特許第6362860号(P6362860)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362860
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】容器蓋の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 51/16 20060101AFI20180712BHJP
   B65D 41/04 20060101ALI20180712BHJP
   B65D 41/34 20060101ALI20180712BHJP
   B21D 51/50 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   B65D51/16 300
   B65D41/04 500
   B65D41/34 118
   B21D51/50
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-266922(P2013-266922)
(22)【出願日】2013年12月25日
(65)【公開番号】特開2015-120546(P2015-120546A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2016年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092200
【弁理士】
【氏名又は名称】大城 重信
(74)【代理人】
【識別番号】100110515
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 益男
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100189083
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 圭介
(72)【発明者】
【氏名】大久保 雄祐
(72)【発明者】
【氏名】下地 俊平
【審査官】 宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−240937(JP,A)
【文献】 実開平02−135462(JP,U)
【文献】 特開2003−072798(JP,A)
【文献】 特開平05−065151(JP,A)
【文献】 特開2009−073495(JP,A)
【文献】 特開2004−099089(JP,A)
【文献】 特開平09−255008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 39/00−55/16
B21D 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天面壁と、前記天面壁から周縁に垂下するスカート壁とを有する容器蓋の製造方法であって、
前記スカート壁のネジが形成されるネジ形成領域より天面壁側に、外方から溝部形成工具を押圧して、第1環状ビード、第2環状ビード及びそれらの間の溝部を形成し、
前記溝部に、外方からスリット形成工具を押圧して、円周方向に所定長さのスリットを押し込みで形成することを特徴とする容器蓋の製造方法。
【請求項2】
前記スリット形成工具の押圧と同時に、外方から前記第2環状ビードにナール形成工具を押圧して、円周方向に凹凸部を設けたナールを形成することを特徴とする請求項1に記載の容器蓋の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器口部に装着される容器蓋の製造方法に関し、特に、容器の内圧が著しく上昇した際に、内圧を開放して蓋飛び等の事故を防止する容器蓋の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器口部に装着される容器蓋として、金属薄板で形成された容器蓋が広く実用に供されている。
一般的な容器蓋は、円形の天面壁とこの天面壁から周縁に垂下する円筒形状のスカート壁とを有し、天面壁の内面には合成樹脂製ライナーが配設されており、上面が開放された円筒形状の口部を有する金属薄板、ガラスあるいは合成樹脂等で形成された容器に適用される。
容器の口部の外周面には雄ネジが形成されており、容器の口部に容器蓋を装着して口部を密封する際には、口部に容器蓋を被嵌し、スカート壁のネジ形成領域に口部の雄ネジに対応する雌ネジを形成するように構成されている(例えば、特許文献1等参照。)。
【0003】
このような容器蓋を適用して密封した容器、あるいは、一旦開封した後に容器蓋を再度螺合して密封した容器は、例えば、高温に曝されたり内容物の発酵、腐敗等が進行した場合や、内容物が炭酸飲料等で強い振動が加わった場合等に、密封した容器の内圧が著しく上昇する場合がある。
その際に、容器蓋が圧力に耐えられずに蓋飛びを引き起こし、周囲の人や物に損傷を与えたり、飛散した内容物で周囲を汚損したりする虞があった。
このような事故を防ぐために、スカート壁のネジ形成領域より天面壁側にスリットを設けた、いわゆる防爆機能付きキャップが公知である。
このスリットは、通常環境下での利用範囲の役割は持たないが、上記のような予期しない条件下において内圧が異常に上昇した際に限り、天面壁の変形にともなって変形開放し、そのことで容器口部と密着するライナーのシールポイントの一部を破壊して内圧を開放し、蓋飛び等の事故を防止する機能を持つ。(例えば、特許文献2、3等参照。)。
【0004】
例えば、特許文献2で公知の容器蓋は、スカート壁のネジが形成されるネジ形成領域より天面壁側にナールが形成され、該ナールの凹部(ナール部6、7)の上端縁を切断面としてスリット(6a、7a)を形成している。
また、特許文献3で公知の容器蓋は、スカート壁(10)のネジが形成されるネジ形成領域(主部14)より天面壁(8)側にナール(凹凸形状部)が形成され、該ナールよりも上方にスリットを形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平01−154146号公報
【特許文献2】特開2003−155052号公報
【特許文献3】特許第4727162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
公知の内圧を開放するための防爆機能スリットを設けた容器蓋においては、スリットの切断縁の一部は、容器蓋を使用者が把持した際に誤って触れる可能性がある外周位置に存在する。
このため、スリットの切断縁が使用者の手指に不快感を与えたり、スリットの切断縁によって使用者の手指を負傷させる虞がある。
このような事態を抑制するために、スリットの切断縁を滑らかに加工したり、内方に変形させたりすることも考えられる。
【0007】
しかしながら、容器蓋は、容器口部に巻き締めする際の供給等のハンドリング時に、わずかな打痕や変形が生じることが多く、スリットの切断縁の近傍に打痕や変形が生じた場合、容器口部への巻き締めにともなってスリットの切断縁が外周側に突出することがあるため、切断縁のみの加工では前述の問題を解消することはできない。
さらに、容器内圧が所定の値を超えた際に限り、内圧の開放を確実にするための形状、寸法にスリットを形成する必要があるが、上記のような巻き締め時、あるいは、巻き締め後のスリットの変形によって、所定の値より低い内圧値で開放してしまい、適正な範囲での内圧開放ができないという問題があった。
【0008】
そこで本発明は、前述したような課題を解決するものであって、容器の内圧が著しく上昇した際に、内圧を開放して蓋飛び等の事故を防止するとともに、所定以下の内圧値で内圧開放することがなく、かつ、使用者の手指に不快感を与えたり、使用者の手指を負傷させることのない安全な容器蓋の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明に係る容器蓋の製造方法は、天面壁と、前記天面壁から周縁に垂下するスカート壁とを有する容器蓋の製造方法であって、スカート壁のネジが形成されるネジ形成領域より天面壁側に、外方から溝部形成工具を押圧して、第1環状ビード、第2環状ビード及びそれらの間の溝部を形成し、溝部に、外方からスリット形成工具を押圧して、円周方向に所定長さのスリットを形成することにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0013】
本請求項1に係る容器蓋の製造方法によれば、スカート壁の外方から押圧する工具のみを異なるものとした工程を経るだけで、内方の工具を変更することなく、容器の内圧が著しく上昇した際に内圧を開放して蓋飛び等の事故を防止するとともに、使用者の手指に不快感を与えたり、使用者の手指を負傷させることのない容器蓋を、容易に製造することが可能となる。
また、スリット形成工具を、対向する工具と共同して剪断するものではなく、単体で鋭角の先端を外方から押し込んでスリットを形成するため、スリットの切断縁をすべて内方に向けることが可能となり、さらに確実に使用者の手指に不快感を与えたり、使用者の手指を負傷させることのない容器蓋を製造することが可能となる。
本請求項2に記載の構成によれば、スリットの形成とナールの形成を同時に行うことが可能となり、より容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の1実施形態である製造方法による容器蓋の斜視図。
図2】本発明の1実施形態である製造方法による容器蓋の半断面側面図。
図3】本発明の1実施形態である製造方法による容器蓋の容器への巻締時の半断面側面図。
図4】本発明の1実施形態である製造方法による容器蓋の溝部の製造工程の説明図。
図5】本発明の1実施形態である製造方法による容器蓋のスリット及びナールの製造工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の1実施形態である製造方法による容器蓋100の構成について、図面に基づいて説明する。
容器蓋100は、図1乃至図3に示すように、天面壁120と、天面壁120から周縁に垂下するスカート壁110とを有し、スカート壁110のネジが形成されるネジ形成領域111より天面壁120側に、上方から第1環状ビード112及び第2環状ビード113が設けられている。
第1環状ビード112と第2環状ビード113の最大外径は、図2、3に示すように、ほぼ同一径に形成され、第1環状ビード112と第2環状ビード113の間の溝部114には、円周方向に伸びるスリット115が3箇所設けられている。
第2環状ビード113のネジ形成領域111側には、所定間隔で複数個の凹部を設け、円周方向に凹凸部をなすナール116が形成されている。
【0016】
天面壁120の裏面には、図3に示すように、容器口部と密着してシールするための合成樹脂製のライナー101が固着されている。
また、スカート壁110のネジ形成領域111の下方に、タンパエビデント部117が設けられている。
このタンパエビデント部117は、いかなる構造であってもよい。
図1図2に示すものは、容器口部に最初に装着する前の状態であり、ネジ形成領域111は容器口部に装着される際に、容器口部の雄ネジに対応する雌ネジを形成するよう外方から押圧変形される。
図3は、容器Cに巻締めた後の容器蓋100を示すものであり、ネジ形成領域111が容器Cの雄ネジ形状に形成されるとともに、タンパエビデント部117の最下端が容器C側にカシメ変形される。
また、第1環状ビード112が外側から押圧変形されることにより、内側のライナー101が容器Cの開口部に所定の圧力で密着して容器Cの密封性が担保される。
【0017】
具体的な寸法を示すと、例えば、従来の容器蓋と同一の直径38mm規格のもので、上記の実施形態で、天面壁120からの距離2.6mmの位置に溝部114の底が来るように第1環状ビード112及び第2環状ビード113を設け、スリット115を円周方向の長さ11.9mmで溝部114の底に等間隔に3箇所設けた。
各スリット115は、ナール116の凹部3つ、凸部2つに対応する長さであり、スリット115の円周方向の中央から見てナール116の凹凸が左右対称に配置されるように形成されている。
このような容器蓋100を、従来の容器蓋と同一の条件で巻き締め、第1環状ビード112が外側から押圧してライナー101を密着させた場合、打痕等の影響はなく確実に容器Cを密封でき、要求される内圧(本実施形態では0.6MPaに設定)での内圧開放を行うことができ、かつ、スリット115の切断縁が使用者の手に触れることは一切ない容器蓋100とすることができた。
なお、スリットの長さが容器蓋の直径の25%未満では、所定の内圧で開放せず蓋飛びが生じるものが発生し、また、50%を超えると、巻き締め時、あるいは、巻き締め後のスリットの変形によって、所定の値より低い内圧値で開放してしまうものが発生した。
【0018】
以上のように構成される本発明の1実施形態である容器蓋100の製造方法について、図4図5に基づいて説明する。
容器蓋100は、金属薄板から単純円筒形状のスカート壁110を形成した後に、内方、外方から押圧工具によって押圧して、前述したような巻き締め前の最終形状に成形される。
まず、第1工程において、単純円筒形状のスカート壁110の内方に、天面壁120側から順に内方第1環状ビード形成工具141、内方第2環状ビード形成工具142、内方ナール形成工具143を有する内方の押圧工具が挿入され、容器蓋100を回転しつつ、外方から溝部形成工具131及び第2環状ビード形成工具134を内方の押圧工具側に押圧することで、図4に示すように、天面壁120側から、第1環状ビード112、環状の溝部114及び第2環状ビード113が形成される。
【0019】
次に、第2工程において、内方第1環状ビード形成工具141、内方第2環状ビード形成工具142、内方ナール形成工具143を有する内方の押圧工具が挿入されたまま、形成された溝部114の外方からスリット形成工具132を、形成された第2環状ビード113の下半分の外方からナール形成工具133を、第2環状ビード113より下方の外方から押え工具135を同時に押圧することで、図5に示すように、スリット115及びナール116が形成される。
スリット形成工具132、内方ナール形成工具143及びナール形成工具133は、必要とするスリット115の数及び長さ、ナール116の凹凸の間隔に応じて、それぞれ、適宜、容器蓋100の回転に対して断続的に押圧成形するように構成されている。
スリット形成工具132の先端部は、中心線から両側にそれぞれ角度15°の鋭角の両刃カッター形状に形成されており、対向する工具と共同して剪断することなく、押し込みでスリットを形成可能に構成されている。
【0020】
なお、第2環状ビード113より下方(図4図5の右方向)では、ネジ形成領域111が内外方から挟み込まれ、容器蓋100を成形加工するために回転させるガイドとして機能し、さらに下方(図示の範囲よりさらに右方向)では、タンパエビデント部117が前述の工程と並行して適宜の工具により成形加工される。
また、溝部形成工具133とスリット形成工具132、第2環状ビード形成工具134とナール形成工具133をそれぞれ一体化して、第1環状ビード112、溝部114、スリット115、第2環状ビード113及びナール116を1工程で同時に成形加工するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0021】
100 ・・・容器蓋
101 ・・・ライナー
110 ・・・スカート壁
111 ・・・ネジ形成領域
112 ・・・第1環状ビード
113 ・・・第2環状ビード
114 ・・・溝部
115 ・・・スリット
116 ・・・ナール
117 ・・・タンパエビデント部
120 ・・・天面壁
131 ・・・溝部形成工具
132 ・・・スリット形成工具
133 ・・・ナール形成工具(外方)
134 ・・・第2環状ビード形成工具(外方)
135 ・・・押え工具(外方)
141 ・・・内方第1環状ビード形成工具
142 ・・・内方第2環状ビード形成工具
143 ・・・内方ナール形成工具
C ・・・容器
図1
図2
図3
図4
図5