(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
液体が封入されたバッグを備え、加熱対象に向けられる第1面および前記第1面とは反対側に位置する第2面を有するヒーターマットの前記第2面に配置されている熱分散装置を用いる修理方法であって、
修理対象である部材に加熱を経て硬化する樹脂を含む修理材を配置するステップと、
前記ヒーターマットの前記第1面を前記修理材に向け、前記ヒーターマットにより前記修理材を覆うステップと、
前記ヒーターマットの前記第2面に前記熱分散装置を配置するステップと、
前記ヒーターマットにより前記修理材を加熱するステップと、を備え、
前記修理材を加熱するステップでは、
前記バッグ内に内蔵された熱源または前記熱分散装置に接続された熱源により、前記液体を加熱する、
ことを特徴とする修理方法。
液体が封入されたバッグを備え、加熱対象に向けられる第1面および前記第1面とは反対側に位置する第2面を有するヒーターマットの前記第2面に配置されている熱分散装置を用いる修理方法であって、
修理対象である部材に加熱を経て硬化する樹脂を含む修理材を配置するステップと、
前記ヒーターマットの前記第1面を前記修理材に向け、前記ヒーターマットにより前記修理材を覆うステップと、
前記ヒーターマットの前記第2面に前記熱分散装置を配置するステップと、
前記ヒーターマットにより前記修理材を加熱するステップと、を備え、
前記修理材を加熱するステップでは、
前記液体を強制的に流動させる、
ことを特徴とする修理方法。
液体が封入されたバッグを備え、加熱対象に向けられる第1面および前記第1面とは反対側に位置する第2面を有するヒーターマットの前記第2面に配置されている熱分散装置を用いる接合方法であって、
互いに接合される第1部材および第2部材の間に加熱を経て硬化する樹脂を含む接着剤を配置するステップと、
前記ヒーターマットの前記第1面側を前記第1部材および前記第2部材の少なくとも一方に配置するステップと、
前記ヒーターマットの前記第2面に前記熱分散装置を配置するステップと、
前記ヒーターマットにより前記接着剤を加熱するステップと、を備え、
前記接着剤を加熱するステップでは、
前記バッグ内に内蔵された熱源または前記熱分散装置に接続された熱源により、前記液体を加熱する、
ことを特徴とする接合方法。
液体が封入されたバッグを備え、加熱対象に向けられる第1面および前記第1面とは反対側に位置する第2面を有するヒーターマットの前記第2面に配置されている熱分散装置を用いる接合方法であって、
互いに接合される第1部材および第2部材の間に加熱を経て硬化する樹脂を含む接着剤を配置するステップと、
前記ヒーターマットの前記第1面側を前記第1部材および前記第2部材の少なくとも一方に配置するステップと、
前記ヒーターマットの前記第2面に前記熱分散装置を配置するステップと、
前記ヒーターマットにより前記接着剤を加熱するステップと、を備え、
前記接着剤を加熱するステップでは、
前記液体を強制的に流動させる、
ことを特徴とする接合方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
修理対象である部材の厚みが部位によって変化していたり、部材に支持部材や装備品などが設けられていると、部材の位置に応じて熱伝導の状況が変化する。
そのため、ヒーターマットの面内の発熱温度が均一であったとしても、修理の品質確保のために重要な、均熱化を図ることが難しい。
ここで、特に特許文献1の装置によれば、液体の流動により均熱化に期待できるとしても、チャンバーを備えた大型の装置を修理箇所に設置するのは大変困難である。
その点、ヒーターマットは可搬性に優れ、修理箇所に容易に設置できる。
しかも、ヒーターマットは技術的に確立されていて十分な信頼性を有しており、広く普及している。
【0007】
したがって、ヒーターマットに代えて新たな加熱装置を導入することなく、ヒーターマットと組み合わせて補助的に用いることで均熱化を図ることができるものが強く望まれている。
なお、修理だけでなく、部材と部材とを熱硬化性樹脂を含む接着剤により接合する際にも、上記と同様の課題が存在する。
以上より、本発明は、加熱を経て樹脂を硬化させることで部材を修理、接合するために既存のヒーターマットを活用しつつ、均熱化を図ることが可能な装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ヒーターマットを使用する修理の際に均熱化を図るため、本発明の発明者は、以下で説明するように、事前の温度分布調査(ヒートサーベイと呼ばれる)に基づいて保温材を使用している。
温度分布調査では、
図8に示すように、損傷箇所に形成した凹部23の内周面と修理材24(例えばプリプレグ)との間に剥離フィルム62を挟み、ヒーターマット20により実際に修理材24を加熱し、調査のために修理材24の複数箇所に設置、内蔵させた温度センサ30により温度を計測する。温度センサ30は、例えば、修理材24の表面の中央・周縁、および凹部23の内周面と対向する修理材24の外周などに配置する。
それらの温度センサ30による計測結果に基づいて、放熱を妨げる保温材61(断熱材)をヒーターマット20の上にいくつか配置し、再度、温度計測する。保温材61は、例えば、修理材24の周縁部に対応する位置に配置される。
そして、各温度センサ30により計測される温度が所定の温度範囲に収束するまで、保温材61の位置やサイズを変えて温度計測を繰り返し、最も有効な保温材61の位置およびサイズを決定する。
保温材61としては、ゴム製の板などを利用できる。周囲に比べて温度が顕著に低い箇所では、小さいサイズのヒーターマットをヒーターマット20に重ねてもよい。
【0009】
以上により事前の作業を終えると、剥離フィルム62を介在させずに修理材24を凹部23内に配置し、修理材24に載せたヒーターマット20の上から事前作業により決定された位置、サイズに従って保温材61を配置し、修理材24を加熱する。加熱中は、制御用に配置した温度センサ30により修理材24の温度をモニタリングしながら、ヒーターマット20の出力を調整する。
【0010】
上述のように、修理にあたり事前に行う作業には手間が掛かり、多大な時間が費やされる。
しかも、温度分布調査を経て本番の加熱に臨んだとしても、温度分布調査時とは周囲温度が変化していたり、剥離フィルム62の除去による影響、あるいは調査時の計測ミスなどに起因して、修理材24の温度が不均一となりうる。つまり、ある部位では熱が集中して不必要に高い温度にまで加熱され、別の部位では温度が十分に上昇しない。
修理は、修理材24の全体が所定の硬化温度にまで達し、熱硬化性樹脂が全体に亘り十分に硬化するまでは完了しない。
【0011】
そこでなされた本発
明は、液体が封入されたバッグ
と、液体の温度を制御する制御部と、を備え
る熱分散装置であって、バッグは、加熱対象に向けられる第1面および第1面とは反対側に位置する第2面を有するヒーターマットの第2面に配置され、
バッグの内側は、平面中央の近傍に位置する中央領域と、平面方向において中央領域よりも外側に位置する周囲領域とに区画され、制御部は、中央領域の液体の温度および周囲領域の液体の温度を個別に制御することを特徴とする。
【0012】
本発明の熱分散装置によれば、バッグ内の液体が流動しながら熱を伝搬させるので、ヒーターマットの所定箇所に保温材を配置することなく、ヒーターマットにより加熱される範囲を均熱化することができる。
そのため、加熱範囲の全体を硬化に必要な温度にまで上昇させて、ヒーターマットによる加熱を伴う部材の修理、部材の接合等を高品位に行うことができる。
また、熱分布調査に基づいて保温材の配置を試す事前作業を必要とすることなく、部材の修理、部材の接合等を迅速に行うことができる。
【0013】
本発明の熱分散装置は、バッグ内に、液体を加熱する内部熱源を備える
ことができる。
あるいは、本発明の熱分散装置に、液体を加熱する外部熱源を接続することができる。
内部熱源または外部熱源により、バッグ内の液体が加熱されると、ヒーターマットから発せられる熱が液体によって吸収されることなく、ヒーターマットの能力を維持することができる。
【0014】
また、本発明の熱分散装置は、
液体が封入されたバッグを備え、加熱対象に向けられる第1面および第1面とは反対側に位置する第2面を有するヒーターマットの第2面に配置され、バッグは、液体
がバッグ内で循環する
ように回路を有する
ことを特徴とする。
バッグ内に回路が形成されていると、回路に沿って液体が流動し易くなるので、効率よく均熱化することができる。
さらに、本発明の熱分散装置は、液体が封入されたバッグを備え、加熱対象に向けられる第1面および第1面とは反対側に位置する第2面を有するヒーターマットの第2面に配置され、バッグは、液体が循環する回路を有し、その回路が、渦巻状であり、バッグ内を周回しながら内周側に向かう流れと、バッグ内を周回しながら外周側へと向かう流れとを形成するように構成されているとより効果が高い。
液体が循環する回路をバッグに有する本発明の熱分散装置は、バッグ内に、液体を加熱する内部熱源を備えたり、液体を加熱する外部熱源が接続されたりすることが好ましい。
【0015】
本発明の熱分散装置は、液体を強制的に流動させる強制流動部を備えることが好ましい。
強制流動部により液体を強制的に流動させると、バッグ内の液体の流動による熱分散が促進されるので、効率よく均熱化することができる。
【0016】
本発明の熱分散装置におけるバッグは、例えば、ヒーターマットと同様に、板状の外観を呈する形態に構成することができる。
ここで、ヒーターマットの第2面の略全体に重ねられるサイズにバッグが形成されていると、バッグ内の液体の流動により、加熱範囲のいずれの箇所に温度差が存在する場合も均熱化を図ることができるので好ましい。
また、バッグがヒーターマットと同じ平面サイズに形成されていると、ヒーターマットおよび熱分散装置を重ねた状態で収納し易い。
【0017】
本発明の熱分散装置は、航空機を構成する航空機部材同士を接合したり、航空機部材を修理するために航空機部材に修理材を設けたりする際に、ヒーターマットと併せて好適に用いることができる。
【0018】
本発明の熱分散装置と、ヒーターマットとを用いることにより、部材の修理、および部材同士の接合が可能となる。
本発明の修理方法は、
液体が封入されたバッグを備え、加熱対象に向けられる第1面および第1面とは反対側に位置する第2面を有するヒーターマットの第2面に配置されている熱分散装置を用いる修理方法であって、修理対象である部材に加熱を経て硬化する樹脂を含む修理材を配置するステップと、ヒーターマットの第1面を修理材に向け、ヒーターマットにより修理材を覆うステップと、ヒーターマットの第2面に熱分散装置を配置するステップと、ヒーターマットにより修理材を加熱するステップと、を備え
、修理材を加熱するステップでは、バッグ内に内蔵された熱源または熱分散装置に接続された熱源により、液体を加熱することを特徴とする。
また、本発明の修理方法は、液体が封入されたバッグを備え、加熱対象に向けられる第1面および第1面とは反対側に位置する第2面を有するヒーターマットの第2面に配置されている熱分散装置を用いる修理方法であって、修理対象である部材に加熱を経て硬化する樹脂を含む修理材を配置するステップと、ヒーターマットの第1面を修理材に向け、ヒーターマットにより修理材を覆うステップと、ヒーターマットの第2面に熱分散装置を配置するステップと、ヒーターマットにより修理材を加熱するステップと、を備え、修理材を加熱するステップでは、液体を強制的に流動させることを特徴とする。
本発明の修理方法において、熱硬化性樹脂および繊維基材から形成されたプリプレグを含む修理材を用いることができる。
また、本発明の修理方法により、繊維強化樹脂を用いて形成された部材を修理することができる。
【0019】
本発明の接合方法は、
液体が封入されたバッグを備え、加熱対象に向けられる第1面および第1面とは反対側に位置する第2面を有するヒーターマットの第2面に配置されている熱分散装置を用いる接合方法であって、互いに接合される第1部材および第2部材の間に加熱を経て硬化する樹脂を含む接着剤を配置するステップと、ヒーターマットの第1面側を第1部材および第2部材の少なくとも一方に配置するステップと、ヒーターマットの第2面に熱分散装置を配置するステップと、ヒーターマットにより接着剤を加熱するステップと、を備え
、接着剤を加熱するステップでは、バッグ内に内蔵された熱源または熱分散装置に接続された熱源により、液体を加熱することを特徴とする。
また、本発明の修理方法は、液体が封入されたバッグを備え、加熱対象に向けられる第1面および第1面とは反対側に位置する第2面を有するヒーターマットの第2面に配置されている熱分散装置を用いる接合方法であって、互いに接合される第1部材および第2部材の間に加熱を経て硬化する樹脂を含む接着剤を配置するステップと、ヒーターマットの第1面側を第1部材および第2部材の少なくとも一方に配置するステップと、ヒーターマットの第2面に熱分散装置を配置するステップと、ヒーターマットにより接着剤を加熱するステップと、を備え、接着剤を加熱するステップでは、液体を強制的に流動させることを特徴とする。
本発明の接合方法により、繊維強化樹脂を用いて形成された部材を接合することができる。
【0020】
上記の修理方法および接合方法において、加熱するステップでは、バッグ内に内蔵された熱源または熱分散装置に接続された熱源により、液体を加熱することが好ましい。
また、加熱するステップでは、液体を強制的に流動させることが好ましい。
さらに、本発明の修理方法および接合方法は、航空機を構成する航空機部材を対象として行うことができる。
【0021】
本発明は、部材の成形方法に展開することができる。
例えば、部材の材料であるプリプレグをヒーターマットで加熱することにより、部材を成形することが可能である。
また、成形された第1部材に、第2部材の材料であるプリプレグを配置し、ヒーターマットでプリプレグを加熱することによって第2部材を成形するとともに第1部材に接合することも可能である。
さらに、部材の材料である繊維基材が配置されたキャビティ内を減圧させることでキャビティ内に樹脂を注入し(VaRTM(Vacuum Assisted Resin Transfer Molding))、ヒーターマットにより樹脂を加熱して硬化させることによっても、部材を成形することができる。
以上に例示した成形方法のいずれも、ヒーターマットの第1面を部材の材料に向け、ヒーターマットにより部材の材料を覆うステップと、ヒーターマットの第2面に熱分散装置を配置するステップと、ヒーターマットにより部材の材料を加熱するステップとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ヒーターマットと熱分散装置とを組み合わせて用いることで均熱化を図ることができるので、均熱化に寄与する新たな加熱装置を導入するコストを要することなく、経済的な装置構成により、加熱を伴う部材の修理や接合を高品位かつ迅速に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
図1(a)(b)に示す熱分散装置10は、ヒーターマット20(
図2(a))と共に、部材を修理したり部材同士を接合するために用いられる。
本実施形態では、熱分散装置10およびヒーターマット20を用いて、航空機の翼や胴体のスキン21(
図2(a))の損傷部を修理することについて説明する。
修理の概要としては、スキン21の損傷箇所に配置される修理材24をヒーターマット20により加熱することで、修理材24に含まれる熱硬化性樹脂を硬化させる。その際に、熱分散装置10は均熱化を図る。
【0025】
熱分散装置10は、液体11が封入されたバッグ12を備える。
液体11は、ヒーターマット20の熱が伝導されることで高温となっても沸騰しないように、ヒーターマット20から発せられる熱の温度に対して十分に沸点が高いものが選定される。本実施形態では、シリコーンオイルを用いるが、その他の熱媒体油なども用いることができる。
液体11は、バッグ12内で流動しながら熱を伝搬させる。
【0026】
バッグ12は、湾曲面にも追従可能な可撓性を有する材料から形成され、矩形の板状の外観を呈する。バッグ12は、ヒーターマット20から発せられる熱の温度に対して十分な耐熱性を有する。本実施形態のバッグ12は、シリコーンゴムから形成される。
【0027】
バッグ12内には、液体11が循環する回路13が形成される。
回路13は、
図1(b)に示すように、バッグ12の一端側から他端側へと幅方向Wに蛇行しながら向かう蛇行部131と、蛇行部131の終端からバッグ12の一端側まで帰還する帰還部132とを有する。
回路13は、バッグ12の四方に連続する外側壁13Aと、外側壁13Aの内側でバッグ12の厚み方向に沿って起立する内側壁13Bとによって形成されている。内側壁13B同士の間や、外側壁13Aと内側壁13Bとの間を通って液体11が循環する。
本実施形態のバッグ12は、
図1のIb−Ib線と同様の位置で分割して金型により成形される。金型は、外側壁13Aおよび内側壁13Bに対応する形態を有する。そして、バッグ12は、成形された二体をプレスにより接合することによって製作される。液体11は、二体を接合する前にバッグ12内に封入されてもよいし、二体が接合された後で、バッグ12の孔や隙間から封入されてもよい。
回路13を形成する内側壁13Bは、必ずしもバッグ12と一体に形成されている必要はない。バッグ12とは別体の内側壁13Bをバッグ12内に設けることによって回路13を形成することもできる。
【0028】
バッグ12内には、液体11を加熱する内部ヒーター14が設けられる。
内部ヒーター14は、例えば、電気抵抗が大であるニクロム、クロメル、カンタル(登録商標)等の電熱線15(
図1(b)に図示)から構成される。
電熱線15は、バッグ12内に任意の形態で設けることができるが、本実施形態では、内側壁13Bに沿って蛇行させることで、バッグ12の略全面に亘り電熱線15を設けている。
電熱線15は、図示しないリード線を介して電源装置から給電されると発熱し、液体11に直接接触して熱を与える。
なお、電熱線15をバッグ12の成形時にインサート成形することも可能である。
【0029】
バッグ12の一端側には、回路13に挿入され、バッグ12内の液体11を強制的に循環させるポンプ16が接続される。
ポンプ16は、バッグ12内の液体11を引き込み、回路13内へと押し出す。
バッグ12の一端側には、バッグ12内からポンプ16へと液体11を流出させる出口流路OUTと、ポンプ16からバッグ12内へと液体11を流入させる入口流路INとが設けられる。
【0030】
次に、航空機の主翼に用いられるスキン21に損傷が生じた場合に、ヒーターマット20および熱分散装置10を用いて修理する手順の一例について、
図3を参照しつつ説明する。
図2(a)に示すスキン21は、繊維強化樹脂から形成されている。スキン21に生じた損傷は、超音波探傷などにより状態を確かめてから適切な形態に除去される(除去ステップS1)。本実施形態の損傷はスカーフ加工により削り取られ、それによってスキン21にはすり鉢状(円錐台状)の凹部23が形成される。
凹部23の内周面は、洗浄により異物が除去されるとともに、接着に適した表面状態に加工される。
【0031】
凹部23が形成されると、凹部23を塞ぐ修理材24を用意し、凹部23に配置する(修理パッチ配置ステップS2)。
修理材24は、修理材の本体である修理パッチ25(修理プラグ)と、修理パッチ25をスキン21に接合するフィルム状接着剤26とを備える。
修理パッチ25は、繊維基材を熱硬化性樹脂に含浸させ、加熱により熱硬化性樹脂を硬化させることで形成される。
繊維基材は、例えば、炭素繊維、ガラス繊維等から形成することができる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ、ポリイミド、ポリウレタン、不飽和ポリエステル等を例示できる。
【0032】
修理パッチ25は、損傷の度合、必要な剛性、作業者の技量などに応じて、プリプレグ、予硬化されたもの(プリキュアパッチ)から選ぶことができる。
プリプレグは、繊維をシート状に賦形した繊維基材(プリフォーム)を熱硬化性樹脂に含浸させた中間素材であり、樹脂が未硬化であるために加工が容易である。
本実施形態の修理パッチ25は、スキン21に用いられたものと同様の繊維基材および熱硬化性樹脂から形成されたプリプレグを用いて、凹部23の形状に適合する円錐台状に製作される。
【0033】
一方、プリキュアパッチは、繊維基材を熱硬化性樹脂に含浸させ、予め、加熱により熱硬化性樹脂を硬化させたものである。プリキュアパッチは、定形で(多くは円形の板状)サイズの異なるものがいくつか用意されており、損傷のサイズに応じて選択される。
【0034】
フィルム状接着剤26は、例えば、エポキシ、ポリイミド、ポリウレタン、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂から形成される。
フィルム状接着剤26は、凹部23の底部および内周面に配置されることで、修理パッチ25とスキン21との間に挟み込まれる。
【0035】
なお、凹部23内に繊維基材を積み重ねながら熱硬化性樹脂に含浸させ、加熱により熱硬化性樹脂を硬化させるハンドレイアップにより、修理材24を凹部23内で形成するとともに修理対象(スキン21)に接合することも、本実施形態において許容される。
【0036】
次に、バキュームフィルム27により修理パッチ25およびその周囲のスキン21を覆い、バキュームフィルム27に設けられたバルブ28に図示しない真空ポンプを接続する。バキュームフィルム27とスキン21との間は、修理パッチ25の周囲に環状に配置されたシーラント材29により封止される。
そして、真空ポンプを作動させ、バキュームフィルム27の内側に位置する凹部23内を減圧する(減圧ステップS3)。すると、バキュームフィルム27の内側の圧力と外側の大気圧との差圧により修理パッチ25が圧縮されて緻密化される。
この後で行う修理材24の加熱中も、減圧された状態を維持することが好ましい。
【0037】
続いて、バキュームフィルム27を介して修理パッチ25およびその周囲を含む範囲にヒーターマット20を配置する(ヒーターマット配置ステップS4)。
ヒーターマット20は、シリコーンゴム等のゴム系材料から形成された矩形の板状のマットに、熱源としてのヒーター(電熱線等)が内蔵されたもので、スキン21の湾曲面にも追従可能な可撓性を有する。ゴム系材料の中に耐久性向上のためのファイバーを混入させることもできる。
ヒーターマット20は、加熱対象に向けられる第1面201および第1面201とは反対側に位置する第2面202を有しており、第1面201を修理パッチ25(加熱対象)に向けて配置される。
ヒーターマット20には、出力を調整可能な第1コントロールユニット31が接続される。
【0038】
さらに、ヒーターマット20の第2面202に熱分散装置10を重ねて配置する(熱分散装置配置ステップS5)。
このとき、ヒーターマット20と熱分散装置10との間に、ヒーターマット20および熱分散装置10の各々の出力調整の制御に使用可能な温度センサ30を配置する。本実施形態では、修理パッチ25の中央部251に対応する位置に温度センサ30を配置するが、修理パッチ25の周縁部252に温度センサ30を配置することもできる。
この温度センサ30により計測された温度を用いて、第1コントロールユニット31によるヒーターマット20の出力調整、および第2コントロールユニット32による熱分散装置10の内部ヒーター14の出力調整が行われる。
【0039】
温度センサ30としては、例えば、熱電対を用いることができる。
熱分散装置10は、本実施形態ではヒーターマット20と略同じ寸法および形状に形成されるので、ヒーターマット20の第2面202の全面に重ねられる(平面図である
図2(b)参照)。そして、バッグ12がヒーターマット20の第2面202に密着する。
熱分散装置10には、出力を調整可能な第2コントロールユニット32が接続される。
【0040】
次に、ヒーターマット20に通電し、修理材24を加熱する(加熱ステップS6)。
この加熱ステップS6では、熱分散装置10の内部ヒーター14により液体11を加熱するとともに、ポンプ16により液体11を回路13に沿って循環させる。
内部ヒーター14およびポンプ16の作動を開始するタイミングは任意であり、ヒーターマット20による加熱開始時と同時でなくても、その前後であってもよい。加熱ステップS6の前より内部ヒーター14を作動させることで、液体11を予熱しておくことも有効である。
なお、温度センサ30、第1コントロールユニット31、および第2コントロールユニット32を用いる温度制御については後述する。
【0041】
加熱により、修理材24が硬化に必要な温度にまで達すると、修理パッチ25およびフィルム状接着剤26に含まれる熱硬化性樹脂が硬化する。
ここで、ヒーターマット20により覆われる加熱範囲において、スキン21の板厚が均一であれば、中央部251および周縁部252を含む加熱範囲の全体に亘り熱容量が同一であるため、ヒーターマット20の第1面201の略全体から発せられる熱が、加熱範囲において均一に伝導する。修理材24の厚みに適合する出力のヒーターマット20が用いられていれば、ヒーターマット20の第1面201からの距離による厚み方向の温度勾配は少ないため、修理材24は厚みの全体に亘り加熱される。
しかし、加熱範囲において板厚が変化していると、板厚が大である箇所は、熱容量が大きいために、他の箇所と同じ熱を入力しても温度が上昇し難い。
また、加熱範囲において、スキン21の裏側に何も設けられていない所と、リブ、ストリンガ、装備品などの物33が設けられている所とが混在している場合も、物33が設けられる箇所は、熱容量が大きいために、他の箇所と同じ熱を入力しても温度が上昇し難い。
もし、ヒーターマット20の能力が、スキン21の板厚が大である箇所や、スキン21の裏側に物33が設けられる箇所の熱容量が問題とならない程、顕著に高い場合は、加熱範囲に温度差が出現しないが、現実的な出力のヒーターマット20を用いる限り、ヒーターマット20の第1面201から均一な熱が発せられていても加熱範囲に温度差が出現しうる。
【0042】
加熱範囲の温度差は、上記に挙げた理由の他、加熱範囲の周縁部においてヒーターマット20の側面やスキン21の表面から外気へと放熱されることを理由としても生じうる。
さらに、加熱範囲の温度差は、凹部23の全体を埋めるように修理パッチ25が厚く形成される場合、熱可塑性樹脂が硬化する過程で発する熱(反応熱)が修理パッチ25の中央部251に溜まり易いことを理由としても生じうる。
【0043】
以上より、ヒーターマット20から修理パッチ25の表面の略全域に亘り均一な熱が入力されたとしても、修理材24を均一に加熱することは難しい。
そのため、修理にあたり、事前に、接着させないための剥離可能なフィルムを介して凹部23内に修理パッチ25を配置した上で、加熱範囲における複数の箇所の温度を温度センサにより計測し、熱が不足する箇所に保温材を配置することが考えられる。熱が集中する箇所には放熱フィンを配置してもよい。
加熱範囲の温度差は、スキン21の板厚変化やスキン21の裏側の構造物等の有無を大きな要因として生じるので、実際の修理箇所で温度を計測する方法は妥当である。
しかし、保温材の位置やサイズを変えて温度計測を幾度も行い、適切な保温材の位置やサイズを定めるのには多大な時間および手間を要する。
しかも、事前の温度計測時と本番の修理時とにおける周囲温度の相違、剥離フィルムの除去による放熱の促進、あるいは温度計測ミスなどに起因して、加熱範囲に温度差が生じる可能性を排除できない。
【0044】
そこで、本実施形態では、熱分散装置10を用いることにより、加熱範囲に生じる温度差を抜本的に解決する。
熱分散装置10には、ヒーターマット20の第2面202から熱が伝達される。すると、第2面202付近に位置するバッグ12内の液体11が膨張してそれよりも上方の液体11に比べて密度が小さくなるので、密度差により浮力が生じる。
また、熱分散装置10は、ヒーターマット20を介して修理材24に熱的に結合しており、熱分散装置10にも、加熱範囲の温度差に対応する温度差が生じる。そのため、相対的に高温である箇所では低温である箇所と比べて液体11がより膨張して密度が小さくなる。
以上により、高温箇所と低温箇所との間で液体11の対流が起こる。
【0045】
対流により、バッグ12内の液体11の温度が平均化されると、ヒーターマット20を介して熱分散装置10と熱的に結合された修理材24において熱の移動が起こる。
例えば、修理パッチ25の中央部251が相対的に高温であり、修理パッチ25の周縁部252が相対的に低温である場合は、中央部251では修理パッチ25から液体11へと放熱され、周縁部252では液体11から修理パッチ25へと熱が移動する。
そうすると、修理パッチ25の中央部251の熱が液体11を介して周縁部252に分散されるので、修理材24の熱が均熱化されることとなる。
しかも、ヒーターマット20に熱分散装置10が重ねられることにより、ヒーターマット20の第2面202からの放熱を防ぐことができるので、加熱効率を向上させることができる。
【0046】
以上のように熱分散装置10により均熱化を図ると、修理材24の全体が、熱硬化性樹脂の硬化に必要な温度にまで達する。そして、熱硬化性樹脂が硬化を終えるまで加熱することで、修理パッチ25の全体が硬化するとともに、フィルム状接着剤26の全体が硬化して接着層を形成し、接着層を介して修理パッチ25がスキン21に接合される。
以上により、スキン21の修理が完了する。
【0047】
本実施形態によれば、熱分布調査に基づいて保温材の配置を試す事前作業を必要とすることなく、熱分散装置10により均熱化を図ることができる。
したがって、修理にすぐに着手し、修理材24の全体を熱硬化性樹脂の硬化に必要な温度にまで速やかに上昇させて品質が高い修理を行うことができる。
【0048】
また、本実施形態では、バッグ12内の液体11が内部ヒーター14により加熱されるので、ヒーターマット20から発せられる熱が液体11によって吸収されることなく、ヒーターマット20の能力を維持することができる。
【0049】
さらに、バッグ12内の回路13により液体11が案内されることで、液体11の流動が促進されるので、効率よく均熱化することができる。
その上、本実施形態では、ポンプ16により液体11を強制的に流動させているので、バッグ12内の液体11の流動による熱分散が促進され、より効率よく均熱化を図ることができる。
【0050】
以上に加えて、本実施形態では、温度センサ30、第1コントロールユニット31および第2コントロールユニット32を使用することにより、温度制御を行うことができる。
ここで、修理材24に含まれる熱硬化性樹脂の硬化に必要な温度に対応して、温度センサ30の設置箇所における目標温度を第1コントロールユニット31に設定する。ここでは、第1コントロールユニット31における目標温度が150℃であるものとする。第1コントロールユニット31は、目標温度に対する計測温度の偏差を解消するようにフィードバック制御を行う。
【0051】
したがって、第1コントロールユニット31は、温度センサ30により170℃が計測されたとすると、計測温度が150℃となるようにヒーターマット20の出力を下げるが、温度センサ30による計測温度が依然として150℃を上回るとする。
その場合、第2コントロールユニット32は、内部ヒーター14への通電をオフにするか、内部ヒーター14の出力を下げる。そうすると、温度が低下した液体11によりヒーターマット20の熱が吸収されるので、修理材24の温度を下げることができる。修理材24の温度低下に連動して、温度センサ30による計測温度も下がる。
その後、温度センサ30による計測温度が目標温度を下回れば、第2コントロールユニット32により内部ヒーター14の通電をオンするか、あるいは内部ヒーター14の出力を上げればよい。
【0052】
また、上記の場合とは逆に、温度センサ30による計測温度が目標温度よりも低いとすれば、第1コントロールユニット31はヒーターマット20の出力を上げるが、それでも計測温度が目標温度に達しない場合に、第2コントロールユニット32は、内部ヒーター14の出力を上げることで、ヒーターマット20による加熱を補助することができる。
【0053】
以上のように、内部ヒーター14の通電、出力を調整する第2コントロールユニット32が設けられていると、広範な周辺温度が想定される修理現場において、ヒーターマット20の出力調整範囲を逸脱する事態が生じたとしても、修理箇所に設置したヒーターマット20および熱分散装置10などの装置構成を変更することなく、第2コントロールユニット32の操作のみで、修理を続行することができる。
温度制御に用いる温度センサ30は、修理パッチ25とヒーターマット20との間に配置することも可能であるが、未硬化のプリプレグが用いられた修理パッチ25の表面に転写されることを避けるため、本実施形態のようにヒーターマット20と熱分散装置10との間に配置することが好ましい。
【0054】
なお、第2コントロールユニット32により、液体11の温度を所定範囲に保つために内部ヒーター14の通電をオンオフする、あるいは出力を可変に調整することもできる。その場合、バッグ12内に液体11の温度を計測する温度センサを設け、その計測温度を用いてフィードバック制御を行えばよい。
【0055】
液体11の温度制御と併用して、あるいは単独で、ポンプ16の能力を可変に制御することもできる。
その場合、バッグ12内の複数箇所の温度を温度センサにより計測することが好ましい。
例えば、修理パッチ25の中央部251に対応する位置と、修理パッチ25の周縁部252に対応する位置とでそれぞれ計測された温度の差が大きい場合、ポンプ16の回転を可変に制御するコントロール部により、ポンプ16の能力を上げる。すると、バッグ12内の液体11の流動が促進されるので、中央部251と周縁部252との間の温度差を早期に解消することができる。
【0056】
上述の温度制御は、バッグ12内に設定した複数の領域の各々に対して個別に行うこともできる。
例えば、
図4に示すように、バッグ12内が、バッグ12の平面中央に位置する中央領域121と、中央領域121よりも外側に位置する周囲領域122とに区画されるとする。
中央領域121は、修理パッチ25の中央部251に対向する。
周囲領域122は、修理パッチ25の周縁部252に対向する。
第2コントロールユニット32は、中央部251および周縁部252の各々に封入された液体11の温度を各領域に設けられた温度センサによる計測温度を用いて制御する。
【0057】
上記のように中央領域121と周囲領域122とにバッグ12内が区分されていると、熱が溜まり易い平面中央部と、その周囲との間の温度差が大きい場合に有利である。平面中央部を放熱させるために中央領域121には低温の液体11を循環させる一方、周囲領域122にはそれよりも高温の液体11を循環させて必要温度を確保することにより、効率よく均熱化を図って修理することができる。
なお、想定される温度分布に応じて、バッグ12内を任意の形態に区画することができる。
【0058】
図5は、本発明の変形例に係る熱分散装置40を示す。
熱分散装置40は、上述した内部ヒーター14を内蔵する代わりに、液体11を加熱する外部ヒーター41に接続される。
外部ヒーター41は、バッグ12内から液体11を流出させる出口部42と、バッグ12内へと液体11を流入させる入口部43とを介して熱分散装置40に接続されるケース44と、ケース44内に設けられる図示しない電熱線と、ケース44内の液体11の温度を制御するコントロールユニット45とを備える。
ケース44内には、必要に応じてポンプが設けられる。そのポンプにより、上述のポンプ16(
図1(b))を兼ねることができる。
コントロールユニット45は、ケース44内に設けられた温度センサによる計測温度を用いて液体11の温度を制御する。コントロールユニット45は、上述の第2コントロールユニット32の代わりに用いることができる。
【0059】
ヒーターマット20により修理材24を加熱する際は、外部ヒーター41の電熱線に通電し、外部ヒーター41にポンプが設けられる場合はポンプも作動させる。
外部ヒーター41は、出口部42を介してバッグ12内からケース44内へと引きこまれた液体11を電熱線により加熱し、入口部43を介してバッグ12内へと戻す。
そうすると、ヒーターマット20から発せられる熱が液体11により吸収されることなく、ヒーターマット20の能力を維持することができる。
【0060】
図6(a)は、別の変形例に係る熱分散装置70を示す。熱分散装置70が備えるバッグ72の内部には、渦巻状の回路73が形成されている。バッグ72内には、一対の渦巻状の周壁731,732が設けられている。これらの周壁731,732が180°位相をずらして互いに噛み合うように配置されることで、周壁731,732の間に、バッグ72内を周回しながら内周側に向かう往路73Aと、バッグ72内を周回しながら外周側に向かう復路73Bとが形成される。
【0061】
バッグ72の一端側には、回路73に挿入されるポンプ16が接続される。ポンプ16は、復路73Bを流れる液体11を引き込み、往路73Aへと押し出す。ポンプ16は、往路73Aと復路73Bのうちの一方(ここでは往路73A)と、バッグ72の外周に沿った経路74を介して接続される。
【0062】
回路73が渦巻状に形成されていると、液体11は、回路73に沿ってバッグ72の全面を通りながら、外周側から内周側へ、そして再び外周側へと流動するので、平面中央に溜まり易い熱を周囲に効率よく分散させることができる。
【0063】
バッグ72の形状は、円形に限らず矩形であってもよい。回路73の渦巻きの形態を直線で模擬し、矩形状に改変することもできる(
図6(c)参照)。
【0064】
また、
図6(b)に示すように、バッグ72内を厚み方向に2つに区切り、例えば上層721に往路73A、下層722に復路73Bを配置することもできる。その場合、
図6(c)に示すように、渦巻状の周壁731,732を同一の位相で配置することができる。往路73Aと復路73Bとは、渦巻の中心部に設けられた孔75を介して接続することができる。
【0065】
本発明の熱分散装置は、上述した修理のほか、部材同士を接合するために用いることもできる。
図7に示すように、第1部材51と第2部材52とは熱硬化性樹脂から形成された接着剤53により接合される。
ここでは、第1部材51および第2部材52は寸法が同じ板状の部材であり、第2部材52の厚みは第1部材51よりも薄い。
なお、第1部材51および第2部材52は、板状に限らず、任意の形態であってよい。また、両者の寸法は異なっていてもよい。
【0066】
本例では、第2部材52に第1部材51を重ね、それら第1部材51および第2部材52の界面に配置した接着剤53により第1部材51と第2部材52とを接合する。
【0067】
第1部材51と第2部材52を接合する際は、まず、第1部材51および第2部材52の間に接着剤53を配置する(接着剤配置ステップ)。例えば、液状の熱硬化性接着剤を塗布したり、フィルム状に成形された熱硬化性接着剤を第1部材51と第2部材52との間に挟み込むことができる。
次に、ヒーターマット20の第1面201側を第1部材51に配置する(ヒーターマット配置ステップ)。ヒーターマット20は、第1部材51と縦横の寸法が同等のものを用いる。
さらに、ヒーターマット20の第2面202に熱分散装置10を重ねる(熱分散装置配置ステップ)。熱分散装置10の代わりに熱分散装置40(
図5)を用いてもよい。
そして、ヒーターマット20により第1部材51を介して接着剤53を加熱する(加熱ステップ)。
加熱時、ヒーターマット20による加熱範囲に温度差が生じたとしても、上記実施形態と同様に、熱分散装置10のバッグ12内の液体11の流動により、相対的に高温の箇所から低温の箇所へと熱が分散されるので、接着剤53が均一に加熱される。そして接着剤53の全体に亘り、熱硬化性樹脂を硬化させることができる。
【0068】
本発明は、主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
本発明の熱分散装置は、ヒーターマット20の第2面202の一部の領域にのみ配置することもできる。
但し、液体11の流動により均熱化を図るため、相対的に高温であると見込まれる箇所と、低温であると見込まれる箇所とを含む範囲に熱分散装置を配置することが望まれる。
【0069】
本発明の熱分散装置によれば、熱分布調査に基づいて保温材の配置を定める事前作業を廃止することが可能である。このため、保温材を配置する場合は不可欠であった熱分布調査を行うことは必須ではない。しかし、本発明の熱分散装置を用いて修理、接合を行う際に、熱分布調査を行ってもよい。熱分布調査により、例えば、適合するヒーターマット20の能力、サイズ、熱分散装置10のサイズ、液体11の封入量等を決定することができる。
【0070】
本発明の熱分散装置が備えるバッグとして、2枚のフィルムが周縁部で封止されたものも採用することができる。その場合も、回路を形成する構造物をフィルムの間に配置することにより、フィルム間に封入された液体11を回路に沿って循環させることができる。
【0071】
上記実施形態では、熱分散装置10のバッグ12内の液体11を強制的に流動させるために、熱分散装置10にポンプ16を接続しているが、ポンプ16に代えて、バッグ12内の液体11を撹拌する羽根車等を設けることも本発明は許容する。
【0072】
本発明の修理方法により修理される部材、あるいは本発明の接合方法により接合される部材は、繊維強化樹脂、金属材料等、任意の材料から形成することができる。また、単一の素材から形成された部材に限らず、ハニカムコア等の芯材を板材で挟んだサンドイッチ構造の部材を対象として修理、接合を行うこともできる。
【0073】
また、本発明の修理方法で用いる修理材も、繊維強化樹脂、金属材料等、任意の材料から形成することができる。
また、本発明は、加熱されることを経て硬化する樹脂として、ナイロン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂を用いることも許容する。
【0074】
本発明において、加熱対象に向けられるヒーターマットの第1面にも熱分散装置を配置することで、その熱分散装置と、第2面に配置された熱分散装置との間にヒーターマットを挟むことも有効である。2つの熱分散装置を用いることにより、保温、放熱、熱分散の能力を向上させることができる。