(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6362803
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】切削工具
(51)【国際特許分類】
B23B 51/06 20060101AFI20180712BHJP
B23C 5/28 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
B23B51/06 C
B23B51/06 D
B23C5/28
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-8835(P2018-8835)
(22)【出願日】2018年1月23日
【審査請求日】2018年1月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146087
【氏名又は名称】株式会社松浦機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100084696
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 直人
(72)【発明者】
【氏名】天谷 浩一
(72)【発明者】
【氏名】田中 隆三
(72)【発明者】
【氏名】加納 佳明
(72)【発明者】
【氏名】武澤 泰則
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 哲也
【審査官】
中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】
実開平02−114413(JP,U)
【文献】
実開昭51−133886(JP,U)
【文献】
特開2009−012142(JP,A)
【文献】
特表平11−507880(JP,A)
【文献】
実開平05−012039(JP,U)
【文献】
実開昭53−091089(JP,U)
【文献】
実開昭60−142011(JP,U)
【文献】
実開昭61−124315(JP,U)
【文献】
実開昭63−053611(JP,U)
【文献】
実開平01−114218(JP,U)
【文献】
実開平02−100728(JP,U)
【文献】
特開平04−336910(JP,A)
【文献】
特開2004−106065(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0204345(US,A1)
【文献】
特開2009−078330(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0328696(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0001381(US,A1)
【文献】
特開2016−144865(JP,A)
【文献】
特表2017−504493(JP,A)
【文献】
実開昭61−151814(JP,U)
【文献】
特開平10−193214(JP,A)
【文献】
特公昭54−022633(JP,B2)
【文献】
特開2010−149220(JP,A)
【文献】
特表2010−537838(JP,A)
【文献】
特開2014−108474(JP,A)
【文献】
特開2009−078346(JP,A)
【文献】
実開昭61−109612(JP,U)
【文献】
特開2014−079810(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/021856(WO,A1)
【文献】
特開2013−035094(JP,A)
【文献】
特開2012−206216(JP,A)
【文献】
特開昭58−177214(JP,A)
【文献】
実開昭61−068814(JP,U)
【文献】
実開平03−082107(JP,U)
【文献】
特開2003−285220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 35/00−49/06
B23B 51/00−51/14
B23C 1/00−9/00
B23Q 11/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向の側部外周にて螺旋状に湾曲した溝を備えた切削刃を有している切削工具において、当該溝内にクーラントの各噴出穴を配列した上で、回転中心軸の周囲にて、長手方向に沿ってクーラント通過用パイプを延設すると共に、前記クーラント通過用パイプと、前記各噴出穴とを前記クーラント通過用パイプから分岐した各クーラント通過用パイプによって連通し、分岐した各クーラント通過用パイプを、前記溝から当該溝面に沿った方向であると共に、前記螺旋状の方向に沿って一列に配列して突設すると共に、前記突設方向が、長手方向に斜交する方向であり、かつ切削工具の回転方向と逆方向である切削工具。
【請求項2】
長手方向の側部外周にて螺旋状に湾曲した溝を備えた切削刃を有している切削工具において、当該溝内にクーラントの各噴出穴を配列した上で、前記螺旋状の溝に沿ってクーラント通過用パイプを延設すると共に、前記クーラント通過用パイプと、前記各噴出穴とを前記クーラント通過用パイプから分岐した各クーラント通過用パイプとによって連通し、分岐した各クーラント通過用パイプを、前記溝から当該溝面に沿った方向であると共に、前記螺旋状の方向に沿って一列に配列して突設すると共に、前記突設方向が、長手方向に斜交する方向であり、かつ切削工具の回転方向と逆方向である切削工具。
【請求項3】
前記突設位置が、前記溝における最も深い部位であることを特徴とする請求項1,2の何れか一項に記載の切削工具。
【請求項4】
前記突設位置が、溝の湾曲している一方側端部の近傍の部位であり、当該突設方向は回転中心軸側に向いていることを特徴とする請求1,2の何れか一項に記載の切削工具。
【請求項5】
ドリル構成による切削工具の長手方向先端において、当該先端面から隆起している両側面によって形成される切削刃を設け、当該両側面のうち、回転方向側の側面にて、前記延設に係るクーラント通過用パイプ又は当該パイプから分岐したクーラント通過用パイプを、前記側面から当該側面の方向に沿って突設していることを特徴とする請求項1、2、3、4の何れか一項に記載の切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長手方向の側部外周にて螺旋状に湾曲した溝を備えた切削刃を有し、かつ内側にクーラント通過用パイプを備えている切削工具を対象としている。
【背景技術】
【0002】
切削工具においては、ドリル構成による切削工具、又は平タイプのフライス構成による切削工具のように、長手方向の側部外周にて螺旋状に湾曲した溝を備えた切削刃を有している。
【0003】
ドリル構成の切削工具の場合には、先端における切削刃の回動によって、被切削物に対する穴の形成を伴う切削を実現している。
【0004】
これに対し、フライス構成の切削工具の場合には、側部外周における切削刃によって、被切削物の側面に対する切削を実現している。
【0005】
何れの場合においても、螺旋状に湾曲した溝においては、被切削物との摺動によって発熱状態にある一方、当該摺動を伴う切削を原因として切削屑が残留している。
【0006】
螺旋状に湾曲した溝は、前記切削屑を外部に排出する機能を発揮しているが、当該螺旋状に湾曲した溝に対する冷却は、切削工具内に備えたクーラント通過用パイプ内を流動し、かつ外部に排出されるクーラントによって実現されている。
【0007】
このようなクーラントによる冷却機能に着目し、例えば、特許文献1においては、クーラント供給通路20を螺旋状に湾曲した溝と同じような捻れた状態にて形成している(要約書の解決手段の項及び段落[0023])。
【0008】
然るに、特許文献1においては、切削工具であるドリルの先端において、クーラントが噴出穴18から先端の切削刃と被切削材との接触部位に供給されるも、螺旋状に湾曲した溝においては、クーラントの噴出を伴う供給は行われていない。
【0009】
特許文献2においても、切削工具50が螺旋状に湾曲した溝を備えた切削刃を冷却するために当該溝に沿っているクーラント通過用パイプを採用している(段落[0009])。
【0010】
然るに、特許文献2においては、クーラント(冷媒)は、切削機能を有しているフルート77及びブッシング64から離れた位置にて排出口68から外部に排出されるも(段落[0015]、
図3、
図4)、溝内において排出される訳ではない。
【0011】
このように、螺旋状に湾曲した溝を備えた切削刃を有する切削工具の場合には、当該切削刃の冷却機能及び切削屑の排出機能が重要であるにも拘らず、先行技術においては、前記溝内におけるクーラントの噴出によって上記各機能を十分発揮させることにつき、殆ど着目していない。
【0012】
その結果、前記溝内におけるクーラントの噴出構成については、殆ど創意工夫が行われていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2016−144865号公報
【特許文献2】特表2017−504493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、長手方向の側部外周にて螺旋状に湾曲した溝を備えた切削刃を有し、かつ内側にクーラント通過用パイプを備えている切削工具において、効率的な冷却及び効率的な切削屑の排出を可能とする切削工具の構成を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するため、本発明の基本構成は、
(1長手方向の側部外周にて螺旋状に湾曲した溝を備えた切削刃を有している切削工具において、当該溝内にクーラントの各噴出穴を配列した上で、回転中心軸の周囲にて、長手方向に沿ってクーラント通過用パイプを延設すると共に、前記クーラント通過用パイプと、前記各噴出穴とを前記クーラント通過用パイプから分岐した各クーラント通過用パイプによって連通し
、分岐した各クーラント通過用パイプを、前記溝から当該溝面に沿った方向であると共に、前記螺旋状の方向に沿って一列に配列して突設すると共に、前記突設方向が、長手方向に斜交する方向であり、かつ切削工具の回転方向と逆方向である切削工具、
(2)長手方向の側部外周にて螺旋状に湾曲した溝を備えた切削刃を有している切削工具において、当該溝内にクーラントの各噴出穴を配列した上で、前記螺旋状の溝に沿ってクーラント通過用パイプを延設すると共に、前記クーラント通過用パイプと、前記各噴出穴とを前記クーラント通過用パイプから分岐した各クーラント通過用パイプとによって連通し
、分岐した各クーラント通過用パイプを、前記溝から当該溝面に沿った方向であると共に、前記螺旋状の方向に沿って一列に配列して突設すると共に、前記突設方向が、長手方向に斜交する方向であり、かつ切削工具の回転方向と逆方向である切削工具、
からなる。
【発明の効果】
【0016】
基本構成(1)、(2)に立脚している本発明においては、螺旋状に湾曲した溝に沿って配列された噴出穴から噴出されるクーラントによって、前記溝に沿って形成している切削刃に対する冷却、更には当該溝内にて残留している切削屑の除去を極めて効率的に実現することができる。
【0017】
このような効果は、基本構成(1)、(2)に係る切削工具がドリル構成を採用し、かつ先端の切削刃によって挿通穴を形成する切削の場合、及び前記切削工具がフライス構成を採用しており、被切削物の側部に対する切削の場合の何れにおいても、発揮することができる。
更には、分岐した各クーラント通過用パイプを、前記溝から当該溝面に沿った方向であると共に、前記螺旋状の方向に沿って一列に配列して突設すると共に、前記突設方向が、長手方向に斜交する方向であり、かつ切削工具の回転方向と逆方向であることによって、効率的な冷却及び効率的な切削部分の排除を著しく助長することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施例1の構成を示しており、(a)、(b)は、
基本構成(1)において突設位置が溝の最も深い部位である場合の側面図及び長手方向と直交する方向に沿った断面図をそれぞれ示し、(c)、(d)は、
基本構成(2)において突設位置が溝の湾曲している一方側端部の近傍の部位である側面図及び長手方向と直交する方向に沿った断面図をそれぞれ示す。
【
図2】切削工具の長手方向先端において切削刃を形成している実施例2の構成を示しており、(a)は、先端部における長手方向に沿った側面図を示し(尚、先端部の細線矢印は、クーラントの流動方向を示す。)、(b)は、長手方向と直交する方向に沿った正面図を示す(尚、先端部の細線矢印は、クーラントの流動方向を示す。)。
【
図3】基本構成(1)の構成を示す斜視図である(尚、太い実線は、回転中心軸に沿って延設されたクーラント通過用パイプの存在位置を示しており、点線は、前記延設に係るクーラント通過用パイプから分岐した各クーラント通過用パイプを示す。)。
【
図4】基本構成(2)の構成を示す斜視図である(尚、太い実線は、螺旋状に湾曲した溝の方向に沿って延設されたクーラント通過用パイプの存在位置を示しており、点線は、前記延設に係るクーラント通過用パイプが分岐した各クーラント通過用パイプを示す。)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
切削工具1内を通過するクーラントは、工具ホルダー(図示せず)によって供給されている。
【0020】
このような供給に立脚した上で、基本構成(1)、(2)は、それぞれ、
図3、
図4に示すように、螺旋状に湾曲した溝2に沿って配列された噴出穴4を介してクーラントは、前記溝2内にて噴出することによって、前記効果を発揮している。
【0021】
基本構成(1)においては、前記配列を実現するために、
図3に示すように、回転中心軸の周囲にて、長手方向に沿ってクーラント通過用パイプ3を延設すると共に、前記クーラント通過用パイプ3と各噴出穴4とを前記クーラント通過用パイプ3から分岐したクーラント通過用パイプ31によって連通している。
【0022】
これに対し、基本構成(2)においては、前記配列を実現するために、
図4に示すように、前記螺旋状に湾曲した溝2に沿ってクーラント通過用パイプ3を延設すると共に、前記クーラント通過用パイプ3と、前記各噴出穴4とを、前記延設したクーラント通過用パイプ3から分岐したクーラント通過用パイプ31とによって連通している。
【0023】
基本構成(1)は、大抵の切削工具1の場合と同様に、回転中心軸の近傍にクーラント通過用パイプ3を延設しており、構成がシンプルである点に特徴を有している。
【0024】
基本構成(2)においては、螺旋状に湾曲した溝2に沿ってクーラント通過用パイプ3を延設する点において、基本構成(1)に比し設計上必ずしもシンプルではないが、延設されたクーラント用通過パイプ3が切削刃の近傍であることを原因とする冷却効果の点で、基本構成(1)よりも優れている。
【0025】
このように、基本構成(1)、(2)は、それぞれ一長一短を有しているが、何れの構成においても、分岐したクーラント通過用パイプ31の先端に螺旋状に湾曲した溝2に沿って配列している噴出穴4が形成されていることに変わりはない。
尚、
図3及び
図4は、基本構成(1)及び(2)をそれぞれ、1個の切削工具1に単独にて採用している状態を示すが、基本構成(1)及び(2)は、1個の切削工具1内に併存した状態にて採用することもできる。
【0026】
基本構成(1)及び同(2)は、分岐した各クーラント通過用パイプ31を、前記溝2から当該溝2の面に沿った方向
であると共に、前記螺旋状の方向に沿って一列に配列して突設していることを
要件としている。
【0027】
分岐したクーラント通過用パイプ31が突設される部位においては、溝2を形成する面が平坦の場合と湾曲している場合との双方が存在する。
【0028】
従って、前記の溝2の面に沿った突設とは、溝2の面が平坦である場合には直線状の突設状態であり、溝2の面が湾曲している場合には、湾曲した状態の突設状態であることを意味している。
【0029】
このような
基本構成(1)及び同(2)においては、クーラントが前記溝2の面に沿って流動することによって、溝2内における効率的な冷却及び効率的な切削粉の排除を更に助長することができる。
【0030】
基本構成(1)及び同(2)において
は、前記突設方向が、
長手方向に斜交する方向であり、かつ切削工具1の回転方向と逆方向であることを
必要不可欠な要件として採用
することによって、クーラントは、溝2における湾曲した両端のうち、現実に切削に寄与している切削刃の端部、及び被切削材との接触部位に供給され、上記効率的な冷却及び効率的な切削粉の排除を著しく助長することができる。
【実施例1】
【0032】
実施例1
は、
図1(a)、(b)に示すように、前記突設位置が、前記溝2における最も深い部位であるような設計を採用
すること、及び
図1(c)、(d)のように、前記突設位置が、溝2の湾曲している一方側端部の近傍の部位
あり、当該突設方向は回転中心軸側に向いている設計を採用
することを特徴としている。
このような特徴に基づく前記各位置は、平坦な溝2の面を形成している場合が多いことから、シンプルな設計を実現することができる(尚、
図1(b)は、長手方向に延設されたクーラント通過用パイプ3の断面図における位置からも明らかなように、基本構成(1)に立脚しており、
図1(d)は、長手方向に延設されたクーラント通過用パイプ3の断面図における位置からも明らかなように、基本構成(2)に立脚している。)。
【0033】
のみならず、上記各設計の場合には、噴出穴4を規則的に配列することによって、
基本構成(1)及び同(2)における効率的な冷却及び効率的な切削粉の排除の助長を確実に実現することができる。
【実施例2】
【0034】
実施例2は、
図2(a)、(b)に示すように、ドリル構成による切削工具1の長手方向先端において、当該先端面から隆起している両側面61、62によって形成される切削刃6を設け、当該両側面61、62のうち、回転方向側の側面61にて、前記延設に係るクーラント通過用パイプ3又は当該パイプ3から分岐したクーラント通過用パイプ31を、前記側面61から当該側面61の方向に沿って突設していることを特徴としている(尚、
図2(a)、(b)は、分岐したクーラント通過用パイプ31を突設した場合を示す。)。
【0035】
前記特徴点に基づく実施例2においては、クーラントは、ドリル構成による切削工具1の長手方向先端において隆起している回転側の面に沿って流動し、かつ切削刃6と被切削材との接触部位に供給され、効率的な冷却効果及び効率的な切削粉の排除に資することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
このように、本発明は、螺旋状に湾曲した溝を備えた切削刃につき、クーラントによる効率的な冷却及び効率的な切削粉の排除を実現することができ、ドリルによる挿通穴の形成を伴う切削及びフライスによる側面における切削において広範な利用を実現することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 切削工具
2 溝
21 回転方向に面している溝の端部
22 回転方向と反対側に面している溝の端部
3 長手方向に延設されたクーラント通過用パイプ
31 分岐したクーラント通過用パイプ
4 噴出穴
5 クーラント
6 長手方向先端側における切削刃
61 先端面から隆起している両側面のうち、回転方向側の側面
62 先端面から隆起している両側面のうち、回転方向側と反対側の側面
【要約】
【課題】螺旋状に湾曲した溝を備えた切削刃を有している切削工具において、クーラントによる効率的な冷却及び効率的な切削屑の排出を可能とする構成を提供すること。
【解決手段】長手方向の側部外周にて螺旋状に湾曲した溝2を備えた切削刃を有している切削工具1において、内側に延設されたクーラント通過用パイプ3と、前記溝2内に配列されたクーラントの噴出穴4とを、前記クーラント通過用パイプ3から分岐したクーラント通過用パイプ31を介して連通することによって前記課題を達成している切削工具。
【選択図】
図4