特許第6362849号(P6362849)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362849
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】エアゾール容器用アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/34 20060101AFI20180712BHJP
   B05B 9/04 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   B65D83/34
   B05B9/04
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-227610(P2013-227610)
(22)【出願日】2013年10月31日
(65)【公開番号】特開2015-85982(P2015-85982A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年4月26日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】古澤 光夫
【審査官】 小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−036335(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第19960846(DE,A1)
【文献】 特開2004−149193(JP,A)
【文献】 特開2005−041510(JP,A)
【文献】 特開平10−059445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/34
B05B 9/04
B65D 83/20
B65D 83/30
B65D 83/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器のステムを露出させる上部開口を有し該容器のマウンティングカップに装着される肩カバーと、該ステムに装着されるとともに注出筒の吐出口から内容物を吐出させるノズルと、該注出筒を突出させる開口を有し該肩カバーに揺動自在に支持されるレバーとを備え、
前記レバーは、前記マウンティングカップに近づく下向き変位によって前記ノズルを押し下げる一方、該マウンティングカップから離れる上向き変位によって該ノズルのステムからの取り外しを許容し、前記ノズルを保持する係合壁を有するエアゾール容器用アクチュエータ。
【請求項2】
前記レバーは、前記開口を挟んで一方側に、前記肩カバーに設けた受部又は軸部に係合する軸部又は受部を有し、他方側に、該レバーの揺動に供する操作部を有する請求項1に記載のエアゾール容器用アクチュエータ。
【請求項3】
前記ノズルは、前記ステムを挿通する連結筒部を有する下部部材と、前記注出筒を有するとともに該下部部材に着脱自在に連結する上部部材とを備え、該下部部材と該上部部材とをヒンジを介して一体連結した請求項1又は2に記載のエアゾール容器用アクチュエータ。
【請求項4】
前記肩カバー、ノズル、及びレバーを覆うオーバーキャップを更に備える請求項1〜3の何れかに記載のエアゾール容器用アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール容器のマウンティングカップに装着されて容器内の内容物をノズルから吐出させるエアゾール容器用アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアゾール容器の内容物を吐出するアクチュエータにおいては、例えば特許文献1に記載されるような、ステムに装着されて内容物を吐出させるノズル(特許文献1においては通路部材及びヘッド)や容器のマウンティングカップに装着される肩カバー(特許文献1においては連結部材及び主筒部材)等を備えるものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−41510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなアクチュエータにおいては、内容物を吐出させる際の操作性がよいことに加えて、ノズル内に残った内容物が固化してしまうことがあることから、ノズルを簡単に取り外して容易に洗浄を行えることが強く求められている。また、コストの削減や組み立て性を良くする観点から、構造を簡素化することも要望されている。特許文献1に記載のアクチュエータにおいてもこれらの点を改善する取り組みがなされているものの、内容物の通路となる部材が、通路部材及びヘッドの2つの部材で構成されていることや、これらを洗浄するためには連結部材を取り外す必要があることから、未だ改善の余地が残されている。
【0005】
本発明は、このような点を解決することを課題とするものであり、その目的は、操作性が良く使い勝手に優れる上、ノズルを簡単に取り外すことができるので洗浄にかかる手間を省くことができ、また、構造も簡素化される、新たなエアゾール容器用アクチュエータを提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、エアゾール容器のステムを露出させる上部開口を有し該容器のマウンティングカップに装着される肩カバーと、該ステムに装着されるとともに注出筒の吐出口から内容物を吐出させるノズルと、該注出筒を突出させる開口を有し該肩カバーに揺動自在に支持されるレバーとを備え、
前記レバーは、前記マウンティングカップに近づく下向き変位によって前記ノズルを押し下げる一方、該マウンティングカップから離れる上向き変位によって該ノズルのステムからの取り外しを許容し、前記ノズルを保持する係合壁を有するエアゾール容器用アクチュエータである。
【0007】
前記レバーは、前記開口を挟んで一方側に、前記肩カバーに設けた受部又は軸部に係合する軸部又は受部を有し、他方側に、該レバーの揺動に供する操作部を有することが好ましい。
【0008】
前記ノズルは、前記ステムを挿通する連結筒部を有する下部部材と、前記注出筒を有するとともに該下部部材に着脱自在に連結する上部部材とを備え、該下部部材と該上部部材とをヒンジを介して一体連結することが好ましい。
【0009】
前記肩カバー、ノズル、及びレバーを覆うオーバーキャップを更に備えることが好ましい。
【0010】
前記レバーは、前記ノズルを保持する係合壁を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のエアゾール容器用アクチュエータは、容器のマウンティングカップに装着される肩カバーと、ステムに装着されるとともに注出筒の吐出口から内容物を吐出させるノズルと、注出筒を突出させる開口を有し肩カバーに揺動自在に支持されるレバーとを備えるものであり、レバーは、マウンティングカップに近づく下向き変位によってノズルを押し下げる一方、マウンティングカップから離れる上向き変位によってノズルのステムからの取り外しを許容するものである。すなわち、マウンティングカップに向けてレバーを押圧することで内容物を吐出させることができ、また、レバーをマウンティングカップから離れる向きに揺動させれば、ノズルをステムから取り外す際にレバーが邪魔になることがないので、ノズルを簡単に取り外すことができる。
【0012】
レバーを、注出筒を突出させる開口を挟んで一方側に、肩カバーに設けた受部又は軸部に係合する軸部又は受部を有し、他方側に、レバーの揺動に供する操作部を有するように構成する場合は、レバーの揺動中心から操作部までの距離を増やすことができるので、てこの原理によって、より小さな力で内容物を吐出することができる。
【0013】
ノズルを、ステムを挿通する連結筒部を有する下部部材と、注出筒を有するとともに下部部材に着脱自在に連結する上部部材とを備え、下部部材と上部部材とをヒンジを介して一体連結するように構成する場合は、下部部材と上部部材とを開くことでノズルの内部を露出させることができるので、洗浄作業が容易に行えるようになる。
【0014】
肩カバー、ノズル、及びレバーを覆うオーバーキャップを更に備える場合は、保管中、これらに埃や塵が付着するのを防止することができる上、意図しない内容物の吐出が有効に防止される。
【0015】
レバーに、ノズルを保持する係合壁を設ける場合は、レバーを上向き変位に揺動させることで、レバーとともにノズルも引き上げられることになり、ステムからの取り外しが更に簡単に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に従うエアゾール容器用アクチュエータの第一実施形態を示す、平面図である(オーバーキャップは取り外している)。
図2】第一実施形態のアクチュエータをエアゾール容器に装着した状態で示す、側面視での断面図(エアゾール容器は側面図)である。
図3図2の背面視での半断面図である。なお、断面部分は図2のA−Aに沿う断面であり、エアゾール容器は背面図であり、オーバーキャップは取り外した状態である。
図4】第一実施形態におけるノズルの組み立て前の状態を示す断面図である。
図5】第一実施形態において、組み立て後のノズルをレバーに装着する状況を示す図である。
図6】第一実施形態において、内容物を吐出する状況を示す図である。
図7】本発明に従うエアゾール容器用アクチュエータの第二実施形態を示す、平面図(オーバーキャップは取り外している)である。
図8】第二実施形態のアクチュエータをエアゾール容器に装着した状態で示す、側面視での断面図(エアゾール容器は側面図)である。
図9図8の背面視での半断面図である。なお、断面部分は図8のB−Bに沿う断面であり、エアゾール容器は背面図であり、オーバーキャップは取り外した状態である。
図10】第二実施形態において、組み立て後のノズルをレバーに装着する状況を示す図である。
図11】第二実施形態において、内容物を吐出する状況を示す図である。
図12】本発明に従うエアゾール容器用アクチュエータの第三実施形態を示す、平面図である(オーバーキャップは取り外している)。
図13】第三実施形態のアクチュエータをエアゾール容器に装着した状態で示す、側面視での断面図(エアゾール容器は側面図)である。
図14図13の正面図(オーバーキャップは取り外している)である。
図15】第三実施形態におけるノズルの組み立て前の状態を示す断面図である。
図16】第三実施形態において、組み立て後のノズルをレバーに装着する状況を示す図である。
図17】第三実施形態において、内容物を吐出する状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明をより具体的に説明する。なお、本明細書、特許請求の範囲、要約書、及び図面において、「正面側」とは、図2図8図13において、レバーの操作部が位置する側であり、「背面側」とは、その反対側である。また、「左側」、「右側」とは、正面側から背面側に向かって見る際の左右方向をいう。そして「上側」とは、図2図8図13において、エアゾール容器に対してノズルが位置する側であり、「下側」とは、その反対側である。
【0018】
図1図3において、符号1は、エアゾール容器(以下、単に「容器」と称す場合もある)を示す。エアゾール容器1は、例えば金属製や合成樹脂製となる有底筒状の容器本体1aに、金属製となるマウンティングカップ1bの外縁を巻き締め等によって固着したものであり、内側には2種類の内容物が別個に収容されている。また容器1は、それぞれの内容物の収容空間につながる総計2本のステム1cを有している。
【0019】
マウンティングカップ1bの中央部には、その上面からステム1cを突出させるとともに平面視にてトラック状になる上段突起部1dと、上段突起部1dの長辺と略同一長さの直径を有し(図3参照)、上段突起部1dに連結する中段突起部1eと、中段突起部1eよりも大径であって中段突起部1eに連結する下段突起部1fとが設けられている。また、中段突起部1eの根元には環状となる中段凹部1gが設けられ、下段突起部1fの根元には環状となる下段凹部1hが設けられている。なお、上段突起部1dの平面視での形状は、矩形状でも楕円状でもよい。
【0020】
また、符号2Aは、本発明に従うエアゾール容器用アクチュエータ(以下、単に「アクチュエータ」と称す場合もある)の第一実施形態を示す。本実施形態のアクチュエータ2Aは、マウンティングカップ1bに装着される肩カバー3Aを備えていて、本実施形態では、固定盤10とカバー部材20によって肩カバー3Aを構成している。更にアクチュエータ2Aは、レバー30、ノズル40、及びオーバーキャップ50を備えている。
【0021】
固定盤10は、図2に示すように、中央部に2本のステム1cを露出させる上部開口11を有する天壁12を備えている。上部開口11は、上段突起部1dに対応する形状をなし平面視でトラック状となっていて、天壁12の内縁には、上段突起部1dを取り囲むように垂下される内側環状壁13を備えている。また、内側環状壁13の下端においてその正面側及び背面側には、薄肉舌片13aを設けている。薄肉舌片13aは、固定盤10をマウンティングカップ1bに装着する前は、内側環状壁13に沿って下向きに延在するものであるが、装着によって図2に示すように径方向外側に向かって折り曲げられるものである。この点については後述する。
【0022】
天壁12の外縁には、中段突起部1eを取り囲むように垂下される中間環状壁14を設けている。中間環状壁14は、図3に示すように容器1の右側及び左側において、内側環状壁13に連続し且つ中段突起部1eに接するように形成されている。そして中間環状壁14の下端には、下段突起部1fの上面に接するとともに径方向外側に向けて延在する上部フランジ15が設けられていて、上部フランジ15の下面には、下段突起部1fと全周に亘って接する内部環状壁15aを設けている。内部環状壁15aの内面には、図2に示すように、マウンティングカップ1bの下段凹部1hに係合する凸部15bを間欠状に設けている。なお、凸部15bを、内部環状壁15aの全周に亘って設けてもよい。また、上部フランジ15の外縁には、下方に向けて延在する外側環状壁16aと、外側環状壁16aの下端から径方向外側に延在する下部フランジ16bとからなる段部16を設けていて、下部フランジ16bの外縁には、マウンティングカップ1bの外縁に向けて垂下される環状の外壁17を設けている。図3に示すように段部16には、上部フランジ15の一部、外側環状壁16a、及び下部フランジ16bの一部を切り欠く孔(係合孔)18を設けている。なお係合孔18は、固定盤10の右側及び左側の両方に設けられている。
【0023】
カバー部材20は、図3に示すように、水平方向に延在する頂壁21を備えている。頂壁21は、図1図2に示すように、正面側から背面側に亘って頂壁21を取り除く切り欠き部21aを設けていて、切り欠き部21aの内縁には、下方に向けて延在する左右で一対の内側周壁22を設けている。
【0024】
また、カバー部材20の左側及び右側には、頂壁21の外縁から下方に向けて延在する外側周壁23を設けている。外側周壁23は、図2に示すようにカバー部材20の正面側及び背面側においては、対をなす内側周壁22同士を下端において連結するとともに天壁12上を延在する内側頂壁24に連結している。なお、内側頂壁24は、中央部に上部開口11よりも開口面積が大きくなる開口24aを備えるとともに、背面側では傾斜壁24bを介して外側周壁23と連結している。また、図2に示すように内側周壁22は、内側頂壁24の上方であって容器1の中心軸線Mよりも背面側に、内側周壁22を貫通させて設けた受部22aを備えている。そして、外側周壁23の下端には、径方向外側へ向けて延在するとともに下部フランジ16bに当接する環状のフランジ25を設けている。更にフランジ25の下方には、図3に示すように、固定盤10の係合孔に対応して設けた爪部26が設けられている。爪部26の下端外側には、傾斜面26aを設けている。
【0025】
レバー30は、カバー部材20の切り欠き部21aに配置されるものであり、図1図2に示すように、板状のレバー本体31と、レバー本体31の右側、及び左側の縁部から垂下される側壁32と、レバー本体31の背面側の縁部から垂下されるとともに側壁32と一体連結する背面壁33とを備えている。ここで、レバー本体31の中央部には、開口31aを設けるとともに、レバー本体31の下面から開口31aの縁部に沿って垂下される環状の係合壁31bを設けている。本実施形態では、係合壁31bの内面に環状の凸部pを設けている。また、レバー本体31の上面における正面側の端部には、左右方向に延在する溝31c(本実施形態では3つ)を設けている。溝31cの周辺部はレバー30に押圧力を付与する際に指が当たる部位であり(以下、操作部31dと称す)、溝31cによって、押圧時の指のずれを防止することができる。なお、溝31cに代えて、又は併用して、レバー本体31の上面から突出するように設けたリブを設けてもよい。また、図3に示すように側壁32の外面には、受部22aに挿入される軸部32aが設けられている。軸部32aは、全体的に円筒状をなすものであり、端部の下端外側には傾斜面32bを設けている。また、レバー本体31と側壁32との境界には、補強リブ34を設けている。
【0026】
ノズル40は、図4に示すように、薄肉状のヒンジ41を介して下部部材42と上部部材43とを一体連結したものであり、ヒンジ41に沿って折り曲げることで、図2図3に示す形態をなすものである。
【0027】
下部部材42は、図4に示すように、板状となる基部42aの下面に、ステム1cの外径に対応する内径となる円筒状の連結筒部42bを備えていて、連結筒部42bの内側には、貫通孔42cを有する内部壁42dを備えている。なお、連結筒部42b、貫通孔42c、及び内部壁42dからなる組みは、図3を参照して明らかなように、ステム1cに対応させて総計2組設けられている。基部42aの上面には環状部42eが設けられていて、図2及び図3に示すように環状部42eは、正面側から背面側に向かう距離よりも左右間の距離が長くなっている。また、図3に示すように環状部42eの中央部には、間隔をあけて設けた一対の中間壁42fを設けている。更に基部42aの上面には、図4に示すように爪状の下部係合部42gを設けている。
【0028】
上部部材43は、ヒンジ41に沿って折り曲げることで、環状部42eを内側に収めるとともにこれに覆い被さる箱状部43aを備えている。箱状部43aの内側中央部には、箱状部43aの内側を2つに区画する仕切壁43bを設けている。また、箱状部43aの上面側(図2に示すように、ノズル40を組み立てた際の上面側)には、その先端開口を内容物の外界への吐出口43cとする縦型の注出筒43dを設けていて、注出筒43dの外面には、環状の凹部dを設けている。本実施形態では仕切壁43bを、箱状部43aと注出筒43dとの境界よりも吐出口43c側へ延長している。更に、上部部材43には、下部係合部42gに対応する爪状となる上部係合部43eを設けている。
【0029】
そして、上述したようにヒンジ41に沿って折り曲げることで、下部係合部42gと上部係合部43eとが係合して、2つ折り状態を維持することができる。また、環状部42eと箱状部43aとが嵌め合わさることで、基部42aと箱状部43aとの内側には内部空間が形成される一方、仕切壁43bは、対をなす中間壁42f間に挟まれて、この内部空間は、それぞれに貫通孔42cがつながる2つの空間に区画される。更にこの2つの空間は、仕切壁43bを越えた吐出口43c側の注出筒43dの内側において合流している。すなわち、2つ折り状態となったノズル40の内側には、下流側(貫通孔42c側)では2つに分かれ、上流側(吐出口43c)では合流して1つになる通路Rが形成されている。
【0030】
オーバーキャップ50は、図2に示すように、注出筒43dの上方において水平方向に延在する円板状の上部壁51と、上部壁51の縁部からカバー部材20のフランジ25に向けて延在する筒状の側部壁52とからなるものであり、カバー部材20、レバー30、及びノズル40を全て覆っている。なお、詳細な説明は省略するが、側部壁52の内周面には、カバー部材20の外側周壁23に設けた凸部や凹部に係合する凹部や凸部を設けていて、オーバーキャップ50は、カバー部材20に対して着脱自在に保持される。
【0031】
上記のように構成される各部材を容器に取り付けるにあたっては、まず固定盤10をマウンティングカップ1bに装着する。前述のように薄肉舌片13aは、内側環状壁13の正面側及び背面側に設けられるとともに、固定盤10をマウンティングカップ1bに装着する前では、内側環状壁13に沿って下向きに延在するものである。ここで、マウンティングカップ1bの上段突起部1d、及びこれに嵌め合わさる固定盤10の内側環状壁13は、平面視にてトラック状となるものであるので、固定盤10をマウンティングカップ1bの上方から近づけていくと、互いの向きが合っている時には、薄肉舌片13aの下端が中段突起部1eの上面に当接する高さまで固定盤10が下がることになるが、互いの向きがずれている場合には、薄肉舌片13aの先端が上段突起部1dの上面に当接して所定の高さよりも高い所に位置することとなる。すなわち、固定盤10の高さの違いで両者の向きが合っているか否かを判断することができるので、組み立て作業がより簡単になる。また、固定盤10を回転すると、両者の向きが合ったところで固定盤10が下方に移動するので、触覚をもって位置合わせの完了を知ることもできる。その後、固定盤10を押し込めば、図2に示すように薄肉舌片13aは外側へ折れ曲がり、凸部15bが下段凹部1hに係合する。
【0032】
次いで、カバー部材20を上方から、爪部26を係合孔18に位置合わせした状態で押圧し、固定盤10に装着する。ここで、爪部26は傾斜面26aを設けているので、カバー部材20を固定盤10に対して押し付けると、爪部26は傾斜面26aに誘導されて内側に撓むため、容易に取り付けることができる。また、装着完了後は、カバー部材20のフランジ25を固定盤10の段部16に当接させているので、カバー部材20は固定盤10に安定して保持される。
【0033】
その後、レバー30の軸部32aを、カバー部材20の受部22aに挿入する。図3に示すように、軸部32aには傾斜面32bを設けているので、レバー30をカバー部材20に対して上方から押し付けると、軸部32aにつながる側壁32が傾斜面32bに誘導されて内側に撓むため、容易に取り付けることができる。
【0034】
しかる後、図5に示すように、レバー30をマウンティングカップ1bから離れる向きに変位(上向き変位)させておき、開口31aに対して係合壁31bを設けた側から注出筒43dを挿入する。本実施形態では係合壁31bの内周面と注出筒43dの外周面に、互いに係合する凸部pと凹部dを設けていて、ノズル40は係合壁31bに着脱自在に保持される。なお、凸部pは間欠状でもよく、また、相互に入れ換えて設けてもよい。また、図2に示すようにノズル40を最後まで挿入することで、係合壁31bの下端、及び補強リブ34の下端は、ノズル40の箱状部43aに当接するようにしている。
【0035】
その後は、レバー30をマウンティングカップ1bに近づく向きに変位(下向き変位)させることで、ノズル40の連結筒部42bをステム1cに挿入することができる。そして、図2に示すようにオーバーキャップ50をカバー部材20に取り付けることで、ノズル40等への埃や塵の付着が有効に防止される。
【0036】
なお、上述した取り付け方法は一つの例示に過ぎず、取り付けの順序は相互に入れ換えることができる。例えば、固定盤10に、カバー部材20、レバー30、ノズル40、及びオーバーキャップ50を予め組み付けてアクチュエータ2Aを形成しておき、それを容器1に装着してもよい。
【0037】
このようにして各部材を取り付けたエアゾール容器1から内容物を吐出させるには、図6に示すように、レバー30の操作部31dに指を当ててマウンティングカップ1bに向けて押圧する。これによりレバー30は、軸部32aを中心として揺動し、係合壁31b及び補強リブ34(図3参照)によってノズル40とともに2本のステム1cを押し下げる。その結果、容器1内の2種類の内容物はそれぞれのステム1cから同時に噴出され、ノズル40の内側に形成される通路Rを通して吐出口43cから吐出される。なお、軸部32aに対する操作部31dまでの距離は、ノズル40を押圧する係合壁31bや補強リブ34までの距離よりも長くなっているので、てこの原理によって、より小さな力で内容物を吐出することができる。
【0038】
内容物の種類によっては、ノズル40内に残った内容物が固化することがあるが、本実施形態のアクチュエータ2Aでは、連結筒部42bとステム1cとの嵌合力よりも、係合壁31bと注出筒43dとの嵌合力を高めているので、図5に示すようにレバー30を上向き変位させるだけでノズル40をステム1cから取り外すことができる。また、本実施形態のノズル40は、注出筒43dが縦型であって、注出筒43dの中心軸線上に貫通孔42cを設けているので、例えば細い棒状の洗浄具を使用することでノズル40をレバー30に保持した状態であっても、ノズル40内の固化した内容物を取り除くことができる。また、ノズル40はレバー30から取り外すことが可能であり、更に、ノズル40の下部部材42及び上部部材43を、相互に離反するように開くことができるので、通路Rを簡単に洗浄することができる。
【0039】
次に、図7図11を参照して、本発明に従うエアゾール容器用アクチュエータの第二実施形態について説明する。なお、上述した第一実施形態と共通する点については、同一の符号や名称を付して説明を省略する。
【0040】
図7図9に示すように第二実施形態のアクチュエータ2Bは、第一実施形態のレバー30、オーバーキャップ50に代えて、レバー60、オーバーキャップ70を用いるものである。
【0041】
レバー60は、図8に示すように、背面側から正面側に向けて水平方向に延在するとともに、下向きに大きく湾曲しながらカバー部材20の外側周壁23の外側に突出する板状のレバー本体61を備えている。レバー本体61の右側、及び左側の縁部には、側壁62を設け、レバー本体31の背面側の縁部には、背面壁63を設けている。また、レバー本体61の中央部には、開口61aと環状の係合壁61bとを設けている。レバー本体61の正面側の端部は、カバー部材20の外側周壁23に向けて凸となるように湾曲させることで操作部61dを形成している。また、図9に示すように側壁62の外面には、軸部62a及び傾斜面62bを設けていて、レバー本体61と側壁62との境界には、補強リブ64を設けている。
【0042】
オーバーキャップ70は、図8に示すように、注出筒43dの上方において水平方向に延在する円板状の上部壁71と、上部壁71の縁部からカバー部材20のフランジ25に向けて延在するとともに、レバー本体61に沿うように設けた側部壁72とからなるものである。オーバーキャップ50と同様にオーバーキャップ70も、カバー部材20に対して着脱自在に保持される。
【0043】
そしてレバー60は、前述のレバー30と同様に、軸部62aを受部22aに挿入することで揺動可能に支持される。そして、図10に示すようにレバー60を上向き変位させることで、ノズル40を係合壁61bに着脱自在に保持することができる。
【0044】
容器1から内容物を吐出させるには、図11に示すように、レバー60の操作部61dをマウンティングカップ1bに向けて押圧することで、ノズル40とともに2本のステム1cを押し下げることができる。なお、操作部61dがカバー部材20の外側へ突出しており、軸部62aから操作部61dまでの距離は、レバー30のものよりも長くなっているので、更に小さな力で内容物を吐出することができる。また、図10に示すようにレバー60を上向き変位させれば、ノズル40は、レバー60に保持された状態でステム1cから取り外されるので、第一実施形態と同じ要領で固化した内容物を取り除くことができる。
【0045】
次に、図12図17を参照して、本発明に従うエアゾール容器用アクチュエータの第三実施形態について説明する。図12図14に示すように第三実施形態のアクチュエータ2Cは、肩カバー3Aのカバー部材20に代えてカバー部材80を用いるものであり(固定盤10とカバー部材80で肩カバー3Bを構成する)、更に、レバー30、ノズル40、及びオーバーキャップ50に代えて、レバー90、ノズル100、オーバーキャップ110を用いるものである。
【0046】
カバー部材80は、第一実施形態のカバー部材20と同様、頂壁81に切り欠き部81aを有するものであり、切り欠き部81aの内縁には、下方に向けて延在する左右で一対の内側周壁82を設けている。また、カバー部材80の左側及び右側には、頂壁81の外縁から下方に向けて延在する外側周壁83を設けていて、カバー部材80の正面側及び背面側には、対をなす内側周壁82同士を下端において連結するとともに天壁12に接する内側頂壁84を設けている。また、内側頂壁84は、中央部に開口84aを備えるとともに、開口84aの縁部には、起立壁84b(正面側に対して背面側の高さが高い)を設けている。また、内側周壁82には、切り欠き状の受部82aを設けている。そして、外側周壁83の下端には環状のフランジ85を設けている。なお、図示は省略するが、カバー部材80にも、図3で示した爪部26及び傾斜面26aに相当するものを設けている。
【0047】
レバー90は、背面側から正面側に向けて水平方向に延在し、湾曲部を介して下向きに傾斜して外側周壁83の外側に突出するレバー本体91を備えている。レバー本体91の右側、及び左側の縁部には、側壁92を設け、レバー本体91の背面側の縁部には、背面壁93を設けている。また、レバー本体61の正面側には、後述するノズル100の注出筒の外径よりも大きな開口面積となる開口91aを設けている。またレバー本体61の正面側の端部は、外側周壁83に向けて凸となるように湾曲させることで操作部91dを形成している。また、側壁92の外面には、図3に示した軸部32a及び傾斜面32bと同様の軸部92a及び傾斜面92bを設けていて、レバー本体91の下面には、下向き揺動変位によってノズル100を押し下げるリブ94を設けている。
【0048】
ノズル100は、図15に示すように、薄肉状のヒンジ101を介して下部部材102と上部部材103とを一体連結したものであり、ヒンジ101に沿って折り曲げることで、図13に示す形態をなすものである。
【0049】
下部部材102は、図15に示すように、板状となる基部102aの下面に、円筒状の連結筒部102bを備えていて、連結筒部102bの内側には、貫通孔102cを有する内部壁102dを備えている。基部102aの上面には環状部102eが設けられていて、環状部102eは、正面側から背面側に向かう距離よりも左右間の距離が長くなっている。また、環状部102eの中央部には、前述の中間壁42fと同様の構成となる中間壁102fを設けている。更に基部102aの上面には、爪状の下部係合部102gを設けている。
【0050】
上部部材103は、ヒンジ101に沿って折り曲げることで、環状部102eを内側に収めて覆い被さる箱状部103aを備えている。箱状部103aの内側中央部には、箱状部103aの内側を2つに区画する仕切壁103bを設けている。また、箱状部103aの正面側(図13に示すように、ノズル100を組み立てた際の正面側)には、先端開口を吐出口103cとする横型(本実施形態では上方に向けて傾斜している)の注出筒103dを設けている。ここで仕切壁103bは、箱状部103aと注出筒103dとの境界よりも吐出口103c側へ延長している。また、上部部材103には、下部係合部102gに対応する爪状となる上部係合部103eを設けている。更に、箱状部103aの上面側(図13に示すように、ノズル100を組み立てた際の上面側)には、側面視で半円状になる半円リブ103fが、レバー90のリブ94に対応する位置に設けられている。
【0051】
そして、上述したようにヒンジ101に沿って折り曲げることで、下部係合部102gと上部係合部103eとが係合して、2つ折り状態を維持することができる。また、環状部102eと箱状部103aとが嵌め合わさることで、ノズル100の内側には、下流側では2つに分かれ、上流側では合流して1つになる通路Rが形成されている。
【0052】
オーバーキャップ110は、図13に示すように、レバー90及びノズル100の上方において水平方向に延在する板状の上部壁111と、上部壁111の縁部からカバー部材80のフランジ85に向けて延在するとともに、レバー本体91及び注出筒103dを取り囲むように設けた側部壁112とからなるものである。オーバーキャップ50と同様にオーバーキャップ110も、カバー部材20に対して着脱自在に保持される。
【0053】
このようなカバー部材80も、第一実施形態と同様の要領で、固定盤10に装着することができる。またレバー90も、軸部92aを受部82aに挿入することで揺動可能に支持される。そして、図16に示すようにレバー90を上向き変位させることで、ノズル100をステム1cに装着することができる。
【0054】
容器1から内容物を吐出させるには、図17に示すように、レバー90の操作部91dをマウンティングカップ1bに向けて押圧することで、レバー90のリブ94が半円リブ103fに押し当たり、ノズル100とともに2本のステム1cを押し下げることができる。そして、図16に示すようにレバー90を上向き変位させれば、ノズル100がむき出しになるので、ステム1cから簡単に取り外すことができる。また、ノズル40と同様、ノズル100も、下部部材102及び上部部材103を相互に離反するように開くことができるので、通路Rを簡単に洗浄することができる。
【0055】
本発明に従うエアゾール容器用アクチュエータは、前述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に従う範囲で種々の変更が可能である。例えば、カバー部材の受部とレバーの軸部とを相互に入れ換えて、カバー部材に軸部を設け、レバーに受部を設けてもよい。また受部は、貫通孔に限られず、肉厚を部分的に薄くした凹部であってもよい。また、固定盤及びカバー部材の2つの部材で肩カバーを構成したが、これを1つの部材で構成してもよい。また、ノズルに設けた仕切壁は、前述の実施形態では、箱状部の内側を2つに区画するとともに注出筒の根元を越えた部位まで延在しているが、内容物の種類によっては、更に吐出口まで延在させて、ノズルの内側の通路を全域に亘って2つに分けても、また、仕切壁を取り除いてノズルの内部全体を1つの通路にしてもよい。更に、前述のアクチュエータは、2本のステムを有する容器に装着するように構成したが、シングルタイプの容器や二連式タイプの容器に採用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によれば、操作性が良く使い勝手に優れる上、ノズルを簡単に取り外すことができるので洗浄にかかる手間を省くことができ、また、構造も簡素化される、新たなエアゾール容器用アクチュエータを提供できる。
【符号の説明】
【0057】
1 エアゾール容器(容器)
1a 容器本体
1b マウンティングカップ
1c ステム
1d 上段突起部
1e 中段突起部
1f 下段突起部
1g 中段凹部
1h 下段凹部
2A、2B、2C アクチュエータ
3A、3B 肩カバー
10 固定盤
11 上部開口
12 天壁
13 内側環状壁
13a 薄肉舌片
14 中間環状壁
15 上部フランジ
15a 内部環状壁
15b 凸部
16 段部
16a 外側環状壁
16b 下部フランジ
17 外壁
18 係合孔
20 カバー部材
21 頂壁
21a 切り欠き部
22 内側周壁
22a 受部
23 外側周壁
24 内側頂壁
24a 開口
24b 傾斜壁
25 フランジ
26 爪部
26a 傾斜面
30 レバー
31 レバー本体
31a 開口
31b 係合壁
31c 溝
31d 操作部
32 側壁
32a 軸部
32b 傾斜面
33 背面壁
34 補強リブ
40 ノズル
41 ヒンジ
42 下部部材
42a 基部
42b 連結筒部
42c 貫通孔
42d 内部壁
42e 環状部
42f 中間壁
42g 下部係合部
43 上部部材
43a 箱状部
43b 仕切壁
43c 吐出口
43d 注出筒
43e 上部係合部
50 オーバーキャップ
51 上部壁
52 側部壁
60 レバー
61 レバー本体
61a 開口
61b 係合壁
61d 操作部
62 側壁
62a 軸部
62b 傾斜面
63 背面壁
64 補強リブ
70 オーバーキャップ
71 上部壁
72 側部壁
80 カバー部材
81 頂壁
81a 切り欠き部
82 内側周壁
82a 受部
83 外側周壁
84 内側頂壁
84a 開口
84b 起立壁
85 フランジ
90 レバー
91 レバー本体
91a 開口
91d 操作部
92 側壁
92a 軸部
92b 傾斜面
93 背面壁
94 リブ
100 ノズル
101 ヒンジ
102 下部部材
102a 基部
102b 連結筒部
102c 貫通孔
102d 内部壁
102e 環状部
102f 中間壁
102g 下部係合部
103 上部部材
103a 箱状部
103b 仕切壁
103c 吐出口
103d 注出筒
103e 上部係合部
103f 半円リブ
110 オーバーキャップ
111 上部壁
112 側部壁
M エアゾール容器の中心軸線
R ノズルの通路
d 注出筒の凹部
p 係合壁の凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17