(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、原子炉容器内に格納される燃料は、核反応によって中性子を出射する。原子炉容器は、燃料から出射された中性子が経時的に照射されることで脆化する。原子炉容器の脆化を抑制すべく、原子炉容器内に装荷される燃料の装荷パターンを、L3P(Low Leakage Loading Pattern)にすることがある。L3Pは、中性子底漏洩燃料装荷パターンと呼称され、原子炉容器の中心部に、燃焼度の低い新燃料等の燃料を配置し、原子炉容器に近い側となる周囲部に、燃焼度の高い燃焼済の燃料を配置するパターンとなっている。
【0005】
燃料の装荷パターンをL3Pとすると、原子炉容器の中心部における反応が、原子炉容器の周囲部における反応に比して高くなることから、原子炉容器の中心部を流通する冷却材と、原子炉容器の周囲部を流通する冷却材との間に、温度差(温度勾配)が生じる。原子炉容器の内部において冷却材の温度差が生じると、冷却材の温度を計測する温度計が配置される冷却材流路において、温度計により検出される検出温度が上下変動する温度ゆらぎが生じる。温度ゆらぎが発生すると、温度計の計測結果に基づく原子力設備の制御系が不必要に作動してしまう可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、温度ゆらぎが生じる可能性がある燃料の装荷パターンであっても、適切に原子力設備の動作を制御することができる原子力設備の制御装置及び原子力設備の制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の原子力設備の制御装置は、内部において冷却材が流通する原子炉を制御する制御系に含まれる原子力設備の制御装置であって、前記冷却材の検出温度の上下変動である温度ゆらぎが発生しているか否かを判定する判定処理、及び前記原子力設備に外乱が発生しているか否かを判定する判定処理のうち、少なくとも一方の判定処理を実行する判定部と、前記判定部において、前記温度ゆらぎが発生しているとの判定、及び前記外乱が発生していないとの判定のうち、少なくとも一方の判定がなされた場合、前記制御系の動作の実行をブロックする一方で、前記温度ゆらぎが発生していないとの判定、及び前記外乱が発生しているとの判定のうち、少なくとも一方の判定がなされた場合、前記制御系の動作の実行を許容する実行可否部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の原子力設備の制御方法は、内部において冷却材が流通する原子炉と、前記原子炉を制御する制御装置を含む制御系と、を備える原子力設備の制御方法であって、前記冷却材の検出温度の上下変動である温度ゆらぎが発生しているか否かを判定する判定処理、及び前記原子力設備に外乱が発生しているか否かを判定する判定処理のうち、少なくとも一方の判定処理を、前記制御装置により実行する判定工程と、前記判定工程において、前記温度ゆらぎが発生しているとの判定、及び前記外乱が発生していないとの判定のうち、少なくとも一方の判定がなされた場合、前記制御系の動作の実行をブロックする一方で、前記温度ゆらぎが発生していないとの判定、及び前記外乱が発生しているとの判定のうち、少なくとも一方の判定がなされた場合、前記制御系の動作の実行を許容する実行可否工程と、を前記制御装置により実行することを特徴とする。
【0009】
これらの構成によれば、冷却材の検出温度の温度ゆらぎが発生した場合、原子力設備の制御系の動作の実行をブロックできるため、温度ゆらぎによる制御系の動作の実行を抑制することができる。一方で、原子力設備に外乱が発生した場合、原子力設備の制御系の動作の実行を許容できるため、外乱に対する制御系の動作を実行することができる。このため、燃料の装荷パターンがL3Pであっても、適切に原子力設備の制御系の動作を制御することができる。このとき、ハードウェアとしての原子力設備の構成を改修することなく、ソフトウェアとしての制御処理の構成を改修すればよいことから、改修コストの低減を図ることができる。
【0010】
また、前記判定部は、前記冷却材の前記検出温度が、前記温度ゆらぎに係る挙動であるか否かを判定することで、前記温度ゆらぎが発生しているか否かを判定することが、好ましい。具体的に、前記判定部及び前記実行可否部は、前記冷却材の前記検出温度に基づく前記制御系の動作の実行を不能とする、第1温度範囲となる第1不感帯と、前記検出温度が前記第1不感帯の前記第1温度範囲外に存在する時間をカウントするタイマーと、前記第1温度範囲よりも広い第2温度範囲となり、前記検出温度に基づく前記制御系の動作の実行を不能とする第2不感帯と、を有し、前記判定部は、前記検出温度が、前記第1不感帯の前記第1温度範囲外に存在し、前記第2不感帯の前記第2温度範囲内に存在する場合であって、且つ、前記タイマーにより予め設定された設定時間を超えた場合、また、前記検出温度が、前記第1不感帯の第1温度範囲外及び前記第2不感帯の前記第2温度範囲外に存在する場合、前記温度ゆらぎに係る挙動でないと判定し、前記実行可否部は、前記制御系の動作の実行を許容することが、好ましい。
【0011】
この構成によれば、冷却材の検出温度が温度ゆらぎではないと判定することで、外乱による検出温度の温度変化であると判定することができるため、外乱に対する制御系の動作を実行することができる。
【0012】
また、前記判定部は、前記検出温度が、前記第1不感帯の前記第1温度範囲内に存在する場合、または、前記第1不感帯の前記第1温度範囲外に存在し、前記第2不感帯の前記第2温度範囲内に存在する場合であって、且つ、前記タイマーにより予め設定された設定時間を超えない場合、前記温度ゆらぎに係る挙動であると判定し、前記実行可否部は、前記制御系の動作の実行をブロックすることが、好ましい。
【0013】
この構成によれば、冷却材の検出温度が温度ゆらぎであると判定することができるため、温度ゆらぎによる制御系の動作の実行を抑制することができる。
【0014】
また、前記制御系の動作は、前記原子炉内の燃料に挿通される制御棒の抜き挿し動作であることが、好ましい。
【0015】
この構成によれば、冷却材の検出温度が温度ゆらぎではなく、外乱による検出温度の温度変化である場合、外乱による冷却材の温度変化に対して、制御棒の抜き挿し動作を実行することができるため、原子炉の制御を適切に実行することができる。
【0016】
また、前記判定部は、前記冷却材の温度変化の要因に関連するパラメータとなる関連パラメータのパラメータ値が、前記外乱に係る挙動であるか否かを判定することで、前記外乱が発生しているか否かを判定することが、好ましい。具体的に、前記判定部は、前記関連パラメータのパラメータ値が、前記原子力設備が正常動作する正常数値範囲内である場合、前記外乱に係る挙動でないと判定し、前記実行可否部は、前記制御系の動作の実行をブロックすることが、好ましい。
【0017】
この構成によれば、原子力設備に外乱が発生していないと判定することで、温度ゆらぎが発生していたとしても、制御系の動作の実行を抑制することができる。
【0018】
また、前記判定部は、前記関連パラメータのパラメータ値が、前記正常数値範囲外である場合、前記外乱に係る挙動であると判定し、前記実行可否部は、前記制御系の動作の実行を許容することが、好ましい。
【0019】
この構成によれば、原子力設備に外乱が発生していると判定することができるため、外乱に対する制御系の動作を実行することができる。
【0020】
また、前記原子力設備は、前記原子炉を含む一次冷却系と、前記一次冷却系との熱交換により得られた熱により回転するタービンを含む二次冷却系と、を備え、前記制御系の動作は、前記タービンの出力を変化させる出力変化動作であることが、好ましい。
【0021】
この構成によれば、外乱による冷却材の温度変化に対して、二次冷却系のタービンの出力を変化させることにより、一次冷却系の熱出力を変化させることができるため、原子炉の制御を適切に実行することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせることも可能である。
【0024】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る原子力施設の概略構成図である。原子力施設(原子力設備)1は、原子炉2を有する。原子炉2は、例えば、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)が用いられる。この加圧水型の原子炉2を用いた原子力施設1は、原子炉2を含む原子炉冷却系(一次冷却系)100と、原子炉冷却系100と熱交換するタービン系(二次冷却系)200とで構成される。原子炉冷却系100は、一次冷却材が流通し、タービン系200は、二次冷却材が流通する。
【0025】
原子炉冷却系100は、コールドレグ3aおよびホットレグ3bを介して原子炉2に接続された蒸気発生器4を有する。ホットレグ3bには、加圧器5が設けられ、コールドレグ3aは、一次冷却材ポンプ6が設けられている。そして、原子炉2、コールドレグ3a、ホットレグ3b、蒸気発生器4、加圧器5および一次冷却材ポンプ6は、原子炉格納容器7に収容されている。
【0026】
原子炉2は、上記したように加圧水型原子炉であり、その内部は一次冷却材で満たされる。一次冷却材は、中性子減速材として用いられるホウ素が溶解した軽水である。また、原子炉2は、原子炉容器10の内部に、多数の燃料集合体8が収容され、この各燃料集合体8に対し、燃料集合体8の核分裂を制御する多数の制御棒9が抜差し可能に設けられている。
【0027】
原子力施設1の原子炉冷却系100における一連の動作について説明する。原子炉2内において、制御棒9により核分裂反応を制御しながら燃料集合体8を核分裂させると、核分裂により熱エネルギーが発生する。この熱エネルギーにより、原子炉2内の一次冷却材が加熱されると、加熱された一次冷却材は、一次冷却材ポンプ6によりホットレグ3bを介して蒸気発生器4に送られる。ホットレグ3bを通過する高温の一次冷却材は、加圧器5により加圧されることで沸騰が抑制され、高温高圧となった状態で、蒸気発生器4に流入する。蒸気発生器4に流入した高温高圧の一次冷却材は、二次冷却材と熱交換を行うことにより冷却され、冷却された一次冷却材は、一次冷却材ポンプ6によりコールドレグ3aを介して原子炉2に送られる。そして、冷却された一次冷却材が原子炉2に流入することで、原子炉2が冷却される。このように、一次冷却材は、原子炉2と蒸気発生器4とを循環している。
【0028】
タービン系200は、蒸気管11を介して蒸気発生器4に接続されたタービン12、タービン12に接続された復水器13、および復水器13と蒸気発生器4とを接続する給水管14に介設された給水ポンプ15、を有している。そして、タービン12は、発電機16が接続されている。
【0029】
原子力施設1のタービン系200における一連の動作について説明する。蒸気管11を介して蒸気発生器4から蒸気がタービン12に流入すると、タービン12は回転を行う。タービン12が回転すると、タービン12に接続された発電機16は、発電を行う。この後、タービン12から流出した蒸気は復水器13に流入する。復水器13は、その内部に冷却管17が配設されており、冷却管17の一方には冷却水(例えば、海水)を供給するための取水管18が接続され、冷却管17の他方には冷却水を排水するための排水管19が接続されている。この復水器13は、タービン12から流入した蒸気を冷却管17により冷却することで、蒸気を液体に戻す。液体となった二次冷却材は、給水ポンプ15により給水管14を介して蒸気発生器4に送られる。蒸気発生器4に送られた二次冷却材は、蒸気発生器4において一次冷却材と熱交換を行うことにより再び蒸気となる。
【0030】
また、原子力施設1は、原子炉冷却系100及びタービン系200を制御する制御系300を備えている。制御系300は、コールドレグ3aに設けられる第一温度計41と、ホットレグ3bに設けられる第二温度計42と、各温度計41,42により検出された検出温度が入力される制御装置50と、を備えている。
【0031】
第一温度計41は、原子炉2に流入する一次冷却材の温度を計測し、制御装置50へ向けて検出温度を出力する。第一温度計41は、コールドレグ3aに設けられることから、流出側に比べて相対的に低温となる流入側検出温度T
coldとして、制御装置50に出力される。
【0032】
第二温度計42は、原子炉2から流出する一次冷却材の温度を計測し、制御装置50へ向けて検出温度を出力する。第二温度計42は、ホットレグ3bに設けられることから、流入側に比べて相対的に高温となる流出側検出温度T
hotとして、制御装置50に出力される。
【0033】
制御装置50は、検出温度T
cold及び検出温度T
hotを含む各種プラントデータ及びパラメータが入力され、このプラントデータに基づいて、原子炉冷却系100及びタービン系200を制御する。制御装置50に入力されるプラントデータとしては、検出温度T
cold及び検出温度T
hotの他、図示しない原子炉2内部に設けられる中性子計測装置の計測値(NIS)、一次冷却材流量(RCS流量)、蒸気発生器4への給水流量、蒸気発生器4からの蒸気流量等がある。
【0034】
また、制御装置50は、これらのプラントデータに基づいて、各種データを生成する。生成されるプラントデータとしては、例えば、検出温度T
cold及び検出温度T
hotの算術平均である平均検出温度Tave、検出温度T
cold及び検出温度T
hotの差分である温度差分ΔTがある。また、プラントデータとしては、平均検出温度Taveを係数とする所定の算出式により導出される制御棒駆動信号Terrがある。ここで、中性子計測装置の計測値(NIS)及び温度差分ΔTは、原子炉冷却系100の出力に関するパラメータとして取り扱われる。
【0035】
この制御装置50は、原子力施設1の定格運転時において、原子炉2(原子炉冷却系100)の出力が所定の出力となるように制御している。具体的に、制御装置50は、制御棒駆動信号Terrに基づき、燃料集合体8に対して制御棒9を抜き差しすることで、原子炉2の出力を制御している。
【0036】
このような原子力施設1において、原子炉2の内部に装荷される燃料の装荷パターンが、中性子底漏洩燃料装荷パターン(L3P:Low Leakage Loading Pattern)となる場合がある。この場合、上記したように、原子炉容器10の中心部(内部)における温度が、原子炉容器10の周囲部(外部)における温度に比して高くなり、原子炉2の内外領域において温度勾配が生じる。すると、第二温度計42により検出される検出温度T
hotが上下変動する温度ゆらぎが生じる。検出温度T
hotが温度ゆらぎすると、これに伴って、平均検出温度Tave、温度差分ΔTの他、制御棒駆動信号Terrがゆらいでしまい、制御系300の制御に影響を与える可能性がある。このため、実施形態1では、温度ゆらぎが生じる可能性がある燃料の装荷パターンであっても、制御装置50において、原子力施設1を適切に制御する構成となっている。
【0037】
実施形態1の制御装置50は、温度ゆらぎが発生しているか否かを判定する制御回路60が設けられている。
図2は、実施形態1に係る原子力施設の制御装置に設けられる制御回路の図である。この制御回路60には、入力信号として制御棒駆動信号Terrが入力される。つまり、この制御回路60は、検出温度T
hotを含む平均検出温度Taveを係数とする制御棒駆動信号Terrを取り扱って、温度ゆらぎに係る挙動であるか否かを判定することで、温度ゆらぎが発生しているか否かを間接的に判定している。なお、実施形態1では、入力信号として制御棒駆動信号Terrを取り扱ったが、この構成に限定されない。例えば、入力信号として、平均検出温度Tave、温度差分ΔTを取り扱うことで、温度ゆらぎが発生しているか否かを間接的に判定してもよいし、検出温度T
hotを取り扱うことで、温度ゆらぎが発生しているか否かを直接的に判定してもよい。
【0038】
制御回路60は、第1不感帯61と、タイマー62と、第2不感帯63と、OR回路64とを有している。制御回路60に入力される制御棒駆動信号Terrは、単位が温度となっており、第1不感帯61と第2不感帯63とにそれぞれ入力される。
【0039】
第1不感帯61は、第1温度範囲となる不感帯であり、第1温度範囲は、温度−T1以上温度T1以下の範囲(±T1の範囲)となっている。第1不感帯61は、制御棒駆動信号Terrの温度値が、第1温度範囲以内となる場合、制御棒駆動信号Terrの出力をブロックする一方で、第1温度範囲を超える場合、制御棒駆動信号Terrを出力する。
【0040】
タイマー62は、第1不感帯61に直列に接続され、第1不感帯61を経て入力される制御棒駆動信号Terrの経過時間をカウントする。このタイマー62には、予め設定時間が設定されており、設定時間以内となる場合、制御棒駆動信号Terrの出力をブロックする一方で、設定時間を超える場合、制御棒駆動信号Terrを出力する。
【0041】
第2不感帯63は、第2温度範囲となる不感帯であり、第2温度範囲は、第1温度範囲を含む第1温度範囲よりも広い温度範囲となっている。第2温度範囲は、温度−T2以上温度T2以下の範囲(±T2の範囲)となっており、温度T2の絶対値は、温度T1の絶対値よりも大きい値となっている。第2不感帯63は、制御棒駆動信号Terrの温度値が、第2温度範囲以内となる場合、制御棒駆動信号Terrの出力をブロックする一方で、第2温度範囲を超える場合、制御棒駆動信号Terrを出力する。
【0042】
OR回路64は、タイマー62から出力される制御棒駆動信号Terrが入力されると共に、第2不感帯63から出力される制御棒駆動信号Terrが入力され、少なくとも一方の制御棒駆動信号Terrが入力された場合、制御棒駆動信号Terrを出力する。そして、OR回路64から出力された制御棒駆動信号Terrは、制御棒9を駆動する図示しない制御棒駆動装置に入力され、制御棒駆動装置は、制御棒駆動信号Terrに基づいて、制御棒9を抜き差し動作させる。
【0043】
次に、
図3及び
図4を参照して、制御回路60の動作について説明する。
図3は、温度ゆらぎに伴う制御棒駆動信号の時間変化を示す図である。
図4は、外乱に伴う制御棒駆動信号の時間変化を示す図である。
図3には、温度ゆらぎに伴う制御棒駆動信号Terrの上下変動を例示している。温度ゆらぎが発生すると、制御棒駆動信号Terrの値は、上下変動する。
図4には、外乱に伴う制御棒駆動信号Terrの挙動を例示している。外乱が発生すると、制御棒駆動信号Terrの値は、過渡的に上昇する。なお、
図3に示す温度ゆらぎに伴う制御棒駆動信号Terrの挙動と、
図4に示す外乱に伴う制御棒駆動信号Terrの挙動は、一例の挙動であり、この挙動に限定されない。
【0044】
図3に示すように、温度ゆらぎが発生する場合、制御系300の制御に影響を与えることを抑制すべく、制御棒駆動信号Terrによる制御棒9の駆動をブロックする。このため、制御回路60は、制御棒駆動信号Terrが、第1不感帯61の第1温度範囲内に存在する場合、温度ゆらぎまたは信号ノイズ等の許容範囲内であるとして、制御棒駆動信号Terrの出力をブロックする。また、制御回路60は、制御棒駆動信号Terrが、第1不感帯61の第1温度範囲外に存在し、第2不感帯63の第2温度範囲内に存在する場合であって、且つ、タイマー62で設定された設定時間を超えない場合、温度ゆらぎであるとして、制御棒駆動信号Terrの出力をブロックする。
【0045】
一方で、
図4に示すように、外乱が発生する場合、制御系300の制御を実行すべく、制御棒駆動信号Terrによる制御棒9の駆動を許容する。このため、制御回路60は、制御棒駆動信号Terrが、第1不感帯61の第1温度範囲外に存在し、第2不感帯63の第2温度範囲内に存在する場合であって、且つ、タイマー62で設定された設定時間を超えた場合、温度ゆらぎではなく外乱であるとして、制御棒駆動信号Terrを出力する。また、制御回路60は、制御棒駆動信号Terrが、第1不感帯61の第1温度範囲外及び第2不感帯63の第2温度範囲外に存在する場合、温度ゆらぎではなく外乱であるとして、制御棒駆動信号Terrを出力する。
【0046】
このように、制御回路60は、温度ゆらぎが発生しているか否かを判定する判定処理を制御棒駆動信号Terrに基づいて実行する(判定工程)。そして、制御回路60は、温度ゆらぎであると判定された場合、制御棒駆動信号Terrによる制御棒9の動作の実行をブロックする一方で、温度ゆらぎでないと判定された場合、制御棒駆動信号Terrによる制御棒9の動作の実行を許容する(実行可否工程)。つまり、制御回路60は、温度ゆらぎが発生しているか否かの判定処理を実行する判定回路(判定部)と、タービンランバック動作の実行の可否を行う実行可否回路(実行可否部)と含む回路となっている。
【0047】
以上のように、実施形態1によれば、一次冷却材の検出温度T
hotの温度ゆらぎが発生した場合、制御回路60は、原子力施設1の制御系300の動作の実行をブロックできるため、温度ゆらぎによる制御棒駆動等の制御系300の動作の実行を抑制することができる。一方で、原子力施設1に外乱が発生した場合、制御回路60は、原子力施設1の制御系300の動作の実行を許容できるため、外乱に対する制御棒駆動等の制御系300の動作を実行することができる。このため、制御装置50は、燃料の装荷パターンがL3Pであっても、適切に原子力施設1の制御系300の動作を制御することができる。このとき、ハードウェアとしての原子力施設1の構成を改修することなく、ソフトウェアとしての制御装置50の構成を改修すればよいことから、改修コストの低減を図ることができる。
【0048】
また、実施形態1によれば、制御回路60が温度ゆらぎではないと判定することで、外乱による検出温度T
hotの温度変化であると判定することができるため、制御装置50は、外乱に対する制御系300の動作としての制御棒9の抜き挿し動作を実行することができる。
【0049】
[実施形態2]
次に、
図5を参照して、実施形態2に係る制御装置70について説明する。なお、実施形態2では、重複した記載を避けるべく、実施形態1と異なる部分について説明し、実施形態1と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
図5は、実施形態2に係る原子力施設の制御装置に設けられる制御回路の図である。
【0050】
実施形態1の制御装置50は、制御回路60により検出温度T
hotの温度ゆらぎが発生しているか否かを判定し、判定結果に基づいて制御棒9の抜き差し動作の可否を処理した。実施形態2の制御装置70は、後述する制御回路90により外乱が発生しているか否かを判定し、判定結果に基づいて制御系300の動作の実行の可否を処理している。
【0051】
ここで、実施形態2では、制御系300の動作として、原子力施設1の定格運転時において、異常が発生した場合に、タービン系200の出力を低下させるタービンランバック動作を対象としている。
【0052】
実施形態2の制御装置70は、原子力施設1の定格運転時において、異常が発生した際に、タービンランバックを動作させるための動作制御回路80と、外乱が発生しているか否かを判定する制御回路90とを含んで設けられている。
【0053】
動作制御回路80には、入力信号として、原子炉出力に関するパラメータである中性子計測装置の計測値(NIS)、タービン負荷に関するパラメータである蒸気管11内の圧力値(P1st)、原子力施設1が定格運転モードであることの入力値が入力される。動作制御回路80は、原子炉出力に関するパラメータを取り扱って、外乱に係る挙動であるか否かを判定することで、外乱が発生しているか否かを判定している。
【0054】
動作制御回路80は、原子炉出力不感帯81と、タービン負荷不感帯82と、第一AND回路83と、を有している。計測値NISは、原子炉出力不感帯81に入力され、圧力値P1stは、タービン負荷不感帯82に入力され、定格運転モードの入力値は、第一AND回路83に入力される。
【0055】
原子炉出力不感帯81は、所定の範囲となる不感帯であり、計測値NISが、所定の範囲以内となる場合、タービンランバックの作動要求信号の出力をブロックする一方で、所定の範囲を超える場合、タービンランバックの作動要求信号を出力する。
【0056】
タービン負荷不感帯82は、所定の範囲となる不感帯であり、圧力値P1stが、所定の範囲以内となる場合、タービンランバックの作動要求信号の出力をブロックする一方で、所定の範囲を超える場合、タービンランバックの作動要求信号を出力する。
【0057】
第一AND回路83は、定格運転モードの入力値と、原子炉出力不感帯81から出力される作動要求信号と、タービン負荷不感帯82から出力される作動要求信号とがそれぞれ入力され、これら全てが入力された場合、作動要求信号を出力する。そして、第一AND回路83から出力された作動要求信号は、後述の第二AND回路94に入力される。
【0058】
制御回路90は、動作制御回路80から出力される作動要求信号をブロックしたり、または許容したりする回路となっている。制御回路90には、入力信号として、一次冷却材流量のパラメータ値、給水流量のパラメータ値、蒸気流量のパラメータ値が入力される。これらのパラメータ値は、一次冷却材の温度変化の要因に関連する関連パラメータとなっている。
【0059】
制御回路90は、上記した3つのパラメータ値に対応する3系統の回路91a,91b,91cと、OR回路92と、NOT回路93と、第二AND回路94とを有している。3系統の回路91a,91b,91cは、同じ構成であるため、回路91aを用いて説明する。回路91aは、ノイズフィルタ95と、トランジスタ96と、差分回路97と、不感帯98とを含んで構成されている。
【0060】
ノイズフィルタ95は、パラメータ値が入力される。ノイズフィルタ95は、パラメータ値に含まれるノイズを除去し、ノイズを除去した後のパラメータ値を出力する。
【0061】
トランジスタ96は、ノイズフィルタ95を経たパラメータ値が入力されると共に、定格運転モードの入力値が入力される。トランジスタ96は、定格運転モードの入力値が入力された場合に、パラメータ値の出力を許容する一方で、定格運転モードの入力値が入力されない場合に、パラメータ値の出力をブロックする。
【0062】
差分回路97は、トランジスタ96を経たパラメータ値が入力されると共に、ノイズフィルタ95及びトランジスタ96を経ていないパラメータ値が入力される。差分回路97は、トランジスタ96を経たパラメータ値と、ノイズフィルタ95及びトランジスタ96を経ていないパラメータ値との差分をとり、この差分を差分値として出力する。
【0063】
不感帯98は、差分回路97から出力された差分値が入力される。不感帯98は、所定の範囲となる不感帯であり、差分値が、所定の範囲以上となる場合、一次冷却材の温度変動をもたらし得る異常事象が発生したとして、異常発生信号を出力する。回路91aの不感帯98においては、一次冷却材の温度変動をもたらし得るRCS流量の変動が生じているとして、異常発生信号を出力する。一方で、不感帯98は、差分値が、所定の範囲よりも小さい場合、異常事象が発生していないとして、異常発生信号を出力しない。
【0064】
OR回路92は、各回路91a,91b,91cから出力される異常発生信号がそれぞれ入力され、少なくとも一つの異常発生信号が入力された場合、原子力施設1が安定状態ではない(何かしらの外乱が発生している)と判定して、外乱発生信号を出力する。
【0065】
NOT回路93は、OR回路92から出力された外乱発生信号が入力される。NOT回路93は、外乱発生信号が入力された場合、外乱に対するタービンランバックの動作を許容すべく、タービンランバックの作動を阻止する作動阻止信号を出力しない。一方で、NOT回路93は、外乱発生信号が入力されない場合、タービンランバックの動作を阻止すべく、作動阻止信号を出力する。
【0066】
第二AND回路94は、第一AND回路83から出力される作動要求信号と、NOT回路93から出力される作動阻止信号とがそれぞれ入力され、これら全てが入力された場合、タービンランバックの動作を阻止する信号であるタービンランバック動作阻止信号を出力する。つまり、第二AND回路94は、外乱が発生せず、また、一次冷却材の温度変動が生じる場合、温度ゆらぎであるとして、タービンランバックの動作を阻止する。一方で、第二AND回路94は、作動要求信号及び作動阻止信号のいずれか一方が入力されない場合、タービンランバック動作阻止信号を出力しない。つまり、第二AND回路94は、外乱が発生して、一次冷却材の温度変動が生じる場合、タービンランバックの動作を許容する。そして、制御装置70は、第二AND回路94から出力されたタービンランバック動作阻止信号に基づき、タービンランバック動作の阻止を実行する。
【0067】
このように、制御回路90は、外乱が発生しているか否かを判定する判定処理を各パラメータ値に基づいて実行する(判定工程)。そして、制御回路90は、外乱ではなく温度ゆらぎであると判定された場合、タービンランバックの動作の実行をブロックする一方で、外乱であると判定された場合、タービンランバックの動作の実行を許容する(実行可否工程)。つまり、制御回路90は、外乱が発生しているか否かの判定処理を実行する判定回路(判定部)と、タービンランバック動作の実行の可否を行う実行可否回路(実行可否部)と含む回路となっている。
【0068】
以上のように、実施形態2によれば、動作制御回路80において作動要求信号が出力された場合であっても、制御回路90により外乱が発生していないと判定されると、温度ゆらぎが発生したとして、動作要求信号の出力をブロックし、タービンランバック動作阻止信号を出力することができる。このため、温度ゆらぎによるタービンランバック等の制御系300の動作の実行を抑制することができる。一方で、原子力施設1に外乱が発生した場合、制御回路90は、原子力施設1の制御系300の動作の実行を許容できるため、外乱に対するタービンランバック等の制御系300の動作を実行することができる。このため、制御装置50は、燃料の装荷パターンがL3Pであっても、適切に原子力施設1の制御系300の動作を制御することができる。このとき、実施形態2においても、ハードウェアとしての原子力施設1の構成を改修することなく、ソフトウェアとしての制御装置70の構成を改修すればよいことから、改修コストの低減を図ることができる。
【0069】
また、実施形態2によれば、制御回路90が外乱であると判定することで、制御装置70は、外乱に対する制御系300の動作としてのタービンランバック動作を実行することができる。
【0070】
次に、
図6を参照して、実施形態1の制御装置50及び実施形態2の制御装置70を適用したときの、原子炉2内の内外領域における温度勾配と中性子照射低減量との関係について説明する。
図6は、中性子照射低減量と炉心内外領域出力差とに関するグラフである。ここで、炉心内外領域出力差は、原子炉2内の中心部(内部)の領域における出力と、原子炉2内の周囲部(外部)の領域における出力との差分であり、原子炉2内の内外領域における温度勾配と比例関係となっている。そして、この炉心内外領域出力差が大きければ大きいほど、原子炉2内の中心部に装荷される燃料を、より燃焼度の低い新燃料等の燃料を配置することができ、原子炉2内の周囲部に装荷される燃料を、より燃焼度の高い燃焼済の燃料を配置することができる。
【0071】
ここで、
図6における点P1は、従来の原子力施設1において原子炉2に装荷される燃料の装荷パターンのときの炉心内外領域出力差と中性子照射低減量とを示す点である。また、
図6における点P2は、実施形態1及び実施形態2の原子力施設1において原子炉2に装荷される燃料の装荷パターンのときの炉心内外領域出力差と中性子照射低減量とを示す点である。
【0072】
図6に示すように、従来では、温度ゆらぎにより制御系300の動作が実行されることから、この温度ゆらぎの影響を抑制するために、燃料の装荷パターンを炉心内外領域出力差が小さいL3Pとしていた。実施形態1及び実施形態2では、温度ゆらぎにより制御系300の動作の実行が抑制されることから、この温度ゆらぎの影響を考慮する必要がないために、燃料の装荷パターンを炉心内外領域出力差が大きいL3Pとすることが可能となった。このため、実施形態1及び実施形態2では、従来に比して、中性子照射低減量を増大させることが可能となった。
の温度ゆらぎが発生しているか否かを判定する判定処理を実行し、温度ゆらぎが発生しているとの判定がなされた場合、制御系300の動作の実行をブロックする一方で、温度ゆらぎが発生していないとの判定がなされた場合、制御系300の動作の実行を許容する。