(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、治療デバイス10Aの構成を示す一部省略概略図である。この治療デバイス10Aは、血管等の生体管腔を閉塞させるために使用される。治療デバイス10Aは、生体管腔に挿通可能なカテーテル12と、カテーテル12内に長手方向に摺動可能に挿通された内部デバイス14と、内部デバイス14の先端に設けられた加熱部として機能する電極部16とを備える。
【0028】
カテーテル12は、カテーテル本体を構成する可撓性を有する中空構造のシャフト18(長尺体)と、このシャフト18の基端部に接続されるハブ20とを有する。シャフト18は、シャフト18の先端から基端まで延在する内腔19を有する。シャフト18の長さは、治療デバイス10Aの治療対象によって異なるが、例えば治療対象が下肢に発症した静脈瘤である場合、シャフト18の長さは、例えば、500〜4000mm程度に設定される。
【0029】
シャフト18の構成材料は特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、あるいはこれら二種以上の混合物等)、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリイミド、フッ素樹脂等の高分子材料或いはこれらの混合物、あるいは上記2種以上の高分子材料の多層チューブ等が挙げられる。
【0030】
シャフト18の基端部に接続されたハブ20は、治療デバイス10Aを使用する術者が把持してカテーテル12を操作するための部分であり、例えば、硬質の樹脂等により構成され得る。ハブ20は、中空構造であって、軸方向に貫通する内腔21を有する。ハブ20の内腔21は、シャフト18の内腔19と連通する。
【0031】
内部デバイス14は、生体管腔に扁平部分F(
図5参照)を形成する扁平形成部22と、扁平形成部22を支持する長尺な支持体24とを有する。扁平形成部22は、カテーテル12のシャフト18よりも先端側で幅方向(外方向)に拡張可能であり、生体管腔内での拡張に伴って治療デバイス10Aの略最先端位置で生体管腔(例えば、静脈)に扁平部分Fを形成する機能を有する。
【0032】
具体的には、扁平形成部22は、シャフト18の先端開口18aから出没可能且つ幅方向(
図1中のX方向)に拡張可能であって互いに対向して延在する一対のアーム26(26a、26b)を有する。各アーム26は、弾性変形可能に構成される。
【0033】
シャフト18の内径は1.0mm〜2.5mm、各アーム26の外径は0.3mm〜1.0mm、静脈の内径は2.0mm〜20.0mm(扁平後の静脈の内径は、2πmm〜20πmm)である。よって、一対のアーム26は、収納状態の幅が0.6mm〜2.0mmであり、各アーム26が互いに反対方向へ変位して2πmm〜20πmmまで拡張する。
【0034】
図3Aにおいて、一対のアーム26は、シャフト18内に収納され、チューブの内周面によって拡張が規制されることにより、収縮状態(一対のアーム26が閉じられた状態)となっている。
図1、
図2及び
図3Bに示すように、一対のアーム26がシャフト18の先端開口18aから突出すると、一対のアーム26は弾性復元力によって幅方向に拡張する。拡張状態の一対のアーム26は、自由端部(先端部27)で外端間の距離が最大となる。
【0035】
各アーム26の自由端部(先端部27)は、内側(扁平形成部22の幅方向内側)に屈曲することにより、先端外面が丸みを帯びた形状とされている。これにより、各アーム26の先端部27が生体管腔の内壁に接触した際に内壁を傷つけることを防止できるとともに、血管の貫通を防止することができる。
【0036】
各アーム26を構成する材料は、弾性復元力で幅方向に拡張するのに十分な弾性を有する金属又は樹脂を採用し得る。例えば、そのような金属としては、ステンレス鋼、タンタル、コバルト合金、銅合金等の通常の弾性を有する金属や、超弾性合金等が挙げられる。特に、超弾性合金は、十分な弾性復元力が得られるため、アーム26の構成材料として好適である。超弾性合金としては、Ni−Ti合金、Ti−Ni−Fe系合金、Cu−Zn系合金、Cu−Zn−Al系合金、Cu−Al−Ni系合金、Cu−Au−Zn系合金、Cu−Sn系合金、Ni−Al系合金、Ag−Cd系合金、Au−Cd系合金、In−Ti系合金、In−Cd系合金等が挙げられる。
【0037】
一対のアーム26を支持する長尺な支持体24は、カテーテル12内に長手方向に摺動可能に挿通される可撓性を有する部材である。一対のアーム26がシャフト18の先端開口18aから突出して拡張した状態で、支持体24はカテーテル12の基端(ハブ20の基端)よりも基端方向に突出(露出)する。治療デバイス10Aを使用する術者は、カテーテル12の基端から突出した支持体24を把持することができる。支持体24の構成材料は、カテーテル12のシャフト18の構成材料として例示した材料から選択され得る。なお、支持体24は、各アーム26とは別の部材として構成されるものに限られず、各アーム26を基端方向に延伸してハブ20の基端から突出した構成、すなわち、各アーム26と支持体24とが連続して一体形成された構成であってもよい。
【0038】
ハブ20の基端内側には、ハブ20と支持体24との間を液密にシールするシール部材28が設けられ、血液等の液体がハブ20の基端から治療デバイス10Aの外部に漏れ出ないようになっている。
【0039】
治療デバイス10Aにおいて、電極部16は、扁平形成部22により生体管腔に形成した扁平部分Fに電流(例えば高周波電流)を流して加熱することにより扁平部分Fを焼灼する。従って、電極部16は、扁平形成部22によって形成された扁平部分Fを閉塞するよう作用するもの(この場合、電気エネルギー)を扁平部分Fに向けて提供する提供部として機能する。電極部16は、導電性材料からなり、可撓性を有し、両端が一対のアーム26の各先端部27に連結される。
【0040】
図3Aに示すように、一対のアーム26がシャフト18内に収容された状態では、電極部16はシャフト18内で撓む。
図3Bに示すように、一対のアーム26がシャフト18の先端開口18aから突出して一対のアーム26が拡張した状態では、電極部16は、一対のアーム26によって引っ張られて(あるいは自ら弾性的に復元して)、拡張状態の一対のアーム26の先端部27間で、扁平形成部22の幅方向(X方向)に延在する。
図3Bでは、電極部16は、拡張状態の一対のアーム26の先端部27間で直線状を呈する。
【0041】
図1に示すように、支持体24の基端部(支持体24のうちハブ20の基端から突出した部分)には、通電ケーブル30を介して高周波電源装置32が接続される。一方のアーム26及び支持体24には、通電ケーブル30と電極部16との間の通電経路Eを形成する配線34が設けられる。具体的には、配線34は、先端側で電極部16の一端に接続されており、一方のアーム26及び支持体24に沿って配設される(
図3B参照)。また、配線34は、基端側で通電ケーブル30に接続される。
【0042】
電極部16と一対のアーム26、一対のアーム26と配線34、支持体24と配線34は、それぞれ互いに電気的に絶縁されている。このような絶縁構造を構築するため、例えば、一対のアーム26及び支持体24が絶縁材料により構成されてもよい。一対のアーム26及び支持体24が導電性材料により構成される場合には、電極部16と一対のアーム26との間に絶縁部材が介装されるとともに、配線34の周囲が絶縁性の被覆材で覆われることにより、上記の絶縁構造が構築されてもよい。
【0043】
次に、静脈瘤の治療を例に挙げ、治療デバイス10Aを用いた治療方法(生体管腔閉塞方法)について説明する。
【0044】
一対のアーム26及び電極部16がシャフト18内に収容された状態の治療デバイス10A(
図3A参照)を用意する。次に、治療デバイス10Aを静脈VE内に挿入することにより、治療デバイス10Aの先端部を治療部位T(標的部位)に到達させる挿入ステップを実施する。具体的には、挿入ステップでは、患者にイントロデューサシースを穿刺し、このイントロデューサシースを介して、静脈瘤を発症した静脈VEに治療デバイス10Aを挿入していく。この場合、超音波ガイド下で治療デバイス10Aの先端位置を確認しながら、治療デバイス10Aを挿入するとよい。そして、
図4Aのように、治療デバイス10Aの先端部を静脈VEの治療部位Tまで到達させる。
【0045】
次に、静脈VEに扁平部分Fを形成する扁平化ステップを実施する。具体的には、扁平化ステップでは、
図4Bのように、内部デバイス14の位置を固定したまま、カテーテル12を所定距離だけ基端方向に移動させる。そうすると、一対のアーム26は、シャフト18の先端開口18aから突出することに伴って、弾性復元力によって、一平面内で各先端部27が相反する方向に変位し、幅方向に拡張(拡開)するに至る。一対のアーム26の拡張により、各アーム26の外側に位置する静脈VEの壁は、径方向外側に押し広げられて外方向に膨出する。
【0046】
この結果、
図5(
図4BにおけるV−V線に沿った断面図)のように、一対のアーム26から力を受ける静脈VEの断面形状は扁平に変形させられる。すなわち、一対のアーム26に押された部分の静脈VEの壁W1同士の距離が大きくなることによって、一対のアーム26の離間方向に対して直交する方向に存在する静脈VEの壁W2同士の距離が小さくなることで、静脈VEの断面形状が扁平となる。
【0047】
次に、電極部16により扁平部分Fを加熱する加熱ステップを実施する。具体的には、加熱ステップでは、静脈VEの扁平部分Fに対し、電極部16により閉塞のための処置を施すために、高周波電源装置32で発生させた電流(高周波電流)を通電ケーブル30及び通電経路E(配線34)を介して電極部16に供給し、静脈VEの扁平部分Fに電流を流して加熱することにより、扁平部分Fを焼灼する。この加熱ステップは、扁平部分Fを閉塞するよう作用するもの(この場合、電気エネルギー)を扁平部分Fに向けて提供する提供ステップということもできる。なお、加熱ステップにおいて、電極部16と静脈VEの扁平部分Fの内壁とが接触していない状態でもよく、この場合でも、血液中を電流が流れるため、血液を介して扁平部分Fに通電することができる。
【0048】
また、加熱ステップと並行して、一対のアーム26を拡張状態としたまま基端方向に移動させる移動ステップを実施する。具体的には、
図4Cのように、一対のアーム26が拡張した状態の治療デバイス10A全体を基端方向に移動させていく。これにより、扁平部分Fの形成と焼灼とが静脈VEに沿って連続的に行われる。焼灼により扁平部分Fの組織は凝固変性する。
【0049】
静脈VEに対するこのような焼灼を所望の範囲に実施したら、次に、シャフト18内に一対のアーム26及び電極部16を再収容し(収容ステップ)、治療デバイス10Aを体内(静脈VE)から引き抜く(抜去ステップ)。なお、シャフト18内に一対のアーム26及び電極部16を再収容する際、内部デバイス14の位置を固定したままカテーテル12を先端方向に移動させてもよく、カテーテル12の位置を固定したまま内部デバイス14を基端方向に移動させてもよい。
【0050】
このように、治療デバイス10Aによれば、生体管腔内で扁平形成部22により生体管腔に扁平部分Fを形成したうえで、形成された扁平部分Fに対して閉塞のための処置を施すため、扁平部分Fを効率的に閉塞させることができる。また、扁平形成部22は、治療デバイス10Aの略最先端位置で生体管腔に扁平部分Fを形成するため、扁平部分Fの形成後に治療デバイス10Aを後退移動させる際に、扁平部分Fにデバイス先端が引っ掛かることがない。よって、治療デバイス10Aの後退移動に伴う扁平部分Fの拡開(再疎通)を防止することができる。
【0051】
また、治療デバイス10Aの場合、扁平形成部22はシャフト18の先端開口18aから出没可能且つ幅方向に拡張可能な一対のアーム26を有し、拡張状態の一対のアーム26の先端部27で、一対のアーム26の外端間の距離が最大となる。この構成により、治療デバイス10Aの略最先端部で生体管腔に扁平部分Fを簡易且つ確実に形成することができる。
【0052】
さらに、治療デバイス10Aの場合、弾性変形可能な一対のアーム26は、シャフト18の先端開口18aから突出することに伴って、弾性復元力によって幅方向に拡張する。このため、一対のアーム26とシャフト18とを軸方向に相対移動させるだけで、一対のアーム26の拡張動作を簡単且つ確実に行うことができる。
【0053】
治療デバイス10Aの場合、生体管腔の扁平部分Fに電気エネルギーを提供することにより生体管腔を加熱処理(焼灼)するため、生体管腔を好適に閉塞することができる。
【0054】
なお、治療デバイス10Aにおいて、上述した電極部16に代えて、
図6Aに示す電極部36が適用されてもよい。電極部36の厚さは、アーム26の厚さ(Y方向の寸法)と同じか、それ以上に設定されている。このような電極部36が適用された場合、一対のアーム26の拡張によって生体管腔に扁平部分Fを形成した際に、扁平部分Fの壁W2の内面に電極部36が接触する。この構成により、扁平部分Fに電流を効率的に流すことができる。よって、扁平部分Fに対する焼灼を効果的に行うことができる。
【0055】
治療デバイス10Aにおいて、上述した電極部16に代えて、
図6Bに示す電極部38a、38bが適用されてもよい。
図6Bにおいて、具体的には、一対のアーム26の厚さ方向(Y方向)に離間して2つの電極部38a、38bが設けられる。一対のアーム26の拡張によって生体管腔に扁平部分Fを形成した際に、一方の電極部38aは、扁平部分Fを構成する一方の平坦な壁W2の内面に接触し、他方の電極部38bは、扁平部分Fを構成する他方の平坦な壁W2の内面に接触する。この構成により、扁平部分Fに電流を効率的に流すことができる。よって、扁平部分Fに対する焼灼を効果的に行うことができる。
【0056】
次に、生体管腔を加熱処理する加熱部として機能する電極部であって、扁平形成部22の幅方向に伸縮可能な電極部を備えた他の治療デバイスについて説明する。
【0057】
図7Aは、第1構成例に係る伸縮可能な電極部40を備えた治療デバイス10Bの先端部の一部断面図である。
図7Aにおいて、電極部40は、シャフト18内に収容された一対のアーム26間で収縮状態となっている。
図7Bにおいて、電極部40は、一対のアーム26間で伸長状態となっている。電極部40は、アーム26に沿って配設された配線34の端部に接続される。
【0058】
電極部40は、扁平形成部22によって形成された扁平部分Fを閉塞するよう作用するもの(電気エネルギー)を扁平部分Fに向けて提供する提供部として機能する。電極部16は、扁平形成部22の先端部(具体的には、一対のアーム26の先端部27間)に設けられ、一対のアーム26の生体管腔内での拡張に伴って伸長する。
【0059】
電極部40は、扁平形成部22の幅方向に互いに相対変位可能であり電流を出力する複数(図示例では、5つ)の要素部材42を有する。隣接する要素部材42は扁平形成部22の幅方向(X方向)にスライド可能である。複数の要素部材42は、互いに太さ(直径)の異なる複数の中空の筒状部材であり、複数の筒状部材によってテレスコピック構造を構成する。
【0060】
図8に示すように、隣接する要素部材42間の伸長限界を規制する規制手段(抜け止め構造)として、各要素部材42の端部には、内方係止突起43と外方係止突起44が設けられる。電極部40が伸長する方向に各要素部材42が所定距離だけ相対移動すると、隣接する要素部材42に設けられた内方係止突起43と外方係止突起44が接触することにより、それ以上の相対変位が規制される。これにより、要素部材42が分離することが阻止される。
【0061】
治療デバイス10Bを使用する場合、
図1に示した治療デバイス10Aと概ね同様の手順(
図4A〜
図4C参照)により、生体管腔に対する治療を行うことができる。具体的には、まず、治療デバイス10Bを使用する場合、治療デバイス10Aを使用する場合と同様に挿入ステップを実施する。
【0062】
次に、生体管腔に扁平部分Fを形成する扁平化ステップを実施する。具体的には、シャフト18から一対のアーム26を突出させることに伴って、一対のアーム26を拡張させることにより生体管腔に扁平部分Fを形成するとともに、一対のアーム26の幅方向に伸縮可能に設けられた加熱部(電極部40)を伸長する。この場合、一対のアーム26がシャフト18の先端開口18aから突出することに伴って、一対のアーム26が弾性復元力によって幅方向に拡張し、複数の要素部材42が扁平形成部22の幅方向に互いに相対変位する。これにより、複数の要素部材42からなる電極部40が伸長する。
【0063】
次に、扁平部分Fの内側に伸長状態で配置された加熱部(電極部40)により、扁平部分Fを加熱する加熱ステップを実施する。この加熱ステップは、扁平部分Fを閉塞するよう作用するもの(この場合、電気エネルギー)を扁平部分Fに向けて提供する提供ステップということもできる。
【0064】
また、加熱ステップと並行して、一対のアーム26を拡張状態とした治療デバイス10B全体を基端方向に移動させる移動ステップを実施する。
【0065】
その後、治療デバイス10Aを使用する場合と同様に、収容ステップ及び抜去ステップを実施する。
【0066】
上記のように構成された治療デバイス10Bによれば、電極部40は、シャフト18内では収縮状態でコンパクトに収納される一方、シャフト18外では一対のアーム26の拡張に伴って伸長可能である。従って、電極部40は、シャフト18内への収納を可能としつつエネルギー放出面積を稼ぐことができ、生体管腔に形成された扁平部分Fに対して効率的な処置を行うことができる。
【0067】
また、電極部40は、扁平形成部22の幅方向に互いに相対変位可能でありエネルギーを出力する複数の要素部材42を有するため、簡単な構成で、シャフト18外でエネルギー放出面積を広げることが可能である。
【0068】
さらに、電極部40は、複数の筒状部材(要素部材42)によって構成されるテレスコピック構造を有するため、伸長状態で扁平形成部22の幅方向に隙間がない。このため、扁平部分Fに対して効果的に加熱処理を行うことができる。
【0069】
図9A及び
図9Bは、第2構成例に係る伸縮可能な電極部46を備えた治療デバイス10Cの先端部の構成を示す一部断面図である。
図9Aにおいて、電極部46は、シャフト18内に収容された一対のアーム26間で収縮状態となっている。
図9Bにおいて、電極部46は、一対のアーム26間で伸長状態となっている。
【0070】
電極部46は、扁平形成部22によって形成された扁平部分Fを閉塞するよう作用するもの(電気エネルギー)を扁平部分Fに向けて提供する提供部として機能する。電極部46は、扁平形成部22の先端部に設けられ、一対のアーム26の生体管腔内での拡張に伴って伸長する。
【0071】
電極部46は、扁平形成部22の幅方向に互いに相対変位可能であり電流を出力する複数(図示例では、5つ)の要素部材48を有する。具体的には、複数の要素部材48は所定方向(図示例では、扁平形成部22の長手方向)に積層される。隣接する要素部材48は扁平形成部22の幅方向(X方向)にスライド可能である。
【0072】
複数の要素部材48間において、それらの幅(扁平形成部22の長手方向に沿った寸法)及び長さ(扁平形成部22の幅方向に沿った寸法)は、互いに同じに設定されている。従って、平面視での各要素部材48の面積は同じであり、各要素部材48からのエネルギー放出量は均一である。
【0073】
図10Aは、隣接する要素部材48の斜視図である。
図10Bは、
図10AにおけるXB−XB線に沿った断面図である。隣接する要素部材48同士のスライドを案内するためのガイド構造として、各要素部材48には、ガイドレール50と、ガイドレール50の形状に対応したガイド溝52が要素部材48の長手方向に沿って設けられる。ガイドレール50とガイド溝52とが互いにスライド可能に係合するとともに、スライド方向と直交する方向の相対変位を規制するように係合する。ガイドレール50及びガイド溝52は、このような係合を可能とするような凹凸形状に形成されている。
【0074】
図10Aに示すように、隣接する要素部材48間の伸長限界を規制する規制手段(抜け止め構造)として、各要素部材48の端部には、係止突起54が設けられる。電極部46が伸長する方向に各要素部材48が所定距離だけ相対移動すると、隣接する要素部材48に設けられた係止突起54同士が接触することにより、それ以上の相対変位が規制される。これにより、要素部材48が分離することが阻止される。
【0075】
治療デバイス10Cを使用する場合でも、
図1に示した治療デバイス10Aの使用方法と概ね同様の手順(
図4A〜
図4C参照)により、生体管腔に対する治療を行うことができる。具体的には、まず、治療デバイス10Cを使用する場合、治療デバイス10Aを使用する場合と同様に挿入ステップを実施する。
【0076】
次に、生体管腔に扁平部分Fを形成する扁平化ステップを実施する。具体的には、シャフト18から一対のアーム26を突出させることに伴って、一対のアーム26を拡張させることにより生体管腔に扁平部分Fを形成するとともに、電極部46をアーム26の幅方向に伸長する。この場合、一対のアーム26がシャフト18の先端開口18aから突出することに伴って、一対のアーム26が弾性復元力によって幅方向に拡張し、複数の要素部材48が扁平形成部22の幅方向に互いに相対変位する。これにより、複数の要素部材48からなる電極部46が伸長する。
【0077】
次に、扁平部分Fの内側に伸長状態で配置された電極部40により、扁平部分Fを加熱する加熱ステップを実施する。この加熱ステップは、扁平部分Fを閉塞するよう作用するもの(この場合、電気エネルギー)を扁平部分Fに向けて提供する提供ステップということもできる。
【0078】
また、加熱ステップと並行して、一対のアーム26を拡張状態とした治療デバイス10C全体を基端方向に移動させる移動ステップを実施する。
【0079】
上記のように構成された電極部46によっても、電極部40と同様に、シャフト18内への収納を可能としつつエネルギー放出面積を稼ぐことができ、扁平部分Fに対して効率的な処置を行うことができる。また、電極部46は、扁平形成部22の幅方向に互いに相対変位可能な複数の要素部材48を有するため、簡単な構成で、シャフト18外でエネルギー放出面積を広げることが可能であるとともに、各要素部材48からのエネルギー放出量を均一化することができる。
【0080】
特に、治療デバイス10Cの場合、複数の要素部材48は、一対のアーム26の長手方向に積層される。このため、
図9Cのように、扁平形成部22の厚さ方向に段差のない構成とすることで、一対のアーム26の拡張により形成した生体管腔の扁平部分Fに対して、幅方向に均一に加熱処理を行うことができる。
【0081】
図11A及び
図11Bは、第3構成例に係る伸縮可能な電極部56(加熱部)を備えた治療デバイス10Dの先端部の一部断面図である。
図11Aにおいて、電極部56は、シャフト18内に収容された一対のアーム26間で収縮状態となっている。
図11Bにおいて、電極部56は、一対のアーム26間で伸長状態となっている。
【0082】
電極部56は、扁平形成部22の先端部(具体的には、一対のアーム26の先端部27間)に設けられ、一対のアーム26の生体管腔内での拡張に伴って伸長する。この電極部56は、上述した電極部46と同様に、導電性材料からなり扁平形成部22の幅方向(X方向)に互いにスライド可能な複数の要素部材58を有し、伸縮可能である。一方、電極部56では、複数の要素部材58は、扁平形成部22の厚さ方向(Y方向)に積層されている。
【0083】
なお、詳細には図示しないが、電極部56を構成する複数の要素部材58も、電極部40を構成する複数の要素部材42と同様に、ガイド構造及び抜け止め構造を有する。
【0084】
治療デバイス10Dを使用する場合でも、
図9A等に示した治療デバイス10Cの使用方法と同様の手順により、生体管腔に対する治療を行うことができる。
【0085】
上記のように構成された電極部56によっても、
図9A等に示した電極部46と同様に、シャフト18内への収納を可能としつつエネルギー放出面積を稼ぐことができ、生体管腔に形成した扁平部分Fに対して効率的な処置を行うことができる。
【0086】
図12A及び
図12Bは、第4構成例に係る伸縮可能な電極部60(加熱部)を備えた治療デバイス10Eの先端部の構成を示す図である。
図12Aにおいて、電極部60は、シャフト18内に収容された一対のアーム26間で収縮状態となっている。
図12Bにおいて、電極部60は、一対のアーム26間で伸長状態となっている。
【0087】
電極部60は、扁平形成部22によって形成された扁平部分Fを閉塞するよう作用するもの(電気エネルギー)を扁平部分Fに向けて提供する提供部として機能する。電極部60は、扁平形成部22の先端部に設けられ、導電性材料からなる複数の要素部材62を有し、一対のアーム26の生体管腔内での拡張に伴って伸長する。
【0088】
特に、この電極部60の場合、隣接する要素部材62同士を連結する折り曲げ可能な連結部64を有する。連結部64は、導電性を有しており、配線34からの通電により、すべての要素部材62が通電される。図示例では、各連結部64は、可撓性を有する部材からなり、隣接する要素部材62の端部同士を連結する。電極部60の両端部を構成する要素部材62は、可撓性及び導電性を有する連結部66を介して、各アーム26に連結される。連結部66は、各アーム26の厚さ方向(Y方向)の略中央に固定される。
【0089】
図12Aのように、扁平形成部22(一対のアーム26)がシャフト18内に収容された状態において、電極部60は、連結部64の箇所で交互に逆方向に折り曲げられることにより、複数の要素部材62が扁平形成部22の厚さ方向に並ぶ。すなわち、電極部60は、一対のアーム26間において、扁平形成部22の幅方向に蛇行するように折り畳まれる。
【0090】
扁平形成部22がシャフト18外に突出すると、
図12Bのように、各連結部64は真直ぐに伸ばされ、複数の要素部材62は、扁平形成部22の幅方向(X方向)に沿って略一直線上に並ぶ。これにより、電極部16は、扁平形成部22の幅方向に伸長する。
【0091】
治療デバイス10Eを使用する場合でも、
図1に示した治療デバイス10Aの使用方法と概ね同様の手順により、生体管腔に対する治療を行うことができる。
【0092】
具体的には、治療デバイス10Eを使用する場合、まず、治療デバイス10Aを使用する場合と同様に挿入ステップを実施する。
【0093】
次に、生体管腔に扁平部分Fを形成する扁平化ステップを実施する。具体的には、シャフト18から一対のアーム26を突出させることに伴って、一対のアーム26を拡張させることにより生体管腔に扁平部分Fを形成するとともに、電極部60をアーム26の幅方向に伸長する。この場合、一対のアーム26がシャフト18の先端開口18aから突出することに伴って、一対のアーム26が弾性復元力によって幅方向に拡張し、複数の要素部材62が扁平形成部22の幅方向に沿って略一直線上に並ぶ(
図12B参照)。これにより、複数の要素部材62からなる電極部60が伸長する。
【0094】
次に、扁平部分Fの内側に伸長状態で配置された電極部60により、扁平部分Fを加熱する加熱ステップを実施する。この加熱ステップは、扁平部分Fを閉塞するよう作用するもの(この場合、電気エネルギー)を扁平部分Fに向けて提供する提供ステップということもできる。
【0095】
また、加熱ステップと並行して、一対のアーム26を拡張状態とした治療デバイス10E全体を基端方向に移動させる移動ステップを実施する。
【0096】
上記のように構成された電極部60によっても、他の伸縮可能な電極部40、46、56と同様に、シャフト18内への収納を可能としつつエネルギー放出面積を稼ぐことができ、生体管腔に形成した扁平部分Fに対して効率的な処置を行うことができる。
【0097】
図13は、さらに別の治療デバイス10Fの一部省略概略図である。この治療デバイス10Fは、扁平形成部22に対して可動な加熱部としての電極部68と、電極部68に連結された可撓性を有する動力伝達部材としてのワイヤ72a、72bと、ワイヤ72a、72bを駆動する駆動部74とを備える。治療デバイス10Fにおけるカテーテル12、扁平形成部22、支持体24、通電ケーブル30及び高周波電源装置32は、
図1等に示した治療デバイス10Aと同じ構成である。
【0098】
電極部68は、可撓性を有する一対の加熱片70a、70bからなる。各加熱片70a、70bは、弾性変形可能な材料により構成される。一方の加熱片70aは、その一端部において一方のアーム26aに片持ち支持される。他方の加熱片70bは、その一端部において他方のアーム26bに片持ち支持される。
【0099】
図14Aにおいて、扁平形成部22がシャフト18内に収容されており、一対の加熱片70a、70bは、自由端が扁平形成部22の基端側を指向するように曲げられている。このとき各加熱片70a、70bは弾性変形している。
【0100】
図14Bにおいて、シャフト18の先端開口18aから突出した扁平形成部22を構成する一対のアーム26は幅方向(X方向)に拡張しており、電極部68は、一対の加熱片70a、70bが弾性的に復元し、扁平形成部22の幅方向に並ぶことによって、略直線状を呈する。各加熱片70a、70bの自由端は、斜めに形成されており、扁平形成部22の幅方向において部分的に重なっている。なお、加熱片70a、70bの自由端同士は、接触していてもよく、僅かに隙間を空けて近接していてもよい。
【0101】
各加熱片70a、70bは、各アーム26に対して扁平形成部22の幅方向の軸線を中心に回転可能(
図14B中のA方向に回転可能)であるか、あるいは、各アーム26に対して扁平形成部22の幅方向に往復移動可能(
図14B中のB方向に往復移動可能)である。各加熱片70a、70bは、各アーム26に対して、扁平形成部22の幅方向の軸線を中心に回転可能であり、且つ、扁平形成部22の幅方向に往復移動可能であってもよい。
【0102】
一対の加熱片70a、70bは、それぞれワイヤ72a、72bに連結されており、ワイヤ72a、72bに連動して所定方向に動作する。各ワイヤ72a、72bは、アーム26及び支持体24の各内腔に摺動可能に挿通されており、支持体24の基端に設けられた駆動部74(
図13参照)まで延在する。
【0103】
駆動部74は、各ワイヤ72a、72bを軸線周りに回転駆動可能であるか、あるいは、各ワイヤ72a、72bを軸線方向に往復駆動可能である。駆動部74は、各ワイヤ72a、72bを軸線周りに回転駆動可能であり且つ軸線方向に往復駆動可能であってもよい。詳細は図示しないが、駆動部74は、1つ又は2つ以上のモータ(回転型、リニア型のいずれでもよい)を備えるとともに、必要に応じてモータと各ワイヤ72a、72bの間の動力伝達機構(例えば、歯車、プーリ、ベルト等)を備える。
【0104】
駆動部74が各ワイヤ72a、72bを軸線周りに回転駆動する場合、各ワイヤ72a、72bを介して駆動部74から各加熱片70a、70bへとトルクが伝達されることにより、各加熱片70a、70bは、扁平形成部22の幅方向の軸線を中心に回転する。
【0105】
駆動部74が各ワイヤ72a、72bを往復駆動する場合、各ワイヤ72a、72bを介して駆動部74から各加熱片70a、70bへと軸力が伝達されることにより、各加熱片70a、70bは、扁平形成部22の幅方向に往復移動する。
【0106】
図14A及び
図14Bに示すように、各加熱片70a、70bには、牽引部材78a、78bが連結されている。扁平形成部22及び電極部68をシャフト18内に再収容する際には、牽引部材78a、78bを基端方向に引っ張ることにより、自由端が基端方向を指向するように加熱片70a、70bを強制的に弾性変形させることができる。これにより、扁平形成部22及び電極部68のシャフト18内への再収容を容易に行うことができる。なお、
図13では詳細な図示を省略するが、牽引部材78a、78bは、カテーテル12(シャフト18及びハブ20)内に挿通され、ハブ20の基端から引き出されている。
【0107】
各加熱片70a、70bが扁平形成部22の幅方向の軸線を中心に回転する構成の場合、牽引部材78a、78bと加熱片70a、70bとの接続構造は、加熱片70a、70bの連続的な回転を妨げないように構成されるとよい。例えば、
図14A及び
図14Bのように、加熱片70a、70bの自由端側に環状溝76を設け、環状溝76に相対回転可能に係合するリング79を牽引部材78a、78bの各先端に設けると、牽引部材78a、78bが連結されていても、加熱片70a、70bの回転に支障を来さない。
【0108】
各ワイヤ72a、72bは、導電性材料により構成されるとともに、支持体24の基端側で通電ケーブル30と電気的に接続されている。従って、各ワイヤ72a、72bが通電経路Eとして機能することにより、高周波電源装置32からの電流(高周波電流)を、各ワイヤ72a、72bを介して各加熱片70a、70bへと通電することができる。
【0109】
次に、静脈瘤の治療を例に挙げ、治療デバイス10Fを用いた治療方法(生体管腔閉塞方法)について説明する。なお、治療デバイス10Aを用いた治療方法と重複する部分については、簡略的に説明する。
【0110】
一対のアーム26及び電極部68がシャフト18内に収容された状態の治療デバイス10F(
図14A)を用意する。次に、挿入ステップを実施する。具体的には、患者に穿刺したイントロデューサシースを介して、静脈瘤を発症した静脈VEに治療デバイス10Fを挿入する。そして、超音波ガイド下で、治療デバイス10Fを進め、
図15Aのように、治療デバイス10Fの先端部を静脈VEの治療部位T(標的部位)まで到達させる。
【0111】
次に、生体管腔に扁平部分Fを形成する扁平化ステップを実施する。具体的には、
図15Bのように、内部デバイス14の位置を固定したまま、カテーテル12を所定距離だけ基端方向に移動させることにより、一対のアーム26をシャフト18の先端開口18aから突出させる。これにより、一対のアーム26を拡張させ、静脈VEに扁平部分F(
図5も参照)を形成する。
【0112】
一方、一対のアーム26がシャフト18の先端開口18aから突出して拡張することに伴って、電極部68を構成する各加熱片70a、70bは、弾性的に復元して直線状を呈する。これにより、電極部68は、扁平部分Fの内側に配置される。
【0113】
次に、扁平形成部22に対して電極部68を動かしながら、扁平部分Fの内側に電極部68により扁平部分Fを加熱する加熱ステップを実施する。この加熱ステップは、扁平部分Fを閉塞するよう作用するもの(この場合、電気エネルギー)を扁平部分Fに向けて提供する提供ステップということもできる。具体的には、加熱ステップでは、高周波電源装置32で発生させた電流(高周波電流)を通電ケーブル30及び通電経路E(ワイヤ72a、72b)を介して電極部68に供給し、電流を静脈VEの扁平部分Fに流して熱を発生させ、扁平部分Fを焼灼する。
【0114】
また、加熱ステップと並行して、拡張状態の一対のアーム26と加熱状態の電極部68とを生体管腔に沿って移動させる移動ステップを実施する。具体的には、
図15Cのように、焼灼しながら、一対のアーム26が拡張した状態の治療デバイス10F全体を基端方向に移動させていく。これにより、扁平部分Fの形成と焼灼とが静脈VEに沿って連続的に行われる。
【0115】
上述したように加熱ステップでは、電極部68により静脈VEを焼灼している間、電極部68が静脈VEの組織に貼り付くことを抑制するために、扁平形成部22に対して電極部68を動かす。具体的には、駆動部74(
図13参照)により各ワイヤ72a、72bを回転駆動又は往復駆動することにより、各ワイヤ72a、72bに連結された各加熱片70a、70bを、扁平形成部22の幅方向の軸線周りに回転させ、又は扁平形成部22の幅方向に小刻みに往復移動させる。これにより、各加熱片70a、70bが静脈VEの組織に貼り付くことが抑制又は防止される。換言すれば、各加熱片70a、70bは、扁平部分Fを加熱する間は常に、扁平部分Fの組織に貼り付かない程度の速さで、扁平部分Fに対して動く。よって、扁平部分Fに対して効率的な処置を行うことができる。
【0116】
図16A及び
図16Bに示す治療デバイス10Gは、
図13に示した治療デバイス10Fに対する変形例である。具体的には、この治療デバイス10Gは、治療デバイス10Fにおける加熱部としての電極部68を、一対のアーム26間に架け渡された可撓性を有する電極部80に置き換えた構成に相当する。電極部80の一端及び他端は、それぞれ一対のアーム26の各先端部27に支持される。
【0117】
図16Aにおいて、扁平形成部22がシャフト18内に収容されており、電極部80は曲げられている。
図16Bのように、一対のアーム26がシャフト18の先端開口18aから突出して一対のアーム26が拡張した状態では、電極部80は、一対のアーム26によって引っ張られて(あるいは自ら弾性的に復元して)直線状を呈する。すなわち、電極部80は、拡張状態の一対のアーム26の先端部27間で、扁平形成部22の幅方向(X方向)に延在する。
【0118】
電極部80は、各アーム26に対して扁平形成部22の幅方向の軸線を中心に回転可能(
図16B中のA方向に回転可能)であるか、あるいは、各アーム26に対して扁平形成部22の幅方向に往復移動可能(
図16B中のB方向に往復移動可能)である。電極部16は、各アーム26に対して、扁平形成部22の幅方向の軸線を中心に回転可能であり、且つ、扁平形成部22の幅方向に往復移動可能であってもよい。
【0119】
電極部80は、その両端においてワイヤ72a、72bに連結されており、ワイヤ72a、72bに連動して所定方向に動作する。
【0120】
駆動部74(
図13)が各ワイヤ72a、72bを軸線周りに回転駆動する場合、各ワイヤ72a、72bを介して駆動部74から電極部80へとトルクが伝達されることにより、電極部80は、扁平形成部22の幅方向の軸線を中心に回転する。なお、この場合、駆動部74は、電極部80を所定方向に回転せるために、一方と他方のワイヤ72a、72bを互いに反対方向に同じ回転速度で駆動する。
【0121】
駆動部74が各ワイヤ72a、72bを往復駆動する場合、各ワイヤ72a、72bを介して駆動部74から電極部80へと軸力が伝達されることにより、電極部80は、扁平形成部22の幅方向に往復移動する。なお、この場合、駆動部74は、電極部80を適切に往復移動させるために、一方と他方のワイヤ72a、72bを互いに反対方向に同じ速度で往復駆動する。
【0122】
治療デバイス10Gを使用する場合でも、
図13等に示した治療デバイス10Fの使用方法と同様の手順(
図15A〜
図15C参照)により、生体管腔に対する治療を行うことができる。
【0123】
従って、治療デバイス10Gによっても、電極部68を備えた治療デバイス10F(
図13)と同様に、扁平部分Fにエネルギーを印加する間、電極部80は、扁平形成部22に対して動くことに伴って扁平部分Fに対しても動くため、電極部16が扁平部分Fの組織に貼り付くことが抑制される。換言すれば、電極部80は、扁平部分Fを加熱する間は常に、扁平部分Fの組織に貼り付かない程度の速さで、扁平部分Fに対して動く。これにより、扁平部分Fに対して効率的な処置を行うことができる。
【0124】
特に、治療デバイス10Gの場合、電極部80が一対のアーム26間で保持されるため、扁平部分Fの内側に電極部80を確実に配置することができる。また、電極部70が扁平部分Fからずれることがなく、安定した処置を行うことができる。
【0125】
なお、上述した治療デバイス10A〜10Gでは、生体管腔に対して加熱処理を施す加熱部は、生体管腔に通電することにより生体管腔を加熱する電極部(16、36、38a、38b、40、46、56、60、68、80)として構成されたが、そのような電極部に代えて、抵抗加熱を利用した発熱部として構成されてもよい。この場合、発熱部は、発熱部に対する通電時の抵抗加熱によってそれ自体が発熱し、その熱によって生体管腔を加熱する。発熱部は、上述した電極部40、46、56、60、68、80と同様の伸縮構造とされてもよい。
【0126】
図17は、さらに別の治療デバイス10Hの一部省略概略図である。治療デバイス10Hは、扁平形成部22により生体管腔に形成した扁平部分Fに対してレーザー光L(
図18A参照)を照射する照射部82を備える。従って、照射部82は、扁平形成部22によって形成された扁平部分Fを閉塞するよう作用するもの(この場合、光エネルギー)を扁平部分Fに向けて提供する提供部として機能する。
【0127】
図18Aに示すように、治療デバイス10Hにおいて、一対のアーム26の各先端部27の内部に照射部82が設けられる。すなわち、2つの照射部82が設けられる。各照射部82は、レンズ84により構成され、2つの光ファイバ86を介して伝送されたレーザー光Lを一対のアーム26の内方に向けて照射する。
【0128】
光ファイバ86は、一端がレンズ84に接続又は近接配置されるとともに、一対のアーム26内及び支持体24内に配設される。また、光ファイバ86は、支持体24の基端から引き出されて、レーザー光源88に接続される。なお、光ファイバ86は、一対のアーム26及び支持体24の外面に配設されてもよい。
【0129】
適用するレーザー光L、すなわちレーザー光源88が発生するレーザー光Lは、例えば、810、940、1064、1320、1470、2000nmの波長から選択され得る。
【0130】
次に、静脈瘤を例に挙げ、治療デバイス10Hを用いた治療方法(生体管腔閉塞方法)について説明する。
【0131】
治療デバイス10Hを用いた治療方法においては、まず、治療デバイス10Aの使用方法と同様に、挿入ステップを実施する。具体的には、一対のアーム26がシャフト18内に収納された状態の治療デバイス10Hを、イントロデューサシースを介して静脈VE内に挿入し、超音波ガイドで治療デバイス10Hの先端部を静脈VEの治療部位Tまで到達させる。
【0132】
次に、一対のアーム26を拡張させることにより、静脈VEに扁平部分Fを形成する扁平化ステップを実施する(
図18A、
図18B参照)。なお、
図18Bは、
図18AにおけるXVIIIB−XVIIIB線に沿った断面図である。
【0133】
次に、照射部82を構成するレンズ84から、静脈VEの扁平部分Fの内周面に向けてレーザー光Lを照射することにより、扁平部分Fを加熱し焼灼する照射ステップを実施する。この照射ステップは、扁平部分Fを閉塞するよう作用するもの(この場合、光エネルギー)を扁平部分Fに向けて提供する提供ステップということもできる。光ファイバ86を介して伝送されるレーザー光Lをレンズ84により扁平形成部22の厚さ方向(Y方向)に拡散して出射することで、扁平部分Fの内周面に対して効果的にレーザー光Lを照射することができる。
【0134】
次に、拡張状態の一対のアーム26を生体管腔に沿って移動させる移動ステップを実施する。具体的には、一対のアーム26の拡張状態を保持するとともに、扁平部分Fに向けてレーザー光Lを照射しながら、治療が必要な範囲分だけ治療デバイス10H全体を基端方向に移動させ、所定位置で停止させる。静脈VEに対して所望の範囲に処置を実施したら、レーザー光Lの照射を停止する。
【0135】
その後、シャフト18内に一対のアーム26を再収容(収容ステップ)し、治療デバイス10Hを体内(静脈VE)から引き抜く(抜去ステップ)。
【0136】
治療デバイス10Hによれば、扁平形成部22により生体管腔に形成した扁平部分Fにレーザー光Lを照射することによって扁平部分Fの組織を変性させるため、生体管腔を好適に閉塞することができる。
【0137】
図19に示す治療デバイス10Iのように、可撓性を有する長尺な(棒状の)支持部材90に沿って光ファイバ86が配設されるとともに、支持部材90の先端に照射部82としてのレンズ84が取り付けられた構成としてもよい。この場合、光ファイバ86は、支持部材90の内部に挿通されてもよく、あるいは、支持部材90の外面に固定されてもよい。支持部材90は、カテーテル12のシャフト18内に進退可能に挿通されるとともに、レンズ84が取り付けられた先端部がシャフト18の先端開口18aから先端方向に突出可能である。
【0138】
次に、治療デバイス10Iの使用方法について、治療デバイス10Hの使用方法と異なる部分を中心に説明する。
【0139】
静脈VEの治療部位Tにおいて一対のアーム26を拡張させることにより静脈VEに扁平部分Fを形成した後(扁平化ステップの後)、シャフト18の先端開口18aから支持部材90を突出させ、レンズ84を静脈VEの扁平部分Fに近づける近接ステップを実施する。
【0140】
その後、治療デバイス10Hの使用方法と同様に、照射ステップ(提供ステップ)及び移動ステップを実施する。但し、治療デバイス10Iの場合、光ファイバ86を介して伝送されるレーザー光Lをレンズ84により扁平形成部22の幅方向及び厚さ方向に拡散して出射する。これにより、扁平部分Fの内周面に対して効果的にレーザー光Lを照射することができる。
【0141】
その後、シャフト18内に一対のアーム26及び支持部材90を再収容し(収容ステップ)、治療デバイス10Iを体内(静脈VE)から引き抜く(抜去ステップ)。
【0142】
図20は、さらに別の治療デバイス10Jの一部省略概略図である。この治療デバイス10Jは、
図1等に示した治療デバイス10Aの電極部16に相当する構成を備えないとともに、カテーテル12に接続された分岐チューブ92を備える。分岐チューブ92は、一端がカテーテル12のハブ20に接続され、他端にはコネクタ94が設けられる。分岐チューブ92の内腔は、カテーテル12の内腔と連通する。コネクタ94は、硬化剤Mが充填された供給デバイス96(例えば、シリンジ)が接続可能である。
【0143】
硬化剤Mは、血管壁に障害を起こすことにより血栓を形成させる機能を有する薬液であり、例えば、ポリドカノールが挙げられる。
【0144】
次に、静脈瘤の治療を例に挙げ、治療デバイス10Jを用いた治療方法(生体管腔閉塞方法)について説明する。
【0145】
一対のアーム26がシャフト18内に収容された状態の治療デバイス10Jを用意する。次に、治療デバイス10Aを使用する場合と同様に挿入ステップを実施する。具体的には、患者に穿刺したイントロデューサシースを介して、静脈瘤を発症した静脈VEに治療デバイス10Jを挿入する。そして、超音波ガイド下で、治療デバイス10Jを進め、
図21Aのように、治療デバイス10Jの先端部を静脈VEの治療部位T(標的部位)まで到達させる。
【0146】
次に、生体管腔に扁平部分Fを形成する扁平化ステップを実施する。具体的には、
図21Bのように、一対のアーム26を拡張させることにより、静脈VEに扁平部分Fを形成する。
【0147】
次に、コネクタ94に接続した供給デバイス96から、分岐チューブ92及びカテーテル12に硬化剤Mを流し、シャフト18の内腔19を介して先端開口18aから硬化剤Mを吐出させる硬化剤供給ステップを実施する。この硬化剤供給ステップは、扁平部分Fを閉塞するよう作用するもの(この場合、硬化剤M)を扁平部分Fに向けて提供する提供ステップということもできる。硬化剤供給ステップにより、硬化剤Mが静脈VEの扁平部分Fに供給される。このように、シャフト18の内腔19及び先端開口18aは、扁平部分Fに向けて硬化剤Mを供給する硬化剤供給部として機能する。
【0148】
次に、拡張状態の一対のアーム26を生体管腔に沿って移動させる移動ステップを実施する。具体的には、
図21Cのように、一対のアーム26の拡張状態を保持しながら、治療が必要な範囲分だけ治療デバイス10J全体を一定速度で基端方向に移動させ、所定の位置で停止させる。なお、硬化剤Mは、治療デバイス10J全体を基端方向に移動させる前に一回だけ吐出させてもよく、あるいは、治療デバイス10J全体を基端方向に移動させている間にさらに一回又は複数回吐出させてもよい。
【0149】
あるいは、硬化剤Mは、治療デバイス10J全体を基端方向に移動させる前から吐出を開始し、基端方向への移動の間、所定流量で連続的に吐出させてもよい。この場合、治療デバイス10Jの停止に伴って、硬化剤Mの吐出も停止させる。
【0150】
硬化剤Mが適用された静脈VEの血管壁は、硬化剤Mの作用によって障害を起こし、血栓が形成されるため、処置が施された静脈VEはやがて閉塞されるに至る。静脈VEに対して所望の範囲に処置を実施したら、シャフト18内に一対のアーム26を再収容し(収容ステップ)、治療デバイス10Jを体内(静脈VE)から引き抜く(抜去ステップ)。
【0151】
治療デバイス10Jによれば、生体管腔に扁平部分Fを形成したうえで硬化剤Mを適用するため、生体管腔の扁平部分Fを効率的に閉塞させることができる。その他、治療デバイス10Jによっても、
図1等に示した治療デバイス10Aと同様の効果が得られる。
【0152】
図22に示す治療デバイス10Kのように、可撓性を有する長尺なチューブ98を用いて硬化剤Mを静脈VEの扁平部分Fに供給してもよい。チューブ98は、カテーテル12のシャフト18内に進退可能に挿通されるとともに、先端部がシャフト18の先端開口18aから先端方向に突出可能である。
【0153】
次に、治療デバイス10Kの使用方法について、治療デバイス10Jの使用方法と異なる部分を中心に説明する。
【0154】
静脈VEの治療部位Tにおいて一対のアーム26を拡張させることにより静脈VEに扁平部分Fを形成した後(扁平化ステップの後)、シャフト18の先端開口18aからチューブ98を突出させ、静脈VEの扁平部分Fに向けてチューブ98の先端開口98aから硬化剤Mを吐出させる硬化剤供給ステップ(提供ステップ)を実施する。このように、チューブ98及びその先端開口98aは、扁平部分Fに向けて硬化剤Mを供給する硬化剤供給部として機能する。
【0155】
また、治療デバイス10Jの使用方法と同様に、拡張状態の一対のアーム26を生体管腔に沿って移動させる移動ステップを実施する。
【0156】
静脈VEに対して所望の範囲に処置を実施したら、シャフト18内に一対のアーム26及びチューブ98を再収容し(収容ステップ)、治療デバイス10Kを体内(静脈VE)から引き抜く(抜去ステップ)。
【0157】
治療デバイス10Kによれば、
図20に示した治療デバイス10Jと比べて、静脈VEの扁平部分Fに近い位置から硬化剤Mを吐出できるため、硬化剤Mを一層効果的に扁平部分Fに供給することができる。
【0158】
図23は、さらに別の治療デバイス10Lの一部省略概略図である。この治療デバイス10Lは、静脈VEに形成した扁平部分Fに硬化剤Mを供給する構成である点で、
図20の治療デバイス10Jと共通する。一方、この治療デバイス10Lは、一対のアーム26の各先端部27によって支持される供給管100を備えるとともに、支持体24の基端には、硬化剤Mが充填された供給デバイス96が接続可能なコネクタ102が設けられる。
【0159】
供給管100は、可撓性を有し、一対のアーム26の開き具合に追従して変形可能である。従って、
図24Aのように、シャフト18内で一対のアーム26が閉じている状態では、供給管100は撓んだ状態でシャフト18内に収容される。一方、
図24Bのように、一対のアーム26がシャフト18の先端開口18aから突出して幅方向(X方向)に拡張すると、一対のアーム26に引っ張られることによって(あるいは自らの弾性復元力によって)、一対のアーム26の先端部27間で直線状を呈する。
【0160】
供給管100には、硬化剤Mを吹き出すための複数の吹出口101が設けられる。各吹出口101は、供給管100の内腔と連通する。図示例では、供給管100の長さ方向に沿って複数の吹出口101が設けられる。複数の吹出口101は、扁平形成部22の厚さ方向の両側に設けられる。
【0161】
次に、治療デバイス10Lの使用方法について、治療デバイス10Jの使用方法と異なる部分を中心に説明する。
【0162】
一対のアーム26及び供給管100がシャフト18内に収容された状態の治療デバイス10L(
図24A参照)を用意する。次に、治療デバイス10Jの使用方法における挿入ステップと同様に、治療デバイス10Lの先端部を静脈VEの治療部位Tまで到達させる。
【0163】
次に、生体管腔に扁平部分Fを形成する扁平化ステップを実施する。具体的には、シャフト18の先端開口18aから一対のアーム26を突出させ、それに伴って一対のアーム26を拡張させることにより、静脈VEに扁平部分Fを形成する。このとき、供給管100は、
図24Bのように一対のアーム26の先端部27間で直線状を呈し、扁平部分Fの内側に配置される。
【0164】
次に、静脈VEの扁平部分Fに向けて硬化剤Mを吐出させる硬化剤供給ステップ(提供ステップ)を実施する。具体的には、コネクタ94に接続した供給デバイス96から硬化剤Mを吐出させ、支持体24及びアーム26を介して供給管100へと硬化剤Mを流し、さらに、供給管100に設けられた各吹出口101から硬化剤Mを吐出させる。これにより、硬化剤Mが静脈VEの扁平部分Fに供給される。このように、供給管100に設けられた吹出口101は、扁平部分Fに向けて硬化剤Mを供給する硬化剤供給部として機能する。
【0165】
次に、治療デバイス10Jの使用方法と同様に、拡張状態の一対のアーム26を生体管腔に沿って基端方向に移動させる移動ステップを実施する。
【0166】
静脈VEに対して所望の範囲に処置を実施したら、シャフト18内に一対のアーム26及び供給管100を再収容し(収容ステップ)、治療デバイス10Lを体内(静脈VE)から引き抜く(抜去ステップ)。
【0167】
上記のように構成された治療デバイス10Lによれば、吹出口101が形成された供給管100がアーム26の先端に設けられるため、静脈VEに形成した扁平部分Fの内側から扁平部分Fに対して硬化剤Mを吹き出すことができる。よって、扁平部分Fを効果的に閉塞することができる。
【0168】
特に、治療デバイス10Lの場合、供給管100の両端は、一対のアーム26の各先端部27に接続されるため、生体管腔内での一対のアーム26の拡張に伴って供給管100が扁平部分Fの内側に確実に配置される。よって、一対のアーム26の拡張と、扁平部分Fの内側への供給管100の配置とをひとつの操作によって実行することができる。
【0169】
なお、上述した治療デバイス10K(
図22)及び治療デバイス10L(
図23)については、生体管腔を閉塞するために適用する閉塞材として、硬化剤Mを用いる例を説明したが、硬化剤Mの代わりに、接着剤(塞栓剤)を用いてもよい。この場合、治療デバイス10K(又は治療デバイス10L)において、チューブ98の先端開口98a(又は供給管100の吹出口101)から接着剤が吐出される。接着剤は、吐出前は液状であり吐出後に硬化して固形化(又は半固形化)となる。
【0170】
接着剤は、重合型又は析出型のうちいずれのタイプの接着剤でもよく、例えば、シアノアクリレート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ゼラチン系接着剤、フィブリン系接着剤(フィブリン糊)等が挙げられる。これらの中でも、シアノアクリレート系接着剤は、シャフト18から吐出して直ぐに塞栓効果を発揮するため良好に適用し得る。シアノアクリレート系接着剤としては、例えば、NBCA(N−butyl−2−cyanoacrylate)、Onyx(登録商標)等が挙げられる。
【0171】
治療デバイス10K(
図22)及び治療デバイス10L(
図23)の使用において、接着剤を適用する場合の使用方法は、上述した治療デバイス10K及び治療デバイス10Lの各使用方法と略同様である。但し、接着剤を適用する場合、生体管腔内で一対のアーム26の拡張状態を保持しながら、治療デバイス10K全体(又は治療デバイス10L全体)を一定速度で基端方向に移動させる間、チューブ98の先端開口98a(又は供給管100の吹出口101)から接着剤を所定流量で連続的に吐出させるとよい。
【0172】
図25は、さらに別の治療デバイス10Mの一部省略概略図である。
図26は、治療デバイス10Mの先端部の一部断面図であり、
図27は、治療デバイス10Mの先端部の断面図である。
【0173】
図25に示すように、この治療デバイス10Mは、
図20に示した治療デバイス10Jに対する変形例であり、一対のアーム26の各先端部27に支持されたバルーン104を備える。このバルーン104は、拡張可能であり、拡張することに伴って生体管腔に形成した扁平部分Fの内腔を一時的に閉塞可能な閉塞部として機能する。
図25では、拡張状態のバルーン104が示されている。
【0174】
バルーン104は、初期状態で収縮し、拡張用流体が導入されることに伴って拡張可能である。バルーン104に供給される拡張用流体は、液体、気体のいずれでもよい。拡張用流体としては、例えば、生理食塩水、空気等が挙げられる。バルーン104の一端及び他端は、それぞれ一対のアーム26の各先端部27に接続される。
図26に示すように、アーム26の内腔26cは、バルーン104の内腔及び支持体24の内腔25と連通している。
【0175】
図25に示すように、支持体24の基端には、拡縮操作装置106が接続可能なハブ108(コネクタ)が設けられる。拡縮操作装置106は、支持体24の内腔25及びアーム26の内腔26cを介して、バルーン104内に拡張用流体を供給し、又はバルーン104内から拡張用流体を排出するためのデバイスである。
【0176】
拡縮操作装置106は、例えば、シリンジ、インデフレータ等により構成され得る。拡縮操作装置106がシリンジの場合、術者は、押し子(図示せず)を押し出す操作により拡張用流体をシリンジから流出させ、押し子から手を離す(又は押し子を引く)ことで拡張用流体を吸引する操作を行う。
【0177】
バルーン104内に拡張用流体が導入されることに伴って、バルーン104は、
図26において仮想線で示すように拡張する。バルーン104内から拡張用流体が排出されると、バルーン104は、
図26において実線で示すように収縮する。
【0178】
バルーン104は、伸縮性を有する材料により構成されるとよい。伸縮性を有する材料としては、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴムのような各種ゴム材料や、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系、スチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの混合物等が挙げられる。なお、バルーン104は、非伸縮性の材料により構成されてもよい。
【0179】
次に、静脈瘤の治療を例に挙げ、治療デバイス10Mを用いた生体管腔の治療方法(第1の態様に係る生体管腔閉塞方法)について説明する。
【0180】
まず、治療デバイス10Mを生体管腔内に挿入することにより、治療デバイス10Mの先端部を治療部位T(標的部位)に到達させる挿入ステップを実施する。具体的には、扁平形成部22(一対のアーム26)及びバルーン104をシャフト18内に収納した状態の治療デバイス10Mを、イントロデューサシースを介して静脈VE内に挿入する。そして、超音波ガイド下で、治療デバイス10Mの先端部を静脈VEの治療部位Tまで到達させる(
図28A参照)。この場合、シャフト18内では、バルーン104は、閉じた一対のアーム26とともに、撓んだ状態となっている。
【0181】
次に、生体管腔に扁平部分Fを形成する扁平化ステップを実施する。具体的には、
図28Bのように、シャフト18の先端開口18aから一対のアーム26を突出させ、それに伴って一対のアーム26を拡張させることにより、静脈VEに扁平部分Fを形成する。このとき、バルーン104は、一対のアーム26の先端部27間で直線状を呈し、扁平部分Fの内側に配置される。なお、静脈VEに扁平部分Fを形成する際、超音波で静脈VEの扁平度合いを確認してもよい。
【0182】
次に、扁平部分Fの内腔を一時的に閉塞する閉塞ステップを実施する。具体的には、ハブ108に接続した拡縮操作装置106の作用下に、バルーン104内に拡張用流体を供給することにより、
図28Cのように、バルーン104を所定の圧力で拡張させる。これにより、
図29のように、扁平部分Fの内腔に形成される流路を一時的に閉塞(封鎖)した状態とする。
【0183】
この場合、アーム26の厚さ(Y方向の寸法)と同程度の太さにバルーン104が拡張するように、圧力を制御するとよい。バルーン104が伸縮性を有する材料により構成される場合、拡張状態のバルーン104と扁平部分Fの内面とが密着しやすいため、扁平部分Fでの血流を効果的に遮断しやすい。
【0184】
また、バルーン104が十分に伸縮性を有する材料により構成される場合、一対のアーム26の拡張によって形成された扁平部分Fの内腔の厚さになる量を超えてバルーン104に拡張用流体を供給した場合でも、バルーン104は扁平部分Fの厚さ方向ではなく、静脈VEの延在方向に拡張する。このため、一対のアーム26の拡張時の状態のままに扁平部分Fの厚さを維持することができ、その後に行う硬化剤Mの適用による閉塞化に支障を来すことがない。
【0185】
なお、バルーン104による閉塞は、扁平部分Fの内腔がバルーン104により隙間なく完全に閉じられた状態(100%の閉塞)だけに限らず、扁平部分Fの内腔の大部分(例えば、バルーン104による閉塞が無い場合の扁平部分Fの流路断面積の70〜90%以上、あるいは95%以上)が閉じられた状態も含む。
【0186】
次に、扁平部分Fに向けて硬化剤Mを供給する硬化剤供給ステップを実施する。具体的には、コネクタ94に接続した供給デバイス96から硬化剤Mを吐出させ、支持体24内へ硬化剤Mを流し、シャフト18の先端開口18aから硬化剤Mを吐出させる。これにより、硬化剤Mが静脈VEの扁平部分Fに供給される。この場合、少なくとも一度だけ硬化剤Mを吐出させるか、あるいは、硬化剤Mを一定流量で連続的に吐出させてもよい。
【0187】
硬化剤供給ステップの後に、あるいは硬化剤供給ステップと並行して、一対のアーム26を拡張状態のまま基端方向に移動させる移動ステップを実施する。具体的には、
図28Dのように、一対のアーム26の拡張状態を保持しながら、治療が必要な範囲分だけ治療デバイス10M全体を基端方向に一定速度で移動させ、所定の位置で停止させる。なお、バルーン104の拡張後、治療デバイス10Mを所定位置で停止させるまでの間、硬化剤Mを複数回吐出させてもよい。また、硬化剤Mを一定流量で連続的に吐出させる手技パターンの場合には、治療デバイス10Mの停止に伴って、硬化剤Mの吐出も停止させる。
【0188】
静脈VEに対して所望の範囲に処置を実施したら、バルーン104内から拡張用流体を排出することによりバルーン104を収縮させる(収縮ステップ)。その後、シャフト18内に一対のアーム26及びバルーン104を再収容し(収容ステップ)、治療デバイス10Mを体内(静脈VE)から引き抜く(抜去ステップ)。
【0189】
上記のように構成された治療デバイス10Mによれば、閉塞部として機能するバルーン104を扁平部分Fの内腔に配置することによって、扁平部分Fの内腔によって形成される流路を一時的に封鎖できるため、硬化剤Mの希釈が抑制され、好適な濃度の硬化剤Mを扁平部分Fに効率的に供給することができる。よって、硬化剤Mによる閉塞効果を好適に発揮させることができるとともに、硬化剤Mの使用量を減らすことができる。
【0190】
また、この治療デバイス10Mの場合、バルーン104の拡張を制御することにより、扁平部分Fの内腔を好適に封鎖することができる。
【0191】
図30は、さらに別の構成の治療デバイス10Nの一部省略概略図である。
図31は、治療デバイス10Nの先端部の一部断面図であり、
図32は、治療デバイス10Nの基端部の断面図である。
【0192】
この治療デバイス10Nは、
図25に示した治療デバイス10Mに対する変形例であり、扁平形成部22の先端に設けられるバルーン104とは別に、シャフト18の外周部に、拡縮可能なバルーン110が設けられる。
【0193】
以下、扁平形成部22の先端に設けられるバルーン104を「第1のバルーン104」と称し、シャフト18の外周部に設けられるバルーン110を「第2のバルーン110」と称する。第2のバルーン110は、シャフト18と生体管腔との間を一時的に閉塞可能な第2の閉塞部として機能する。
【0194】
第2のバルーン110は、初期状態で収縮し、拡張用流体が導入されることに伴って拡張可能である。第2のバルーン110に供給される拡張用流体は、第1のバルーン104に供給される拡張用流体と同じ種類の流体でもよく、異なる種類の流体であってもよい。
【0195】
第2のバルーン110は、好ましくは、シャフト18の先端部又はその近傍に設けられる。第2のバルーン110は、シャフト18の外周部に沿って周方向に環状に延在する。シャフト18内には拡張用流体を流すための通路112が形成されており、第2のバルーン110の内腔と当該通路112とが連通している。通路112の先端は、第2のバルーン110の内腔に臨む側孔113を有する。
【0196】
なお、
図31では、シャフト18の内腔19を囲む壁内に通路112が形成されているが、このような構造に代えて、内管と外管とによりシャフト18が構成されるとともに、内管と外管との間に通路112が形成されてもよい。
【0197】
図31では、収縮状態の第2のバルーン110が実線で描かれている。通路112を介して拡張用流体が第2のバルーン110内に供給されることに伴って、第2のバルーン110は、
図31において仮想線で示すように径方向外側に拡張する。
【0198】
図32に示すように、通路112は、シャフト18の軸方向に沿って延在するとともに、シャフト18の基端面に達する。カテーテル12のハブ20には、ハブ本体20aから分岐する分岐部20bが設けられるとともに、シャフト18の通路112と連通する通路115が形成される。通路115は、ハブ本体20a及び分岐部20bに形成され、分岐部20bの自由端にて開口する。なお、ハブ本体20aと一体的に形成される分岐部20bに代えて、ハブ20に接続された柔軟なチューブ(分岐チューブ92と同様のチューブ)が設けられてもよい。
【0199】
図30に示すように、分岐部20bには、第2のバルーン110の拡縮を行うための拡縮操作装置116が接続可能である。以下、第1のバルーン104の拡縮を行うための拡縮操作装置106を「第1の拡縮操作装置106」と称し、拡縮操作装置116を「第2の拡縮操作装置116」と称する。第2の拡縮操作装置116は、ハブ20(に設けられた通路115)及びシャフト18(に設けられた通路112)を介して、第2のバルーン110内に拡張用流体を供給し、又は第2のバルーン110内から拡張用流体を排出するためのデバイスである。第1の拡縮操作装置106と同様に、第2の拡縮操作装置116は、例えば、シリンジ、インデフレータ等により構成され得る。
【0200】
第2のバルーン110の構成材料としては、第1のバルーン104の構成材料として例示した材料から選択され得る。第2のバルーン110は、伸縮性を有する材料により構成されてもよく、あるいは非伸縮性の材料により構成されてもよい。
【0201】
次に、静脈瘤の治療を例に挙げ、治療デバイス10Nを用いた生体管腔の治療方法(第2の態様に係る生体管腔閉塞方法)について説明する。
【0202】
まず、治療デバイス10Nを生体管腔内に挿入することにより、治療デバイス10Nの先端部を治療部位Tに到達させる挿入ステップを実施する。具体的には、扁平形成部22(一対のアーム26)及びバルーン104がシャフト18内に収納され且つ第1のバルーン104及び第2のバルーン110が収縮した状態の治療デバイス10Nを、イントロデューサシースを介して静脈VE内に挿入する。
【0203】
そして、超音波ガイド下で、治療デバイス10Nの先端部を静脈VEの標的部位まで到達させる(
図33A参照)。この場合、シャフト18内では、第1のバルーン104は、閉じた一対のアーム26とともに、撓んだ状態となっている。また、第1のバルーン104及び第2のバルーン110は、いずれも収縮状態となっている。
【0204】
次に、生体管腔に扁平部分Fを形成する扁平化ステップを実施する。具体的には、
図33Bのように、シャフト18の先端開口18aから一対のアーム26を突出させ、それに伴って一対のアーム26を拡張させることにより、静脈VEに扁平部分Fを形成する。このとき、第1のバルーン104は、一対のアーム26の先端間で直線状を呈し、扁平部分Fの内側に配置される。なお、静脈VEに扁平部分Fを形成する際、超音波で静脈VEの扁平度合いを確認してもよい。
【0205】
次に、シャフト18と生体管腔との間を一時的に閉塞するシャフト側閉塞ステップを実施する。具体的には、第2の拡縮操作装置116の作用下に、第2のバルーン110内に拡張用流体を供給することにより、
図33Cのように、第2のバルーン110を所定の圧力で拡張させる。これにより、静脈VE内の血流を一時的に遮断した状態とする。
【0206】
次に、扁平部分Fの内腔を一時的に閉塞するアーム側閉塞ステップを実施する。具体的には、第1の拡縮操作装置106の作用下に、第1のバルーン104内に拡張用流体を供給することにより、
図34Aのように、第1のバルーン104を所定の圧力で拡張させる。これにより、扁平部分Fの内腔により形成される流路を一時的に封鎖した状態とする(治療デバイス10Mに関する
図29も参照)。
【0207】
上記のように第2のバルーン110を拡張させた後に第1のバルーン104を拡張させた場合には、扁平部分Fの閉塞に先行して第2のバルーン110により静脈VE内の血流の遮断が行われる。このため、扁平部分Fに作用する血圧が低減することにより、扁平部分Fを扁平の状態に維持しやすい。なお、上記とは逆に、第1のバルーン104を拡張させた後に、第2のバルーン110を拡張させてもよい。
【0208】
次に、第1の閉塞部(第1のバルーン104)と第2の閉塞部(第2のバルーン110)との間の領域に硬化剤Mを供給する供給ステップを実施する。具体的には、
図34Bのように、第1のバルーン104及び第2のバルーン110の各拡張状態を保持しながら、コネクタ94に接続した供給デバイス96(
図30参照)から硬化剤Mを吐出させ、支持体24の内腔25、アーム26の内腔26c及び供給管100の内腔に硬化剤Mを流し、供給管100に設けられた吹出口101から硬化剤Mを吐出させる。これにより、硬化剤Mが静脈VEの扁平部分Fに供給される。この場合、少なくとも一度だけ硬化剤Mを吐出させるか、あるいは、硬化剤Mを一定流量で連続的に吐出させてもよい。
【0209】
次に、拡張状態の一対のアーム26、拡張状態の第1の閉塞部、拡張状態の第2の閉塞部及びシャフト18を基端方向に移動させる移動ステップを実施する。具体的には、
図34Cのように、一対のアーム26、第1のバルーン104及び第2のバルーン110の各拡張状態を保持しながら、治療が必要な範囲分だけ治療デバイス10N全体を基端方向に一定速度で移動させ、所定の位置で停止させる。
【0210】
なお、第1のバルーン104の拡張後、治療デバイス10Nを所定位置で停止させるまでの間、硬化剤Mを複数回吐出させてもよい。また、硬化剤Mを一定流量で連続的に吐出させる手技パターンの場合には、治療デバイス10Nの移動停止に伴って、硬化剤Mの吐出も停止させる。
【0211】
静脈VEに対して所望の範囲に処置を実施したら、第1のバルーン104内及び第2のバルーン110内から拡張用流体を排出することにより第1のバルーン104及び第2のバルーン110をそれぞれ収縮させる(収縮ステップ)。この場合、第1のバルーン104の収縮は、第2のバルーン110の収縮の前でも後でもよく、あるいは、第1のバルーン104の収縮と第2のバルーン110の収縮を同時並行的に行ってもよい。
【0212】
第1のバルーン104及び第2のバルーン110の収縮後、シャフト18内に一対のアーム26及び第1のバルーン104を再収容し(収容ステップ)、治療デバイス10Nを体内(静脈VE)から引き抜く(抜去ステップ)。
【0213】
上記のように構成された治療デバイス10Nによれば、供給された硬化剤Mを第1の閉塞部(第1のバルーン104)と第2の閉塞部(第2のバルーン110)との間に封じ込めるため、好適な濃度の硬化剤Mを扁平部分Fに一層効率的に供給することができる。その他、治療デバイス10Nによっても、
図25に示した治療デバイス10Mと同様の効果が得られる。
【0214】
上述した治療デバイス10N及び治療デバイス10Mにおいて、閉塞部(第1の閉塞部)としては、バルーン104(第1のバルーン104)に代えて、扁平部分Fの内腔を一時的に閉塞可能な他の構成を採用してもよい。
【0215】
従って、閉塞部(第1の閉塞部)の他の構成として、例えば、扁平部分Fの内側に配置された際に血流を受けて帆のように拡張する(展開する)膜状部材が採用されてもよい。この場合、膜状部材の両端は、一対のアーム26の各先端部27に固定(連結)される。
【0216】
一対のアーム26が閉じてシャフト18内に収容されている状態では、膜状部材は、折り畳まれてシャフト18内に収容される。一対のアーム26がシャフト18の先端開口18aから突出して幅方向に拡張することに伴って、膜状部材は、一対のアーム26の各先端によって引っ張られて、一対のアーム26の各先端部27間を延在するように展開される。そして、生体管腔内で治療デバイス10N全体(又は治療デバイス10N全体)を基端方向に移動させる際には、膜状部材は血流を受けて拡がり、これにより扁平部分Fが一時的に閉塞される状態となる。
【0217】
あるいは、閉塞部(第1の閉塞部)の他の構成として、弾性変形可能な柔軟なスポンジ状部材が採用されてもよい。この場合、スポンジ状部材は、一対のアーム26の各先端部27間に固定(連結)される。
【0218】
一対のアーム26が閉じてシャフト18内に収容されている状態では、スポンジ状部材は、折り畳まれて(あるいは圧縮されて)シャフト18内に収容される。一対のアーム26がシャフト18の先端開口18aから突出して幅方向に拡張することに伴って、スポンジ状部材は、一対のアーム26の各先端部27によって引っ張られて(あるいは自らの弾性復元力によって)、一対のアーム26の各先端間を延在するように展開される。これにより、スポンジ状部材によって扁平部分Fが一時的に閉塞される状態となる。
【0219】
なお、一対のアーム26に設けられる膜状部材又はスポンジ状部材による閉塞は、扁平部分Fの内腔が膜状部材又はスポンジ状部材により隙間なく完全に閉じられた状態(100%の閉塞)だけに限らず、扁平部分Fの内腔の大部分(例えば、膜状部材又はスポンジ状部材による閉塞が無い場合の扁平部分Fの流路断面積の70〜90%以上、あるいは95%以上)が閉じられた状態も含む。
【0220】
上述した治療デバイス10Nにおいて、第2の閉塞部としては、第2のバルーン110に代えて、シャフト18と生体管腔との間を一時的に閉塞可能な他の構成を採用してもよい。
【0221】
従って、第2の閉塞部の他の構成として、例えば、シャフト18の周囲で血流を受けて帆のように拡張する(展開する)膜状部材が採用されてもよい。この場合、膜状部材は、シャフト18の外周部に固定(連結)され、シャフト18の周りを周方向に環状に延在する。生体管腔内で治療デバイス10M全体(又は治療デバイス10N全体)を基端方向に移動させる際には、膜状部材は血流を受けてシャフト18の周囲で拡がり、これによりシャフト18と生体管腔との間が一時的に閉塞される状態となる。
【0222】
なお、シャフト18の周囲を覆い且つシャフト18に対して軸方向にスライド可能なシースを設けると、任意のタイミングで膜状部材の拡張を制御することができる。すなわち、シースで膜状部材を覆った状態では膜状部材を収縮した状態(折り畳まれた状態)に保持でき、シースから膜状部材を開放した状態では膜状部材を拡張可能な状態とすることができる。
【0223】
あるいは、第2の閉塞部の他の構成として、弾性変形可能な柔軟なスポンジ状部材が採用されてもよい。この場合、スポンジ状部材は、シャフト18の外周部に固定(連結)され、シャフト18の周りを周方向に環状に延在する。生体管腔内では、スポンジ状部材によってシャフト18と生体管腔との間が一時的に閉塞される状態となる。
【0224】
なお、シャフト18の周囲を覆い且つシャフト18に対して軸方向にスライド可能なシースを設けると、任意のタイミングでスポンジ状部材の拡張を制御することができる。すなわち、シースで膜状部材を覆った状態ではスポンジ状部材を収縮した状態に保持でき、シースから膜状部材を開放した状態ではスポンジ状部材を拡張することができる。
【0225】
シャフト18の外周部に設けられる膜状部材又はスポンジ状部材による閉塞は、シャフト18と生体管腔との間が膜状部材又はスポンジ状部材により隙間なく完全に閉じられた状態(100%の閉塞)だけに限らず、シャフト18と生体管腔との隙間の大部分(例えば、膜状部材又はスポンジ状部材による閉塞が無い場合の上記隙間の流路断面積の70〜90%以上、あるいは95%以上)が閉じられた状態も含む。
【0226】
治療デバイス10M又は治療デバイス10Nにおいては、シャフト18の内腔19を介して先端開口18aから硬化剤Mを扁平部分Fに向けて供給する構成に代えて、
図22と同様に、チューブ98の先端開口98aから硬化剤Mを扁平部分Fに向けて供給する構成が採用されてもよい。
【0227】
図35は、さらに別の構成の治療デバイス10Pの一部省略概略図である。
図35では、一対のアーム26はシャフト18内に収容されている。
図36Aは、治療デバイス10P(ロック状態)を先端開口18a側から見た図であり、
図36Bは、治療デバイス10P(アンロック状態)を先端開口18a側から見た図である。
【0228】
治療デバイス10Pは、
図1等に示した治療デバイス10Aの構成を基本として構成されているが、他の治療デバイス10B〜10Nを基本として構成されてもよい。
【0229】
治療デバイス10Pは、目的部位まで一対のアーム26をシャフト18内に留めるストッパ118を備える。ストッパ118は、シャフト18の先端部又は先端部近傍に設けられ、シャフト18と一対のアーム26との周方向の相対位置に応じて、一対のアーム26のシャフト18からの突出を許容する状態と、一対のアーム26のシャフト18からの突出を阻止する状態とになる。
【0230】
図35のように、ストッパ118は、例えば、周方向の互いに反対箇所でシャフト18の内周面から内方に突出した係止片120を有する。
図35及び
図36Aのように、各アーム26と各係止片120との相対位置が周方向に重なる位置関係となっている状態では、シャフト18内での各アーム26の前進が各係止片120によって阻止される。従って、治療デバイス10の先端部を生体内の目的部位まで送達するまで、意図せずに一対のアーム26がシャフト18の先端開口18aから突出することを好適に防止することができる。
【0231】
治療デバイス10Pの先端部を生体内の目的部位まで送達したら、カテーテル12に対して内部デバイス14を周方向に相対的に90°回転させる。そうすると、
図36Bのように、各アーム26と各係止片120とが周方向に重ならなくなる。すなわち、各アーム26が各係止片120に対して周方向にずれた位置に移動する。そこで、カテーテル12に対して内部デバイス14を前進させると、一対のアーム26がストッパ118を構成する係止片120の間を通り抜け、シャフト18の先端開口18aから突出する。
【0232】
また、治療デバイス10Pにおいて、各アーム26の先端部には、透視造影可能なマーカ122(例えば、X線造影マーカ、超音波マーカ)が設けられている。シャフト18の先端開口18aから一対のアーム26が突出し、生体管腔(血管)内で幅方向に拡張すると、一対のアーム26の各先端部に設けられたマーカ122の距離が拡大する。これにより、一対のアーム26が幅方向に拡張したことを透視造影下で容易に確認することができるとともに、血管の扁平化開始位置が分かる。
【0233】
また、治療デバイス10Pにおいて、シャフト18の基端側部分の軸方向の一定範囲には、処置を施した部分の長さを示すスケール部124が設けられる。治療デバイス10Pの先端部を生体内の目標位置(病変部の位置)まで到達させた状態で、スケール部124の少なくとも一部は生体内に存在する。スケール部124は、軸方向に間隔をおいて配置された複数のマーク126(目盛)を有する。複数のマーク126の間隔は、等間隔であり、例えば、1〜10cm間隔とすることができる。
【0234】
治療デバイス10Pの使用において、血管内で一対のアーム26を幅方向に拡張させた状態で、カテーテル12及び内部デバイス14を一緒に基端方向に移動させていくと、移動量に応じてスケール部124のマーク126が生体外に現れる。治療が必要な病変部の長さは、予め透視画像(超音波画像等)から把握している。そこで、ユーザは、病変部の長さ分だけ一対のアーム26を基端方向に移動させるべく、スケール部124を見ながら、治療デバイス10Pを基端方向へと操作することができる。なお、病変部の長さは、例えば、5〜50cm程度であるため、最先端側のマーク126と最基端側のマーク126の距離は、例えば、5〜50cm程度に設定される。
【0235】
また、治療デバイス10Pにおいて、支持体24の基端側部分の軸方向の一定範囲には、軸方向に間隔をおいて配置された複数のマーク129を有する位置表示部128が設けられる。位置表示部128は、シャフト18からの一対のアーム26の突出の程度を示す。位置表示部128は、最も基端側のマーク126の軸方向位置がカテーテル12の基端面(ハブ20の基端面)に一致した状態で、一対のアーム26がシャフト18の先端開口18aから十分に突出し、幅方向に拡張する。従って、一対のアーム26の位置調整(シャフト18の先端開口18aからの一対のアーム26の突出長さ)を容易に行うことができる。
【0236】
図37に示す治療デバイス10Qのように、一対のアーム26の拡張を補強するための構造(補強構造130)が設けられてもよい。補強構造130は、一対のアーム26の各先端部を基端方向に引っ張る牽引部材132と、牽引部材132に設けられた係止爪134と、各アーム26にスライド可能に設けられた拘束部材136とを有する。
【0237】
牽引部材132は、可撓性を有する線状の部材であり、例えば、ワイヤによって構成され得る。牽引部材132の先端部132aは、各アーム26の先端部に固定されている。牽引部材132は、途中まで各アーム26に沿って配設されるとともに、支持体24の基端部まで延在する。
【0238】
牽引部材132は、
図37のように、例えば、各アーム26の基端部近傍において各アーム26内に入り、支持体24の基端部まで支持体24内を延在する。牽引部材132の基端部は、支持体24の基端部において、外部に引き出されるか、あるいは支持体24の基端部に別途設けられた操作部に連結され、これにより、支持体24の基端側での操作により、牽引部材132を基端方向に引っ張ることができるようになっている。
【0239】
係止爪134は、牽引部材132の基端方向への移動に伴って、拘束部材136を通過可能であり、拘束部材136を通過後には拘束部材136に引っ掛かることで、牽引部材132の先端方向への逆戻りを防止する機能を有する。
図37のように、各牽引部材132において係止爪134は、牽引部材132に沿って間隔をおいて複数設けられてもよい。このように係止爪134が複数設けられることにより、治療対象となる血管の太さに応じて、一対のアーム26の拡張を補強することができる。
【0240】
拘束部材136は、弾性変形可能な材料により構成される。
図38Aは、拘束部材136及びその周辺部位の側面図であり、
図38Bは、
図38AにおけるXXXVIIIB−XXXVIIIB線に沿った断面図である。
【0241】
図38A及び
図38Bのように、拘束部材136は、各アーム26の基端側の外面に設けられた溝状のガイドレール138に装着されている。拘束部材136は、例えば、頭部146と、頭部146より細い軸部148と、軸部148より太い係合鍔部150とを有し、軸部148の両端に頭部146と係合鍔部150が形成されている。
【0242】
初期状態において、頭部146がアーム26の外部に位置し、軸部148と係合鍔部150がガイドレール138内に配置される。牽引部材132は、拘束部材136に貫通形成された挿通部136aに挿通されるとともに、アーム26内に形成された内腔に挿通されている。挿通部136aは、例えば、スリット状又は穴状に形成される。
【0243】
アーム26に設けられたガイドレール138は、アーム26の延在方向に延在する。ガイドレール138は、アーム26の延在方向に沿った拘束部材136の移動を許容する通路140と、通路140の両側に設けられ拘束部材136が通路140から抜けることを阻止する規制ガイド142と、規制ガイド142の先端側に設けられ、拘束部材136が通路140から抜けることを許容する解放口144とを有する。
【0244】
規制ガイド142間の開口幅(直径)は、拘束部材136の係合鍔部150の幅(直径)よりも小さい。これにより、拘束部材136が通路140から抜け出ないようになっている。
【0245】
また、規制ガイド142よりも基端側には、初期状態で拘束部材136の軸部148が離脱可能に係合する凹状の係合部143が設けられる。規制ガイド142間の開口幅は、拘束部材136の軸部148の幅(直径)よりも小さくされている。これにより、解放口144側(先端側)への所定以上の力が拘束部材136にかからない限り、拘束部材136は係合部143に保持される。
【0246】
解放口144(の直径)は、拘束部材136の係合鍔部150(の直径)よりも大きい。これにより、拘束部材136が解放口144の位置まで到達すると、拘束部材136が通路140(ガイドレール138)から抜け出ることが可能となる。
【0247】
次に、上記のように構成された補強構造130の作用を説明する。
図37のように、一対のアーム26がシャフト18内に収容された状態(一対のアーム26が収縮した状態)で、治療デバイス10Qを患者の血管内に挿入する。そして、治療デバイス10Qの先端部が血管内の目的位置(治療部位)に到達したら、一対のアーム26をシャフト18から突出させることにより、一対のアーム26を幅方向に拡張させる。
【0248】
この際、アーム26の拡張力だけでは、血管の壁からの反力によってアーム26が十分に拡張しない場合がある。そこで、治療デバイス10Qの基端側(手元側)での操作により、牽引部材132を基端方向に引っ張ると、
図39のように、アーム26の先端部と拘束部材136との間で牽引部材132が張り、先端部132aがアーム26に固定された牽引部材132がアーム26を拡張させる方向への力(拡張補助力)を発生させる。また、このとき、牽引部材132の移動に伴って、牽引部材132に設けられた係止爪134が拘束部材136を通過して、アーム26の内部で拘束部材136に引っ掛かる。このため、ユーザが牽引部材132に対する操作力を解除しても、牽引部材132によるアーム26に対する拡張補助力は維持される。
【0249】
病変部に対する治療後、一対のアーム26をシャフト18内に再収容するために、シャフト18を一対のアーム26に対して先端方向に相対的に移動させる。この際、シャフト18の先端と拘束部材136とが接触し、シャフト18の先端によって拘束部材136がアーム26の先端側へと押される。先端方向への所定以上の力がかかると拘束部材136は、係合部143から離脱し、通路140に沿って進み、やがて解放口144に到達する。
【0250】
そうすると、解放口144よりも小さい係合鍔部150が解放口144を通り抜けることで、拘束部材136がガイドレール138から外れる。これにより、牽引部材132が弛められ、結果として、牽引部材132によるアーム26に対する拡張補助力が解除される。従って、一対のアーム26のシャフト18内への再収納を支障なく行うことができる。
【0251】
なお、
図37に示した治療デバイス10Qは、補強構造130以外の構成は
図1等に示した治療デバイス10Aと同じであるが、他の治療デバイス10B〜10N、10Pにおいても同様に、補強構造130が設けられてもよい。
【0252】
図40に示す治療デバイス10Rのように、生体管腔(静脈VE等)の壁からの反力によって一対のアーム26の生体管腔内での拡張が不十分とならないように、各アーム26に補強部152が付加されてもよい。
図40のように、補強部152は、例えば、各アーム26の長手方向の一部を囲むカバー状に構成されてもよい。補強部152は、アーム26と同じ材料によって構成されてもよく、アーム26よりも硬質の材料によって構成されてもよい。補強部152は、各アーム26の周方向の一部、例えば、各アーム26の外側又は内側に固定されてもよい。
【0253】
上記のように構成された補強体が各アーム26に設けられることにより、一対のアーム26の拡張力が増強される。よって、生体管腔内でシャフト18の先端開口18aから一対のアーム26が突出した際に、生体管腔の壁からの反力に負けることなく、一対のアーム26が幅方向に十分に拡張し、生体管腔に扁平部分Fを効果的に形成することができる。
【0254】
なお、
図40に示した治療デバイス10Rは、補強部152以外の構成は
図1等に示した治療デバイス10Aと同じであるが、他の治療デバイス10B〜10N、10Pにおいても同様に、各アーム26に補強部152が設けられてもよい。
【0255】
図41A及び
図41Bのように、一対のアーム26は、シャフト18内に収容された状態で、アーム26の長手方向に沿って各アーム26の内側に設けられた凹凸形状154同士が噛み合う構成であってもよい。なお、
図41Bは、
図41Aの一対のアーム26をシャフト18の先端開口18a側から見た図である。このように凹凸形状154同士が噛み合う構成の場合、収縮時(収納時)の幅Wの縮小化が図られる。一対のアーム26の収縮時の幅Wが小さい(細い)と、その分、シャフト18の外径も小さくすることができる。従って、カテーテル12を挿入するために患者に開ける穴の大きさを小さくすることができ、より低侵襲となるため、患者の負担の軽減を図ることができる。
【0256】
図42A及び
図42Bのように、一対のアーム26の横断面における各内側面(互いに対向する側の側面)の輪郭形状はアーム26の厚さ方向に延在する直線状であり、各外側面の輪郭形状は円弧状であり、且つ、一対のアーム26の厚さ方向に沿った各アーム26の寸法L1が、一対のアーム26の幅方向に沿った各アーム26の寸法L2よりも大きくてもよい。
図42Bにおいて仮想線で示す横断面が円形のアーム26と比べて、実線で示す形状の方が、一対のアーム26の収縮時(収納時)の幅Wの縮小化が図られる。よって、シャフト18の細径化が可能であり、患者の負担の軽減を図ることができる。
【0257】
また、実線で示す形状の一対のアーム26の場合、以下の点で、仮想線で示す横断面が円形のアーム26よりも有利である。すなわち、アーム26と血管との接触面積を大きくすることができるため、血管に穴ができにくく、血管が傷つきにくく、アーム26が側枝に入りにくい。しかも、アーム26の断面積を稼ぐことができるため、アーム26の強度を向上させることができる。
【0258】
なお、上述した各治療デバイス10A〜10N、10P〜10Rは、静脈瘤の治療以外にも生体管腔の閉塞が必要な様々な治療のためのデバイスとして構成され得る。従って、例えば、動脈、リンパ管、胆管、気管、食道、尿道、鼻腔等の種々の生体管腔の治療にも適用し得る。
【0259】
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。