特許第6362823号(P6362823)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6362823石目調模様塗膜形成方法及び石目調に塗装された塗装物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362823
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】石目調模様塗膜形成方法及び石目調に塗装された塗装物品
(51)【国際特許分類】
   B05D 5/06 20060101AFI20180712BHJP
   E04F 13/02 20060101ALI20180712BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   B05D5/06 101Z
   E04F13/02 F
   E04F13/08 A
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-219468(P2012-219468)
(22)【出願日】2012年10月1日
(65)【公開番号】特開2014-69169(P2014-69169A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年7月2日
【審判番号】不服2017-6173(P2017-6173/J1)
【審判請求日】2017年4月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(72)【発明者】
【氏名】井上 剛
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 透
(72)【発明者】
【氏名】安達 順之
(72)【発明者】
【氏名】津村 昌伸
(72)【発明者】
【氏名】繁谷 純
【合議体】
【審判長】 須藤 康洋
【審判官】 渕野 留香
【審判官】 大島 祥吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−025703(JP,A)
【文献】 特開2011−025173(JP,A)
【文献】 特開平9−290205(JP,A)
【文献】 特開2007−231151(JP,A)
【文献】 特開2000−52527(JP,A)
【文献】 特開平11−128785(JP,A)
【文献】 特開平8−173899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B-B05D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗面に、(1)着色塗料粒子成分(IA)を含む塗料組成物(I)を塗装して着色塗料粒子成分(IA)に含まれる相異なる複数色の平均粒子径が0.15〜10mmの多糖類金属塩ゲルで安定化された着色塗料粒子群による複数色の点状模様が散りばめられた第1の斑点状模様塗膜を形成する工程、
(2)工程(1)で得られた第1の斑点状模様塗膜上に、着色塗料粒子成分(IIA)を含む塗料組成物(II)を塗り重ねて、着色塗料粒子成分(IIA)に含まれる相異なる複数色の平均粒子径が0.15〜10mmの多糖類金属塩ゲルで安定化された着色塗料粒子群による複数色の点状模様が散りばめられた第2の斑点状模様塗膜を形成する工程を含む方法であって、
着色塗料粒子成分(IA)と、着色塗料粒子成分(IIA)とは組成が相異なるものであり、
上記工程(1)で得られた第1の斑点状模様塗膜に含まれる少なくとも1種の点状模様と、工程(2)で得られた第2の斑点状模様塗膜に含まれる少なくとも1種の点状模様の色差ΔEが少なくとも15であり、
第1の斑点状模様塗膜と第2の斑点状模様塗膜とで、各点状模様の明度の平均値の差が1.0以上である、ことを特徴とする石目調模様塗膜形成方法。
【請求項2】
着色塗料粒子成分(IA)及び着色塗料粒子成分(IIA)が、マンセル表示系による彩度が10以下の点状模様を形成する着色塗料粒子群を含む請求項1に記載の石目調模様塗膜形成方法。
【請求項3】
着色塗料粒子成分(IA)及び着色塗料粒子成分(IIA)が複数色の着色塗料粒子群を含むものであり、第1の斑点状模様塗膜に含まれる点状模様と、第2の斑点状模様塗膜に含まれる点状模様の色差ΔEが少なくとも15の関係に関与する着色塗料粒子群の割合が20%以上にある請求項1または2に記載の石目調模様塗膜形成方法。
【請求項4】
塗料組成物(I)が、塗膜形成成分(IB)をさらに含み、塗料組成物(II)が、塗膜形成成分(IIB)をさらに含むものである請求項1ないし3のいずれか1項に記載の石目調模様塗膜形成方法。
【請求項5】
被塗面に、下塗り着色塗料を塗装し、乾燥させて下塗り着色塗膜を形成する工程をさらに含む塗膜形成方法であって、該下塗り着色塗膜と、第1及び第2の斑点状模様塗膜に含まれる少なくとも1種の点状模様との色差が30以下であることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の石目調模様塗膜形成方法。
【請求項6】
工程(2)で得られた塗膜上に、トップコートとしてクリヤー塗料をさらに塗装する請求項1ないしのいずれか1項に記載の石目調模様塗膜形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石目調模様塗膜形成方法及び石目調に塗装された塗装物品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築物の内外装材として花崗岩(御影石とも呼ばれる)などの天然石の外観を呈する石目調の模様が広く好まれている。花崗岩は一般には比較的粒の粗い岩石であり、その色としては例えば黒色、茶色、白色、あずき色、あるいは緑色など多岐に渡っている。
【0003】
これまで石目調の模様を塗装で行うべく、石目調外観の塗膜を形成できる塗料組成物や塗装方法が数多く提案されてきた。
【0004】
例えば、特許文献1には、合成樹脂エマルション塗料中に特定の平均粒子径の骨材を含有する下塗り材を塗付し、その上に合成樹脂エマルション、着色骨材、自然石を含む自然石調塗材を塗付する自然石調塗材の施工方法が記載されている。
【0005】
かかる発明によればローラーブラシでも自然石の持つ質感を再現できるものであるが、該文献記載の骨材や自然石を多量に含む塗料では、塗装作業性がよいものとは言えず、塗装に熟練を要するものであり、また、花崗岩のような斑点状模様を有する石目模様を再現するには不向きである。
【0006】
こうした問題を解決する手法として例えば多彩模様塗料を用いて石目調模様を形成する方法が提案されている。多彩模様塗料は液状又はゲル状の色の粒が懸濁したもので、一回の塗装で散らし模様が形成できる塗料であり、JIS K 5667(2003)に規定されている。
【0007】
多彩模様塗料を用いた石目調の模様を形成する手法として例えば特許文献2には、水溶性樹脂及び/又は水分散樹脂、着色粒子、着色フレークを主成分とする水性石材調多彩模様塗料組成物が開示されている。
【0008】
また、特許文献3には、模様色分散相粒子と透明な分散媒を主要構成成分とする自然石調塗料組成物及びこの塗料組成物を種々の下塗り層上に塗装することを特徴とする自然石調塗装方法が開示されている。
【0009】
これらの文献によれば多彩模様塗料を用いて石目調の塗膜を形成できるものであるが、色の粒の散らばりが均一的であるため、単調で人工的である点は否めず、花崗岩に近い自然な外観の意匠を再現するには未だ不十分である。
【0010】
また、本出願人は特許文献4〜5などで水性多彩模様塗料を用いた塗膜形成方法を提案してきた。
【0011】
特許文献4には、被塗面に、形成塗膜の吸水率が20%以下である着色塗料(I)を塗装することにより着色塗膜を形成した後、該塗面上に多彩模様塗料(II)を塗装して多彩模様塗膜を形成する多彩模様塗膜形成方法が記載されている。
【0012】
特許文献5には、光輝性顔料を含む塗料(I)を塗装して形成される光輝性塗膜上に多彩模様塗料(II)を塗装して多彩模様塗膜を設けてなる意匠性塗膜形成方法が記載されている。
【0013】
上記特許文献4及び5には、ユーザーに強い印象を与えられるようなユニークな意匠性の塗膜を形成できることが記載されているが、花崗岩のような石目調模様を再現するような塗膜形成方法については何ら記載されてはいない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開10−238062号公報
【特許文献2】特開2000−86942号公報
【特許文献3】特開2003−154308号公報
【特許文献4】特開2008−155119号公報
【特許文献5】特開2008−114112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、花崗岩に見られるような斑点を有する石目調模様を、塗料組成物を用いて再現する塗膜形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは上記した課題に対して鋭意検討した結果、上層と下層の点状模様の色差が特定範囲となる相異なる2種の斑点状模様塗膜を重ねることで、花崗岩に近い石目調の模様の塗膜が容易に形成できることを見出し、本発明に到達した。
【0017】
即ち本発明は、
被塗面に、(1)着色塗料粒子成分(IA)を含む塗料組成物(I)を塗装して着色塗料粒子成分(IA)に含まれる相異なる複数色の平均粒子径が0.15〜10mmの多糖類金属塩ゲルで安定化された着色塗料粒子群による複数色の点状模様が散りばめられた第1の斑点状模様塗膜を形成する工程、
(2)工程(1)で得られた第1の斑点状模様塗膜上に、着色塗料粒子成分(IIA)を含む塗料組成物(II)を塗り重ねて、着色塗料粒子成分(IIA)に含まれる相異なる複数色の平均粒子径が0.15〜10mmの多糖類金属塩ゲルで安定化された着色塗料粒子群による複数色の点状模様が散りばめられた第2の斑点状模様塗膜を形成する工程を含む方法であって、
着色塗料粒子成分(IA)と、着色塗料粒子成分(IIA)とは組成が相異なるものであり、
上記工程(1)で得られた第1の斑点状模様塗膜に含まれる少なくとも1種の点状模様と、工程(2)で得られた第2の斑点状模様塗膜に含まれる少なくとも1種の点状模様の色差ΔEが少なくとも15であり、
第1の斑点状模様塗膜と第2の斑点状模様塗膜とで、各点状模様の明度の平均値の差が1.0以上である、ことを特徴とする石目調模様塗膜形成方法、
に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明方法によれば、単色又は複数色の着色塗料粒子群を含む着色塗料粒子成分を含む塗料組成物を塗装して斑点状模様塗膜を形成した後に、該着色塗料粒子群による点状模様と色差が15以上異なる点状模様を有する斑点状模様塗膜を設けることで、下層の斑点状模様塗膜と上層の斑点状模様塗膜が相互に作用して最終的に得られる石目調模様塗膜の中で着色塗料粒子による各点状模様の存在感がより際立つと共に、花崗岩の如き質感と深み感をかもし出すことができるものである。
【0019】
また、上層及び下層の着色塗料粒子成分の組成と配合量を選択することで、形成される石目調模様塗膜の多様性を幅広くすることができ、バリエーションに富んだ種々の石目調模様を容易に形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<被塗面>
本発明方法が適用される被塗面としては、例えば、鉄、ステンレス、アルミニウム等およびその表面処理物の金属基材、セメント類、石灰類、石膏、磁器タイル類等のセメント系基材、ポリ塩化ビニル類、ポリエステル類、ポリカーボネート類、アクリル類等のプラスチック系基材等の基材面、合板等の木材面、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、紙、布等の壁紙面、およびこれらからなる建築物や構造物等を挙げることができる。
【0021】
本発明の石目調模様塗膜形成方法を塗り替え等の改修方法として用いる場合においては、既に形成されている単層または複層の旧塗膜をそのまま被塗面とすることも可能である。
【0022】
上記被塗面は塗膜と被塗面との付着性を向上させるべく、シーラーやプライマーなどであらかじめ被塗面を処理したものであってもよい。
【0023】
<工程(1)>
本発明において工程(1)は、(1)着色塗料粒子成分(IA)を含む塗料組成物(I)を塗装して着色塗料粒子成分(IA)に含まれる単色又は複数色の着色塗料粒子群による点状模様が散りばめられた第1の斑点状模様塗膜を形成する工程である。
【0024】
本発明では第1の斑点状模様塗膜を形成するのに用いられる着色塗料粒子成分(IA)は、単色の着色塗料粒子群を含む成分であってもよいし、相異なる複数色の着色塗料粒子群を含む成分であってもよい。
【0025】
上記着色塗料粒子成分(IA)に含まれる着色塗料粒子群の色の種類と色の数はその目的とする石目調の外観に応じて適宜選択することができる。
【0026】
上記着色塗料粒子群としては、材料、製造方法など特に制限されるものではなく従来多彩模様塗料組成物に含まれる着色塗料粒子群として知られた公知のものを使用できる。
【0027】
多彩模様塗料組成物はJIS K5667(2003)「多彩模様塗料」に規定されており、塗料を構成する分散媒と着色塗料粒子群の組み合わせによって、水中油型(O/W型)、油中水型(W/O型)、油中油型(O/O型)及び水中水型(W/W型)の4種類に分類されている。
【0028】
本発明では着色塗料粒子成分(IA)に含まれる着色塗料粒子群として、例えば、水性樹脂並びに着色剤を含んでなる着色塗料を多糖類金属塩ゲル中に含有してなる粒子群を挙げることができる。
【0029】
上記着色塗料に含まれる水性樹脂としては、水に溶解又は分散可能な樹脂が使用される。その樹脂種には特に限定はなく、具体的には、例えば、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキッド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができ、また、これら樹脂の2種以上が変性あるいはグラフト重合されたものであってもよい。
【0030】
また、上記水性樹脂が分散粒子の形態である場合には、単層状又はコア・シェル型等の多層状であることができる。
【0031】
上記着色塗料に含まれ得る着色剤としては、着色顔料、光輝性顔料及び染料等を例示することができる。これらのうち着色顔料としては、例えば、二酸化チタン等の白色顔料;カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、鉄黒、アニリンブラックなどの黒色顔料;黄色酸化鉄、チタンイエロー、モノアゾイエロー、縮合アゾイエロー、アゾメチンイエロー、ビスマスバナデート、ベンズイミダゾロン、イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ベンジジンイエロー、パーマネントイエロー等の黄色顔料;パーマネントオレンジ等の橙色顔料;赤色酸化鉄、ナフトールAS系アゾレッド、アンサンスロン、アンスラキノニルレッド、ペリレンマルーン、キナクリドン系赤顔料、ジケトピロロピロール、ウォッチングレッド、パーマネントレッド等の赤色顔料;コバルト紫、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット等の紫色顔料;コバルトブルー、フタロシアニンブルー、スレンブルーなどの青色顔料;フタロシアニングリーンなどの緑色顔料などを挙げることができ、光輝性顔料としては、アルミニウム粉、ブロンズ粉、銅粉、錫粉、リン化鉄、亜鉛粉等のメタリック顔料;雲母、金属酸化物コーティング雲母粉、マイカ状酸化鉄等の真珠光沢調顔料などを挙げることができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができ、これら着色剤は、目的とする着色塗料粒子群の色彩に応じて単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0032】
上記着色剤の種類と使用量としては、目的とする着色塗料粒子群の透明度に応じて適宜調整され、一般には水性樹脂の質量を基準にして0.01〜500質量%の範囲内、好ましくは0.05〜400質量%の範囲内にあることができる。
【0033】
また、上記着色塗料においては、着色剤と共に体質顔料を使用することもできる。その具体例としては、バリタ粉、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、クレー、ホワイトカーボン、珪藻土、タルク、炭酸マグネシウム、アルミナホワイト、グロスホワイト、珪砂、石英粉等が挙げられ、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0034】
上記着色塗料は、さらに、必要に応じて、バルーン粒子等の比重調整材、消泡剤、硬化触媒、顔料分散剤、芳香剤、脱臭剤、抗菌剤、中和剤、界面活性剤、水性撥水剤、分散剤、防腐剤、防カビ剤、凍結防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、造膜助剤、亜鉛ウィスカ、ホルムアルデヒド吸着剤、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、水酸化アルミニウム等の難燃化剤などを含有することができる。
【0035】
本発明方法に用いられる着色塗料粒子群は、例えば、上記着色塗料及び水溶性多糖類を含む組成物と金属化合物を含む水性媒体と接触させ、必要に応じて攪拌することにより製造することができ、それによって、該着色塗料を多糖類金属塩ゲル中に含有してなる着色塗料粒子群を形成せしめることができる。
【0036】
上記水溶性多糖類は、水性媒体中で、一価又は多価の金属イオンと接触したときに水不溶性もしくは難溶性のゲルに変化する能力のある多糖類であり、具体的には、例えば、アルギン酸またはそのアルカリ金属塩、ジェランガム、カラギーナン等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独で又は2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0037】
上記金属化合物は、水性媒体中で、水溶性多糖類と水不溶性もしくは難溶性の塩を形成し得る一価又は多価の金属イオンを生成し得る化合物であり、金属化合物における金属種としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の周期表2族元素;クロム、モリブデン等の周期表6族元素;マンガン等の周期表7族元素;鉄、ルテニウム等の周期表8族元素;コバルト、ロジウム等の周期表9族元素;ニッケル、パラジウム等の周期表10族元素;銅、銀等の周期表11族元素;亜鉛、カドミウム等の周期表12族元素、アルミニウム等の周期表13族元素;セリウム等の周期表16族元素などを挙げることができ、中でも、周期表2族元素、特にカルシウムが好適である。
【0038】
上記金属化合物としては、上記金属種を有する化合物である限り特に制限はなく、例えば蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、シュウ酸、フマル酸、コハク酸、リン酸、クエン酸、グルコン酸等の有機酸の金属塩;水酸化物、金属酸化物;金属炭酸塩等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0039】
上記金属化合物は、水などの水性媒体中にその少なくとも一部を溶解させることにより金属イオンを含有する水性媒体を調製することができる。その際、金属化合物は水性媒体中に全部溶解している必要はなく、一部溶解した状態であってもよい。
【0040】
着色塗料粒子成分(IA)は、例えば、着色塗料及び水溶性多糖類を含む組成物と金属化合物を含む水性媒体とを接触させ、攪拌することによって得ることができる。その攪拌速度は例えば500〜4000rpm、好ましくは700〜3000rpmの範囲内にすることができる。
【0041】
このようにして得られた単色の着色塗料粒子群又は複数色の着色塗料粒子群を含む着色塗料粒子成分(IA)の平均粒子径は、着色塗料粒子群の製造条件や使用する材料によって調整されるものであるが、一般には0.15〜10mm、好ましくは0.2〜5mmの範囲内にあることが好ましい。
【0042】
着色塗料粒子成分(IA)の粒子径分布が上述であることによって、自然な石目調模様でありつつも各点状模様の存在感がより際立つ効果がある。
【0043】
本明細書において着色塗料粒子成分(IA)の平均粒子径は、着色塗料粒子を無作為に30個選び光学顕微鏡で観察し、その平均値を算出するものとする。
【0044】
また、本発明においては、上記着色塗料粒子成分(IA)が、マンセル表示系による彩度が10以下、好ましくは6以下の点状模様を形成する着色塗料粒子群を含むことが適している。
【0045】
本発明において、マンセル表示系による彩度は、第1の斑点状模様を形成するための塗料組成物(I)によって形成された斑点状模様塗膜において測色目的とする1つの点状模様を三刺激値直読式色差計「CR400」(商品名、コニカミノルタ社製)を用いて、光源としてD65を用い、視野角2°、拡散照明受光方式(d/0)で測色したものである。
【0046】
また、点状模様の測色が困難である場合は、着色塗料粒子群の粒状化前の組成物を、隠蔽膜厚まで塗装して得られる塗膜の彩度を上述の通り測定した値を以って目的とする点状模様の彩度とすることができる。
【0047】
本発明方法に使用される塗料組成物(I)は、形成される斑点状模様塗膜の造膜性及び点状模様の散らばり方が適度である観点から着色塗料粒子成分(IA)に加えて塗膜形成成分(IB)を含有することができる。塗膜形成成分(IB)は、それ自体成膜性を有するものであり、着色塗料粒子成分(IA)との親和性や塗料組成物(I)としての貯蔵安定性などの観点から、水性樹脂を含んでなる水性組成物であることが望ましい。
【0048】
上記塗膜形成成分(IB)に含まれる水性樹脂としては、水性塗料分野において樹脂バインダーとして一般に使用されるものを使用することができ、例えば、着色塗料粒子成分(IA)における水性樹脂として前述したものの中から適宜選んで使用することができる。また水性樹脂の形態は特に限定されず、1液型、2液型のいずれであってもよい。
【0049】
上記着色塗料粒子成分(IA)と塗膜形成成分(IB)の配合割合は、着色塗料粒子成分(IA)/塗膜形成成分(IB)の固形分質量比で、1/99〜60/40、10/90〜50/50、特に20/80〜45/55の範囲内が好適である。
【0050】
また、第1の斑点状模様塗膜の耐久性などの膜物性などの観点から、着色塗料粒子成分(IA)と塗膜形成成分(IB)は、それぞれ、互いに反応し得る官能基を含有することが望ましい。
【0051】
上記着色塗料粒子成分(IA)及び塗膜形成成分(IB)に含まれる反応性官能基の組み合わせとしては、塗膜の乾燥条件下に相互に反応し得る組み合わせであれば特に制限されるものではなく、具体的には、例えば、水酸基とイソシアネート基、水酸基とアルキルエーテル基、水酸基とイミノ基、カルボキシル基とエポキシ基、アミノ基とエポキシ基、アミド基とエポキシ基、カルボニル基とヒドラジン基、カルボニル基とヒドラジド基、カルボニル基とセミカルバジド基、及びカルボニル基とビスアセチルジヒドラゾン基等の組み合わせ、加水分解性シリル基同士の自己縮合、不飽和脂肪酸基による酸化硬化などが挙げられる。
【0052】
また、上記塗料組成物(I)には着色塗料粒子成分(IA)及び塗膜形成成分(IB)が共に反応性官能基を有する樹脂を含有し、さらに着色塗料粒子成分(A)及び/又は塗膜形成成分(IB)が該反応性官能基と反応し得る反応性官能基を有する架橋剤を含有する形態であることもできる。
【0053】
上記塗料組成物(I)は必要に応じて体質顔料、光輝性顔料、透明塗料粒子群や塗料用添加剤を含ませることができる。
【0054】
これらのうち透明塗料粒子群としては、例えば上記着色塗料粒子群として着色剤を実質的に含まない透明な塗料を粒状化してなる粒子群を挙げることができる。
【0055】
該塗料用添加剤としては、中和剤、粘性調整剤、沈降防止剤、帯電防止剤、軟化剤、抗菌剤、香料、硬化触媒、pH調整剤、調湿剤、分散剤、消泡剤、防腐剤、防カビ剤、凍結防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、造膜助剤、アルデヒド吸着剤、ワックス、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、水酸化アルミニウム等の難燃化剤などが挙げられる。
【0056】
上記塗料組成物(I)の塗布量は、使用する塗料組成物の組成や塗布すべき基材の種類などに応じて変えることができるが、乾燥質量で、10〜500g/m、好ましくは20〜300g/mの範囲内が好適である。塗布量が上記範囲内となるように塗料組成物(I)を複数回塗装してもよい。また、塗装手段としてはそれ自体既知の塗装手段を用いて行うことができ、例えば、ローラー、エアスプレー、エアレススプレー、リシンガン、万能ガン、ハケ、ロールコーターなど基材の用途等に応じて適宜選択することができる。
【0057】
形成塗膜の乾燥は、使用した塗料組成物の組成などに応じて、加熱乾燥、強制乾燥又は常温乾燥のいずれかの方法で行うことができる。
【0058】
<工程(2)>
本発明において、工程(2)は工程(1)で得られた第1の斑点状模様塗膜上に、着色塗料粒子成分(IIA)を含む塗料組成物(II)を塗り重ねて、着色塗料粒子成分(IIA)に含まれる単色又は複数色の着色塗料粒子群による点状模様が散りばめられた第2の斑点状模様塗膜を形成する工程である。
【0059】
工程(2)に使用される着色塗料粒子成分(IIA)は、単色の又は複数色の着色塗料粒子群を含む成分である。
【0060】
本発明では、着色塗料粒子成分(IIA)は着色塗料粒子成分(IA)とは着色塗料粒子群の組成が相異なることを特徴とする。
【0061】
本明細書において「組成が相異なる」ケースとは、着色塗料粒子成分(IA)と着色塗料粒子成分(IIA)に含まれる着色塗料粒子群の色が互いに全て異なるケースは勿論、着色塗料粒子成分(IA)又は着色塗料粒子成分(IIA)が複数色であるときに、着色塗料粒子成分(IA)及び着色塗料粒子成分(IIA)が同一色の着色塗料粒子群を共に含む場合であってもその同一色の着色塗料粒子群の質量割合が着色塗料粒子成分(IA)と着色塗料粒子成分(IIA)とで異なるケースも組成が異なるケースとして包含される。
【0062】
上記着色塗料粒子成分(IIA)の平均粒子径としては、例えば、0.15〜10mm、好ましくは0.2〜5mmの範囲内にあることが着色塗料粒子成分(IIA)を介して視認される着色塗料粒子成分(IA)による斑点状模様の存在感が良好であり、好ましい。
【0063】
本発明において着色塗料粒子成分(IIA)は、彩度が10以下、好ましくは6以下の点状模様を形成する着色塗料粒子群を含むことが花崗岩の如き素材感の石目調模様とすることができ、好ましい。
【0064】
着色塗料粒子成分(IIA)の平均粒子径及び彩度は着色塗料粒子成分(IA)と同様の方法で測定することができる。
【0065】
本発明では、上記工程(1)で得られた第1の斑点状模様塗膜に含まれる少なくとも1種の点状模様と、工程(2)で得られた第2の斑点状模様塗膜に含まれる少なくとも1種の点状模様の色差ΔEが少なくとも15であることを特徴とするものであり、この関係になるように着色塗料粒子成分(IA)及び着色塗料粒子成分(IIA)にそれぞれ含まれる着色塗料粒子群の色及び組み合わせを選択する。
【0066】
第1と第2の斑点状模様塗膜との間で点状模様の色差ΔEの最大値が15未満では、最終的に得られる石目調模様塗膜の素材感、質感が十分とは言えず人工的なものとなり好ましくない。
【0067】
また第1と第2の斑点状模様塗膜との間で点状模様の色差ΔEの最大値の好ましい範囲としては50〜80、好ましくは55〜75である。
【0068】
本明細書においてマンセル表示系による色差ΔEは三刺激値直読式色差計「CR400」(商品名、コニカミノルタ社製)を用いて、光源としてD65を用い、視野角2°、拡散照明受光方式(d/0)で測色したものである。
【0069】
また、本発明において測色目的とする1つの点状模様の測色が困難である場合は、着色塗料粒子成分(IA)及び着色塗料粒子成分(IIA)の粒状化前の組成物を、隠蔽膜厚まで塗装して得られる塗膜をそれぞれ測色して得られる色差を以って第1と第2の点状模様の色差ΔEとすることができる。
【0070】
本発明において、着色塗料粒子成分(IA)及び/又は着色塗料粒子成分(IIA)はそれぞれ、単色の着色塗料粒子群であっても複数色からなる着色塗料粒子群を含むものであってもよいが、いずれかが複数色の着色塗料粒子群を含む場合、第1の斑点状模様塗膜に含まれる点状模様と、第2の斑点状模様塗膜に含まれる点状模様の色差ΔEが少なくとも15の関係に関与する着色塗料粒子群の割合が20%以上、好ましくは30%以上、更に好ましくは60%以上の範囲内にあることが好ましい。
【0071】
第1の斑点状模様塗膜に含まれる点状模様と、第2の斑点状模様塗膜に含まれる点状模様の色差ΔEが少なくとも15の関係に関与する着色塗料粒子群の割合が上記範囲にあることによって、得られる石目調模様の素材感と深み感がより際立つ。
【0072】
本明細書において、着色塗料粒子成分(IA)及び着色塗料粒子成分(IIA)に含まれる色差が15以上に関与する着色塗料粒子群の割合N(%)は以下のように算出する。
【0073】
N(%)=〔(着色塗料粒子成分(IA)に含まれる着色塗料粒子群のうち、着色塗料粒子群(IIA1)と色差15以上にある着色塗料粒子群の固形分質量×着色塗料粒子成分(IIA)中の着色塗料粒子群(IIA1)の占める割合)+(着色塗料粒子成分(IA)に含まれる着色塗料粒子群のうち、着色塗料粒子群(IIA2)と色差15以上にある着色塗料粒子群の固形分質量×着色塗料粒子成分(IIA)中の着色塗料粒子群(IIA2)の占める割合)+(着色塗料粒子成分(IA)に含まれる着色塗料粒子群のうち、着色塗料粒子群(IIAn)と色差15以上にある着色塗料粒子群の固形分質量×着色塗料粒子群(IIA)中の着色塗料粒子群(IIAn)の占める割合)〕×100/着色塗料粒子成分(IA)の固形分質量。
【0074】
ここで着色塗料粒子成分(IA)が着色塗料粒子群(IA1)、着色塗料粒子群(IA2)、・・・着色塗料粒子群(IAn)を含み、着色塗料粒子群(IA1)、着色塗料粒子群(IA2)、・・・着色塗料粒子群(IAn)は色が互いに異なる着色塗料粒子群であり、着色塗料粒子成分(IIA)が着色塗料粒子群(IIA1)、着色塗料粒子群(IIA2)、・・・着色塗料粒子群(IIAn)を含み、着色塗料粒子群(IIA1)、着色塗料粒子群(IIA2)、・・・着色塗料粒子群(IIAn)は色が互いに異なる着色塗料粒子群である。
【0075】
また、本発明では、第1の斑点状模様塗膜と第2の斑点状模様塗膜が、明度が異なる斑点状模様の組み合わせであることが望ましい。より具体的には第1の斑点状模様塗膜と第2の斑点状模様塗膜とで、各点状模様の明度の平均値の差が1.0以上、好ましくは1.0〜9.5の範囲内にあることが適している。第1の斑点状模様塗膜と第2の斑点状模様塗膜との間で各点状模様の明度の平均値の差を上記の通り調整することによって、より花崗岩の如き風合い、深み感を有する石目調模様塗膜が得られる。
【0076】
本明細書において、各着色塗料粒子群により形成される各点状模様の明度の平均値は、各点状模様のマンセル表示系による明度と当該点状模様を形成する着色塗料粒子群の質量分率とを下記式にて算出することで得られる。
【0077】
第1の斑点状模様塗膜の各点状模様の明度の平均値=着色塗料粒子群(IA1)による点状模様の明度×着色塗料粒子群(IA1)の質量/着色塗料粒子群合計質量+着色塗料粒子群(IA2)による点状模様の明度×着色塗料粒子軍(IA2)質量/着色塗料粒子群合計質量+・・・着色塗料粒子群(IAn)による点模様の明度/着色塗料粒子群合計質量。
【0078】
第2の斑点状模様塗膜の各点状模様の明度の平均値=着色塗料粒子群(IIA1)による点状模様の明度×着色塗料粒子群(IIA1)の質量/着色塗料粒子群合計質量+着色塗料粒子群(IIA2)による点状模様の明度×着色塗料粒子軍(IIA2)質量/着色塗料粒子群合計質量+・・・着色塗料粒子群(IIAn)による点模様の明度/着色塗料粒子群合計質量。
【0079】
ここで着色塗料粒子成分(IA)が着色塗料粒子群(IA1)、着色塗料粒子群(IA2)、・・・着色塗料粒子群(IAn)を含み、着色塗料粒子群(IA1)、着色塗料粒子群(IA2)、・・・着色塗料粒子群(IAn)は色が互いに異なる着色塗料粒子群であり、着色塗料粒子成分(IIA)が着色塗料粒子群(IIA1)、着色塗料粒子群(IIA2)、・・・着色塗料粒子群(IIAn)を含み、着色塗料粒子群(IIA1)、着色塗料粒子群(IIA2)、・・・着色塗料粒子群(IIAn)は色が互いに異なる着色塗料粒子群である。
【0080】
そして各点状模様のマンセル表示系による明度は、測色目的とする点状模様を三刺激値直読式色差計「CR400」(商品名、コニカミノルタ社製)を用いて、光源としてD65を用い、視野角2°、拡散照明受光方式(d/0)で測色したものである。
【0081】
また、本発明において点状模様が小さすぎる場合など測色が困難である場合は、着色塗料粒子成分の粒状化前の組成物を、隠蔽膜厚まで塗装して得られる塗膜の明度を以って着色塗料粒子成分による点状模様の明度とすることができる。
【0082】
また、本発明において第2の斑点状模様塗膜を形成するための塗料組成物(II)は、着色塗料粒子成分(IIA)に加えて、塗膜形成成分(IIB)を含むことができる。
【0083】
塗料組成物(II)に含まれる塗膜形成成分(IIB)としては、上記塗料組成物(I)の説明した中から適宜選んで使用することができる。
【0084】
上記着色塗料粒子成分(IIA)と塗膜形成成分(IIB)の配合割合は、着色塗料粒子(IIA)/塗膜形成成分(IIB)の固形分質量比で、1/99〜60/40、10/90〜50/50、特に20/80〜45/55の範囲内が好適である。
【0085】
また、着色塗料粒子成分(IIA)と塗膜形成成分(IIB)は、それぞれ、互いに反応し得る官能基を含有することが望ましい。
【0086】
上記着色塗料粒子成分(IIA)及び塗膜形成成分(IIB)に含まれる反応性官能基の組み合わせとしては、着色塗料粒子成分(IA)及び塗膜形成成分(IB)に含まれる反応性官能基の組み合わせとして例示したものと同様の組み合わせを挙げることができる。
【0087】
また、上記塗料組成物(II)は着色塗料粒子成分(IIA)及び塗膜形成成分(IIB)が共に反応性官能基を有する樹脂を含有し、さらに着色塗料粒子成分(IIA)及び/又は塗膜形成成分(IIB)が該反応性官能基と反応し得る反応性官能基を有する架橋剤を含有する形態であることもできる。
【0088】
本発明では着色塗料粒子成分(IA)、着色塗料粒子成分(IIA)、塗膜形成成分(IB)及び塗膜形成成分(IIB)がそれぞれ、互いに反応する反応性官能基を有することで、第1の斑点状模様塗膜及び第2の斑点状模様塗膜の塗膜物性は勿論、両層の層間付着性を向上させることができる。
【0089】
上記塗料組成物(II)は必要に応じて体質顔料や塗料組成物(I)の説明で例示した如き公知の塗料用添加剤を含ませることができる。
【0090】
上記塗料組成物(II)の塗布量は、使用する塗料組成物の組成や塗布すべき基材の種類などに応じて変えることができるが、乾燥質量で、10〜500g/m、好ましくは20〜300g/mの範囲内が好適である。塗布量が上記範囲内となるように該塗料組成物(II)を複数回塗装してもよい。また、塗装手段としてはそれ自体既知の塗装手段を用いて行うことができ、例えば、ローラー、エアスプレー、エアレススプレー、リシンガン、万能ガン、ハケ、ロールコーターなど基材の用途等に応じて適宜選択することができる。
【0091】
形成塗膜の乾燥は、使用した塗料組成物の組成などに応じて、加熱乾燥、強制乾燥又は常温乾燥のいずれかの方法で行うことができる。
【0092】
<下塗り工程>
本発明方法では、工程(1)の前に被塗面を保護し、また、被塗面を適度な色相で隠蔽する目的で必要に応じて下塗り着色塗料を塗装し、乾燥させて下塗り着色塗膜を形成する工程を含んでいてもよい。
【0093】
かかる下塗り着色塗料としては特に限定されず、被塗面の種類や状態、あるいは目的とする石目調などに応じて適宜選択することができ、また、通常の上塗り着色塗料を下地形成用塗料として塗装することも可能である。
【0094】
上記下塗り着色塗料としては従来公知のものを制限なく使用できるが、被塗面の種類や状態などに応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル系樹脂、アクリルシリコン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキッド系樹脂、生分解性樹脂等の樹脂種よりなる水系又は溶剤系の樹脂を樹脂バインダーとし、顔料を含む塗料を挙げることができ、水系の樹脂を含む塗料を使用することが好ましい。
【0095】
また、上記下塗り着色塗料に含まれる顔料としては、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料、防錆顔料等の従来公知の顔料を挙げることができ、目的とする石目調に応じて適宜選択することができる。
【0096】
本発明方法では、工程(1)の前に下塗り工程を設ける場合、下塗り着色塗膜と、第1及び/又は第2の斑点状模様塗膜に含まれる少なくとも1種の点状模様とのマンセル表示系による色差が30以下にあることが好ましい。
【0097】
本発明方法では下塗り着色塗膜と斑点状模様とが上述の関係にあることによって、石目調の素材感や質感が向上する効果がある。
【0098】
上記下塗り着色塗料の塗装は、それ自体既知の塗装手段を用いて行うことができ、例えば、ローラー、エアスプレー、エアレススプレー、リシンガン、万能ガン、ハケ、ロールコーターなど基材の用途等に応じて適宜選択することができる。
【0099】
形成される下塗り塗膜の乾燥は、用いた下塗り着色塗料の種類などに応じて、加熱乾燥、強制乾燥又は常温乾燥のいずれかの方法で行うことができる。
【0100】
<クリヤー塗装工程>
本発明方法では工程(2)終了後、トップコートクリヤー塗料を塗装する工程を必要に応じて設けても良い。
【0101】
トップコートクリヤー塗布により石目調模様塗膜の質感、深み感を向上させることができる。
【0102】
このようなトップコートクリヤー塗料としては、例えば、アクリル系樹脂、アクリルシリコン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキッド系樹脂、生分解性樹脂等の樹脂種よりなる水系又は溶剤系の樹脂を樹脂バインダーとして含んでなる水系又は溶剤系の塗料を挙げることができ、水系の樹脂を含んでなる水系塗料を使用することが好ましい。かかるトップコートクリヤー塗料は着色塗料粒子成分(IA)について例示したごとき着色剤や体質顔料を塗膜の透明性を損なわない程度に含んでいてもよい。
【0103】
上記トップコートクリヤー塗料の塗装は、それ自体既知の塗装手段を用いて行うことができ、例えば、ローラー、エアスプレー、エアレススプレー、リシンガン、万能ガン、ハケ、ロールコーター等から基材の用途等に応じて適宜選択して使用することができる。形成されるクリヤー塗膜の乾燥は、用いるクリヤー塗料の種類等に応じて、加熱乾燥、強制乾燥又は常温乾燥のいずれかの方法で行うことができる。
【実施例】
【0104】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、下記例中の「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0105】
[被塗板]
スレート板(600×900×3mm)上に、「EPシーラー透明」(関西ペイント社製、水系アクリルエマルション系シーラー)を塗布量が100g/mになるようにローラー塗装し乾燥させたものを被塗板とした。
【0106】
[下塗り塗料]
下塗り塗料(X−1):「アレスアクアグロス白」(関西ペイント社製、アクリル樹脂系水性塗料)。
【0107】
[着色塗料粒子入り塗料]
<着色塗料粒子群用のエマルションの製造>
製造例1
容量2リットルの4つ口フラスコに、脱イオン水285部及び「ニューコール707SF」(注1)1部を加え、窒素置換後、85℃に保った。その中に下記組成の成分をエマルション化してなるプレエマルションの3%分と、過硫酸アンモニウム3部を脱イオン水120部に溶解させた開始剤水溶液123部のうちの41部をそれぞれ添加し、添加終了20分後から、残りのプレエマルションと過硫酸アンモニウム水溶液を4時間かけてフラスコに滴下した。
脱イオン水 368部
スチレン 150部
メチルメタクリレート 410部
n−ブチルアクリレート 240部
2−エチルヘキシルアクリレート 150部
ダイアセトンアクリルアミド 20部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 25部
アクリル酸 5部
「ニューコール707SF」(注1) 66部
滴下終了後、これをさらに2時間85℃に保持した後、降温し、40〜60℃になった時点でアンモニア水でpHを調整し、固形分が55%のエマルション(a1)を得た。エマルション(a1)の平均粒子径は175nm、pHは8.3であった。
(注1) 「ニューコール707SF」:商品名、日本乳化剤社製、ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤、不揮発分30%。
【0108】
<塗膜形成成分用エマルションの製造>
製造例2
容量2リットルの4つ口フラスコに、脱イオン水285部及び「ニューコール707SF」(注1)1部を加え、窒素置換後、85℃に保った。その中に下記組成の成分をエマルション化してなるプレエマルションの3%分と、過硫酸アンモニウム3部を脱イオン水120部に溶解させた開始剤水溶液123部のうちの41部をそれぞれ添加し、添加終了20分後から、残りのプレエマルションと過硫酸アンモニウム水溶液を4時間かけてフラスコに滴下した。
脱イオン水 368部
スチレン 150部
メチルメタクリレート 400部
n−ブチルアクリレート 360部
2−エチルヘキシルアクリレート 67部
ダイアセトンアクリルアミド 10部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 10部
アクリル酸 3部
「ニューコール707SF」(注1) 66部
滴下終了後、これをさらに2時間85℃に保持した後、40〜60℃に降温した。次いで、アンモニア水でpHを調整し、固形分が55%のエマルション(a2)を得た。エマルション(a2)の平均粒子径は180nm、pHは8.0であった。
【0109】
<トップコート用の水性クリヤー用エマルションの製造>
製造例3
容量2リットルの4つ口フラスコに、脱イオン水285部及び「ニューコール707SF」(注1)1部を加え、窒素置換後、85℃に保った。その中に下記組成の成分をエマルション化してなるプレエマルションの3%分と、過硫酸アンモニウム3部を脱イオン水120部に溶解させた開始剤水溶液123部のうちの41部をそれぞれ添加し、添加終了20分後から、残りのプレエマルションと過硫酸アンモニウム水溶液を4時間かけてフラスコに滴下した。
脱イオン水 368部
スチレン 100部
メチルメタクリレート 410部
n−ブチルアクリレート 350部
2−エチルヘキシルアクリレート 120部
ビニルトリエトキシシラン 5部
2−ヒドロキシエチルアクリレート 10部
アクリル酸 5部
「ニューコール707SF」(注1) 66部
滴下終了後、これをさらに2時間85℃に保持した後、40〜60℃に降温した。次いで、アンモニア水でpHを調整し、固形分が55%のエマルション(a3)を得た。エマルション(a3)の平均粒子径は185nm、pHは8.2であった。
【0110】
<着色塗料粒子群用のエナメルクリヤーの製造>
製造例4
1リットルのステンレス容器に下記の成分を仕込み、攪拌機にて30分間攪拌混合することにより、着色塗料粒子群用のエナメルクリヤー(b1)を得た。
製造例1で得た55%エマルション(a1) 450部
「TEXANOL」(注2) 30部
「DISPER BYK−190」(注3) 7部
「BYK−028」(注4) 3部
「アデカノールUH−420」(注5) 3部
(注2)「TEXANOL」:商品名、イーストマンケミカル社製、2,2,4−トリメチルペンタンジオールモノイソブチレート、造膜助剤、
(注3)「DISPER BYK−190」:商品名、BYKケミー社製、顔料分散剤、
(注4)「BYK−028」:商品名、BYKケミー社製、消泡剤、
(注5)「アデカノールUH−420」:商品名、アデカ社製、ウレタン変性型増粘剤。
【0111】
<着色塗料粒子群用の白塗料の製造>
製造例5
1リットルのステンレス容器に、上記製造例4で得られたエナメルクリヤー(b1)500部を仕込み後、二酸化チタン125部を配合した後、攪拌機にて30分間攪拌混合することにより白塗料(b2)を得た。
【0112】
<着色塗料粒子群用の水性塗料組成物の製造>
製造例6
1リットルのステンレス容器に上記製造例4で得られたエナメルクリヤー(b1)、上記製造例5で得られた白塗料(b2)及び横浜化成(株)製水性塗料用カラーペースト(商品名、ユニラント88)を用いて社団法人日本塗料工業会発行の2009年E版塗料用標準色EN−85に調色した水性塗料300部を加えた後、2%アルギン酸ナトリウム水溶液300部を加え、均一となるように10分間攪拌混合することにより着色塗料粒子群用の水性塗料組成物(A−1)を得た。
【0113】
製造例7〜9
上記製造例6において、標準色を下記表1に示す通りとする以外は製造例6と同様にして着色塗料粒子群用の水性塗料組成物(A−2)〜(A−4)を得た。
【0114】
【表1】
【0115】
製造例10
容器に下記の成分を順次配合し、均一となるように攪拌混合して、半透明状の着色塗料粒子群用水性塗料組成物(A−5)を得た。
エナメルクリヤー(b1) 300部
カーボンブラック 0.5部
2%アルギン酸ナトリウム水溶液 280部。
【0116】
<水性媒体の製造>
製造例11
4リットルステンレス容器に脱イオン水を2000部配合した後、プロピオン酸カルシウムを3部、水酸化カルシウムを3部仕込み、均一になるまで攪拌することで水性媒体(B−1)を得た。
【0117】
<着色塗料粒子群の製造>
製造例12
4リットルステンレス容器に、上記製造例11で得られた着色塗料粒子群製造用の水性媒体(B−1)を1,300部仕込み、75mmの径を有する攪拌羽根を用いて回転数2,000rpmで攪拌しながら、製造例6で得られた水性塗料組成物(A−1)650部を徐々に容器内に滴下し、淡灰色の着色塗料粒子群を生成させた。次いで容器内液を同回転速度でさらに15分攪拌した後、200メッシュの金網を用いて濾別し、着色塗料粒子液(C−1)を得た。得られた着色塗料粒子液(C−1)は、固形分が20%であった。
【0118】
製造例13〜16
上記製造例12において、水性媒体と滴下する水性塗料組成物の配合を表2の通りとする以外は上記製造例12と同様にして着色塗料粒子液(C−2)〜(C−4)及び半透明状の着色塗料粒子液(C−5)を製造した。
【0119】
<着色塗料粒子液(C−6)の製造>
製造例17
4リットルステンレス容器に、上記製造例11で得られた着色塗料粒子群製造用の水性媒体(B−1)を1,300部仕込み、75mmの径を有する攪拌羽根を用いて回転数1,000rpmで攪拌しながら、製造例6で得られた水性塗料組成物(A−1)650部を徐々に容器内に滴下し、淡灰色の着色塗料粒子群を生成させた。次いで容器内液を同回転速度でさらに10分攪拌した後、200メッシュの金網を用いて濾別し、平均粒子径がやや大きめの着色塗料粒子液(C−6)を得た。得られた着色塗料粒子液(C−6)は、固形分が20%であった。
【0120】
【表2】
【0121】
表2中、マンセル色相、マンセル明度、マンセル彩度は粒状化前の組成物について隠蔽膜厚まで塗装して得られる値であり、平均粒子径は明細書の記載に従って測定した値である。
【0122】
<塗膜形成成分用の水性クリヤー塗料の製造>
製造例18
2リットルのステレンス容器に下記の成分を順次仕込み、攪拌機にて30分間均一になるまで攪拌混合することにより、水性クリヤー塗料(D−1)を得た。
製造例2で得た55%エマルション(a2) 825部
「TEXANOL」(注6) 50部
「BYK−028」(注8) 10部
「プライマルASE60」(注9) 3部
プロピオン酸カルシウム 0.7部
(注9)「プライマルASE60」:商品名、ロームアンドハース社製、ポリアクリル酸系粘性調整剤。
【0123】
<着色塗料粒子入り塗料の製造>
製造例19〜25
500ミリリットルのステンレス容器に、下記表3に示す成分を順次攪拌しながら仕込み、その後、均一になるまで攪拌することにより、着色塗料粒子入り塗料(E−1)〜(E−7)を製造した。
【0124】
【表3】
【0125】
製造例26
<トップコート用の水性クリヤー塗料の製造>
2リットルのステレンス容器に下記の成分を順次仕込み、攪拌機にて30分間均一になるまで攪拌混合することにより、トップコート用の水性クリヤー塗料(D−2)を得た。
製造例3で得た55%エマルション(a3) 825部
「TEXANOL」(注6) 50部
「BYK−028」(注8) 10部
「アデカノールUH−420」(注5) 3部。
【0126】
<石目調模様塗板の製造>
実施例1
前記被塗板に、下塗り塗料(X−1)として「アレスアクアグロス白」(関西ペイント社製、アクリル樹脂系水性塗料)を塗布量が100g/mになるようにローラー塗装し、気温20℃、相対湿度60%の条件下で1日間乾燥させた。次いでこの下塗り塗膜上に、着色塗料粒子液入り塗料(E−1)を塗布量が250g/mになるように万能ガンで塗装し、気温20℃、相対湿度60%の条件下で1日間乾燥させた後、着色塗料粒子入り塗料(E−2)を塗布量が250g/mになるように万能ガンで塗装し、気温20℃、相対湿度60%の条件下で1日間乾燥させて石目調模様塗板を得た。
【0127】
実施例2〜3及び比較例1〜2
上記実施例1において、下塗り塗料、1回目の着色塗料粒子入り塗料、2回目の着色塗料粒子入り塗料の種類又は有り無しを下記表4に示す通りとする以外は上記実施例1と同様にして石目調模様塗板を得た。
【0128】
実施例4
上記実施例1で得た石目調模様塗板に、さらに製造例26で得られたクリヤー塗料(D−2)をローラー塗装し、気温20℃、相対湿度60%の条件下で7日間乾燥させて石目調模様塗板を得た。実施例1〜4及び比較例1〜2で得られた各塗板を下記基準で目視評価した。結果を表4に合わせて示す。
【0129】
【表4】
【0130】
(*1)着色塗料粒子の目視粒子感
◎:石目調塗板上で着色塗料粒子による模様の粒子感が非常に良好、
○:石目調塗板上で着色塗料粒子による模様の粒子感が良好、
△:石目調塗板上で着色塗料粒子による模様の粒子感がやや不良、
×:石目調塗板上で着色塗料粒子による模様の粒子感が不良。
(*2)深み感
◎:花崗岩のような深み感が顕著に認められる、
○:花崗岩のような深み感が認められる、
△:花崗岩のような深み感がやや認められる、
×:花崗岩のような深み感が認められない。
(*3)質感
◎:花崗岩のような質感に非常に優れている、
○:花崗岩のような質感に優れている、
△:花崗岩のような質感がやや不足しており、模様ムラがある、
×:花崗岩のような質感が不足しており、模様ムラが大きい。