特許第6362894号(P6362894)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6362894情報処理装置、表示装置、表示方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362894
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】情報処理装置、表示装置、表示方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/22 20180101AFI20180712BHJP
【FI】
   G06Q50/22
【請求項の数】10
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2014-59862(P2014-59862)
(22)【出願日】2014年3月24日
(65)【公開番号】特開2015-184864(P2015-184864A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2017年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】301063496
【氏名又は名称】東芝デジタルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 和明
(72)【発明者】
【氏名】山口 啓一郎
(72)【発明者】
【氏名】相田 聡
【審査官】 鈴木 和樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−209394(JP,A)
【文献】 特開2013−050901(JP,A)
【文献】 特開2006−107222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受診勧奨の対象者に関する対象者データを格納する格納手段と、
前記受診勧奨に対する前記対象者の対応を示す対応データであって、前記受診勧奨を受けることに同意したか否かを示す反応データ及び受診を開始したか否かを示す行動データを含む対応データを入力する入力手段と、
前記入力された対応データを蓄積する蓄積手段と、
前記蓄積手段に蓄積された対応データに含まれる反応データに基づいて取得される前記対象者が前記受診勧奨を受けることに同意しなかった第1の回数及び前記蓄積手段に蓄積された対応データに含まれる行動データに基づいて取得される前記対象者が前記受診勧奨を受けることに同意したが受診を開始しなかった第2の回数に基づいて、受診勧奨または受診に関する前記対象者の消極性を表す指数を算出する算出手段と、
前記格納手段に格納された対象者データ、前記第1の回数及び前記第2の回数を表示するための対象者表示データを、前記算出された指数に基づいて出力する出力手段と
を具備する情報処理装置。
【請求項2】
前記出力された対象者表示データを表示する表示手段を更に具備する請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記出力手段は、前記対象者表示データを表示可能な外部装置に出力する請求項1記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記出力手段は、前記対象者表示データを印刷可能な印刷装置に出力する請求項1記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記対象者データは、前記対象者を識別するための識別情報及び当該対象者に対する健康診断の結果を含む請求項1記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記対象者に対する健康診断の結果に基づいて前記対象者を抽出する抽出手段を更に具備し、
前記格納手段は、前記抽出された対象者に関する対象者データを格納する
請求項1記載の情報処理装置。
【請求項7】
受診勧奨の対象者に関する対象者データを格納する格納手段及び蓄積手段を有するサーバ装置と通信可能に接続される情報処理装置において、
前記受診勧奨に対する前記対象者の対応を示す対応データであって、前記受診勧奨を受けることに同意したか否かを示す反応データ及び受診を開始したか否かを示す行動データを含む対応データを入力する入力手段と、
前記入力された対応データを前記蓄積手段に蓄積する蓄積処理手段と、
前記蓄積手段に蓄積された対応データに含まれる反応データに基づいて取得される前記対象者が前記受診勧奨を受けることに同意しなかった第1の回数及び前記蓄積手段に蓄積された対応データに含まれる行動データに基づいて取得される前記対象者が前記受診勧奨を受けることに同意したが受診を開始しなかった第2の回数に基づいて、受診勧奨または受診に関する前記対象者の消極性を表す指数を算出する算出手段と、
前記格納手段に格納された対象者データ、前記第1の回数及び前記第2の回数を表示するための対象者表示データを、前記算出された指数に基づいて出力する出力手段と
を具備する情報処理装置。
【請求項8】
受診勧奨の対象者に関する対象者データ及び受診勧奨に対する前記対象者の過去の対応を示す対応データを表示するための対象者表示データを取得する取得手段と、
前記取得された対象者表示データを表示する表示手段と
を具備し、
前記対応データは、前記受診勧奨を受けることに同意したか否かを示す反応データ及び受診を開始したか否かを示す行動データを含み、
前記対象者表示データは、前記対象者データ、前記対応データに含まれる反応データに基づいて取得される前記対象者が前記受診勧奨を受けることに同意しなかった第1の回数及び前記対応データに含まれる行動データに基づいて取得される前記対象者が前記受診勧奨を受けることに同意したが受診を開始しなかった第2の回数を表示するためのデータであり、前記第1の回数及び前記第2の回数に基づいて算出された受診勧奨または受診に関する前記対象者の消極性を表す指数に基づいて表示される
情報処理装置。
【請求項9】
受診勧奨の対象者に関する対象者データを格納する格納手段及び蓄積手段を有する情報処理装置が実行する表示方法であって、
前記受診勧奨に対する前記対象者の対応を示す対応データであって、前記受診勧奨を受けることに同意したか否かを示す反応データ及び受診を開始したか否かを示す行動データを含む対応データを入力するステップと、
前記入力された対応データを前記蓄積手段に蓄積するステップと、
前記蓄積手段に蓄積された対応データに含まれる反応データに基づいて取得される前記対象者が前記受診勧奨を受けることに同意しなかった第1の回数及び前記蓄積手段に蓄積された対応データに含まれる行動データに基づいて取得される前記対象者が前記受診勧奨を受けることに同意したが受診を開始しなかった第2の回数に基づいて、受診勧奨または受診に関する前記対象者の消極性を表す指数を算出するステップと、
前記格納手段に格納された対象者データ、前記第1の回数及び前記第2の回数を表示するための対象者表示データを、前記算出された指数に基づいて出力するステップと
を具備する表示方法。
【請求項10】
受診勧奨の対象者に関する対象者データを格納する格納手段及び蓄積手段を有する情報処理装置のコンピュータが実行するプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記受診勧奨に対する前記対象者の対応を示す対応データであって、前記受診勧奨を受けることに同意したか否かを示す反応データ及び受診を開始したか否かを示す行動データを含む対応データを入力するステップと、
前記入力された対応データを前記蓄積手段に蓄積するステップと、
前記蓄積手段に蓄積された対応データに含まれる反応データに基づいて取得される前記対象者が前記受診勧奨を受けることに同意しなかった第1の回数及び前記蓄積手段に蓄積された対応データに含まれる行動データに基づいて主臆される前記対象者が前記受診勧奨を受けることに同意したが受診を開始しなかった第2の回数に基づいて、受診勧奨または受診に関する前記対象者の消極性を表す指数を算出するステップと、
前記格納手段に格納された対象者データ、前記第1の回数及び前記第2の回数を表示するための対象者表示データを、前記算出された指数に基づいて出力するステップと
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、受診勧奨の対象者に関するデータを表示するための情報処理装置、表示装置、表示方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療機関が保険者(例えば、健康保険組合等)に請求する医療報酬の明細書(以下、レセプトと表記)や事業主等が実施する健康診断の結果(以下、健診記録と表記)は、紙媒体(紙ベース)で保存されていた。
【0003】
これに対して、近年では、レセプトの電子化が進み、健診記録の電子化も開始されている。これによれば、健康保険組合または事業主等が保有する様々な電子データ(レセプト及び健診記録の電子データ)を照らし合わせること(突合分析)が可能となるため、当該分析結果に基づいて各種疾病に関するハイリスク者を抽出するという試みがなされている。なお、ハイリスク者とは、例えば健康状態が悪いにもかかわらず診療(診察または治療)を受けていないために生活習慣病等の病状が重症化するリスクの高い者(つまり、有病未治療者)をいう。
【0004】
このようなハイリスク者(以下、対象者とも表記)について、早期にかかりつけ医等の医師に相談し、高血圧症や糖尿病等の生活習慣病の重症化及び合併症の発症を予防することを目的とする受診勧奨が行われている。
【0005】
例えば、健診結果から健康度向上のための介入サービスを提案することが行われている。しかし、この場合では目的が健康度の向上であって有病未治療者に対する受診勧奨ではないので、当該年度のサービスに同意してその提供を受けることと次年次のサービス対象者に該当することが基本的に無関係であって、当該年度にサービスを利用しても次年度も介入サービス対象になり得て、またサービスを拒否しても必ずしも次年度も介入サービス対象になるとは限らない。したがって、特にサービス提供に対する同意と拒否に注目した複数年を跨いだ管理はされていない。当該年度にサービスを利用した場合に、次年度も介入サービスの対象になり得ること、また、サービスを拒否した場合の取扱いは考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−341611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的に、保険者等は、対象者に対して受診を強制することはできない。このため、例えば対象者に対して受診勧奨を実施したとしても、仕事が多忙である等の種々の理由で受診しない対象者も一定の割合で存在する。更には、受診勧奨を受けることさえ辞退または拒否する対象者も存在する。
【0008】
これらの対象者は、結果的に診療を受けていないため、その大部分が次年度もハイリスク者として抽出される可能性が高い。このような対象者に対しては受診勧奨が毎年実施されることになるが、毎年同様の受診勧奨を実施したとしても、受診を開始する対象者は少ないと思われる。また、例えば初年度は受診勧奨に応じて受診を開始したものの、年度を重ねる毎に受診勧奨が実施されたとしても受診しないことが多くなり、結果的には、受診勧奨を受けることを辞退または拒否する者が増加することも懸念される。
【0009】
受診勧奨の目的は対象者に受診を開始させる点であることを鑑みると、上記したように受診勧奨を受けることを辞退または拒否する対象者や当該受診勧奨を実施したとしても受診を開始しない対象者が増加することは、受診勧奨の効果が低下していることを意味する。これは、対象者の病状の重症化を招き、更には、将来的な医療費の増大の原因となる。
【0010】
したがって、このような対象者に対しては異なる措置を講ずることができるような仕組みを構築し、受診勧奨の効果の低下を抑制することが望まれている。
【0011】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、対象者に対して実施される受診勧奨の効果の低下を抑制するために有用な情報処理装置、表示装置、表示方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
実施形態に係る情報処理装置は、格納手段と、入力手段と、蓄積手段と、算出手段と、出力手段とを具備する。格納手段は、受診勧奨の対象者に関する対象者データを格納する。入力手段は、前記受診勧奨に対する前記対象者の対応を示す対応データであって、前記受診勧奨を受けることに同意したか否かを示す反応データ及び受診を開始したか否かを示す行動データを含む対応データを入力する。蓄積手段は、前記入力された対応データを蓄積する。算出手段は、前記蓄積手段に蓄積された対応データに含まれる反応データに基づいて取得される前記対象者が前記受診勧奨を受けることに同意しなかった第1の回数及び前記蓄積手段に蓄積された対応データに含まれる行動データに基づいて取得される前記対象者が前記受診勧奨を受けることに同意したが受診を開始しなかった第2の回数に基づいて、受診勧奨または受診に関する前記対象者の消極性を表す指数を算出する。出力手段は、前記格納手段に格納された対象者データ、前記第1の回数及び前記第2の回数を表示するための対象者表示データを、前記算出された指数に基づいて出力する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る情報処理装置の主として機能構成の一例を示すブロック図。
図2】初年度の対象者表示処理の処理手順の一例を示すフローチャート。
図3】初年度において対象者データ格納部に格納される対象者データのデータ構造の一例を示す図。
図4】初年度の対応データが蓄積された対応データ蓄積部のデータ構造の一例を示す図。
図5】対象者抽出処理の処理手順の一例を示すフローチャート。
図6】2年度以降の対象者表示処理の処理手順の一例を示すフローチャート。
図7】2年度において対象者データ格納部に格納された対象者データのデータ構造の一例を示す図。
図8】本実施形態において対象者表示データが表示された際の表示画面の一例を示す図。
図9】入力部によって入力された2年度の対応データのデータ構造の一例を示す図。
図10】2年度の対応データが蓄積された対応データ蓄積部のデータ構造の一例を示す図。
図11】本実施形態に係る情報処理装置を用いた場合における受診勧奨の効果について説明するための図。
図12】本実施形態に係る情報処理装置を用いていない場合における受診勧奨の効果について説明するための図。
図13】第2の実施形態における初年度の対応データが蓄積された対応データ蓄積部のデータ構造の一例を示す図。
図14】2年度以降の対象者表示処理の処理手順の一例を示すフローチャート。
図15】本実施形態において対象者表示データが表示された際の表示画面の一例を示す図。
図16】入力部において入力された2年度の対応データのデータ構造の一例を示す図。
図17】2年度の対応データが蓄積された対応データ蓄積部のデータ構造の一例を示す図。
図18】本実施形態に係る情報処理装置を用いた場合における受診勧奨の効果について説明するための図。
図19】本実施形態に係る情報処理装置を用いていない場合における受診勧奨の効果について説明するための図。
図20】第3の実施形態において対象者表示データが表示された際の表示画面の一例を示す図。
図21】本実施形態に係る情報処理装置を用いた場合における受診勧奨の効果について説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、各実施形態について説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係る情報処理装置の主として機能構成を示すブロック図である。本実施形態に係る情報処理装置は、病状が重症化するリスクの高い対象者(ハイリスク者)に対して受診勧奨を実施する際に、当該対象者に関するデータを表示するために用いられる。なお、この情報処理装置は、受診勧奨を実施する例えば健康保険組合の医療保健スタッフ等によって利用される。
【0016】
図1に示すように、情報処理装置10は、健康データ格納部11、対象者抽出部12、対象者データ格納部13、入力部14、対応データ蓄積部15、表示データ生成部16及び出力部17を含む。
【0017】
なお、これら各部11〜17のうち、健康データ格納部11、対象者データ格納部13及び対応データ蓄積部15は、例えば情報処理装置10に備えられる外部記憶装置(図示せず)等に格納されてもよい。また、対象者抽出部12、入力部14、表示データ生成部16及び出力部17は、情報処理装置10のコンピュータがプログラムを実行することによって実現されてもよい。なお、このプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に予め格納して頒布可能であるし、例えばネットワークを介して情報処理装置10にダウンロードされても構わない。
【0018】
健康データ格納部11には、例えば健康保険等の保険加入者毎の健康に関するデータ(以下、健康データと表記)が格納される。健康データ格納部11に格納される健康データには、レセプトデータ及び健診データが含まれる。
【0019】
レセプトデータは、保険加入者が医療機関を利用した場合に当該医療機関が保険者(例えば、健康保険組合等)に請求する医療報酬の明細書(レセプト)の電子データである。このレセプトデータには、例えば保険加入者が医療機関を利用した年月日や当該医療機関において受けた診療の内容等が含まれる。
【0020】
健診データは、保険加入者に対する健康診断の結果(健診記録)の電子データである。この健診データには、身長及び体重等に加え、例えば各種疾病の進行度を判断するために指標となる値(以下、疾病に関する指標値と表記)等が含まれている。
【0021】
対象者抽出部12は、健康データ格納部11に格納されている保険加入者毎の健康データ(レセプトデータ及び健診データ)に基づいて、当該保険加入者の中から上記した病状が重症化するリスクの高い対象者を抽出する。ここで対象者抽出部12によって抽出される対象者には、例えば健康状態が悪いにもかかわらず診療(診察または治療)を受けていない者(つまり、有病未治療者)が含まれる。
【0022】
対象者抽出部12は、抽出された対象者に関するデータ(以下、対象者データと表記)を対象者データ格納部13に格納する。この対象者データには、例えば対象者を識別するための識別情報(以下、対象者IDと表記)及び当該対象者の氏名(以下、対象者名と表記)に加え、当該対象者の健康診断の結果(以下、健診内容と表記)等が含まれる。
【0023】
入力部14は、対象者データ格納部13に格納された対象者データに含まれる対象者ID及び対象者名等によって特定される対象者(つまり、対象者抽出部12によって抽出された対象者)の受診勧奨に対する対応を示す対応データを入力する。この対応データは、例えばキーボード等に対する情報処理装置10の管理者(例えば、医療保健スタッフ等)の操作に応じて入力されるものとする。
【0024】
対応データ蓄積部15には、入力部14によって入力された対応データが蓄積される。なお、対応データ蓄積部15には、受診勧奨が実施される度に対応データが蓄積される。
【0025】
表示データ生成部16は、受診勧奨の対象者に関する対象者データを対象者データ格納部13から取得し、当該対象者データを表示するための対象者表示データを生成する。また、表示データ生成部16は、上記したように対応データ蓄積部15に対応データが蓄積されている場合には、受診勧奨の対象者の受診勧奨に対する過去の対応を示す対応データを当該対応データ蓄積部15から取得する。この場合、表示データ生成部16は、上記した対象者データ及び取得された対応データを表示するための対象者表示データを生成する。
【0026】
表示データ生成部16によって生成された表示データは、出力部17によって出力される。
【0027】
次に、本実施形態に係る情報処理装置10の動作について説明する。以下の説明では、例えば企業において各従業員などの健康診断が年度毎に1回行われるものとし、当該健康診断の後、数ヶ月後に受診勧奨が実施されるものとする。すなわち、受診勧奨は年度毎に実施されるものとする。この場合、健康データ格納部11には、企業の各従業員の健康データが格納されているものとする。
【0028】
以下、初年度(1年目)の受診勧奨が実施される場合の情報処理装置10の処理(以下、初年度の対象者表示処理と表記)及び2年度以降(2年目以降)の受診勧奨が実施される場合の情報処理装置10の処理(以下、2年度以降の対象者表示処理と表記)について説明する。
【0029】
まず、図2のフローチャートを参照して、初年度の対象者表示処理の処理手順について説明する。ここでは初年度であるため、過去に受診勧奨は実施されておらず、対応データ蓄積部15には対応データが蓄積されていないものとする。
【0030】
この場合、対象者抽出部12は、健康データ格納部11に格納されている健康データに基づいて、対象者抽出処理を実行する(ステップS1)。この対象者抽出処理によれば、企業の従業員の中から病状が重症化するリスクの高い対象者が抽出される。なお、対象者抽出処理の詳細については後述する。
【0031】
次に、対象者抽出部12は、抽出された対象者を識別するための対象者ID、対象者名及び当該対象者の健診内容を含む対象者データを、対象者データ格納部13に格納する(ステップS2)。なお、対象者ID及び対象者名は、情報処理装置10の内部に保持していてもよいし、他の装置(システム)等から取得しても構わない。また、対象者の健診内容は、健康データ格納部11に格納されている当該対象者の健康データ(健診データ)等から取得する。
【0032】
ここで、図3は、対象者データ格納部13に格納される対象者データのデータ構造の一例を示す図である。
【0033】
図3に示すように、対象者データ格納部13に格納される対象者データには、対象者ID、対象者名及び健診内容が対応づけて含まれる。対象者IDは、上記した対象者抽出部12によって抽出された対象者を識別するための識別情報である。対象者名は、対象者IDによって識別される対象者の氏名である。健診内容は、対象者IDによって識別される対象者に対する健康診断の結果等である。図3では省略したが、健診内容には、対象者の身長、体重及び各種疾病に関する指標値(例えば、血圧値)等が含まれる。
【0034】
図3に示す例では、対象者データ格納部13には、対象者A〜Lに関する対象者データが格納されている。例えば、対象者Aに関する対象者データには、対象者ID「1」、対象者名「対象者A」及び健診内容「健診内容A」が含まれる。
【0035】
また、図3に示す対象者データには、例えば治療状況(履歴)等の他のデータが含まれていても構わない。
【0036】
再び図2に戻ると、上記したように対象者データが対象者データ格納部13に格納された場合、例えば受診勧奨を担当する医療保健スタッフ等(以下、単に担当者と表記)は、対象者に対して受診勧奨を実施するために、当該情報処理装置10を操作することによって対象者データの表示を指示することができる。
【0037】
この場合、上記したように対応データ蓄積部15には対応データが蓄積されていないため、表示データ生成部16は、対象者データ格納部13に格納されている対象者データに基づいて対象者表示データを生成する(ステップS3)。この場合、表示データ生成部16は、例えば対象者(データ)の一覧を表示するための対象者表示データを生成する。
【0038】
出力部17は、表示データ生成部16によって生成された対象者表示データを出力する(ステップS4)。この場合、対象者表示データは、例えば情報処理装置10に備えられるディスプレイ等の表示装置に出力されることによって、当該表示装置に表示される。
【0039】
上記した担当者は、表示された対象者表示データを確認することによって、受診勧奨の対象となる対象者を把握し、当該対象者表示データに含まれる健診内容等を利用して受診勧奨を実施することができる。一般的には、対象者に対して本人の健康リスク(病状が重症化するリスク)、生活習慣問診アンケート等が通知される。その後、電話または面談による受診勧奨が行われる。電話の場合は、まず、生活習慣問診アンケート結果の聞き取りが行われ、その後、受診勧奨または生活習慣改善指導等が電話で行われる。面談の場合は、初回の面談で生活習慣の問診、受診勧奨等が行われ、その後、受診勧奨または生活習慣改善指導等が電話で行われる。このような受診勧奨が実施されることにより、対象者は例えば自身の病状の重症化するリスクについて適切に把握することができるため、当該対象者が積極的に受診を開始することが期待される。なお、電話、面談のいずれによる受診勧奨でも、まず、受診勧奨を受けることの可否が対象者に問い合わされ、当該受診勧奨を受けることが拒否されると、実施されない。
【0040】
次に、入力部14は、例えば対象者に対する受診勧奨の担当者による入力に基づいて、当該受診勧奨に対する対象者の対応を示すデータを入力する(ステップS5)。入力部14によって入力されるデータには、反応データが含まれる。反応データは、対象者に対して受診勧奨の実施の可否(すなわち、受診勧奨を受けるか否か)を打診した結果、当該受診勧奨を受けることに同意したことまたは当該受診勧奨を受けることを拒否したことを示すデータである。対応データ(反応データ)は、受診勧奨の対象者毎に入力される。
【0041】
なお、対応データの入力はキーボード等の操作による入力の他、例えば情報処理装置10とは異なるシステム上で作成された対応データ(電子ファイル)が当該システムから入力されるような構成であっても構わない。
【0042】
入力部14によって入力された対応データは、対応データ蓄積部15に蓄積(格納)される(ステップS6)。
【0043】
ここで、図4は、上記した初年度の対応データが蓄積された対応データ蓄積部15のデータ構造の一例を示す図である。対応データ蓄積部15には、受診勧奨に対する対象者の対応を示すデータが、当該対象者毎に蓄積される。
【0044】
図4に示すように、対応データには、対象者ID、対象者名及び反応データが含まれる。対象者IDは、対象者名は、上述の通りである。反応データは、受診勧奨を受けることに同意したことを示す「同意」及び当該受診勧奨を受けることを拒否したことを示す「拒否」を含む。反応データは、「同意」、「拒否」を示す符号としてもよい。
【0045】
図4に示す例では、例えば対象者ID「1」、対象者名「対象者A」及び反応データ「同意」を含む対応データが蓄積されている。この対応データによれば、対象者Aが受診勧奨を受けることに同意したことが示されている。また、例えば対象者ID「2」、対象者名「対象者B」及び反応データ「拒否」を含む対応データが蓄積されている。この対応データによれば、対象者Bが受診勧奨を受けることを拒否したことが示されている。ここでは、対象者A及びBの対応を示す対応データについて説明したが、他の対象者の対応を示す対応データについても同様であるため、その詳しい説明を省略する。なお、対応データ蓄積部15には、初年度の受診勧奨の対象となった全ての対象者についての対応データが格納される。
【0046】
上記したように初年度の対象者表示処理によれば、受診勧奨の対象となる者に関するデータを担当者に提示することができるとともに、当該受診勧奨に対する対象者の対応を示すデータを対応データ蓄積部15に蓄積することができる。
【0047】
次に、図5のフローチャートを参照して、前述した対象者抽出処理(図2に示すステップS1の処理)の処理手順について説明する。
【0048】
まず、対象者抽出部12は、健康データ格納部11にアクセスすることによって、上記した企業の従業員の健診データを取得する(ステップS11)。なお、対象者抽出部12によって取得された健診データには、上記したように各種疾病に関する指標値等が含まれている。
【0049】
対象者抽出部12は、取得された従業員の健診データに含まれる特定の疾病(以下、対象疾病と表記)に関する指標値に基づいて、当該対象疾病の進行状態(病状)に応じた複数の階層に当該従業員を分類(つまり、階層化)する(ステップS12)。ここでは、2層に分けることも階層化に含んでいる。
【0050】
次に、対象者抽出部12は、階層化された結果に応じて、対象疾病に関する指標値が予め定められた基準値(受診勧奨判定値)に対して異常であると認められる従業員(以下、有病者と表記)を抽出する(ステップS13)。
【0051】
ここで、上記した対象疾病が糖尿病であるものとすると、ステップS13においては、例として、当該糖尿病に関する指標値であるヘモグロビンエーワンシー(HbA1c)の値が7.0%より高い値である従業員(つまり、糖尿病が早期に重症化しやすい者)が有病者として抽出される。
【0052】
次に、ステップS13において抽出された有病者の各々について、以下のステップS14〜S16の処理が実行される。ここでは、ステップS14〜S16の処理の対象となる有病者を対象有病者と称する。
【0053】
この場合、対象者抽出部12は、健康データ格納部11にアクセスすることによって、対象有病者の健康データに含まれるレセプトデータを取得する(ステップS14)。この場合、対象者抽出部12は、例えば健康診断が行われた月(健診実施月)から数えて4ヶ月から9ヶ月目までの6ヶ月間のレセプトデータを取得するものとする。
【0054】
対象者抽出部12は、取得されたレセプトデータに基づいて対象有病者が治療継続者であるか否かを判定する(ステップS15)。このステップS15の処理においては、対象疾病(ここでは、糖尿病)の治療に係わるインシュリン注射や内服液投与等の治療履歴をレセプトデータ(医科レセプト及び調剤レセプト)から特定し、上記した6ヶ月の間で少なくとも1回以上の治療履歴がある月数が3以上である場合、処理対象者が治療継続者であると判定される。一方、6ヶ月の間で少なくとも1回以上の治療履歴がある月数が2以下である場合には、処理対象者が治療継続者でないと判定される。治療継続者を判断する際の治療履歴がある月数は、上記と異なる値を設定することも可能である。
【0055】
対象有病者が治療継続者であると判定された場合(ステップS15のYES)、当該対象有病者は、受診勧奨の対象から除外される(ステップS16)。一方、対象有病者が治療継続者でないと判定された場合(ステップS15のNO)、ステップS16の処理は実行されず、当該対象有病者は、受診勧奨の対象から除外されず、受診勧奨の対象者となる。
【0056】
次に、ステップS13において抽出された全ての有病者について上記したステップS14〜S16の処理が実行されたか否かが判定される(ステップS17)。全ての有病者について処理が実行されていないと判定された場合(ステップS17のNO)、上述したステップS14に戻って処理が繰り返される。この場合、処理が実行されていない有病者を対象有病者としてステップS14〜S16の処理が実行される。すなわち、ステップS14〜S16の処理は、全ての有病者の各々に対してループして実行される。一方、全ての有病者について処理が実行されたと判定された場合(ステップS17のYES)、対象者抽出処理は終了される。
【0057】
上記したように対象者抽出処理によれば、各従業員の健康データ(レセプトデータ及び健診データ)に基づいて、例えば糖尿病等の対象疾病の病状が重症化するリスクの高い者であって治療継続者でない者(つまり、有病未治療者)を受診勧奨の対象者として抽出することができる。
【0058】
なお、ここでは対象疾病が糖尿病であるものとして説明したが、糖尿病以外の疾病(生活習慣病等)を対象疾病としてもよいし、複数の疾病を対象疾病としてもよい。また、図5において説明した処理は一例であり、健康データに基づいて受診勧奨の対象とすべき対象者を抽出することが可能な処理であれば、他の処理が実行されても構わない。
【0059】
次に、図6のフローチャートを参照して、2年度以降の対象者表示処理の処理手順について説明する。ここでは、2年度の受診勧奨が実施される場合について説明する。すなわち、対応データ蓄積部15には、前述した図4に示す対応データ(つまり、初年度の対応データ)が蓄積されているものとする。
【0060】
この場合、前述した図2に示すステップS1及びS2の処理に相当するステップS21及びS22の処理が実行される。すなわち、ステップS21において抽出された対象者に関する対象者データが、ステップS22において対象者データ格納部13に格納される。なお、図7は、ステップS22において対象者データ格納部13に格納された対象者データのデータ構造の一例を示す。図7に示すように、ステップS22において抽出された対象者には、例えば対象者B、F、H、J及びKのように初年度においてもハイリスク者(対象者)として抽出されていた者と、対象者M〜Sのように2年度において初めてハイリスク者(対象者)として抽出された者とが含まれる場合が多い。
【0061】
上記したように対象者データが対象者データ格納部13に格納された場合、担当者は、対象者に対して受診勧奨を実施するために、情報処理装置10を操作することによって対象者データの表示を指示することができる。この場合、ステップS21において抽出された対象者の各々について、以下のステップS23及びS24の処理が実行される。なお、ステップS23及びS24の説明においては、当該ステップS23及びS24の処理の対象となる対象者を処理対象者と称する。
【0062】
表示データ生成部16は、対応データ蓄積部15に蓄積されている対応データのうち、処理対象者に紐づけられる対応データ(以下、処理対象者の対応データと表記)を取得する(ステップS23)。この場合、表示データ生成部16は、処理対象者を識別するための対象者ID(及び対象者名)を含む対応データを取得する。なお、対応データ蓄積部15に複数年度分の対応データが蓄積されている場合には、当該複数年度分の全ての対応データを取得する。
【0063】
次に、表示データ生成部16は、取得された処理対象者の対応データに基づいて、過去に処理対象者が受診勧奨を受けることを拒否した回数(以下、拒否回数と表記)を取得する(ステップS24)。なお、この拒否回数は、取得された処理対象者の対応データのうち、反応データ「拒否」を含む対応データの数をカウントすることによって取得される。
【0064】
ここでは、処理対象者の対応データが対応データ蓄積部15に蓄積されているものとして説明したが、上記したように初めてハイリスク者として抽出された対象者については対応データが蓄積されていない。このような場合には、上記した拒否回数としては0が取得されるものとする。
【0065】
ステップS24の処理が実行されると、ステップS21において抽出された全ての対象者について上記したステップS23及びS24の処理が実行されたか否かが判定される(ステップS25)。全ての対象者について処理が実行されていないと判定された場合(ステップS25のNO)、上述したステップS23に戻って処理が繰り返される。この場合、処理が実行されていない対象者を処理対象者としてステップS23及びS24の処理が実行される。すなわち、ステップS23及びS24の処理は、全ての対象者の各々に対してループして実行される。一方、全ての対象者について処理が実行されたと判定された場合(ステップS25のYES)、表示データ生成部16は、対象者データ格納部13に格納されている対象者データ及びステップS24において取得された拒否回数を表示するための対象者表示データを生成する(ステップS26)。
【0066】
出力部17は、表示データ生成部16によって生成された対象者表示データを出力する(ステップS27)。この場合、対象者表示データは、例えば表示装置に出力されることによって、当該表示装置に表示される。
【0067】
ここで、図8は、上記した対象者表示データが表示された際の表示画面の一例を示す。図8に示す表示画面100には、対象者表示データとして、対象者毎に対応づけられた対象者データ及び拒否回数を一覧形式で示す対象者リストが表示されている。
【0068】
上記した担当者は、このように表示された対象者リストを確認することによって、過去において受診勧奨を受けることを拒否した対象者を容易に把握することができるため、当該対象者に対して受診勧奨の実施の可否を打診する際に、当該受診勧奨を受けることに同意するような措置(過去とは異なる取り組みや対策等)を講ずることができる。具体的には、担当者は、例えば拒否回数の多い対象者に対しては重点的なフォローを行うまたは企業の人事担当者に対応を依頼する等の措置を講ずることができる。
【0069】
なお、図8に示す表示画面100において表示されている拒否回数は、前述した図4に示す対応データに基づいて算出された値であるため、1または0となっている。再び図6に戻ると、図2に示すステップS5及びS6の処理に相当するステップS28及びS29の処理が実行される。このステップS28及びS29の処理によれば、2年度の受診勧奨に対する対象者の各々の対応を示す対応データが入力され、当該対応データが対応データ蓄積部15に蓄積される。
【0070】
具体的には、ステップS28において図9に示す対応データ(反応データを含む)が入力されたものとすると、対応データ蓄積部15には、図10に示すように年度毎の対応データが蓄積される。
【0071】
ここでは主に2年度の受診勧奨が実施される場合について説明したが、例えば3年度の受診勧奨が実施される場合においても同様の処理が実行され、図10に示す対応データ蓄積部15に対して、更に当該3年度の受診勧奨に対する対応を示す各対象者の対応データが蓄積される。なお、4年度以降についても同様である。
【0072】
上記した2年度以降の対象者表示処理によれば、受診勧奨の対象となる対象者に関する対象者データに加えて過去に当該対象者が受診勧奨を受けることを拒否した回数(拒否回数)を提示することができるとともに、当該受診勧奨に対する対象者の対応を示す対応データを対応データ蓄積部15に更に蓄積することができる。
【0073】
なお、ここでは対応データ蓄積部15に蓄積されている全ての対応データに基づいて拒否回数が取得されるものとして説明したが、より多くの年度分の対応データが蓄積されているような場合には、直近の数年度分の対応データに基づいて拒否回数が取得されるような構成であってもよい。
【0074】
また、本実施形態においては受診勧奨が年度毎に実施されるものとして説明したが、例えば受診勧奨が年度内に複数回実施されるような場合には、初回の受診勧奨の際に上述した図2に示す処理が実行され、2回目以降の受診勧奨の際には上述した図6に示す処理が実行されればよい。
【0075】
以下、図11を参照して、本実施形態に係る情報処理装置10を用いた場合における受診勧奨の効果について具体的に説明する。ここでは、例えば4000人程度の従業員を有する企業Wにおいて、上記したように病状が重症化するリスクの高い対象者(ハイリスク者)を抽出し、当該対象者に対して受診勧奨を実施した場合について説明する。
【0076】
図11においては、年度毎に、対象者数、前年拒否者数、勧奨同意者数、勧奨拒否者数、同意率及び同意転向者数が示されている。対象者数は、企業Wの従業員のうち、ハイリスク者として抽出された対象者の数である。前年拒否者数は、対象者のうち、前年度に受診勧奨を拒否した対象者の数である。勧奨同意者数は、対象者のうち、受診勧奨を受けることに同意した対象者の数である。また、勧奨拒否者数は、対象者のうち、受診勧奨を受けることを拒否した対象者の数である。なお、勧奨拒否者数は、「対象者数−勧奨同意者数」によって算出される。また、同意率は、「勧奨同意者数/対象者数」によって算出される値である。また、同意転向者数は、対象者のうち、前年度に受診勧奨を拒否したが本年度に当該受診勧奨を受けることに同意した対象者の数である。一方、図12は、企業Xにおいて本実施形態に係る情報処理装置10を用いていない場合における対象者数、前年拒否者数、勧奨同意者数、勧奨拒否者数、同意率及び同意転向者数の推移を示している。図12においては、対象者数は所定の範囲内で増減しているにもかかわらず、前年拒否者数及び勧奨拒否者数は増加傾向にあることがわかる。これは、各年度における前年拒否者は前年度と同様に受診勧奨を受けることに同意しない場合が多いため、各年度における同意転向者数は0であり、前年拒否者がそのまま各年度の勧奨拒否者となる(つまり、前年拒否者が勧奨拒否者の内数として溜まってしまう)ことに起因する。これに伴い、図12においては、年々同意率が大幅に低下している。すなわち、図12に示すように、本実施形態に係る情報処理装置10を用いていない企業Xにおいては、年々前年拒否者数が増加し、同意率も低下しているため、受診勧奨を受けることの同意自体を得ることができず、当該受診勧奨の効果も年々低下しているといえる。
【0077】
これに対して、図11においては、図12と比較すると、2年度以降の受診勧奨(を受けること)に対する同意率の低下が抑制されている。これは、受診勧奨の担当者が上述した対象者リストにおいて併記される拒否回数を認識することにより、例えば自身の裁量で配分可能な受診勧奨リソース(例えば、人的リソース)の範疇において受診勧奨としての措置を変更し、拒否回数の多い対象者に対し重点的なフォロー等を行った結果であるといえる。また、図11においては省略されているが、同意率の低下が抑制されることにより、受診開始者数(受診を開始した対象者の数)の低下も抑制し、結果として、勧奨成功率(受診開始者数/対象者数)の低下も抑制することができる。
【0078】
なお、図11に示す各値は、上記した対象者データ格納部13に格納されている対象者データ及び対応データ蓄積部15に蓄積されている対応データによって算出可能である。したがって、ここでは受診勧奨の効果について説明するために図11を用いたが、例えば担当者による受診勧奨の効果の検証等のために、上記した図11に示すようなリストを表示することも可能である。
【0079】
上記したように本実施形態においては、受診勧奨に対する対象者の対応を示すデータを入力し、当該データを対応データ蓄積部15に蓄積し、対象者データ格納部13に格納されている対象者データ及び対応データ蓄積部15に蓄積された対応データを表示するための対象者表示データを出力(表示)する。なお、この場合における対応データとしては、過去に対象者が受診勧奨を受けることを拒否した拒否回数(第1の回数)が表示される。
【0080】
本実施形態においては、このような構成により、担当者は各対象者の拒否回数を把握することができる。このため、拒否回数の多い対象者に対しては新たな措置を講ずる等によって、受診勧奨に対する同意率の低下を抑制する(つまり、受診勧奨を受けること自体が拒否される確率を減少させ、受診開始につながる確率を増大させる)ことができ、結果として対象者に対して実施される受診勧奨の効果の低下を抑制することができる。換言すれば、2年目以降の受診勧奨で必然的に発生する前年拒否者の累積を最小限に抑制し、限られたリソースで効率的な受診勧奨を実施することができる。このように受診勧奨の効果の低下を抑制することにより、対象者の病状の重症化を防止し、医療サービスの効率化を図ることができるため、将来的な医療費を削減することが可能となる。
【0081】
なお、本実施形態においては、例えば情報処理装置10に備えられる表示装置に対象者表示データが出力されることによって、当該情報処理装置10(表示装置)において対象者表示データが表示されるものとして主に説明したが、当該対象者表示データがプリンタ等の印刷装置に出力されることによって印刷媒体(例えば、紙媒体)に印刷されるような構成であってもよい。更に、対象者表示データは、情報処理装置10以外の外部装置に送信され、当該外部装置において表示されるような構成とすることも可能である。
【0082】
また、本実施形態においては、図2及び図6に示す処理が情報処理装置10において実行されるものとして説明したが、当該処理が外部装置において実行され、情報処理装置10が当該外部装置によって出力された対象者表示データを表示する表示装置として動作しても構わない。
【0083】
更に、本実施形態においては、情報処理装置10が健康データ格納部11、対象者データ格納部13及び対応データ蓄積部15を有するものとして説明したが、当該健康データ格納部11、対象者データ格納部13及び対応データ蓄積部15のうちの少なくとも1つが、例えばオンラインストレージサービス、他の各種クラウドコンピューティングサービスを実行するサーバ(以下、クラウドサーバと表記)等に設けられるような構成であっても構わない。この場合、情報処理装置10は、クラウドサーバとの通信を実行することによって、必要なデータを当該クラウドサーバにアップロードし、またはクラウドサーバからダウンロードすることができる。
【0084】
また、本実施形態においては、図1に示す各機能部が1つの装置(情報処理装置10)に含まれるものとして説明したが、これら機能部は複数の装置に分散されて配置されるような構成であっても構わない。この場合には、複数の装置の連携によって、本実施形態の効果を実現することができる。
【0085】
なお、本実施形態の処理はコンピュータプログラムによって実現することができるため、このコンピュータプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を通じてこのコンピュータプログラムをコンピュータにインストールして実行するだけで、本実施形態と同様の効果を容易に実現することができる。
【0086】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。なお、本実施形態に係る情報処理装置10の機能構成は、前述した第1の実施形態と同様であるため、適宜、図1を用いて説明する。また、前述した第1の実施形態と共通する部分についてはその説明を省略し、当該第1の実施形態と異なる部分について主に述べる。
【0087】
本実施形態においては、入力部14が反応データ及び行動データを含む対応データを入力し、当該入力された対応データが対応データ蓄積部15に蓄積される点が、前述した第1の実施形態とは異なる。行動データは、対象者が受診を開始したか否かを示すデータである。本実施形態において、表示データ生成部16は、前述した第1の実施形態において説明した対象者データ及び拒否回数に加えて、後述する同意後未受診回数を表示するための対象者表示データを生成する。
【0088】
以下、本実施形態に係る情報処理装置10によって実行される初年度の対象者表示処理及び2年度以降の対象者表示処理について説明する。
【0089】
まず、前述した図2のフローチャートを参照して、初年度の対象者表示処理の処理手順について説明する。まず、第1の実施形態において説明したように、図2に示すステップS1〜S4の処理が実行される。
【0090】
次に、入力部14は、例えば対象者に対する受診勧奨の担当者による入力に基づいて、当該受診勧奨に対する対象者の対応を示すデータを入力する(ステップS5)。ここで入力される対応データには、反応データ及び行動データが含まれる。反応データは、前述した第1の実施形態において説明した通りである。行動データは、対象者が受診を開始したか否かを示すデータである。なお、担当者は、例えば健康データ格納部11に格納されている健康データ(レセプトデータ)を参照することにより、対象者が受診を開始したか否かについて確認することができる。
【0091】
図13は、初年度の対応データが蓄積された対応データ蓄積部15のデータ構造の一例を示す図である。図13に示すように、対応データ蓄積部15には、受診勧奨に対する対象者の対応を示すデータが、当該対象者毎に蓄積される。
【0092】
対応データには、対象者ID、対象者名、反応データ及び行動データが含まれる。行動データは、受診を開始したことを示す「受診開始」及び受診を開始しなかったことを示す「受診なし」を含む。なお、対象者ID、対象者名及び反応データについては、前述した図4等において説明した通りである。
【0093】
図13に示す例では、例えば対象者ID「1」、対象者名「対象者A」、反応データ「同意」及び行動データ「受診開始」を含む対応データが蓄積されている。この対応データによれば、対象者Aが受診勧奨を受けることに同意し、かつ、受診を開始したことが示されている。また、例えば対象者ID「2」、対象者名「対象者B」、反応データ「拒否」及び行動データ「受診なし」を含む対応データが蓄積されている。この対応データによれば、対象者Bが受診勧奨を受けることを拒否し、かつ、受診を開始しなかったことが示されている。
【0094】
更に、対応データ蓄積部15には、例えば対象者ID「10」、対象者名「対象者J」、反応データ「同意」及び行動データ「受診なし」を含む対応データが蓄積されている。この対応データによれば、対象者Jが受診勧奨を受けることに同意したものの、受診を開始しなかったことが示されている。このように、対象者の中には、受診勧奨を受けることに同意しながらも(すなわち、受診勧奨を受けたにもかかわらず)受診を開始しない者も存在する。
【0095】
ここでは、対象者A、B及びJの対応を示す対応データについて説明したが、他の対象者の対応を示す対応データについても同様である。
【0096】
上記したように初年度の対象者表示処理によれば、受診勧奨の対象となる対象者に関するデータを担当者に提示することができるとともに、当該受診勧奨に対する対象者の対応を示すデータ(反応データ及び行動データ)を対応データ蓄積部15に蓄積することができる。
【0097】
次に、図14のフローチャートを参照して、2年度以降の対象者表示処理の処理手順について説明する。ここでは、2年度の受診勧奨が実施される場合について説明する。すなわち、対応データ蓄積部15には、前述した図13に示す対応データが蓄積されているものとする。
【0098】
この場合、前述した図2に示すステップS1及びS2の処理に相当するステップS31及びS32の処理が実行される。すなわち、ステップS31において抽出された対象者に関する対象者データが、ステップS32において対象者データ格納部13に格納される。ここでは、前述した図7に示す対象者データが対象者データ格納部13に格納されたものとする。
【0099】
上記したように対象者データが対象者データ格納部13に格納された場合、担当者は、対象者に対して受診勧奨を実施するために、情報処理装置10を操作することによって対象者データの表示を指示することができる。
【0100】
この場合、ステップS31において抽出された対象者の各々について、以下のステップS33〜S36の処理が実行される。なお、ステップS33〜S35の説明においては、当該ステップS33〜S36の処理の対象となる対象者を処理対象者と称する。
【0101】
表示データ生成部16は、対応データ蓄積部15に蓄積されている対応データのうち、処理対象者に紐づけられる対応データ(処理対象者の対応データ)を取得する(ステップS33)。この場合、表示データ生成部16は、処理対象者を識別するための対象者ID(及び対象者名)を含む対応データを取得する。
【0102】
次に、表示データ生成部16は、取得された処理対象者の対応データに基づいて、過去に処理対象者が受診勧奨を受けることを拒否した回数(拒否回数)を取得する(ステップS34)。なお、この拒否回数は、取得された処理対象者の対応データのうち、反応データ「拒否」を含む対応データの数をカウントすることによって取得される。
【0103】
また、表示データ生成部16は、取得された処理対象者の対応データに基づいて、過去に処理対象者が受診勧奨を受けることに同意したが受診を開始しなかった回数(同意後未受診回数)を取得する(ステップS35)。なお、この同意後未受診回数は、取得された処理対象者の対応データのうち、反応データ「同意」及び行動データ「受診なし」を含む対応データの数をカウントすることによって取得される。
【0104】
ここでは、処理対象者の対応データが対応データ蓄積部15に蓄積されているものとして説明したが、初めてハイリスク者として抽出された対象者については対応データが蓄積されていない。このような場合には、上記した拒否回数及び同意後未受診回数としては0が取得されるものとする。
【0105】
次に、表示データ生成部16は、ステップS34において取得された拒否回数及びステップS35において取得された同意後未受診回数に基づいて、受診勧奨または受診に関する処理対象者の消極性を表す指数(以下、ネガティブ指数と表記)を算出する(ステップS36)。なお、このネガティブ指数は、受診勧奨を受けることを拒否した及び受診勧奨を受けることに同意したものの実際に受診を開始しなかった等の受診勧奨が成功しなかったというネガティブな事象に重みをつけて積算される値である。
【0106】
ここで、ステップS36におけるネガティブ指数の算出処理について具体的に説明する。ここでは、例えば拒否回数1回について7(点)、同意後未受診回数1回について3(点)が割り当てられているものとする。この場合、ネガティブ指数は、「拒否回数*7+同意後未受診回数*3」によって算出される。具体的には、処理対象者の拒否回数が1回であり、同意後未受診回数が0回である場合には、当該処理対象者のネガティブ指数は7となる。
【0107】
ステップS36の処理が実行されると、ステップS31において抽出された全ての対象者について上記したステップS33〜S36の処理が実行されたか否かが判定される(ステップS37)。全ての対象者について処理が実行されていないと判定された場合(ステップS37のNO)、上述したステップS33に戻って処理が繰り返される。この場合、処理が実行されていない対象者を処理対象者としてステップS33〜S36の処理が実行される。すなわち、ステップS33〜S36の処理は、全ての有病者の各々に対してループして実行される。
【0108】
一方、全ての対象者について処理が実行されたと判定された場合(ステップS37のYES)、表示データ生成部16は、ステップS31において抽出された対象者毎に、対象者データ格納部13に格納されている対象者データ、ステップS34において取得された拒否回数、ステップS35において取得された同意後未受診回数及びステップS36において算出されたネガティブ指数を表示するための対象者表示データを生成する(ステップS38)。
【0109】
以下、前述した図6に示すステップS27〜S29の処理に相当するステップS39〜S41の処理が実行される。
【0110】
ここで、図15は、上記した対象者表示データが表示された際の表示画面の一例を示す。図15に示す表示画面200には、対象者表示データとして、対象者毎に対応づけられた対象者データ、拒否回数、同意後未受診回数及びネガティブ指数を一覧形式で示す対象者リストが表示されている。また、この表示画面200においては、ネガティブ指数が高い順に各対象者に関する対象者データ等が表示されている。
【0111】
担当者は、このように表示された対象者リストを確認することによって、過去において受診勧奨を拒否した対象者や受診勧奨を受けることに同意したものの受診を開始しなかった対象者を容易に把握することができる。
【0112】
なお、ステップS40において図16に示す対応データ(反応データ及び行動データを含む)が入力されたものとすると、対応データ蓄積部15には、図17に示すように年度毎の対応データが蓄積される。
【0113】
ここでは主に2年度の受診勧奨が実施される場合について説明したが、例えば3年度以降の受診勧奨が実施される場合においても同様の処理が実行される。
【0114】
上記した2年度以降の対象者表示処理によれば、受診勧奨の対象となる対象者に関する対象者データに加えて上記した拒否回数、同意後未受診関数及びネガティブ指数を提示することができるとともに、当該受診勧奨に対する対象者の対応を示す対応データを対応データ蓄積部15に更に蓄積することができる。
【0115】
以下、図18を参照して、本実施形態に係る情報処理装置10を用いた場合における受診勧奨の効果について具体的に説明する。ここでは、例えば4000人程度の従業員を有する企業Yにおいて、上記したように病状が重症化するリスクの高い対象者(ハイリスク者)を抽出し、当該対象者に対して受診勧奨を実施した場合について説明する。
【0116】
図18においては、年度毎に、対象者数、前年拒否者数、勧奨同意者数、勧奨拒否者数、同意率、前年同意後未受診者数、受診開始者数、同意後未受診者数、受診成功率、勧奨成功率及び同意転向者数が示されている。前年同意後未受診者数は、対象者のうち、前年度に受診勧奨を受けることに同意したものの受診を開始しなかった対象者(つまり、勧奨後未受診者)の数である。受診開始者数は、対象者のうち、受診を開始した対象者の数である。同意後未受診者数は、本年度に受診勧奨を受けることに同意したものの受診を開始しなかった対象者の数である。受診成功率は、「受診開始者数/勧奨同意者数」によって算出される値である。勧奨成功率は、「受診開始者数/対象者数」によって算出される値である。なお、対象者数、前年拒否者数、勧奨同意者数、勧奨拒否者数、同意率及び同意転向者数については、前述した図11において説明した通りであるため、その詳しい説明を省略する。
【0117】
一方、図19は、前述した企業Xにおいて本実施形態に係る情報処理装置10を用いていない場合における対象者数、前年拒否者数、勧奨同意者数、勧奨拒否者数、同意率、前年同意後未受診者数、受診開始者数、同意後未受診者数、受診成功率、勧奨成功率及び同意転向者数の推移を示している。
【0118】
図18及び図19を比較すると、企業Yにおいては、2年度以降の受診勧奨に対する同意率の低下が抑制されているとともに、受診成功率及び勧奨成功率の低下も抑制されている。これは、受診勧奨の担当者が上述した対象者リストにおいて過去に受診勧奨を受けることに同意したものの受診を開始しなかった対象者(同意後未受診者)の存在を明確に把握することにより、当該同意後未受診者を意識した指導(措置)が可能になるからであり、結果として、前年同意後未受診者の受診開始に繋がっているといえる。
【0119】
なお、図18に示す各値は、上記した対象者データ格納部13に格納されている対象者データ及び対応データ蓄積部15に蓄積されている対応データ(反応データ及び行動データ)に基づいて算出可能である。したがって、例えば担当者による受診勧奨の効果の検証等のために、上記した図18に示すようなリストを表示することも可能である。
【0120】
上記したように本実施形態においては、反応データ及び行動データを含む対応データを対応データ蓄積部15に蓄積し、対象者データ格納部13に格納されている対象者データ、拒否回数(第1の回数)及び同意後未受診回数(第2の回数)を表示する。本実施形態においては、このような構成により、前述した第1の実施形態とは異なり、担当者が同意後未受診者の存在をも把握することができる。このため、拒否回数の多い対象者のみではなく、同意後未受診者に対しても新たな措置(過去とは異なる取り組みや対策等)を講ずる等によって、受診勧奨に対する同意率、受診成功率及び勧奨成功率等の低下を抑制することができ、結果として対象者に対して実施される受診勧奨の効果の低下を抑制することができる。
【0121】
また、本実施形態においては、受診勧奨または受診に関する消極性を表すネガティブ指数(第1の指数)を算出し、当該ネガティブ指数を更に表示することにより、単に対象者データ、拒否回数及び同意後未受診回数を表示する場合と比較して、担当者は直感的に重点的にフォロー等を行うべき対象者を把握することができる。
【0122】
更に、本実施形態においては、対象者に関する対象者データをネガティブ指数の順に表示することにより、上記した重点的にフォロー等を行うべき対象者をより把握しやすい態様で表示することができる。すなわち、本実施形態においては、2年目以降の受診勧奨で必然的に発生する前年拒否者及び前年同意後未受診者の累積を最小限に抑制し、限られたリソースで効率的な受診勧奨を実施することができる。
【0123】
なお、本実施形態においては、上述したネガティブ指数の他に、対象者毎に例えばリスク指数(第2の指数)を算出し、当該リスク指数も表示されるような構成とすることも可能である。ここで、リスク指数とは、例えば対象者の健診データに基づいて算出される病状が重症化するリスク度合いを表す指数である。リスク指数は、例えば前述した第1の実施形態において説明した対象疾病に関する指標値と受診勧奨判定値との差分に応じて算出されるものとする。具体的には、受診勧奨判定値が7.0%であるものとすると、例えば対象者の糖尿病に関する指標値であるヘモグロビンエーワンシーの値が8.0%である場合にはリスク指数を1とし、当該ヘモグロビンエーワンシーの値が9.0%である場合にはリスク指数を2とすることができる。このようなリスク指数も併せて表示することにより、担当者は、ネガティブ指数及びリスク指数を総合的に勘案して受診勧奨を実施することが可能となる。
【0124】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。なお、本実施形態に係る情報処理装置10の機能構成は、前述した第1及び第2の実施形態と同様であるため、適宜、図1を用いて説明する。また、前述した第2の実施形態と共通する部分についてはその説明を省略し、当該第第2の実施形態と異なる部分について主に述べる。
【0125】
本実施形態においては、ネガティブ指数が予め定められた範囲に属する対象者に関する対象者データを、他の対象者データと区別可能に表示する点が、前述した第2の実施形態と異なる。なお、2年度の受診勧奨が実施される際には対応データ蓄積部15には初年度の対応データしか蓄積されていないため、対象者間で有意なネガティブ指数が算出されない場合がある。このため、このような表示は、3年度以降の受診勧奨が実施される場合に(つまり、3年度以降の対象者表示処理において)行われるものとする。
【0126】
以下、前述した図14のフローチャートを参照して、本実施形態に係る情報処理装置10によって実行される3年度以降の対象者表示処理の処理手順について説明する。なお、本実施形態における初年度の対象者表示処理及び2年度の対象者表示処理は、前述した第2の実施形態において説明した通りであるため、その詳しい説明を省略する。
【0127】
ここでは、対応データ蓄積部15には、初年度及び2年度の受診勧奨に対する過去の対象者の対応を示すデータが蓄積されているものとする。
【0128】
まず、前述した図14に示すステップS31〜S37の処理が実行される。
【0129】
ステップS37において全ての対象者について処理が実行されていないと判定された場合(ステップS37のNO)、上述したステップS33に戻って処理が繰り返される。
【0130】
一方、全ての対象者について処理が実行されたと判定された場合(ステップS37のYES)、表示データ生成部16は、ステップS31において抽出された対象者毎に、対象者データ格納部13に格納されている対象者データ、ステップS34において取得された拒否回数、ステップS35において取得された同意後未受診回数及びステップS36において算出されたネガティブ指数を表示するための対象者表示データを生成する(ステップS38)。この場合、表示データ生成部16は、上記したようにネガティブ指数が予め定められた範囲内に属する対象者に関する対象者データを他の対象者データと区別可能に表示するための対象者表示データを生成する。
【0131】
具体的には、表示データ生成部16は、例えばネガティブ指数が上位20%の対象者に関する対象者データと、当該ネガティブ指数が下位50%の対象者に関する対象者データと、それ以外の対象者(ネガティブ指数が中位30%の対象者)に関する対象者データとがそれぞれ区別可能な態様で表示されるような対象者表示データを生成する。
【0132】
以下、前述した図14に示すステップS39〜S41の処理が実行される。
【0133】
ここで、図20は、上記した対象者表示データが表示された際の表示画面の一例を示す。図20に示す表示画面300には、対象者表示データとして、互いに対応づけられた対象者データ、拒否回数、同意後未受診回数及びネガティブ指数を一覧形式で示す対象者リストが表示されている。
【0134】
なお、表示画面300に表示された対象者表示データ(対象者リスト)は、3年度の受診勧奨が実施される場合に抽出された対象者に関するデータと、初年度及び2年度の受診勧奨に対する過去の対象者の対応を示すデータとに基づいて生成されているため、前述した図15に示す対象者表示データ(対象者リスト)とは、対象者(データ)及び各値(拒否回数、未受診回数及びネガティブ指数等)が異なっている。
【0135】
図20に示す表示画面300においては、ネガティブ指数の順に10名の対象者に関する対象者データ、拒否回数、未受診回数及びネガティブ指数が表示されているが、当該ネガティブ指数が上位20%の対象者(以下、高難易度対象者と表記)に関する対象者データと、当該ネガティブ指数が下位50%の対象者(以下、中難易度対象者と表記)に関する対象者データと、それ以外の対象者(以下、低難易度対象者と表記)に関する対象者データとが区別可能な態様で表示されている。
【0136】
具体的には、対象者B及びFに関する対象者データと、対象者H、K及びJに関する対象者データと、対象者O、P、S、T及びUに関する対象者データとは、例えばそれぞれ異なる色彩が付された状態で表示されるものとする。これによれば、表示画面300に表示された対象者リストを参照した担当者は、対象者B及びFが受診勧奨に関する高難易度対象者であり、対象者H、K及びJが中難易度対象者であり、対象者O、P、S、T、Uが低難易度対象者であることを容易に把握することができる。
【0137】
また、図20に示す表示画面300の下部には、例えば上記した高難易度対象者、中難易度対象者及び低難易度対象者に対して受診勧奨を実施する際に講ずべき措置に関する情報(例えば、適切な人的リソースの配置等)が表示される。具体的には、受診勧奨を実施する際には、例えば高難易度対象者(対象者B及びF)に対しては例えば産業医及び企業の人事担当者を勧奨担当者とし、中難易度対象者(対象者H、K及びJ)に対しては例えば産業医を勧奨担当者とし、低難易度対象者(対象者O、P、S、T及びU)に対しては例えば医療保健スタッフを勧奨担当者とする旨が表示される。これによれば、各対象者に対して適切な担当者を割り当てることができる。なお、受診勧奨の実施に関して有意な情報であれば表示画面300に他の情報が表示されても構わない。
【0138】
上記した3年度以降の対象者表示処理によれば、ネガティブ指数が予め定められた範囲内(例えば、上位20%、中位30%及び下位50%)の対象者に関する対象者データをそれぞれ区別可能な態様で表示することができる。また、このように少なくとも2以上の受診勧奨に関する難易度を設定することによって、当該各難易度に応じた措置を担当者に推奨することができる。
【0139】
ここでは、ネガティブ指数が上位20%の対象者を高難易度対象者、ネガティブ指数が中位30%の対象者を中難易度対象者、ネガティブ指数が下位50%の対象者を低難易度対象者とするものとして説明したが、例えばネガティブ指数が第1の閾値以上の対象者を高難易度対象者、ネガティブ指数が第1の閾値未満かつ第2の閾値以上の対象者を中難易度対象者、ネガティブ指数が第2の閾値未満の対象者を低難易度対象者としても構わない。第1及び第2の閾値は自由に設定できるが、第1の閾値は、第2の閾値よりも大きい値であるものとする。
【0140】
また、上記した高難易度対象者、中難易度対象者及び低難易度対象者はネガティブ指数に基づいて設定されるものとして説明したが、前述した第2の実施形態において説明したリスク指数に基づいて設定されてもよいし、ネガティブ指数及びリスク指数の両方に基づいて設定されてもよい。
【0141】
以下、図21を参照して、本実施形態に係る情報処理装置10を用いた場合における受診勧奨の効果について具体的に説明する。ここでは、例えば4000人程度の従業員を有する企業Zにおいて、ハイリスク者を抽出し、当該対象者に対して受診勧奨を実施した場合について説明する。なお、本実施形態に係る情報処理装置10を用いた場合における受診勧奨の効果を説明するための比較例としては前述した図19を用いる。
【0142】
なお、図21において年度毎に示される対象者数等の項目は、前述した図11及び図18等において説明した通りであるため、その詳しい説明を省略する。
【0143】
本実施形態においては初年度の対象者表示処理及び2年度の対象者表示処理は前述した第2の実施形態と同様である。このため、図21及び図19を比較すると、前述した企業Y(つまり、図18)と同様に、企業Zにおいては、2年度の受診勧奨に対する同意率の低下が抑制されているとともに、受診成功率及び勧奨成功率の低下も抑制されている。更に、企業Zにおいては、3年度以降の同意率及び受診成功率が大きく回復していることがわかる。これは、3年度以降では上述した対象者リストにおいて高難易度対象者、中難易度対象者及び低難易度対象者を適切に把握し、当該各対象者に対して適切な措置を講じた結果であるといえる。また、図21に示されるように、企業Zにおいては、勧奨成功率も図19等に比べて大幅に向上している。
【0144】
なお、前述した第2の実施形態において説明したように、本実施形態においても図21に示すようなリストが表示されるような構成としても構わない。
【0145】
上記したように本実施形態においては、ネガティブ指数が予め定められた範囲内に属する対象者に関するデータを、他の対象者データと区別可能に表示する。本実施形態においては、このような構成により、前述した第2の実施形態と比較して、担当者はより直感的に難易度の高い対象者(つまり、受診勧奨を受けることの同意を得ることが難しいまたは受診を開始させることが難しい対象者)等を容易に把握することができる。
【0146】
また、本実施形態においては、上記したネガティブ指数が予め定められた範囲内に属する対象者に対して受診勧奨を実施する際に講ずべき措置に関する情報を更に表示することにより、受診勧奨を実施する際に適切な措置を講ずることができるため、受診勧奨に対する同意率、受診成功率及び勧奨成功率等を向上させ、受診勧奨の効果の低下を抑制することができる。
【0147】
すなわち、本実施形態においては、2年目以降の受診勧奨で必然的に発生する前年拒否者及び前年同意後未受診者の累積を最小限に抑制し、限られたリソースで効率的かつ成功率の高い受診勧奨を実施することができる。
【0148】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、対象者に対して実施される受診勧奨の効果の低下を抑制するために有用な情報処理装置、表示装置、表示方法及びプログラムを提供することができる。
【0149】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0150】
10…情報処理装置、11…健康データ格納部、12…対象者抽出部、13…対象者データ格納部、14…入力部、15…対応データ蓄積部、16…表示データ生成部、17…出力部
図1
図2
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