特許第6362829号(P6362829)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362829
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】傾倒式キャリアローラスタンド
(51)【国際特許分類】
   B65G 15/08 20060101AFI20180712BHJP
   B65G 15/60 20060101ALI20180712BHJP
   B65G 21/06 20060101ALI20180712BHJP
   B65G 39/02 20060101ALI20180712BHJP
   B65G 39/16 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   B65G15/08 A
   B65G15/60
   B65G21/06
   B65G39/02 Z
   B65G39/16
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-61628(P2013-61628)
(22)【出願日】2013年3月25日
(65)【公開番号】特開2014-185011(P2014-185011A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2016年3月23日
【審判番号】不服2017-8984(P2017-8984/J1)
【審判請求日】2017年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】714003416
【氏名又は名称】日新製鋼株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591038428
【氏名又は名称】株式会社洋行
(74)【代理人】
【識別番号】100091465
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 久夫
(72)【発明者】
【氏名】塚本 正和
(72)【発明者】
【氏名】長濱 昭吾
(72)【発明者】
【氏名】長濱 朗
(72)【発明者】
【氏名】長濱 大治
(72)【発明者】
【氏名】香月 秀紀
【合議体】
【審判長】 金澤 俊郎
【審判官】 西山 智宏
【審判官】 佐々木 芳枝
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−15620(JP,U)
【文献】 特開平11−189319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G13/00-13/12
B65G15/00-15/28
B65G15/60-15/64
B65G21/06
B65G21/10
B65G39/00-39/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に傾斜したコンベアフレームに横架ベースを取付け、横架ベースにスタンドを固定し、スタンドにはコンベアベルトを受ける中央の水平ローラと左右の傾斜ローラを交換可能に取付けるようにしたキャリアローラスタンドにおいて、
上記横架ベース(16)は断面三角形状をなし、該三角形の底辺隅部の、上記スタンド(18、19)をコンベアフレーム長手方向の一方の側に傾動させたときに上記横架ベース(16)の上記コンベアフレーム側の部分と干渉する部位に切欠き(16A)が形成され、該切欠き(16A)内縁とコンベアフレーム(10)との間はヒンジで連結されており、該ヒンジの回転軸(17)は上記スタンド(18、19)の両側縁の間でかつ上記スタンド(18、19)の両側縁の中央よりも上記コンベアフレーム長手方向の一方の側に位置しており、上記横架ベース(16)が上記回転軸(17)を中心として上記コンベアフレーム長手方向の一方の側に回動可能となっていることを特徴とする傾倒式キャリアローラスタンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は傾倒式キャリアローラスタンドに関し、特にスタンドを円滑に傾動させて水平ローラや傾斜ローラを簡単に交換できるようにしたキャリアローラスタンドに関する。
【背景技術】
【0002】
ベルトコンベアは、駆動ローラと従動ローラとの間にコンベアベルトを無端状に掛け渡し、駆動ローラを回転させることによってコンベアベルトを周回させるような構造となっており、現在、輸送手段として最も低価格の輸送機であり、各種の工場や設備で多く採用されている。
【0003】
通常、輸送物をベルトコンベア間で乗り継ぎさせる場合、前段のベルトコンベアからシュートを介して次段のベルトコンベアの乗継部に落下させる構造が採用されているが、落下の衝撃を緩和するためにコンベアベルトのキャリア側部分の裏面をキャリアローラで受けて支持する一方、落下の衝撃で輸送物の粉塵が飛散すると、周囲の環境を悪化させることから、弾性スカート板によって乗継部とコンベアベルトとの間の隙間を覆うことが行われている。
【0004】
乗継部においてはコンベアベルトはスカート下端縁によって強く下方に押しつけられ、キャリアローラに強く摺接されているので、ローラの磨耗が発生し、キャリアローラを交換しなければならないことがある。キャリアローラは中央の水平ローラと左右の傾斜ローラとから構成されているのが一般的であるが、中央の水平ローラはコンベアベルト側方から手が届き難く、しかもコンベアベルトと強く圧接されているので、左右の傾斜ローラに比較して交換が難しい。
【0005】
これに対し、コンベアフレームに横架ベースを横幅方向に延びて中心軸線廻りに回転可能に取付け、中央の水平ローラ及び左右の傾斜ローラを回転可能にかつ着脱可能に受けるスタンドを横架ベースに固定し、横架ベースをスタンドの起立位置から傾動位置に向けて回動させて傾斜ローラや水平ローラを交換できるようにした傾倒式キャリアローラスタンドが提案されている(特許文献1)。
【0006】
しかし、特許文献1記載の傾倒式キャリアローラスタンドでは横幅方向に延びる横架ベースを取付け軸廻りに回転可能に取付ける必要があるので、構造が複雑で、コスト高を招来し、しかも乗継部に多数のキャリアローラを設ける必要がある関係上、低価格が要求されるベルトコンベアでは採用し難いのが実情であった。
【0007】
他方、横架ベースに対して移送方向の一側方にヒンジ軸を設け、ヒンジ軸の廻りに横架ベースをスタンドの起立位置から傾動位置に向けて回動させて傾斜ローラや水平ローラを交換できるようにした傾倒式キャリアローラスタンドも提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平06−80726号公報
【特許文献2】特開平11−189319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2記載の傾倒式キャリアローラスタンドではヒンジ軸を設けるだけであるので、構造の複雑化やコスト高を招来するおそれが少ないものの、実際に横架ベースを回動させようとすると、水平ローラや傾斜ローラがコンベアベルトと強く競ってしまい、スタンドを傾動させることが困難であった。特に、製鉄所や製鋼所で採用されるような、コンベアベルトの厚みがある大型のベルトコンベアではスタンドの傾動作業が非常に困難であった。
【0010】
本発明はかかる状況において、スタンドをスムーズに傾動させて水平ローラや傾斜ローラを簡単に交換できるようにした傾倒式キャリアローラスタンドを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明に係る傾倒式キャリアローラスタンドは、コンベアフレームに横架ベースを取付け、横架ベースにスタンドを固定し、スタンドにはコンベアベルトを受ける中央の水平ローラと左右の傾斜ローラを交換可能に取付けるようにしたキャリアローラスタンドにおいて、上記横架ベースには上記スタンドを側方に傾動させたときに上記横架ベースの上記コンベアフレーム側の部分と干渉する部位に切欠きが形成され、該切欠き内縁とコンベアフレームとの間にはヒンジが設けられ、該ヒンジの回転軸が上記スタンドの両側縁の間の位置に配置され、上記横架ベースが上記回転軸を中心として回動可能となっていることを特徴とする。
【0012】
特許文献2記載の傾倒式キャリアローラスタンドではヒンジの回転軸がスタンドの側縁よりも移送方向外側に位置して設けられていたので、この回転軸を中心に横架ベースを回動させると、スタンドが上方に移動しながら側方への傾動を開始することとなる。しかし、乗継部においては、コンベアベルトは弾性スカート板によって下方に強く押し付けられて水平ローラや傾斜ローラに強く圧接されているので、作業者が手作業でコンベアベルトを持ち上げながらスタンドを傾動させることは非常に困難であった。
【0013】
本発明の特徴の1つは横架ベースの隅部に切欠きを形成し、切欠き内縁とコンベアフレーム側の部分との間にヒンジを設け、ヒンジ軸をスタンドの両側縁の間に配置し、回転軸を中心として上記横架ベースを回動させるようにした点にある。
【0014】
これにより、ヒンジの回転軸がスタンドの横幅内に位置し、しかも横架ベースに切欠きを形成しているので、スタンドをそのまま側方に傾動させることができ、作業者が手作業によってコンベアベルトを持ち上げる必要がなく、スタンドを軽く傾動させて水平ローラや傾斜ローラの交換をスムーズに行うことができる。
【0015】
ここで、請求の範囲において、「スタンドを側方に傾動させた」とは、スタンドが全く持ち上げられることなく、側方に傾動される場合だけではなく、コンベアベルトの張力に打ち勝ってスタンドの傾動が行える程度にスタンドが上方に移動する場合も含まれることを意味する。
【0016】
上記では横架ベースに切欠きを形成するようにしたが、ヒンジの回転軸を横架ベースの軸線と同軸に位置させると、切欠きが不要となる。
【0017】
本発明に係る傾倒式キャリアローラスタンドは、コンベアフレームに横架ベースを取付け、横架ベースにスタンドを固定し、スタンドにはコンベアベルトを受ける中央の水平ローラと左右の傾斜ローラを交換可能に取付けるようにしたキャリアローラスタンドにおいて、上記横架ベースの両端部には第1の軸受が横架ベースの軸線と同軸に固定され、上記コンベアフレームには第2の軸受が固定され、第1の軸受と第2の軸受には回転軸が挿通され、第1、第2の軸受にはフランジが形成され、該両フランジが着脱可能に連結され、上記フランジの連結が外されることによって、上記横架ベースが上記回転軸を中心として回動可能となっていることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る傾倒式キャリアローラスタンドはベルトコンベアの乗継部に適用すればその効果が大きいが、他の箇所、駆動ローラや従動ローラの近くなど、コンベアベルトの張力の大きな箇所に適用しても同様の作用効果を奏する。
【0019】
横架ベースは下記の実施形態に示されるように閉断面三角形状でもよく、閉断面四角形状や閉断面円形状その他の閉断面形状であってもよい。切欠きは横架ベースをそのまま回動させたときにコンベアフレーム側の部分と干渉する部位に形成して横架ベースの回動が阻害されないようにするのが重要である。例えば、横架ベースが閉断面三角形状の場合には三角形の底辺隅部を切り欠くようにするとよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る傾倒式キャリアローラスタンドの好ましい実施形態を備えたベルトコンベアの1例を示す図である。
図2】上記実施形態を示す正面図である。
図3】上記実施形態におけるヒンジ取付け部分を示す拡大図である。
図4】上記実施形態におけるヒンジ取付け部分を示す分解図である。
図5】上記実施形態における動作を模式的に示す図である。
図6】第2の実施形態におけるヒンジ取付け部分を示す拡大図である。
図7】第3の実施形態を示す正面図である。
図8】上記実施形態におけるヒンジ取付け部分を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。図1ないし図5は本発明にかかる傾倒式キャリアローラスタンドの好ましい実施形態を示す。図において、コンベアフレーム10には一端側に従動ローラ11が、他端側に駆動ローラ12が設けられ、駆動ローラ12と従動ローラ11の間にはコンベアベルト14が無端状に掛け渡され、駆動ローラ12の回転によってコンベアベルト14が周回されて輸送物を輸送するようになっている。
【0022】
また、コンベアベルト14の他端側には乗継部14Aが設けられ、乗継部14Aには前段のベルトコンベアからの輸送物がシュート30を介して供給され、又シュート30の下端縁には弾性スカート板31が取付けられてシュート30と乗継部14Aの間の隙間を遮蔽し、粉塵の周囲への飛散を防止するようになっている。
【0023】
また、コンベアフレーム10には複数のキャリアローラが走行方向に間隔をあけて設けられている。このキャリアローラは図2に示されるように、横架ベース16を備え、横架ベース16は閉断面三角形状をなし、ベルトコンベアの横幅方向に延びて設けられ、横架ベース16の両端部にはく字状をなす第1のスタンド18が立設され、横架ベース16の中間には一対の第2のスタンド19が間隔をあけて立設されている。
【0024】
第1、第2のスタンド18、19はチャネル鋼を用いて製作され、第2のスタンド19の上端外側部は傾斜辺状に切断され、その間にはプレートが掛け渡して固定され、第1、第2のスタンド18、19の上端縁及び上記プレートには嵌込み凹部が形成されて中央の水平ローラ15A及び左右の傾斜ローラ15Bの回転軸が着脱可能に嵌め込まれるようになっている。
【0025】
また、横架ベース16の両端部には第1、第2のスタンド18、19をそのまま側方に傾動させたときに横架ベース16の隅部のコンベアフレーム10側の部分、本例ではヒンジ板20と干渉する部分に切欠き16Aが形成され、切欠き16A内縁とコンベアフレーム10との間にはヒンジが設けられてストッパー24によって抜け止めされている。
【0026】
ヒンジは一方のヒンジ板20に軸受17Aを固定し、軸受17Aに回転軸17を回転自在に挿通し回転軸17には他方のヒンジ板を固定して構成され、一方のヒンジ板20はコンベアフレーム10にボルト21・ナット22によって固定されている。
【0027】
他方のヒンジ板は横架ベース16の切欠き16A内面に固定され、又横架ベース16の端部には取付け片16Bが固定され、この取付け片16Bはボルト21・ナット22によって一方のヒンジ板20とともにコンベアフレーム10に共固定されている。
【0028】
ヒンジの回転軸17は第1のスタンド18の両側縁の間、すなわち横幅内に位置して設けられ、これによって第1、第2のスタンド18、19がそのまま側方に傾動するように横架ベース16を回動させることができるようになっている。
【0029】
また、ヒンジの一方のヒンジ板20にはストッパー23が立てて固定され、横架ベース16の切欠き16Aの周縁と当接して横架ベース16の回動を例えば45°に規制するようになっている。
【0030】
水平ローラ15A及び傾斜ローラ15Bを交換する場合、取付け片16Bを固定するボルト21・ナット22を弛めて外し、作業者が第1のスタンド18を手に持って側方に傾動させる。
【0031】
すると、横架ベース16がヒンジの回転軸17を中心に回動するが、そのとき横架ベース16の隅部が切り欠かれて横架ベース16の隅部とコンベアフレーム10側の一方のヒンジ板20とが干渉せず、しかもヒンジの回転軸17が第1のスタンド18の横幅内に位置しているので、横架ベース16が回動して第1、第2のスタンド18、19は図5に示されるようにそのまま、すなわち上方に移動することなく側方に傾動することができる。
【0032】
第1、第2のスタンド18、19が45°だけ傾動すると、切欠き16Aの周縁がストッパー23と当接して横架ベース16の回動が規制され、第1、第2のスタンド18、19は45°傾いた姿勢に保持されるので、作業者は水平ローラ15A及び傾斜ローラ15Bに手を添えて持ち上げると、水平ローラ15A及び傾斜ローラ15Bはコンベアベルト14に邪魔されることなく嵌込み凹から簡単に取り外すことができ、後は新しい水平ローラ15A及び傾斜ローラ15Bをセットすればよい。
【0033】
図6は第2の実施形態を示し、図において図1ないし図5と同一符号は同一又は相当部分を示す。本例では第1の実施形態におけるボルト21・ナット22に代え、取付けピン21Aとコッター25が用いられ、取付けピン21Aをコンベアフレーム10、ヒンジ板20及び取付け片16Bの挿通穴に挿通し、取付けピン21Aの差込み穴2Aにコッター25を打ち込むことによってヒンジをコンベアフレーム10に取付けている。
【0034】
本例ではコッター25の抜き差しによってスタンド18,19を傾動させることができ、ボルト21・ナット22を用いる場合に比較して作業を簡単に行える。
【0035】
図7及び図8は第3の実施形態を示し、図において図1ないし図6と同一符号は同一又は相当部分を示す。本例では横架ベース16の両端部に円形パイプ製の第1の軸受28が固定され、コンベアフレーム10には円形パイプ製の第2の軸受29の取付け板210が固定され、第1、第2の軸受28、29にはフランジ28A、29Aが形成され、フランジ28A、29Aはボルト・ナット又は取付けピンとコッターとによって相互に着脱可能に固定されている。なお、図示しないが、第1の実施形態と同様に、スタンド18の傾動を一定の角度で規制するストッパーが設けられている。
【0036】
水平ローラ15Aや傾斜ローラ15Bを交換する場合、軸受28、29のフランジ28A、29Aの連結を外し、スタンド18、19を傾動させれば、水平ローラ15A、傾斜ローラ15Bを交換することができる。
【0037】
本例の特徴はキャリアローラスタンドの両端部に軸受28、29と回転軸27を設けるだけであるので、既設のキャリアローラスタンドに適用することができ、その実用的な効果は絶大である。
【0038】
なお、上記の例では他方のヒンジ板を横架ベース16の切欠き16A内面に固定するようにしたが、回転軸17を直接切欠き16A内面に固定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0039】
10 コンベアフレーム
11 従動ローラ
12 駆動ローラ
14 コンベアベルト
14A 乗継部
16 横架ベース
16A 切欠き
17 回転軸
20 一方のヒンジ板
23 ストッパー
27 回転軸
28 第1の軸受
29 第2の軸受
28A、29A フランジ
30 シュート
31 弾性スカート板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8