(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6362918
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】救助工作車の展開式収納庫
(51)【国際特許分類】
A62C 27/00 20060101AFI20180712BHJP
B60P 3/00 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
A62C27/00 508
B60P3/00 Z
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-97581(P2014-97581)
(22)【出願日】2014年5月9日
(65)【公開番号】特開2015-213598(P2015-213598A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2017年1月19日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 販売日 平成26年2月20日 販売場所 八代広域行政事務組合 公開者 株式会社赤尾
(73)【特許権者】
【識別番号】597033133
【氏名又は名称】株式会社赤尾
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166796
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 雅至
(72)【発明者】
【氏名】赤尾 隆
【審査官】
稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭61−011063(JP,A)
【文献】
特開平09−168607(JP,A)
【文献】
特開2005−280659(JP,A)
【文献】
特開2003−48478(JP,A)
【文献】
米国特許第6006841(US,A)
【文献】
米国特許第4512412(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 27/00
B60P 3/00
B60R 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
救助工作車の側面に臨む積載スペース(53)に備えられ、資機材を収納する棚体(11)を、積載スペース(53)に格納した格納状態の位置と、積載スペース(53)から引き出した展開状態の位置との間で移動可能とした展開式収納庫において、
前記棚体(11)の横枠と積載スペース(53)の枠部とを横アーム(12)及びリンクロッド(13)を介して連結することにより、水平方向の平行リンク機構を構成し、
前記棚体(11)の向き及び高さ方向の位置が格納状態と展開状態とで変化せず、展開状態では、棚体(11)が格納状態から一側方へ移動して横アーム(12)で支持されるようにしたことを特徴とする救助工作車の展開式収納庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、災害や事故の被災者を救助するため、工具等の資機材を積載して現場へ向かう救助工作車において、積載スペースに装備される展開式収納庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各地の消防機関には、災害や事故の発生時、倒壊物や重量物を押し広げるスプレッダーやこれらを切断するカッター等の資機材を積載して現場へ急行する救助工作車が配備されている。このような救助工作車に係る発明として、下記特許文献1には、
図6に示すようなものが記載されている。
【0003】
この救助工作車は、キャビン51の後方に区画された荷台52を備えており、荷台52には、両側面に臨むように、積載スペース53,54,55が前部から後部へかけて順次設けられている。また、荷台52の幅方向中間部には、両側の積載スペース53の奥に位置する積載スペース56と、積載スペース54,55の奥に位置して前後に並ぶ積載スペース57,58とが設けられている。
【0004】
積載スペース53には、展開式の収納庫が備えられている。この収納庫は、使用頻度が高く比較的小さな資機材を収納する箱型の棚体60を、積載スペース53に格納した格納状態の位置と、積載スペース53から引き出した展開状態の位置との間で移動可能としたものである。
【0005】
棚体60は、その一側部が上下方向に延びる支持軸61により積載スペース53の枠部に回動自在に軸支され、格納状態と展開状態とで、棚体60の向きは約90°変化し、高さ方向の位置は変化しないようになっている。
【0006】
また、積載スペース53の奥に位置する積載スペース56には、棚体60に収納できない比較的大きな資機材が収納され、この資機材を取り出す際には、棚体60を展開状態とすることとされている。そのほか、荷台52の中央部及び後部に位置する積載スペース57,58には、それぞれポンプ及び水のタンクが収納される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4485832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のような展開式の収納庫では、棚体60を展開状態とすると、棚体60の一側部が積載スペース53の開口面の一部を塞ぐこととなるため、奥の積載スペース56へのアクセススペースが制限され、積載スペース56から資機材を取り出しにくいという問題がある。
【0009】
そこで、この発明は、積載スペースから資機材を容易に取り出せる展開式収納庫を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、この発明は、救助工作車の側面に臨む積載スペースに備えられ、資機材を収納する棚体を、積載スペースに格納した格納状態の位置と、積載スペースから引き出した展開状態の位置との間で移動可能とした展開式収納庫において、次のような構成としたのである。
【0011】
すなわち、前記棚体の横枠と積載スペースの枠部とを横アーム及びリンクロッドを介して連結することにより、水平方向の平行リンク機構を構成し、棚体の向き及び高さ方向の位置が格納状態と展開状態とで変化せず、展開状態では、棚体が格納状態から一側方へ移動して横アームで支持されるようにしたのである。
【発明の効果】
【0012】
上記発明に係る展開式収納庫では、棚体が展開状態で格納状態から一側方へ移動して支持されるので、棚体を展開すると、奥の積載スペースへのアクセススペースが広く確保され、奥の積載スペースから資機材を容易に取り出すことができ、また、奥の積載スペースに資機材を容易に収納することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】
この発明の実施形態に係る展開式収納庫の棚体格納状態を示す斜視図
【
図6】従来の展開式収納庫を備えた救助工作車の荷台レイアウトを示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示す救助工作車は、キャビン51の後方に区画された荷台52を備えており、荷台52の両側面に臨む積載スペース53,54の開口部には、その開閉手段として、シャッター62及び下部に位置して垂直状態と水平状態との間で揺動するドアステップ63が設けられている。ドアステップ63は、水平状態では踏み台として使用できる。
【0015】
図1に示すような形式の救助工作車に装備する展開式収納庫について、
この発明の実施形態を
図2〜
図5に基づいて説明する。
【0016】
この展開式収納庫は、救助工作車の右側面に臨む積載スペース53に上方へ寄せて装備され、資機材を収納する棚体11を、
図2及び
図3に示すように、積載スペース53に格納した格納状態の位置と、
図4及び
図5に示すように、積載スペース53から引き出した展開状態の位置との間で移動可能としたものである。
【0017】
上記のような移動を可能とするため、棚体11の上側及び下側の横枠の中央部と積載スペース53の一側部の取付板53bとは、中間部で屈曲した幅広い板状の横アーム12を介して回動する連結点12a,12bで連結され、棚体11の下側の横枠の横アーム12との連結点12aより他側寄り部分から後方へ延びるブラケット14と積載スペース53の奥の枠部から前方へ延びるブラケット53cとは、リンクロッド13を介して回動する連結点13a,13bで連結されている。
【0018】
横アーム12の両端部の連結点12a,12bを結ぶ軸線12cと、リンクロッド13の両端部の連結点13a,13bを結ぶ軸線13cとは、平行かつ等長とされ、これにより水平方向の平行リンク機構が構成されている。
【0019】
棚体11の前面下部には、取手15が設けられ、下側の横アーム12の基部には、棚体11を格納状態で固定するレバー式のロック機構16が設けられている。
【0020】
このような展開式収納庫の棚体11には、油圧式の救助器具等に比較して軽いケーブルやローブ等が収納されている。
【0021】
上記のような展開式収納庫において、積載スペース53の奥に位置する積載スペース56に収納された資機材を救助活動に使用する際には、積載スペース53の開口部を開き、
図2及び
図3に示すように、格納状態の棚体11において、ロック機構16のレバー操作に伴い、棚体11の固定を解除し、取手15を握って棚体11を手前に引っ張り、
図4及び
図5に示すように、棚体1を積載スペース53から引き出して展開状態とする。
【0022】
このような棚体11の移動操作に伴い、棚体11の向き及び高さ方向の位置は、格納状態と展開状態とで変化せず、展開状態では、棚体11が格納状態から一側方へ移動して横アーム12で支持される。
【0023】
上記のような展開式収納庫では、棚体11が展開状態で格納状態から一側方へ移動して支持されるので、棚体11を展開すると、奥の積載スペース56へのアクセススペースが広く確保され、奥の積載スペース56から資機材を容易に取り出すことができ、また、奥の積載スペース56に資機材を容易に収納することができる。
【0024】
また、棚体11が展開状態でも救助工作車の荷台52の側面から大きく張り出すことがないので、救助工作車を駐車した道路等の通行にほとんど支障を来たすことなく、資機材を出し入れすることができる。
【符号の説明】
【0025】
1 棚体
11 棚体
12 横アーム
12a,12b 連結点
12c 軸線
13 リンクロッド
13a,13b 連結点
13c 軸線
14 ブラケット
15 取手
16 ロック機構
51 キャビン
52 荷台
53,54,56 積載スペース
53a,53b 取付板
53c ブラケット
62 シャッター
63 ドアステップ