゴム組成物は、一般的な方法で製造できる。例えば、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどの一般的なゴム工業で使用される公知の混練機で、前記各成分のうち、架橋剤および加硫促進剤以外の成分を混練りした後、これに、架橋剤および加硫促進剤を加えてさらに混練りし、その後加硫する方法などにより製造できる。
【0071】
本発明のゴム組成物は、タイヤのトレッド、アンダートレッド、カーカス、サイドウォール、ビード等のタイヤ部材を始め、防振ゴム、ベルト、ホース、その他のゴム製工業製品等にも用いることができる。特に、ウェットグリップ性および耐摩耗性が改善できることから、本発明のゴム組成物で構成されるトレッドを有するタイヤとすることが好ましい。
【0072】
本発明のゴム組成物を用いたタイヤは、前記ゴム組成物を用いて、通常の方法により製造できる。すなわち、ジエン系ゴム成分に対して前記の配合剤を必要に応じて配合した前記ゴム組成物を、トレッドなどの形状にあわせて押出し加工し、タイヤ成形機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、通常の方法にて成形することにより、未加硫タイヤを形成し、この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、タイヤを製造することができる。
【実施例】
【0073】
実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらのみに限定して解釈されるものではない。
【0074】
実施例および比較例で使用した各種薬品について説明する。
変性SBR:後述の変性SBRの製造方法により調製(油展37.5部、スチレン量:41質量%、ビニル含量:40%、Tg:−29℃、重量平均分子量:119万)
BR:ランクセス(株)製のCB24(Nd系触媒を用いて合成したハイシスBR、Tg:−110℃)
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN110(N
2SA:142m
2/g)
シリカ1:エボニックデグサ社製のULTRASIL VN3(N
2SA:175m
2/g)
シリカ2:エボニックデグサ社製のULTRASIL U9000Gr(N
2SA:235m
2/g)
シランカップリング剤1:エボニックデグサ社製のSi75(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
シランカップリング剤2:Momentive社製のNXT(8−メルカプトオクタノイルトリエトキシシラン)
シランカップリング剤3:Momentive社製のNXT−Z45
水酸化アルミニウム:住友化学(株)製のAth#B(平均粒子径:0.6μm、N
2SA:15m
2/g)
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース355
老化防止剤1:住友化学(株)製のアンチゲン6C(6PPD、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
老化防止剤2:大内新興化学工業(株)製のノクラック224(TMQ、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体)
老化防止剤3:川口化学工業(株)製のアンテージW−400(2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−ブチルフェノール))
老化防止剤4:川口化学工業(株)製のアンテージHP−400(4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール)
老化防止剤5:川口化学工業(株)製のアンテージHP−500(4,6−ビス(ドデシルチオメチル)−o−クレゾール)
化合物1:三洋化成工業(株)製の試作品(ヤシ油脂肪酸N−メチルエタノールアミド)
化合物2:三洋化成工業(株)製のプロファンSME(ステアリン酸モノエタノールアミド)
化合物3:三洋化成工業(株)製のプロファンAB−20(ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド)
化合物4:三洋化成工業(株)製のプロファンエキストラ24(ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド)
化合物5:三洋化成工業(株)製のイオネットS−20(ヤシ油脂肪酸ソルビタン)
化合物6:ストラクトール社製のEF44(脂肪酸亜鉛)
プロセスオイル:H&R社製のVivatec500(TDAEオイル、Tg:−58℃)
樹脂:ヤスハラケミカル(株)製のM125(水添スチレンテルペン樹脂、SP値:8.52、軟化点:125℃、Tg:65)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
ステアリン酸:日油(株)製の椿
硫黄:細井化学工業(株)製のHK−200−5(オイル分5質量%)
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS−G(TBBS、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(DPG、1,3−ジフェニルグアニジン)
【0075】
変性SBRの製造方法
(1)末端変性剤の作製
窒素雰囲気下、250mLメスフラスコに3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン(アヅマックス(株)製)を20.8g入れ、さらに無水ヘキサン(関東化学(株)製)を加え、全量を250mLにして作製した。
(2)変性SBRの調製
十分に窒素置換した30L耐圧容器にn−ヘキサンを18L、スチレン(関東化学(株)製)を800g、ブタジエンを1200g、テトラメチルエチレンジアミンを1.1mmol加え、40℃に昇温した。次に、1.6Mブチルリチウム(関東化学(株)製)を1.8mL加えた後、50℃に昇温させ3時間撹拌した。次に前記末端変性剤を4.1mL追加し、30分間撹拌を行った。反応溶液にメタノール15mLおよび2,6−tert−ブチル−p−クレゾール(大内新興化学(株)製)0.1gを添加後、TDAE1200gを添加し10分間撹拌を行った。その後、スチームストリッピング処理によって重合体溶液から凝集体を回収した。得られた凝集体を24時間減圧乾燥させ、変性SBRを得た。結合スチレン量は41質量%、ビニル量は40%、Tg:−29℃、Mwは119万であった。
【0076】
実施例および比較例
表1および2に示す配合処方にしたがい、1.7Lの密閉型バンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外の薬品を排出温度170℃で5分間混練りし、混練物を得た。さらに、得られた混練物を前記バンバリーミキサーにより、排出温度150℃で4分間混練りした(リミル)。次に、2軸オープンロールを用いて、得られた混練物に硫黄および加硫促進剤を添加し、4分間、105℃になるまで練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を170℃、12分間、25kgf/cm
2の圧力で加硫成型することで、試験用ゴム組成物を作製した。
【0077】
また、前記未加硫ゴム組成物を所定の形状の口金を備えた押し出し機で押し出し成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、170℃の条件下で12分間プレス加硫することにより、試験用タイヤを製造した。得られた試験用ゴム組成物および試験用タイヤについて下記の評価を行った。結果を表1および2に示す。
【0078】
粘度指数
各未加硫ゴム組成物について、JIS K 6300−1の「未加硫ゴム−物理特性−第1部:ムーニー粘度計による粘度及びスコーチタイムの求め方」に準じたムーニー粘度の測定方法に従い、130℃の温度条件にて、ムーニー粘度(ML
1+4)を測定した。結果は比較例1のムーニー粘度の逆数を100として指数表示した。粘度指数が大きいほどムーニー粘度が低く、加工性に優れることを示す。なお、115以上を性能目標値とする。
【0079】
低燃費指数
(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメータVESを用いて、温度50℃、周波数10Hz、初期歪10%および動歪2%の条件下で、各試験用ゴム組成物の損失正接tanδを測定した。tanδが小さいほど発熱性が低く、低燃費性が優れることを示す。比較例1のtanδの逆数を100として指数表示した。指数が大きいほど、低燃費性に優れることを示す。なお、低燃費指数は97以上を性能目標値とする。
【0080】
耐摩耗性指数
各試験用タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、岡山国際サーキットにて、ロングラン500km走行を行った。
走行モード:8の字急旋回を含む、20km走行でトレッド主溝が1mm削れる程度のシビアハンドリング。
走行後に、タイヤトレッドゴムの残溝量を計測し(新品時8.0mm)、耐摩耗性として評価した。主溝の平均残溝量が多いほど、耐摩耗性に優れる。比較例1の残溝量を100として指数表示した。指数が大きいほど、耐摩耗性に優れることを示す。なお、耐摩耗性指数は97以上を性能目標値とする。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
表1および2の結果より、本発明のゴム組成物が、前記式(1)で表される化合物を含有するゴム組成物であることから、白色充填剤を100質量部以上含有するにもかかわらず、混練り中のゴム粘度が低く加工性に優れ、低燃費性および耐摩耗性に優れるゴム組成物であることがわかる。