(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362777
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】ガラス曲げプロセス用の工具
(51)【国際特許分類】
C03B 23/035 20060101AFI20180712BHJP
C03B 23/025 20060101ALI20180712BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
C03B23/035
C03B23/025
B60J1/00 J
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-523224(P2017-523224)
(86)(22)【出願日】2015年9月8日
(65)【公表番号】特表2017-537864(P2017-537864A)
(43)【公表日】2017年12月21日
(86)【国際出願番号】EP2015070430
(87)【国際公開番号】WO2016066309
(87)【国際公開日】20160506
【審査請求日】2017年4月28日
(31)【優先権主張番号】14190619.8
(32)【優先日】2014年10月28日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512212885
【氏名又は名称】サン−ゴバン グラス フランス
【氏名又は名称原語表記】Saint−Gobain Glass France
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル バルドゥイン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−マリー ル ニィ
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター シャル
【審査官】
田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】
特表2014−504229(JP,A)
【文献】
実開昭63−027443(JP,U)
【文献】
特開昭49−110710(JP,A)
【文献】
特表2008−526659(JP,A)
【文献】
特開平03−131540(JP,A)
【文献】
特表2002−527349(JP,A)
【文献】
特開平04−357130(JP,A)
【文献】
特開昭46−006041(JP,A)
【文献】
米国特許第04229199(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 23/00 − 23/26
B60J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲げプロセスにおいて吸引作用により少なくとも1つのガラス板(I,II)を保持する工具(1)であって、枠状の凸の接触面(2)と、前記接触面(2)を少なくとも部分的に包囲する周囲の空気案内板(4)を有するカバー(3)とを備え、前記工具(1)は、
前記空気案内板(4)と前記接触面(2)との間の第1の圧力領域(B1)に、減じられた第1の圧力(p1)を発生させ、
前記接触面(2)より内側の中央領域に配置されている第2の圧力領域(B2)に、前記第1の圧力(p1)より大きい第2の圧力(p2)を発生させる、
に好適であることを特徴とする、工具(1)。
【請求項2】
前記ガラス板(I,II)を曲げずに保持するに好適である、請求項1に記載の工具(1)。
【請求項3】
前記第1の圧力領域(B1)は、曲げたい前記ガラス板(I,II)のエッジに沿って少なくとも部分的に空気流を作用させ、これにより前記ガラス板(I,II)を前記接触面(2)に押し付けるに好適である、請求項1又は2に記載の工具(1)。
【請求項4】
吸引管(5)を備え、前記吸引管(5)に前記第1の圧力領域(B1)が接続されており、前記吸引管(5)により前記第1の圧力(p1)が発生される、請求項1から3までのいずれか1項に記載の工具(1)。
【請求項5】
少なくとも1つの通気管(7)を備え、前記通気管(7)は、前記第2の圧力領域(B2)を周囲と接続する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の工具(1)。
【請求項6】
前記通気管(7)に流れを制御する弁(12)が設けられている、請求項5に記載の工具(1)。
【請求項7】
少なくとも1つのガラス板(I,II)を曲げる方法であって、請求項1から6までのいずれか1項に記載の工具(1)を上側の型として使用し、このとき、前記ガラス板(I,II)を、エッジに沿った空気流により重力の影響に抗して前記工具(1)に保持する、少なくとも1つの保持ステップを含むことを特徴とする、方法。
【請求項8】
前記ガラス板(I,II)を曲げることなく前記ガラス板(I,II)の前記保持を行う、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ガラス板(I,II)を曲げ温度に加熱し、第1の下側の型(9)上で予備曲げし、
前記ガラス板(I,II)を前記工具(1)により前記第1の下側の型(9)からピックアップし、別の型に引き渡す、
請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記ガラス板(I,II)を、前記予備曲げ後、前記工具(1)と凹の第2の下側の型(10)との間でプレス曲げステップで曲げる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の下側の型(10)は、ソリッドタイプであり、開口を有し、前記第2の下側の型(10)の前記開口を通して、前記ガラス板(I,II)をさらに変形させるに好適な吸引作用を前記ガラス板(I,II)に及ぼす、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ガラス板(I,II)を、前記プレス曲げ後、下側の保持型(11)に冷却のために引き渡す、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
積み重なった2つのガラス板(I,II)をペア状に同時に曲げる、請求項7から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の圧力(p1)は、1mbar乃至20mbarの負圧に相当し、前記第2の圧力(p2)は、0mbar乃至5mbarの負圧に相当する、請求項7から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の工具(1)の、車両分野におけるガラス板のための曲げプロセスにおける工具としての、特に合わせガラスの構成部分として予定されているガラス板、特にウインドシールドのガラス板をペア状に曲げるための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス曲げプロセス用の工具、ガラス板を曲げる方法及び工具の使用に関する。
【0002】
車両分野では、曲げられた合わせガラス(Verbundglas)が、特にウインドシールドとして、一般的である。合わせガラスの個々の板をまとめて同時に曲げると有利なことが知られている。ペア状に曲げたガラス板は、その曲げに関して互いに適合されており、それゆえ、互いに積層して合わせガラスとするに特に好適である。ガラス板をペア状に曲げる方法は、例えば独国特許出願公開第10105200号明細書(DE 101 05 200 A1)において公知である。
【0003】
欧州特許第1836136号明細書(EP 1 836 136 B1)は、別の曲げ方法と、当該刊行物において上側の型(forme superieure(superieureの4文字目のeは、上に「アクセント記号」あり。以下同様))と称される、本発明の前提となる工具とを開示している。凸の工具は、上側の型として曲げ方法で使用され、曲げたいガラス板を重力の影響に抗して保持するに好適である。保持工具は、枠状の凸の接触面と、周囲の空気案内板を有するカバーとを備える。板のエッジに沿った吸引作用により、曲げたいガラス板は、重力の作用に抗して接触面に圧着され、これにより、確実に工具に保持される。積み重なった2つのガラス板も、同時に工具に保持され得る。工具は、ガラス板を曲げ装置の異なる位置間で搬送するために使用され、例えばガラス板を曲げ型から受け取り、他に引き渡すために使用され得る。工具は、プレス曲げステップにも使用可能であり、プレス曲げステップの場合、ガラス板は、工具と、相補的な相手側の型との間で、圧力作用及び/又は吸引作用を働かせることで成形される。
【0004】
欧州特許第1836136号明細書(EP 1 836 136 B1)に記載の方法では、ガラス板は、第1の下側の曲げ型上で重力曲げにより予備曲げされる。その後、ガラス板は、本発明の前提となる保持工具により第1の下側の曲げ型からピックアップされ、第2の下側の曲げ型に搬送される。保持工具と、第2の下側の曲げ型との間で、ガラス板は、プレス曲げステップで最終的な形状を得て、その後、再び、本発明の前提となる保持工具により冷却のために下側の型に引き渡される。
【0005】
米国特許第3778244号明細書(US 3,778,244 A)は、凹又は凸の全面的な接触面を備える上側の曲げ工具(フルモールド)と、周囲の空気案内板を有するカバーとを開示している。空気案内板により、曲げたいガラス板のエッジに空気流を沿わせることができ、その結果、ガラス板は、接触面に押し付けられる。付加的にガラス板は、全面的な接触面に設けられた開口を通して接触面に吸引され得る。工具及び吸引作用は、ガラス板を工具に保持するために設けられているのではなく、ガラス板の能動的な変形を達成すべきものである。
【0006】
今日の車両グレージングは、部分的に極めて顕著な曲率半径を有するますます複雑な形状を呈している。ガラス板を凸の保持工具によりピックアップしたとき、吸引作用が板に及ぼされ、ガラス板の曲率方向とは逆方向に作用する。それゆえ、形成した曲率が、ガラス板の保持時の吸引作用の結果として減じられてしまうおそれがある。それゆえ、この欠点を克服し、特に強く曲げた板を高品質にかつ方法技術的に有意に形成し得る新しい曲げ工具が、希求されている。
【0007】
本発明の根底にある課題は、このような改良した曲げ工具を提供することである。曲げ工具は、特に、板の曲げを吸引作用により減じてしまうことなく、ガラス板を重力の作用に抗して保持するに好適であることが望まれる。
【0008】
本発明の課題は、本発明により、請求項1に記載の工具によって解決される。有利な構成は、従属請求項に看取可能である。
【0009】
本発明に係る、曲げプロセスにおいて吸引作用により少なくとも1つのガラス板を保持する工具は、枠状の凸の接触面と、接触面を少なくとも部分的に包囲する周囲の空気案内板を有するカバーとを備え、工具は、
−空気案内板と接触面との間の第1の圧力領域に、減じられた第1の圧力p
1(保持圧)を発生させ、
−第2の圧力領域に、第1の圧力p
1より大きい第2の圧力p
2(補償圧)を発生させる、
に好適である。
【0010】
ここに記載した圧力p
1及びp
2は、特に、保持したいガラス板の、工具に対面した表面に作用する。
【0011】
追ってより詳細に説明するように、ガラス板は、第1の圧力領域により確実に曲げ工具に保持され、このとき、吸引作用は、特に板のエッジに作用する。第2の圧力領域には、より低い吸引作用が存在するか、又は吸引作用が全く存在せず、その結果、板形状、特に板の中央領域における板形状に対する不都合な影響は、回避できる。これは、本発明の大きな利点である。
【0012】
本発明に係る工具は、吸引作用により少なくとも1つのガラス板を保持する工具群に属する。本発明に係る工具は、曲げプロセス中、負圧により発生された吸引作用が、ガラス板に及ぼされ、曲げ工具により規定通り分配され、その結果、ガラス板が吸引作用の結果として工具に圧着されることで、曲げたいガラス板の、重力の影響に抗した保持を可能とする。工具は、吸引型と称してもよい。
【0013】
吸引作用により少なくとも1つのガラス板を保持する本発明に係る工具は、枠状の接触面を備える。つまり、ガラス板が型の面に全面的に接触する「フルサーフェスの工具(vollflaechiges Werkzeug)」ではない。むしろ、ガラス板の周囲の領域においてサイドエッジで又はサイドエッジ近傍で工具と直接接触する一方、板の大部分は、工具と直接接触しない工具群に属する。このような工具は、リング(保持リング、曲げリング)又は枠(枠型)と称されることもある。本発明の意味での「枠状の接触面」なる概念は、本発明に係る工具をフルサーフェスの型と区別するためだけのものである。接触面は、完全な枠を形成している必要はなく、中断があってもよい。接触面は、完全な又は中断された枠の形態で形成されている。
【0014】
接触面の幅は、好ましくは0.1cm乃至10cm、特に好ましくは0.2cm乃至1cm、例えば0.3cmである。
【0015】
さらに工具は、「スケルトン(Skelett)」を備えて構成されている。スケルトンとは、接触面を担持する面状の構造と解される。スケルトンは、接触面を有して形成されている。接触面は、スケルトンに配置されている。
【0016】
本発明に係る工具は、「凸の工具(konvexes Werkzeug)」である。これは、接触面が凸に形成されていることを意味している。ここで、凸の形状とは、ガラス板の角隅部及び縁部が、工具との規定通りの接触時、工具に向かって板の中心部より近く曲げられている形状と解される。
【0017】
さらに本発明に係る工具は、カバーを備える。カバーは、接触面の、保持プロセス又は曲げプロセス中にガラス板から背離した側に配置されている。カバーは、保持プロセスにとって重要な吸引作用を発生させる。吸引作用は、特にカバーと曲げスケルトンとの間の空気を吸い出すことで発生される。
【0018】
カバーは、接触面を少なくとも部分的に包囲する周囲の空気案内板を有して形成されている。このような空気案内板は、しばしば、スカート(Schuerze)とも称される。空気案内板は、好ましくはカバーの端部に配置されている。空気案内板は、接触面を完全に又は部分的に包囲又は囲繞する。保持プロセス中、空気案内板は、好ましくはガラス板のサイドエッジに対して3mm乃至50mm、特に好ましくは5mm乃至30mm、例えば20mmの間隔を置いている。
【0019】
本発明に係る曲げ工具は、少なくとも1つの第1の圧力領域に、減じられた第1の圧力p
1を発生させるに好適である。減じられた圧力とは、本発明の意味で、周囲圧より低い圧力と解される。つまり、減じられた圧力とは、周囲圧に対する負圧である。減じられた圧力により吸引作用が達成される。第1の圧力p
1が作用する領域は、本発明の意味で第1の圧力領域と称される。第1の圧力領域は、空気案内板と接触面との間に配置されている。第1の圧力領域は、好ましくは、単一の連続した枠状の領域である。しかし、第1の圧力領域は、互いに分割され、同じ圧力を有する複数の区域からなっていてもよい。
【0020】
第1の圧力領域は、保持したいガラス板のエッジに沿って少なくとも部分的に空気流を発生させ、これによりガラス板を接触面に押し付けるに好適である。第1の圧力p
1により発生された空気流は、空気案内板により、ガラス板のサイドエッジに少なくとも部分的に沿うように変向される。空気流によりガラス板は、効果的に曲げ工具に保持され、接触面に押し付けられる。これにより曲げ工具は、特に上側の型として曲げプロセスで使用されることができ、ガラス板は、エッジに沿った空気流により重力の作用に抗して工具に保持される。第1の圧力p
1は、保持圧と称してもよい。
【0021】
上側の型とは、ガラス板の、地面から背離した上側の表面と接触する型と解される。下側の曲げ型とは、ガラス板の、地面に対面した下側の表面と接触する型と解される。ガラス板は、下側の型上に下ろすことができる。
【0022】
複数の、例えば2つの、積み重なったガラス板も、本発明に係る工具により同時に保持され得る。それゆえ工具は、特に、後に積層されて1つの合わせガラスを形成する2つの個々の板をまとめて同時に合同に曲げるペア状の曲げ方法に好適である。
【0023】
本発明に係る工具は、好ましくは、吸引作用を発生させ得る吸引管を備える。吸引管は、好ましくは、工具の、接触面から背離した側に配置されている。第1の圧力領域は、吸引管に接続されているので、空気が第1の圧力領域から吸い出されて、第1の圧力p
1が発生される。
【0024】
さらに本発明に係る曲げ工具は、少なくとも1つの第2の圧力領域に第2の圧力p
2を発生させるに好適である。第2の圧力p
2は、本発明によれば、第1の圧力p
1より高い(すなわち、第2の圧力領域における負圧は、第1の圧力領域における負圧より低い)ので、圧力p
2により発生される吸引作用は、圧力p
1により発生される吸引作用より弱い。第2の圧力p
2は、周囲圧に等しくてもよく、その結果、負圧、ひいては吸引作用は、第2の圧力領域には存在しない。第2の圧力領域においてガラス板に働く吸引作用は、比較的僅かであるか、又は全く働かないので、板の曲げに対する不都合な影響、特に、事前に形成された曲率の減少は、効果的に回避可能である。第2の圧力p
2は、補償圧と称してもよい。
【0025】
好ましい一形態において、第2の圧力領域は、接触面より内側の、工具の中央領域に配置されている。このことは、第2の圧力領域が、枠状の接触面により包囲されることを意味している。第2の圧力領域は、保持したいガラス板の中央領域に対して、板の縁部に対するより低い吸引作用を働かせるに好適である。
【0026】
工具は、好ましくは、ガラス板を曲げずに保持するに好適である。
【0027】
有利な一形態において、工具は、少なくとも1つの通気管を備え、通気管は、周囲と第2の圧力領域との間の完全な又は部分的な圧力均衡を実現する。通気管を通して外部から空気が流れ込む。而して第2の圧力p
2を第1の圧力p
1より高めることができる。
【0028】
通気管には、好ましい一形態において、流れを制御する弁が設けられている。これにより第2の圧力p
2は、能動制御可能である。
【0029】
第2の圧力領域は、第1の圧力領域のための前述の吸引管に接続されていてもよく、上述のより高い第2の圧力p
2は、ライン横断面積及び/又は少なくとも1つの通気管の好適な構成により達成される。これとは異なり、第2の圧力領域は、独自の吸引管を有していてもよい。
【0030】
さらに本発明の課題は、少なくとも1つのガラス板を曲げる方法であって、本発明に係る工具を上側の型として使用し、このとき、ガラス板を、第1の圧力領域の、エッジに沿った空気流により、重力の影響に抗して工具に保持する、少なくとも1つの保持ステップを含む方法により解決される。
【0031】
保持ステップ中、ガラス板の形状は、好ましくは変更されない。つまり、本発明に係る工具による保持は、ガラス板のさらなる曲げなしに実施される。ガラス板は、確実に工具に固定されるだけである。工具は、このような純然たる保持ステップに特に好適であり、中央領域における不都合な曲げは、本発明における第2の圧力領域により効果的に阻止され得る。しかし、工具は、保持ステップの他に、プレス曲げステップの上側の型としても使用されることができ、このとき、ガラス板の変形は、上側の工具単独によってではなく、相補的な下側の工具の影響によって実施される。
【0032】
しかし、これとは異なり、本発明の一形態において、工具へのガラス板の吸引に、さらなる曲げを結び付けてもよい。このことは、例えば接触面の好適な形状付与により達成されることができ、その結果、ガラス板は、吸引作用の結果として接触面に密着し、而して曲げられる。而して工具は、同時に保持工具及び曲げ工具として機能する。
【0033】
本方法は、特に好ましい一形態において、欧州特許第1836136号明細書(EP 1 836 136 B1)に詳細に記載されている方法であり、本発明に係る工具は、当該刊行物に記載される上側の型(「forme superieure 11」)の代わりに使用される。本方法は、好ましくは、欧州特許第1836136号明細書(EP 1 836 136 B1)に詳細に記載されている装置により実施され、同じく本発明に係る工具は、当該刊行物に記載される上側の型(「forme superieure 11」)の代わりに使用される。
【0034】
好ましくは、ガラス板をまず曲げ温度に加熱し、第1の下側の型上で予備曲げする。典型的には、初期状態では平らなガラス板を第1の下側の型上に位置決めする。第1の下側の型は、典型的には可動に形成されており、例えばキャリッジ上に支持されており、加熱のために炉を通走し、このとき、ガラス板は、曲げ温度に加熱される。ここで、曲げ温度とは、ガラス板が変形できるほど十分に軟化する温度と解される。典型的な曲げ温度は、500℃乃至700℃、好ましくは550℃乃至650℃である。第1の下側の型は、好ましくは凹の、本発明に係る工具に対して相補的な型である。第1の下側の型は、特に重力曲げに好適である。曲げ温度に加熱することで、ガラス板は、軟化し、重力の作用で第1の下側の曲げ型に密着する。つまり、ガラス板は、重力曲げにより予備曲げされ、その後、別の方法ステップによりさらに曲げられる。
【0035】
予備曲げ後、ガラス板を本発明に係る工具により第1の下側の型からピックアップする。本発明に係る工具を上方よりガラス板に接近させる。この動作は、本発明に係る工具及び/又は第1の下側の型の水平運動により達成可能である。つまり、本発明に係る曲げ工具は、上側の型として機能する。間隔が十分に小さくなると、ガラス板は、第1の圧力領域の吸引作用により工具に吸引され、工具により保持される。このとき、ガラス板は、接触面と接触し、その結果、減じられた第1の圧力p
1により形成される空気流は、ガラス板のエッジに少なくとも部分的に沿う。このためにガラス板のエッジは、好ましくは少なくとも部分的に第1の圧力領域内に配置されている。而してガラス板は、本発明に係る工具により第1の下側の型から受け取られる。ガラス板は、後続の方法において本発明に係る工具により別の(下側の)型に引き渡される。
【0036】
好ましくは、ガラス板を、予備曲げ及び本発明に係る工具による受け取り後、本発明に係る工具と第2の下側の型との間でプレス曲げステップにかける。このとき、ガラス板の変形は、相補的な両曲げ工具の圧力作用及び/又は吸引作用により実施される。第2の下側の型は、好ましくは凹に、ソリッド(massiv)タイプとして形成されており、開口を有している。好ましくは、第2の下側の型の開口を通して、ガラス板をさらに変形させるに好適な吸引作用をガラス板に及ぼす。プレス曲げ中、ガラス板は、型間に固定されているので、上側の型の吸引作用は、停止されてもよい。この場合、ガラス板は、型の分離後、下側の型内にとどまる。
【0037】
ガラス板を好ましくはプレス曲げ後、本発明に係る工具により別の下側の型に引き渡し、その上で冷却する。別の下側の型として、第1の下側の曲げ型(重力曲げ型)と同じ型又は同じに形成された型を使用してもよい。
【0038】
第1の下側の型(予備曲げ型)からガラス板を引き取るためと、第2の下側の型(プレス曲げ型)から冷却用の保持型にガラス板を引き渡すためとに、2つの異なる本発明に係る工具を使用することが可能である。両本発明に係る工具は、例えば、それぞれ異なるプロセス期間のそれぞれ異なる板形状を考慮した、それぞれ異なって構成された接触面を有していてもよい。しかし、両工具は、同一に構成されていてもよく、2つの工具の使用は、欧州特許第1836136号明細書(EP 1 836 136 B1)に記載されているように、例えばサイクルタイムに関する方法技術的な利点を有し得る。
【0039】
有利な一形態において、本方法は、同時に少なくとも2つ、好ましくは2つの、積み重なったガラス板に適用される。その際、ガラス板は、ペア状に(すなわち、板対として)同時に曲げられる。両ガラス板の曲げは、而して特に合同かつ互いに適合されており、その結果、板は、互いに積層して、高い光学的品質の合わせガラスを形成するに特に好適である。
【0040】
本発明に係る曲げ工具は、上側の型として使用される。減じられた第1の圧力により第1の圧力領域内に形成される、ガラス板のエッジに沿う空気流により、ガラス板は、高信頼性に重力の作用に抗して曲げ工具に保持され得る。第1の圧力領域は、複数の積み重なったガラス板を同時に保持するにも好適である。
【0041】
第1の圧力p
1は、好ましい一形態において、周囲圧に関して1mbar乃至20mbarの負圧、特に好ましくは2mbar乃至10mbarの負圧、さらに特に好ましくは3mbar乃至6mbarの負圧に相当する。周囲圧を略1barと仮定する(標準条件)と、これにより第1の圧力p
1は、好ましくは980mbar乃至999mbar、特に好ましくは990mbar乃至998mbar、さらに特に好ましくは994mbar乃至997mbarである。これにより、板のエッジに沿って十分な吸引作用が達成されるので、曲げ工具は、上側の曲げ型として使用され得る。ガラス板(場合によっては同時に複数のガラス板)は、有利には曲げ工具に吸引され、保持され得る。
【0042】
第2の圧力p
2は、好ましい一形態において、周囲圧に関して0mbar乃至5mbarの負圧、特に好ましくは0mbar乃至2mbarの負圧、さらに特に好ましくは0mbar乃至1mbarの負圧に相当する。つまり、周囲圧に関して精々5mbarの負圧、特に好ましくは精々2mbarの負圧、さらに特に好ましくは精々1mbarの負圧が存在する。これにより、吸引作用の結果としての不都合な曲げは、効果的に回避され得る。周囲圧を略1barと仮定する(標準条件)と、これにより第2の圧力p
2は、好ましくは少なくとも995mbar、特に好ましくは少なくとも998mbar、さらに特に好ましくは少なくとも999mbarである。有利な一形態において、第2の圧力p
2は、周囲圧に等しい。
【0043】
単数又は複数のガラス板は、好ましくはソーダ石灰ガラスを含むが、これとは異なり、別種のガラス、例えばホウケイ酸ガラス又は石英ガラスを含んでもよい。ガラス板の厚さは、典型的には0.5mm乃至10mm、好ましくは1mm乃至5mmである。
【0044】
2つ以上のガラス板が同時に曲げられる場合、板間には、好ましくは分離手段が配置されているので、板同士が永続的に付着してしまうことはない。
【0045】
本発明に係る工具は、好ましくは、車両分野におけるガラス板のための曲げプロセスにおける工具として、特に合わせガラスの構成部分として予定されているガラス板をペア状に曲げるために使用される。このような合わせガラスは、好ましくはウインドシールドであるが、ルーフウィンドウ、サイドウィンドウ又はリヤウィンドウであってもよい。
【0046】
以下に、本発明について図面及び実施例を参照しながら詳細に説明する。図面は、概略図であって、正しい縮尺で示したものではない。図面は、本発明を何ら限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】従来技術による本発明の前提となる曲げ工具の断面図である。
【
図2】本発明に係る曲げ工具の一形態の平面図である。
【
図3】
図2に示した曲げ工具のA−A’断面図である。
【
図4】本発明に係る方法の一実施の形態を段階的に示す図である。
【
図5】本発明に係る方法の一実施の形態のフローチャートである。
【0048】
図1は、従来技術によるガラス曲げプロセス用の工具を示す。この工具は、積み重なった2つのガラス板I,IIを吸引作用により重力の影響に抗して枠状の凸の接触面2に保持するに好適な上側の型である。接触面2は、「スケルトン(Skelett)13」に配置されている。吸引作用を発生すべく、工具は、空気を吸い出す吸引管5を備える。さらに工具は、カバー3を備え、カバー3の端部は、周囲を取り巻くように延びる空気案内板4を有する。空気案内板4は、接触面2の周囲を取り巻くように延び、これを包囲する。曲げスケルトン13と、空気案内板4を有するカバー3とにより、吸引管により発生された空気流は、ガラス板のエッジに沿うように案内される。これによりガラス板対I,IIは、確実に接触面2に保持される。
【0049】
板I,IIは、例えば重力曲げにより下側の曲げ型内で曲げられている。図示の工具は、例えばガラス板対I,IIを下側の型からピックアップし、別の型に引き渡すために使用され得る。例えばガラス板対I,IIは、プレス曲げプロセスにかけられてもよく、プレス曲げプロセスの場合、図示の工具と相手側の型との間で圧力作用及び/又は吸引作用が働くことで変形される。
【0050】
図示の工具及び当該工具を使用可能な曲げ方法は、欧州特許第1836136号明細書(EP 1 836 136 B1)、国際公開第2012/080071号(WO 2012/080071 A1)及び国際公開第2012/080072号(WO 2012/080072 A1)において公知である。
【0051】
図2及び
図3は、それぞれ、改良を加えた本発明に係る工具1の詳細を示している。工具1は、
図1に示した工具と同様、曲げプロセス用の上側の型である。
図2は、工具1の、曲げたいガラス板との接触が予定される下側の面の平面図である一方、
図3は、断面図である。
【0052】
曲げ工具1は、
図1の工具と同様、吸引作用を発生させる吸引管5と、空気案内板4を有するカバー3と、枠状の接触面2を有する曲げスケルトン13とを備える。公知の工具とは異なり、吸引作用は、曲げ工具内で適切に分配され、これにより、最適化された圧力分布が形成される。
【0053】
曲げ工具は、2つの異なる圧力領域B1及びB2を備え、圧力領域B1及びB2内には、互いに異なる圧力が形成可能であり、これらの互いに異なる圧力は、ガラス板I,IIに作用する。第1の圧力領域B1は、周囲を取り巻くように概ね空気案内板4と接触面2との間に配置されている。第2の圧力領域B2は、工具1の、接触面2により包囲される中央領域に配置されている。
【0054】
工具1は、第1の圧力領域B1に減じられた第1の圧力p
1を発生させるに好適である。この圧力p
1は、空気案内板4と接触面2との間において空気流を上向きに方向付ける。単数又は複数のガラス板I,IIが本発明において曲げ工具1と接触しているとき、空気流はガラス板のサイドエッジに沿う。この空気流は、1つのガラス板又は積み重なった複数のガラス板を重力の作用に抗して工具1の接触面に保持するに好適である。つまり、第1の圧力領域B1における第1の圧力p
1は、
図1に示した従来技術の工具における空気流の機能を果たす。それぞれ約2.1mmの典型的な板厚を有するガラス板対I,IIを保持するには、例えば、周囲圧に対して3mbar乃至6mbarの負圧に相当する第1の圧力p
1が好適である。
【0055】
さらに工具1は、第2の圧力領域B2に、第1の圧力p
1より大きい第2の圧力p
2を発生させるに好適である。つまり、第2の圧力領域B2における吸引作用は、第1の圧力領域B1における吸引作用より弱い。第2の圧力領域B2は、板の予備曲げ、特に板の中央領域における予備曲げに対して吸引作用が不都合な影響を及ぼすことを阻止する。図に看取可能であるように、板の中央領域における強い吸引作用は、予備曲げとは逆方向に作用し、これにより、予備曲げが減じられてしまうか、又はそれどころか「逆向きの曲げ」が中央領域に形成されてしまうおそれがある。このことは、第2の圧力領域B2を備える本発明に係る工具により効果的に回避可能である。典型的な第2の圧力p
2は、例えば、周囲圧に略等しいか、又は僅かにのみ周囲圧を下回り、例えば1mbarの負圧を有する。
【0056】
複数の圧力領域に前述のように分配するに好適な、吸引管5内の負圧は、例えば約80mbarである。
【0057】
吸引作用を発生すべく、工具1は、吸引管5を備えている。吸引管5は、やはり、工具1の、接触面2から背離した側、つまり、上側に配置されている。圧力領域B1及びB2は、吸引管に接続されており、これにより、減じられた圧力が発生される。カバー3と、接触面2を担持するスケルトン13とは、第1の圧力領域B1と吸引管5との間のラインを形成する。吸引管5は、
図2の平面図では本来看取不能であるが、吸引管5の位置を破線により略示した。
【0058】
第2の圧力領域B2は、吸引管5への(図面には示さない)接続を有し、これにより、第2の圧力領域B2にも、減じられた圧力が発生される。第2の圧力p
2を高めるために、工具1は、通気管7を備える。通気管7は、スケルトン13とカバー3との間を延び、第2の圧力領域B2を周囲に、工具1の、接触面2から背離した側において接続する。第2の圧力p
2は、吸引管5の吸引作用と、通気管7を通して流れ込む空気とにより生じる。第2の圧力p
2の能動制御のために、弁12を有する通気管7が設けられている。流れ込む空気は、図面に矢印で示した。
【0059】
スケルトン13には、中央の開口を有する変向板8が設けられている。変向板8が、通気管7を通して流れ込む空気を変向させるので、空気は、略中心にて第2の圧力領域B2に流入する。これにより、均一な拡散が達成される。空気の均一な拡散は、ガラス板の表面にとって有利である。1つの中央の通気管を中心部に取り付けることは、図示の構成では、不可能である。それというのも、このために必要なスペースには、中央の吸引管5があるからである。
【0060】
図4は、本発明に係る方法の一実施の形態のステップを略示する。まず、初期状態では平らな、積み重なった2つのガラス板I,IIを下側の曲げ型9上に位置決めする(部分図a)。曲げ型9上の板を曲げ温度、例えば600℃に加熱し、重力の作用により下側の曲げ型9の形状に密着させる(部分図b)。つまり、ガラス板I,IIを重力曲げにより予備曲げする。重力曲げ後、ガラス板I,IIを本発明に係る工具1により受け取る。このために工具1を上方より下側の曲げ型9上のガラス板I,IIに接近させ、接触面2と接触させる(部分図c)。続いて吸引管5を介して吸引作用を発生させる。第1の圧力p
1に基づいてガラス板I,IIを曲げ工具1に保持する。ガラス板I,IIは、曲げ工具1により上方に動かし得る状態、ひいては下側の曲げ型9から取り出し得る状態となる(部分図d)。第2の圧力p
2は、板中心部における曲げ欠陥を阻止する。ガラス板を曲げ工具1により受け取った後(部分図e)、下側の吸引曲げ型10を下方よりガラス板I,IIに接近させる。ガラス板I,IIを本発明に係る工具1と下側の吸引曲げ型10との間でプレス曲げによりガラス板I,IIの最終的な形状に曲げる(部分図f)。続いて下側の吸引曲げ型10を再び下降させ(部分図g)、ガラス板I,IIを曲げ工具1により下側の保持型11上に下ろし、吸引作用を停止することでこの保持型11に引き渡す(部分図h)。その後、曲げ工具1を上方に動かして(部分図i)、次の板対の曲げプロセスに備える。ガラス板I,IIを下側の保持型11上で周囲温度まで冷ます。下側の保持型11として第1の下側の曲げ型9(重力曲げ型)と同じ型又は同じに形成された型を使用してもよい。
【0061】
ここに略示した方法ステップは、欧州特許第1836136号明細書(EP 1 836 136 B1)に詳細に説明される方法を再現し、そこで使用される上側の型(forme superieure 11)を本発明に係る工具1に置換したものである。
【0062】
図5は、
図4に示した実施例のフローチャートである。
【符号の説明】
【0063】
1 少なくとも1つのガラス板を保持する本発明に係る工具
2 枠状の接触面
3 カバー
4 空気案内板
5 吸引管
7 通気管
8 変向板
9 第1の下側の曲げ型/重力曲げ型
10 第2の下側の曲げ型/吸引曲げ型
11 下側の保持型
12 7の弁
13 1のスケルトン
B1 第1の圧力領域
B2 第2の圧力領域
p
1 減じられた第1の圧力
p
2 第2の圧力
I ガラス板
II ガラス板