(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
血液および背景組織の磁化をフリップさせるためのRFパルスと、前記血液および前記背景組織を含むスラブから画像データを取得するためのデータ収集シーケンスとを有するイメージングシーケンスを実行する磁気共鳴装置であって、
被検体の撮影対象である頸動脈を含むスラブを設定する第1の設定手段と、
前記RFパルスにより磁化のフリップが行われる領域を設定する第2の設定手段であって、前記スラブ内に設けられた基準点の位置に基づいて、前記領域が前記被検体の頸動脈を含むが心臓を含まないように、前記領域の一端の位置を決める第2の設定手段と、
を有する磁気共鳴装置。
血液および背景組織の磁化をフリップさせるためのRFパルスと、前記血液および前記背景組織を含むスラブから画像データを取得するためのデータ収集シーケンスとを有するイメージングシーケンスを実行する磁気共鳴装置であって、
被検体の撮影対象である頸動脈を含むスラブを設定する第1の設定手段と、
前記RFパルスにより磁化のフリップが行われる領域を設定する第2の設定手段であって、前記スラブの一端の位置に基づいて、前記領域が頸動脈を含むが心臓を含まないように、前記領域の一端の位置を決める第2の設定手段と、
を有する磁気共鳴装置。
血液および背景組織の磁化をフリップさせるためのRFパルスと、前記血液および前記背景組織を含むスラブから画像データを取得するためのデータ収集シーケンスとを有するイメージングシーケンスを実行する磁気共鳴装置に適用されるプログラムであって、
被検体の撮影対象である頸動脈を含むスラブを設定する第1の設定処理と、
前記RFパルスにより磁化のフリップが行われる領域を設定する第2の設定処理であって、前記スラブ内に設けられた基準点の位置に基づいて、前記領域が前記被検体の頸動脈を含むが心臓を含まないように、前記領域の一端の位置を決める第2の設定処理と、
を計算機に実行させるためのプログラム。
血液および背景組織の磁化をフリップさせるためのRFパルスと、前記血液および前記背景組織を含むスラブから画像データを取得するためのデータ収集シーケンスとを有するイメージングシーケンスを実行する磁気共鳴装置に適用されるプログラムであって、
被検体の撮影対象である頸動脈を含むスラブを設定する第1の設定処理と、
前記RFパルスにより磁化のフリップが行われる領域を設定する第2の設定処理であって、前記スラブの一端の位置に基づいて、前記領域が頸動脈を含むが心臓を含まないように、前記領域の一端の位置を決める第2の設定処理と、
を計算機に実行させるためのプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、以下の形態に限定されることはない。
【0015】
(1)第1の形態
図1は、本発明の第1の形態の磁気共鳴装置の概略図である。
磁気共鳴装置(以下、「MR装置」と呼ぶ。MR:Magnetic Resonance)100は、マグネット2、テーブル3、受信コイル4などを有している。
【0016】
マグネット2は、被検体12が収容されるボア21を有している。また、マグネット2には、超伝導コイル、RFコイル、勾配コイルなどが内蔵されている。
【0017】
テーブル3は、被検体12を支持するクレードル3aを有している。クレードル3aは、ボア21内に移動できるように構成されている。クレードル3aによって、被検体12はボア21に搬送される。
【0018】
受信コイル4は、被検体12に取り付けられている。受信コイル4は、被検体12からの磁気共鳴信号を受信する。
【0019】
MR装置100は、更に、心拍信号処理部5、送信器6、勾配磁場電源7、受信器8、制御部9、操作部10、および表示部11などを有している。
【0020】
心拍信号処理部5は、被検体12に取り付けられたセンサ5aから信号を受け取り、被検体の心拍数やRR間隔を求める。
【0021】
送信器6はRFコイルに電流を供給し、勾配磁場電源7は勾配コイルに電流を供給する。受信器8は、受信コイル4から受け取った信号に対して、検波などの信号処理を実行する。
【0022】
制御部9は、表示部11に必要な情報を伝送したり、受信器8から受け取ったデータに基づいて画像を再構成するなど、MR装置100の各種の動作を実現するように、MR装置100の各部の動作を制御する。制御部9は、スラブ設定手段91およびIRバンド設定手段92などを有している。
【0023】
スラブ設定手段91は、操作部10から入力された情報に基づいてスラブを設定する。
IRバンド設定手段92は、後述する反転パルスSIRにより磁化の反転が行われる領域を設定する。
【0024】
尚、制御部9は、スラブ設定手段91およびIRバンド設定手段92を構成する一例であり、所定のプログラムを実行することにより、これらの手段として機能する。
【0025】
操作部10は、撮影技師(オペレータ)により操作され、種々の情報を制御部9に入力する。表示部11は種々の情報を表示する。
【0026】
MR装置100は、上記のように構成されている。
上記のように構成されたMRI装置100を用いて、被検体12を撮影する。
【0027】
図2は第1の形態において実行されるスキャンを概略的に示す図である。
第1の形態では、ローカライザスキャンLSと本スキャンMSとが実行される。
【0028】
図3はローカライザスキャンLSの説明図である。
ローカライザスキャンLSは、被検体の胸部、頸部、および頭部を含む部位の画像Dを取得するためのスキャンである。ローカライザスキャンLSでは、アキシャル画像、サジタル画像、コロナル画像が取得される。
図3では、ローカライザスキャンLSにより取得された画像Dとして、コロナル画像のみが示されている。
【0029】
ローカライザスキャンLSを実行した後、撮影技師は、画像Dを参考にして、本スキャンMSの撮影領域を表すスラブSLを設定する。
図4に、設定されたスラブSLを概略的に示す。スラブSLを設定する場合、撮影技師は操作部10を操作し、スラブSLを設定するために必要な情報(スラブSLのx方向の長さFOVx、スラブSLのy方向の長さFOVy、スラブ厚(スラブのz方向の長さ)など)を入力する。スラブ設定手段91(
図1参照)は、操作部10から入力された情報に基づいてスラブSLを設定する。第1の形態では、頸動脈を流れる動脈血を特に高品質でイメージングすることを考えているので、スラブの中心Cは被検体の頸部に位置決めされている。FOVxおよびFOVyによって、スラブSLのxy面内の範囲が規定される。スラブ厚は、例えば、10cmである。
【0030】
尚、第1の形態では、スラブSLの他に、磁化の反転が行われる領域(以下、「IRバンド」と呼ぶ)も設定される(
図5参照)。
【0031】
図5はIRバンドを概略的に示す図である。
IRバンドBは、後述する選択反転パルスSIR(
図6参照)により磁化の反転が行われる領域であり、頸動脈を含むように設定される。IRバンドBは、撮影技師が手作業で設定するのではなく、自動的に設定する。IRバンドBの設定方法については後で詳しく説明する。
【0032】
このように、スラブSLおよびIRバンドBを設定した後、本スキャンMSが実行される(
図6参照)。
【0033】
図6は、本スキャンMSの説明図である。
図6の上側には、被検体の心拍信号CSと、被検体をスキャンするときに使用されるイメージングシーケンスISが示されている。
図6の下側には、k空間(ky−kz面)と、スラブSLおよびIRバンドBが示されている。
【0034】
イメージングシーケンスISは、選択反転パルスSIR(Selective Inversion Recovery)、脂肪抑制パルスF、データ収集シーケンスDAQ、非選択反転パルスNIRを有している。
【0035】
選択反転パルスSIRは、IRバンドBに含まれる組織(動脈血、静脈血、脂肪、筋肉など)の縦磁化を反転させるためのRFパルスである。選択反転パルスSIRは、心拍信号CSのR波から遅延時間TDが経過した時点で印加される。選択反転パルスSIRによってIRバンドBに含まれる組織の縦磁化が反転する。
図6では、選択反転パルスSIRによって縦磁化が反転した組織として、静脈血を示してある。一方、心臓はIRバンドBの外側に位置しているので、選択反転パルスSIRを印加しても、心臓の中の動脈血は、縦磁化M=1のままである。
【0036】
選択反転パルスSIRから反転時間TIが経過した時点で、スラブSLのデータを収集するためのデータ収集シーケンスDAQが実行される。データ収集シーケンスDAQは、例えば3D FSE(Fast Spin Echo)や、FIESTA(Fast Imaging Employing Steady state Acquisition)である。選択反転パルスSIRによってIRバンドBの組織の縦磁化は反転するので、反転時間TIの間に、IRバンドB内の各組織の縦磁化はヌルポイントに近づく。
図6の縦磁化のグラフに示すように、静脈血の縦磁化は、データ収集シーケンスDAQの開始時点t
sにおいてM
aまで回復している。一方、心臓はIRバンドBの外側に位置しているので、選択反転パルスSIRを印加しても、心臓の中の動脈血は、縦磁化M=1のままである。したがって、反転時間TIの間に、心臓から、縦磁化M=1の動脈血が頸部および頭部に流入する。したがって、データ収集シーケンスDAQの開始時点t
sにおいて、動脈血の縦磁化が、静脈血の縦磁化よりも十分に大きいので、静脈血よりも動脈血が十分に強調された画像を得ることができる。
【0037】
尚、データ収集シーケンスDAQの直前には、脂肪抑制パルスFが印加されている。したがって、撮影領域Rの脂肪信号を効果的に抑制することができる。尚、脂肪抑制パルスFは、例えばSTIR(Short-TI IR)である。
【0038】
更に、データ収集シーケンスDAQの直後には、非選択反転パルスNIRが印加される。非選択反転パルスNIRは、被検体内の各組織の磁化を反転させるために印加されるパルスである。
【0039】
非選択反転パルスNIRを印加した後、待ち時間Twが経過した時点で、次のイメージングシーケンスISが実行される。
【0040】
次のイメージングシーケンスISでも、選択反転パルスSIRおよび脂肪抑制パルスFを印加した後、データ収集シーケンスDAQを実行し、非選択反転パルスNIRを印加する。以下同様に、イメージングシーケンスISを繰り返し実行する。第1の形態では、イメージングシーケンスISを実行するたびに、1つのkzビューのデータが収集されるとする。
図6では、シーケンシャルでデータを収集する例が示されている。イメージングシーケンスISを繰り返し実行し、画像再構成に必要なk空間のデータが全て収集されたら、本スキャンMSを終了する。
したがって、動脈血が十分に強調された画像を得ることができる。
【0041】
ただし、動脈血および背景組織の信号の大きさは、IRバンドBのx方向の範囲が被検体のどの部位をカバーしているかに依存する。したがって、IRバンドBの設定範囲が適切でない場合、スラブSL内の頸動脈の動脈血が低信号になったり、あるいは背景組織(静脈血やCSFなど)が高信号になってしまい、スラブSLの画質が劣化してしまうことがある。そこで、このようなスラブSLの画質劣化ができるだけ発生しないように、IRバンドBの範囲を決める必要がある。以下に、スラブSLの画質劣化ができるだけ発生しないようにするためのIRバンドBの範囲について、
図7を参照しながら説明する。
【0042】
図7は、IRバンドBのx方向の位置が異なる3つの例が示されている。以下、
図7(a)〜(c)について順に説明する。
図7(a)は、IRバンドBの下端Eが頸部を横切るように設定された例が示されている。
図7(a)では、IRバンドBは、頸部から上側(頭部側)の部位A1を含んでいる。したがって、選択反転パルスSIRを印加することにより、部位A1に含まれる背景組織の磁化を反転させることができるので、部位A1の中では、動脈血と背景組織とのコントラストを十分に大きくすることができる。しかし、IRバンドBは、頸部から下側(心臓側)の部位A2を含んでいないので、選択反転パルスSIRを印加しても、頸部から下側の部位A2に含まれる背景組織の磁化を反転させることはできない。したがって、頸部から下側の部位A2では、動脈血と背景組織とのコントラストが小さくなってしまい、動脈血を高品質でイメージングすることができない。そこで、IRバンドBの範囲を
図7(a)とは別の位置にずらすことが考えられる(
図7(b)参照)。
【0043】
図7(b)は、IRバンドBの下端Eが心臓のやや下側の部位を横切っている例が示されている。
図7(b)では、IRバンドBは、心臓から頭部までの全体を含んでいるので、選択反転パルスSIRを印加することにより、心臓から頭部までの部位に含まれている背景組織の磁化を反転させることができる。しかし、
図7(b)では、心臓もIRバンドBに含まれているので、選択反転パルスSIRを印加することにより、心臓内に含まれる動脈血の磁化も反転する。したがって、
図7(b)のIRバンドBでは、動脈血と背景組織との両方の磁化が反転してしまうので、動脈血と背景組織とのコントラストを十分に大きくすることができず、高品質な頸動脈の画像を取得することはできない。そこで、第1の形態では、
図7(c)に示すように、IRバンドBを設定する。
【0044】
図7(c)は、IRバンドBの下端Eが、心臓の近傍に位置する大動脈弓から頸動脈が分岐する部分(以下、「分岐部分」と呼ぶ)A3を横切っている例が示されている。したがって、選択反転パルスSIRを印加することにより、分岐部分A3から上側の部位に含まれている背景組織の磁化を反転させることができる。また、IRバンドBは、分岐部分A3から下側(心臓側)の部位を含んでいないので、選択反転パルスSIRを印加しても、心臓に含まれる動脈血の磁化が反転されることはない。したがって、心臓から縦磁化M=1の動脈血を頸動脈に流入させることができるので、スラブSLの全体において、動脈血と背景組織とのコントラストが十分に大きくなり、高品質な頸動脈の画像を取得することができる。
【0045】
上記のような理由から、IRバンドBは、IRバンドBの下端Eが分岐部分A3(又は分岐部分A3の近くの部位)を横切るように設定する必要がある。しかし、一般的なMR装置では、撮影技師が、予め取得した画像を参考にしながら手動でIRバンドBを設定するので、IRバンドBが設定される範囲は、撮影技師によって異なる。特に、経験の浅い撮影技師は、IRバンドBの下端Eを分岐部分A3から離れた位置に位置決めしてしまうことがあり、この場合、画質が劣化してしまう問題がある。そこで、第1の形態では、ローカライザスキャンLSを実行した後、本スキャンMSを実行する前に、IRバンドBを自動的に設定し、自動的に設定されたIRバンドBに従って本スキャンMSが実行される。以下に、ローカライザスキャンLSを実行してから、IRバンドBを自動的に設定し、本スキャンMSを実行するまでのフローについて説明する。
【0046】
図8は、ローカライザスキャンLSを実行してから、IRバンドBを自動的に設定し、本スキャンMSを実行するまでのフローを示す図である。
【0047】
ステップST1では、ローカライザスキャンLSが実行される。ローカライザスキャンLSにより、画像D(
図3参照)が得られる。ローカライザスキャンLSを実行した後、ステップST2に進む。
【0048】
ステップST2では、撮影技師は、本スキャンMSを実行するときのスラブSLを設定する。スラブSLの一例は、先に説明した
図4に示されている。
【0049】
撮影技師は操作部10を操作し、スラブSLを設定するために必要な情報(スラブSLのx方向の長さFOVx、スラブSLのy方向の長さFOVy、スラブ厚(スラブのz方向の長さ)など)を入力する。スラブ設定手段91(
図1参照)は、操作部10から入力された情報に基づいてスラブSLを設定する。スラブSLを設定した後、ステップST3に進む。
【0050】
ステップST3では、IRバンド設定手段92(
図1参照)が、スラブSLの位置情報に基づいて、IRバンドBを設定する。
図9に、IRバンドBの設定位置を概略的に示す。
【0051】
第1の形態では、IRバンドBの下端Eは、スラブSLの中心Cのx方向の位置x1から心臓側(−x方向)に距離d=d0だけ離れた位置x2に設定される。ここで、距離d0は、IRバンドBの下端Eが大動脈弓の分岐部分A3(又は大動脈弓の分岐部分A3にできるだけ近い部位)を横切るように決められた固定値であり、被検体をスキャンする前に事前に決定されている。以下に、d0をどのようにして決定したかについて説明する。
【0052】
図10は距離d0の値の決定方法の一例の説明図である。
図10(a1)〜(az)の各々は、過去にイメージングシーケンスISを用いて頸動脈の撮影が行われたときに撮影技師が実際に設定したスラブSLとIRバンドBとを概略的に示している。
図10(a1)〜(az)の撮影では、撮影技師は、スラブSLを設定する場合、スラブSLの中心Cのx方向の位置x1を被検体の頸部に位置決めしている。また、撮影技師は、IRバンドBを設定する場合、IRバンドBの下端Eを大動脈弓の分岐部分A3に位置決めしている。
【0053】
第1の形態では、
図10(a1)〜(az)の実際に設定されたスラブSLとIRバンドBに基づいて、距離d0の値を決定している。具体的には、以下のようにして距離d0の値を決定している。
【0054】
先ず、
図10(a1)〜(az)ごとに距離dを求める。距離dは、スラブSLの中心Cのx方向の位置x1と、IRバンドBの下端Eのx方向の位置x2との間の距離を表している。
図10(a1)〜(az)では、距離dは、それぞれd1〜dzで示されている。
【0055】
距離d1〜dzを求めた後、機械学習などの手法を用いて、距離d1〜dzを学習させる。距離d1〜dzを学習させることにより、
図9の距離d0を求めることができる。
【0056】
距離d0は、過去に撮影したときの実際の距離d1〜dzを学習させることにより求められているので、スラブSLの中心Cから距離d0離れた位置は、大動脈弓の分岐部分A3(又は分岐部分A3の近くの部位)が存在する位置と考えられる。したがって、スラブSLの中心Cから距離d0離れた位置に、IRバンドBの下端Eを設定することにより、IRバンドBの下端Eを大動脈弓の分岐部分A3(又は分岐部分A3の近くの部位)に位置決めすることができる。
図9に示すようにIRバンドBを設定した後、ステップST4に進む。
【0057】
ステップST4では、本スキャンMSが実行される。本スキャンMSでは、
図6を参照しながら説明したように、イメージングシーケンスISが繰り返し実行される。そして、画像再構成に必要なk空間の全データが収集されたら、フローを終了する。
【0058】
第1の形態では、IRバンドBを設定する場合、IRバンドBの下端Eを、スラブの中心Cのx方向の位置x1から距離d0だけ離れた位置x2に位置決めしている。d0は大動脈弓の分岐部分A3(又は大動脈弓の分岐部分Aの近くの部位)を横切るように設定されているので、頸動脈の撮影に適した位置にIRバンドBを位置決めすることができ、高品質な画像を得ることができる。
【0059】
尚、第1の形態では、スラブSLの中心Cを基準点にしてIRバンドBの下端Eを位置決めしている。しかし、スラブSLの中心Cとは別の点を基準点として、IRバンドBを設定してもよい。
図11は、スラブSLの中心Cとは別の点を基準点として、IRバンドBを設定する例を示す図である。
図11には、スラブSLの中心Cよりも頭部側に位置する点vが示されている。点vのx方向の位置は、符号「x
v」で示されている。IRバンドBの下端Eは、位置x
vから−x方向に距離w=w0離れた位置に位置決めされている。ここで、w0は、d0と同様に、過去に実際に設定されたスラブSLおよびIRバンドBのデータに基づいて求めることができる。
【0060】
スラブSLの中心Cとは別の点vを基準点としても、w=w0に設定することによって、スラブの下端Eを大動脈弓の分岐部分A3(又は大動脈弓の分岐部分Aの近くの部位)に位置決めすることができる。
【0061】
(2)第2の形態
第1の形態では、距離dは固定値(d0)である。しかし、被検体によって頸部の長さは異なり、一般的に被検体の頸部が長い場合、スラブSLのx方向のFOVxは長く設定され、一方、被検体の頸部が短い場合、スラブSLのx方向のFOVxは短く設定される傾向がある。したがって、より高品質な血流画像を取得するためには、FOVxの値に応じて距離dを調整することが望ましい。そこで、第2の形態では、FOVxの値に応じて距離dを調整し、血流画像を取得する例について説明する。
【0062】
尚、第2の形態についても、第1の形態と同様に、
図8に示すフローを参照しながら説明する。
【0063】
ステップST1およびST2は、第1の形態と同じであるので、説明は省略する。ステップST2においてスラブSL(
図4参照)を設定した後、ステップST3に進む。
【0064】
ステップST3では、IRバンド設定手段が、スラブSLの位置情報に基づいて、IRバンドBを設定する。
図12に、IRバンドBの設定位置を概略的に示す。IRバンドBの下端Eは、スラブSLの中心Cのx方向の位置x1から心臓側(−x方向)に距離dだけ離れた位置x2に設定される。ただし、第2の形態では、距離dとFOVxとの関係が以下の式を満たすように、距離dが設定される。
d/FOVx=r
d ・・・(1)
【0065】
ここでr
dは、IRバンドBの下端Eが大動脈弓の分岐部分A3(又は大動脈弓の分岐部分A3にできるだけ近い部位)を横切るように決められた固定値であり、被検体をスキャンする前に事前に決定されている。以下に、r
dをどのようにして決定したかについて説明する。
【0066】
図13はr
dの値の決定方法の一例の説明図である。
図13(a1)〜(az)の各々は、過去にイメージングシーケンスISを用いて頸動脈の撮影が行われたときに撮影技師が実際に設定したスラブSLとIRバンドBとを概略的に示している。
図13(a1)〜(az)の撮影では、撮影技師は、スラブSLを設定する場合、スラブSLの中心Cのx方向の位置x1を被検体の頸部に位置決めしている。また、撮影技師は、IRバンドBを設定する場合、IRバンドBの下端Eを大動脈弓の分岐部分A3に位置決めしている。
【0067】
第2の形態では、
図13(a1)〜(az)の実際に設定されたスラブSLとIRバンドBに基づいてr
dの値を求めている。具体的には、以下のようにしてr
dの値を求めている。
【0068】
先ず、
図13(a1)〜(az)ごとに、d/FOVxの値を求める。dは、スラブSLの中心Cのx方向の位置x1と、IRバンドBの下端Eのx方向の位置x2との間の距離である。また、FOVxは、スラブSLのx方向の長さである。
図13(a1)〜(az)では、d/FOVxの値は、それぞれr1〜rzで示されている。
【0069】
r1〜rzを求めた後、機械学習などの手法を用いて、r1〜rzを学習させる。r1〜rzを学習させることにより、式(1)のr
dを求めることができる。
【0070】
r
dは、過去に撮影したときの実際のd/FOVxの値r1〜rzを学習させることにより求められている。したがって、式(1)を満たすようにdの値を設定することにより、IRバンドBの下端Eを分岐部分A3(又は分岐部分A3の近くの部位)に位置決めすることができる。式(1)から、dは以下の式によって求められる。
d=r
d×FOVx ・・・(2)
【0071】
式(2)のr
dは
図13を参照しながら説明した手順で予め求められるので既知である。また、FOVxはステップST2において撮影技師が設定しているので、FOVxの値も既知である。したがって、dの値を求めることができる。
【0072】
IRバンド設定手段92は、式(2)を用いてdの値を算出し、スラブSLの中心Cから距離d(=r
d×FOVx)離れた位置x2に、IRバンドBの下端Eが位置決めされるように、IRバンドBを設定する。IRバンドBを設定した後、ステップST4に進む。
【0073】
ステップST4では、本スキャンMSが実行される。本スキャンMSでは、イメージングシーケンスIS(
図6参照)が繰り返し実行される。そして、画像再構成に必要なk空間の全データが収集されたら、フローを終了する。
【0074】
第2の形態では、IRバンドBを設定する場合、FOVxの値に応じて距離dの値を調整している(式(2)参照)。したがって、FOVxの長さに応じて最適な位置にIRバンドBを位置決めすることができるので、高品質な画像を得ることができる。
【0075】
(3)第3の形態
第1および第2の形態では、スラブSLの中心Cのx方向の位置x1を基準にしてIRバンドBを設定する例について説明したが、第3の形態では、スラブの下端Eのx方向の位置に基づいてIRバンドBを設定する例について説明する。尚、第3の形態のMR装置のハードウェア構成は、第1の形態のMR装置と同じである。
【0076】
以下、第3の形態について、
図8に示すフローを参照しながら説明する。
ステップST1およびST2は、第1の形態と同じであるので、説明は省略する。ステップST2においてスラブSL(
図4参照)を設定した後、ステップST3に進む。
【0077】
ステップST3では、IRバンド設定手段92(
図1参照)が、スラブSLの位置情報に基づいて、IRバンドBを設定する。
図14に、IRバンドBの設定位置を概略的に示す。
【0078】
第3の形態では、IRバンド設定手段92は、IRバンドBの下端Eを、スラブSLの下端Jのx方向の位置x3から頭部側(x方向)に距離h=h0だけ離れた位置x2に設定する。ここで、距離h0は、IRバンドBの下端Eが大動脈弓の分岐部分A3(又は大動脈弓の分岐部分A3にできるだけ近い部位)を横切るように決められた固定値であり、被検体をスキャンする前に事前に決定されている。以下に、h0をどのようにして決定したかについて説明する。
【0079】
図15は距離h0の値の決定方法の一例の説明図である。
図15(a1)〜(az)の各々は、過去にイメージングシーケンスISを用いて頸動脈の撮影が行われたときに撮影技師が実際に設定したスラブSLとIRバンドBとを概略的に示している。
図15(a1)〜(az)の撮影では、撮影技師は、スラブSLを設定する場合、スラブSLの下端Jのx方向の位置x3を心臓の下端付近に位置決めしている。また、撮影技師は、IRバンドBを設定する場合、IRバンドBの下端Eを大動脈弓の分岐部分A3に位置決めしている。
【0080】
第3の形態では、
図15(a1)〜(az)の実際に設定されたスラブSLとIRバンドBに基づいて、距離h0を決定している。具体的には、以下のようにして距離h0を決定する。
【0081】
先ず、
図15(a1)〜(az)ごとに距離hを求める。距離hは、スラブSLの下端Jのx方向の位置x3と、IRバンドBの下端Eのx方向の位置x2との間の距離を表している。
図15(a1)〜(az)では、距離hは、それぞれh1〜hzで示されている。
【0082】
距離h1〜hzを求めた後、機械学習などの手法を用いて、距離h1〜hzを学習させる。距離h1〜hzを学習させることにより、
図14の距離h0を求めることができる。
【0083】
距離h0は、過去に撮影したときの実際の距離h1〜hzを学習させることにより求められているので、スラブSLの下端Jから距離h0離れた位置は、大動脈弓の分岐部分A3(又は分岐部分A3の近くの部位)が存在する位置と考えられる。したがって、スラブSLの下端Jから距離h0離れた位置に、IRバンドBの下端Eを設定することにより、IRバンドBの下端Eを大動脈弓の分岐部分A3(又は分岐部分A3の近くの部位)に位置決めすることができる。
図14に示すようにIRバンドBを設定した後、ステップST4に進む。
【0084】
ステップST4では、本スキャンMSが実行される。本スキャンMSでは、
図6を参照しながら説明したように、イメージングシーケンスISが繰り返し実行される。そして、画像再構成に必要なk空間の全データが収集されたら、フローを終了する。
【0085】
第3の形態でも、第1および第2の形態と同様に、IRバンドBの下端Eを大動脈弓の分岐部分A3(又は分岐部分A3の近くの部位)に位置決めすることができるので、高品質な画像を取得することができる。
【0086】
尚、第3の形態では、距離hは固定値(h0)である。しかし、FOVxの値に応じて距離hを調整してもよい。この場合、距離hは、以下の式で表される。
h=r
h×FOVx ・・・(3)
【0087】
ここで、r
hは、例えば、
図15(a1)〜(az)ごとにh/FOXxの値を求め、これらの値を学習することによって決定することができる。式(3)によりFOVxの値に応じたhを計算することができるので、FOVxの長さに応じて最適な位置にIRバンドBを位置決めすることができる。
【0088】
尚、第3の形態では、スラブSLの下端Jを基準にしてIRバンドBの下端Eを位置決めしている。しかし、スラブSLの下端の代わりにスラブSLの上端を基準にして、IRバンドBの下端Eを位置決めしてもよい。
【0089】
(4)第4の形態
図16は、第4の形態のMR装置の概略図である。
尚、第4の形態のMR装置400は、第1の形態のMR装置100と比較すると、制御部9が異なるが、その他の構成は第1の形態と同じである。したがって、第4の形態のMR装置400の説明に当たっては、制御部9について主に説明する。
【0090】
制御部9は、スラブ設定手段901、変換手段902、検出手段903、およびIRバンド設定手段904などを有している。
【0091】
スラブ設定手段91は、操作部10から入力された情報に基づいてスラブを設定する。
変換手段902は、後述するレファレンススキャンRS(
図17参照)により取得されたスラブの3次元データを2次元画像に変換する。
検出手段903は、変換手段902により得られた2次元画像の中から、大動脈弓の分岐部分を検出する。
IRバンド設定手段92は、IRバンドの下端が大動脈弓の分岐部分に位置決めされるように、IRバンドを設定する。
【0092】
尚、制御部9は、スラブ設定手段901、変換手段902、検出手段903、およびIRバンド設定手段904を構成する一例であり、所定のプログラムを実行することにより、これらの手段として機能する。
【0093】
図17は、第4の形態において実行されるスキャンの説明図である。
第4の形態では、ローカライザスキャンLS、レファレンススキャンRS、および本スキャンMSが実行される。
【0094】
ローカライザスキャンLSおよび本スキャンMSは、第1の形態と同じであるので説明は省略する。
【0095】
レファレンススキャンRSは、大動脈弓の分岐部分を検出するときに使用される3次元データを取得するためのスキャンである。第3の形態では、レファレンススキャンRSにより取得された3次元データに基づいてIRバンドを自動的に設定し、本スキャンMSを実行する。以下に、
図17のスキャンを実行するときのフローについて説明する。
【0096】
図18は、
図17のスキャンを実行するときのフローを示す図である。
ステップST1およびST2は、第1の形態と同じであるので、説明は省略する。ステップST2においてスラブSL(
図4参照)を設定した後、ステップST3に進む。
【0097】
ステップST3では、IRバンドBを設定する。以下に、IRバンドBの設定方法について説明する。尚、ステップST3は、ステップST31〜ST34を有しているので、ステップST31〜ST34について順に説明する。
【0098】
ステップST31では、レファレンススキャンRSが実行される(
図19参照)。
【0099】
図19は、レファレンススキャンRSの説明図である。
レファレンススキャンRSは、スラブSLから動脈血の3次元データDTを取得するためのスキャンである。動脈血の3次元データDTを取得する方法としては、PC(Phase Contrast)法を用いることができる。動脈血の3次元データDTを取得した後、ステップST32に進む。
【0100】
ステップST32では、変換手段902(
図16参照)が、MIP(maximum intensity projection)法を用いて3次元データをxy面に投影し、2次元画像を作成する。
図20に2次元画像DRを示す。レファレンススキャンRSを実行した後、ステップST33に進む。
【0101】
ステップST33では、検出手段903が、2次元画像DRに基づいて、大動脈弓の分岐部分A3を検出する。以下に分岐部分A3の検出方法について説明する。
【0102】
検出手段903は、先ず、2次元画像DRを2値化する。
図21に、2値化する前の2次元画像DRと、2次元画像DRを2値化することにより得られた2値化画像DBを示す。
【0103】
2値化により、2次元画像DRに描出されていた低信号の背景組織(脂肪など)を除去することができる。2値化画像DBを得た後、検出手段903は、モデル画像と2値化画像DBとのフィッティングを行う(
図22参照)。
【0104】
図22はフィッティングの説明図である。
モデル画像Mは、心臓、大動脈弓、および頸動脈の形状を概略的に表しており、被検体を撮影する前に予め準備されている画像である。モデル画像Mの略球形の部分M1は、心臓と大動脈弓とを含む部位の形状を表しており、略直線形状の部分M2は、頸動脈の形状を表している。部分M1とM2との境界部分A3が、大動脈弓の分岐部分に相当する。モデル画像Mは、例えば、複数の人間を実際に撮影することにより得られた画像を参考にして作成することができる。
【0105】
検出手段903は、2値化画像DBに対して、モデル画像Mを拡大、縮小、回転させ、モデル画像Mが2値化画像DBに最も一致するようにフィッティングを行う。
図22の下側に、フィッティングさせた後のモデル画像Mと2値化画像DBとを重ねて示してある。
【0106】
次に、検出手段903は、2値化画像における分岐部分の位置を検出する。モデル画像Mには分岐部分の位置情報が対応付けられているので、検出手段903は、モデル画像Mに対応付けられた位置を特定することにより、2値化画像DBにおける分岐部分A3の位置を検出することができる。
分岐部分A3の位置を検出した後、ステップST34に進む。
【0107】
ステップST34では、IRバンド設定手段904(
図16参照)が、IRバンドBの下端Eが分岐部分に位置決めされるように、IRバンドBを設定する。
図23に設定されたIRバンドBを示す。IRバンドBを設定した後、ステップST4に進み、本スキャンMSを実行し、フローを終了する。
【0108】
第4の形態では、モデル画像を用いて分岐部分の位置を検出するので、FOVの大きさ、FOVの位置によらずに、IRバンドの下端Eを分岐部分に位置決めすることができる。
【0109】
尚、第4の形態では、MIP法を用いて2次元画像を作成しているが、MIP法とは別の方法で2次元画像を作成してもよい。
【0110】
第1〜第4の形態では、イメージングシーケンスISは反転パルスSIR(つまり、フリップ角が180°のRFパルス)を有している。しかし、本発明は、血液を描出することができるのであれば、反転パルスSIRの代わりに、α°パルス(αは任意の角度)を用いることができる。
【0111】
また、第1〜第4の形態では、イメージングシーケンスISは、選択反転パルスSIRと、脂肪抑制パルスFと、データ収集シーケンスDAQと、非選択反転パルスNIRとを備えている。しかし、イメージングシーケンスISは、選択反転パルスSIR、脂肪抑制パルスF、および非選択反転パルスNIRとは別のパルスを有していてもよいし、データ収集シーケンスDAQとは別のシーケンスを有していてもよい。また、イメージングシーケンスISは、脂肪抑制パルスFおよび非選択反転パルスNIRを備えているが、これらのパルスFおよびNIRを備えないようにしてもよい。
【0112】
第1〜第4の形態では、頸動脈を流れる動脈血を撮影する例について説明したが、本発明は、頸動脈とは別の動脈を流れる動脈血を撮影する場合にも適用することができ、更に、静脈血を撮影する場合にも適用することができる。