特許第6362862号(P6362862)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6362862洗浄剤用液状増粘剤とそれを用いた洗浄剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362862
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】洗浄剤用液状増粘剤とそれを用いた洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 10/02 20060101AFI20180712BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   C11D10/02
   C09K3/00 103H
【請求項の数】2
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-272691(P2013-272691)
(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-127360(P2015-127360A)
(43)【公開日】2015年7月9日
【審査請求日】2016年10月5日
【審判番号】不服2017-19166(P2017-19166/J1)
【審判請求日】2017年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114318
【氏名又は名称】ミヨシ油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174702
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 拓
(72)【発明者】
【氏名】黒田 巌
(72)【発明者】
【氏名】伊庭 緩昌
(72)【発明者】
【氏名】竹本 朱希
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 邦芳
【合議体】
【審判長】 冨士 良宏
【審判官】 天野 宏樹
【審判官】 木村 敏康
(56)【参考文献】
【文献】 特表2000−502118(JP,A)
【文献】 特開昭59−001600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D1/00-19/00
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
C07B31/00-63/04
C07C1/00-409/44
C09K3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン性界面活性剤および両性界面活性剤を含む界面活性剤の配合量が10〜35質量%、25℃の粘度が1100mPa・s以上である、香粧品として使用される洗浄剤組成物に1〜5質量%配合される液状増粘剤であって、次式(I):
【化1】
(式中、R1〜R3はそれぞれ独立に炭素数7〜11の直鎖もしくは分岐のアルキル基又はアルケニル基を示し、AOは炭素数2又は3のオキシアルキレン基を示し、x、y、zは1以上の整数でx+y+z=3〜30の範囲である。)で表わされるポリオキシアルキレン脂肪酸グリセリンを含有する洗浄剤用液状増粘剤。
【請求項2】
香粧品として使用される洗浄剤組成物であって、請求項1に記載の洗浄剤用液状増粘剤と、アニオン性界面活性剤および両性界面活性剤を含む界面活性剤とを含有し、前記洗浄剤用液状増粘剤の配合量が1〜5質量%、アニオン性界面活性剤および両性界面活性剤を含む前記界面活性剤の配合量が10〜35質量%であり、25℃の粘度が1100mPa・s以上である洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャンプーやボディソープ等の洗浄剤に使用される増粘剤とそれを用いた洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シャンプーやボディソープ等の洗浄剤は一般に、取扱い易くするために増粘剤で適度な粘度を持たせている。
【0003】
このように適度な粘度を与えるために、安価で優れた増粘作用を有するヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドが増粘剤として一般に知られている。
【0004】
しかし、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドは製造過程において、発がん性物質であるニトロソアミンが副生成物として発生する可能性があることから、増粘剤として使用されなくなってきている。
【0005】
このような問題点を解決するために、アルキルグリセリルエーテルからなる増粘剤が開示されている(特許文献1、2)。しかし、増粘性を得るためには高添加量を必要とし、多段階反応を要するため工業的には好ましくない。
【0006】
また、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールの脂肪酸モノ又はジエステルなども開示されている(特許文献3)が、水系で使用した場合に加水分解により洗浄剤溶液の粘度が低下し安定性に問題があった。また、ヨーロッパではポリオキシエチレンラウリルエーテルが用いられているが、特有の臭いが問題となっていた。
【0007】
一方、界面活性剤と、1)多価アルコールのエチレンオキサイド40〜400モル付加物と合計炭素数8〜36の分岐脂肪酸とのエステル、2)平均分子量2000〜20000のポリエチレングリコールと合計炭素数8〜36の分岐脂肪酸とのエステル、3)多価アルコールと合計炭素数8〜36の分岐脂肪酸とのエステルのエチレンオキサイド40〜400モル付加物から選ばれる分岐脂肪酸とのエステルとを含有する洗浄剤組成物(特許文献4〜6)が開示されている。
【0008】
しかし、最適な粘度を得ようとすると、べたつき、ぬるつき等、洗浄剤の使用感の低下等が生じ、逆に使用感を維持しようとすると最適な粘度にならず、性能的に不十分であった。さらに増粘剤が固体形態であると、増粘剤を完全に溶解し粘度を増大させ均一の粘度とするには膨大な時間が掛かる。また混合時に増粘剤を溶解させるため、例えば50〜80℃で加熱すると、加水分解を助長することになってしまう。シャンプー等を製造する場合は加熱せずに混合することが所望されており、また増粘剤を液体形態で導入することができれば、配合時の自動化や精確な量の増粘剤を導入することが可能となり、短時間で正確かつムラの無い粘度の液体洗浄剤組成物を得ることができる。
【0009】
また、特定のポリオキシエチレンモノ脂肪酸グリセリンは、シャンプー組成物に配合され、毛髪に良好なハリ、コシ(弾力感)を与え、泡質を良好にすること(特許文献7)が開示されているが、同物質のレオロジカルな性質に関しては言及されておらず、更にエステル化度とそのレオロジカルな特性に関しても何ら検討されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−180086号公報
【特許文献2】特開2003−129032号公報
【特許文献3】特開2002−265993号公報
【特許文献4】特開昭63−075097号公報
【特許文献5】特開2002−226890号公報
【特許文献6】特開2009−221120号公報
【特許文献7】特開2010−163377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、混合が容易な室温液状で、加水分解による洗浄剤溶液の粘度低下が抑制された増粘剤とそれを用いた洗浄剤組成物を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明の洗浄剤用液状増粘剤は、次式(I):
【0013】
【化1】
【0014】
(式中、R1〜R3はそれぞれ独立に炭素数7〜11の直鎖もしくは分岐のアルキル基又はアルケニル基を示し、AOは炭素数2又は3のオキシアルキレン基を示し、x、y、zは1以上の整数でx+y+z=3〜30の範囲である。)で表わされるポリオキシアルキレン脂肪酸グリセリンを含有することを特徴としている。
【0015】
本発明の洗浄剤組成物は、前記の洗浄剤用液状増粘剤と、界面活性剤とを含有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の洗浄剤用液状増粘剤によれば、液状であるためハンドリングが容易で、加水分解性が低いため安定性が良好で、安全性が高く、不快な臭気もなく、洗浄剤に用いることによって従来品と同等程度もしくはそれ以上の増粘作用を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明を詳細に説明する。
1.洗浄剤用液状増粘剤
本発明の洗浄剤用液状増粘剤は、前記式(I)で表わされるポリオキシアルキレン脂肪酸グリセリンを含有する。
【0018】
式(I)のR1〜R3はそれぞれ独立に炭素数7〜11の直鎖もしくは分岐のアルキル基又はアルケニル基を示す。
【0019】
1〜R3の炭素数が7以上であると皮膚刺激性を低減することができ、炭素数が11以下であると融点が高くなり過ぎず液状を保つことができる。
【0020】
1〜R3の直鎖もしくは分岐のアルキル基又はアルケニル基のうち、直鎖のアルキル基としては、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デカニル基、ウンデカニル基が挙げられる。
【0021】
直鎖のアルケニル基としては、モノエン、ジエン、トリエン等が挙げられ、例えば、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基が挙げられる。
【0022】
分岐のアルキル基又はアルケニル基としては、1個又は複数個の分枝鎖、例えば1個又は2個の分枝鎖を有するものが挙げられ、例えば、イソアルキル基や、α−炭素原子に分枝鎖を有する1−エチルペンチル基、1−エチルヘキシル基、1−プロピルペンチル基、1−エチルヘプチル基、1−プロピルヘキシル基、1−エチルオクチル基、1−プロピルヘプチル基等の分岐のアルキル基や、これらの骨格を持つ分岐のアルケニル基等が挙げられる。
【0023】
式(I)のAOは炭素数2又は3のオキシアルキレン基を示す。オキシアルキレン基としては、オキシエチレン基(CH2CH2O−)、オキシプロピレン基(CH2CH(CH3)O−)が挙げられる。
【0024】
x、y、zは1以上の整数でx+y+z=3〜30の範囲である。そのうちオキシエチレン基が3〜30の範囲で、かつオキシプロピレン基が0〜5の範囲であることが好ましい。
【0025】
この付加モル数x+y+zが3〜30の範囲であると、増粘性を特に高めることができる。
【0026】
式(I)の(AO)x、(AO)y、(AO)zが、オキシアルキレン基としてオキシエチレン基とオキシプロピレン基を含むポリオキシアルキレン基である場合、アルキレンオキサイドの付加形態はブロック付加であってもよく、ランダム付加であってもよい。
【0027】
式(I)で表わされるポリオキシアルキレン脂肪酸グリセリンは、公知の方法により製造することができ、その製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、グリセリンにアルキレンオキサイドを付加し、更に脂肪酸とエステル化させて得ることができる。
【0028】
グリセリンのアルキレンオキサイド付加体は、エチレンオキサイドをグリセリンに単独で付加するか、又はエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドをブロック付加又はランダム付加して得られる。
【0029】
アルキレンオキサイドを付加する反応は、常法に従って行うことができ、例えば水酸化ナトリウム、ナトリウムアルコラート等の触媒の存在下、又は不存在下に50〜200℃でアルキレンオキサイドを付加して行うことができる。
【0030】
エステル化反応は、グリセリンのアルキレンオキサイド付加体と脂肪酸とを、アルカリ触媒又は酸触媒の存在下、又は不存在下に、適宜に加熱して反応させることによって行うことができる。脂肪酸としては、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸、デカン酸(カプリン酸)、ウンデカン酸、ドデカン酸(ラウリン酸)等の直鎖飽和脂肪酸、2−エチルヘキサン酸、2−エチルオクタン酸、2−エチルデカン酸等の分岐脂肪酸等が挙げられる。
【0031】
前記の製造方法によって得られるポリオキシアルキレン脂肪酸グリセリンは、トリエステルの含有量が、例えば80質量%以上である。これをそのまま洗浄剤用液状増粘剤としてもよい。
【0032】
2.洗浄剤組成物
本発明の洗浄剤組成物は、前記の洗浄剤用液状増粘剤と、界面活性剤とを含有する。
本発明の洗浄剤組成物は、優れた界面活性を有すると共に、増粘剤の加水分解による粘度低下が抑制されて安定性も良好で、香粧品等に好適であり、シャンプー、コンディショニングシャンプー、ボディシャンプー、ハンドソープ、洗顔料用等に用いることができる。
【0033】
界面活性剤としては、特に限定されるものではなく、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、及びノニオン界面活性剤から選ばれる少なくとも1種を好適に用いることができる。
【0034】
本発明の洗浄剤組成物に使用されるアニオン界面活性剤としては、脂肪酸石鹸、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルキレンアルキルエーテルカルボン酸塩、脂肪酸アミドエーテルカルボン酸塩、アシル乳酸塩、N−アシルグルタミン酸塩、N−アシルアラニン塩、N−アシルサルコシン塩、N−アシル−ω−アミノ酸塩等のカルボン酸塩、アルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸メチルエステル塩、アシルイセチオン酸塩、アルキルグリシジルエーテルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルスルホ酢酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、N−アシルメチルタウリン塩、ホルマリン縮合系スルホン酸塩等のスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルアリールエーテル硫酸塩、脂肪酸アルカノールアミド硫酸塩、脂肪酸モノグリセリド硫酸塩等の硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩、アルキルアリールエーテルリン酸塩、脂肪酸アミドエーテルリン酸塩等のリン酸塩等が挙げられる。
【0035】
カチオン界面活性剤としては、第一級アミン塩、第二級アミン塩、第三級アミン塩、脂肪族アミドアミン塩、脂肪族アミドグアニジウム塩、第四級アンモニウム塩、アルキルトリアルキレングリコールアンモニウム塩、アルキルエーテルアンモニウム塩等の脂肪族アミン塩及びその第四級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、ベンゼトニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等の環式第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0036】
両性界面活性剤としては、カルボベタイン、アミドベタイン、イミダゾリニウムベタイン、スルホベタイン、ホスホベタイン等が挙げられる。
【0037】
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン(硬化)ヒマシ油エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルカノールアミド、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸(モノ/ジ)エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、アルキルポリグリコシド等が挙げられる。
【0038】
本発明の洗浄剤組成物は、上記の各成分を、溶媒である水に溶解又は分散させることで調製することができる。
【0039】
界面活性剤の配合量は、特に限定されるものではないが、例えば、洗浄剤組成物の全量に対して5〜50質量%、中でも10〜35質量%である。
【0040】
洗浄剤用液状増粘剤の配合量は、特に限定されるものではないが、例えば、洗浄剤組成物の全量に対して0.5〜10質量%、中でも1〜5質量%である。
【0041】
水の配合量は、特に限定されるものではないが、例えば、洗浄剤組成物の全量に対して60〜90質量%である。
【0042】
洗浄剤組成物は、洗浄後の毛髪の感触向上等を目的として、カチオン化ポリマーを配合することができる。カチオン化ポリマーとしては、カチオン化セルロース、カチオン化グアーガム、カチオン化デンプン、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体等が挙げられる。
【0043】
カチオン化ポリマーの配合量は、特に限定されるものではないが、例えば、洗浄剤組成物の全量に対して0.1〜1.5質量%である。
【0044】
更に、本発明の洗浄剤組成物には、上記の各成分以外にも、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の水溶性高分子、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ペンタンジオール、グリセリン等の保湿剤や従来から香粧品の基剤等として使用されている各種成分を、必要に応じて配合することができる。このような成分としては、香料、コンディショニング剤、金属イオン封鎖剤、パール化剤、起泡剤、分散安定剤、紫外線吸収剤、ふけ防止剤、抗菌剤、殺菌剤、防腐剤、pH調整剤等が挙げられる。
【実施例】
【0045】
以下に、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、表3〜表5に示す配合量は質量部を表す。
(増粘剤1〜12の合成)
オートクレーブにグリセリンとNaOHを仕込み、さらにエチレンオキサイドを表1に示す反応モル比で加え、150℃で規定時間付加反応して、ポリオキシエチレングリセリルエーテルを得た。
【0046】
増粘剤7は、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを表1に示す反応モル比で加え(PO1モル、EO7モル)、それ以外は上記と同様の条件で付加反応を行い、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテルを得た。
【0047】
温度計、窒素導入管、撹拌機を備えた四つ口フラスコに、前記において得られたポリオキシエチレングリセリルエーテル又はポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテルと表1に示す脂肪酸を入れ、必要に応じてアルカリ触媒を加え、200℃にて規定時間反応を行い、酸価10以下になるまで反応を行って、表1に示す増粘剤1〜12を得た。
【0048】
増粘剤1〜11はいずれも室温(25℃)で液状であり、増粘剤12は固体であった。
【0049】
増粘剤1〜12におけるグリセリンへのエチレンオキサイド(EO)とプロピレンオキサイド(PO)の付加モル、増粘剤1〜12の酸価とけん化価を表1に示す。また使用した脂肪酸の中和価(NV)と分子量(MW)を表2に示す。
【0050】
なお、表1及び表2において、けん化価(SV)は基準油脂分析試験法2.3.2−1996に従って試料1g中の遊離酸の中和及びエステルのけん化に要する水酸化カリウムのmg量で測定した。酸価(AV)は基準油脂分析試験法2.3.1−1996に従って試料1g中に含有する遊離酸を中和するのに要する水酸化カリウムのmg量で測定した。中和価(NV)は基準油脂分析試験法3.3.1−1996に従って脂肪酸1gを中和するのに要する水酸化カリウムのmg量で測定した。分子量(MV)は上記の測定値から平均分子量を算出した。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
前記において得られた増粘剤1〜12を用いて次の評価を行った。
【0054】
表3及び表4に示す配合量で各成分を配合し、洗浄剤組成物を調製した。
【0055】
表3では、界面活性剤としてアニオン界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)、ミヨシ油脂(株)「スパミンSA」)及び両性界面活性剤(ラウラミドプロピルベタイン、ミヨシ油脂(株)「アンホレックスLB−2」)、カチオン化ポリマー(カチオン化セルロース、東邦化学工業(株)「カチナールHC−200」)、増粘剤として増粘剤1〜12、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、又はポリオキシエチレン脂肪酸モノエステル(PEG脂肪酸モノエステル)、及び水を配合し、pH6に調整した。
【0056】
表4では、界面活性剤としてアニオン界面活性剤(カリウム石鹸、ミヨシ油脂(株)「コスメチックソープKS−100」)及び両性界面活性剤(ラウラミドプロピルベタイン、ミヨシ油脂(株)「アンホレックスLB−2」)、増粘剤として増粘剤1〜12、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、又はポリオキシエチレン脂肪酸モノエステル(PEG脂肪酸モノエステル)、及び水を配合し、pH9.5に調整した。
【0057】
[外観]
上記の各成分を配合し、均一に撹拌した後、溶液状態を目視にて次の基準で評価した。
評価基準
○:透明
×:白濁
【0058】
[粘度]
洗浄剤組成物の25℃での粘度(mPa・s)を測定した。粘度の測定条件は次の通りである。
使用粘度計:B型粘度計(東機産業社製)
ローターNo.2
ローター回転数:12rpm
【0059】
[泡立ち]
洗浄剤組成物の起泡性及び泡の安定性について次の方法で評価を行った。JIS K−3362−6.5(ロスマイルス法)に準拠し、洗浄剤組成物の濃度0.1%(有効分)、液温40℃で測定を行い、起泡直後と5分後のそれぞれの値を測定した(mm)。
【0060】
評価結果を表3及び表4に示す。
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
【0063】
[加水分解安定性]
増粘剤1〜12、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、又はポリオキシエチレン脂肪酸モノエステル、及び水を表5に示す量で配合し、均一に撹拌して試料を調製した。試料の調製時とその1ヶ月後のそれぞれの酸価を測定した。
【0064】
評価結果を表5に示す。
【0065】
【表5】
【0066】
表3〜表5より、増粘剤1〜7を用いた洗浄剤組成物は、外観が透明で、増粘性と泡立ちが良好で、更に増粘剤の加水分解性が低く安定性も良好であった。また製造時には、増粘剤は室温液状でハンドリングが容易であり、不快な臭気もなかった。
【0067】
前記の増粘剤を用いた洗浄剤組成物の好適な処方例を次に示す。
洗浄剤組成物の原料には下記原料を使用した。
アニオン界面活性剤1
ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ミヨシ油脂(株)
「スパミンSA」
アニオン界面活性剤2
カリウム石鹸、ミヨシ油脂(株)「コスメチックソープKS−100」
アニオン界面活性剤3
ココイルメチルタウリンNa、ミヨシ油脂(株)「アンホレックスAM−1」
アニオン界面活性剤4
ラウレススルホコハク酸Na、東邦化学工業(株)「コハクールL−300」
アニオン界面活性剤5
ラウレスカルボン酸Na、ライオン(株)「エナジコールEC−30」
アニオン界面活性剤6
ヤシ油脂肪酸カリウム、ミヨシ油脂(株)「コスメチックソープDCK−4N」
両性界面活性剤1
ラウラミドプロピルベタイン、ミヨシ油脂(株)「アンホレックスLB−2」
両性界面活性剤2
コカミドプロピルベタイン、ミヨシ油脂(株)「アンホレックスCB−1」
両性界面活性剤3
ラウリルヒドロキシスルタイン、ミヨシ油脂(株)「アンホレックスLSB」
両性界面活性剤4
ココアンホ酢酸Na、ミヨシ油脂(株)「アンホレックス30S」
ノニオン界面活性剤
ヤシ油脂肪酸PEG−7グリセリル、ミヨシ油脂(株)「Mファインオイル
COG−7M」
カチオン化ポリマー
カチオン化セルロース、東邦化学工業(株)「カチナールHC−200」
保湿剤
グリセリン、ミヨシ油脂(株)「化粧用濃グリセリン」
パール化剤
ジステアリン酸グリコール、ミヨシ油脂(株)「パルナーSEG−A」
【0068】
以下、処方中の原料は質量部(有効分)で表す。
【0069】
(処方例1:シャンプー)
アニオン界面活性剤1 10質量部
両性界面活性剤1 4質量部
両性界面活性剤3 2質量部
ノニオン界面活性剤 3質量部
カチオン化ポリマー 0.3質量部
増粘剤1 3質量部
水 残余(全量100質量部)
【0070】
上記の各成分を配合し、pH6の洗浄剤組成物(シャンプー)を調製した。
このシャンプーは、増粘性と泡立ちが良好で、更に増粘剤の加水分解性が低く安定性も良好であった。また製造時には、増粘剤は室温液状でハンドリングが容易であり、不快な臭気もなかった。
【0071】
(処方例2:シャンプー)
アニオン界面活性剤5 15質量部
両性界面活性剤1 5質量部
パール化剤 1質量部
両性界面活性剤4 2質量部
カチオン化ポリマー 0.5質量部
増粘剤3 5質量部
水 残余(全量100質量部)
【0072】
上記の各成分を配合し、pH6の洗浄剤組成物(シャンプー)を調製した。
このシャンプーは、増粘性と泡立ちが良好で、更に増粘剤の加水分解性が低く安定性も良好であった。また製造時には、増粘剤は室温液状でハンドリングが容易であり、不快な臭気もなかった。
【0073】
(処方例3:コンディショニングシャンプー)
アニオン界面活性剤4 15質量部
両性界面活性剤3 5質量部
カチオン化ポリマー 0.3質量部
ノニオン界面活性剤 3質量部
増粘剤4 3質量部
水 残余(全量100質量部)
【0074】
上記の各成分を配合し、pH6の洗浄剤組成物(コンディショニングシャンプー)を調製した。
このコンディショニングシャンプーは、増粘性と泡立ちが良好で、更に増粘剤の加水分解性が低く安定性も良好であった。また製造時には、増粘剤は室温液状でハンドリングが容易であり、不快な臭気もなかった。
【0075】
(処方例4:ボディシャンプー)
アニオン界面活性剤2 15質量部
両性界面活性剤1 5質量部
保湿剤 5質量部
増粘剤3 3質量部
水 残余(全量100質量部)
【0076】
上記の各成分を配合し、pH9.5の洗浄剤組成物(ボディシャンプー)を調製した。
このボディシャンプーは、増粘性と泡立ちが良好で、更に増粘剤の加水分解性が低く安定性も良好であった。また製造時には、増粘剤は室温液状でハンドリングが容易であり、不快な臭気もなかった。
【0077】
(処方例5:ハンドソープ)
アニオン界面活性剤6 10質量部
両性界面活性剤3 3質量部
両性界面活性剤2 2質量部
保湿剤 3質量部
増粘剤5 3質量部
水 残余(全量100質量部)
【0078】
上記の各成分を配合し、pH9.5の洗浄剤組成物(ハンドソープ)を調製した。
このハンドソープは、増粘性と泡立ちが良好で、更に増粘剤の加水分解性が低く安定性も良好であった。また製造時には、増粘剤は室温液状でハンドリングが容易であり、不快な臭気もなかった。
【0079】
(処方例6:洗顔料)
アニオン界面活性剤3 10質量部
両性界面活性剤3 3質量部
両性界面活性剤4 2質量部
増粘剤2 2質量部
水 残余(全量100質量部)
【0080】
上記の各成分を配合し、pH6の洗浄剤組成物(洗顔料)を調製した。
この洗顔料は、増粘性と泡立ちが良好で、更に増粘剤の加水分解性が低く安定性も良好であった。また製造時には、増粘剤は室温液状でハンドリングが容易であり、不快な臭気もなかった。