(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の組成物では、耐加熱変形特性の点で更なる改善の余地があった。このため、優れた難燃性及び優れた機械的特性を確保しながら、優れた耐加熱変形特性をも確保することができる難燃性樹脂組成物が求められていた。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、優れた難燃性及び優れた機械的特性を確保しながら、優れた耐加熱変形特性をも確保することができる難燃性樹脂組成物及びこれを用いたケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため、難燃性樹脂組成物に使用するベース樹脂の種類及び配合割合について鋭意研究を行った。その結果、本発明者らは、特定のエチレン系重合体に特定の酸変性熱可塑性樹脂と特定のポリプロピレン樹脂を特定の割合で含有させてなるベース樹脂に、難燃剤を特定の割合で含有させてなる難燃性樹脂組成物により、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、エチレン系重合体(A)と、酸変性熱可塑性樹脂(B)と、ポリプロピレンブロック共重合体(C)と、難燃剤(D)とを含み、前記エチレン系重合体(A)は、エチレン−α−オレフィン重合体及びエチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体を含み、前記酸変性熱可塑性樹脂(B)は、無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂及びマレイン酸変性熱可塑性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂であり、前記ポリプロピレンブロック共重合体(C)は、0.90g/cm
3以上の密度を有し、前記エチレン系重合体(A)と前記酸変性熱可塑性樹脂(B)と前記ポリプロピレンブロック共重合体(C)との合計100質量%中の前記エチレン系重合体(A)の含有率が30〜50質量%、前記酸変性熱可塑性樹脂(B)の含有率が30〜40質量%、前記ポリプロピレンブロック共重合体(C)の含有率が20〜40質量%であり、前記エチレン系重合体(A)と前記酸変性熱可塑性樹脂(B)と前記ポリプロピレンブロック共重合体(C)との合計100質量部に対して前記難燃剤(D)が80〜96質量部の割合で配合され
、前記酸変性熱可塑性樹脂(B)は無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体からなり、前記難燃剤(D)が、金属水酸化物を含む難燃剤及びリン系難燃剤を含有し、金属水酸化物を含む難燃剤に対するリン系難燃剤の質量比が0.025〜0.035である難燃性樹脂組成物である。
【0009】
本発明の難燃性樹脂組成物によれば、優れた難燃性及び優れた機械的特性を確保しながら、優れた耐加熱変形特性をも確保することができる。
【0010】
なお、本発明者らは、本発明の難燃性樹脂組成物において、優れた耐加熱変形特性が得られる理由については以下のように推察している。
【0011】
すなわち、本発明の難燃性樹脂組成物は、エチレン系重合体(A)及び酸変性熱可塑性樹脂(B)の融点よりも高いポリプロピレンブロック共重合体(C)が所定の割合で配合されているため、耐加熱変形特性が向上しているのではないか、と本発明者らは考えている。なお、ポリプロピレンブロック共重合体(C)は結晶性が高いため、難燃剤(D)の分散性を阻害して機械的特性に影響する可能性があることから、この配合量を最小限に留めることで機械的特性の維持をも可能にさせていると、本発明者らは考えている。
【0012】
上記難燃性樹脂組成物においては、前記エチレン−α−オレフィン重合体に含まれる前記α−オレフィン単位が、ヘキセン単位であることが好ましい。
【0013】
この場合、難燃性樹脂組成物は、優れた硬度を有するものになり、耐擦過傷性に優れたものになる。
【0018】
また本発明は、導体と、前記導体を被覆する絶縁層と、前記絶縁層を覆うシースを有し、前記シースが、上述した難燃性樹脂組成物で構成されるケーブルである。
【0019】
本発明のケーブルによれば、シースが、上述した難燃性樹脂組成物で構成されているため、優れた難燃性及び優れた機械的特性を確保しながら、優れた耐加熱変形特性をも確保することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、優れた難燃性及び優れた機械的特性を確保しながら、優れた耐加熱変形特性をも確保することができる難燃性樹脂組成物及びこれを用いたケーブルが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について
図1及び
図2を用いて詳細に説明する。
【0023】
[ケーブル]
図1は、本発明に係るケーブルの一実施形態を示す部分側面図であり、丸形ケーブルを示すものである。
図2は、
図1のII−II線に沿った断面図である。
図1及び
図2に示すように、丸形ケーブル10は、絶縁電線4と、絶縁電線4を被覆するシース3とを備えている。そして、絶縁電線4は、内部導体1と、内部導体1を被覆する絶縁層2とを有している。
【0024】
ここで、シース3は難燃性樹脂組成物で構成されており、この難燃性樹脂組成物は、エチレン系重合体(A)と、酸変性熱可塑性樹脂(B)と、ポリプロピレンブロック共重合体(C)と、難燃剤(D)とを含み、前記エチレン系重合体(A)は、エチレン−α−オレフィン重合体及びエチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体を含み、酸変性熱可塑性樹脂(B)は、無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂及びマレイン酸変性熱可塑性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂であり、ポリプロピレンブロック共重合体(C)は、0.90g/cm
3以上の密度を有し、エチレン系重合体(A)と酸変性熱可塑性樹脂(B)とポリプロピレンブロック共重合体(C)との合計100質量%中のエチレン系重合体(A)の含有率が30〜50質量%、酸変性熱可塑性樹脂(B)の含有率が30〜40質量%、ポリプロピレンブロック共重合体(C)の含有率が20〜40質量%であり、エチレン系重合体(A)と酸変性熱可塑性樹脂(B)とポリプロピレンブロック共重合体(C)との合計100質量部に対して前記難燃剤(D)が80〜96質量部であ
り、前記酸変性熱可塑性樹脂(B)は無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体からなり、前記難燃剤(D)が、金属水酸化物を含む難燃剤及びリン系難燃剤を含有し、金属水酸化物を含む難燃剤に対するリン系難燃剤の質量比が0.025〜0.035である。
【0025】
上記難燃性樹脂組成物で構成されるシース3は、優れた難燃性及び優れた機械的特性を確保しながら、優れた耐加熱変形特性をも確保することができる。
【0026】
[ケーブルの製造方法]
次に、上述した丸形ケーブル10の製造方法について説明する。
【0027】
(内部導体)
まず内部導体1を準備する。内部導体1は、1本の素線のみで構成されてもよく、複数本の素線を束ねて構成されたものであってもよい。また、内部導体1は、導体径や導体の材質などについて特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜定めることができる。
【0028】
(難燃性樹脂組成物)
一方、難燃性樹脂組成物を準備する。難燃性樹脂組成物は、上述したように、エチレン系重合体(A)と、酸変性熱可塑性樹脂(B)と、ポリプロピレンブロック共重合体(C)と、難燃剤(D)とを含んでいる。
【0029】
(エチレン系重合体)
本発明の難燃性樹脂組成物に用いられるエチレン系重合体は、エチレン−α−オレフィン重合体及びエチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体を含む。
【0030】
エチレン−α−オレフィン重合体は、エチレンと、炭素数2〜19のα−オレフィンの重合体が挙げられる。α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン及び1−ノナデセンなどが挙げられる。
【0031】
この中でも、α−オレフィンは1−ブテン及び1−ヘキセンの少なくとも一方が好ましい。α−オレフィンは1種類のみが含有されても、2種類以上が含有されてもよい。
【0032】
上記エチレン−α−オレフィン重合体において、α−オレフィン単位がヘキセン単位であることが好ましい。この場合、難燃性樹脂組成物は優れた硬度を有するものになり、耐擦過傷性に優れたものになる。エチレン単位とヘキセン単位とを含むエチレン−α−オレフィン重合体としては、例えばエチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−ヘキセン−1−オクテン共重合体などが挙げられる。
【0033】
エチレン−α−オレフィン重合体は、シングルサイト触媒を用いて製造されたものであることが好ましい。シングルサイト触媒としては、例えばメタロセン触媒などが挙げられる。シングルサイト触媒を用いる方法以外の方法で製造された上記重合体は、シングルサイト触媒を用いる方法で製造された上記重合体に比べ多分散度Mw/Mnが大きいものになる。このため、エチレン−α−オレフィン重合体として、シングルサイト触媒を用いる方法以外の方法で製造された上記重合体を用いた場合、難燃性樹脂組成物に十分な機械的特性を付与することができない。ここで、Mwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量を示す。
【0034】
また、エチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体は、エチレンと、α,β−不飽和カルボン酸エステルとの共重合体が挙げられる。α,β−不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、メタアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタアクリル酸エチルなどが挙げられ、中でもアクリル酸エチルが好ましい。
【0035】
エチレン系重合体は、エチレン−α−オレフィン重合体及びエチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体のみからなることが好ましく、エチレン−α−オレフィン重合体及びエチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体の合計を100質量部のエチレン−α−オレフィン重合体の含有率が65〜80質量%、即ちエチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体の含有率が20〜35質量%であることが好ましい。
【0036】
(酸変性熱可塑性樹脂)
本発明の難燃性樹脂組成物に用いられる酸変性熱可塑性樹脂は、無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂及びマレイン酸変性熱可塑性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂である。
【0037】
無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂としては、例えば無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−1−ブテン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−1−ペンテン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−1−ヘキセン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−1−ヘプテン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−1−オクテン共重合体などが挙げられる。これらは1種類のみで用いられても、2種類以上で用いられてもよい。
【0038】
マレイン酸変性熱可塑性樹脂としては、例えばマレイン酸変性ポリエチレン、マレイン酸変性ポリプロピレン、マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体、マレイン酸変性エチレン−1−ブテン共重合体、マレイン酸変性エチレン−1−ペンテン共重合体、マレイン酸変性エチレン−1−ヘキセン共重合体、マレイン酸変性エチレン−1−ヘプテン共重合体、マレイン酸変性エチレン−1−オクテン共重合体などが挙げられる。これらは1種類のみが用いられても、2種類以上が用いられてもよい。
【0039】
本発明の難燃性樹脂組成物に用いられる酸変性熱可塑性樹脂は、無水マレイン酸変性熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0040】
この場合、難燃性樹脂組成物は、特に優れた耐加熱変形特性を有するものになる。
【0041】
(ポリプロピレンブロック共重合体)
本発明の難燃性樹脂組成物に用いられるポリプロピレンブロック共重合体は、ホモポリプロピレン、プロピレンと他のα−オレフィンの共重合体、及びα−オレフィン単独重合体の混合物である。ポリプロピレンブロック共重合体の密度は、0.90g/cm
3以上である。この共重合体の密度が0.90g/cm
3未満である場合、0.90g/cm
3以上である場合に比べて、十分な機械的特性を有することができない。また、ポリプロピレンブロック共重合体の密度は、0.91g/cm
3以下であることが好ましい。この場合、特に機械的特性が向上する。
【0042】
本発明の難燃性樹脂組成物においては、エチレン系重合体と酸変性熱可塑性樹脂とポリプロピレン樹脂との合計100質量%中のエチレン系重合体の含有率が30~50質量%、酸変性熱可塑性樹脂の含有率が30~40質量%、ポリプロピレンブロック共重合体の含有率が20~40質量%である。エチレン系重合体の含有率が30質量%未満であると、エチレン系重合体の含有率が30質量%以上である場合に比べて、難燃性樹脂組成物は十分な機械的特性を有することができない。一方、エチレン系重合体の含有率が50質量%を超えるとエチレン系重合体の含有率が50質量%以下である場合に比べて、難燃性樹脂組成物は十分な耐加熱変形特性を有することができない。また、酸変性熱可塑性樹脂の含有率が30質量%未満であると酸変性熱可塑性樹脂の含有率が30質量%以上である場合に比べて難燃性樹脂組成物は十分な耐加熱変形特性を有することができない。一方、酸変性熱可塑性樹脂の含有率が40質量%を超えると酸変性熱可塑性樹脂の含有率が40質量%以下である場合に比べて硬度が低くなり、磨耗性が悪化するとともに耐外傷性が悪化する。更に、ポリプロピレンブロック共重合体の含有率が20質量%未満であるとポリプロピレンブロック共重合体の含有率が20質量%以上である場合に比べて、難燃性樹脂組成物は十分な耐加熱変形特性を有することができない。一方、ポリプロピレンブロック共重合体の含有率が40質量%を超えるとポリプロピレンブロック共重合体の含有率が40質量%以下である場合に比べて、十分な機械的特性を有することができない。
【0043】
本発明の難燃性樹脂組成物においては、エチレン系重合体と酸変性熱可塑性樹脂との合計100質量%中のエチレン系重合体の含有率が50〜90質量%である。エチレン系重合体の含有率が50質量%未満である場合、すなわち酸変性熱可塑性樹脂の含有率が50質量%以上である場合、エチレン系重合体の含有率が50質量%以上である場合に比べて、硬度が低くなり、磨耗性が悪化するとともに耐外傷性が悪化する。一方、エチレン系重合体の含有率が90質量%を超える場合、すなわち、酸変性熱可塑性樹脂の含有率が10質量%以下である場合、難燃性樹脂組成物は十分な耐加熱変形特性を有することができない。
【0044】
(難燃剤)
本発明の難燃性樹脂組成物に用いられる難燃剤としては、例えば金属水酸化物を含む難燃剤、リン系難燃剤、イントメッセント系難燃剤などが挙げられる。これらは1種類が単独で用いられても、2種類以上で用いられてもよい。
【0045】
上記金属水酸化物としては、例えば水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。これらは1種類単独で用いられても、2種類以上が組み合わされて用いられてもよい。これらの中では水酸化マグネシウムが特に好ましい。上記難燃剤は、上記金属水酸化物を、例えば脂肪酸含有化合物、リン酸エステル、シランカップリング剤などの表面処理剤で表面処理してなるものであることが好ましい。この場合、難燃剤の樹脂中における分散性が優れたものになる。
【0046】
また、上記金属水酸化物を含む難燃剤は粒子状であり、平均粒径が0.5μm以上2μm未満であることが好ましい。平均粒径が0.5μm以上である場合、平均粒径が0.5μm未満である場合に比べて、加工時の作業性がよくなる。また、平均粒径が2μm未満である場合、平均粒径が2μm以上である場合に比べて、機械強度が向上するという利点がある。なお、本発明において、粒子の「平均粒径」とは、複数個の粒子を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)で観察したときの2次元画像の面積Sをそれぞれ求め、これらの面積Sをそれぞれ円の面積に等しいと考え、これらの面積から以下の式:
R=2×(S/π)
1/2
に基づいてそれぞれ算出したRの平均値を言うものとする。
【0047】
上記リン系難燃剤としては、例えば赤リン系難燃剤などが挙げられる。
【0048】
上記難燃剤は、金属水酸化物を含む難燃剤及びリン系難燃剤を含有することが好ましい。この場合、難燃性樹脂組成物は特に難燃性に優れたものになる。
【0049】
上記難燃剤が金属水酸化物を含む難燃剤及びリン系難燃剤を含有する場合、金属水酸化物を含む難燃剤に対するリン系難燃剤の質量比が0.025〜0.035であることが好ましい。この場合、難燃性樹脂組成物は、難燃剤の質量比が上記範囲を外れる場合に比べて、さらに優れた難燃性を有するものになる。
【0050】
本発明の難燃性樹脂組成物における難燃剤は、エチレン系重合体と酸変性熱可塑性樹脂とポリプロピレン樹脂との合計100質量部に対し、80〜96質量部の割合で配合される。難燃剤の配合割合が80質量部未満の場合、難燃性樹脂組成物は十分な難燃性を確保することができない。また、難燃剤の配合割合が96質量部を超える場合、難燃性樹脂組成物は十分な機械的特性を確保することができない。難燃剤の配合割合は、80〜93質量部であることが好ましい。
【0051】
上記難燃性樹脂組成物は、カーボンブラック、酸化防止剤、紫外線劣化防止剤、加工助剤、着色顔料、滑剤などの添加剤を必要に応じてさらに含んでもよい。
【0052】
上記難燃性樹脂組成物は、エチレン系重合体、酸変性熱可塑性樹脂、難燃剤等を混練することにより得ることができる。混練は、例えばバンバリーミキサ、タンブラ、加圧ニーダ、混練押出機、二軸押出機、ミキシングロール等の混練機で行うことができる。
【0053】
次に、上記難燃性樹脂組成物で内部導体1を被覆する。具体的には、上記の難燃性樹脂組成物を、押出機を用いて溶融混練し、チューブ状の押出物を形成する。そして、このチューブ状押出物を内部導体1上に連続的に被覆する。こうして絶縁電線4が得られる。
【0054】
(シース)
最後に、上記のようにして得られた絶縁電線4を用意し、この絶縁電線4を、上述した難燃性樹脂組成物を用いて作製したシース3で被覆する。シース3は、絶縁層2を物理的又は化学的な損傷から保護するものである。
【0055】
以上のようにして丸形ケーブル10が得られる。
【0056】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では丸形ケーブル10は1本の絶縁電線4を有しているが、本発明のケーブルは丸形ケーブルに限定されるものではなく、またシース3の内側に絶縁電線4を2本以上有するものであってもよい。またシース3と絶縁電線4との間には、ポリプロピレン等からなる樹脂部が設けられていてもよい。さらに、本発明のケーブルは、同軸ケーブルのようにシース3と絶縁電線4との間に外部導体を更に有していてもよい。
【0057】
また上記実施形態では、絶縁電線4の絶縁層2、シース3が上記の難燃性樹脂組成物で構成されているが、絶縁層2が通常の絶縁樹脂で構成され、シース3のみが、上記の難燃性樹脂組成物で構成されてもよい。
【0058】
さらにまた上記実施形態では、本発明の難燃性樹脂組成物がケーブルの絶縁層およびシースを構成する材料として用いられているが、本発明の難燃性樹脂組成物は、チューブ、テープ、包装材、建材などにも使用することが可能である。
【実施例1】
【0059】
以下、本発明の内容を、実施例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0060】
(実施例1〜5
、比較例1
及び2)
エチレン系重合体(A)、酸変性熱可塑性樹脂(B)、ポリプロピレンブロック共重合体(C)、難燃剤(D)及びカーボンブラック(E)を、表1に示す配合量で配合し、バンバリーミキサによって160℃にて15分間混練し、実施例1〜5及び比較例1〜3の難燃性樹脂組成物を得た。なお、表1において、各配合成分の配合量の単位は質量部である。
【0061】
上記エチレン系重合体(A)、酸変性熱可塑性樹脂(B)、ポリプロピレンブロック共重合体(C)、難燃剤(D)、カーボンブラック(E)及び酸化防止剤(F)としては具体的には下記のものを用いた。
【0062】
(A)エチレン系重合体
(A−1)エチレン−1−ヘキセン共重合体、メタロセン触媒を用いて製造されたもの、密度0.92g/cm
3(住友化学社製、商品名「エクセレンGMH CB5001」)
(A−2)エチレン−アクリル酸エチル共重合体:EEA(日本ポリエチレン社製、商品名「レクスパールA1150」)
【0063】
(B)酸変性熱可塑性樹脂
無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体(三井化学社製、商品名「タフマーMA8510」)
【0064】
(C)ポリプロピレンブロック共重合体
(C−1)
ポリプロピレンブロック共重合体、密度0.91g/cm
3(プライムポリマー社製、商品名「J704UG」)
(C−2)
ポリプロピレンブロック共重合体、密度0.90g/cm
3(プライムポリマー社製、商品名「J452HP」)
【0065】
(D)難燃剤
(D−1)ステアリン酸表面処理水酸化マグネシウム粒子、平均粒径0.8μm(協和化学工業社製、商品名「キスマ5A」)
(D−2)赤リン系難燃剤、赤リン含有量78%以上、平均粒径10μm(燐化学工業社製、商品名「ノーバレット120UF」)
【0066】
(E)カーボンブラック
(E−1)カーボンブラック、平均粒径78nm(旭カーボン社製、商品名「カーボン旭#35」)
(E−2)カーボンブラック、平均粒径31μm(三菱化学社製、商品名「ダイヤブラックH」)
【0067】
(F)酸化防止剤
(F−1)ヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASF社製、商品名「イルガノックス1010」)
(F−2)ヒンダードアミン系酸化防止剤(BASF社製、商品名「チヌピン622LD」)
【0068】
次いで、実施例1〜5
、比較例1
及び2の難燃性樹脂組成物をバンバリーミキサによって160℃にて15分間混練した。その後、この難燃性樹脂組成物を、単軸押出機(L/D=20、スクリュー形状:フルフライトスクリュー、マース精機社製)に投入し、その押出機からからチューブ状の押出物を押し出し、導体(素線数1本/断面積2mm
2)上に、厚さ0.7mmとなるように被覆した。こうして絶縁電線を得た。
【表1】
【0069】
<特性評価>
(機械的特性)
(1)引張試験
実施例1〜5
、比較例1
及び2の難燃性樹脂組成物について、JIS−K6251に準拠して押し出し機で成形板を作製し、この成形板を打抜刃で打ち抜き、ダンベル状試験片を作製した。ダンベル状試験片のサイズは標点間距離20mm、最小幅5mm、最大幅25mm、全長100mmとした。そして、このダンベル状試験片について、JIS C3005により引張試験を行い、破断強度及び引張伸びを測定した。引張試験において、引張速度は200mm/minとした。結果を表1に示す。表1において、破断強度の単位はMPaであり、引張伸びの単位は%である。引張試験の合否基準は下記の通りとした。
破断強度10MPa以上かつ引張伸び300%以上:合格
破断強度10MPa未満または引張伸び300%未満:不合格
【0070】
(2)ショアD硬度
実施例1〜5
、比較例1
及び2の難燃性樹脂組成物を成形してなる35mm×35mm×厚さ2mmの正方形の試験片について、JIS K7215に準拠してデュロメータ硬度計で表面硬さを示すショアD硬度を測定した。荷重保持時間0秒の瞬間値での測定結果を表1に示す。ショアD硬度が5
3以上であれば合格とし、53未満であれば不合格とした。
【0071】
(耐加熱変形特性)
実施例1〜5
、比較例1
及び2の難燃性樹脂組成物を成形してなる35mm×35mm×厚さ2mmの正方形の試験片について、加熱変形試験を行い、耐加熱変形特性を評価した。加熱変形試験において、試験温度は120℃、荷重は19.6N、予熱時間は1時間、試験時間は1時間とした。耐加熱変形性の評価は、加熱変形試験前の試験片の厚さ(試験前厚さ)と加熱変形試験後の試験片の厚さ(試験後厚さ)を測定し、下記式により算出された加熱変形率(%)に基づいて行った。
加熱変形率(%)=[(試験前厚さ)−(試験後厚さ)]/(試験前厚さ)×100(%)
結果を表1に示す。耐加熱変形特性については、加熱変形率が20%未満の場合を合格とし、加熱変形率が20%以上である場合を不合格とした。
【0072】
(難燃性)
実施例1〜5
、比較例1
及び2の難燃性樹脂組成物で導体を被覆した上記の絶縁電線について、IEEE383−1974規格に準拠した垂直トレイ燃焼試験を行った。すなわち、絶縁電線を2400mm切り出し、垂直ラダートレイに設置した。そして、トレイの底部から600mmの位置にバーナーを設置し、火炎の長さ約380mm、火炎の中心温度815℃以上で燃焼を開始した。燃焼を20分行い、その後バーナーの火を消し、絶縁電線の燃焼が終了するまで保持した。燃焼終了後、燃焼位置(ケーブル表面が炭化した位置)を確認し、上端まで燃焼しなかったものについては表1の垂直トレイ燃焼試験の欄に「○」と記入し、上端まで燃焼したものについては「×」と記入した。難燃性の合否基準については以下の通りとした。
垂直トレイ燃焼試験の結果が「○」:合格
垂直トレイ燃焼試験の結果が「×」:不合格
【0073】
表1に示すように、実施例1〜5の難燃性樹脂組成物は、機械的特性、耐加熱変形特性及び難燃性について合格基準に達していた。一方、比較例1
及び2の難燃性樹脂組成物は機械的特性及び耐加熱変形特性のうちのいずれかについて合格基準に達していなかった。
【0074】
以上より、本発明の難燃性樹脂組成物によれば、優れた難燃性及び優れた機械的特性を確保しながら、優れた耐加熱変形特性をも確保することができることが確認された。