特許第6362802号(P6362802)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6362802
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】切削工具
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/28 20060101AFI20180712BHJP
   B23B 51/06 20060101ALN20180712BHJP
【FI】
   B23C5/28
   !B23B51/06 D
   !B23B51/06 C
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-8801(P2018-8801)
(22)【出願日】2018年1月23日
【審査請求日】2018年1月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146087
【氏名又は名称】株式会社松浦機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100084696
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 直人
(72)【発明者】
【氏名】天谷 浩一
(72)【発明者】
【氏名】田中 隆三
(72)【発明者】
【氏名】加納 佳明
(72)【発明者】
【氏名】武澤 泰則
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 哲也
【審査官】 久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭64−020221(JP,U)
【文献】 特開2002−154032(JP,A)
【文献】 特表2013−523462(JP,A)
【文献】 特表2017−526544(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102004039263(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 5/28
B23D 77/00 − 77/14
B23B 51/06
B23Q 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿った側部にて回転中心軸の周囲における回転方向に沿って規則的に隆起している複数個の両側側面によって切削刃を形成している切削工具であって、回転中心軸の周囲にクーラント通過用パイプを延設したうえで、当該延設に係るクーラント通過用パイプから分岐した各クーラント通過用パイプを、前記隆起している両側側面のうち、回転方向側の隆起側面の方向に沿って突設すると共に、回転方向側の隆起側面のうち、回転中心軸からの距離が最も小さい位置であって、かつ当該隆起が開始している端部の位置に該当する端所から先端に到る全領域において、前記隆起側面の幅方向に直交する方向の両端に沿って回転方向側に向かう突出部を設けている切削工具。
【請求項2】
分岐したクーラント通過用パイプの突設位置が回転方向側の隆起側面における前記端所及びその近傍であることを特徴とする請求項1記載の切削工具。
【請求項3】
分岐したクーラント通過用パイプの突設位置が回転方向側の隆起側面における中途部位であることを特徴とする請求項1記載の切削工具。
【請求項4】
分岐したクーラント通過用パイプを突設した位置から切削刃の先端に到る隆起側面が回転方向と反対側の方向に窪んだ湾曲形状を呈することを特徴とする請求項記載の切削工具。
【請求項5】
分岐したクーラント通過用パイプの先端における噴出口が長手方向に沿った細長形状であることを特徴とする請求項1、2、3、4の何れか一項に記載の切削工具。
【請求項6】
分岐したクーラント通過用パイプが、前記隆起している両側側面の先端の回転中心軸側の近傍領域にて、順次方向を変化することによって形成されている迂回した形状を呈したうえで前記突設位置に到達していることを特徴とする請求項1、2、3、4、5の何れか一項に記載の切削工具。
【請求項7】
前記延設に係るクーラント通過用パイプから分岐しているクーラント通過用パイプと、各噴射口に到るクーラント通過用パイプとの間に、前記端所と回転中心軸との間に位置し、かつ回転中心軸よりも前記端所の位置に近い位置にて回転方向に沿った円輪形状のクーラント通過用パイプが介在していることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6の何れか一項に記載の切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長手方向に沿った側部にて隆起している複数個の両側側面によって切削刃を形成している切削工具において、前記複数個の切削刃を、クーラント通過用パイプから噴出したクーラントによる冷却を実現する構成を対象としている。
【背景技術】
【0002】
クーラントの使用による切削工具については、色々な構成が提唱されている。
【0003】
但し、切削刃にクーラントを直接供給することによって効率的に切削刃を冷却する構成を開示した先行技術は極めて少なく、例外的であるといっても過言ではない。
【0004】
特に、長手方向の側部にて隆起している複数個の両側側面によって形成されている切削刃を形成している切削工具の場合には、クーラントを直接複数個の各切削刃に供給するような構成は特に提唱されていない。
【0005】
前記切削工具とは別に、長手方向の先端及びその近傍における切削刃に対するクーラントを供給する先行技術として、例えば、特許文献1においては、切削工具30の先端における切断端部の刃36の後面から長手方向に延設されたクーラント通過用パイプ(中央導管12)によって、クーラントを当該刃36に供給している(要約書及び一体を成す図面)。
【0006】
このような特許文献1の構成を、前記切削工具に適用した場合には、長手方向の側部にて隆起することによって形成されている複数個の各切削刃の先端に到るまでクーラント通過用パイプを延設し、かつクーラントを供給することに相成る。
【0007】
しかしながら、このような構成の場合には、切削刃の先端に対する切削機能を発揮する領域を削減することに帰する。
【0008】
これに対し、特許文献2は、湾曲した切削刃を備えたドリルにおいて、切屑の排出溝面16に臨む逃げ面15につき、噴出穴18から噴出されるクーラントが先端における切削刃12に向けて噴出される角度となるまでに、研削した傾斜面を設定することによって、クーラントが先端における切削刃12と被削材との接触部位に直接供給される構成を採用している(要約書及び図4)。
【0009】
このような構成を、前記切削工具における切削刃の冷却に適用した場合には、側部にて隆起している両側側面によって形成された複数個の各切削刃の先端と被切削材との接触部位にクーラントを供給することに相成る。
【0010】
しかしながら、切削刃において切削を原因とする摩擦熱は、単に先端だけでなく長手方向の側部にて隆起している切削刃の全領域に伝達しており、上記構成の場合には、このような全領域における冷却を実現することが不可能であって、必ずしも切削刃に対する効率的な冷却が実現することにはならない。
【0011】
このように、前記切削工具については、切削刃の広範な領域における冷却を実現するような構成は、提唱されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特表2005−502484号公報
【特許文献2】特開2016−144865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、長手方向に沿った側部にて隆起している複数個の両側側面によって切削刃を形成している切削工具において、切削刃の先端だけでなく、回転方向側に面している領域にクーラントを供給することによって、効率的な切削刃の冷却及び切削刃からの切削粉の排除を実現し得る構成を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するため、本発明の基本構成は、長手方向に沿った側部にて回転中心軸の周囲における回転方向に沿って規則的に隆起している複数個の両側側面によって切削刃を形成している切削工具であって、回転中心軸の周囲にクーラント通過用パイプを延設したうえで、当該延設に係るクーラント通過用パイプから分岐した各クーラント通過用パイプを、前記隆起している両側側面のうち、回転方向側の隆起側面の方向に沿って突設すると共に、回転方向側の隆起側面のうち、回転中心軸からの距離が最も小さい位置であって、かつ当該隆起が開始している端部の位置に該当する端所から先端に到る全領域において、前記隆起側面の幅方向に直交する方向の両端に沿って回転方向側に向かう突出部を設けている切削工具からなる。
【発明の効果】
【0015】
前記基本構成に立脚している本発明においては、分岐している複数個の各クーラント通過用パイプの突設方向が、回転方向側の隆起側面に沿っていることから、当該クーラント通過用パイプの先端である噴出穴から噴出したクーラントは、前記隆起側面に沿って流動することによって、切削刃を形成している広範な領域において効率的な冷却を実現することができる。
【0016】
しかも、噴出穴から流出したクーラントは、切削刃の先端及び被切削材との接触部位にまで流動することから、効率的に切削粉を切削刃から排除することができる。
【0017】
更には、噴出穴から噴出したクーラントにおいては、噴出の当初は、噴出方向及び回転方向の流動成分を有するも、突設方向の流動速度の方が、噴出穴における回転速度よりも明らかに大きいことから、回転方向の流動成分は空気抵抗によって消滅し、当該消滅の後には、クーラントは、前記隆起側面において回転方向に沿った圧力を受けることによって、前記隆起側面にて流動範囲が拡張するような流動状況を呈しており、前記各効果を確実に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例1の構成を示す切削工具の長手方向と直交する方向の断面図を示す。
図2】実施例2の構成を示す切削工具の長手方向と直交する方向の断面図を示す。
図3】分岐したクーラント通過用パイプの突設位置が、回転方向側の側面のうち隆起している端所及びその近傍の位置である第1の実施形態を示しており、(a)は、先端側における正面図であり(尚、クーラント通過用パイプのうち、切削刃内に存在する領域については点線によって示し、突設した領域については実線によって示し、切削刃の回転方向については白線の矢印によって示す。)、(b)は、2個の切削刃に着目した場合のクーラントの流動状態を示す長手方向と直交する方向の断面図であり(尚、クーラントの流動方向については点線の矢印によって示し、切削刃の回転方向については白線の矢印によって示す。)、(c)は、切削工具の長手方向に沿った側断面図である。
図4】分岐したクーラント通過用パイプの突設位置が、回転方向側の側面における中途部位である第2の実施形態を示しており、(a)は、先端側における正面図であり(尚、クーラント通過用パイプのうち、切削刃内に存在する領域については点線によって示し、突設した領域については実線によって示し、切削刃の回転方向については白線の矢印によって示す。)、(b)は、2個の切削刃に着目した場合のクーラントの流動状態を示す長手方向と直交する方向の断面図であり(尚、クーラントの流動方向については点線の矢印によって示し、切削刃の回転方向については白線の矢印によって示す。)、(c)は、切削工具の長手方向に沿った側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図3(a)、(b)、(c)及び図4(a)、(b)、(c)に示すように、長手方向に沿った側部にて回転中心軸の周囲における回転方向に沿って規則的に隆起している複数個の両側側面21、22によって切削刃2を形成している切削工具1に立脚している前記基本構成においては、回転中心の周囲に延設されたクーラント通過用パイプ30から分岐した複数の各クーラント通過用パイプ31を、前記両側側面21、22のうち、回転方向側の隆起側面21に沿って突設していることを特徴としている。
【0020】
第1の実施形態は、図3(a)、(b)、(c)に示すように、分岐したクーラント通過用パイプ31の突設位置が回転方向側の隆起側面21において前記基本構成における端所及びその近傍であることを特徴としている。
【0021】
第1の実施形態においては、クーラントが突設されたクーラント通過用パイプ31の先端に位置している噴出穴4から噴出された後に、隆起している端所の近傍から切削刃の先端20に到るまで流動しており、前記のように、クーラントの流動領域が回転方向に沿った圧力を受けることによって拡張され、ひいては広範な隆起側面21を冷却することができる。
【0022】
第2の実施形態は、図4(a)、(b)、(c)に示すように、分岐したクーラント通過用パイプ31の突設位置が、回転方向側の隆起側面21における中途部位であることを特徴としている。
【0023】
第2の実施形態においては、回転方向側の隆起側面21の一部領域に沿って、クーラントが切削刃の先端20に到るまで流動しており、殆ど全領域を流動している訳ではない点において、第1の実施形態に比し、冷却効率においてやや劣る可能性がある。
【0024】
但し、図4(a)に示すように、回転方向側の隆起側面21を平坦形状とするのではなく、図4(b)に示すように、分岐したクーラント通過用パイプ31を突設した位置から切削刃の先端20に到る隆起側面21が回転方向と反対側の方向に窪んだ湾曲形状を呈する形態を採用した場合には、前記流動領域幅の狭いことを相当程度補填することができる。
【0025】
しかも、第2の実施形態の場合には、図4(a)、(b)に示すように、クーラント通過用パイプ31を回転方向側の隆起側面21に突出させるというシンプルな設計を採用することができる。
【0026】
前記基本構成に係る切削刃2は、大抵の場合、図3(a)、(c)及び図4(a)、(c)に示すように、切削刃2を長手方向の先端及びその近傍に設置する場合が多いが、設置位置は必ずしもそのような位置に限定される訳ではなく、長手方向の中途部位に設置することもできる。
【0027】
クーラントが噴出穴4から噴出した後に、回転方向側の隆起側面21の広範な領域を流動するためには、図3(c)及び図4(c)に示すように、分岐したクーラント通過用パイプ31は、分岐した全領域、又は先端の噴出穴4に到る中途部位の領域において、長手方向に沿って所定の幅を有するような設計、即ち噴出穴4が長手方向に沿って細長形状とすることが好ましい。
【0028】
効果の項において説明したように、回転方向側の隆起側面21においては、クーラントが回転方向に沿った圧力を受けることによって、前記隆起側面21にて流動範囲が拡張するような流動状況を呈している。
【0029】
このような流動範囲の拡張によって、前記隆起側面21の幅方向、即ち前記隆起側面21の端所から先端に到る方向と直交する方向を超えて流動範囲が拡張した場合には、クーラントが前記隆起側面21から漏洩するという危険性が皆無ではない。
【0030】
しかしながら、そのような危険については、前記隆起側面21のうち、回転中心軸5からの距離が最も小さい位置であって、かつ隆起が開始している端部の位置に該当する端所から先端に到る全領域において、前記隆起側面21の幅方向に直交する方向の両端に沿って回転方向に向かう突出部を設けることによって回避することができる。
【0031】
以下、実施例にしたがって説明する。
【実施例1】
【0032】
実施例1は、図1に示すように、長手方向に沿って延設されているクーラント通過用パイプ30を採用したうえで、図1に示すように、分岐したクーラント通過用パイプ31が、前記隆起している両側側面21、22の先端20回転中心軸5側の近傍領域にて、順次方向を変化することによって形成されている迂回した形状を呈したうえで前記突設位置に到達していることを特徴としている(尚、図1は、第1の実施形態に立脚した切削刃2の形態を示す。)。
【0033】
実施例1においては、このような切削刃の先端20に対する前記領域における迂回構成によって、切削刃2の冷却を更に助長することができる。
【実施例2】
【0034】
実施例2は、長手方向に延設しているクーラント通過用パイプ30を採用したうえで、図2に示すように、前記延設に係るクーラント通過用パイプ30から分岐しているクーラント通過用パイプ31と、各噴射口に到るクーラント通過用パイプ31との間に、前記端所と回転中心軸5との間に位置し、かつ回転中心軸5よりも前記端所の位置に近い位置にて回転方向に沿った円輪形状のクーラント通過用パイプ32が介在していることを特徴としている(尚、図2は、第2の実施形態に立脚した切削刃2の形態を示す。)。
【0035】
実施例2のように、回転方向に沿った円輪、即ち回転中心軸5を中心とする円輪に沿ったクーラント通過用パイプ32の介在によって、各切削刃2における回転方向側の隆起側面21と回転方向と反対側の隆起側面22とが接続する場合には、双方の端所の冷却を実現しており、前記各実施形態における効率的な冷却が更に一層助長されることに帰する。
【産業上の利用可能性】
【0036】
このように、本発明による切削工具の冷却方法においては、発熱の発生原因である切削刃の先端だけでなく、回転方向側における隆起側面の効率的な冷却を実現する一方、回転方向側の隆起側面にて発生している切削工具を確実に除去することができ、利用価値は絶大である。
【符号の説明】
【0037】
1 切削工具
2 切削刃
20 切削刃の先端
21 回転方向側の隆起側面
22 回転方向と反対側の隆起側面
30 回転中心軸の周囲に沿って延設されたクーラント通過用パイプ
31 放射状に分岐しているクーラント通過用パイプ
32 円輪状のクーラント通過用パイプ
4 噴出穴
5 回転中心軸
【要約】
【課題】長手方向に沿った側部にて、隆起している複数個の両側側面によって切削刃を形成している切削工具において、回転方向側において広範な領域の側面にクーラントを供給することによって、効率的な切削刃の冷却及び切削刃からの切削粉の排除を実現し得る構成を提供すること。
【解決手段】
長手方向に沿った側部にて、隆起している複数個の両側側面21、22によって切削刃2を形成している切削工具1であって、回転中心軸5の周囲にクーラント通過用パイプ30を延設したうえで、当該延設に係るクーラント通過用パイプ30から分岐した各クーラント通過用パイプ31を、前記隆起している両側側面21、22のうち、回転方向側の隆起側面21の方向に沿って突設することによって前記課題を達成することができる切削工具1。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4