特許第6362852号(P6362852)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362852
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】移動型X線診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20180712BHJP
【FI】
   A61B6/00 310
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-240209(P2013-240209)
(22)【出願日】2013年11月20日
(65)【公開番号】特開2015-97728(P2015-97728A)
(43)【公開日】2015年5月28日
【審査請求日】2016年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】有川 信弘
(72)【発明者】
【氏名】西墻 俊一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤田 直也
【審査官】 松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−061944(JP,A)
【文献】 特開2002−045353(JP,A)
【文献】 特開2006−204351(JP,A)
【文献】 特開2004−313739(JP,A)
【文献】 特開2002−102214(JP,A)
【文献】 特開2005−058347(JP,A)
【文献】 特開2010−273827(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0093298(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線管によるX線の発生を制御する本体部と、
前記本体部に設けられ、前記本体部の走行時に操作される走行操作部と、
前記走行操作部とは異なる側に設けられ、前記本体部の走行を制御するための操作を受け付ける2つのフットスイッチと、
を備え、
前記2つのフットスイッチは、離間して配置され、前記X線管を支持する支持機構の状態がX線画像の撮影時に設定される状態であるときに、それぞれ異なる方向へ走行するための操作を受け付けることを特徴とする移動型X線診断装置。
【請求項2】
X線管によるX線の発生を制御する本体部と、
前記本体部に設けられ、前記本体部の走行時に操作される走行操作部と、
前記本体部から移動可能に設けられ、前記本体部の走行を制御するための操作を受け付ける2つのフットスイッチを含む移動型フットスイッチと、
を備え、
前記2つのフットスイッチは、離間して配置され、前記X線管を支持する支持機構の状態がX線画像の撮影時に設定される状態であるときに、それぞれ異なる方向へ走行するための操作を受け付けることを特徴とする移動型X線診断装置。
【請求項3】
前記X線管を支持する支持機構の状態に基づいて、前記2つのフットスイッチが前記本体部の走行を制御するための操作を受け付けるか否かを制御する制御部をさらに備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の移動型X線診断装置。
【請求項4】
前記2つのフットスイッチは、前記支持機構が前記本体部の走行時に設定される状態である場合に、バンパーとして機能するように設けられることを特徴とする請求項1〜のいずれか1つに記載の移動型X線診断装置。
【請求項5】
前記2つのフットスイッチによって受け付けられる操作に対する前記本体部の走行の速度及び移動量のうち少なくとも一方が制御されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の移動型X線診断装置。
【請求項6】
前記2つのフットスイッチは、対応する走行方向を識別するための情報が付加されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の移動型X線診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、移動型X線診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、病室などに移動させてX線画像を撮影する移動型X線診断装置が知られている。例えば、移動型X線診断装置は、X線を発生するX線管と、X線管が発生したX線の照射野を調節するX線可動絞りと、X線管及びX線可動絞りを支持する支持機構と、移動型X線診断装置の各種制御を実行する装置本体と、装置を移動するための車輪を備える。そして、移動型X線診断装置は、操作者によって病室まで移動され、病室内のベッド上にいて簡単に身動きできない患者(例えば、点滴中、寝たきり、両足負傷による歩行困難など)に対してX線画像の撮影を実行する。そして、移動型X線診断装置は、X線画像の撮影が終了すると、病室の外に移動させられる。しかしながら、上述した従来技術においては、撮影時の操作性が低下する場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−61944号公報
【特許文献2】特開2002−45353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、撮影時の操作性を向上させることを可能にする移動型X線診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施の形態の移動型X線診断装置は、本体部と、走行操作部と、2つのフットスイッチとを備える。本体部は、X線管によるX線の発生を制御する。走行操作部は、前記本体部に設けられ、前記本体部の走行時に操作される。2つのフットスイッチは、前記走行操作部とは異なる側に設けられ、前記本体部の走行を制御するための操作を受け付ける。前記2つのフットスイッチは、離間して配置され、前記X線管を支持する支持機構の状態がX線画像の撮影時に設定される状態であるときに、それぞれ異なる方向へ走行するための操作を受け付ける。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1の実施形態に係る移動型X線診断装置の全体構成の一例を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る移動型X線診断装置によるX線画像の撮影について説明するための図である。
図3図3は、従来技術に係る移動型X線診断装置を用いたX線画像の撮影の一例を示す図である。
図4図4は、第1の実施形態に係るフットスイッチの一例を示す図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る操作スイッチの一例を示す図である。
図6図6は、第1の実施形態に係る移動型フットスイッチの一例を示す図である。
図7図7は、第1の実施形態に係る制御部によるフットスイッチの制御を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照して、移動型X線診断装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下では、本願に係る移動型X線診断装置として、X線管を支持する支持機構に支柱とアームとが用いられる移動型X線診断装置を例に挙げて説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
まず、図1を用いて、第1の実施形態に係る移動型X線診断装置の全体構成の一例を説明する。図1は、第1の実施形態に係る移動型X線診断装置1の全体構成の一例を示す図である。図1に示すように、移動型X線診断装置1は、支柱2と、アーム3と、X線管4と、X線可動絞り5と、前輪6と、後輪7と、操作ハンドル8と、装置本体9と、ベース部10と、フットスイッチ11とを備える。
【0009】
支柱2は、図1に示すように、移動型X線診断装置1の前側(前輪6側)に配置され、アーム3の一端が連結されることで、アーム3を支持する。そして、支柱2は、矢印21に示すように旋回することで、アーム3を任意の方向に向けることができる。アーム3は、一端が支柱2と連結され、他端にX線管4とX線可動絞り5とが配置される。ここで、アーム3は、支柱2に対して上下に自在にスライドするように連結される。例えば、支柱2にレールが設置され、アーム3は一端がレールと連結されてレール上を移動することにより、矢印22に示すように、上下にスライドする。また、アーム3は、矢印23に示すように、支柱2の長軸に直交する方向に伸縮する。例えば、アーム3は中空の相似形の四角柱が重なりあった構造を有し、外側の四角柱のアーム内部を大きさが小さい内側の四角柱のアームがスライドすることにより、矢印23に示す方向に伸縮する。
【0010】
X線管4は、装置本体9に含まれる高電圧発生部(不図示)と接続され、高電圧発生部から供給される高電圧を用いて、X線を発生する。X線可動絞り5は、例えば二対の可動制限羽根を有し、各対における可動制限羽根が開閉することでX線の照射野を調整する。すなわち、X線可動絞り5は、X線管4によって円錐状に発せられたX線が所定の照射野に照射されるように可動制限羽根が開閉される。ここで、X線可動絞り5は、例えば、図1に示すように、絞りハンドル51と、操作部52と、絞り調整つまみ53とを備え、操作者によってこれらが操作されることで、X線の照射野の調整が行なわれる。
【0011】
例えば、絞りハンドル51は、操作者によって把持され、X線可動絞り5の下面に設けられたX線照射部分が患者の撮影部位に位置するように移動される。ここで、移動型X線診断装置1においては、矢印21〜23の動きに加えて、X線管4及びX線可動絞り5が、矢印24に示すように、アーム3の長手方向を軸として旋回する。さらに、X線可動絞り5が、X線管4との接合部を軸として、矢印25に示すように旋回する。すなわち、移動型X線診断装置1においては、各部位が矢印21〜25で示すように動くことによって、操作者によるX線照射部分の撮影部位への位置合わせを行なうことが可能である。そして、操作者は、X線照射部位を撮影部位に合わせた後、絞り調整つまみ53を操作することでX線の照射野を調整したり、操作部52を操作することでX線画像の撮影に係る各種設定を行なったりする。
【0012】
前輪6は、旋回自在の車輪であり、例えば、一対のキャスターなどである。後輪7は、図示しないモータなどが連結された駆動輪であり、操作者による操作に応じて駆動する。一例を挙げると、後輪7は、操作ハンドル8付近に配置された駆動ボタンが押下されることによりモータが駆動し、モータによる動力によって駆動する。また、後輪7は、フットスイッチ11によっても駆動が制御される。なお、フットスイッチ11による駆動については後に詳述する。
【0013】
操作ハンドル8は、操作者が移動型X線診断装置1を移動させる際に操作されるハンドルである。例えば、操作者は、操作ハンドル8を握った状態で操作レバーを握ることでブレーキが解除され、移動型X線診断装置1を前進させたり、後進させたりすることができる。或いは、操作ハンドル8が圧力センサを備え、操作者によって操作される方向(例えば、ハンドルを押している場合に前進、ハンドルを引いている場合に後進など)を検知して、モータを所望の方向に駆動させることも可能である。なお、移動型X線診断装置1は、上記した操作レバーが放されたり、或いは、圧力センサによる検知が無くなったりすると、ブレーキがかかるように制御される。
【0014】
装置本体9は、移動型X線診断装置1の各部を制御する制御部、各種データを記憶する記憶部、外部から供給される電力を蓄電するバッテリ、種々の操作を受け付ける操作部、及び、種々の情報を表示する表示部などを有する。そして、装置本体9は、移動型X線診断装置1の移動に関する各種処理及びX線画像の撮影に関する各種処理の制御を実行する。例えば、装置本体9は、装置本体9の上面に配置された操作部、或いは、X線可動絞り5に備えられた操作部52から転送された操作者の指示に従って高電圧発生部を制御し、X線管4に供給する電圧を調整することで、患者に対して照射されるX線量やON/OFFを制御する。また、例えば、装置本体9は、操作者の指示に従ってX線可動絞り5を制御し、X線可動絞り5が有する可動制限羽根の開度を調整することで、患者に対して照射されるX線の照射野を制御する。
【0015】
また、装置本体9は、操作者の指示に従って、画像データ生成処理や、画像処理、あるいは解析処理などを制御する。また、装置本体9は、操作者の指示を受け付けるためのGUIや記憶部が記憶する画像などを、表示部のディスプレイに表示するように制御する。ベース部10は、装置本体9及びX線管4を支持する支持機構である支柱2やアーム3を搭載するためベースである。
【0016】
以上、第1の実施形態に係る移動型X線診断装置1の全体構成について説明した。以下、移動型X線診断装置1を用いたX線画像の撮影の流れの一例を説明する。図2は、第1の実施形態に係る移動型X線診断装置1によるX線画像の撮影について説明するための図である。図2においては、図2の(A)がX線管の待機時(移動時)の状態を示し、図2の(B)がX線画像の撮影時の状態を示す。例えば、移動型X線診断装置1は、待機時には病院の各フロアの廊下などに置かれ、バッテリの蓄電容量に応じて充電される。そして、使用時には、移動型X線診断装置1は、専用の鍵などによりロックが解除され、操作者が操作ハンドル8を操作するとともに、操作レバー(或いは、圧力センサなど)により後輪7を駆動させることで病室などに移動される。
【0017】
ここで、上述したような待機時や、移動時(走行時)においては、移動型X線診断装置1は、図2の(A)に示すように、アーム3が、リア方向(装置本体9の方向)に向けられて収縮し、X線管4が突き出ないように収納される。ここで、操作者の前方の視界を確保するために、アーム3ができる限り下に下げられた状態でX線管4が収納される。
【0018】
そして、病室に移動すると、操作者は、図2の(B)に示すように、長手方向を軸に支柱2を旋回させてアーム3を収納位置から所望の方向(例えば、装置本体9の横方向や、フロント方向など)に向けることで、X線管4及びX線可動絞り5を撮影に適した方向に向ける。そして、操作者は、アーム3を伸ばしてX線管4及X線可動絞り5を引き出すことで、患者の撮影部位にX線が照射される位置にX線管4を配置する。ここで、操作者は、X線可動絞り5に備えられた絞り調整つまみ53を用いて、撮影部位が照射野に入るように調節する。そして、FPD(Flat Panel Detector)や、カセッテなどの画像記録媒体が患者の撮像部位とベッドとの間にセットされ、X線画像が撮影される。
【0019】
このように、移動型X線診断装置1は、使用時に患者のいる病室に移動され、撮影部位に対してX線管4の位置及び照射野が調整されてX線画像が撮影されるが、かかる撮影に際して、操作者が装置のフロント側とリア側とを何度も行き来する場合が生じ、手間がかかるという問題が従来から挙げられていた。図3は、従来技術に係る移動型X線診断装置を用いたX線画像の撮影の一例を示す図である。ここで、図3においては、移動型X線診断装置が患者のいる部屋に移動された後の状態について示す。
【0020】
例えば、操作者は、移動型X線診断装置によってX線画像を撮影する際に、図3に示すように、患者のベッドサイドに移動型X線診断装置を移動させる。ここで、操作者は、リア側にある操作ハンドルを操作することで移動型X線診断装置を移動させるが、図3に示すように、移動型X線診断装置の位置を、X線画像の撮影位置を考慮しながら、まず目測で位置決めする。そして、操作者は、フロント側に移動して絞りハンドルを把持して操作することでX線可動絞りにあるX線照射部分を撮影位置にあわせる。
【0021】
ここで、X線照射部分が撮影位置にあう場合は、操作者は、その後の絞りの調整などの操作を行なう。しかしながら、目測での位置決めは必ずしも合っているとは限らず、実際に撮影したい位置(撮影位置)にX線照射部分を配置できない場合がある。例えば、アームを伸ばしても、撮影位置に届かない場合などがある。かかる場合には、操作者は、フロント側からリア側に回って、操作ハンドルを操作することで移動型X線診断装置を移動させることとなる。従って、従来の移動型X線診断装置においては、X線照射部分が撮影部分にあわせられるようになるまで、操作者がリア側とフロント側とを行き来することとなり、操作者に煩わしさを与えてしまう。そして、上記した移動型X線診断装置の再配置のために時間の無駄が発生していた。
【0022】
そこで、このような問題に対して、フロント側とリア側との行き来を少なくするために、フロント側の操作ハンドルであるフロントハンドルが支柱に配置されて使用するような移動型X線診断装置が考えられる。これにより、例えば、移動時にリア側に移動することなく、移動型X線診断装置を移動させることができる。しかしながら、上述した従来技術では、フロントハンドルに圧力センサが設けられ、圧力センサの感知に応じて駆動輪が駆動するように制御されるために、フロントハンドルの向きが変わった場合(支柱が旋回した場合)に、操作感が直感的に分かりにくく、操作性が低下する。
【0023】
また、従来技術においては、X線可動絞り部分に装置の走行を制御するスイッチを備えた移動型X線診断装置も知られている。しかしながら、かかる移動型X線診断装置は、X線可動絞り部分にスイッチが配置されているため、患者が寝ているベッドを挟んで移動型X線診断装置とは反対側に立って操作する場合には操作しやすいが、移動型X線診断装置と同じ側に立って操作する場合には操作しにくく、操作性が低下する。例えば、図3に示すように、操作者が、患者が寝ているベッドに対して装置と同じ側に立って操作する場合、X線可動絞り5の矢印25の位置は、撮影部位に対して合わせるため、X線可動絞り5の操作部52が操作者に正対する位置とはならず、スイッチに手が届かない、又は、スイッチが操作しにくいという状況となり、位置合わせに手間がかかり、操作性が低下する。移動型X線診断装置が用いられる環境は、狭い病室などであることから、撮影に十分なスペースがなく、図3のような環境となる場合が多く、多くの場合で位置合わせに手間がかかり、操作性が低下する可能性がある。
【0024】
このように、従来技術においては、移動型X線診断装置によるX線画像の撮影に際して、操作性が低下する場合があった。そこで、本願にかかる移動型X線診断装置1は、フロント側での装置の移動を容易に行なわせることができるフットスイッチを設けることで、撮影時の操作性を向上させることを可能にする。以下、フットスイッチ11の詳細について説明する。
【0025】
第1の実施形態に係るフットスイッチ11は、操作ハンドル8とは異なる側であり、かつ、装置本体9(移動型X線診断装置1)を走行させるための車輪側に設けられ、装置本体9の走行を制御するための操作を受け付ける。具体的には、フットスイッチ11は、操作ハンドル8の対向する側のベース部10に設けられる。図4は、第1の実施形態に係るフットスイッチ11の一例を示す図である。ここで、図4においては、移動型X線診断装置1の上面図を示す。例えば、フットスイッチ11は、図4に示すように、移動型X線診断装置1のフロント側のベース部10に2つ設置される。
【0026】
そして、2つのフットスイッチ11は、一方が前進(フロント側への移動)に対応し、他方が後進(リア側への移動)に対応する。すなわち、前進に対応するフットスイッチ11が操作者によって踏まれると、当該フットスイッチ11は、移動型X線診断装置1が前進するように後輪7を制御させる。また、後進に対応するフットスイッチ11が操作者によって踏まれると、当該フットスイッチ11は、移動型X線診断装置1が後進するように後輪7を制御させる。なお、図4に示すフットスイッチ11は、あくまでも一例であり、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、ベース部10におけるフットスイッチ11の位置や、スイッチの形状、機構などは任意に変更することが可能である。
【0027】
ここで、各フットスイッチ11は、移動型X線診断装置1の走行を制御するための操作(例えば、操作者によって踏まれるなどの操作)を受け付けた場合の当該移動型X線診断装置1の走行方向を示す情報を持たせることも可能である。すなわち、フットスイッチ11それぞれが、移動型X線診断装置1を前進させるのか、或いは、後進させるのかを示す情報を付加させることも可能である。例えば、各フットスイッチ11が、それぞれ異なる色で示されたり、各フットスイッチ11に走行方向を示すマークや、文字などが付加されたりする。
【0028】
これにより、操作者は、リア側にある操作ハンドル8を操作して、移動型X線診断装置1を目測で患者のベッドサイドに配置させた後、フロント側に移動して、絞りハンドル51を把持してX線照射部分を撮影位置に合わせる際に位置が合わなかった場合であっても、その場でフットスイッチ11を操作することで移動型X線診断装置1を所望の位置に移動させることができる。さらにこの操作は、絞りハンドル51を把持したまま行なうことができ、装置の移動と位置合わせを同時に行なうことができ、位置合わせにかかる時間を短縮することが可能である。
【0029】
第1の実施形態に係る移動型X線診断装置1は、上述したように、装置のフロント側にフットスイッチ11が設けられ、撮影に係る操作性を向上させることができる。ここで、移動型X線診断装置1は、フットスイッチ11に加えて、その他の操作スイッチを設けることも可能である。具体的には、移動型X線診断装置1は、フロント側に移動型X線診断装置1を移動させるための操作スイッチを設けることができる。
【0030】
図5は、第1の実施形態に係る操作スイッチ12の一例を示す図である。ここで、図5においては、(A)が移動型X線診断装置1の上面図を示し、(B)が支柱2及びアーム3を側面から見た場合の図を示す。例えば、図5の(A)に示すように、操作スイッチ12は、支柱2や、アーム3に設けられる。図5の(A)においては、前進に対応する操作スイッチ12と後進に対応する操作スイッチ12とが対になって4箇所に設けられている。すなわち、各対の操作スイッチ12によって移動型X線診断装置1を前進させたり、後進させたりすることができる。操作者は、自身が立っている位置から近い操作スイッチ12を操作することで移動型X線診断装置1を移動させることが可能である。
【0031】
ここで、操作スイッチ12は、操作者がフロント側に立って操作した場合に操作しやすい位置であればどこに設けられてもよい。例えば、図5の(B)に示すように、アーム3のアーム部分や、支柱2との連結部分にそれぞれ設けられる。そして、各操作スイッチ12は、図5の(B)に示すように、異なる高さとなるように各部分に設置される。これにより、操作者は、フロント側で操作している際に、アーム3の高さ及び自身の位置にかかわらず、操作スイッチ12を操作することができる。
【0032】
上述したように、第1の実施形態に係る移動型X線診断装置1は、ベース部10にフットスイッチ11を備え、装置のフロント側に操作スイッチ12を備えることが可能である。ここで、移動型X線診断装置1は、ベース部10に設けられるフットスイッチ11とは異なるフットスイッチを備えることも可能である。具体的には、移動型X線診断装置1は、装置本体9から離れた位置に配置可能となるようなフットスイッチを備えることが可能である。
【0033】
図6は、第1の実施形態に係る移動型フットスイッチ13の一例を示す図である。ここで、図6においては、移動型X線診断装置1の上面図を示す。例えば、移動型フットスイッチ13は、図6に示すように、2つのスイッチ部13aと、ガード部13bとを有し、ケーブルを介して装置本体9と接続される。各スイッチ部13aは、一方が前進に対応し、他方が後進に対応する。すなわち、スイッチ部13aは、操作者によって踏まれると、移動型X線診断装置1を前進、或いは後進させるための制御信号を、ケーブルを介して装置本体9に送る。装置本体9は、受信した制御信号に応じて、移動型X線診断装置1を移動させるように後輪7を制御する。
【0034】
ガード部13bは、操作者による誤操作(誤ってスイッチ部13aを踏んでしまう等)を防止するためのガードである。移動型フットスイッチ13は、例えば、移動型X線診断装置1の収納場所に収納され、装置が患者のベッドサイドに配置された後に取り出され、操作者が所望する位置で用いられる。これにより、ベース部10から離れた位置でも移動型X線診断装置1を移動させることができ、撮影時の操作性をより向上させることができる。なお、図6に示す移動型フットスイッチ13は、あくまでも一例であり、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、移動型フットスイッチ13の形状や、機構などは任意に変更することが可能である。また、装置本体9との接続は、ケーブルを介さず、無線により制御信号を送ることも可能である。
【0035】
上述したように、第1の実施形態に係る移動型X線診断装置1は、ベース部10に設けられるフットスイッチ11や、フロント側に設けられる操作スイッチ12、移動型フットスイッチ13を適宜備えることが可能である。なお、設置されるスイッチの組み合わせは任意に選択することができ、例えば、フットスイッチ11、操作スイッチ12及び移動型フットスイッチ13を全て備える場合であってもよく、或いは、フットスイッチ11のみ、移動型フットスイッチ13のみを備える場合であってもよい。
【0036】
ここで、第1の実施形態に係る移動型X線診断装置1においては、ベース部10にフットスイッチ11が備えられる場合に、ベース部10のフットスイッチ11部分がバンパーとして用いることが可能である。すなわち、従来の移動型X線診断装置においては、ベース部の側面がバンパーとして機能しているものがある。そこで、本実施形態に係る移動型X線診断装置1においても、ベース部10をバンパーとして機能させるようにフットスイッチ11が設けられる。
【0037】
かかる場合には、例えば、移動型X線診断装置1の制御部が、X線管4を支持する支持機構の状態に基づいて、フットスイッチ11が装置本体9の走行を制御するための操作を受け付けるか否かを制御する。一例を挙げると、フットスイッチ11は、支持機構が装置本体9の走行時に設定される状態である場合に、バンパーとして機能するように設けられ、支持機構が装置本体9によるX線画像の撮影時に設定される状態である場合に、装置本体9の走行を制御するための操作を受け付けるように制御部によって制御される。
【0038】
図7は、第1の実施形態に係る制御部14によるフットスイッチ11の制御を説明するための図である。例えば、制御部14は、図7の(A)に示すように、待機時や移動時などでアーム3が装置本体9側に収納されている場合には、スイッチ群の機能をOFF状態にすることで、ベース部10の前部をバンパーとして機能させる。すなわち、仮にベース部10が壁などにぶつかってフットスイッチ11が押された場合でも、スイッチの機能がOFFとなっているために装置の移動に関わる制御が行なわれず、単にバンパーとして機能することとなる。
【0039】
一方、例えば、図7の(B)に示すように、撮影時などで支柱2が旋回することでアーム3が装置本体9とは異なる方向を向いている場合には、制御部14は、スイッチ群の機能をON状態にすることで、ベース部前部をフットスイッチ11として機能させる。これにより、フットスイッチ11は、撮影時にのみ利用可能となり、撮影時以外の誤作動を防止して、安全に利用させることが可能である。
【0040】
ここで、上述した支柱2やアーム3などの支持機構の状態に基づくスイッチの機能のON状態と、OFF状態との切り替えは、フットスイッチ11に対してだけではなく、操作スイッチ12及び移動型フットスイッチ13に対しても適用される。すなわち、制御部14は、支柱2やアーム3などの支持機構の状態によって、操作スイッチ12及び移動型フットスイッチ13の機能をON状態とOFF状態とを切り替えるように制御する。これにより、操作スイッチ12及び移動型フットスイッチ13についても撮影時にのみ利用可能となり、撮影時以外の誤作動を防止して、安全に利用させることが可能である。
【0041】
さらに、移動型X線診断装置1においては、フットスイッチ11、操作スイッチ12、及び移動型フットスイッチ13を操作した際の移動型X線診断装置1の速度や移動量が制御される。具体的には、フットスイッチ11、操作スイッチ12、及び移動型フットスイッチ13によって受け付けられる操作に対する移動型X線診断装置1の走行の速度及び移動量のうち少なくとも一方が制御される。ここで、かかる制御は、制御部14によって実行される。
【0042】
例えば、制御部14は、フットスイッチ11に対する操作者の踏み込みの程度に基づいて、移動型X線診断装置1の移動速度や移動量を制御する。一例を挙げると、制御部14は、フットスイッチ11の踏み込み量に比例して、移動速度や移動量を上げるように制御する。或いは、制御部14は、フットスイッチ11の踏み込みの程度に関係なく移動速度を一定とし、踏み込み回数に応じて移動量を制御する(例えば、1回の踏み込みで20cm移動など)。または、制御部14は、フットスイッチ11が踏まれている間、一定の速度で移動するように制御する。
【0043】
なお、これらの移動速度や移動量は、操作者によって任意に設定することができる。また、制御方法についても、例えば、上記した3つの制御の中から操作者によって選択されるようにしてもよい。また、上記した3つの制御方法は、あくまでも一例であり、実施形態はこれに限定されるものではなく、その他種々の方法で制御される場合であってよい。また上述した例では、フットスイッチ11によって受け付けられる操作に対して制御する場合を例に挙げて説明したが、上述した制御は、操作スイッチ12及び移動型フットスイッチ13によって受け付けられる操作に対して実行される場合であってもよい。
【0044】
上述したように、第1の実施形態によれば、装置本体9は、X線管4によるX線の発生を制御する。操作ハンドル8は、装置本体9に設けられ、装置本体9の走行時に操作される。フットスイッチ11及び移動型フットスイッチ13は、操作ハンドルとは異なる側であり、かつ、装置本体9を走行させるための車輪側に設けられ、移動型X線診断装置1の走行を制御するための操作を受け付ける。従って、第1の実施形態に係る移動型X線診断装置1は、フットスイッチ11或いは移動型フットスイッチ13が装置のフロント側で足による操作を受け付けることで、操作者がリア側に移動することなく、装置を移動させることができ、撮影時の煩わしさを解消して、操作性を向上させることを可能にする。さらに、移動型X線診断装置1は、フロント側とリア側との行き来をなくすことで、X線画像の撮影にかかる時間を短縮することができ、患者に対する負荷を低減させるとともに、診断効率を向上させることを可能にする。
【0045】
また、第1の実施形態によれば、フットスイッチ11は、操作ハンドル8の対向する側のベース部10に設けられる。従って、第1の実施形態に係る移動型X線診断装置1は、装置のフロント側での装置の移動を、足を使って容易に行なうことを可能にする。
【0046】
また、第1の実施形態によれば、移動型フットスイッチ13は、装置本体9から離れた位置に配置可能となるように構成される。従って、第1の実施形態に係る移動型X線診断装置1は、操作者が操作しやすい位置で移動型フットスイッチ13を操作することができ、煩わしさをより解消して、操作性をさらに向上させることを可能にする。
【0047】
また、第1の実施形態によれば、制御部14は、X線管4を支持する支持機構の状態に基づいて、フットスイッチ11、操作スイッチ12及び移動型フットスイッチ13が移動型X線診断装置1の走行を制御するための操作を受け付けるか否かを制御する。従って、第1の実施形態に係る移動型X線診断装置1は、状況に応じてスイッチ機能のON状態とOFF状態とを切り替えることができ、より安全に装置を操作することを可能にする。
【0048】
また、第1の実施形態によれば、フットスイッチ11は、支持機構が移動型X線診断装置1の走行時に設定される状態である場合に、バンパーとして機能するように設けられ、支持機構が移動型X線診断装置1によるX線画像の撮影時に設定される状態である場合に、移動型X線診断装置1の走行を制御するための操作を受け付けるように制御部14によって制御される。従って、第1の実施形態に係る移動型X線診断装置1は、状況に応じてスイッチ機能とバンパー機能とを使い分けることを可能にする。
【0049】
また、第1の実施形態によれば、フットスイッチ11、操作スイッチ12及び移動型フットスイッチ13によって受け付けられる操作に対する移動型X線診断装置1の走行の速度及び移動量のうち少なくとも一方が制御される。従って、第1の実施形態に係る移動型X線診断装置1は、より安全で使いやすいスイッチを提供することを可能にする。
【0050】
(第2の実施形態)
さて、これまで第1の実施形態について説明したが、上述した第1の実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0051】
上述した第1の実施形態においては、支柱2やアーム3などの支持機構の状態によってフットスイッチ11、操作スイッチ12及び移動型フットスイッチ13の機能のON状態とOFF状態とを切り替える場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、装置本体9で制御される撮影にかかるモードの状態(例えば、装置が撮影モードになっているか否か)に基づいて、フットスイッチ11、操作スイッチ12及び移動型フットスイッチ13の機能のON状態とOFF状態とを切り替える場合であってもよい。
【0052】
また、上述した第1の実施形態においては、フットスイッチ11がベース部10の前面に設けられる場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、フットスイッチ11がフロント側のベース部10の側面に設けられる場合であってもよい。
【0053】
また、上述した第1の実施形態では、フットスイッチ11と、移動型フットスイッチ13とがそれぞれ独立している場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、フットスイッチ11がベース部10から取り外されて、移動型フットスイッチ13として機能する場合であってもよい。
【0054】
また、上述した第1及び第2の実施形態では、支柱2を有する移動型X線診断装置を一例に挙げて説明したが、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、図1などに示す縦支柱/横支柱の移動型X線診断装置1とは異なる移動型X線診断装置(例えば、折り畳み支柱を有する移動型X線診断装置や、縦支柱及び折り畳み支柱を有する移動型X線診断装置など)に本願のフットスイッチ11や、操作スイッチ12及び移動型フットスイッチ13を適用する場合であってもよい。
【0055】
また、上述した第1及び第2の実施形態において、説明した構成はあくまでも一例であり、本願にかかる移動型X線診断装置1は、種々の構成を有することができる。例えば、図1に示す装置本体9や、X線管4、X線可動絞り5などの形状は、任意の形状であってよい。また、装置本体9に備えられるものとして説明した構成は、任意に配置を変えることができる。例えば、装置本体9に備えられるものとした高電圧発生部は、X線管4を含むボックス内に配置する場合であってもよい。
【0056】
以上説明したとおり、第1及び第2の実施形態によれば、本実施形態の移動型X線診断装置は、撮影時の操作性を向上させることを可能にする。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0058】
1 移動型X線診断装置
2 支柱
3 アーム
4 X線管
8 操作ハンドル
9 装置本体
10 ベース部
11 フットスイッチ
12 操作スイッチ
13 移動型フットスイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7