(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記グリッドは、前記干渉縞の周波数が、前記平面検出器におけるナイキスト周波数から前記ナイキスト周波数の半分の周波数までの範囲内において前記ナイキスト周波数により近い周波数となる格子密度を有することを特徴とする請求項1に記載のX線診断装置。
前記ノイズ低減処理部は、ノイズが画素値によらず一定となるように均一化された複数の周波数帯域データに含まれるノイズを低減することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のX線診断装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、X線診断装置及び画像処理装置の実施形態を詳細に説明する。以下では、本願に係るX線診断装置を含むX線画像診断システムを一例に挙げて説明する。また、以下では、本願に係るX線診断装置として、消化管、泌尿器、整形、IVR(Interventional Radiology)などの検査及び治療が実施されるX線診断装置を一例に挙げて説明する。なお、本願に係る実施形態はこれに限定されるものではない。
【0009】
(第1の実施形態)
まず、
図1を用いて、第1の実施形態に係るX線画像診断システムの一例を説明する。
図1は、第1の実施形態に係るX線画像診断システムの一例を説明するための図である。例えば、第1の実施形態に係るX線画像診断システムは、
図1に示すように、X線管、天板、X線検出器などを備えるX線診断装置本体と、透視モニタなどを備える近接操作卓と、画像処理装置、システムモニタ、透視モニタなどを備える遠隔操作卓とが相互に接続される。例えば、操作室にいる操作者が、遠隔操作卓を操作することで患者(被検体)を乗せた天板を起倒させたり、X線管、X線可動絞りなどの映像系を上下動させたりするなどの動作を装置本体に実行させると同時に、透視や撮影を行わせる。そして、操作者は、遠隔操作卓に備えられた透視モニタに表示された透視画像や、システムモニタに表示された撮影画像、透視画像などを観察する。また、例えば、検査室にいる操作者が、近接操作卓を操作することで装置本体に対して上述した処理と同様の処理を実行させて、近接操作卓に備えられた透視モニタや、検査室モニタに表示された各種画像を観察する。
【0010】
次に、第1の実施形態に係るX線診断装置の構成の一例を説明する。
図2は、第1の実施形態に係るX線診断装置1の構成の一例を示す図である。X線診断装置1は、例えば、
図2に示すように、装置本体100と遠隔操作卓200とを備える。装置本体100は、
図2に示すように、高電圧発生器11と、X線管12と、X線可動絞り13と、天板14と、グリッド15と、FPD(Flat Panel Detector)16と、天板移動機構17と、天板機構制御部18と、絞り制御部19と、X線制御部20とを備え、例えば、検査室に配置される。遠隔操作卓200は、
図2に示すように、画像処理装置200aと、入力部210と、表示部220とを有し、例えば、操作室に配置される。
【0011】
なお、図示していないが、X線診断装置1は、被検体に挿入されたカテーテルから造影剤を注入するためのインジェクターなどが接続される場合もある。また、図示していないが、近接操作卓は、透視モニタを有し、X線診断装置1によって生成された画像を表示するとともに、X線診断装置1を操作する各種操作を受け付ける。具体的には、近接操作卓は、有線又は無線通信によりX線診断装置1と接続され、入力部を介して受け付けた操作の情報をX線診断装置1に送信することで、遠隔操作卓200のシステム制御部290に各種制御を実行させる。
【0012】
高電圧発生器11は、X線制御部20による制御の下、高電圧を発生し、発生した高電圧をX線管12に供給する。X線管12は、高電圧発生器11から供給される高電圧を用いて、X線を発生する。
【0013】
X線可動絞り13は、絞り制御部19による制御の下、X線管12が発生したX線を、被検体の関心領域に対して選択的に照射されるように絞り込む。例えば、X線可動絞り13は、スライド可能な4枚の絞り羽根を有する。X線可動絞り13は、絞り制御部19による制御の下、これらの絞り羽根をスライドさせることで、X線管12が発生したX線を絞り込んで被検体に照射させる。天板14は、被検体を載せるベッドであり、図示しない寝台の上に配置される。
【0014】
グリッド15は、天板14とFPD16との間に配置され、被検体を透過したX線に含まれる散乱線の一部を除去する。例えば、グリッド15は、X線を吸収する鉛箔とX線吸収の少ない中間物質とが交互に配置される。ここで、グリッド15は、各鉛箔がグリッド面に鉛直な方向でグリッドの中心線上にある点に向けて傾斜させた集束グリッド、或いは、各鉛箔が平行に配置された平行グリッドである。FPD16は、グリッド15を透過したX線を検出する。例えば、FPD16は、マトリックス状に配列された検出素子を有する。各検出素子は、グリッド15を透過したX線を電気信号に変換して蓄積し、蓄積した電気信号を遠隔操作卓200のA(Analog)/D(Digital)変換部230に送信する。
【0015】
天板移動機構17は、天板機構制御部18による制御の下、天板14を移動させたり、起倒させたりするための機構である。天板機構制御部18は、後述する遠隔操作卓200のシステム制御部290による制御の下、天板移動機構17を制御することで、天板14の移動及び起倒を調整する。絞り制御部19は、後述する遠隔操作卓200のシステム制御部290による制御の下、X線可動絞り13が有する絞り羽根の開度を調整することで、被検体に対して照射されるX線の照射範囲を制御する。
【0016】
X線制御部20は、後述する遠隔操作卓200のシステム制御部290による制御の下、高電圧発生器11に高電圧を発生させ、発生させた高電圧をX線管12に供給させる。例えば、X線制御部20は、システム制御部290から供給されるX線照射条件や、後述する画素値演算部240から供給される画素値情報などに基づいて高電圧発生器11の印加電圧、印加時間、印加タイミングなどを制御することにより、X線管12の管電流、管電圧、X線照射時間、X線照射タイミング、パルス幅などを制御する。
【0017】
入力部210は、操作室に配置され、X線診断装置1を操作する操作者から各種指示を受け付ける。例えば、入力部210は、マウス、キーボード、ボタン、トラックボール、ジョイスティック、タッチパネルなどを有する。入力部210は、操作者から受け付けた指示を、後述するシステム制御部290に転送する。
【0018】
表示部220は、X線診断装置1によって生成された画像を表示するとともに、操作者の指示を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)などを表示する。例えば、表示部220は、
図1に示す透視モニタ、或いは、システムモニタである。
【0019】
画像処理装置200aは、
図2に示すように、A/D変換部230と、画素値演算部240と、画像データ生成部250と、画像データ記憶部260と、画像処理部270と、画像補正部280と、システム制御部290とを有する。A/D変換部230は、FPD16に接続され、FPD16から入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換し、変換したデジタル信号(投影データ)を画像データ生成部250に転送する。
【0020】
画素値演算部240は、画像データ生成部250から供給される原画像データに対して所定の関心領域を設定し、設定した関心領域の平均画素値を算出する。そして、画素値演算部240は、算出した平均画素値と所定の閾値との比較結果をX線制御部20に供給することで、自動輝度調整(ABC)を実行する。かかる制御によって、X線診断装置1は、最適な輝度の原画像データを常時収集することができる。
【0021】
画像データ生成部250は、A/D変換部230から供給される投影データから原画像データ(X線画像データ)を生成する。具体的には、画像データ生成部250は、A/D変換部230から供給された投影データのデータ要素を画像データ記憶部260に順次格納することによって、2次元の原画像データを生成する。画像データ記憶部260は、画像データ生成部250によって生成された原画像データや、画像処理部270によって生成された表示画像を記憶する。
【0022】
画像処理部270は、画像データ記憶部260が記憶する原画像データ、又は、画像補正部280によって補正された画像データに対して各種画像処理を行う。例えば、画像処理部270は、画像補正部280によって補正された画像データに対して、表示のための画像処理(空間フィルタ処理、ウィンドウ変換、ガンマカーブ処理など)を実行する。
【0023】
画像補正部280は、画像データ生成部250によって生成された原画像データに対して種々の補正を実行する。例えば、画像補正部280は、原画像データに含まれる干渉縞の除去や、ノイズの低減、散乱線成分の除去、解像度などに関する補正を実行する。なお、上述した補正の詳細については、後に詳述する。
【0024】
システム制御部290は、X線画像診断システム全体の動作を制御する。例えば、システム制御部290は、近接操作卓の入力部や、入力部210から転送された操作者の指示に従ってX線制御部20を制御し、X線管12に供給する電圧を調整することで、被検体に対して照射されるX線量やON/OFFを制御する。また、例えば、システム制御部290は、操作者の指示に従って天板機構制御部18を制御し、天板14の移動や起倒などを調整する。また、例えば、システム制御部290は、操作者の指示に従って絞り制御部19を制御し、X線可動絞り13が有する絞り羽根の開度を調整することで、被検体に対して照射されるX線の照射範囲を制御する。
【0025】
また、システム制御部290は、操作者の指示に従って、画素値演算部240による自動輝度調整や、画像データ生成部250による原画像データ生成処理、画像処理部270による画像処理或いは解析処理、画像補正部280による補正処理などを制御する。また、システム制御部290は、操作者の指示を受け付けるためのGUIや画像データ記憶部260が記憶する表示画像などを、表示部220が備える各モニタに表示するように制御する。また、システム制御部290は、インジェクターに対して、造影剤注入開始及び終了の信号を送信することで、造影剤の注入を制御することも可能である。
【0026】
以上、X線診断装置1の構成について説明した。かかる構成の下、本願に係るX線診断装置1は、画質を維持しつつ、被曝を低減させることを可能にする。具体的には、X線診断装置1は、後に詳述するグリッド15の構成及び画像補正部280による処理により、画質を維持しつつ、被曝を低減させる。ここで、まず、従来技術において画像を維持しつつ、被曝を低減させることが困難になる場合について説明する。上述したように、X線診断装置においては、散乱線を除去するためにX線検出器の検出面側にグリッドが配置される。
【0027】
図3は、グリッドについて説明するための図である。ここで、
図3においては、グリッドの断面図を示す。なお、
図3においては、箔が平行に配置された平行グリッドを一例に挙げて説明する。例えば、グリッドは、
図3に示すように、X線の吸収が少ない中間物質とX線を吸収する箔とが交互に配置される。ここで、被検体を透過したX線が図中上部から入射する場合に、X線において、おおよそ一定の方向を有する直接線は中間物質を透過して検出器によって検出される。これに対して、X線に含まれる散乱線は、種々の方向からグリッドに入射するため箔によって吸収されることとなる。
【0028】
このようなグリッドは、1組の中間物質と箔(lp:line pair)が単位長さ(例えば、cmなど)あたりにどれぐらい含まれているかを示す格子密度(例えば、LP/cmなど)、及び、中間物質の幅「W」と中間物質の高さ(厚み)「h」を示す格子比「h:W」が種々の条件に応じて設定される。ここで、X線検出器としてFPDを用いた場合、FPDの画素とグリッドの格子による干渉縞が発生する場合がある。具体的には、グリッドの格子密度がFPDのナイキスト周波数で折り返った空間周波数に干渉縞が発生する。
【0029】
例えば、X線診断装置に適用されるFPDの一般的な画素サイズは「0.140mm〜0.150mm」である。かかるFPDのナイキスト周波数は、「33.3(=10/0.15/2)LP/cm〜35.7(=10/0.14/2)LP/cm」となる。一方、従来のX線診断装置に適用されるグリッドの一般的な格子密度は、「40LP/cm」、「44LP/cm」又は「60LP/cm」などである。このようなFPDとグリッドとを組み合わせて使用した場合、グリッドの格子密度「40LP/cm」、「44LP/cm」又は「60LP/cm」が、FPDのナイキスト周波数「33.3LP/cm〜35.7LP/cm」で折り返り、干渉縞が発生する。例えば、格子密度「40LP/cm」の場合、「26.6(=33.3−6.7(=40−33.3))LP/cm〜31.4(=35.7−4.3(=40−35.7))LP/cm」に干渉縞が発生する。同様に、格子密度「44LP/cm」又は「60LP/cm」の場合、それぞれ「22.6LP/cm〜27.4LP/cm」又は「6.6LP/cm〜11.4LP/cm」に干渉縞が発生する。
【0030】
そこで、従来技術では、上述したように、グリッドの格子密度をFPDの画素ピッチに一致させたり、FPDでも入力信号を変換できない程度の高い格子密度を有するグリッドを用いたりすることで、このような干渉縞の発生を抑止する。しかしながら、このようなグリッドを用いることで、種々の制限がかかることとなり、画質を維持しつつ、被曝を低減させることが困難となる場合がある。
【0031】
例えば、グリッドの格子密度をFPDの画素ピッチに一致させる場合には、非常に高いピッチ精度が求められるため、中間物質としては、厚さの精度が高く、剛性が高いアルミニウム(Al)を用いることが求められる。また、例えば、現在の技術において安定的に製造可能な最大の格子密度は「80LP/cm」であるが、このような格子密度のグリッドを採用する場合に、格子比を自由に指定するためには中間物質としてAlを用いることが求められる。このように、グリッドの中間物質としてAlを用いる場合には、紙の類のファイバーを用いる場合と比較して、直接線の透過率が低下することとなり、画質が低下することなる。
【0032】
また、高い格子密度を有するグリッドを用いて干渉縞の発生を抑止する場合に用いられるグリッドとしては、「格子密度:80LP/cm、格子比:15:1、中間物質:Al」が一般的であるが、このようなグリッドを用い、同時に被曝量を低減させようとした場合に、画質が低下することとなる。例えば、「グリッド格子比を下げる」ことで被曝量を低減させようとした場合には、中間物質の高さ(厚み)が小さくなるため、グリッドを透過する散乱線の割合が増加し、その結果、ノイズが増加してコントラストが低下することとなる。また、「透視・撮影の線量を下げる」ことで被曝量を低減させようとした場合には、信号成分が減少し、カンタムノイズが増加することとなる。また、「透視・撮影の線質を上げる(管電圧を上げる、線質フィルタを厚くする)」ことで、被曝量を低減させようとした場合には、散乱線の割合が増え、信号成分が減少することとなる。
【0033】
このように、従来技術においては、干渉縞の発生を抑止するためのグリッドを用いた上で、画質の低下の抑止と被曝量の低減とを両立することが困難である。そこで、第1の実施形態に係るX線診断装置1では、干渉縞が発生しておらず、ノイズの発生、及び、コントラストの低下を抑えたX線画像を提供しつつ、被曝量を低減することを可能にするように構成される。
【0034】
第1の実施形態に係るX線診断装置1は、以下、詳細に説明するグリッド15と、画像補正部280によって、画質を維持しつつ、被曝量を低減させる。具体的には、第1の実施形態に係るグリッド15は、FPDの画素との干渉によって生じる干渉縞の周波数がFPDにおけるナイキスト周波数からナイキスト周波数の半分の周波数までの範囲内となる格子密度を有する。
図4は、第1の実施形態に係るグリッド15の格子密度を説明するための図である。
図4においては、縦軸に強度、横軸に空間周波数(LP/cm)を示す。
【0035】
例えば、FPDの画素とグリッドの格子による干渉縞は、
図4に示すように、グリッドの格子密度がFPD16のナイキスト周波数「fn」で折り返った空間周波数に発生する。ここで、グリッド15は、
図4に示すように、ナイキスト周波数「fn」の1/2である「fn/2」からナイキスト周波数「fn」の範囲内に干渉縞が生じるような格子密度を有する。さらに、グリッド15においては、干渉縞の周波数がナイキスト周波数「fn」により近い周波数で生じるような格子密度を有する。
【0036】
例えば、FPDの画素サイズが「0.148mm」の場合、FPDのナイキスト周波数は、「33.8LP/cm」となる。かかる場合、グリッド15は、「16.9〜33.8LP/cm」においてナイキスト周波数「33.8LP/cm」により近い空間周波数に干渉縞が発生するような格子密度を有する。すなわち、グリッド15は、「33.8〜50.7LP/cm」の範囲内で「33.8LP/cm」により近い格子密度を有する。このように、第1の実施形態に係るX線診断装置1は、グリッド15が所定の空間周波数に干渉縞が発生するように設計されることで、後の干渉縞除去処理が行い易くなるように構成される。
【0037】
さらに、グリッド15は、被検体を透過したX線に含まれる直接線が透過し易い格子比及び中間物質で構成される。例えば、グリッド15は、格子比(h:W=6:1〜10:1)であり、中間物質としてファイバーが用いられる。これにより、従来のグリッド(例えば、格子密度:80LP/cm、格子比:15:1、中間物質:Alで構成されたグリッド)を用いる場合と比較して、低線量で同様の画質のX線画像を得ることができる。以下、
図5を用いて一例を説明する。
図5は、第1の実施形態に係るグリッド15の一例を示す図である。
【0038】
図5に示すように、画素サイズ「0.148mm」のFPD16に対して、グリッド15は、「格子密度:40LP/cm、格子比:8:1、中間物質:ファイバー、箔:鉛」で構成される。このようなグリッド15を用い、厚さ「20cm」の被検体に対して従来と同様の線量及び線質で透視・撮影した場合、直接線量が従来のグリッド「格子密度:80LP/cm、格子比:15:1、中間物質:Al、箔:鉛」と比較して「15〜20%」増加する。これは、収集したX線画像の信号成分が「15〜20%」増加することを意味する。そこで、第1の実施形態に係るX線診断装置1においては、この信号成分の増加分を線量低減に割り当てることで被曝量を低減させる。
【0039】
一例を挙げると、第1の実施形態に係るX線診断装置1は、上述したグリッド15を備え、厚さ「20cm」の被検体に対して「従来線量の80%」、「従来線質に対し管電圧+10kV」で透視・撮影する。かかる条件で透視・撮影した場合、「従来グリッド/従来線量/従来線質」で透視・撮影した場合と比較して、直接線量が「85〜90%」に減少する。これは、「従来グリッド/80%線量/+10kV線質」において直接線量が「75%」に減少することと比較して、大幅に減少量が少なく、信号成分をほとんど保持できているということができる。また、上述した条件で透視・撮影した場合、被曝線量の目安となる被検体表面の線量は、「従来グリッド/従来線量/従来線質」で透視・撮影した場合と比較して、「約60%」に減少する。このように、上述したグリッド15を用いることで、被曝量を低減させることが可能である。
【0040】
しかしながら、上述したグリッド15を用いた場合には、空間周波数「27.6LP/cm」を中心に干渉縞が発生する。また、上述した条件で透視・撮影した場合、「従来グリッド/従来線量/従来線質」で透視・撮影した場合と比較して、全X線の線量が「5〜10%」増加する。これは、散乱線が約25%増加したことに起因し、その結果、S/N比が約15%低下して、コントラストの低下が発生することとなる。
【0041】
そこで、第1の実施形態に係るX線診断装置1は、画像補正部280がこれらを補正することで、グリッド15を用いることで低下した画質を向上させる。
図6は、第1の実施形態に係る画像補正部280の構成の一例を示す図である。
図6に示すように、システム情報処理部281と、ノイズ均一化処理部282と、周波数帯域データ生成部283と、干渉縞除去処理部284と、ノイズ低減処理部285と、周波数帯域データ合成部286と、ノイズ均一化逆処理部287と、散乱成分推定処理部288と、解像度補正処理部289とを有する。そして、画像補正部280は、画像データ生成部250によって生成された原画像データに対して各種補正処理を実行して、補正後の画像データを画像処理部270に送出する。
【0042】
システム情報処理部281は、システム制御部290による制御のもと、画像補正部280の各部の処理を制御する。具体的には、システム情報処理部281は、後述する各部を制御することで、ノイズ均一化処理、干渉縞除去処理、ノイズ低減処理、ノイズ均一化逆処理、散乱成分推定処理、解像度補正処理をそれぞれ制御する。
【0043】
ノイズ均一化処理部282は、原画像データに含まれる画素ごとのノイズを均一化させる。X線検出器としてFPDを用いた場合、X線画像に含まれるノイズは、画素値に応じて変化する。
図7は、第1の実施形態に係るノイズを説明するための図である。例えば、
図7に示すように、X線画像に含まれるノイズ「N」は、画素値「x」によらず一定のノイズ「N」と、FPDの入射線量の1/2乗、すなわち画素値「x」の1/2乗に比例するX線フォトン由来のカンタムノイズからなる。
【0044】
図7に示すように、画像のノイズは画素値が変化することで変化する。ここで、X線診断装置1においては、後述するノイズ低減処理部285によるノイズ低減処理の効果を上げるために、ノイズ均一化処理部282が画素値「x」によらずノイズを一定値に変換するノイズ均一化処理を実行する。
【0045】
すなわち、ノイズ均一化処理部282は、
図7に示すノイズ曲線を画素値「x」の関数で表したノイズ推定式を画素値「x」について微分して逆数をとることでノイズを一定にする。ここで、FPD16においては、1画素として収集する画素数や、感度設定などの組み合わせが異なるいくつかの収集モードがある。そこで、ノイズ均一化処理部282は、収集モードごとにノイズ推定式を決定して、ノイズ均一化処理をそれぞれ実行する。例えば、ノイズ均一化処理部282は、システム情報処理部281から透視又は撮影、視野サイズ、画像解像度設定などの情報を取得し、取得した情報に基づいて収集モードを判定してノイズ均一化処理を実行する。
【0046】
図6に戻って、周波数帯域データ生成部283は、グリッド15を透過してFPD16によって検出されたX線に基づく原画像データを複数の周波数帯域データと背景データ(例えば、一つの背景データ)に変換する。具体的には、周波数帯域データ生成部283は、ノイズ均一化処理部282によってノイズが均一化された原画像データからそれぞれ所定の周波数帯域が含まれる複数の周波数帯域データと一つの背景データを生成する。例えば、周波数帯域データ生成部283は、
図6に示すように、段階的にLPF(Low Pass Filter)処理をかけ、1段階前のLPF処理画像と差分することでそれぞれ異なる周波数帯域が含まれる複数の周波数帯域データを生成する。
【0047】
一例を挙げると、周波数帯域データ生成部283は、まず、1段目のLP↓において、ノイズが均一化された原画像データに対してLPF処理をかけることで低周波データを抽出する。ここで、周波数帯域データ生成部283は、以後の処理を高速化するために、LP↓において、ダウンサンプリング処理を実行する。一例を挙げると、周波数帯域データ生成部283は、LPF処理後の原画像データ(低周波データ)からまず横方向の1画素おきに画素を間引き、次に縦方向の1画素おきに画素を間引くことで、画像サイズを1/4に縮小させた低解像度画像データg
1を生成する。
【0048】
そして、周波数帯域データ生成部283は、低解像度画像データg
1を2段目に送るとともに、LP↑において、アップサンプリング処理及びLPF処理を実行することで、原画像データと同一のサイズでLPF処理後の低周波データを生成する。例えば、周波数帯域データ生成部283は、低解像度画像データg
1に対して、まず横方向の1画素おきに「0」を補完し、次に縦方向の1画素おきに「0」を補完し、最初のLPFの各要素を4倍したLPF処理を実行する。その後、周波数帯域データ生成部283は、加算器によって原画像データと低周波データとを画素ごとに差分することで、周波数帯域データb
0を生成する。なお、周波数帯域データ生成部283によるLPF処置は、5×5程度のガウシアンフィルタを用いることができる。
【0049】
周波数帯域データ生成部283は、上述した1段目の処理と同様に2段目以降の処理を実行する。ここで、各段の処理対象となる画像データは、前段で生成された低解像度画像データとなる。すなわち、2段目の処理対象となる画像データは、低解像度画像データg
1となり、その後、各段で生成された低解像度画像データg
2〜g
5がそれぞれ後段の処理対象の画像データとなる。そして、周波数帯域データ生成部283は、各段において、低解像度画像データg
2〜g
5を用いて、1段目と同様に周波数帯域データb
1〜b
5を生成する。このように、周波数帯域データ生成部283は、段階的な周波数帯域データ、及び、含まれる情報が背景のみとなった背景データg
6を生成する。なお、
図6においては、周波数帯域データ生成部283が、6段の処理を実行する場合について示したが、実施形態はこれに限定されるものではなく、任意の段数で処理することが可能である。
【0050】
図8A及び
図8Bは、第1の実施形態に係る周波数帯域データ生成部283による処理結果の一例を示す図である。ここで、
図8Aにおいては、周波数帯域データb
0〜b
5と背景データg
6の周波数特性を示す。また、
図8Bにおいては、周波数帯域データb
0のみの周波数特性を示す。例えば、周波数帯域データ生成部283は、
図8Aに示すように、周波数帯域がそれぞれ異なる周波数帯域データb
0〜b
5を生成する。ここで、周波数帯域データb
0は、
図8Bに示すように、FPDのナイキスト周波数の1/2である「fn/2」からナイキスト周波数「fn」までのほとんどの成分を含む。したがって、グリッド15を用いることにより、「fn/2」から「fn」までの範囲内に干渉縞が生じていることから、周波数帯域データb
0が干渉縞に相当する成分のほとんどを含む。また、
図8Aに示す周波数帯域データb
0〜b
5は各周波数帯域に相当する被写体の成分とノイズとをそれぞれ含む。ここで、周波数帯域データb
0〜b
5及び背景データg
6におけるノイズは、ノイズ均一化処理部282によるノイズ均一化によってノイズが均一化されている。周波数帯域データb
0〜b
5のノイズ特性が原画像データと異なりさらにお互いに異なる場合は、低解像度画像データg
1〜g
5に前段のノイズ均一化と次段のノイズ均一化を換算する処理を適用する。
【0051】
図6に戻って、干渉縞除去処理部284は、複数の周波数帯域データの一つ又はいくつかに含まれる干渉縞を除去する。具体的には、干渉縞除去処理部284は、「fn/2」から「fn」までの範囲内にある干渉縞に相当する成分を除去する。ここで、上述したように、周波数帯域データ生成部283によって生成された周波数帯域データb
0が干渉縞に相当する成分のほとんどを含む。そこで、干渉縞除去処理部284は、
図6に示すように、周波数帯域データb
0に対して干渉縞除去処理を実行する。
【0052】
図9A及び
図9Bは、第1の実施形態に係る干渉縞除去処理部284による干渉縞除去処理を説明するための図である。ここで、
図9Aにおいては、干渉縞除去処理部284による処理の一例を示し、
図9Bにおいては、干渉縞除去処理部284に適用されるLPFの一例を示す。
【0053】
例えば、処理対象となる周波数帯域データb
0においては、
図9Aに示すように、周波数帯域データb
0に含まれる画素の列方向をx方向、行方向をy方向とする。ここで、グリッド15による干渉縞は、
図9Aに示すように、y方向と平行に発生(干渉縞の並び方向がx方向と一致)する場合を一例に挙げて説明する。
【0054】
かかる場合には、干渉縞除去処理部284は、まず、x方向にLPF処理を実行して、x方向LPF処理画像を生成する。具体的には、干渉縞除去処理部284は、低周波成分が通過する1次元空間フィルタを周波数帯域データb
0のx方向に施すことで主に干渉縞の成分が除去されたx方向LPF処理画像を生成する。ここで、干渉縞除去処理部284によって施されるLPFは、カーネルサイズが例えば(x,y)=(31,1)であり、
図9Bに示すような周波数特性を有する。
【0055】
例えば、上述したグリッド15を用いることで干渉縞が「27.6LP/cm」に発生する場合に、干渉縞除去処理部284は、
図9Bに示すように、干渉縞の周波数「27.6LP/cm」の直前でゲインが急激に「1」から「0」に減少する特性を有するLPF処理を施す。これにより、ゲインが0である周波数帯域の成分が除去され、ゲインが1である周波数帯域の成分がLPF処理の影響を受けずに残る。これにより、干渉縞除去処理部284は、主に干渉縞の成分が除去されたx方向LPF処理画像を得る。このように、干渉縞除去処理部284は、ナイキスト周波数fnの1/2からナイキスト周波数fnの範囲内にある干渉縞の成分を選択的に除去する。ここで、診断に必要な画像(被検体の内部形態を表す部分など)の周波数帯域は、通常、ナイキスト周波数fnの1/2よりも十分小さい。したがって、
図9Bに示すように干渉縞の周波数の直前でゲインを0に落としたとしても、診断に必要な画像への影響はほとんど生じることはない。
【0056】
なお、FPD16による画像データの収集には、上述したように、FPD16に含まれる1つの検出素子からの出力を1つの画素として画像データを構成するモードの他に、2×2や3×3の検出素子にて検出された電荷を平均して1画素とするモードも存在する。干渉縞の周波数は、これらのモードによって異なる。また、モードによっては干渉縞が発生しない場合もある。これらのモードの種別は、システム制御部290がシステム情報処理部281に通知する。システム情報処理部281は、モードごとに最適なカーネルサイズやゲインを予め記憶しており、システム制御部290から通知されたモードの種別に対応するカーネルサイズやゲインを干渉縞除去処理部284に通知する。干渉縞除去処理部284は、システム情報処理部281から通知されたカーネルサイズやゲインを用いてLPF処理を実行する。なお、干渉縞が発生しないモードである場合には、干渉縞除去処理部284による処理をスキップしてもよい。
【0057】
上述したようにx方向LPF処理画像を生成すると、干渉縞除去処理部284は、周波数帯域データb
0とx方向LPF処理画像とを差分することで、主に干渉縞の成分で構成された干渉縞画像を得る。そして、干渉縞除去処理部284は、次に、干渉縞画像に対してy方向のLPF処理を実行する。ここで、y方向のLPF処理においては、x方向のLPF処理と同じカーネルサイズ(例えば(x,y)=(1,31))やゲインが用いられてもよく、或いは、x方向のLPF処理と異なる周波数、例えばより低い周波数成分だけを通過させるカーネルサイズやゲインが用いられてもよい。これにより、干渉縞除去処理部284は、より正確に干渉縞の成分を表す干渉縞画像を得る。
【0058】
上述したように、y方向のLPF処理によって、より正確に干渉縞の成分を表す干渉縞画像を得ると、干渉縞除去処理部284は、周波数帯域データb
0と干渉縞画像とを差分することで、周波数帯域データb
0から干渉縞が除去された処理画像を得る。このように、干渉縞が除去された処理画像を得ると、干渉縞除去処理部284は、得られた処理画像をノイズ低減処理部285に送出する。
【0059】
図6に戻って、ノイズ低減処理部285は、複数の周波数帯域データに含まれるノイズを低減する。具体的には、ノイズ低減処理部285は、
図6に示すように、干渉縞除去処理部284によって干渉縞が除去された周波数帯域データb
0と、周波数帯域データ生成部283によって生成された周波数帯域データb
1〜b
5それぞれに含まれるノイズを低減する。ここで、ノイズ低減処理部285は、各周波数帯域データのノイズを低減するための処理として種々の方法を用いることができる。例えば、ノイズ低減処理部285は、特許第4170767号公報に開示されたコヒーレントフィルタを用いることができる。
【0060】
上述したコヒーレントフィルタは、解像度を維持したままノイズを効果的に低減することができる。かかるコヒーレントフィルタでは、近傍の例えば3×3等の局所内画素を加重平均し、加重平均値を局所中心画素の値とすることを基本として、周辺画素各々の重みを中心画素と周辺画素との間の類似度に従って変えることを特徴としたものである。ここで言う類似度とは、画素間で、解剖学的に近い組織、具体的には同じ脳動脈の支配下にある脳組織(毛細血管)どうしである可能性の度合いを示す指標であり、この類似度が高い画素に対しては高い重みを与え、逆に類似度が低い画素に対してはゼロに近い低い重みを与えることにより、ノイズ抑制を果たしながらも、空間分解能の低下を抑制することを可能としている。
【0061】
ここで、ノイズ低減処理部285によるノイズ低減処理の対象となる周波数帯域データb
0〜b
5は、ノイズ均一化処理が実行されていることから、信号成分以外は同じ大きさのノイズとなっている。これにより、原画像データでは画素値が異なっており、上述したコヒーレント処理の対象ではなかった部分が、処理対象となり、ノイズ低減効果が向上される。
【0062】
なお、被検体の透視を行う場合には、コヒーレントフィルタに係る処理に加えて、時間方向のノイズを低減するための処理を周波数帯域データに実行してもよい。このような処理としては、例えば、特願2011−250066号等に開示された手法を適用することができる。上述したノイズ低減処理を実行すると、ノイズ低減処理部285は、周波数帯域データb
0〜b
5のノイズを低減させた周波数帯域データb
0’〜b
5’を周波数帯域データ合成部286に送出する。
【0063】
周波数帯域データ合成部286は、各処理部による処理後の複数の周波数帯域データを合成して画像データを生成する。具体的には、周波数帯域データ合成部286は、背景データg
6と、ノイズが低減された周波数帯域データb
0’〜b
5’とを順次合成することで、干渉縞とノイズが低減された原画像データと同一サイズの画像データを生成する。例えば、周波数帯域データ合成部286は、1段目(図中最下段)のLP↑において、背景データg
6に対してアップサンプリング処理(まず横方向の1画素おきに「0」を補完し、次に縦方向の1画素おきに「0」を補完)を実行して、周波数帯域データ生成部283のアップサンプリング処理と同じLPF処理を実行することで、背景データg
6を周波数帯域データb
5’と同一サイズにする。そして、周波数帯域データ合成部286は、同一サイズにした周波数帯域データb
5’と背景データg
6とを加算器によって画素ごとに足し合わせることで、加算データg
5’を生成する。
【0064】
周波数帯域データ合成部286は、生成した加算データg
5’に対して上記したアップサンプリング処理及びLPF処理を実行することで、加算データg
5’を周波数帯域データb
4’と同一サイズにし、周波数帯域データb
4’と加算して加算データg
4’を生成する。同様に、周波数帯域データ合成部286は、加算データのサイズアップと周波数帯域データとの加算を順次実行することで、干渉縞とノイズが低減された原画像データと同一サイズの画像データを生成する。
【0065】
上述したように、X線診断装置1は、グリッド15を透過したX線に基づく原画像データに対して干渉縞除去処理及びノイズ低減処理を実行する。X線診断装置1においては、さらに、解像度補正処理と散乱成分補正処理とを実行する。ここで、X線診断装置1においては、ノイズ低減の効果を高めるために原画像データに対してノイズ均一化処理を実行している。解像度補正処理と散乱成分補正処理とを正確に実行するため、X線診断装置1では、ノイズ均一化逆処理部287が、ノイズ均一化逆処理を実行する。
【0066】
具体的には、ノイズ均一化逆処理部287は、画像値を線量に比例する画素値にするために、ノイズ均一化の式を画素値「x」について解いた変換式によりノイズ均一化逆処理を実行する。
【0067】
例えば、ノイズ均一化逆処理部287は、周波数帯域データ合成部286によって生成された画像データ及び背景データg
6に対してノイズ均一化の式を画素値「x」について解いた変換式を適用することで、各データの画素値を線量に比例する値に戻す。
【0068】
散乱成分推定処理部288は、グリッドを透過したX線に含まれる散乱線成分と、グリッド15よりも散乱線の除去能が高い目標グリッド(例えば、「格子密度:44LP/cm、格子比:15:1、中間物質:ファイバー」)を透過したX線に含まれる散乱線成分との差分を推定し、推定した差分に基づいて散乱線成分を補正させる。具体的には、散乱成分推定処理部288は、推定した差分に基づいて、背景データg
6又は各処理部による処理後の生成途中データに含まれる散乱線成分を補正する。
【0069】
ここでまず、散乱成分推定処理部288によって実行されるX線画像データに含まれる散乱線成分の推定について説明する。X線画像データは一次X線による画像データである一次X線画像と散乱線による画像データである散乱線画像からなる。ここで、一次X線画像に畳み込み積分する事で散乱線画像が得られる関数を散乱関数とする。したがって、X線画像データは一次X線画像と散乱関数の畳み込み積分と直接線画像の和として表される。
【0070】
散乱関数は管電圧、照射野の面積、および被検体厚により変化する。そこで、予め各種の管電圧、照射野の面積、および被検体厚の条件につき、ファントムを使用するなどして散乱関数を求めておく。求めた散乱関数は散乱関数対応表に記憶する。また、被検体厚は、管電圧、管電流の時間積、X線焦点−X線検出器間距離、設定線量、および平均画素値などの画素値の統計量を使用した実験式によって推定できる。そこで、予めこのような実験式を定めておく。なお、上述した散乱関数対応表や実験式は、システム制御部290、画像補正部280、或いは、散乱成分推定処理部288が有するメモリ、又は画像データ記憶部260などに記憶される。
【0071】
X線画像データ収集時のX線条件と、前記実験式で決定された被検体厚、および前記散乱関数対応表とに基づいて、散乱関数を決定する。直接線画像の和として表された式をフーリエ変換し、一次X線画像のフーリエ変換について解き、逆フーリエ変換すれば一次X線画像、つまり散乱線補正処理により散乱線成分が低減された画像(以下、散乱線低減画像と呼ぶ)が得られる。
【0072】
しかしながら、上記手法では、X線画像データにおける画素の位置に応じて散乱関数を変化させることができない。従って、例えば被検体がなくX線が直接入射する部分(以下、直接線成分と呼ぶ)を含むX線画像データまたは、被検体のうち部分的に厚みの薄い部分(以下、薄体厚部分と呼ぶ)を透過した非直接線成分を有するX線画像データなどにおいて、散乱線成分を適切に低減できない。例えば、散乱線成分を過度に補正してしまう場合がある(以下、過補正と呼ぶ)。
【0073】
そこで、過補正を防ぐため、X線画像データを構成する複数の画素値のうち、基準値より高い画素値を基準値より低い画素値に変換する。
図10は、第1の実施形態に係るX線画像データを構成する複数の画素値の分布(画素値分布)の一例を示す図である。画素値分布において直接線成分は、被検体の透過による線量の減弱がないため、非直接線成分に比べ高い画素値の範囲に存在する。
【0074】
また、薄体厚部分を透過した非直接線成分は、直接線成分と同様に、被検体の透過による線量の減弱が少ないため、非直接線成分に比べ高い画素値の範囲に存在する。以下、説明を簡単にするために、直接線成分を有するX線画像データについてのみ説明する。薄体厚部分を透過した非直接線成分を有するX線画像データについても、同様の効果を有する。
【0075】
散乱成分推定処理部288は、X線画像データを構成する複数の画素値の最頻値を代表値とし、これに所定の定数を乗算し、基準値を決定する。または、散乱成分推定処理部288は、外部から入力あるいは、事前に登録された関心領域に含まれる複数の画素値の平均値または中央値を代表値として用いることで、基準値を決定する。または、散乱成分推定処理部288は、透視の自動起動調整の目標画素値、撮影の自動露出制御の目標画素値を代表値として用いることで、基準値を決定する。なお、操作者などの指示により基準値を変更させることもできる。
【0076】
散乱成分推定処理部288は、画素値変換表を記憶する。ここで、画素値変換表は、変換前の画素値と変換後の画素値との対応関係を示している。散乱成分推定処理部288は、画素値変換表および基準値に基づいて、X線画像データを構成する複数の画素値のうち、基準値より高い画素値を基準値より低い画素値に変換する。例えば、散乱成分推定処理部288は、X線画像データにおける直接線成分を有する画素の画素値を、低い画素値に変換する。
【0077】
より具体的に説明すると、例えば、画素値変換表は、以下のような変換前の画素値と変換後の画素値との対応関係を表す。画素値変換表は、X線画像データの画素値のうち基準値以下の画素値に対して恒等変換を実行するための対応関係を示すものでもよいし、X線画像データの画素値のうち基準値以下の画素値は不変としてもよい。さらに、画素値変換表は、X線画像データの画素値のうち基準値以上であって基準値の2倍以下である画素値を、基準値以下の画素値に変換するための対応関係を示す。また、X線画像データの画素値のうち基準値の2倍以上の画素値を0に変換するための対応関係を示す。なお、基準値以上であって基準値の2倍以下である画素値を低い画素値に変換することにより、X線画像データの画素値を変換した画像(以下、変換画像と呼ぶ)を用いて、後述する散乱線画像計算により発生された散乱線画像において、アーチファクトの発生を抑制させることができる。
【0078】
散乱成分推定処理部288は、変換画像を散乱関数に基づいてX線画像データにおける散乱線画像に変換する。具体的には、散乱成分推定処理部288は、変換画像のフーリエ変換を発生する。また、散乱成分推定処理部288は、散乱関数のフーリエ変換を発生する。次に、散乱成分推定処理部288は、散乱関数のフーリエ変換を散乱関数のフーリエ変換と1との和で除算する(以下、除算の結果を散乱関数項と呼ぶ)。次に、散乱成分推定処理部288は、変換画像のフーリエ変換と散乱関数項とを乗算することで、散乱線画像のフーリエ変換を発生する。最後に、散乱成分推定処理部288は、散乱線画像のフーリエ変換に逆フーリエ変換を適用することで、散乱線画像を発生する。
【0079】
以上により、散乱成分推定処理部288によれば、直接線を含むX線画像データおよび、被検体のうち部分的に厚みの薄い部分(薄体厚部分)を透過した非直接線成分を有するX線画像データでも、計算量を抑えて、過補正なく散乱線画像を発生することができる。
【0080】
散乱成分推定処理部288に、グリッド15の散乱関数と、グリッド15よりも散乱線の除去能が高い目標グリッド(例えば、「格子密度:44LP/cm、格子比:15:1、中間物質:ファイバー」)の散乱関数を記憶させる。そして、前記散乱関数項の計算において、散乱関数のフーリエ変換の代わりに、グリッド15の散乱関数のフーリエ変換と目標グリッドの散乱関数のフーリエ変換の差分を用いれば、グリッド15による散乱線成分と目標グリッドの散乱線成分との差分のフーリエ変換が近似される。これに逆フーリエ変換を適用することで、グリッド15と目標グリッドの差分の散乱線画像を発生する。
【0081】
上述した散乱関数の抽出を実行するため、システム情報処理部281は以下の処理を実行する。まず、システム情報処理部281は、管電圧、照射野の面積、および被検体厚ごとに予め実測されたグリッド15の散乱関数spr0(x,y)、グリッド15よりも散乱線の除去能が高い目標グリッドの散乱関数spr1(x,y)から構成されるデータベースと、管電圧、管電流の時間積、X線焦点−X線検出器間距離、設定線量、および画素値の統計量から被検体厚を推定するための実験式とを記憶する。そして、透視や撮影の実施に伴って、システム制御部290は、管電圧、管電流の時間積、X線焦点−X線検出器間距離、設定線量、および平均画素値などの画素値の統計量を、システム情報として画像補正部280に通知する。
【0082】
システム情報処理部281は、システム制御部290から通知されたシステム情報に含まれる管電圧、管電流の時間積、X線焦点−X線検出器間距離、設定線量、および画素値の統計量と上述の実験式とを用いて被検体厚を推定する。さらに、システム情報処理部281は、当該推定した被検体厚と、システム制御部290から通知されたシステム情報に含まれる管電圧および照射野の面積とに対応するspr0(x,y)、spr1(x,y)を上述のデータベースから抽出する。
【0083】
ここで、
図6の例では、背景データg
6を用いて散乱成分推定画像を生成する場合を示す。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、加算データg
n’が用いられる場合であってもよい。
図11は、本実施形態に係る散乱成分推定処理部288の処理対象となる画像データについて説明するための図である。
図11においては、加算データg
n’と、散乱関数spr1(x,y)をフーリエ変換して得られるSPR1(u,v)との関係の一例を示す。
図11に示すように、加算データg
n’の周波数領域がSPR1(u,v)をカバーしている場合であれば、いずれの加算データg
n’が用いられる場合であってもよい。散乱成分推定処理部288は、生成した背景データg
6サイズの散乱成分推定画像に対してアップサンプリング処理とLPF処理を繰り返して、原画像データと同一サイズの散乱成分推定画像を生成する(
図6参照)。
【0084】
図6に戻って、解像度補正処理部289は、画像データに対して、前記平面検出器のMTF(Modulation Transfer Function)特性に応じて低下した解像度を補正する。具体的には、解像度補正処理部289は、FPDのMTFにより低下した解像度を逐次近似法による解像度補正処理によって補正する。
図12は、第1の実施形態に係る解像度補正処理部289による処理の一例を示す図である。
図12においては、加減型の逐次近似法によって解像度補正処理を行う場合について示す。
【0085】
例えば、解像度補正処理部289は、
図12に示すように、入力xに対してFPD16のMTFから逆フーリエ変換で求められた空間フィルタを施した値を出力yと比較して、比較結果をフィードバックする。ここで、解像度補正処理部289は、出力yとして、ノイズ均一化逆処理した画像データを用いる。すなわち、解像度補正処理部289は、入力xに対してMTFに基づく空間フィルタを施した値とノイズ均一化逆処理した画像データの値との差分をフィードバックして、入力xに加算する逐次近似によって、FPDのMTFによって低下する前の解像度に補正する。
【0086】
なお、解像度補正処理部289による逐次近似処理は、上述した加減型だけでなく、空間フィルタを施した値とノイズ均一化逆処理した画像データの値との比を用いる乗除型であってもよい。また、目標とする高解像度FPDのMTFに対する比を用いることで目標FPD相当の画像データに補正することも可能である。
【0087】
図6に戻って、画像補正部280は、解像度補正処理部289によって解像度が補正された画像データと、散乱成分推定処理部288によって生成された散乱成分推定画像とを差分することで、散乱線の補正を行った画像データを得る。このように、画像補正部280は、目標グリッドの散乱線に補正した目標画像が得ることができる。特に、目標グリッドを従来グリッドより散乱線除去能力の高いグリッドに設定することで、本実施形態のグリッド仕様/線量/線質の組合せによるコントラスト低下を充分補うことができる。そして、画像補正部280は、得た画像データを画像処理部270に送出する。画像処理部270は適宜画像処理を実行して表示画像を生成し、システム制御部290が生成された表示画像を表示部220に表示させる。
【0088】
なお、医師がモニタに表示された透視画像を見ながらガイドワイヤーなどのデバイスを操作する検査がある。この時、実際の操作から透視画像がモニタに表示されるまでの時間差が大きくなると、正確な操作の妨げになる。通常、散乱成分推定処理では、収集する画像毎に、1/64×1/64に縮小した背景データg
6および散乱関数にフーリエ変換→演算→逆フーリエ変換を行うが、原画像取り込みのタイミングに対する散乱成分算出の遅れが大きくなり、モニタに表示される透視画像の遅れが大きくなる。そこで、これを避けるために、1枚前の画像の散乱成分を用いて補正する方法を採用しても良い。さらに、画像毎の散乱成分の細かな変動による補正画像のちらつきを防ぐため1枚前から数枚前の散乱成分の平均値を用いて補正しても良い。
【0089】
次に、
図13を用いて、第1の実施形態に係るX線診断装置1の処理について説明する。
図13は、第1の実施形態に係るX線診断装置1による処理の手順を示すフローチャートである。
図13に示すように、第1の実施形態に係るX線診断装置1においては、補正モードであると(ステップS101肯定)、ノイズ均一化処理部282が原画像データに対してノイズ均一化処理を実行する(ステップS102)。そして、周波数帯域データ生成部283が、ノイズ均一化処理された原画像データから複数の周波数帯域データを生成する(ステップS103)。
【0090】
そして、干渉縞除去処理部284が、画像の収集モードなどを参照して、干渉縞が生じるか否かを判定する(ステップS104)。ここで、干渉縞が生じると判定した場合には(ステップS104肯定)、干渉縞除去処理部284がLPF処理により干渉縞を除去して(ステップS105)、ノイズ低減処理部285が周波数帯域データごとにノイズを低減する(ステップS106)。一方、ステップS104にて、干渉縞が生じないと判定した場合には(ステップS104否定)、干渉縞除去処理をスキップして、ノイズ低減処理部285が周波数帯域データごとにノイズを低減する(ステップS106)。
【0091】
その後、散乱成分推定処理部288が、ノイズ均一化逆処理が実行された周波数帯域データ(背景データ)に基づいて散乱成分を推定する(ステップS107)。そして、周波数帯域データ合成部286が、ノイズが低減された周波数帯域データを合成して原画像データと同一サイズの画像データを生成する(ステップS108)。さらに、解像度補正処理部289が、ノイズ均一化逆処理が実行された画像データに対して解像度補正を実行する(ステップS109)。
【0092】
そして、画像補正部280は、解像度補正した画像データと散乱成分推定画像とを差分することで、画像データから散乱成分を除去して(ステップS110)、処理を終了する。なお、ステップS101にて、補正モードではない場合には、X線診断装置1は、補正を実行せずに画像を生成して表示する(ステップS111)。
【0093】
上述したように、第1の実施形態によれば、X線発生器(X線管12)は、X線を発生させる。FPD16は、X線を検出する。グリッド15は、FPD16の画素との干渉によって生じる干渉縞の周波数がFPDにおけるナイキスト周波数からナイキスト周波数の半分の周波数までの範囲内となる格子密度を有する。周波数帯域データ生成部(変換部ともいう)283は、グリッド15を透過してFPD16によって検出されたX線に基づく原画像データを複数の周波数帯域データと背景データに変換する。干渉縞除去処理部284は、複数の周波数帯域データのうち少なくとも一つに含まれる干渉縞を除去する。ノイズ低減処理部285は、複数の周波数帯域データに含まれるノイズを低減する。散乱成分推定処理部288は、グリッド15を透過したX線に含まれる散乱線成分と、グリッド15よりも散乱線の除去能が高い目標グリッドを透過したX線に含まれる散乱線成分との差分に基づいて、背景データ又は各処理部による処理後の生成途中データに含まれる散乱線成分を補正する。周波数帯域データ合成部286は、各処理部による処理後の複数の周波数帯域データを合成して画像データを生成する。解像度補正処理部289は、画像データに対して、FPDのMTF特性に応じて低下した解像度を補正する。散乱成分推定処理部288で推定した散乱線成分を、原画像データサイズに生成し、解像度を補正した画像データと差分することで散乱線を補正する。従って、第1の実施形態に係るX線診断装置1は、グリッド仕様/線量/線質の組み合わせの自由度を上げることができ、画質を維持しつつ、被曝量を低減することを可能にする。
【0094】
例えば、X線診断装置1は、上述した構成により、線量と画像のバランスを大幅に向上させることできる。また、例えば、X線診断装置1は、従来の画質と同等の画質であれば、被曝線量を60%以下に低減することができる。また、例えば、X線診断装置1は、従来の被曝線量と同等であれば、画質を大幅に向上させることができる。また、例えば、X線診断装置1は、FPD画素とグリッドの格子の干渉縞がなく、ノイズの増加及びコントラストの低下が生じていない画像を得ることができる。これらのことから、X線診断装置1は、X線画像の診断能を下げることなく、被曝量を低減することができる。
【0095】
また、第1の実施形態によれば、グリッド15は、干渉縞の周波数が、FPD16におけるナイキスト周波数からナイキスト周波数の半分の周波数までの範囲内においてナイキスト周波数により近い周波数となる格子密度を有する。従って、第1の実施形態に係るX線診断装置1は、信号成分を除去することなく、干渉縞に相当する成分を除去することを可能にする。
【0096】
また、第1の実施形態によれば、グリッド15は、被検体を透過したX線に含まれる直接線が透過し易い格子比及び中間物質で構成される。従って、第1の実施形態に係るX線診断装置1は、信号成分の低下を抑止することができ、画質を維持することを可能にする。
【0097】
また、第1の実施形態によれば、グリッド15は、箔間対厚みで示される格子比が1:6〜1:10の範囲内であり、かつ、中間物質がファイバーである。従って、第1の実施形態に係るX線診断装置1は、直接線の透過率を向上させることができる。
【0098】
また、第1の実施形態によれば、ノイズ低減処理部285は、ノイズが画素値によらず一定となるように均一化された複数の周波数帯域データに含まれるノイズを低減する。従って、第1の実施形態に係るX線診断装置1は、ノイズの低減効果を上げることを可能にする。
【0099】
(第2の実施形態)
さて、これまで第1の実施形態について説明したが、上述した第1の実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0100】
上述した第1の実施形態において
図10を用いて説明した散乱成分推定処理は、上述した例だけではなく、その他の方法によって実行される場合であってもよい。
図14は、第2の実施形態に係る散乱成分推定処理部288による処理を説明するための図である。例えば、散乱成分推定処理部288は、
図14に示す回路にて実現することも可能である。かかる回路は、特許第2509181号公報に開示された第1図を変形したものである。2次元メモリ201、散乱線応答関数格納メモリ202、フィルタ係数演算回路203、逆フーリエ変換器204、フィルタ演算回路205、減算器206、およびX線架台207は、同公報第1図における2次元メモリ1、散乱線応答関数格納メモリ2、フィルタ係数演算回路3、逆フーリエ変換器4、フィルタ演算回路5、減算器6、およびX線架台7に相当する。第2の実施形態においては、さらに散乱線除去比率演算回路208および乗算器209を備える。
【0101】
散乱線除去比率演算回路208は、システム情報処理部281から管電圧、照射野の面積、および被検体厚などの条件を受け取り、この条件に対応する散乱線除去比率を演算する。散乱線除去比率は、グリッド15を用いた際の散乱線量のうちどれだけを削除すれば目標グリッドの散乱線量に補正できるかを表す係数である。散乱線除去比率は、管電圧、照射野の面積、および被検体厚などの条件により変化する。演算式は、予め実験結果などに基づいて設定しておけばよい。また、予め管電圧、照射野の面積、および被検体厚などの条件ごとの散乱線除去比率を実験的に求め、その結果を散乱線除去比率演算回路208のメモリ等に保存しておき、散乱線除去比率演算回路208がこのメモリから散乱線除去比率を選定するようにしてもよい。
【0102】
乗算器209は、フィルタ係数演算回路203が演算したフィルタ係数に、散乱線除去比率演算回路208が演算した散乱線除去比率を掛け合わせることで当該フィルタ係数を補正する。逆フーリエ変換器204、フィルタ演算回路205、および減算器206は、このように補正された後のフィルタ係数を用いて処理を行う。
【0103】
以上のような回路を用いた場合であっても、実際に収集した背景データ(或いは、周波数帯域データ)と、散乱線量がゼロではない目標グリッドを用いた場合に得られるX線画像データとの差分を算出するこができる。
【0104】
また、上述した第1の実施形態では、干渉縞除去処理としてLPF処理を実行する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、特開2011−10829号公報に開示されたウェーブレット変換を用いた処理によって干渉縞除去処理が実行される場合であってもよい。
【0105】
また、上述した第1の実施形態では、ダウンサンプリング処理を実行することにより低解像度データを生成する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、原画像データと同一サイズで全処理が実行される場合であってもよい。かかる場合には、例えば、
図6に示す周波数帯域データ生成部283のダウンサンプリング処理、アップサンプリング処理及びアップサンプリング処理後のLPF処理が省略される。また、かかる場合には、例えば、
図6に示す周波数帯域データ合成部286のアップサンプリング処理及びアップサンプリング処理後のLPF処理と、散乱成分推定処理の後のアップサンプリング処理及びアップサンプリング処理後のLPF処理とが省略される。
【0106】
また、上述した実施形態に係るX線診断装置1の構成はあくまでも一例であり、各部の統合及び分離は適宜行うことができる。例えば、
図6に示した構成はあくまでも一例であり、適宜変更することが可能である。
【0107】
また、上述した第1及び第2の実施形態においては、消化管、泌尿器、整形、IVR(Interventional Radiology)などの検査及び治療が実施されるX線診断装置によって各種処理が実行される場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、脳や心臓等の循環器系の診断・治療が実施されるX線アンギオグラフィ装置が各種処理を実行する場合であってもよい。
【0108】
また、上述した第1及び第2の実施形態においては、X線診断装置が各種処理を実行する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、ワークステーションなどの医用画像処理装置が各種処理を実行する場合であってもよい。かかる場合には、例えば、グリッド15を有するX線診断装置によって収集された原画像データに対して、上述した画像補正部280を有するワークステーションが各種処理を実行する。
【0109】
以上説明したとおり、第1及び第2の実施形態によれば、本実施形態のX線診断装置及び画像処理装置は、画質を維持しつつ、被曝を低減させることを可能にする。
【0110】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。